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特開2023-139601処理液とインクのセット、印刷方法、及び画像形成装置
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  • 特開-処理液とインクのセット、印刷方法、及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139601
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】処理液とインクのセット、印刷方法、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/54 20140101AFI20230927BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230927BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20230927BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20230927BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20230927BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C09D11/54
B41M5/00 114
B41M5/00 132
B41M5/00 100
C09D11/322
D06P5/00 102
D06P5/30
B41J2/01 501
B41J2/01 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045206
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩加
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩香
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA13
2C056EA21
2C056EE18
2C056FB02
2C056FB03
2C056FC02
2C056HA42
2C056HA46
2C056HA47
2H186AB03
2H186AB13
2H186AB41
2H186AB44
2H186AB45
2H186AB53
2H186AB54
2H186AB55
2H186AB57
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA14
2H186FB10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB58
4H157AA01
4H157AA02
4H157AA03
4H157BA15
4H157CA37
4H157CA38
4H157CB08
4H157CB16
4H157CC01
4H157DA01
4H157DA17
4H157DA34
4H157GA06
4H157JA10
4H157JA14
4H157JB03
4J039AD10
4J039AE04
4J039BA04
4J039BC09
4J039BC27
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA19
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】発色性、及び摩擦堅牢性に優れた画像を印刷することができる処理液とインクのセットの提供。
【解決手段】色材及び樹脂を含有するインクと、有機酸塩、並びにノニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の少なくともいずれかの樹脂を含有する処理液と、を有し、前記有機酸塩の陽イオン濃度が0.05質量%以上1.65質量%以下である処理液とインクのセットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材及び樹脂を含有するインクと、
有機酸塩、並びにノニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の少なくともいずれかの樹脂を含有する処理液と、を有し、
前記有機酸塩の陽イオン濃度が0.05質量%以上1.65質量%以下であることを特徴とする処理液とインクのセット。
【請求項2】
布帛の画像形成に用いられる、請求項1に記載の処理液とインクのセット。
【請求項3】
前記有機酸塩が乳酸塩である、請求項1から2のいずれかに記載の処理液とインクのセット。
【請求項4】
前記有機酸塩が乳酸アンモニウムである、請求項3に記載の処理液とインクのセット。
【請求項5】
前記処理液がノニオン性樹脂を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の処理液とインクのセット。
【請求項6】
前記ノニオン性樹脂がノニオン性エチレン酢酸ビニル樹脂である、請求項5に記載の処理液とインクのセット。
【請求項7】
前記処理液における前記樹脂の含有量が1質量%以上10質量%以下である、請求項1から6のいずれかに記載の処理液とインクのセット。
【請求項8】
前記インクがポリウレタン樹脂を含有する、請求項1から7のいずれかに記載の処理液とインクのセット。
【請求項9】
前記インクにおける前記樹脂の含有量が5質量%以上15質量%以下である、請求項1から8のいずれかに記載の処理液とインクのセット。
【請求項10】
前記インクの乾燥物における25℃での貯蔵弾性率G’が7.0×10Pa以下である、請求項1から9のいずれかに記載の処理液とインクのセット。
【請求項11】
記録媒体上に有機酸塩並びにノニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の少なくともいずれかの樹脂を含有する処理液を付与する処理液付与工程と、
前記処理液を付与後の布帛上に色材及び樹脂を含有するインクを付与するインク付与工程と、を含み、
前記有機酸塩の陽イオン濃度が0.05質量%以上1.65質量%以下であることを特徴とする印刷方法。
【請求項12】
前記記録媒体が布帛であることを特徴とする、請求項11に記載の印刷方法。
【請求項13】
有機酸塩並びにノニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の少なくともいずれかの樹脂を含有する処理液と、
色材及び樹脂を含有するインクと、
前記インクを記録媒体に付与する付与手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
更に、前記処理液を記録媒体に付与する付与手段を有する、請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記処理液を収容する収容容器と、
前記インクを収容する収容容器と、を有する、請求項13から14のいずれかに記載の画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液とインクのセット、印刷方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有するので、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。
