(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139693
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】アンテナ指向性測定装置、アンテナ指向性測定システム、アンテナ指向性測定装置の制御方法、及び、アンテナ指向性測定装置の制御方法を実行させるためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 29/10 20060101AFI20230927BHJP
H01Q 5/40 20150101ALI20230927BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20230927BHJP
H01Q 21/20 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G01R29/10 B
G01R29/10 E
H01Q5/40
H01Q21/24
H01Q21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045356
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 悟史
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA08
5J021AA11
5J021AB02
5J021AB05
5J021JA10
(57)【要約】
【課題】被測定アンテナの長さ方向に対する水平面指向性の測定時間を短縮可能なアンテナ指向性測定装置を提供する。
【解決手段】円周状に配置される複数のプローブアンテナに伝送される送信電波信号を生成する送信電波信号情報を出力する出力部と、受信電波信号から受信電波信号情報を入力する入力部と、アンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報から生成される受信電波信号情報から、アンテナの中心軸に対する同心円の円周方向のアンテナの指向性を推定する推定部と、送信電波及び受信電波の偏波方向を選択し、選択された偏波方向に対応するアンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力するように制御する選択制御部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周状に配置される複数のプローブアンテナに伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報を出力する出力部と、
前記送信電波信号が伝送される前記プローブアンテナから放射される送信電波を受信するアンテナであって、前記複数のプローブアンテナによって形成される円周の中心軸に沿って移動可能に配置される前記アンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力する入力部と、
前記入力部から入力される前記受信電波信号情報に、前記アンテナが前記中心軸の方向に沿って移動した測定点からの受信電波に対応する情報が含まれる場合に、前記アンテナに発生する前記受信電波信号から生成される前記受信電波信号情報から、前記アンテナの前記中心軸に対する同心円の円周方向の前記アンテナの指向性を推定する推定部と、
前記送信電波及び前記受信電波の偏波方向を選択し、選択された前記偏波方向に対応する前記アンテナに発生する前記受信電波信号から生成される前記受信電波信号情報を入力するように制御する選択制御部と、
を備えるアンテナ指向性測定装置。
【請求項2】
円周状に配置される複数のプローブアンテナによって形成される円周の中心軸に沿って移動可能に配置されるアンテナに伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報を出力する出力部と、
前記送信電波信号が伝送される前記アンテナから放射される送信電波を受信する前記プローブアンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力する入力部と、
前記入力部から入力される前記受信電波信号情報に、前記アンテナが前記中心軸の方向に沿って移動した測定点からの前記送信電波に対応する情報が含まれる場合に、前記プローブアンテナに発生する前記受信電波信号から生成される前記受信電波信号情報から、前記アンテナの前記中心軸に対する同心円の円周方向の前記アンテナの指向性を推定する推定部と、
前記送信電波及び受信電波の偏波方向を選択し、選択された前記偏波方向に対応する前記プローブアンテナに発生する前記受信電波信号から生成される前記受信電波信号情報を入力するように制御する選択制御部と、
を備えるアンテナ指向性測定装置。
【請求項3】
前記選択制御部は、前記偏波方向を直交する2方向として選択し、一つの測定点において前記2方向の前記受信電波信号を受信し、前記受信電波信号情報を入力するように制御する請求項1又は2に記載のアンテナ指向性測定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記プローブアンテナから前記アンテナが受信した受信電波の前記受信電波信号情報、又は、前記アンテナから前記プローブアンテナが受信した受信電波の前記受信電波信号情報から、前記アンテナの中心軸方向の逆フーリエ変換を実行した後に、測定点の前記アンテナの中心軸方向の補正処理を実行する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアンテナ指向性測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアンテナ指向性測定装置と、
前記プローブアンテナと、
前記アンテナと、
前記アンテナを前記アンテナの中心軸方向に、同心円状に配置された前記プローブアンテナの内側を通過させるように前記アンテナを移動させる動作を実行可能なポジショナと、
を備えるアンテナ指向性測定システム。
【請求項6】
前記プローブアンテナは水平偏波電波と垂直偏波電波とを送受信できるように、水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナとが交差するように取り付けられて構成され、前記アンテナも水平偏波電波と垂直偏波電波とを送受信できるように構成され、
前記選択制御部は一つの測定点で、前記水平偏波電波を送受信できるように前記プローブアンテナ及び前記アンテナの前記交差するアンテナの一方を選択して前記受信電波信号情報を入力し、前記垂直偏波電波を送受信できるように前記プローブアンテナ及び前記アンテナの前記交差するアンテナの他方を選択して前記受信電波信号情報を入力する請求項5に記載のアンテナ指向性測定システム。
【請求項7】
前記円周状に配置される、電波を送信または受信する各プローブアンテナの電波の送受信中心位置と、当該電波を受信または送信する前記アンテナの当該電波の送受信中心位置との対応関係は、
隣接する前記プローブアンテナの送受信中心位置間の中心角と、前記アンテナの隣接する送受信中心位置間の中心角とが一致し、前記アンテナの隣接する送受信中心位置間の前記アンテナのZ軸方向の距離が同一又は異なる請求項5又は6に記載のアンテナ指向性測定システム。
【請求項8】
前記アンテナは、ローバンド放射素子部とハイバンド放射素子部とを備え、
前記ハイバンド放射素子部から送受信される電波の周波数帯域は、前記ローバンド放射素子部から送受信される電波の周波数帯域よりも高く、前記ハイバンド放射素子部の周波数帯域はギガHz帯域を含む請求項5乃至7のいずれか一項に記載のアンテナ指向性測定システム。
【請求項9】
円周状に配置される複数のプローブアンテナに伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報を出力する出力ステップと、
前記送信電波信号が伝送される前記プローブアンテナから放射される送信電波を受信するアンテナであって、前記複数のプローブアンテナによって形成される円周の中心軸に沿って移動可能に配置される前記アンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力する入力ステップと、
前記入力ステップにおいて入力される前記受信電波信号情報に、前記アンテナが前記中心軸の方向に沿って移動した測定点からの受信電波に対応する情報が含まれる場合に、前記アンテナに発生する受信電波信号から生成される前記受信電波信号情報から、前記アンテナの前記中心軸に対する同心円の円周方向の前記アンテナの指向性を推定する推定ステップと、
