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特開2023-139939液体循環装置、液体吐出ユニット、および液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139939
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】液体循環装置、液体吐出ユニット、および液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20230927BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20230927BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B41J2/175 121
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045724
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】油座 雅尚
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB16
2C056EB32
2C056EC15
2C056EC17
2C056EC20
2C056EC43
2C056EC44
2C056FA02
2C056KB16
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】液体の粘度が増加しても、液体の粘度を容易に戻すことができる技術を提供する。
【解決手段】液体循環装置は、液体を貯留する負圧タンクおよび正圧タンクと、負圧タンクと正圧タンクの圧力差に基づき、正圧タンクから液体吐出ヘッドを介して負圧タンクに液体を移送させる液体移送経路と、負圧タンクから正圧タンクに液体を回帰させる液体回帰経路と、を含む液体循環系を有する。液体循環装置は負圧タンクまたは正圧タンクの液体から蒸発する蒸発水分量に関わる指標を測定する蒸発水分量測定部と、液体循環系に水を供給する給水ポンプと、蒸発水分量測定部が測定した蒸発水分量に関わる指標に基づき、給水ポンプの動作を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を循環させて液体吐出ヘッドから当該液体を吐出する液体循環装置であって、
前記液体を貯留する負圧タンクおよび正圧タンクと、
前記負圧タンクと前記正圧タンクの圧力差に基づき、前記正圧タンクから前記液体吐出ヘッドを介して前記負圧タンクに前記液体を移送させる液体移送経路と、
前記負圧タンクから前記正圧タンクに前記液体を回帰させる液体回帰経路と、を含む液体循環系を有し、
前記負圧タンクまたは前記正圧タンクの前記液体から蒸発する蒸発水分量に関わる指標を測定する蒸発水分量測定部と、
前記液体循環系に水を供給する給水ポンプと、
前記蒸発水分量測定部が測定した前記蒸発水分量に関わる指標に基づき、前記給水ポンプの動作を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とする液体循環装置。
【請求項2】
前記給水ポンプが設けられる水供給経路が前記負圧タンクに接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体循環装置。
【請求項3】
前記負圧タンクに接続される負圧エア経路と、
前記負圧エア経路に設けられ、前記負圧タンクに負圧を付与する負圧エアポンプと、
前記負圧エア経路に接続される負圧エアタンクと、
前記正圧タンクに接続される正圧エア経路と、
前記正圧エア経路に設けられ、前記正圧タンクに正圧を付与する正圧エアポンプと、
前記正圧エア経路に接続される正圧エアタンクと、を有し、
前記蒸発水分量測定部は、前記負圧エア経路に設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体循環装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記蒸発水分量に関わる指標に基づき、前記給水ポンプのポンプ動作時間を算出し、当該ポンプ動作時間にわたって前記給水ポンプを動作させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体循環装置。
【請求項5】
前記液体を収容した液体供給タンクと、
前記液体供給タンクの前記液体を前記液体循環系に供給する液体供給ポンプと、を有し、