近年では、家庭用のみならず、コート紙等の緩浸透性メディアやプラスチックフィルム等の非吸収性メディア、織物や編物等ファブリックに対しても、インクジェット記録方法により、従来のアナログ印刷並の画質を獲得することが要求されるようになっている。
【0003】
捺染分野においても、Tシャツ等の衣類に直接印字するいわゆるDTG(Direct to Garment)分野の市場規模は年々拡大しており、従来の綿や綿・ポリエステル混紡メディアだけでなく、スポーツウェア向けの需要が急増し、ポリエステルメディア対応性が求められている。このような動向は、DTG分野のみならず、捺染分野全体に認められ、巻出巻取機構を備えたインクジェット印刷機においても、綿やポリエステルを始めとする様々な素材のファブリックに対して、発色性及び種々堅牢性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要がますます高まりつつある。
このようなファブリック向けのインクとしては、低VOCや安全性の観点から、水性インクの開発が最も盛んである。
【0004】
例えば、特許文献1には、カチオン性化合物と、炭化水素系のアニオン性乳化剤、及び、ノニオン性乳化剤から選択される1種以上を含有する処理液を布帛に付与した後、インクジェット顔料捺染インクを付着させることで、ポリエステル基材上での発色性向上を可能とする捺染方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、多価金属塩の濃度が、0.025mol/kg以上0.08mol/kg以下の範囲にある前処理液を布帛に付与した後、インクジェット捺染用のインクを付与することで、洗濯堅牢度及び発色性向上を可能とする捺染方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1に記載されている方法では、擦過時や洗濯時の堅牢性が不十分であるという課題があった。
加えて、前記特許文献2に記載されている方法では、ポリエステル等の化学繊維からなる布帛においては、画像の堅牢性及び発色性が不十分であるという課題があった。
【0007】
本発明は、発色性、及び摩擦堅牢性に優れた画像を印刷することができる処理液とインクのセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する手段としての本発明の処理液とインクのセットは、色材及び樹脂を含有するインクと、有機酸塩、並びにノニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の少なくともいずれかの樹脂を含有する処理液と、を有し、前記有機酸塩の陽イオン濃度が0.05質量%以上1.65質量%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、発色性、及び摩擦堅牢性に優れた画像を印刷することができる処理液とインクのセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の印刷方法に用いられる印刷装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の印刷方法を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の印刷装置における制御手段の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(処理液とインクのセット)
本発明の処理液とインクのセットは、色材及び樹脂を含有するインクと、有機酸塩、並びにノニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の少なくともいずれかの樹脂を含有する処理液と、を有する。
【0012】
<処理液>
処理液は、有機酸塩、並びにノニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の少なくともいずれかの樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。なお、処理液、組成液、前処理液はいずれも同義語である。
【0013】
<<有機酸塩>>
有機酸塩は、例えば、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。これらの中でも、乳酸塩が好ましい。乳酸塩としては、例えば、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、乳酸アルミニウム、乳酸アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、乳酸アンモニウムが更に好ましい。
【0014】
本発明における処理液中の有機酸塩の役割としては、インク中の樹脂との反応による記録媒体上でのインクの凝集化が挙げられる。記録媒体上でインクが凝集化することにより、記録媒体へのインクの浸み込みが抑制され、発色性に優れた画像が得られる。
【0015】
本発明における有機酸塩の添加量は、前記処理液中の有機酸塩の陽イオン濃度が0.05質量%以上1.65質量%以下の範囲であり、0.1質量%以上1.1質量%以下であることが好ましい。
処理液を分析して処理液中の有機酸塩の陽イオン濃度を測定する場合、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)により測定可能である。
インク凝集化作用が大きくなり、記録媒体上でドット径が小さくなることでベタ部が十分に埋まらず、記録媒体の下地色の影響が画像に現れることを防止するという観点、及び記録媒体上に留まるインクが増えることで摩擦時や洗濯時に画像が剥がれやすくなることを防止するという観点から、処理液中の有機酸塩の陽イオン濃度は1.65質量%以下であることが好ましい。
インクの凝集化作用が小さくなり、インクが記録媒体に浸み込みやすくなり、発色性が低下することを防ぐという観点から、処理液中の有機酸塩の陽イオン濃度は0.05質量%以上であることが好ましい。
処理液を分析して有機酸塩の陽イオン濃度を求める際には、処理液に含まれる有機酸塩の量を測定し、測定値を基に算出される陽イオンの量を、有機酸塩の陽イオン濃度としてもよい。
なお、上記の場合には、下記計算式(I)を行うことで、有機酸塩の陽イオン濃度を算出することが可能である。陽イオン濃度=処理液組成物中の有機酸塩濃度×有機酸塩の陽イオン原子量/有機酸塩の分子量・・・計算式(I)
ただし、乳酸アンモニウム75%液のように有機酸塩が希釈液の場合は、有機酸塩濃度=有機酸塩添加量(%)×希釈%の計算を行う必要がある。
【0016】
<<樹脂>>
本発明で使用される処理液は、ノニオン性樹脂及びカチオン性樹脂の少なくともいずれかを含む。
処理液内の有機酸塩との反応、保存安定性が良好である観点より、ノニオン性樹脂であることがより好ましい。
【0017】
-ノニオン性樹脂-
本発明におけるノニオン性樹脂とは、酸性あるいは塩基性の官能基の中和によって電荷を利用せずとも立体反発によって分散可能な樹脂のことを指す。
樹脂の化学構造に特に限定はなく、ノニオン分散可能な樹脂であればどのようなものでも使用することができるが、様々な記録媒体に対する強固な密着性を得ることができる観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、エチレン酢酸ビニル樹脂であることがより好ましい。