前記送信電波及び前記受信電波の偏波方向を選択し、選択された前記偏波方向に対応する前記アンテナに発生する前記受信電波信号から生成される前記受信電波信号情報を入力するように制御する選択制御ステップと、
を備えるアンテナ指向性測定装置の制御方法。
【請求項10】
複数のプローブアンテナによって形成される円周の中心軸に沿って移動可能に配置されるアンテナに伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報を出力する出力ステップと、
前記送信電波信号が伝送される前記アンテナから放射される送信電波を受信する前記プローブアンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力する入力ステップと、
前記入力ステップにおいて入力される前記受信電波信号情報に、前記アンテナが前記中心軸の方向に沿って移動した測定点からの送信電波に対応する情報が含まれる場合に、前記プローブアンテナに発生する受信電波信号から生成される前記受信電波信号情報から、前記アンテナの前記中心軸に対する同心円の円周方向の前記アンテナの指向性を推定する推定ステップと、
前記送信電波及び受信電波の偏波方向を選択し、選択された前記偏波方向に対応する前記プローブアンテナに発生する前記受信電波信号から生成される前記受信電波信号情報を入力するように制御する選択制御ステップと、
を備えるアンテナ指向性測定装置の制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、請求項9又は10に記載のアンテナ指向性測定装置の制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ指向性測定定置、アンテナ指向性測定システム、アンテナ指向性測定装置の制御方法、及び、アンテナ指向性測定装置の制御方法を実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナの指向性の測定は、通常は遠方界測定法で行われている。遠方界測定法は指向性を直接測定するので、複雑な解析が不要であるという長所がある。しかしながら、アンテナが大きい場合は屋外で行うことになるので、地面や周囲の反射等による誤差が問題となる。また、アンテナから十分遠方で測定する必要があり、実際に必要な測定距離を確保できないことも多く、さらに雨、雪、風等の天候の影響で制約を受け、他の無線回線との干渉が生じる等の短所がある。
【0003】
そのため、遠方界測定に代わり、アンテナ近傍の電界(または電磁界)の分布を測定し、厳密な電磁界理論に基づいてアンテナの遠方界指向性や利得を計算する近傍界測定(Near-Field Measurement:NFM)法が利用されることがある。
【0004】
近傍界測定法は、走査システムや、電波暗室、計算のためのコンピュータが必要である。しかしながら、近傍界測定法は、比較的小規模な電波暗室内で大口径アンテナの測定ができることや、安定した精度の高い測定が行えること、測定した角度範囲内のすべての情報を測定後に計算で求めることができる等の遠方界測定にない大きな長所を有する。
【0005】
例えば、下記の非特許文献1における円筒面走査法によるアンテナ近傍界測定システムによれば、被測定アンテナの延在方向に直交する円周上にプローブアンテナを配置し、被測定アンテナをステップ移動させて水平面指向性の測定を可能にできる。なお、円筒面走査法による、データ解析理論については、すでに公知の技術であるために詳細については省略する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】円筒面走査法によるアンテナ近傍界測定システムの開発(通信総合研究所季報 Vol.37 No.5 1991年12月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、円筒面走査法によるアンテナ近傍界測定システムでは、被測定アンテナの水平面指向性は、被測定アンテナの中心を円の中心とする同一円周上に配置したプローブアンテナが電波を受信することによって解析される。しかしながら、プローブアンテナによる電波の受信は、水平偏波及び垂直偏波を別個に受信する必要がある。すなわち、プローブアンテナによる電波の受信は、プローブアンテナの偏波方向及び接続ケーブルを手動で切り換えながら実行されるために、被測定アンテナの長さ方向の水平面指向性の測定には時間を要する。
【0008】
そこで、本発明は、被測定アンテナの長さ方向に対する水平面指向性の測定時間を短縮させることを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施形態によるアンテナ指向性測定装置は、円周状に配置される複数のプローブアンテナに伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報を出力する出力部と、送信電波信号が伝送されるプローブアンテナから放射される送信電波を受信するアンテナであって、複数のプローブアンテナによって形成される円周の中心軸に沿って移動可能に配置されるアンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力する入力部と、入力部から入力される受信電波信号情報に、アンテナが中心軸方向に沿って移動した測定点からの受信電波に対応する情報が含まれる場合に、アンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報から、アンテナの中心軸に対する同心円の円周方向のアンテナの指向性を推定する推定部と、送信電波及び受信電波の偏波方向を選択し、選択された偏波方向に対応するアンテナに発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力するように制御する選択制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。本発明の代表的な実施の形態によれば、被測定アンテナの長さ方向に対する水平面指向性の測定時間を短縮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る指向性を測定するアンテナ及びプローブアンテナの配置の概要構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るプローブアンテナの構成の一例を拡大して示す図である。
【
図3】本実施形態に係るプローブアンテナの配置構成の一例を拡大して示す図である。
【
図4】本実施形態に係る指向性を測定するアンテナのブロック構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るアンテナ指向性測定装置の一例を含むアンテナ指向性測定システムの構成例を示す図である。
【
図6A】本実施形態のプローブアンテナに係るリレーユニットと同軸切り替えスイッチとの接続関係の一例の一部を示す図である。
【
図6B】本実施形態のプローブアンテナに係るリレーユニットと同軸切り替えスイッチとの接続関係の一例の一部を示す図である。
【
図7】本実施形態のプローブアンテナに係るリレーユニットと同軸切り替えスイッチとの接続関係の一例の一部を示す図である。
【
図8】本実施形態の被測定アンテナに係るリレーユニットと同軸切り替えスイッチとの接続関係の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係るアンテナ指向性測定装置の一例を示すブロック図である。
【
図10】本実施形態に係る指向性を測定するアンテナが移動しながらプローブアンテナが実際に測定する当該アンテナの実測点の配置の一例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係るアンテナ指向性測定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0014】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0015】
<アンテナの配置例>
図1は、アンテナ指向性測定システムで使用される被測定用のアンテナ及びプローブアンテナの配置の一例を示す斜視図である。
【0016】
指向性を測定するアンテナ100は、略平行に配置されたレール24aとレール24bの敷設方向に移動可能なポジショナ23に搭載される。アンテナ100の長手方向(軸方向)は、レール24a、24bと略平行となるように搭載される。また、レール24aとレール24bは筐体22を通過して敷設されるので、アンテナ100も筐体22の中を通過することが可能となっている。