前記制御部は、前記液体供給ポンプの停止状態で、前記蒸発水分量測定部による測定と、前記給水ポンプによる前記液体循環系への前記水の供給と、を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体循環装置。
【請求項6】
前記液体回帰経路に設けられて前記負圧タンクから前記正圧タンクに前記液体を循環させる液体回帰ポンプを有し、
前記制御部は、前記給水ポンプによる前記液体循環系への前記水の供給に伴い、前記液体回帰ポンプを動作させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体循環装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記蒸発水分量測定部による測定と、前記給水ポンプによる前記液体循環系への前記水の供給と、を所定の周期毎に繰り返して行う、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体循環装置。
【請求項8】
液体を循環させて液体吐出ヘッドから当該液体を吐出する液体循環装置と、前記液体循環装置を移動させるキャリッジと、を含む液体吐出ユニットであって、
前記液体循環装置は、
前記液体を貯留する負圧タンクおよび正圧タンクと、
前記負圧タンクと前記正圧タンクの圧力差に基づき、前記正圧タンクから前記液体吐出ヘッドを介して前記負圧タンクに前記液体を移送させる液体移送経路と、
前記負圧タンクから前記正圧タンクに前記液体を回帰させる液体回帰経路と、を含む液体循環系を有し、
前記負圧タンクまたは前記正圧タンクの前記液体から蒸発する蒸発水分量に関わる指標を測定する蒸発水分量測定部と、
前記液体循環系に水を供給する給水ポンプと、
前記蒸発水分量測定部が測定した前記蒸発水分量に関わる指標に基づき、前記給水ポンプの動作を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴する液体吐出ユニット。
【請求項9】
液体を循環させて液体吐出ヘッドから当該液体を吐出する液体循環装置と、前記液体循環装置を移動させるキャリッジと、を含む液体吐出ユニットを備え、前記液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出する装置であって、
前記液体循環装置は、
前記液体を貯留する負圧タンクおよび正圧タンクと、
前記負圧タンクと前記正圧タンクの圧力差に基づき、前記正圧タンクから前記液体吐出ヘッドを介して前記負圧タンクに前記液体を移送させる液体移送経路と、
前記負圧タンクから前記正圧タンクに前記液体を回帰させる液体回帰経路と、を含む液体循環系を有し、
前記負圧タンクまたは前記正圧タンクの前記液体から蒸発する蒸発水分量に関わる指標を測定する蒸発水分量測定部と、
前記液体循環系に水を供給する給水ポンプと、
前記蒸発水分量測定部が測定した前記蒸発水分量に関わる指標に基づき、前記給水ポンプの動作を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴する液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体循環装置、液体吐出ユニット、および液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負圧タンクおよび正圧タンクの間に圧力差を生じさせて正圧タンクから負圧タンクに液体吐出ヘッドを介してインク(液体)を移送すると共に、負圧タンクから正圧タンクにインクを回帰させる液体循環装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクの貯留状態で、エア等の気体とインクとが接した負圧タンクおよび正圧タンクを有する液体循環装置が開示されている。この種の負圧タンクおよび正圧タンクに貯留される水系のインクは、インク中に溶け込んでいる水分が界面から蒸発していく。そのため、インクの吐出を停止している期間が長いと、インクの粘度が増加することになる。
【0004】
特許文献2には、液体吐出ヘッドの吐出口をキャップにより封止することで、インクの粘度の増加を抑制する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体循環装置は、液体吐出ヘッドの吐出口の開口面積よりも負圧タンクおよび正圧タンクのそれぞれの開口面積のほうが大きい。このため、液体循環装置は、タンクに貯留されるインクの粘度を適切に調整することが求められている。
【0006】
