(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139861
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】細胞培養用デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 3/04 20060101AFI20230927BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230927BHJP
C12M 1/14 20060101ALI20230927BHJP
C12N 5/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C12M3/04 Z
C12M1/00 A
C12M1/14
C12N5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045604
(22)【出願日】2022-03-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(再生医療技術を応用した創薬支援基盤技術の開発)「In-vitro安全性試験・薬物動態試験の高度化を実現するorgan/multi-organs-on-a-chipの開発とその製造技術基盤の確立」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】舩岡 創平
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 武司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 琢
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 慎治
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB11
4B029BB12
4B029CC11
4B029DA10
4B029DG06
4B029DG10
4B029GA08
4B029GB02
4B029GB10
4B065AA87X
4B065BC50
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】本体部の開口部にカップが取り付けられた状態で、それらの間からの液漏れを防止できる細胞培養用デバイスを実現する。
【解決手段】細胞培養用デバイス(1)は、培地が流通可能な流路(13)を有するとともに、流路(13)に連通する開口部(15)を有する本体部(10)と、細胞培養可能な膜(23)からなる底面(22)を有し、底面(22)が流路(13)に臨む状態となるように開口部(15)に対して着脱自在に取り付けられるカップ(20)と、開口部(15)とカップ(20)との間に介在されるシール材(30)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地が流通可能な流路を有するとともに、前記流路に連通する開口部を有する本体部と、
細胞培養可能な膜からなる底面を有し、前記底面が前記流路に臨む状態となるように前記開口部に対して着脱自在に取り付けられるカップと、
前記開口部と前記カップとの間に介在されるシール材と、
を備える細胞培養用デバイス。
【請求項2】
前記シール材が、円筒状に形成されているとともに、その内周面に、全周に亘って連続して内向きに突出する内向き環状リブを有する請求項1に記載の細胞培養用デバイス。
【請求項3】
前記シール材が、その内周面に、高さ方向に沿って延び内向きに突出する複数の縦リブをさらに有する請求項2に記載の細胞培養用デバイス。
【請求項4】
前記シール材が、円筒状に形成されているとともに、その外周面に、全周に亘って連続して外向きに突出する外向き環状リブを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の細胞培養用デバイス。
【請求項5】
前記開口部と前記シール材との接合部に、互いに係合して前記シール材の離脱を抑止するための抜け止め構造が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の細胞培養用デバイス。
【請求項6】
前記シール材が樹脂製である請求項1から5のいずれか一項に記載の細胞培養用デバイス。
【請求項7】
前記シール材が、ポリオレフィン系樹脂で構成されている請求項6に記載の細胞培養用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の環境を模したin vitroの評価系を構築するのに、セルカルチャーインサートと称されるカップを用いた細胞培養用デバイスが利用されている。このような細胞培養用デバイスの一例が、例えば国際公開第2019/132008号(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の細胞培養用デバイスは、培地が流通可能な流路(灌流流路26)を有する本体部(基材20)と、細胞培養可能な膜(ゲル膜30)からなる底面を有するカップ(ウェル部10)とを備えている。本体部は、流路に連通する開口部(保持部23)を有しており、この開口部に対して、底面が流路に臨む状態となるようにカップが着脱自在に取り付けられている。
【0004】
特許文献1の細胞培養用デバイスでは、本体部に形成された開口部に対してカップが着脱自在に取り付けられているだけなので、流路に培地が流通する際に、場合によっては液漏れする可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本体部の開口部にカップが取り付けられた状態で、それらの間からの液漏れを防止できる細胞培養用デバイスの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る細胞培養用デバイスは、