図1において、略平行に配置されたレール24a及びレール24bは筐体22の後方に図示されていないが敷設され、アンテナ100が筐体22を貫通できる程度の長さを有する。なお、レール24a及びレール24bを総称して、レール24と称する場合がある。
【0017】
筐体22は、電波を吸収する電波吸収体によって構成されることが好ましい。または、筐体22の内部が電波吸収体によって覆われ、アンテナ100又はプローブアンテナ11によって送受信される電波及び反射される電波が吸収される構造であることが好ましい。例えば、炭素材料や金属等の導電性材料を繊維状にし、樹脂に練り込む構成、カーボン粒子等をウレタンやゴムに混合した誘電体吸収材料による構成、フェライト等の磁性材料を使用する構成が電波吸収体の一例として挙げられる。
図1に示す例においては、後述するように、ピラミッド型電波吸収体21が筐体22の内部を覆っている。
【0018】
ピラミッド型電波吸収体21は、電波を吸収する電波吸収体によって構成されることが好ましい。ピラミッド型電波吸収体21は、吸収させたい最低周波数に合わせたピラミッド高さを選定すれば、形状から広帯域な吸収特性を有するために、周波数が高くなることにおいては特に制限はなく、ミリ波帯に至るまで良好な吸収性能を得ることが可能となる。ピラミッド型電波吸収体21は、発泡スチロールなどのビーズにグラファイトなどを含侵させてピラミッド形状を形成し、底面にフェライトタイルを貼ることによって構成することが可能である。しかしながら、ピラミッド型電波吸収体21の構造はこれに限定されるわけではなく、任意の電波吸収体材料及び製造方法を採用することが可能である。ピラミッド型電波吸収体21は、筐体22の内部を覆うように配置されることが可能である。
【0019】
ピラミッド型電波吸収体25a、25b、25c、25d、25e、25fは、アンテナ100又はプローブアンテナによって送受信される電波及び反射される電波が吸収される構造であることが好ましい。なお、ピラミッド型電波吸収体25a、25b、25c、25d、25e、25fを総称して、ピラミッド型電波吸収体25と称する場合がある。ピラミッド型電波吸収体25は、アンテナ指向性測定システムにおいて、指向性推定結果に影響を及ぼす可能性がある電波反射対の周囲に配置されることが好ましい。
【0020】
プローブアンテナ11a、11b、11c、11d、11e・・・11oは同一円周上に配置されることが好ましい。また、11aと11oとの間を除き、各プローブアンテナの間隔は約22.5度の等中心角で配置される。また、プローブアンテナ11a、11b、11c、11d、11e・・・11oを総称して、プローブアンテナ11と称する場合がある。アンテナ100はプローブアンテナ11によって形成される同心円の中心軸をレール24に沿って前後に移動することが可能に構成される。なお、プローブアンテナ11の位置は固定されていることが好ましい。プローブアンテナ11の詳細な構成は
図2において説明する。
【0021】
<プローブアンテナの構成例>
図2は、本実施形態に係るプローブアンテナの構成の一例を図示する。
図2は、本実施形態に係るプローブアンテナ11の代表としてプローブアンテナ11aの構成を示す。各プローブアンテナ11は、電波の水平偏波と垂直偏波を個別に送受信できるように、水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナとを備える。従来においては、プローブアンテナ11は、少なくとも90度回転し、直交する二平面の偏波を受信するように構成されていた。すなわち、従来のプローブアンテナは、
図2の水平偏波アンテナまたは垂直偏波アンテナのいずれかを備え、手動で90度回転させて直交する他の平面の偏波を受信するように構成されていた。または、従来のプローブアンテナは、直交するアンテナのケーブルを手動で切り替えて、水平偏波及び垂直偏波を送受信できるようにように構成されていた。したがって、手動によって回転又は切り替える際に、電波測定を一旦中止する必要があるために、測定処理に時間を要していた。
【0022】
しかし、本実施形態に係るプローブアンテナ11は、水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナとが交差するように取り付けられ、自動切り替えされるように構成される。
図2のプローブアンテナ11aは、水平偏波アンテナ11ahと垂直偏波アンテナ11avを直交するように取り付けている。水平偏波アンテナ11ahと垂直偏波アンテナ11avは、プリント基板の銅箔部分を利用したホーンアンテナによって構成されている。
【0023】
プリント基板サイズは、長さ約200mm×幅約220mmであり、周波数帯域は約0.7GHz~約2.2GHzである。水平偏波アンテナ11ahは水平偏波用基板11ahbに形成され、垂直偏波アンテナ11avは垂直偏波用基板11avbに形成されている。水平偏波アンテナ11ahには図示しない同軸コネクタが取り付けられ、水平偏波信号が同軸ケーブル11ahcを介して後述する同軸切り替えスイッチを介してネットワークアナライザに入力される。また、同様に、垂直偏波アンテナ11avにも同軸コネクタが取り付けられ、垂直偏波信号が同軸ケーブル11avcを介して後述する同軸切り替えスイッチを介してネットワークアナライザに入力される。他のプローブアンテナ11b、11c、11d、11e・・・11oについても、
図2に示すプローブアンテナ11aと同様の構成となっている。
【0024】
<プローブアンテナの配置構成例>
図3は、筐体22の内部で同一円周上に配置されることが好ましいプローブアンテナ11a、11b、11c、11d、11e・・・11oを示す。プローブアンテナ11aと11oとの間を除き、各プローブアンテナの間隔は約22.5度の等中心角で配置される。また、プローブアンテナ11b、11c、11d、11e・・・11oは、
図2に示したプローブアンテナ11aと同様の構成を有している。アンテナ100はプローブアンテナ11によって形成される同心円の中心軸をレール24に沿って前後に移動することが可能に構成される。なお、プローブアンテナ11の位置は固定されていることが好ましい。
【0025】
プローブアンテナ11aは、アンテナ100が所定の位置に移動すると、水平偏波アンテナ11ah及び垂直偏波アンテナ11avを同軸切り替えスイッチによって切り替えて、水平偏波及び垂直偏波を順番に送信する。なお、水平偏波及び垂直偏波の送信順番は固定して決められている必要はなく、任意の順番で送信することが可能である。
【0026】
また、プローブアンテナ11bは、アンテナ100が他の所定の位置に移動すると、水平偏波アンテナ11bh及び垂直偏波アンテナ11bvを同軸切り替えスイッチによって切り替えて、水平偏波及び垂直偏波を順番に送信する。上述した動作シーケンスをプローブアンテナ11c、11d、11e・・・11oまで実行する。
【0027】
<被測定用のアンテナの構成例>
図4は、指向性を測定するアンテナの構成の一例を示す。
図1に示されるアンテナ100の一例には、共用アンテナが挙げられる。
図4は、アンテナ100が共用アンテナである場合の一例をブロック図によって示す。
【0028】
アンテナ100は電波放射部110を含む。アンテナ100の被測定アンテナ入出力部130は、コネクタで実現される場合と、配線で実現される場合とがある。被測定アンテナ入出力部130がコネクタで実現される場合には、被測定アンテナ入出力部130は、アンテナ100の構成に含まれる。
【0029】
電波放射部110は、ローバンド放射素子部111及びハイバンド放射素子部112を備える。ローバンド放射素子部111とハイバンド放射素子部とでは、送受信する電波の周波数帯域が異なり、ハイバンド放射素子部の周波数帯域は、ローバンド放射素子部111の周波数帯域よりも周波数が高い。各周波数帯域は、ハイバンド放射素子部の周波数帯域が、ローバンド放射素子部111の周波数帯域の周波数よりも高ければ任意の値及び周波数範囲をシステムが設定することが可能である。また、周波数帯域の一部が重なることも可能である。本実施形態の各周波数帯域の一例としては、ハイバンド放射素子部の周波数帯域が1GHz以上であり、ローバンド放射素子部111の周波数帯域が1GHz以下であるが、上述したように、これらの周波数帯域に限定されることを意図しているわけではない。あくまでも本実施形態の説明の容易さから上記周波数帯を一例として説明している。また、ローバンド放射素子部111及びハイバンド放射素子部112ともに、電波を受信する機能を有することも可能である。すなわち、ハイバンド放射素子部112から送受信される電波の周波数帯域は、ローバンド放射素子部111から送受信される電波の周波数帯域よりも高く、ハイバンド放射素子部112の周波数帯域はギガHz帯域を含む。
