(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139845
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】光電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G01N 23/227 20180101AFI20230927BHJP
【FI】
G01N23/227
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045583
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】圓山 百代
(72)【発明者】
【氏名】池上 明
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA07
2G001BA08
2G001CA03
2G001GA06
2G001HA13
2G001JA06
(57)【要約】
【課題】輝度と解像度が高い光電子像を撮影するための準備時間を短縮することが可能な光電子顕微鏡を提供する。
【解決手段】試料が載置される試料台と、前記試料に励起光を照射する励起光源と、前記試料から放出される光電子を検出して光電子像を撮影するカメラと、前記光電子を前記カメラの検出面に集束させる対物レンズと、各部を制御する制御部を備える光電子顕微鏡であって、前記制御部は、第一の光電子像の輝度分布に基づいて前記カメラの視野中心と前記励起光の照射位置の位置合わせをするとともに、前記対物レンズのレンズ強度を変えて撮影される第二の光電子像と第三の光電子像とに基づいて前記視野中心と前記対物レンズの中心軸の位置合わせをすることを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が載置される試料台と、前記試料に励起光を照射する励起光源と、前記試料から放出される光電子を検出して光電子像を撮影するカメラと、前記光電子を前記カメラの検出面に集束させる対物レンズと、各部を制御する制御部を備える光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、第一の光電子像の輝度分布に基づいて前記カメラの視野中心と前記励起光の照射位置の位置合わせをするとともに、前記対物レンズのレンズ強度を変えて撮影される第二の光電子像と第三の光電子像とに基づいて前記視野中心と前記対物レンズの中心軸の位置合わせをすることを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、前記第一の光電子像の輝度分布を一方向に積算することによって作成される一次元プロファイルに基づいて、前記励起光の照射位置を算出することを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、前記第一の光電子像を複数の領域に分割し、分割された領域毎に算出される輝度の総和を比較することによって、前記励起光の照射位置が存在する方向を求めることを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記試料の高さを測定する高さセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記高さセンサの測定結果に基づいて、前記励起光の照射位置を調整することを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記試料の高さを測定する高さセンサと、
前記試料台の高さを調整する高さ調整部をさらに備え、
前記制御部は、前記試料の高さが予め定められた高さである基準高さになるように前記高さ調整部を制御することを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、前記光電子の軌道を偏向させる偏向器を制御することによって前記視野中心を調整することを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、前記試料台の傾きを調整する傾き調整部を制御することによって前記視野中心を調整することを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、前記対物レンズの少なくとも一部を移動または傾けるレンズ位置調整部を制御することによって前記視野中心を調整することを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、前記カメラを移動させるカメラ位置調整部を制御することによって前記視野中心を調整することを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、前記励起光を反射するミラーを移動または傾けるミラー調整部を制御することによって前記励起光の照射位置を調整することを特徴とする光電子顕微鏡。