本発明は、液体の粘度が増加しても、液体の粘度を容易に戻すことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、液体を循環させて液体吐出ヘッドから当該液体を吐出する液体循環装置であって、前記液体を貯留する負圧タンクおよび正圧タンクと、前記負圧タンクと前記正圧タンクの圧力差に基づき、前記正圧タンクから液体吐出ヘッドを介して前記負圧タンクに前記液体を移送させる液体移送経路と、前記負圧タンクから前記正圧タンクに前記液体を回帰させる液体回帰経路と、を含む液体循環系を有し、前記負圧タンクまたは前記正圧タンクの液体から蒸発する蒸発水分量に関わる指標を測定する蒸発水分量測定部と、前記液体循環系に水を供給する給水ポンプと、前記蒸発水分量測定部が測定した前記蒸発水分量に関わる指標に基づき、前記給水ポンプの動作を制御する制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記によれば、本発明は、液体の粘度が増加しても、液体の粘度を容易に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る液体循環装置の概略説明図である。
図2】制御部のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
図3】液体循環装置のインク吐出時の動作を示す模式図である。
図4】液体循環装置の粘度調整方法を示すフローチャートである。
図5】液体循環装置の粘度調整方法の動作を示す模式図である。
図6】液体吐出ユニットの一例を示す側面図である。
図7】液体吐出ユニットの一例を示す上面図である。
図8】液体吐出ユニットの一例を示す側面図である。
図9】液体を吐出する装置の機構部の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0011】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための液体循環装置、液体吐出ユニット、および液体を吐出する装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体循環装置100の概略説明図である。図1に示すように、本実施形態の液体循環装置100は、液体を収容した液体供給タンク1と、液体供給タンク1の液体が供給される負圧タンク2および正圧タンク3と、液体を吐出する液体吐出ヘッド4と、を備える。また、液体循環装置100は、各構成の動作を制御する制御部30を備える。
【0013】
負圧タンク2、正圧タンク3および液体吐出ヘッド4は、液体を循環させつつ、液体吐出ヘッド4から液体を吐出する液体循環系5を形成している。液体循環装置100は、液体供給タンク1と液体循環系5とを接続する液体供給経路6と、液体供給経路6に設けられて液体供給タンク1の液体を液体循環系5に圧送する液体供給ポンプ7と、を有する。
【0014】
液体供給タンク1は、液体循環系5に液体を供給する供給源である。液体供給タンク1に貯留される液体は、水が溶け込んだ水系のインクがあげられる。よって、以下、液体循環装置100が吐出する液体をインクともいう。
【0015】
液体供給経路6は、インクを流通可能な複数のチューブにより構成され、液体供給タンク1と負圧タンク2との間を接続している。なお、液体供給経路6は、負圧タンク2にインクを供給する構成に限定されず、液体循環系5の別の構成にインクを供給してもよい。例えば、液体供給経路6は、正圧タンク3に接続される構成をとり得る。
【0016】
液体供給ポンプ7は、制御部30の制御に基づき動作して、適宜のタイミングで液体供給タンク1のインクを負圧タンク2に供給する。例えば、液体循環装置100は、液体循環系5のインクの残量をセンサ等により継続的に監視して、インクの残量が所定以下になった場合に、液体供給ポンプ7を動作して液体供給タンク1から負圧タンク2にインクを補給する。
【0017】
液体循環系5は、正圧タンク3から液体吐出ヘッド4を介して負圧タンク2にインクを移送させる液体移送経路8と、負圧タンク2から正圧タンク3にインクを循環(還流)させる液体回帰経路9と、を有する。液体移送経路8および液体回帰経路9は、インクを流通可能なチューブにより構成される。
【0018】
液体移送経路8は、正圧タンク3と液体吐出ヘッド4との間を接続する第1ヘッド経路8aと、負圧タンク2と液体吐出ヘッド4との間を接続する第2ヘッド経路8bと、を含む。第1ヘッド経路8aは、正圧タンク3の底部に接続されている。第2ヘッド経路8bは、負圧タンク2の底部に接続されている。
