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特開2023-139744ポリエチレン組成物、フィルム、および、多層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139744
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ポリエチレン組成物、フィルム、および、多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20230927BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20230927BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20230927BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L25/06
C08L25/04
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045435
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】劉 チン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK05B
4F100AK05C
4F100AK06B
4F100AK06C
4F100AK12A
4F100AK63A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EH20
4F100GB15
4F100JA06A
4F100JA13
4F100JK02
4F100JK03
4F100JK08
4F100YY00A
4J002BB05W
4J002BB18W
4J002BC03X
4J002BP01Y
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】易引裂性に優れると共に、機械強度を向上させることが可能なフィルムを得ることができるポリエチレン組成物、該ポリエチレン組成物を含有するフィルム、および、前記ポリエチレン組成物を含有する層を備える多層フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るポリエチレン組成物は、直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体(成分(a))と、スチレン単独重合体(成分(b))と、スチレン系共重合体(成分(c))と、を含み、成分(a)、成分(b)および成分(c)の合計100質量%に対して、成分(a)の含有量が30質量%以上79.5質量%以下であり、成分(b)の含有量が20質量%以上50質量%以下であり、成分(c)の含有量が0.5質量%以上20質量%以下であり、成分(c)のメルトフローレートに対する成分(a)のメルトフローレートの比が0.2以上5.0以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体(成分(a))と、スチレン単独重合体(成分(b))と、スチレン系共重合体(成分(c))と、を含み、
前記成分(a)、前記成分(b)および前記成分(c)の合計100質量%に対して、
前記成分(a)の含有量が30質量%以上79.5質量%以下であり、
前記成分(b)の含有量が20質量%以上50質量%以下であり、
前記成分(c)の含有量が0.5質量%以上20質量%以下であり、
前記成分(c)のメルトフローレート(MFR(c))に対する前記成分(a)のメルトフローレート(MFR(a))の比(MFR(a)/MFR(c))が0.2以上5.0以下である、ポリエチレン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエチレン組成物を含有する、フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載のポリエチレン組成物を含有する中間樹脂層と、
該中間樹脂層の両面に形成された、直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体、分岐状低密度ポリエチレン、および、高密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエチレンを含有する表面樹脂層と、
を備える、多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン組成物、該ポリエチレン組成物を含有するフィルム、および、前記ポリエチレン組成物を含有する層を備える多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の包装材料として、基材フィルムとシーラントフィルムとを積層した構成のフィルムが広く用いられている。斯かる構成のフィルムは、シーラントフィルムを内側にして収容空間を形成するようにヒートシールすることで、包装袋とされる。そして、斯かる包装袋に物品を収容して密封することで、包装体が形成される。
【0003】
このような包装袋を形成するフィルムには、包装体から物品を取り出す際に、手で一方向に引き裂き易いこと(易引裂性)が要求されている。易引裂性に優れたフィルムとして、例えば、特許文献1には、スチレン系樹脂と、オレフィン系樹脂と、スチレン/共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物と、を所定の割合で含む樹脂組成物からなる層を含む多層フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-179904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、包装袋を形成するフィルムには、輸送時、落下時などの衝撃による破損を生じ難くする観点から、機械強度に優れることが求められている。しかしながら、特許文献1に記載のフィルムでは、機械強度に関して何ら検討されていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、易引裂性に優れると共に、機械強度を向上させることが可能なフィルムを得ることができるポリエチレン組成物、該ポリエチレン組成物を含有するフィルム、および、前記ポリエチレン組成物を含有する層を備える多層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るポリエチレン組成物は、直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体(成分(a))と、スチレン単独重合体(成分(b))と、スチレン系共重合体(成分(c))と、を含み、
前記成分(a)、前記成分(b)および前記成分(c)の合計100質量%に対して、