【請求項11】
請求項1に記載の光電子顕微鏡であって、
前記制御部は、前記励起光源を移動または傾ける光源位置調整部を制御することによって前記励起光の照射位置を調整することを特徴とする光電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子顕微鏡(Photoelectron Emission Microscope:PEEM)は、紫外光やX線を励起光として試料に照射し、試料から放出される光電子を検出することによって光電子像を撮影する装置である。
【0003】
特許文献1には、試料に励起光を照射する励起光源と、試料から放射される光電子を検出して画像化するカメラと、光電子をカメラの検出面に集束させるレンズを備える光電子顕微鏡が開示される。また、励起光とともに電子線を試料に照射し、試料から発せられる光電子と反射電子の角分布に基づいて反射電子を排除しながら光電子を選択して検出して画像化することも開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、輝度と解像度が高い光電子像を撮影するための準備時間に対する配慮がなされていない。励起光の照射位置とカメラの視野中心との位置ずれが大きいと光電子像の輝度が低下し、対物レンズの中心軸と視野中心との位置ずれが大きいと光電子像の解像度が低下する。また対物レンズの中心軸は試料の高さや傾きによって変化する。すなわち、輝度と解像度が高い光電子像を撮影するには、試料によって変化する対物レンズの中心軸に対して、励起光の照射位置と視野中心を撮影前に位置合わせする必要があり、位置合わせには時間を要する。
【0006】
そこで本発明の目的は、輝度と解像度が高い光電子像を撮影するための準備時間を短縮することが可能な光電子顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、試料が載置される試料台と、前記試料に励起光を照射する励起光源と、前記試料から放出される光電子を検出して光電子像を撮影するカメラと、前記光電子を前記カメラの検出面に集束させる対物レンズと、各部を制御する制御部を備える光電子顕微鏡であって、前記制御部は、第一の光電子像の輝度分布に基づいて前記カメラの視野中心と前記励起光の照射位置の位置合わせをするとともに、前記対物レンズのレンズ強度を変えて撮影される第二の光電子像と第三の光電子像とに基づいて前記視野中心と前記対物レンズの中心軸の位置合わせをすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、輝度と解像度が高い光電子像を撮影するための準備時間を短縮することが可能な光電子顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3A】対物レンズのレンズ強度の変化に伴う光電子の軌道の変化について説明する図
【
図3B】対物レンズのレンズ強度の変化に伴う光電子像の変化について説明する図
【
図4A】励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する図
【
図4B】励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する図
【
図4C】励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する図
【
図4D】励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する図
【
図4E】励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する図
【
図4F】励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する図
【
図4G】励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する図
【
図4H】励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する図
【
図7】励起光の照射位置の調整処理の流れの一例を示す図
【
図8】励起光の照射位置の算出処理の一例について説明する図
【
図9A】励起光の照射位置の存在方向を求める処理の一例について説明する図
【
図9B】励起光の照射位置の存在方向を求める処理の一例について説明する図
【
図10A】励起光の照射位置の調整処理の他の例について説明する図
【
図10B】励起光の照射位置の調整処理の他の例について説明する図
【
図10C】励起光の照射位置の調整処理の他の例について説明する図
【
図10D】励起光の照射位置の調整処理の他の例について説明する図
【
図10E】励起光の照射位置の調整処理の他の例について説明する図
【
図13】試料の高さ変化に伴う励起光の照射位置の変化について説明する図
【
図17A】試料の傾き調整による視野の変化について説明する図