培地が流通可能な流路を有するとともに、前記流路に連通する開口部を有する本体部と、
細胞培養可能な膜からなる底面を有し、前記底面が前記流路に臨む状態となるように前記開口部に対して着脱自在に取り付けられるカップと、
前記開口部と前記カップとの間に介在されるシール材と、
を備える。
【0008】
この構成によれば、本体部に形成された流路に臨むカップの底面が細胞培養可能な膜で構成されているので、その少なくとも一方の面に細胞層を形成して、生体内の環境を模したin vitroの評価系を容易に構築することができる。この場合において、本体部に形成された開口部とカップとの間にシール材を介在させることで、本体部とカップとの密封性を高めることができ、これらの間からの液漏れを防止することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
前記シール材が、円筒状に形成されているとともに、その内周面に、全周に亘って連続して内向きに突出する内向き環状リブを有することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、内向き環状リブが全周に亘ってカップの外面に当接して、シール材とカップとの間からの液漏れを効果的に防止することができる。
【0012】
一態様として、
前記シール材が、その内周面に、高さ方向に沿って延び内向きに突出する複数の縦リブをさらに有することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、複数の縦リブによってシール材全体の強度を高めることができる。また、複数の縦リブが一種の取付ガイドとしての役割を果たし、内向き環状リブに対してカップを均等に取り付けることができる。よって、本体部とカップとの密封性をさらに高めることができ、これらの間からの液漏れを効果的に防止することができる。
【0014】
一態様として、
前記シール材が、円筒状に形成されているとともに、その外周面に、全周に亘って連続して外向きに突出する外向き環状リブを有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、外向き環状リブが全周に亘って本体部の開口部の内面に当接して、本体部とシール材との間からの液漏れを効果的に防止することができる。
【0016】
一態様として、
前記開口部と前記シール材との接合部に、互いに係合して前記シール材の離脱を抑止するための抜け止め構造が設けられていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、例えば本体部からカップを取り外す際にも、シール材を本体部側に留めることができる。
【0018】
一態様として、
前記シール材が樹脂製であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、例えばシール材がゴム製である場合とは異なり、シール材への薬剤等の吸着を回避することができる。よって、細胞培養用デバイスを用いて各種の分析を行う場合に、分析精度を高く維持することができる。
【0020】
一態様として、
前記シール材が、ポリオレフィン系樹脂で構成されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、樹脂の中でも比較的柔らかいポリオレフィン系樹脂を用いて、シール材への薬剤等の吸着を回避しつつ、本体部とカップとの密封性を十分に高めることができる。よって、本体部とシール材との間からの液漏れを良好に防止することができる。
【0022】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0024】
細胞培養用デバイスの実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の細胞培養用デバイス1は、生体内の環境を模したin vitroの評価系を構築するためのデバイスとして構成されている。
【0025】
図1及び
図2に示すように、細胞培養用デバイス1は、培地が流通可能な流路13を有する本体部10と、本体部10に対して着脱自在に取り付けられるカップ20と、本体部10とカップ20との間に介在されるシール材30とを備えている。1つの本体部10に対して、カップ20及びシール材30の組が複数組設けられている。カップ20の底面22は多孔フィルム23で構成されており、この底面22(多孔フィルム23)の少なくとも一方の面に細胞を培養することで、生体内の環境を模した環境を形成することができる。本実施形態では、多孔フィルム23が「細胞培養可能な膜」に相当する。
【0026】
本体部10は、本実施形態では、底板部11と天板部14とチャンバー部17とを備えており、これらが積層された三層構造を有している。底板部11は、本体部10の底部を構成している。底板部11は、平面視矩形状(具体的には、平面視長方形状)に形成されている。また、底板部11は、一定の厚みを有する平板状(偏平な直方体状)に形成されている。底板部11の上面には、溝部12が形成されている。この溝部12により、培地が流通可能な流路13が構成されている。本実施形態では、短手方向に並ぶ4つの収容空間Cのうちの連続する3つの収容空間Cが互いに連通するように、溝部12(流路13)が短手方向に沿って形成されている。
【0027】
天板部14は、溝部12(流路13)を覆うように上方から底板部11に接合されている。天板部14は、底板部11に応じた平面視矩形状(具体的には、長方形状)に形成されている。また、天板部14は、一定の厚みを有する平板状(偏平な直方体状)に形成されている。天板部14は、流路13の天井面を形成している。天板部14には、当該天板部14を厚み方向に貫通する開口部15が形成されている。開口部15は、流路13に連通するように形成されている。この開口部15に、カップ20が着脱自在に取り付けられる。開口部15の内周面には、本実施形態において全周に亘って内向きに突出する環状突部16が形成されている(
図4を参照)。この環状突部16は、シール材30に形成された環状凹部36に係止される。