前記成分(a)の含有量が30質量%以上79.5質量%以下であり、
前記成分(b)の含有量が20質量%以上50質量%以下であり、
前記成分(c)の含有量が0.5質量%以上20質量%以下であり、
前記成分(c)のメルトフローレート(MFR(c))に対する前記成分(a)のメルトフローレート(MFR(a))の比(MFR(a)/MFR(c))が0.2以上5.0以下である。
【0008】
本発明に係るフィルムは、上記のポリエチレン組成物を含有する。
【0009】
本発明に係る多層フィルムは、上記のポリエチレン組成物を含有する中間樹脂層と、
該中間樹脂層の両面に形成された、直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体、分岐状低密度ポリエチレン、および、高密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエチレンを含有する表面樹脂層と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、易引裂性に優れると共に、機械強度を向上させることが可能なフィルムを得ることができるポリエチレン組成物、該ポリエチレン組成物を含有するフィルム、および、前記ポリエチレン組成物を含有する層を備える多層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[ポリエチレン組成物]
本実施形態に係るポリエチレン組成物は、直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体(成分(a))と、スチレン単独重合体(成分(b))と、スチレン系共重合体(成分(c))と、を含む。
【0013】
<直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体(成分(a))>
直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体(成分(a))は、エチレンに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を有する直鎖状の共重合体である。
【0014】
成分(a)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは70質量%以上97質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上95質量%以下である。また、α-オレフィンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは3質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
【0015】
α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、デセン-1などの炭素数3~10のα-オレフィンが挙げられ、好ましくは1-ブテンである。
【0016】
成分(a)は、好ましくはエチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-へキセン共重合物、エチレン/1-ブテン/1-へキセン共重合物、エチレン/1-オクテン共重合体、エチレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体である。
【0017】
成分(a)の温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は、フィルムの易引裂性を向上させる観点から、好ましくは0.2g/10分以上10g/10分以下であり、より好ましくは0.5g/10分以上5g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210-1995に規定されたA法に従い測定される。
【0018】
成分(a)の密度は、好ましくは870kg/m以上940kg/m以下であり、より好ましくは900kg/m以上930kg/m以下である。なお、密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定されたA法に従い測定される。
【0019】
成分(a)の含有量は、成分(a)、成分(b)および成分(c)の合計100質量%に対して、30質量%以上79.5質量%以下であり、好ましくは40質量%以上79.5質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上79.5質量%以下である。
【0020】
<スチレン単独重合体(成分(b))>
スチレン単独重合体(成分(b))は、スチレンに由来する構造単位のみから構成される重合体である。
【0021】
成分(b)の温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は、フィルムの易引裂性を向上させる観点から、好ましくは0.2g/10分以上10g/10分以下であり、より好ましくは0.5g/10分以上5g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210-1995に規定されたA法に従い測定される。
【0022】
成分(b)のメルトフローレート(MFR(b))に対する成分(a)のメルトフローレート(MFR(a))の比(MFR(a)/MFR(b))は、フィルムの機械強度を向上させる観点から、好ましくは0.3以上3.0以下であり、より好ましくは0.5以上2.5以下である。MFR(a)/MFR(b)は、適切なMFRを有する成分(a)と成分(b)を選択することにより、0.3以上3.0以下にすることができる。
【0023】
成分(b)の含有量は、成分(a)、成分(b)および成分(c)の合計100質量%に対して、20質量%以上50質量%以下であり、好ましくは20質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上35質量%以下である。
【0024】
<スチレン系共重合体(成分(c))>
スチレン系共重合体(成分(c))は、スチレンに由来する構造単位と、共役ジエンに由来する構造単位と、を有するブロック共重合体、および、それら水添物である。
【0025】
成分(c)におけるスチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。また、共役ジエンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上80質量%以下である。
【0026】
共役ジエンとしては、例えば、イソプレン、ブタジエンなどが挙げられ、好ましくはブタジエンである。
【0027】
成分(c)は、好ましくはスチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体の部分水添物、スチレン/ブタジエンブロック共重合体の完全水添物である。
【0028】