【
図17B】試料の傾き調整による視野の変化について説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明に係る光電子顕微鏡の実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面では、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【実施例0011】
図1を用いて実施例1の光電子顕微鏡の全体構成について説明する。光電子顕微鏡は、試料に励起光を照射し、試料から放出される光電子を検出することによって光電子像を撮影する装置であり、装置本体113と制御部115と入出力部114を備える。
【0012】
制御部115は、装置本体113が有する各部を制御する装置であり、例えばコンピュータで構成される。また制御部115は記憶部116を有し、記憶部116には装置本体113の制御に係るパラメータや撮影された光電子像が記憶される。入出力部114は、光電子像の撮影に係る条件が入力されるとともに、撮影された光電子像が表示される装置であり、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、モニタによって構成される。装置本体113は、励起光源101、試料台106、対物レンズ107、拡大レンズ108、カメラ109、偏向器110を有する。なお試料台106、対物レンズ107、拡大レンズ108、偏向器110は、真空排気される真空チャンバ112の中に配置される。
【0013】
励起光源101は、試料台106に載置される試料103に励起光を照射する。励起光は、例えば紫外光やX線、放射光であり、光路102と照射位置調整部104を介して試料103に照射される。励起光は所定の強度分布、例えばガウシアン分布に従った空間的な広がりを有し、強度分布の中心を励起光の照射位置105、強度分布の半値幅をビーム径と呼ぶ。
【0014】
光路102は、励起光を試料103へ導くものであり、例えば光学定盤上にミラーやレンズが並べられたものや、光ファイバーによって構成される。
【0015】
照射位置調整部104は、試料103の表面上に励起光が照射される位置を調整するものであり、励起光を反射するミラーを傾けたり移動させたりする機構である。なお照射位置調整部104は、励起光を屈折させるレンズや励起光源101を傾けたり移動させたりする機構であっても良い。
【0016】
カメラ109は、励起光の照射によって試料103から放出される光電子を検出する検出素子が二次元に配列されたものである。各検出素子は試料103の表面上の各点と一対一に対応する。試料103の表面上の各点から放出される光電子は拡大レンズ108による拡大を受けたのち各検出素子で検出され、検出された光電子の強度に基づいて光電子像が取得される。
【0017】
対物レンズ107は、試料103から放出される光電子をカメラ109の検出面に集束させるものであり、試料103の上方に設置される電極に対して負電圧を試料103に印加することによって回転対称に形成される電場、及び、対物レンズ内部に設置されたコイルに電流を流すことによって回転対称に形成される磁場によって構成される。なお電場の中心軸を対物レンズ107の中心軸と呼ぶ。また試料103の高さや傾きによっても電場が変化するので、試料103によって対物レンズ107の中心軸の位置も変化する。なお対物レンズ107では、中心軸から離れるほど収差が多くなり、光電子像の解像度が低下する。
【0018】
偏向器110は、試料103から放出される光電子の軌道を偏向させることによってカメラ109の視野を制御する。
図2Aと
図2Bを用いてカメラ109の視野の制御について説明する。なお
図2Aは光電子201の軌道を偏向させてない状態であり、
図2Bは軌道を偏向させた状態である。また説明を簡略化するために、励起光の照射によって試料103の表面上の各点から放射状に放出される光電子のうち、垂直方向に放出されるもののみが
図2Aと
図2Bに示される。
【0019】
光電子像は、カメラ109に検出された光電子201の強度に基づいて取得されるので、カメラ109に入射する光電子201が放出される範囲がカメラ109の視野になる。
図2Aと
図2Bでは、カメラ109に入射する光電子201の軌道が実線で、入射しない光電子201の軌道が点線で示される。また
図2Aでの視野202と
図2Bでの視野203が両矢印で示される。光電子201の軌道を偏向させてないときの視野202が試料103の中央にあるのに対し、軌道を偏向させたときの視野203は試料103の左側に移動している。すなわち、偏向器110によって光電子の軌道を偏向させることによって、カメラ109の視野を制御することができる。なおカメラ109の視野と励起光の照射位置との位置ずれが大きいと、光電子像の輝度が低下する。
【0020】
図3Aと
図3Bを用いて対物レンズ107のレンズ強度の変化に伴う光電子の軌道の変化と光電子像の変化について説明する。