【0030】
また、アンテナ100は、被測定アンテナ入出力部130を含む場合がある。被測定アンテナ入出力部130はローバンド入出力部131及びハイバンド入出力部132を備える。ローバンド入出力部131には、ローバンド垂直偏波信号Slvが入力され、ローバンド放射素子部111からローバンドの垂直に偏波された電波が放射されることが可能になる。また、ローバンド入出力部131には、ローバンド水平偏波信号Slhが入力され、ローバンド放射素子部111からローバンドの水平に偏波された電波が放射されることが可能になる。なお、ローバンド垂直偏波信号Slv及びローバンド水平偏波信号Slhは、ローバンド放射素子部111に入力された垂直に偏波された電波及び水平に偏波された電波の受信信号である場合もある。本実施形態では、ローバンド垂直偏波信号Slv及びローバンド水平偏波信号Slhが、ローバンド放射素子部111に入力された垂直に偏波された電波及び水平に偏波された電波の受信信号である場合について詳細に説明する。
【0031】
ローバンド放射素子部111は、
図2に示すプローブアンテナと同様に、直交する図示しないローバンド水平偏波アンテナ及びローバンド垂直偏波アンテナを含む。ローバンド垂直偏波信号Slvはローバンド垂直偏波アンテナに入力され、ローバンド水平偏波信号Slhはローバンド水平偏波アンテナに入力される。また、上述したように、ローバンド垂直偏波アンテナの受信信号がローバンド垂直偏波信号Slvとなり、ローバンド水平偏波アンテナの受信信号がローバンド水平偏波信号Slhとなり、入出力が逆転する場合もある。本実施形態では、ローバンド垂直偏波アンテナの受信信号がローバンド垂直偏波信号Slvとなり、ローバンド水平偏波アンテナの受信信号がローバンド水平偏波信号Slhとなる場合について詳細に説明する。
【0032】
同様に、ハイバンド入出力部132には、ハイバンド垂直偏波信号Shvが入力され、ハイバンド放射素子部112からハイバンドの垂直に偏波された電波が放射されることが可能である。また、ハイバンド入出力部132には、ハイバンド水平偏波信号Shhが入力され、ハイバンド放射素子部112からハイバンドの水平に偏波された電波が放射されることが可能である。なお、ハイバンド垂直偏波信号Shv及びハイバンド水平偏波信号Shhは、ハイバンド放射素子部112に入力された垂直に偏波された電波及び水平に偏波された電波の受信信号である場合もある。本実施形態では、ハイバンド垂直偏波信号Shv及びハイバンド水平偏波信号Shhが、ハイバンド放射素子部112に入力された垂直に偏波された電波及び水平に偏波された電波の受信信号である場合について詳細に説明する。なお、被測定アンテナ入出力部130は同軸ケーブル用のコネクタである場合がある。また、被測定アンテナ入出力部130、及び、電波放射部110のそれぞれの間の配線は、インピーダンス整合を取りながら、同軸ケーブルや基板パターン回路によって接続されることも可能である。
【0033】
ハイバンド放射素子部112も、
図2に示すプローブアンテナと同様に、直交する図示しないハイバンド水平偏波アンテナ及びハイバンド垂直偏波アンテナを含む。ハイバンド垂直偏波信号Shvはハイバンド垂直偏波アンテナに入力され、ハイバンド水平偏波信号Shhはハイバンド水平偏波アンテナに入力される。また、上述したように、ハイバンド垂直偏波アンテナの受信信号がハイバンド垂直偏波信号Shvとなり、ハイバンド水平偏波アンテナの受信信号がハイバンド水平偏波信号Shhとなり、入出力が逆転する場合もある。本実施形態では、ハイバンド垂直偏波アンテナの受信信号がハイバンド垂直偏波信号Shvとなり、ハイバンド水平偏波アンテナの受信信号がハイバンド水平偏波信号Shhとなる場合について詳細に説明する。
【0034】
<アンテナ指向性測定システムの構成例>
図5は本実施形態に係るアンテナ指向性測定システムの構成の一例を示す図である。
【0035】
アンテナ指向性測定システム1000は、アンテナ100、アンテナ指向性測定装置200、リレーユニット310、ネットワークアナライザ320、ポジショナ制御部330、及び、ポジショナ23を備える。また、アンテナ指向性測定システム1000は、その他に、スイッチSW1、スイッチSW2、レール24a、24b、筐体22、及び、筐体22に含まれる図示しないプローブアンテナ11を備える。なお、リレーユニット310には複数のリレーユニットが含まれていてもよい。本実施形態では、リレーユニット310にはリレーユニット1及びリレーユニット2が含まれる形態について説明する。また、スイッチSW1及びスイッチSW2の一例には、同軸切り替え(切替)スイッチが挙げられ、本実施形態ではスイッチSW1及びスイッチSW2を同軸切替スイッチとして説明する。スイッチSW1には、後述する水平偏波のための同軸切替スイッチ12(
図6A)、14、16(
図6B)、図示しない垂直偏波のための同軸切替スイッチ11、13、15、及び、同軸切替スイッチ12から16のいずれか一つを選択する同軸切替スイッチ17(
図7)が含まれる。また、スイッチSW2には、前述した、ローバンド垂直偏波信号Slv、ローバンド水平偏波信号Slh、ハイバンド垂直偏波信号Shv、ハイバンド水平偏波信号Shhのいずれか一つを選択する同軸切替スイッチ18(
図8)が含まれる。
【0036】
なお、アンテナ指向性測定装置200とリレーユニット310とは制御線Sc1によって接続され、アンテナ指向性測定装置200とポジショナ制御部330とは制御線Sc2によって接続される。制御線Sc1は、主に、電波の送受信を実行するアンテナを決定するために使用されることが可能である。また、制御線Sc2は、電波の送受信を実行する場所に、ポジショナ23がアンテナ100を移動させるために使用されることが可能である。
【0037】
また、リレーユニット310とスイッチSW1とは制御線Sc4によって接続され、リレーユニット310とスイッチSW2とは制御線Sc5によって接続される。上述したように、スイッチSW1及びスイッチSW2の一例には、同軸切替スイッチが挙げられる。同軸切替スイッチは、リレーユニットの制御線の出力信号によって、入力端子と接続される出力端子が選択され得る。例えば、制御線Sc4の出力信号によって、ネットワークアナライザ320と接続される水平又は垂直方向のプローブアンテナ11が選択され得る。また、例えば、制御線Sc5の出力信号によって、ネットワークアナライザ320と接続される水平又は垂直方向のハイバンド又はローバンドのアンテナ100が選択され得る。詳細な説明は後述する。
【0038】
さらに、アンテナ指向性測定装置200とネットワークアナライザ320とはデータ線Sd8によって接続される。ネットワークアナライザ320に入力された受信電波は受信電波信号情報としてデータ線Sd8を介してアンテナ指向性測定装置200に入力される。具体的には、プローブアンテナ11から放射された電波はアンテナ100において受信される。アンテナ100で受信された電波は、受信電波信号として、スイッチSW2を介してデータ線Sd5によってネットワークアナライザ320に入力される。データ情報は、上述したように、データ線Sd8によってアンテナ指向性測定装置200とネットワークアナライザ320との間で入出力される。
【0039】
以上説明した、制御線Sc1~Sc2、Sc4~Sc5、及び、データ線Sd1~データ線Sd5によって伝送される制御信号及びデータについて、アンテナ指向性測定システム1000の動作フローに基づいて詳細に説明する。
【0040】
なお、アンテナの指向性は、送信時と受信時で可逆性が成り立ち等しくなることから、アンテナ指向性測定システム1000の構成例では、プローブアンテナ11を送信アンテナとし、アンテナ100を受信アンテナとして、以下の説明をする。また、以下の説明においては、アンテナ指向性測定システム1000の動作及び動作手順を中心に説明し、各機能ブロックの説明は必要に応じて適宜行う。なお、上述したように、プローブアンテナ11を受信アンテナとし、アンテナ100を送信アンテナとすることも可能であるが、この場合についての詳細な説明は省略する。
【0041】
最初に、アンテナ指向性測定システム1000において、アンテナ指向性測定装置200がトリガ信号を生成する。アンテナ指向性測定装置200は、当該トリガ信号を制御線Sc2を介してポジショナ制御部330に送信する。当該トリガ信号を受信したポジショナ制御部330は、データ線Sd1を介してポジショナ23の位置情報を読み込み、ポジショナ23に搭載されたアンテナ100を筐体22の内部に移動させる。ポジショナ制御部330は、プローブアンテナ11からの電波を受信できる位置にアンテナ100を移動させる。プローブアンテナ11からの電波を受信できる位置にアンテナ100を移動させたポジショナ23は、受信準備完了信号をポジショナ制御部330を介してアンテナ指向性測定装置200に送信する。