成分(c)の温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は、フィルムの易引裂性を向上させる観点から、好ましくは0.1g/10分以上5g/10分以下であり、より好ましくは0.2g/10分以上2g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210-1995に規定されたA法に従い測定される。
【0029】
成分(c)のメルトフローレート(MFR(c))に対する成分(a)のメルトフローレート(MFR(a))の比(MFR(a)/MFR(c))は、フィルムの機械強度を向上させる観点から、0.2以上5.0以下であり、好ましくは0.5以上4.5以下であり、より好ましくは1.0以上4.0以下である。MFR(a)/MFR(c)は、適切なMFRを有する成分(a)と成分(c)を選択することにより、0.2以上5.0以下にすることができる。
【0030】
成分(c)の含有量は、成分(a)、成分(b)および成分(c)の合計100質量%に対して、0.5質量%以上20質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
【0031】
本実施形態に係るポリエチレン組成物は、必要に応じて、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、抗菌剤、防曇剤、可塑剤などの添加剤を含有してもよい。
【0032】
<フィルム>
本実施形態に係るフィルムは、上記のポリエチレン組成物を含有する。
【0033】
前記フィルムの厚さは、好ましくは20μm以上200μm以下であり、より好ましくは30μm以上150μm以下である。
【0034】
本実施形態に係るフィルムは、例えば、上述のポリエチレン組成物を溶融混練する溶融混練工程と、溶融混練された組成物を押し出す押出工程と、押し出された組成物を製膜する製膜工程と、により製造することができる。
【0035】
前記溶融混練工程では、直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体(成分(a))と、スチレン単独重合体(成分(b))と、スチレン系共重合体(成分(c))と、必要に応じて、添加剤と、を溶融混練する。
【0036】
溶融混練を行う方法としては、従来公知の方法および装置を用いて行うことができる。例えば、上記の各材料を、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブルミキサーなどの混合装置を用いて混合した後、溶融混練する方法が挙げられる。また、定量供給機を用いて、一定の割合で上記の各材料をそれぞれ連続的に供給することによって均質な混合物を得た後、該混合物を、単軸または二軸以上の押出機、バンバリーミキサー、ロール式混練機などを用いて、溶融混練する方法が挙げられる。
【0037】
前記押出工程では、例えば、溶融混練された組成物を、押出機を用いてサーキュラー状ダイより押し出す。押出量は、例えば、5.0kg/時間以上100kg/時以下とすることができる。また、押出温度は、例えば、150℃以上230℃以下とすることができる。
【0038】
前記製膜工程では、例えば、サーキュラー状ダイから押し出された組成物を、チューブニップロールで引き延ばし、所定の厚さに製膜する。
【0039】
<多層フィルム>
本実施形態に係る多層フィルムは、上記のポリエチレン組成物を含有する中間樹脂層と、該中間樹脂層の両面に形成された、直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体、分岐状低密度ポリエチレン、および、高密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエチレンを含有する表面樹脂層と、を備える。中間樹脂層の両面に形成された表面樹脂層は、それぞれ、同一の樹脂から構成されていてもよいし、異なる樹脂から構成されていてもよい。
【0040】
直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体としては、上記の成分(a)と同様の重合体を用いることができる。
【0041】
分岐状低密度ポリエチレンは、エチレンに由来する構造単位のみから構成される分岐状のエチレン単独重合体、または、エチレンに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を有する分岐状の共重合体である。該共重合体におけるエチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは70質量%以上97質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上95質量%以下である。また、α-オレフィンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは3質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、デセン-1などの炭素数3~10のα-オレフィンが挙げられ、好ましくは1-ブテンである。
【0042】
分岐状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは870kg/m以上940kg/m以下であり、より好ましくは900kg/m以上930kg/m以下である。なお、密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定されたA法に従い測定される。
【0043】
高密度ポリエチレンは、エチレンに由来する構造単位のみから構成されるエチレン単独重合体である。高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは940kg/m以上980kg/m以下であり、より好ましくは950kg/m以上970kg/m以下である。なお、密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定されたA法に従い測定される。
【0044】
前記多層フィルムの厚さは、好ましくは20μm以上200μm以下であり、より好ましくは30μm以上150μm以下である。
【0045】
中間樹脂層と、該中間樹脂層の両面に形成される表面樹脂層と、を積層する方法としては、例えば、Tダイ法、チューブラー法などの公知のフィルム製造方法が挙げられ、好ましくはTダイ法である。
【0046】
本実施形態に係るフィルムおよび多層フィルムの用途としては、例えば、食品、繊維、雑貨などの包装用途が挙げられる。本実施形態に係るフィルムおよび多層フィルムは、例えば、プラスチック、アルミ箔、紙などから構成される基材フィルムと積層した後、袋状に形成してもよい。
【0047】
なお、本実施形態に係るポリエチレン組成物、フィルム、および、多層フィルムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0048】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