図3Aには、対物レンズ107の中心軸を通過する軌道301及び軌道303と、対物レンズ107の中心軸から離れた位置を通過する軌道302及び軌道304が示される。なお実線で示される軌道301と軌道302は、カメラの検出面300で結像するように対物レンズ107のレンズ強度を調整したときのものであり、点線で示される軌道303と軌道304は、対物レンズ107のレンズ強度を変化させたときのものである。さらに
図3Aには、試料103の表面上の円形パターンを軌道301、軌道302、軌道303、軌道304のそれぞれによって観察したときの光電子像311、光電子像312、光電子像313、光電子像314が示される。
【0021】
対物レンズ107の中心軸を通過する軌道301は、レンズ強度の変化によって軌道303となり、フォーカスはずれるものの到達位置に変化は無い。一方、中心軸から離れた位置を通過する軌道302は、レンズ強度の変化によって軌道304となり、フォーカスがずれるとともに到達位置が移動する。また軌道301に対応する光電子像311は、レンズ強度の変化によって光電子像313となり、パターンがぼけるもののその位置に変化はない。一方、軌道302に対応する光電子像312は、レンズ強度の変化によって光電子像314となり、パターンがぼけるとともに位置が移動する。
【0022】
図3Bには、円形パターンが二次元に配列された試料を、異なるレンズ強度で撮影したときの光電子像が示される。フォーカスされたレンズ強度のときの円形パターンは実線で示され、デフォーカスされたときの円形パターンは点線で示される。なおデフォーカス時に生じるぼけは省略される。位置320において、異なるレンズ強度で撮影された円形パターンの位置が一致しているので、対物レンズ107の中心軸が位置320に対応する。つまり、対物レンズ107のレンズ強度を変えて撮影される光電子像を対比することにより、対物レンズ107の中心軸が可視化される。
【0023】
励起光の照射位置とカメラの視野中心との位置ずれが大きいと光電子像の輝度が低下し、対物レンズの中心軸と視野中心との位置ずれが大きいと光電子像の解像度が低下する。また対物レンズの中心軸は試料の高さや傾きによって変化する。そこで、輝度と解像度が高い光電子像を撮影するために、試料によって変化する対物レンズの中心軸に対して、励起光の照射位置と視野中心を位置合わせする必要がある。
【0024】
図4A乃至
図4Hを用いて、励起光の照射位置とカメラの視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせについて説明する。
図4A乃至
図4Hには、二次元に配列された円形パターンの光電子像を模式的に表すものとして、明パターン402、暗パターン403、励起光の照射位置404、対物レンズの中心軸405が視野401の中に示される。なお明パターン402は輝度の高い円形パターンであり、暗パターン403は輝度の低い円形パターンである。また励起光の照射位置404を示す四角マークと、対物レンズの中心軸405を示す三角マークは、実際の光電子像には表示されない。励起光は所定の強度分布に従った空間的な広がりを有するため、励起光の照射位置404に近いパターンは明パターン402となり、遠いパターンは暗パターン403となる。
【0025】
なお
図4A、
図4C、
図4E、
図4Gは対物レンズのレンズ強度がフォーカスされたときの光電子像であり、それぞれに対してレンズ強度がデフォーカスされた光電子像が
図4B、
図4D、
図4F、
図4Hである。また
図4Aと
図4Bは視野401の中心に対して励起光の照射位置404と対物レンズの中心軸405がずれた状態を表す。
図4Cと
図4Dは視野401の中心に対して励起光の照射位置404が一致し、対物レンズの中心軸405がずれた状態を表す。
図4Eと
図4Fは視野401の中心に対して励起光の照射位置404がずれ、対物レンズの中心軸405が一致した状態を表す。
図4Gと
図4Hは視野401の中心に対して励起光の照射位置404と対物レンズの中心軸405が一致した状態を表す。
【0026】
以下で、
図4Aと
図4Bの状態を起点として、視野401の中心に励起光の照射位置404と対物レンズの中心軸405を位置合わせする過程での光電子像の変化について説明する。
図4Aと
図4Bでは、励起光の照射位置404が視野401の中心に対して左下にずれているため、右上に暗パターン403が表示される。これを直すために照射位置調整部104を制御して視野401の中心に励起光の照射位置404を移動させると、
図4Cと
図4Dのように視野401の中は明パターン402だけとなる。ただし、対物レンズの中心軸405は視野401の右上に位置している。これを直すために偏向器110を制御して視野401の中心を対物レンズの中心軸405に移動させると、
図4Eと
図4Fのように視野401の中心に対物レンズの中心軸405が一致した状態となる。ただし、視野401の移動にともなって励起光の照射位置404は左下に移動する。そこで再度、照射位置調整部104を制御して視野401の中心に励起光の照射位置404を移動させると、