【0042】
受信準備完了信号を受信したアンテナ指向性測定装置200は、測定開始信号を制御線Sc1を介してリレーユニット310、及び、制御線Sc2を介してポジショナ制御部330に送信する。測定開始信号を受信したリレーユニット310は、スイッチSW1及びスイッチSW2のスイッチ回路を切り替えて、送信アンテナ及び受信アンテナを決定する。また、アンテナ指向性測定装置200は、プローブアンテナ11に伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報をネットワークアナライザ320に出力する。なお、アンテナ100は、上述したように、円周状に配置されるプローブアンテナ11によって形成される円周の中心軸Zに沿って移動可能に配置される。ネットワークアナライザ320は、送信電波信号情報から送信電波信号を生成する送信電波信号生成装置として機能する。そして、ネットワークアナライザ320は、スイッチSW1を介してプローブアンテナ11に送信電波信号を伝送し、送信電波信号がプローブアンテナ11に入力されることにより送信電波が放射される。なお、水平方向のプローブアンテナ11が選択される場合には、水平方向のアンテナ100が選択され、垂直方向のプローブアンテナ11が選択される場合には、垂直方向のアンテナ100が選択される。ただし、水平方向のプローブアンテナ11が選択される場合に、垂直方向のアンテナ100が選択され、垂直方向のプローブアンテナ11が選択される場合に、水平方向のアンテナ100が選択される場合もあり得る。
【0043】
プローブアンテナ11から放射された送信電波はアンテナ100が受信する。アンテナ100は、受信した電波をアナログ電気信号としての受信電波信号に変換する。受信電波信号はデータ線Sd4(Slv、Slh、Shv、Shh信号のいずれかの信号を伝送する)を介してスイッチSW2に入力され、データ線Sd5を介してSlv、Slh、Shv、Shh信号のいずれかの信号がネットワークアナライザ320に入力される。ネットワークアナライザ320において受信電波信号はA/D(Analog-to-digital)変換され、デジタル情報である受信電波信号情報としてデータ線Sd8を介してアンテナ指向性測定装置200に入力される。なお、この場合には、ネットワークアナライザ320は、受信電波信号情報生成装置として機能する。
【0044】
例えば、アンテナ指向性測定装置200は、プローブアンテナ11aの水平偏波アンテナ11ahを選択する信号をリレーユニット310に送信する。アンテナ指向性測定装置200は、プローブアンテナ11aの水平偏波アンテナ11ahから放射された電波のアンテナ100のハイバンド水平偏波アンテナ又はローバンド水平偏波アンテナにおける受信電波信号情報をネットワークアナライザ320を介して受信する。次に、アンテナ指向性測定装置200は、プローブアンテナ11aの垂直偏波アンテナ11avを選択する信号をリレーユニット310に送信する。すると、アンテナ指向性測定装置200は、プローブアンテナ11aの垂直偏波アンテナ11avから放射された電波のアンテナ100のハイバンド垂直偏波アンテナ又はローバンド垂直偏波アンテナにおける受信電波信号情報をネットワークアナライザ320を介して受信する。
【0045】
なお、プローブアンテナ11aの水平偏波アンテナ11ah又は垂直偏波アンテナ11avからの偏波の放射順序は上述の順番に限定されるものではない、例えば、アンテナ指向性測定装置200は、垂直偏波アンテナ11avの偏波放射を先に実行し、次に、水平偏波アンテナ11ahの偏波放射を実行することも可能である。
【0046】
アンテナ100が、所定の距離を進むと、リレーユニット310は、制御線Sc4を介してスイッチSW1によってプローブアンテナ11bの水平偏波アンテナ11bh又は垂直偏波アンテナ11bvをON状態にする。また、リレーユニット310は、制御線Sc5を介してスイッチSW2によってアンテナ100のハイバンド垂直偏波アンテナ又はローバンド垂直偏波アンテナをON状態にする。そして、プローブアンテナ11aに隣接する同心円状に配置されたプローブアンテナ11bから水平偏波又は垂直偏波の送信電波が放射される。アンテナ指向性測定装置200は、プローブアンテナ11bから放射された水平偏波又は垂直偏波した電波のアンテナ100における受信電波信号情報をネットワークアナライザ320を介して受信する。すると、リレーユニット310は、制御線Sc4を介してスイッチSW1をOFF状態にし、及び、制御線Sc5を介してスイッチSW2をOFF状態にする。ポジショナ制御部330は、アンテナ100を筐体22の中をZ方向に移動させる。以上の動作を、プローブアンテナ11aからプローブアンテナ11oまで繰り返す。プローブアンテナ11の測定点とアンテナ100の位置関係については
図10において詳述する。
【0047】
なお、上記の所定の距離は、アンテナ指向性測定装置200が任意の値に設定することが可能である。ただし、プローブアンテナ11aからプローブアンテナ11oまでの測定の間は、上記の所定の距離は同一の値であることが好ましい。なお、プローブアンテナ11aからプローブアンテナ11oまでの測定の間は、アンテナ100は一定の速度で筐体22の中をZ方向に移動する場合があってもよい。
【0048】
<リレーユニットとスイッチSW1との接続関係の一例>
図6A及び
図6Bは、本実施形態のプローブアンテナに係るリレーユニット310とスイッチSW1に含まれる複数の同軸切り替えスイッチとの接続関係の一例の一部を示す図である。なお、
図6Aは、プローブアンテナ11aの水平偏波アンテナ11ahからプローブアンテナ11eの水平偏波アンテナ11ehの中から一つの水平偏波アンテナを選択する動作を説明するための図である。
【0049】
図6Aにおいて、アンテナ指向性測定装置200が出力する水平偏波アンテナ選択信号が制御線Sc1を介してリレーユニット2に入力される。例えば、水平偏波アンテナ選択信号がプローブアンテナ11aの水平偏波アンテナ11ahを選択する信号である場合には、リレー端子201がハイ状態となり、同軸切替スイッチ12のスイッチSW12aがON状態となる。したがって、水平偏波アンテナ11ahは信号線SW12Sと接続される。しかしながら、リレー端子201がハイ状態となると、
図6Bに示す同軸切替スイッチ14のスイッチSW14aもON状態となり、プローブアンテナ11fの水平偏波アンテナ11fhが信号線SW14Sと接続される。また同様に、リレー端子201がハイ状態となると、同軸切替スイッチ16のスイッチSW16aもON状態となり、プローブアンテナ11kの水平偏波アンテナ11khが信号線SW16Sと接続される。上述したように、一つのリレー端子がハイ状態となると、3個のプローブアンテナの水平偏波アンテナが選択される。
【0050】
しかしながら、
図7に示すように、リレーユニット2には、信号線SW12S、信号線SW14S、信号線SW16Sのいずれか一つを選択できるように、リレー端子211、リレー端子212、リレー端子213が設けられている。水平偏波アンテナ選択信号がプローブアンテナ11aの水平偏波アンテナ11ahを選択する信号である場合には、リレーユニット2はリレー端子211もハイ状態とし、リレー端子212及びリレー端子213をロー状態(リレーコモンと同じ電位)とする。リレー端子211がハイ状態となると、
図7に示す同軸切替スイッチ17のスイッチSW17aはON状態となる。したがって、水平偏波アンテナ11ahと接続されている信号線SW12Sだけが、ネットワークアナライザ320と接続されているデータ線Sd2と接続され、水平偏波アンテナ11ahから水平偏波が放射される。
【0051】
また、
図8に示すように、リレーユニット1は、プローブアンテナ11から放射される水平偏波を受信するように、アンテナ100のハイバンド水平偏波アンテナ又はローバンド水平偏波アンテナを選択するように動作する。すなわち、水平偏波アンテナ選択信号がアンテナ100の水平偏波アンテナを選択する信号である場合には、リレーユニット1は、放射される水平偏波の周波数に応じて、ローバンド水平偏波信号Slh又はハイバンド水平偏波信号Shhを選択するように、リレー端子をハイ状態又はロー状態とする。例えば、水平偏波アンテナ選択信号が、ハイバンド水平偏波アンテナを選択する場合には、リレーユニット1はリレー端子14をハイ状態とし、リレー端子11、リレー端子12及びリレー端子13をロー状態とする。リレー端子14がハイ状態となると、