【0018】
ノニオン性エチレン酢酸ビニル樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。市販品を用いることができ、例えば、スミカフレックス401HQ(住化ケムテックス社製)、スミカフレックス408HQE(住化ケムテックス社製)、スミカフレックス755(住化ケムテックス社製)などが挙げられる。
【0019】
-カチオン性樹脂-
カチオン性樹脂としては、カチオン性のウレタン樹脂、カチオン性のオレフィン樹脂、カチオン性のアリルアミン樹脂等など挙げられる。
【0020】
カチオン性のウレタン樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。カチオン性のウレタン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP-7010、CP-7020、CP-7030、CP-7040、CP-7050、CP-7060、CP-7610(いずれもDIC株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(いずれも第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR-2120C、WBR-2122C(いずれも大成ファインケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0021】
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶剤等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)などが挙げられる。
【0022】
カチオン性のアリルアミン樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマーなどが挙げられる。このようなカチオン性のアリルアミン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、PAA-HCL-01、PAA-HCL-03、PAA-HCL-05、PAA-HCL-3L、PAA-HCL-10L、PAA-H-HCL、PAA-SA、PAA-01、PAA-03、PAA-05、PAA-08、PAA-15、PAA-15C、PAA-25、PAA-H-10C、PAA-D11-HCL、PAA-D41-HCL、PAA-D19-HCL、PAS-21CL、PAS-M-1L、PAS-M-1、PAS-22SA、PAS-M-1A、PAS-H-1L、PAS-H-5L、PAS-H-10L、PAS-92、PAS-92A、PAS-J-81L、PAS-J-81(商品名、ニットーボーメディカル株式会社製)、ハイモ Neo-600、ハイモロック Q-101、Q-311、Q-501、ハイマックス SC-505、SC-505(商品名、ハイモ株式会社製)などが挙げられる。
【0023】
樹脂のガラス転移温度(Tg)は-30~30℃であることが好ましい。
樹脂皮膜が十分強靭なものとなり、処理液層がより堅牢になるという観点から、樹脂のTgは-30℃以上であることが好ましい。
樹脂の成膜性が向上し、充分な柔軟性も担保され、記録媒体との密着性が強固なものとなるという観点から、樹脂のTgは30℃以下であることが好ましい。
【0024】
樹脂の含有量は処理液全量に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
布帛との密着性と画像の発色性の観点から、樹脂の含有量は処理液全量に対して1質量%以上であることが好ましい。
処理液の保存安定性及び、布帛に対して付与を行った際の風合いの担保という観点から、樹脂の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
【0025】
<<その他の成分>>
本発明の処理液は必要に応じてその他の成分を添加してもよい。
溶媒としては、水以外のものを添加してもよく、例えば水溶性有機溶剤などが挙げられる。
添加剤は、必要に応じて添加してよい。
【0026】
-水-
前記処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、処理液の乾燥性及び保存安定性の点から、20質量%以上98質量%以下が好ましく、30質量%以上95質量%以下がより好ましい。
【0027】
-有機溶剤-
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0028】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0029】
有機溶剤の処理液中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、処理液の乾燥性及び保存安定性の点から、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0030】
-添加剤-
前記処理液には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えてもよい。
【0031】
--界面活性剤--
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が、使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0032】
処理液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0033】
--消泡剤--
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0034】
--防腐防黴剤--
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0035】
--防錆剤--
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0036】
--pH調整剤--
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0037】
<インク>
インクは、色材及び樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。なお、インク、インキはいずれも同義語とする。
【0038】
前記インクは、樹脂及び色材を含有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂の他に、有機溶剤、水などを含有することが好ましく、更に必要に応じて、添加剤等のその他の成分を含有していてもよい。
また、インクを乾燥することにより得られる乾燥物の、25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率G’が、7.0×10Pa以下であることが好ましい。
【0039】
高い柔軟性により優れた堅牢性を持つ画像を得られるという観点から、インクを乾燥することにより得られる乾燥物の、25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率G’が、7.0×10Pa以下であることが好ましく、4.0×10Pa以下であることがより好ましい。