図4Gと
図4Hのように視野401の中心に対して励起光の照射位置404と対物レンズの中心軸405が一致した状態となる。
【0027】
図5を用いて、実施例1の処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0028】
(S501)
制御部115は観察条件を取得する。取得された観察条件は、装置本体113に対して設定される。観察条件は入出力部114に表示される調整画面を介して入力される。
図6を用いて、調整画面の一例について説明する。
図6に例示される調整画面は、条件選択部601、調整開始ボタン607、光電子像表示部608、微調整部609、パラメータ調整部610、条件保存ボタン614を有する。
【0029】
条件選択部601には、励起光条件選択部602、電子光学系条件選択部603、カメラ条件選択部604、許容誤差設定部605、プリセットボタン606が含まれる。励起光条件選択部602では、励起光源101や光路102に関するパラメータとして、励起光の波長、強度、ビーム径、偏光方向が選択される。なお偏光方向には円偏光等の直線偏光以外も含まれる。電子光学系条件選択部603では、対物レンズ107や拡大レンズ108に関するパラメータとして、倍率や絞りが選択される。カメラ条件選択部604では、カメラ109に関するパラメータとして、露光時間、撮像モードが選択される。許容誤差設定部605では、視野中心と励起光の照射位置と対物レンズの中心軸を位置合わせするときの許容誤差が設定される。プリセットボタン606は記憶部116に予め保存された条件を読み出すときに押下されるボタンである。
【0030】
調整開始ボタン607は、条件選択部601での条件選択が完了し、視野中心と励起光の照射位置と対物レンズの中心軸との位置合わせを開始するときに押下されるボタンである。
【0031】
光電子像表示部608には、視野中心と励起光の照射位置と対物レンズの中心軸との位置合わせがなされるときに取得される光電子像が表示される。
【0032】
微調整部609では、視野中心と励起光の照射位置と対物レンズの中心軸との位置合わせがなされたあとで、対物レンズ107のフォーカスや倍率、励起光強度が微調整される。なお微調整部609において、励起光の偏光方向やカメラ109に関するパラメータが微調整されても良い。
【0033】
パラメータ調整部610には、視野調整部611、励起光照射位置調整部612、ワブリングボタン613が含まれる。視野調整部611では視野が調整される。すなわち視野調整部611での操作に応じて偏向器110が制御される。励起光照射位置調整部612では、励起光の照射位置が調整される。すなわち励起光照射位置調整部612での操作に応じて照射位置調整部104が制御される。ワブリングボタン613は、対物レンズの中心軸の位置を確認するときに押下されるボタンである。すなわちワブリングボタン613が押下されると、対物レンズのレンズ強度を連続的に変化させながら取得される光電子画像が光電子像表示部608に表示される。
【0034】
条件保存ボタン614は微調整部609やパラメータ調整部610で調整された条件を保存するとき押下されるボタンである。調整された条件は記憶部116に保存される。
【0035】
【0036】
(S502)
制御部115は、試料に対してフォーカスが合うように、対物レンズのレンズ強度を調整する。
【0037】
(S503)
制御部115は、拡大レンズ108のレンズ強度を調整用倍率に設定する。調整用倍率は、観察条件として選択された励起光のビーム径に応じて設定されても良いし、最低倍率に設定されても良い。調整用倍率がビーム径に応じて設定される場合、例えば視野がビーム径の3倍になるような倍率に設定される。
【0038】
(S504)
制御部115は、励起光の照射位置が視野中心に合うように調整する。
図7を用いて、S504にて実行される励起光の照射位置の調整処理の流れの一例について説明する。
【0039】
(S701)
制御部115は、光電子像を取得する。取得される光電子像は、例えば円形パターンが二次元配列された試料に対するものである。
【0040】
(S702)
制御部115は、S701にて取得された光電子像の輝度分布に基づいて、励起光の照射位置を算出する。
【0041】
図8を用いて、S702にて実行される励起光の照射位置の算出処理の一例について説明する。
図8には光電子像の視野401の中の輝度分布800が示され、輝度が高い領域は白色で、輝度が低い領域は黒色で表される。なお実際の光電子像には円形パターンが含まれるが、説明を簡略化するために
図8では省略される。
【0042】