図8に示す同軸切替スイッチ18のスイッチSW18dはON状態となる。この場合には、ハイバンド水平偏波信号Shhが、ネットワークアナライザ320と接続されているデータ線Sd5と接続され、ハイバンド水平偏波信号Shhがネットワークアナライザ320に入力される。このようにして、アンテナ指向性測定装置200は、プローブアンテナ11aの水平偏波アンテナ11ahから放射された電波をアンテナ100のハイバンド水平偏波アンテナにおいて受信し、ネットワークアナライザ320を介して受信電波信号情報を入力する。
【0052】
なお、水平偏波アンテナ選択信号がプローブアンテナ11の他の水平偏波アンテナ11xh(xはb~oのいずれかのアルファベット)を選択する信号である場合も、
図6A、
図6B、
図7及び
図8において、水平偏波アンテナ11ahが選択される場合の動作と類似する動作のために、詳細な説明を省略する。
【0053】
また、垂直偏波アンテナ選択信号が、プローブアンテナ11の垂直偏波アンテナ11yv(yはa~oのいずれかのアルファベット)を選択する信号である場合も、
図6A、
図6B、
図7及び
図8から当業者が想到できる動作であるために、詳細な説明を省略する。
【0054】
<アンテナ指向性測定装置の構成例>
図9は本実施形態に係るアンテナ指向性測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0055】
なお、アンテナ指向性測定装置200は、例えば、後述する各ブロック図の機能に係る処理を実行する図示しない半導体回路やマイコン等からなるハードウェアにより実装された装置として構成されてもよい。もしくは、アンテナ指向性測定装置200は、汎用的なサーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により構成されてもよい。また、アンテナ指向性測定装置200は、図示しないCPU(Central Processing Unit)により構成されてもよい。そして、アンテナ指向性測定装置200は、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで実行されてもよい。後述する各機能に係る処理は、前述したミドルウェアやソフトウェアで実行するものとしてもよい。
【0056】
また、アンテナ指向性測定装置200は、これらのハードウェアによる実装とソフトウェアによる実装とを適宜組み合わせて構成されてもよい。また、アンテナ指向性測定装置200は、全体を1つの筐体で実装する構成に限らず、一部の機能を別の筐体で実装され、これらの筐体間を通信ケーブル等により相互に接続された構成であってもよい。すなわち、アンテナ指向性測定装置200の実装形態は、特に限定されるものではなく、システムの環境等に応じて適宜柔軟に構成することが可能である。
【0057】
さらに、アンテナ指向性測定装置200はシステムの他の装置と組み合わされて実現されてもよい。例えば、システムの他のハードウェアに追加される実装、システムの他のソフトウェアに追加される実装によってアンテナ指向性測定装置200が実現されてもよい。
【0058】
アンテナ指向性測定装置200は、入力部210、制御部220、出力部230、記憶部240を備えることが可能である。
【0059】
入力部210は、アンテナ100又はプローブアンテナ11が受信した受信電波からアナログ電気信号である受信電波信号に変換され、さらに受信電波信号がA/D変換されたデジタル信号情報である受信電波信号情報を入力する機能を有する。また、入力部210は、種々のタイミング信号又はアンテナ100の位置情報等の情報をデジタル信号として入力する機能も有する。さらに、入力部210は、マンマシンインターフェースとしての機能を併せて持つ場合もある。例えば、入力部210は、送信電波信号が伝送されるプローブアンテナ11から放射される送信電波を受信するアンテナ100に発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力することが好ましい。または、入力部210は、送信電波信号が伝送されるアンテナ100から放射される送信電波を受信するプローブアンテナ11に発生する受信電波信号から生成される受信電波信号情報を入力することも可能である。
【0060】
制御部220は、上述したように、一例として、CPUを備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを制御部220として機能させるためのコンピュータプログラム(アンテナ指向性測定プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、制御部220が備える複数の情報処理部として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって制御部220を実現する例を示すが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、制御部220を構成することも可能である。専用のハードウェアには、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。また、制御部220に含まれる複数の情報処理部を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0061】
制御部220は、推定部220a及び選択制御部220bを備える。推定部220aは、トリガ信号生成部221、放射電波情報生成部222、受信電波信号情報解析部223、補正部224を備えることが可能である。また、制御部220は、他の構成要素を排除することを意図していない。
【0062】
トリガ信号生成部221は、入力部210から入力される測定を開始するための測定開始情報信号を入力すると、トリガ信号を生成する。例えば、測定開始情報信号は、図示しないキーボードやタッチパネル等の入力インターフェースとして機能する入力部210から入力されることも可能である。また、トリガ信号生成部221は、ポジショナ制御部330から受信準備完了信号を受信すると、測定を開始するためにリレーユニット310、及び、ポジショナ制御部330に送信するためのトリガ信号を生成する。また、トリガ信号生成部221は、測定を開始すると、アンテナ100の位置を問い合わせる信号をポジショナ制御部330に連続して送信する。トリガ信号生成部221は、アンテナ100の位置が所定の位置になったことを示す信号をポジショナ制御部330から受信すると、リレーユニット310及びネットワークアナライザ320にトリガ信号を送信する。次に、アンテナ指向性測定装置200は、プローブアンテナ11から放射された電波のアンテナ100における受信電波信号情報をネットワークアナライザ320を介して受信する。アンテナ指向性測定装置200は、所定の位置ごとに上記動作を繰り返す。また、トリガ信号生成部221は、アンテナ100の位置が最後に測定すべき位置を超えたことを示す信号をポジショナ制御部330から受信すると、アンテナ100の移動を停止する信号をポジショナ制御部330に送信する。
【0063】
なお、所定の位置において、トリガ信号には、水平方向または垂直方向のいずれかの方向のプローブアンテナを選択する情報が含まれる場合がある。上述したように、トリガ信号によって、水平方向のプローブアンテナ11が選択される場合には、水平方向のアンテナ100が選択され、垂直方向のプローブアンテナ11が選択される場合には、垂直方向のアンテナ100が選択される。なお、水平方向のプローブアンテナ11が選択される場合に、垂直方向のアンテナ100が選択され、垂直方向のプローブアンテナ11が選択される場合に、水平方向のアンテナ100が選択される場合もあり得る。また、リレーユニット310は、トリガ信号の代わりに、上述した水平偏波アンテナ選択信号又は垂直偏波アンテナ選択信号が入力されるように構成されることも可能である。
【0064】
放射電波情報生成部222は、プローブアンテナ11から水平偏波電波及び垂直偏波電波を放射するための周波数情報、変調情報、増幅情報等の情報を生成する機能を有する。当該情報は、電波を放射する送信アンテナの特性情報及び送信アンテナとのインターフェース関係の特性情報を考慮して決定される必要がある。なお、具体的な情報生成方法は公知の技術であるので、本実施形態において詳細は省略する。また、放射電波情報生成部222は、アンテナ100から水平偏波電波及び垂直偏波電波を放射する場合の周波数情報、変調情報、増幅情報等の情報を生成する機能も有する。また、当該情報は、送信電波信号情報に含まれることも可能である。
【0065】