インクを乾燥させることにより得られる乾燥物の25℃における貯蔵弾性率G’を制御する方法としては、樹脂の分子量、ガラス転移温度、3官能以上のモノマー類による架橋構造を有する場合はそのモノマー類の樹脂中の濃度、ウレタン基やウレア基等の水素結合生成成分の濃度等が挙げられる。
例えば、樹脂の分子量が大きいと貯蔵弾性率G’は大きくなる傾向を示し、少ないと小さくなる傾向を示す。
また、樹脂のガラス転移温度が高いと貯蔵弾性率G’は大きくなる傾向を示し、低いと貯蔵弾性率G’は小さくなる傾向を示す。
更に、3官能以上のモノマー類による架橋構造を有する場合はそのモノマー類の樹脂中の濃度が高いと貯蔵弾性率G’は大きくなる傾向を示し、低いと貯蔵弾性率G’は小さくなる傾向を示す。
【0040】
動的粘弾性測定試験に供するインク乾燥膜はインクを40℃で12時間、150℃で12時間乾燥の後、150℃で3時間減圧乾燥させることで得ることができる。25℃における動的粘弾性測定に用いる試験片の寸法は、膜厚0.2mm~0.5mm、長さ20mm、幅4.5mm~5.5mmである。試験片の寸法のうち、膜厚は乾燥させるインク濃度を調整することにより制御可能である。
インク乾燥膜の25℃における動的粘弾性測定は、冷凍機付ARES-G2(TAInstruments社製)を用い測定を行う。試験片固定用治具としてトーションクランプを用い、20℃にて試験片を装置にセットした後、2gのAuto tensionをかけた状態で-70℃まで冷却する。-70℃に到達してから10分間後、以下の測定条件にて測定を行う。得られた測定データから25℃における貯蔵弾性率を読み取る。
[測定条件]
・測定モード:temperature sweep
・測定温度範囲:-70℃~160℃
・昇温速度:4℃/min
・周波数:1Hz
・初期歪:0.1%
・Auto tension:2g
【0041】
<<樹脂>>
樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記樹脂としては、前記種類の樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよい。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、前記有機溶剤や前記色材等の材料と混合して前記インクを得ることが可能である。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
これらの中でも、前記インク中に含有する前記樹脂の種類としては、ポリウレタン樹脂が好ましい。
前記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応性生物である。ポリウレタン樹脂の特徴として、凝集力が弱いポリオール成分からなるソフトセグメントと、凝集力の強いウレタン結合からなるハードセグメントのそれぞれの性能を発揮することが挙げられる。ソフトセグメントはやわらかく、引き伸ばしや折り曲げなど基材の変形に強い。一方、ハードセグメントは基材に対する密着性が高く、堅牢性に優れている。
【0044】
前記ポリウレタン樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0045】
前記インクにおける前記樹脂の含有量としては、前記インク全量に対して、5.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
前記樹脂が記録媒体に充分に密着し、高い堅牢性が得られるとともに、記録媒体が布帛である場合にインクが布帛表面に留まりやすくなり、高い発色性が得られるという観点から、インク中の前記樹脂の含有量は5.0質量%以上であることが好ましい。
また、インクの保存安定性の観点から、前記インク中の前記樹脂の含有量は15.0質量%以下であることが好ましい。
【0046】
前記インク中の固形分全量に対する前記樹脂の含有量としては、45質量%以上60質量%以下が好ましい。
前記樹脂が記録媒体に充分に密着し、高い堅牢性が得られるとともに、記録媒体が布帛である場合にインクが布帛表面に留まりやすくなり、高い発色性が得られるという観点から、前記インク中の固形分全量に対する前記樹脂の含有量は45質量%以上であることが好ましい。
また、インクの保存安定性の観点から、前記インク中の固形分全量に対する前記樹脂の含有量は60質量%以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、前記インク中の固形分としては、前記樹脂や前記色材の粒子等が含まれる。
【0047】
前記インクにおける前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0048】
<<色材>>
本発明の処理液とインクのセットにおけるインクは色材を含む。
前記インクにおける前記色材としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料、顔料分散体、染料などを使用することが可能である。
【0049】
-顔料-
前記インクにおける前記顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、顔料として、混晶を使用してもよい。
【0050】
前記インクにおける前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色等の光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0051】
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0052】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
【0053】
前記インクにおける顔料は、これらの顔料のうち、前記有機溶媒や水等の溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0054】
前記顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
また、カラー用の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213;C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38;C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。
【0055】
-顔料分散体-
前記顔料分散体は、水、有機溶剤、顔料、及び顔料分散剤、更に必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。
前記顔料を分散させて顔料分散体を調製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記顔料に、水、有機溶剤等の材料を混合して製造する方法、前記顔料と、その他水や顔料分散剤等を混合して顔料分散体としたものに、水、有機溶剤等の材料を混合して製造する方法などが挙げられる。
前記分散は、分散機を用いることが好ましい。
また、前記顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0056】
前記顔料分散体における前記顔料の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度等の画像品質も高くなる点から、最大個数換算で、前記顔料分散体における前記顔料の粒径の最大頻度が20nm以上500nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることがより好ましい。