【0019】
一方、液体回帰経路9には、負圧タンク2のインクを正圧タンク3に圧送する液体回帰ポンプ10が設けられている。液体回帰ポンプ10は、制御部30の制御に基づき動作して、適宜のタイミングで負圧タンク2のインクを正圧タンク3に送液する。
【0020】
負圧タンク2および正圧タンク3は、相互の圧力差に基づいて液体吐出ヘッド4にインクを移送する。負圧タンク2の圧力に対して正圧タンク3の圧力が高いことで、正圧タンク3は、第1ヘッド経路8aを介して液体吐出ヘッド4にインクを流通する一方で、負圧タンク2は、第2ヘッド経路8bを介して液体吐出ヘッド4からインクを回収する。負圧タンク2に回収されたインクは、液体回帰ポンプ10の動作下に正圧タンク3に圧送される。
【0021】
また、本実施形態に係る液体循環装置100は、負圧タンク2および正圧タンク3の内圧を調整するエア給排系11を備えている。エア給排系11は、負圧タンク2に接続される負圧エアタンク12と、正圧タンク3に接続される正圧エアタンク13と、を含む。
【0022】
また、エア給排系11は、負圧タンク2と負圧エアタンク12との間を接続する負圧エア経路14、および負圧エア経路14に設けられて負圧タンク2を減圧する負圧エアポンプ15を有する。負圧エアタンク12には、タンク内のエアを排出するエア排気経路18が接続されている。さらに、エア給排系11は、正圧タンク3と正圧エアタンク13との間を接続する正圧エア経路16、および正圧エア経路16に設けられて正圧タンク3を加圧する正圧エアポンプ17を有する。正圧エアタンク13には、タンク内にエアを供給するエア給気経路19が接続されている。負圧エア経路14、正圧エア経路16、エア排気経路18およびエア給気経路19は、気体を流通可能な1以上のチューブにより構成される。
【0023】
負圧エアタンク12の体積は、負圧タンク2の体積よりも大きい。同様に、正圧エアタンク13の体積は、正圧タンク3の体積よりも大きい。液体循環装置100は、小容量の負圧タンク2および正圧タンク3を液体吐出ヘッド4の上部に配置することが可能となる一方で、大容量の負圧エアタンク12および負圧エアタンク12を液体吐出ヘッド4から離れた位置に配置することができる。
【0024】
なお、液体循環装置100は、複数の負圧タンク2を備える一方で、複数の負圧タンク2に対して1つの正圧エアタンク13を接続した構成でもよい。また、液体循環装置100は、複数の正圧タンク3を備える一方で、複数の正圧タンク3に対して1つの負圧エアタンク12を接続した構成でもよい。あるいは、複数の負圧タンク2の各々に負圧エアタンク12を接続した構成でもよく、複数の正圧タンク3の各々に正圧エアタンク13を接続した構成でもよい。
【0025】
液体循環装置100は、以上のエア給排系11の設置より、負圧タンク2内および正圧タンク3内のエア容積を実質的に増加させることで、エアダンパ効果を得ることができる。これにより、負圧タンク2内のインクへのエアの溶解を低減して、気泡の発生および液体吐出ヘッド4におけるインクの吐出不良の発生を防ぐことが可能となる。また、液体循環装置100は、インクの循環時の脈動およびインクの吐出時の大きな圧力変動の発生を低減できる。
【0026】
以上のように構成される液体循環装置100は、負圧タンク2および正圧タンク3の各々において水系のインクと気体であるエアとを収容しており、インクとエアとの間に界面が形成される。負圧タンク2および正圧タンク3に貯留されたインクは、気体との界面において気体に接触していることで、溶け込んでいる水分が界面から容易に蒸発する。液体吐出ヘッド4のインクの吐出停止期間(非印刷期間)が長いと、多くの水分が抜けて、インクの粘度が増加することになる。
【0027】
このことから、本実施形態に係る液体循環装置100は、液体循環系5に水を供給する水供給系21を備えることで、インクの粘度を調整する構成としている。具体的には、水供給系21は、水を収容した貯水タンク22と、貯水タンク22と液体循環系5との間を接続する水供給経路23と、水供給経路23に設けられた給水ポンプ24と、を含む。また、液体循環装置100は、液体循環系5のインクから蒸発する水分量を測定するための蒸発水分量測定部25を備える。
【0028】
貯水タンク22は、液体循環系5に水を供給する供給源である。貯水タンク22に貯留される水は、不純物が可及的に低減された純水であることが好ましい。これにより、液体循環装置100は、水の供給に伴うインクの改質を低減できる。
【0029】