[測定方法]
実施例および比較例での各項目の測定値は、次の方法に従って測定した。
【0050】
<メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)>
JIS K7210-1995に規定されたA法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0051】
<密度(単位:kg/m)>
JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定されたA法に従い測定した。
【0052】
[フィルムの物性評価方法]
実施例および比較例のフィルムの物性は、次の方法に従って評価した。
【0053】
<引裂強度(単位:kJ/N)>
各実施例および比較例で得られたフィルムの引取り方向(MD)、および、MD方向に対して直交する方向(TD)について、JIS K7128-2:1998に基づき、エルメンドルフ試験法引裂強度を求めた。なお、この値が小さい程、易引裂性は良好である。
【0054】
<引張破断強度(単位:MPa)>
製膜したフィルムから、JIS K 6781 6.4記載の引張切断荷重測定用サンプル採取法に従って、長手方向が、それぞれ、引取り方向(MD)およびMD方向に対して直交する方向(TD)となる試験片を作成した。得られた試験片を用いて、チャック間80mm、標線間40mm、引張速度500mm/minの条件で引張試験を行い、引張破断強度を求めた。なお、引張破断強度が高いフィルムは、機械強度に優れる。
【0055】
<引張破断伸び(単位:%)>
製膜したフィルムから、JIS K 6781 6.4記載の引張切断荷重測定用サンプル採取法に従って、長手方向が、それぞれ、引取り方向(MD)およびMD方向に対して直交する方向(TD)となる試験片を作成した。得られた該試験片を用いて、チャック間80mm、標線間40mm、引張速度500mm/minの条件で引張試験を行い、引張破断伸びを求めた。なお、引張破断伸びが高いフィルムは、機械強度に優れる。
【0056】
エチレン-α-オレフィン共重合体LLDPEは下記のものを使用した。
エチレン-α-オレフィン共重合体LLDPE-1:チーグラーナッター触媒直線状低密度ポリエチレン スミカセンL FS150(住友化学株式会社製、エチレン-1-ブテン共重合体、MFR 1.0g/10分、密度 921.5kg/m
エチレン-α-オレフィン共重合体LLDPE-2:チーグラーナッター触媒直線状低密度ポリエチレン スミカセンL FS240(住友化学株式会社製、エチレン-1-ブテン共重合体、MFR 2.2g/10分、密度 919kg/m
エチレン-α-オレフィン共重合体LLDPE-3:チーグラーナッター触媒直線状低密度ポリエチレン スミカセンL FR152(住友化学株式会社製、エチレン-1-ブテン共重合体、MFR 1.0g/10分、密度 923.5kg/m
【0057】
スチレン単独重合体は下記のものを使用した。
スチレン単独重合体(PS):トーヨースチロールGP G210C(東洋スチレン株式会社製、温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが1.0g/10分)
【0058】
スチレン系共重合体は下記のものを使用した。
スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体(SEBS):タフテック(登録商標) H1041(旭化成株式会社製、温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが0.3g/10分、スチレン含有量30質量%)
【0059】
[単層インフレーションフィルム成形]
<実施例11>
LLDPE-1、PS、SEBSを表1に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した。次に、得られた混合物をプラコー社製インフレーションフィルム成形機(プラコー社EXU型の単軸押出機、ダイス(ダイ径125mmφ、リップギャップ2.0mm、シングルスリットでアイリス付エアリング)を用い、加工温度190℃、押出量25kg/時間、ブロー比2.0の加工条件で、厚み50μmのインフレーションフィルムを成形した。得られた単層インフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0060】
<実施例12>
LLDPE-1、PS、SEBSを表1に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例11と同様にして単層インフレーションフィルムを得た。得られた単層インフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0061】
<実施例13>
LLDPE-1、PS、SEBSを表1に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例11と同様にして単層インフレーションフィルムを得た。得られた単層インフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0062】
<比較例11>
LLDPE-2、PS、SEBSを表1に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例11と同様にして単層インフレーションフィルムを得た。得られた単層インフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表2の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例のポリエチレン組成物は、易引裂性に優れると共に、機械強度を向上させることが可能なフィルムを得ることができる。
【0066】
一方で、比較例11のポリエチレン組成物は、MFR(a)/MFR(c)が本発明で規定する範囲を満たさないため、フィルムの機械強度が劣る。
【0067】
[多層インフレーションフィルム成形]
<実施例21>
LLDPE-1、PS、SEBSを表3に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した。次に、得られた混合物をスクリュー径50mmφの押出機3台からなるプラコー社製3層共押出インフレーションフィルム成形機の中間層用押出機に導入し、LLDPE-3を外層および内層用押出機に導入し、ダイス(ダイ径150mmφ、リップギャップ2.0mm)を用い、加工温度190℃、ブロー比2.0、中間層、内層および外層の押出量をそれぞれ10kg/時間、引取速度を11.5m/分の加工条件で、厚み50μmのインフレーションフィルムを成形した。得られた多層インフレーションフィルムの物性を表4に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】