前記顔料分散体における前記顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0057】
前記顔料分散体における前記顔料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上60質量%以下が好ましく、0.1質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0058】
-染料-
前記インクにおける前記染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
前記染料の具体例としては、C.I.アシッドイエロー17、23、42、44、79、142;C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289;C.I.アシッドブルー9、45、249;C.I.アシッドブラック1、2、24、94;C.I.フードブラック1、2;C.I.ダイレクトイエロー1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173;C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、227;C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、199、202;C.I.ダイレクドブラック19、38、51、71、154、168、171、195;C.I.リアクティブレッド14、32、55、79、249;C.I.リアクティブブラック3、4、35などが挙げられる。
【0060】
前記インクにおける前記色材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、発色性、吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0061】
前記顔料を分散して前記インクを得る方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて前記顔料を分散させる方法などが挙げられる。
【0062】
前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、前記顔料(例えば、カーボン)に、スルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法などが挙げられる。
【0063】
前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、例えば、前記顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法などが挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、前記インクに配合される顔料は、全てが樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、樹脂に被覆されていない顔料や、部分的に樹脂に被覆された顔料が前記インク中に分散していてもよい。
【0064】
分散剤を用いて前記顔料を分散させる方法としては、例えば、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤を用いて分散する方法、公知の高分子型の分散剤を用いて分散する方法などが挙げられる。
前記分散剤としては、特に制限はなく、顔料に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを使用することが可能である。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記分散剤としては、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。前記分散剤の市販品としては、例えば、商品名で、ニューカルゲンD-1203(竹本油脂株式会社製、ノニオン系界面活性剤)などが挙げられる。また、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
【0065】
<<その他の成分>>
本発明のインクは必要に応じてその他の成分を添加してもよい。
溶媒としては、水以外のものを添加してもよく、例えば水溶性有機溶剤などが挙げられる。
添加剤は、必要に応じて添加してよい。
【0066】
-水-
前記インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0067】
-有機溶剤-
前記インクに使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0068】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0069】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0070】
前記インクにおける前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記インク全量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0071】
-添加剤-
前記インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えてもよい。
【0072】
--界面活性剤--
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が、使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0073】
前記インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.05質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0074】
なお、本発明の処理液及びインク中に含有されている有機溶剤、樹脂、顔料、その他成分等の定性方法、定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。例えば、前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置としては、例えば、GCMS-QP2020NX(株式会社島津製作所製)などが挙げられる。
インクに含まれる水分量は、一般的な方法として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による揮発成分の定量や、熱重量・示差熱同時測定法(TG-DTA)による質量変動等により測定することができる。
【0075】
--消泡剤--
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0076】
--防腐防黴剤--
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0077】
--防錆剤--
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0078】
--pH調整剤--