制御部115は、輝度分布800を一方向に積算することによって輝度の一次元プロファイルを作成し、一次元プロファイルが最大となる位置を励起光の照射位置として算出する。例えば、輝度分布800が縦方向及び横方向に積算されることにより、横方向プロファイル801及び縦方向プロファイル802が作成される。そして横方向プロファイル801及び縦方向プロファイル802のそれぞれが最大となる位置が励起光の照射位置として算出される。なお積算される方向は、縦方向や横方向に限定されず、斜め方向であっても良い。ただし、二つの方向は互いに直交することが望ましい。
【0043】
また一次元プロファイルを用いずに、輝度分布800を二次元の正規分布関数などにフィッティングさせることによって、励起光の照射位置が算出されても良い。さらに一次元プロファイルや二次元の正規分布関数から励起光のビーム径が算出されても良い。例えば一次元プロファイルの半値幅がビーム径として算出される。
【0044】
視野401の中に励起光の照射位置が含まれてない場合、輝度分布800から作成される一次元プロファイルでは、励起光の照射位置を求められない。そこで、励起光の照射位置を算出する代わりに、励起光の照射位置が存在する方向を求めるようにしても良い。
【0045】
図9Aと
図9Bを用いて、励起光の照射位置の存在方向を求める処理の一例について説明する。
図9Aには、視野401の中に明パターン402と暗パターン403が含まれる。制御部115は、視野401を複数の領域に分割し、分割された領域毎の輝度の総和を比較することによって、励起光の照射位置が存在する方向を求める。例えば、視野401は分割線901によって左上、右上、左下、右下の4つの領域に分割され、分割された領域毎に求められる輝度の総和が
図9Bに例示されるように比較される。
図9Bに例示される輝度の総和は、左下の領域が最大であり、右上の領域が最小であるので、左下方向が励起光の照射位置の存在方向として求められる。なお視野401の分割数は4に限定されず、9や16であっても良い。また分割線901の方向は縦方向と横方向に限定されず、視野中心から放射状に設定されても良い。
【0046】
【0047】
(S703)
制御部115は、S701にて算出された励起光の照射位置と視野中心との距離が許容値以下であるか否かを判定する。許容値以下であれば処理の流れは終了し、許容値以下でなければS704を介してS701へ処理が戻される。なお励起光の照射位置が視野の中に含まれてない場合も、S704を介してS701へ処理が戻される。許容値は、記憶部116から読み出されても良いし、
図6に例示される調整画面の励起光条件選択部602で選択されるビーム径や許容誤差設定部605で設定される許容誤差に基づいて算出されても良い。例えばビーム径の半分が許容値として算出される。
【0048】
(S704)
制御部115は、S702にて算出された励起光の照射位置に基づいて照射位置調整部104を制御し、励起光の照射位置を視野中心に移動させる。なお励起光の照射位置が視野の中に含まれてない場合、S702において励起光の照射位置は算出されず、励起光の照射位置の存在方向が求められるに留まる。そこで求められた励起光の照射位置の存在方向に基づいて、照射位置調整部104が制御される。このときの移動距離には、例えば視野の一辺の長さが設定される。
【0049】
図7を用いて説明した励起光の照射位置の調整処理によって、励起光の照射位置は、視野中心から所定の距離の中に調整される。なお視野401の中で明パターン402と暗パターン403が区別できない場合、励起光の照射位置だけでなく、励起光の照射位置の存在方向も求められない。そこで、励起光の照射位置を移動させながら取得される光電子像に基づいて、励起光の照射位置が調整されても良い。
【0050】
図10A乃至
図10Eを用いて、励起光の照射位置の調整処理の他の例について説明する。
図10A乃至
図10Eには、視野401の中に輝度が同じ程度の円形パターン1001を複数有する光電子像が示される。なお輝度が高い円形パターン1001は白色で、輝度が低い円形パターン1001は黒色で表される。また
図10Aが調整開始時の光電子像であり、
図10B乃至
図10Eは、
図10Aのときの励起光の照射位置を左、上、右、下のそれぞれの方向へ移動させたときの光電子像である。なお、このときの移動距離は、予め定められた値であっても良いし、ビーム径に応じて設定されても良い。例えば、ビーム径の1/3が移動距離として設定される。
【0051】
制御部115は、励起光の照射位置を移動させながら取得される光電子像毎の輝度の総和を比較することによって、励起光の照射位置が存在する方向を求める。例えば
図10A乃至
図10Eの光電子像毎の輝度の総和を比較すると、
図10Bが最大であり
図10Dが最小であるので、左方向が励起光の照射位置の存在方向として求められる。制御部115は、求められた存在方向に基づいて照射位置調整部104を制御し、励起光の照射位置を移動させる。このように、励起光の照射位置を移動させながら取得される光電子像毎の輝度の総和の比較と、比較結果に基づく励起光の照射位置の移動が繰り返されることにより、励起光の照射位置は、視野中心から所定の距離の中に調整される。
【0052】
【0053】
(S505)