水供給経路23は、水を流通可能な複数のチューブにより構成され、貯水タンク22と負圧タンク2との間を接続している。すなわち、水供給経路23は、液体供給タンク1の液体供給経路6が接続されるタンクと同じタンクに接続されており、水供給系21は、負圧タンク2に貯留されたインクに水を補給する構成となっている。なお、水供給経路23は、液体循環系5の別の構成に水を供給してもよい。例えば、水供給経路23は、正圧タンク3に接続される構成をとり得る。
【0030】
給水ポンプ24は、制御部30の制御に基づき動作して、適宜のタイミングで貯水タンク22の水を負圧タンク2に供給する。この水の供給する際の動作については、後に詳述する。
【0031】
蒸発水分量測定部25は、水供給経路23が接続されている負圧タンク2のインクから蒸発する蒸発水分量に関わる指標を測定する。このため、蒸発水分量測定部25は、負圧タンク2と負圧エアタンク12との間を接続する負圧エア経路14に設置されている。蒸発水分量測定部25は、制御部30に通信可能に接続され、測定した蒸発水分量に関わる指標を制御部30に送信する。
【0032】
蒸発水分量測定部25に適用する装置は、測定した指標(物理量)を蒸発水分量に換算できるものであれば、特に限定されない。例えば、蒸発水分量測定部25として、蒸気圧測定装置、露点計、水蒸気吸着測定装置、水蒸気透過率測定装置あるいは湿度計等を適用することができる。
【0033】
制御部30は、以上の液体循環装置100における各構成(液体供給ポンプ7、液体回帰ポンプ10、負圧エアポンプ15、正圧エアポンプ17、給水ポンプ24等)を制御して、液体循環系5内でインクを循環させて液体吐出ヘッド4からインクを吐出する。
【0034】
図2は、制御部30のハードウェアの構成例を示すブロック図である。図2に示すように、制御部30は、プロセッサ31、メモリ32、入力インタフェース33、出力インタフェース34、タイマ35等を、バス36により接続したコンピュータを適用することができる。プロセッサ31は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ32は、RAM(Random Access Memory)32a、ROM(Read Only Memory)32b、ハードディスク、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等を適宜組み合わせたものである。
【0035】
メモリ32は、液体循環装置100を動作させるプログラムを記憶している。プロセッサ31は、メモリ32のプログラムを読み出して実行することで、液体循環装置100の各構成を制御する。制御部30は、ネットワークを介して情報通信するホストコンピュータまたは複数のクライアントコンピュータにより構成されてもよい。
【0036】
入力インタフェース33には、蒸発水分量測定部25等が接続されている。蒸発水分量測定部25が測定した測定信号(蒸発水分量に関わる指標)は、入力インタフェース33を介してメモリ32に記憶される。出力インタフェース34には、給水ポンプ24に電力を供給するドライバ26等が接続されている。プロセッサ31は、出力インタフェース34を介してドライバ26に給水ポンプ24を制御する制御信号(目標回転数、回転開始、回転停止等)を出力する。ドライバ26は、受信した制御信号に基づき、給水ポンプ24に調整した電力を供給して給水ポンプ24を動作させる。
【0037】
本実施形態に係る液体循環装置100は、基本的には以上のように構成され、以下その動作について図3図5を参照して説明する。図3は、液体循環装置100のインク吐出時の動作を示す模式図である。図4は、液体循環装置100の粘度調整方法を示すフローチャートである。図5は、液体循環装置の粘度調整方法の動作を示す模式図であり、(A)は蒸発水分量の測定時、(B)は水の補給時である。
【0038】
図3に示すように、液体循環装置100は、液体吐出ヘッド4からインクを吐出する際に、液体供給タンク1から液体循環系5にインクを供給しつつ、液体循環系5内においてインクを循環させる。具体的には、制御部30は、液体供給タンク1から液体循環系5へのインクの供給において、液体供給ポンプ7の動作を制御して、液体供給経路6を介して負圧タンク2にインクを供給する。
【0039】
また、制御部30は、正圧エアポンプ17の動作を制御して、正圧エアタンク13から正圧エア経路16を通して正圧タンク3内に正圧を付与して、正圧タンク3の内圧を調整する。これと同時に、制御部30は、負圧エアポンプ15の動作を制御して、負圧エア経路14を通して負圧タンク2に負圧を付与して、負圧タンク2の内圧を調整する。負圧エアポンプ15により吸引された負圧タンク2のエアは、負圧エアタンク12を介して外部に排出される。