【0028】
チャンバー部17は、上方から天板部14に接合されている。チャンバー部17は、底板部11及び天板部14に応じた平面視矩形状(具体的には、長方形状)に形成されている。チャンバー部17は、縦横(長手方向及び短手方向)に延びる複数の側壁18によって区画形成された複数の収容空間Cを有している。本実施形態では、収容空間Cは、縦横に並ぶ直交格子状に配列されている。図示の例では、4行6列に亘って計24個の収容空間Cが設けられているが、このような構成に限定されることなく、収容空間Cの個数や行数、列数は使用目的に応じて適宜変更されて良い。収容空間Cは、カップ20及び/又は培地が収容される空間となる。
【0029】
本実施形態では、短手方向に並ぶ4つの収容空間Cのうちの連続する3つの収容空間Cが流路13によって互いに連通されて1つの試験系が構成されている。また、短手方向に並ぶ4つの収容空間Cのうちの残余の1つの収容空間Cによって静置対照系が構成されている。そして、1台の細胞培養用デバイス1全体で、6つの試験系と6つの静置対照系とが設けられている。
【0030】
本体部10は、例えば樹脂やガラス等で構成することができる。カップ20の底面22に培養される細胞を容易に光学的に観察可能とするため、本体部10は、透明材料で構成されることが好ましい。また、コストや取り扱いの容易性の点から、本体部10は、樹脂材料で構成されることが好ましい。本体部10は、例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びエポキシ系樹脂等で構成することができる。
【0031】
カップ20は、本体部10に対して着脱自在に取り付けられる。
図1及び
図2に示すように、カップ20は、筒状部21と、筒状部21の一端に設けられた底面22と、筒状部21の他端に設けられた係止部24とを有する。本実施形態では、筒状部21は、一端側(底面22側)から他端側(係止部24側)に向かうに従って次第に拡径するテーパー付円筒状に形成されている。
【0032】
カップ20の底面22は、筒状部21とは別体の多孔フィルム23で構成されている。筒状部21の下端部に多孔フィルム23が接合されて、当該多孔フィルム23が底面22となっている。筒状部21と多孔フィルム23との接合は、例えば熱溶着、超音波溶着、レーザー溶着、及び接着剤等によって行うことができる。多孔フィルム23は、多数の微小な貫通孔を有している。多孔フィルム23の貫通孔の直径は特に限定されないが、例えば0.1μm~20μmとすることができる。貫通孔の直径は、0.2μm~15μmであることが好ましく、0.3μm~10μmであることがより好ましい。
【0033】
多孔フィルム23は、例えばシリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート系樹脂等で構成することができる。また、多孔フィルム23は、培養する細胞の接着性を良くするために、細胞接着因子でコーティングされていても良い。細胞接着因子としては、例えばコラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ラミニン、及びプロテオグリカン等を例示することができる。
【0034】
係止部24は、筒状部21の上端から外側に向かって突出している。本実施形態では、複数の係止部24が周方向に均等に配置されており、具体的には3つの係止部24が中心角120°間隔で設けられている。
【0035】
カップ20(上述した多孔フィルム23以外の部分)は、例えば樹脂やガラス等で構成することができる。コストや取り扱いの容易性の点から、カップ20は、樹脂材料で構成されることが好ましい。カップ20は、例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びエポキシ系樹脂等で構成することができる。
【0036】
カップ20は、底面22が本体部10に形成された流路13に臨む状態となるように、開口部15に対して着脱自在に取り付けられる。カップ20は、間にシール材30を介在する状態で、開口部15に対して着脱自在に取り付けられる。
【0037】
シール材30は、本体部10とカップ20との間に介在されて、本体部10とカップ20との密封性を高めるための部材である。
図3に示すように、シール材30は、円筒状の筒状部31を主体として構成されている。筒状部31は、本体部10に形成された開口部15の内径に対応する外径を有するとともに、カップ20の下端部側の外径に対応する内径を有している。筒状部31の高さは、開口部15が形成されている天板部14の高さ(厚さ)よりも高い。
【0038】
本体部10とカップ20との密封性を確保するため、シール材30は、柔らかい材料で構成されることが好ましく、例えばゴムや樹脂等で構成することができる。シール材30がゴムで構成される場合の具体的な材料例としては、例えばニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びブチルゴム等が例示される。
【0039】
シール材30は、細胞培養用デバイス1が例えば定量分析で使用される場合等における薬剤等の吸着を回避できる点で、樹脂で構成されることが好ましい。シール材30が樹脂で構成される場合の具体的な材料例としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアセタール、及びフッ素樹脂等が例示される。中でも、シール材30は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂で構成されていることが好ましく、特に低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
【0040】
シール材30は、例えば射出成形やトランスファー成形、コンプレッション成形等の方法によって一体的に形成することができる。
【0041】
図3及び