受信電波信号情報解析部223は、アンテナ100で受信され、ネットワークアナライザ320においてA/D変換される受信水平偏波電波信号及び受信垂直偏波電波信号を解析する機能を有する。例えば、受信水平偏波電波信号及び受信垂直偏波電波信号の振幅情報と位相情報を有する受信電波信号情報を円周方向の中心角(プローブアンテナ11の配置角度)及びZ軸方向の距離に対する離散データとする機能を有する。なお、受信電波信号情報解析部223は、プローブアンテナ11で受信され、ネットワークアナライザ320においてA/D変換される受信水平偏波電波信号及び受信垂直偏波電波信号も解析する機能を有する。例えば、当該受信水平偏波電波信号及び当該受信垂直偏波電波信号の振幅情報と位相情報を有する受信電波信号情報を円周方向の中心角等の中心角及びZ軸方向の距離に対する離散データとする機能を有する。
【0066】
補正部224は、受信電波信号情報解析部223において収集した離散データを、Z軸方向の距離に対して逆フーリエ変換する。その後、補正部224は、円周方向の中心角に対して逆フーリエ変換し、In(r)(nは円周方向の波数成分、rはZ軸方向の波数成分)を取得することが可能である。逆フーリエ変換は演算の高速化のために逆高速フーリエ変換を使用することを妨げるものではない。
【0067】
また、補正部224は、プローブアンテナ11から放射された電波を本来測定したいアンテナ100の測定点までの距離xと、実際に測定された測定点までの距離aとの差分を補正演算する機能を有する。補正部224は、差分Δを位相Paで表現し、位相Pa=k(波数)×Δとして、測定データを補正演算する。なお補正演算する演算式については、既知の技術であるため詳細を省略する。
【0068】
さらに、補正部224は、逆フーリエ変換されたIn(r)から受信アンテナの受信特性を除去し、送信アンテナの送信特性を演算する。In(r)は、アンテナ100の送信特性とプローブアンテナ11の受信特性によって示される。一方、電波の送受信特性に関しては可逆性が成立することは公知の技術であるので、プローブアンテナ11の遠方界も事前の測定または理論的な解析によって公知の値または式で表される。当該遠方界E1(φ、θ)を中心角のみについて、フーリエ逆変換した数式と、ハンケル関数Hn
(2)(κρ0)との積のnに関する総和を所定の数式によって演算して得られるプローブアンテナ11の受信特性をRn(r)とする。次に、In(r)からRn(r)を除去することにより、被測定アンテナであるアンテナ100の送信特性を示す波源散乱行列Tn(r)が演算される。なお、波源散乱行列Tn(r)の演算には、プローブアンテナ11の水平方向電波及び垂直方向電波の受信特性の相互作用も考慮するが、公知の技術であるために詳細な演算式についての詳細な説明を省略する。
【0069】
さらに、補正部224は、上述したように演算した波源散乱行列Tn(r)をnに関してフーリエ変換し、被測定アンテナであるアンテナ100に関する遠方界E(φ、θ)を演算する。なお、仰角θはcos-1(r/k)であり、rはアンテナ100の中心軸方向の波数、kはアンテナ100の半径方向の波数である。また、遠方界E(φ、θ)の演算には、第二種ハンケル関数を利用するが、公知の技術であるために詳細な演算式についての詳細な説明を省略する。
【0070】
出力部230は、プローブアンテナ11に伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報を出力することが好ましい。また、上述しているように、出力部230は、アンテナ100に伝送される送信電波信号を生成するための送信電波信号情報を出力することも可能である。アンテナ100は、円周状に配置されるプローブアンテナ11によって形成される円周の中心軸に沿って移動することが好ましい。なお、ネットワークアナライザ320は、送信電波信号情報から送信電波信号を生成する送信電波生成装置として機能する。
【0071】
上述したように、推定部220aは、入力部210から入力される受信電波信号情報が、アンテナの外周円上において螺旋方向に移動した測定点からの受信電波又は送信電波に対応する情報である場合に、以下の処理を実行可能である。すなわち、推定部220aは、入力部210から入力される受信電波信号情報から、アンテナ100の中心軸に対する同心円の円周方向のアンテナ100の指向性を推定することが可能である。受信電波信号情報は、アンテナ100に発生する受信電波信号から生成されることが好ましい。また、上述したように、受信電波信号情報は、プローブアンテナ11に発生する受信電波信号から生成されることも可能である。
【0072】
選択制御部220bは、水平偏波アンテナ11ahから水平偏波アンテナ11oh及び垂直偏波アンテナ11avから垂直偏波アンテナ11ovのいずれか一つのアンテナを送信アンテナとして選択する。また、選択制御部220bは、アンテナ100の図示しないハイバンド水平偏波アンテナ、ハイバンド垂直偏波アンテナ、ハイバンド水平偏波アンテナ、ハイバンド垂直偏波アンテナのいずれか一つのアンテナを受信アンテナとして選択する。
【0073】
上述したように、水平偏波アンテナ11ahから水平偏波アンテナ11ohのいずれか一つのアンテナを送信アンテナとして選択する場合には、リレーユニット310とスイッチSW1との組み合わせによって、選択制御部220bが選択する。また、具体的には説明していないが、垂直偏波アンテナ11avから垂直偏波アンテナ11ovのいずれか一つのアンテナを送信アンテナとして選択する場合にも、リレーユニット310とスイッチSW1との組み合わせによって、選択制御部220bが選択する。さらに、図示しないハイバンド水平偏波アンテナ、ハイバンド垂直偏波アンテナ、ハイバンド水平偏波アンテナ、ハイバンド垂直偏波アンテナのいずれか一つのアンテナを受信アンテナとして選択する場合には、リレーユニット310とスイッチSW2との組み合わせによって、選択制御部220bが選択する。具体的な、リレーユニット310とスイッチSW1又はスイッチSW2との選択動作は上述したのでここでは記載の重複を避けるために説明を省略する。
【0074】
記憶部240は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり得る。例えば、記憶部240は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の少なくとも1つで構成されてもよい。また、記憶部240は、ROM、RAMに加え、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の少なくとも1つで構成されてもよい。記憶部240は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。記憶部240は、本開示の一実施形態に係る処理を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することも可能である。
【0075】
また、記憶部240は、入力部210から入力された情報を記憶し、制御部220との間で情報を入出力し、入出力する情報を記憶することが可能である。さらに、記憶部240は、制御部220の中の各機能ブロック間の情報を記憶することも可能である。さらに、記憶部240は、出力部230から出力されるべき情報を記憶することも可能である。
【0076】
<測定位置補正方法の原理説明>
図10は、アンテナ100を中心軸に沿って、前進移動または後進移動させた場合に測定される受信電波から、アンテナ100の同心円方向の指向特性を推定する方法を説明するための概略図である。アンテナ100は中心軸に沿って距離bを移動すると、同心円状に配置されたプローブアンテナ11が、同心円の円周方向に順番に電波を送信する。アンテナ100は、各プローブアンテナ11から送信された電波の受信電波信号を生成する。なお、アンテナ100の中心軸C1から各プローブアンテナ11までは半径aの円筒形状である。
【0077】
図10では、アンテナ100は、アンテナ100の中心軸C1と平行なZ方向に移動する。また、同心円状に配置されたプローブアンテナ11は、同心円の円周方向に順番に電波を送信する。したがって、アンテナ100の電波の測定点は、中心軸C1の上でいわゆる螺旋曲線を描くが、
図10では、測定点は中心軸C1の上を線形に移動するように描いている。また、厳密にはアンテナ100も半径を有するので、測定点はアンテナの外周円上において螺旋方向に移動する。測定点P1においてプローブアンテナ11aから放射された電波をアンテナ100が受信し、アンテナ指向性測定装置200は受信電波信号情報を取得する。測定点P1を含む、アンテナ100の中心軸に直交する同心円方向の指向性を取得するためには、次のプローブアンテナ11bは測定点P1から中心角がずれた位置で電波を放射し、アンテナ100が当該電波を受信する必要がある。しかしながら、アンテナ100は、中心軸C1に沿って移動するので、プローブアンテナ11aの次のプローブアンテナ11bは測定点P2の上方で電波を放射することになる。