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0079】
<印刷装置及び印刷方法>
本発明の印刷方法は、本発明の処理液を記録媒体に付与する、処理液付与工程を含み、前記処理液を付与した記録媒体に、顔料及び樹脂を含有するインクを付与するインク付与工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0080】
本発明の処理液とインクのセットは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、印刷装置、印刷方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付与可能なものを意味する。更に、この記録装置には、卓上型や、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の印刷装置、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタ等も含まれる。
【0081】
図1に、印刷装置の一例を示す。
なお、本発明の印刷方法におけるインクを付与する工程と、処理液を付与する工程とは同じ印刷機器で実施してもよいし、別々の印刷機器で実施してもよい。
図1の画像形成装置100は、処理液付与部110、インク付与部120、制御手段160、記憶部170を有し、必要に応じて後処理液付与部130、乾燥部140、及び搬送部150を有していてもよい。処理液付与部110は記録媒体Mに処理液を付与する。
処理液付与部110における塗工方法は、特に制限無く公知のあらゆる方法を用いる事ができる。例えば、処理液中に記録媒体を浸漬させる方法(浸漬塗布法)、処理液をロールコーター等で塗布する方法(ローラー塗布法)、処理液をスプレー装置等によって噴射する方法(スプレー塗布法)、処理液をインクジェット方式により噴射する方法(インクジェット塗布法)等が挙げられ、いずれの方法も使用してもよい。これらの中でも、装置構成が簡便であり、処理液の付与が迅速に行えるという点から、浸漬塗布法、ローラー塗布法、スプレー塗布法が好ましい。
【0082】
インク付与部120は、記録媒体Mの処理液が付与された面に、インクを付与する。
インク付与部120としては、例えば公知のインクジェットヘッド等を用いることができる。
インク付与部120は、任意の色のインクを吐出するヘッドであってよく、例えば、必要に応じてY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)、W(ホワイト)の色のインクを吐出するヘッドを設けてもよい。
【0083】
記憶部170は例えばHDDなどであり、印刷する画像等のデータを保持する。画像形成装置の制御手段160は、例えばCPUなどであり、記憶部170や各制御部への指示を出す。
処理液付与制御部161は、制御手段160からの指示に応じて処理液付与部110の駆動を制御する。
インク付与制御部162は、制御手段160からの指示に応じてインク付与部120の駆動を制御する。
乾燥制御部163は、制御手段160からの指示に応じて乾燥部140の駆動を制御する。
【0084】
後処理液付与部130は、記録媒体Mのインクジェットインクが付与された面のインクジェットインクが付与された領域に後処理液を付与できればよく、例えば、インクジェットヘッド以外にも、スプレーやローラーなどを用いることができる。
なお、後処理液付与部130は、省略してもよい。
【0085】
後処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0086】
本発明における画像形成装置は、処理液、インクが付与された記録媒体Mの印字面や裏面を乾燥させる乾燥部140を有していてもよい。必要に応じて、後処理液を含むその他液体が付与された後や、各液体の付与前後に記録媒体Mを乾燥させる工程を含んでもよい。加熱に用いる装置としては、多くの既知の装置を使用することができる。例えば、温風加熱、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥、ヒートプレス、定着ローラー等の装置が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。乾燥の強度は基材の厚さや材質など熱収縮特性に応じて設定されるのが好ましい。堅牢性向上、加熱時間短縮の観点からヒートプレスが好ましい。加熱温度は150℃以上であることが好ましく、150℃以上200℃以下程度であることがより好ましい。
なお、乾燥部140は、省略してもよい。
【0087】
搬送部150は、記録媒体Mを搬送する。
搬送部150としては、記録媒体Mを搬送することが可能であれば、特に限定されないが、搬送ベルト、プラテンなどが挙げられる。
なお、搬送部150は、必要に応じて省略してもよい。
【0088】
なお、画像形成装置100は、記録媒体Mに形成された画像を加熱定着させる定着部を必要に応じて有してもよい。定着部としては、特に限定されないが、定着ローラーなどが挙げられる。
【0089】
卓上プリンタを画像形成装置として用いる場合には、前処理液付与部、後処理液付与部の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W)などのインクの場合と同様に、前処理液や後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
【0090】
<画像形成装置100の動作例>
画像形成装置100の動作について説明する。図2は、画像形成装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0091】
画像形成開始の指示を受け付けると、画像形成装置100は画像形成動作を開始する。
【0092】
ステップS1にて、画像形成装置100の搬送部150は記録媒体Mを搬送し、処理液付与部110は記録媒体Mに対して処理液を付与する。この際、処理液付与部110は、画像を形成する部分のみに対して処理液を付与してもよいし、記録媒体全面に付与してもよい。
処理液付与部110が画像を形成する部分のみに対して処理液を付与する際には、処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて付与範囲を決定し、記録媒体Mに処理液を付与する。
処理液付与部110が記録媒体全面に対して処理液を付与する際には、処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて記録媒体全面に処理液の付与を行う。
【0093】
ステップS2では、搬送部150により搬送された、処理液が付与された記録媒体Mに対して、インク付与部120がインクを吐出する。この際、インク付与部120は、処理液が吐出された部分のみに対してインクを吐出してもよいし、記録媒体全面に吐出してもよい。ただし、本発明においては処理液が付与された部分にインク付与部120がインクを吐出することが好ましい。
画像を形成する部分のみに対してインクを吐出する際には、インク付与制御部162や制御手段160からの指示に応じて吐出範囲を決定し、インク付与部120がインクを吐出する。
インク付与部120が記録媒体全面に対してインクを吐出する際には、インク付与制御部162や制御手段160からの指示に応じて記録媒体全面にインクの吐出を行う。
【0094】