図4に示すように、シール材30は、筒状部31の内周面に、内向き環状リブ32と縦リブ33とを有している。本実施形態では、シール材30は、全周に亘って連続して内向きに突出する1つの内向き環状リブ32と、高さ方向に沿って延びつつ内向きに突出する複数の縦リブ33とを有している。また、シール材30は、筒状部31の外周面に、環状凹部36を有している。
【0042】
内向き環状リブ32の突出高さは、特に限定されないが、例えば0.05mm~1mmとすることができる。内向き環状リブ32は、筒状部31における下方側の領域に設けられている。内向き環状リブ32は、本体部10にカップ20が取り付けられたとき、カップ20の筒状部21の外周面に対して全周に亘って小面積で密着する。これにより、本体部10とカップ20との間の面圧を高めて、液漏れを効果的に防止することができる。
【0043】
縦リブ33の突出高さは、特に限定されないが、内向き環状リブ32の突出高さと等しいか、それよりも僅かに低く設定されていることが好ましい。具体的には、縦リブ33の突出高さは、例えば0.05mm~1mmとすることができる。複数の縦リブ33は、周方向に均等に設けられている。本実施形態では、6つの縦リブ33が中心角60°間隔で設けられている。このような縦リブ33を備えることで、シール材30全体の強度が高められている。
【0044】
また、複数の縦リブ33が一種の取付ガイドとしての役割を果たし、内向き環状リブ32に対してカップ20を取り付ける際に、中心がズレることなく均等に取り付けることができる。よって、本体部10とカップ20との密封性をさらに高めることができ、これらの間からの液漏れを効果的に防止することができる。
【0045】
環状凹部36は、筒状部31において、内向き環状リブ32と表裏の関係となるように設けられている。環状凹部36は、筒状部31における高さ方向の内向き環状リブ32が設けられた位置において、内向きに突出する内向き環状リブ32の形状に応じて内向きに窪むように形成されている。環状凹部36の深さは、特に限定されないが、例えば0.05mm~1mmとすることができる。
図4に示すように、環状凹部36には、本体部10の開口部15に形成された環状突部16が係止する。これらの環状凹部36と環状突部16とが互いに係合することにより、本体部10に取り付けられた状態のシール材30の、本体部10からの離脱を抑止することができる。例えば本体部10からカップ20を取り外すときにも、本体部10からのシール材30の離脱を抑止することができる。本実施形態では、環状凹部36と環状突部16との組により、「抜け止め構造R」が構成されている。
【0046】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、シール材30に内向き環状リブ32が1つだけ設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、2つ以上の内向き環状リブ32がシール材30に設けられても良い。或いは、シール材30に内向き環状リブ32(この場合、縦リブ33も)が設けられず、筒状部31の内周面が全面でカップ20に密着するように構成されても良い。
【0047】
(2)上記の実施形態では、シール材30に6つの縦リブ33が周方向に均等に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、7つ以上の縦リブ33がシール材30に設けられても良いし、5つ以下の縦リブ33がシール材30に設けられても良い。複数の縦リブ33が設けられる場合、それらは、周方向に不均等に配置されても良い。或いは、シール材30に縦リブ33が設けられなくても良い。
【0048】
(3)上記の実施形態で説明したシール材30において、例えば
図5に示すように、筒状部31の外周面に全周に亘って連続して外向きに突出する外向き環状リブ38が設けられても良い。このような外向き環状リブ38を設けることで、外向き環状リブ38が全周に亘って本体部10の開口部15の内面に当接して、本体部10とシール材30との間からの液漏れを効果的に防止することができる。外向き環状リブ38は、図示の例のように1つだけ設けられても良いし、2つ以上設けられても良い。
【0049】
(4)上記の実施形態では、シール材30に設けられた環状凹部36と本体部10に設けられた環状突部16との組によって抜け止め構造Rが構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、シール材30に設けられた環状突部と本体部10に設けられた環状凹部との組によって抜け止め構造Rが構成されても良い。また、抜け止め構造Rを構成する突部と凹部との組は、必ずしも環状である必要はなく、少なくとも一方が周方向に断続的に形成されても良い。また、本体部10からのシール材30の離脱を抑止できるものであれば、他の構造が抜け止め構造Rとして備えられても良い。
【0050】
(5)上記の実施形態では、シール材30に環状凹部36が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、環状凹部36が設けられなくても良い。
【0051】
(6)上記の実施形態では、カップ20の底面22が多孔フィルム23で構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、少なくとも細胞培養可能なものであれば、例えばビトリゲル(登録商標)のようなコラーゲン膜等でカップ20の底面22を構成しても良い。この場合、当該コラーゲン膜が「細胞培養可能な膜」に相当する。
【0052】
(7)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 細胞培養用デバイス
10 本体部
11 底板部
12 溝部
13 流路
14 天板部
15 開口部
16 環状突部
17 チャンバー部
18 側壁
20 カップ
21 筒状部
22 底面
23 多孔フィルム(細胞培養可能な膜)
24 係止部
30 シール材
31 筒状部
32 内向き環状リブ
33 縦リブ
36 環状凹部
38 外向き環状リブ
R 抜け止め構造
C 収容空間