制御部115は、励起光のビーム径が許容範囲か否かを判定する。ビーム径が許容範囲であればS507へ処理が進められ、許容範囲でなければS506を介してS504へ処理が戻される。励起光のビーム径は、例えば
図8に示される横方向プロファイル801や縦方向プロファイル802から算出される。許容範囲は、記憶部116から読み出されても良いし、
図6に例示される調整画面の励起光条件選択部602で選択されるビーム径と許容誤差設定部605で設定される許容誤差に基づいて算出されても良い。
【0054】
(S506)
制御部115は、励起光源101や光路102を制御し、励起光のビーム径を調整する。
【0055】
(S507)
制御部115は、拡大レンズ108のレンズ強度を制御し、倍率を切り替える。倍率は、例えば
図6に例示される調整画面の電子光学系条件選択部603で選択される倍率に切り替えられても良いし、最高倍率に切り替えられても良い。
【0056】
(S508)
制御部115は、励起光の照射位置が視野中心に合うように調整する。S508にて実行される励起光の照射位置の調整処理は、S504と同様に、
図7に例示される処理の流れである。ただし、S703の許容値はより小さく設定される。
【0057】
(S509)
制御部115は、対物レンズ107のレンズ強度を制御して、異なるレンズ強度での光電子像を取得する。すなわちフォーカスされたレンズ強度のときの光電子像と、デフォーカスされたレンズ強度のときの光電子像との少なくとも2枚の光電子像が取得される。
【0058】
(S510)
制御部115は、対物レンズ107の中心軸と視野中心との距離が許容値以下であるか否かを判定する。許容値以下であればS514へ処理が進められ、許容値以下でなければS511へ処理が進められる。対物レンズ107の中心軸は、S509で取得される少なくとも2枚の光電子像が対比されることにより可視化される。許容値は、記憶部116から読み出されても良いし、
図6に例示される調整画面の電子光学系条件選択部603で選択される倍率や許容誤差設定部605で設定される許容誤差に基づいて算出されても良い。
【0059】
(S511)
制御部115は、偏向器110を制御し、対物レンズ107の中心軸に合うように視野中心を調整する。なお視野の中に対物レンズ107の中心軸が含まれない場合は、S509で取得される少なくとも2枚の光電子像を対比することにより、対物レンズ107の中心軸の存在方向が求められる。制御部115は、求められた存在方向に基づいて偏向器110を制御し、視野中心を移動させる。このときの移動距離には、例えば視野の一辺の長さが設定される。
【0060】
(S512)
制御部115は、光電子像を取得する。
【0061】
(S513)
制御部115は、S512にて取得される光電子像の輝度が充分か否かを判定する。輝度が充分であればS509へ処理が戻され、異なるレンズ強度での光電子像が再取得される。輝度が充分でなければS508へ処理が戻され、励起光の照射位置の調整処理が実行される。なお輝度が充分か否かの判定には、予め定められた基準値が用いられる。基準値は記憶部116から読み出され、S512にて取得される光電子像の輝度の総和と比較される。
【0062】
(S514)
制御部115は、励起光の照射位置が視野中心に合うように調整する。S514にて実行される励起光の照射位置の調整処理は、S508と同様である。
【0063】
図5を用いて説明した処理の流れによって、対物レンズの中心軸から所定の距離の中に視野中心が調整され、さらに励起光の照射位置が視野中心から所定の距離の中に調整される。すなわち、励起光の照射位置と視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせがなされ、輝度と解像度が高い光電子像を撮影するための準備が完了する。なお励起光の照射位置と視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせは、光電子像に基づいて自動化されるので、撮影のための準備時間を短縮することができる。さらに励起光源及び光路から導かれる励起光の照射方向の変化が小さく、試料の高さが一定である場合、励起光の照射位置と視野中心との位置ずれが小さいため、
図5のS503からS506までの処理が省略可能であり、準備時間をさらに短縮することができる。
実施例1では、励起光の照射位置と視野中心と対物レンズの中心軸の位置合わせが光電子像に基づいて自動化されることについて説明した。実施例2では、光電子像だけでなく試料の高さに基づいて位置合わせすることについて説明する。なお実施例2には、実施例1で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については同じ符号を用いて説明を省略する。
高さセンサ1100は、試料台106に載置される試料103の高さを測定する装置であり、例えばレーザ変位計で構成される。高さセンサ1100は、例えば試料103の表面と対物レンズ107との距離を測定し、制御部115へ送信する。