画像形成装置100には、記録媒体の位置や場所の認識を行うセンサーを設けていてもよい。記録媒体の位置や場所の認識を行う前記センサーを設けることで、処理液付与部110及びインク付与部120が、ステップS1及びステップS2にてより効率的に、処理液及びインクを記録媒体に付与することが可能となる。
【0095】
ステップS3では処理液及びインクを付与した記録媒体を搬送部150が乾燥部140に搬送し、乾燥させる。ステップS3及び乾燥部140は、本発明における画像形成方法及び画像形成装置に必須ではないが、あるとより好ましい。
ステップS3を設けない場合には、ユーザーが手動で別の乾燥装置を用いて乾燥を行ってもよいし、乾燥工程を設けなくてもよい。
乾燥時間や乾燥温度は、一定であってもよく、処理液及びインクの付与量に応じて調節してもよい。処理液及びインクの付与量に応じて調節することがより好ましい。
乾燥時間や乾燥温度を調節する場合には、乾燥制御部163や制御手段160からの指示に応じて乾燥時間や乾燥温度を決定し、記録媒体の乾燥を行う。
乾燥時間や乾燥温度が一定の場合には、乾燥制御部163や制御手段160からの指示に応じて記録媒体の乾燥を行う。
【0096】
画像形成装置100は、記録媒体に付与された処理液及びインクの付与量の認識を行うセンサーを設けていてもよい。前記センサーを設けることで、処理液及びインクが記録媒体に付与された量に応じて乾燥時間や乾燥温度を設定、調節することが可能となるため、ステップS3にて乾燥部140がより効率的に記録媒体を乾燥させることができる。
処理液及びインクの付与量を認識する前記センサーは、実際に記録媒体に付着している液体量を認識するものであってもよいし、各付与部にて記録媒体に吐出された量を計測して認識するものであってもよい。
【0097】
記録媒体の乾燥を行った後、画像形成装置による画像形成工程は終了するが、必要に応じて記録媒体を画像形成装置から取り出す工程や、記録媒体を搬送する工程があってもよい。
【0098】
<<記録媒体>>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
本発明において、記録に用いる記録媒体としては布帛が好ましい。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。よく、繊維の太さや網目の大きさに制限はない。
通常、ポリエステル等の合成繊維に対して発色性と堅牢性を両立させることは難しいが、本発明ではポリエステル等の合成繊維に対しても良好な効果を示す。
【0099】
<<記録物>>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明の処理液とインクのセットを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0100】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0101】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0102】
(ノニオン性エチレン酢酸ビニル樹脂エマルションAの調製)
窒素吹き込み口、温度計、及び攪拌機を備えた耐圧50リットルオートクレーブにPVA-1{重合度1700、けん化度88モル%、株式会社クラレ製、PVA-217}を1061g、イオン交換水19440g、L(+)酒石酸ナトリウム12.7g、酢酸ナトリウム10.6g、塩化第一鉄0.4gを仕込み、95℃で完全に溶解し、その後60℃に冷却し、窒素置換を行った。
次に酢酸ビニル22360gを仕込んだ後、エチレンを45kg/cmまで加圧して導入し、0.4%過酸化水素水溶液1000gを5時間かけて圧入し、60℃で乳化重合を行った。
重合初期のpHを確認したところ、pH=5.2であった。残存酢酸ビニル量が10%となったところで、エチレンを放出し、エチレン圧力20kg/cmとし、3%過酸化水素水溶液50gを圧入し、重合を継続した。エマルジョン中の残存酢酸ビニルモノマー量が1.5%になった段階でエチレンを放出し冷却した。
冷却後、pHを確認したところpH=4.8であった。ついで亜硫酸水素ナトリウム20gを添加し、30℃、100mmHgの減圧下で、1時間脱エチレンした。
系を窒素で大気圧に戻した後、t-ブチルヒドロパーオキサイド10gを添加し2時間攪拌した。
重合終了時のpHを確認したところ、pH=4.7であった。このエマルジョンを濾過し、不揮発分を50%に調整してノニオン性エチレン-酢酸ビニル樹脂エマルジョンAを得た。
ノニオン性エチレン-酢酸ビニル樹脂エマルジョンAのTgをDSC(リガク社製、Thermo plus EV02/DSC)にて測定したところ0℃であった。
【0103】
(ノニオン性エチレン酢酸ビニル樹脂エマルションBの調製)
ノニオン性エチレン酢酸ビニル樹脂エマルションBとして、住化ケムテックス社製スミカフレックス401HQ(不揮発分:55%,Tg:-18℃)を用いた。
【0104】
(ノニオン性ウレタン樹脂エマルションAの調製)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、Mn1000のポリカーボネートポリオール(デュラノールT5651、旭化成ケミカルズ社製)を75g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)90g、アセトン200gを加え、75℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、水450gを徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン15gを水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約45%のウレタン樹脂エマルションAを得た。
【0105】
(カチオン性ウレタン樹脂エマルションBの調製)
カチオン性ウレタン樹脂エマルションBとして、スーパーフレックス650(第一工業製薬株式会社製)を用いた。
【0106】
<<処理液の調製>>
下記表1及び表2に示す処方及び配合量(質量%)で材料を混合攪拌し、0.8μmのフィルター(ザルトリウス社製、ミニザルト)で濾過することにより処理液1~17を得た。
使用した添加剤の詳細を以下に示す。
・BYK348(BYK社製、シリコーン系界面活性剤)
・プロキセルLV(アビシア社製、防腐剤)
【0107】
なお、表1及び表2に記載の有機酸塩は全て塩濃度、樹脂は固形分量で記載している。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
(ウレタン樹脂エマルションCの調製)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、Mn1000のポリカーボネートポリオール(デュラノールT5651、旭化成ケミカルズ社製)を150g、ジメチロールプロピオン酸20.0g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)120g、アセトン270gを加え、75℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを15g加えて中和した後、水900gを徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン15gを水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約26%のウレタン樹脂エマルションCを得た。