【0078】
本実施形態では、ポジショナ制御部330がポジショナ23を介してアンテナ100の線形移動を制御している。したがって、アンテナ100が測定点P1に対応する位置から中心軸C1に沿って距離bだけ移動すると、ポジショナ制御部330が受信準備完了信号をアンテナ指向性測定装置200に送信する。アンテナ100の中心軸に対して測定点P2と測定点P1は平行又は略平行な位置関係にある。略平行な位置関係とは、アンテナ指向性測定装置200のアンテナ指向性推定のアンテナ指向性の推定結果の値が誤差範囲に収まるような平行度の範囲を意味する。一例として、当該略平行とは、真の平行関係から±5度程度の範囲の平行度のずれを意味する場合を許容する場合があり得る。
【0079】
また、同様に、アンテナ100が測定点P2に対応する位置から中心軸C1に沿って距離bだけ移動すると、ポジショナ制御部330が受信準備完了信号をアンテナ指向性測定装置200に送信する。アンテナ100の中心軸に対して測定点P3と測定点P2は平行又は略平行な位置関係にある。略平行な位置関係とは、アンテナ指向性測定装置200のアンテナ指向性推定のアンテナ指向性の推定結果の値が誤差範囲に収まるような平行度の範囲を意味する。一例として、当該略平行とは、真の平行関係から±5度程度の範囲の平行度のずれを意味する場合を許容する場合があり得る。
【0080】
また、上記のアンテナ指向性測定システム1000の動作を実現するための一例として、ポジショナ制御部330はポジショナ23を介してアンテナ100をZ軸方向に等速度に移動させることが可能である。このような構成によれば、外乱がない限り、あらかじめ決められたタイミングでポジショナ制御部330が受信準備完了信号をアンテナ指向性測定装置200に送信することによって、あらかじめ定められた各測定点で、電波を送受信することが可能になる。アンテナ指向性測定装置200及びポジショナ制御部330の少なくともいずれか一方があらかじめアンテナ100の移動速度を設定することが好ましい。
【0081】
また、上記のアンテナ指向性測定システム1000の動作を実現するための一例として、ポジショナ制御部330はポジショナ23を介してアンテナ100の位置情報を取得する構成とすることも可能である。この場合には、ポジショナ制御部330は、アンテナ100が所定の位置に到達するたびに、アンテナ指向性測定システム1000に上述した電波の送受信を実行させるように動作させる。
【0082】
したがって、円周状に配置される、電波を送信する各プローブアンテナ11の電波の送信中心位置と、当該電波を受信するアンテナ100の当該電波の受信中心位置との対応関係は、以下のようになることが好ましい。すなわち、隣接するプローブアンテナ11の送信中心位置間の中心角と、アンテナ100の隣接する受信中心位置間の中心角とが一致し、アンテナ100の隣接する受信中心位置間のアンテナ100のZ軸方向の距離が同一であることが好ましい。しかし、Z軸方向の距離が異なることを排除するものではない。
【0083】
<アンテナ指向性測定装置の概略動作例のフローチャート>
図11は、本実施形態のアンテナ指向性測定システム1000を用いて、アンテナ指向性測定装置200がプローブアンテナ11及びアンテナ100の水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナを自動的に切り換えて、同一円周上の受信電波を推定し、当該同一円周上の送信電波の指向性を推定する処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0084】
ステップS1101において、アンテナ指向性測定装置200は、アンテナ100を測定点Px(
図10:xの初期値は1)に移動させる。
【0085】
ステップS1102において、アンテナ指向性測定装置200は、測定点Px(
図10)において、プローブアンテナ11の水平偏波アンテナ11yh又は垂直偏波アンテナ11yv(
図10:yの初期値はa)を選択する。また、アンテナ指向性測定装置200が、水平偏波アンテナ11yhを選択した場合には、アンテナ100のハイバンド水平偏波アンテナ又はローバンド水平偏波アンテナを送受信される電波の周波数に対応して選択する。また、アンテナ指向性測定装置200が、垂直偏波アンテナ11yvを選択した場合には、アンテナ100のハイバンド垂直偏波アンテナ又はローバンド垂直偏波アンテナを送受信される電波の周波数に対応して選択する。
【0086】
また、ステップS1102において、アンテナ指向性測定装置200の受信電波信号情報解析部223は、プローブアンテナ11a、11b、11c・・・等から放射された電波をアンテナ100の測定点P1、P2、P3・・・等で受信した受信電波信号情報を取得する。受信電波は、上述したように、水平偏波受信電波と垂直偏波受信電波の両偏波があるが、以下の説明においては、水平偏波受信電波と垂直偏波受信電波を区別せずにまとめて受信電波として説明する。
【0087】
ステップS1103において、アンテナ指向性測定装置200の推定部220aは、入力部210から入力される受信電信号波情報から、アンテナ100の中心軸に対する同心円の円周方向のアンテナ100の受信電信号波情報を推定する。推定方法は、上述した説明及び既知の情報から明らかであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0088】
ステップS1104において、アンテナ指向性測定装置200は、x=16(測定の終了)になったか否かを判定する。測定が終了した場合(ステップS1104:YES)には、アンテナ指向性測定装置200はx=1、y=aとしてステップS1105に進む。測定が終了していない場合(ステップS1104:NO)には、アンテナ指向性測定装置200はxをインクリメントし、yをアルファベット順で次のアルファベットに設定し、ステップS1101に戻る。
【0089】
ステップS1105において、アンテナ指向性測定装置200の推定部220aは、入力部210から入力される受信電信号波情報から、アンテナ100の中心軸に対する同心円の円周方向のアンテナ100の指向性を推定し、処理を終了する。推定方法は、上述した説明及び既知の情報から明らかであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0090】
上述したアンテナ指向性測定装置200の動作によれば、アンテナ100が移動しながら、プローブアンテナ11a~11nから送信した各電波を、アンテナ100の各測定点P1~Pnで受信する。そして、各受信電波をアンテナ100の同一円周上で受信した電波として補正することが可能になる。また、電波の送受信の可逆性から、アンテナ100の受信電波の特性を送信電波の特性として示すことが可能になる。したがって、アンテナ100の停止と移動を繰り返してアンテナ100及びプローブアンテナの水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナを手動で切り替える代わりに、自動で切り換えて、アンテナ100の同心円方向の電波特性を推定測定することが可能になる。その結果、短時間でアンテナ100の必要な特性を取得することが可能になる。
【0091】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、アンテナ指向性測定装置200は、上述したアンテナとは異なる種類のアンテナにも適用することが可能である。また、例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0092】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0093】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0094】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0095】
200…アンテナ指向性測定装置、210…入力部、220…制御部、220a…推定部、221…トリガ信号生成部、222…放射電波情報生成部、223…受信電波信号情報解析部、224…補正部、220b…選択制御部、230…出力部、240…記憶部、1000…アンテナ指向性測定システム