【0111】
(ウレタン樹脂エマルションDの調製)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、Mn500のポリカーボネートポリオール(デュラノールT5650E、旭化成ケミカルズ社製)を75g、ジメチロールプロピオン酸20.0g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)120g、アセトン270gを加え、75℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを15g加えて中和した後、水900gを徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン15gを水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約21%のウレタン樹脂エマルションDを得た。
【0112】
(ウレタン樹脂エマルションEの調製)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、Mn500のポリカーボネートポリオール(デュラノールT5650E、旭化成ケミカルズ社製)を75g、ジメチロールプロピオン酸20.0g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)120g、アセトン270gを加え、75℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを15g加えて中和した後、水900gを徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、ジエチレントリアミン8gを水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約21%のウレタン樹脂エマルションEを得た。
【0113】
(アクリル樹脂エマルションの調製)
スチレン48.4g、アクリル酸2エチルヘキシル58.3g、アクアロンHS-10(第一工業製薬株式会社製)1.5g、及びイオン交換水55gからなる混合物を、ホモミキサーを用いて乳化し、均一な乳白色の乳化液を得た。
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた1Lのフラスコ内に、予めイオン交換水、及び硫酸により調整しておいたpH3の水96gを仕込み、窒素を導入しつつ70℃に昇温した。
次いで、反応性乳化剤としての10%アクアロンHS-10(第一工業製薬株式会社製)水溶液3.1g、及び5%過硫酸アンモニウム水溶液3.0gを投入した後、予め調製しておいた前記乳化液を2.5時間かけて連続的に滴下した。また、滴下開始から3時間経過するまでの間、1時間毎に5%過硫酸アンモニウム水溶液0.7gを投入した。滴下終了後70℃で2時間熟成した後冷却し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7~8となるように調整し、アクリル樹脂エマルションを得た。
【0114】
(ブラック顔料分散体の調製)
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してブラック顔料分散体(顔料濃度:15質量%)を得た。
・カーボンブラック顔料(商品名:Monarch800、キャボット社製)・・・15質量部
・アニオン性界面活性剤(商品名:パイオニンA-51-B、竹本油脂株式会社製)・・・2質量部
・イオン交換水・・・83質量部
【0115】
<<インクの調製>>
下記表3に示す処方及び配合量(質量%)で材料を混合攪拌し、0.8μmのフィルター(ザルトリウス社製、ミニザルト)で濾過することによりインク1~9を得た。
インク1~9の貯蔵弾性率G’も表3中に示す。
使用した添加剤の詳細を以下に示す。
・BYK348(BYK社製、シリコーン系界面活性剤)
・プロキセルLV(アビシア社製、防腐剤)
・AD01(Envirogem AD01、AIR PRODUCT社製)
【0116】
【表3】
【0117】
(処理液とインクのセット)
表4に示す処理液1~17とインク1~9とを組み合わせて、処理液とインクのセット1~26とした。
【0118】
【表4】
【0119】
(実施例1~21及び比較例1~5)
表5に示す実施例1~21、及び比較例1~5について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表5に示す。
【0120】
-処理液の保存安定性評価-
粘度計(RE-85L、東機産業株式会社製)を用いて各処理液について、25℃における粘度を測定し、各処理液における保管前粘度とした。
その後、調製した処理液を30mL容量の容器(商品名:ガラスバイヤルSV-30、日電理化硝子株式会社製)に入れ、70℃の恒温槽で2週間静置した。各処理液を取り出し、十分に室温に戻した後、保管前粘度の測定と同様に各処理液の粘度を測定した。そして、保管前粘度に対する2週間日放置後の粘度の増加率を計算し、粘度増加率から処理液の保存安定性を評価した。なお、A、Bが許容範囲である。
[評価基準]
A:粘度変化率が10%以内である
B:粘度変化率が10%を超え、20%以内である
C:粘度変化率が20%を超え、30%以内である
D:粘度変化率が30%を超えているか、凝集物が発生している
【0121】
-画像濃度評価-
実施例及び比較例の液体組成物のセットを、インクジェットプリンター(株式会社リコー製、Ri100)に充填し、処理液の付着量が1.6mg/cm、インクの付着量が1.9mg/cmとなるように調整後、トムス社製ポリエステル生地に対して、600×600dpiで処理液、インクの順にベタ印字を行った後、ヒートプレスにて165℃で90秒乾燥させて得られたサンプルのベタ部の濃度を分光測色計(X-Rite eXact、X-Rite社製)を用いて測定し、以下の基準で判断した。なお、A、Bが許容範囲である。
[評価基準]
A:画像濃度1.3以上
B:画像濃度1.20以上1.3未満
C:画像濃度1.1以上1.20未満
D:画像濃度1.1未満
【0122】
-摩擦堅牢性評価-
得られたベタ画像を日本工業規格(JIS)JIS L0849に準拠し学振型摩擦堅牢度試験機を用いて摩擦堅牢性試験(乾摩擦)を行い、綿布への転写ODを測色し下記評価基準に基づいて判断した。なお、A、Bが許容範囲である。
[評価基準]
A:試験後の綿布の転写ODが0.15未満
B:試験後の綿布の転写ODが0.15以上0.20未満
C:試験後の綿布の転写ODが0.20以上
【0123】
-洗濯堅牢性評価-
AATCC 61 2Aに準拠し洗濯堅牢性試験を行い、下記評価基準に基づいて評価した。なお、A、B、Cが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:等級が4.5級以上
B:等級が4.0級
C:等級が3.5級
D:等級が3.0級以下
【0124】
【表5】
【符号の説明】
【0125】
100 液体付与装置
110 処理液付与部
120 インク付与部
130 後処理液付与部
140 乾燥部
150 搬送部
160 制御手段
161 処理液付与制御部
162 インク付与制御部
163 乾燥制御部
170 記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【特許文献1】特開2019-167657号公報
【特許文献2】特開2015-161043号公報
図1
図2
図3