【0040】
これにより、液体循環系5では、負圧タンク2と正圧タンク3との間に所定の圧力差が生じる。正圧タンク3に貯留されていたインクは、液体移送経路8の第1ヘッド経路8aを通って液体吐出ヘッド4に導かれる。液体吐出ヘッド4は、供給された一部のインクを当該液体吐出ヘッド4の下方の吐出口に流通させることにより、インクを吐出する。液体吐出ヘッド4に供給された残りのインクは、上記のタンク間の圧力差によって、液体移送経路8の第2液体吐出ヘッド4bを通って負圧タンク2移送液される。このインクは、負圧タンク2内に一時的に貯留され、この際に液体供給タンク1からインクが供給された場合にはこのインクと混じり合う。
【0041】
さらに、制御部30は、液体回帰ポンプ10の動作を制御して、負圧タンク2から液体回帰経路9を通して正圧タンク3にインクを回帰させる。換言すれば、液体循環装置100は、印刷等において、負圧タンク2、正圧タンク3および液体吐出ヘッド4の間でインクを循環させつつ、液体供給タンク1からインクを供給することで、液体吐出ヘッド4のインクの吐出の安定化を図ることができる。
【0042】
液体循環装置100は、印刷等の停止において、液体供給ポンプ7、液体回帰ポンプ10の動作を停止して、液体循環系5のインクの循環を停止する。この際、負圧タンク2内においてエアと接しているインクは、界面LFから徐々に水分が蒸発していく。そして、長期間にわたってインクから水分が蒸発すると、インクの粘度が増加することになる。このため、本実施形態に係る液体循環装置100は、印刷の停止時(インクの循環停止時)に、液体循環系5のインクの粘度を調整する粘度調整方法を行う。以下、粘度調整方法の処理フローについて図4を参照しながら説明する。
【0043】
粘度調整方法において、制御部30は、負圧エア経路14の蒸発水分量測定部25により、負圧タンク2のインクから蒸発した蒸発水分量に関わる指標を継続的に測定し、蒸発水分量測定部25から蒸発水分量に関わる情報を取得する(ステップS1)。図5(A)に2点鎖線で示すように、負圧タンク2内では、時間経過に伴ってインクに含まれる水分が徐々に蒸発していく。蒸発した水分は、負圧エア経路14を通って負圧エアタンク12に向かう。このため、液体循環装置100は、負圧タンク2のインクから蒸発した蒸発水分量を、蒸発水分量測定部25において精度よく監視することができる。
【0044】
そして、制御部30は、取得した蒸発水分量に関わる指標に基づき、給水ポンプ24が負圧タンク2に水を供給する際のポンプ動作時間を算出する(ステップS2)。制御部30は、例えば、印刷の停止時に、継続的にサンプリングされる蒸発水分量に関わる指標に基づき、蒸発水分量の累積和を算出する。これにより、負圧タンク2のインクにおいて減少した全体の蒸発水分量を精度よく認識することができる。
【0045】
また、制御部30は、算出した蒸発水分量に基づき、例えば、メモリ32に記憶されているマップ情報または関数を用いて、ポンプ動作時間を抽出または算出する。制御部30は、ポンプ動作時間の算出について、予め定められた補給周期(例えば、1時間)毎に行い、以降の処理も補給周期毎に繰り返して行う。
【0046】
またポンプ動作時間の算出に伴って、制御部30は、内部においてタイマカウントを初期化する(ステップS3)。タイマカウントは、給水ポンプ24のポンプ動作時間に対応したものであり、制御部30のタイマ35の計時に連動してカウントが変動する。
【0047】
そして、制御部30は、算出したポンプ動作時間をセットして、給水ポンプ24を駆動開始すると共に、タイマカウントにおけるカウントを開始する(ステップS4)。これにより図5(B)に示すように、給水ポンプ24は、貯水タンク22の水を一定の流量で送液して負圧タンク2に供給することができる。負圧タンク2内では、供給された水がインクに混ざることにより液位が上昇し、またインクの粘度が低下するようになる。
【0048】
そして、制御部30は、給水ポンプ24の動作中に、タイマカウントのカウントを行い、セットしたポンプ動作時間にカウントが達したか否かを判定する(ステップS5)。タイマカウントがポンプ動作時間に達していない場合(ステップS5:NO)、ステップS6に進み、給水ポンプ24による水の供給およびタイマカウントのカウントを継続する。粘度調整方法は、ステップS6の後にステップS5に戻り、タイマカウントのカウントとポンプ動作時間との比較を繰り返す。
【0049】
そして、制御部30は、タイマカウントのカウントがポンプ動作時間に達した場合(ステップS5:YES)、貯水タンク22から供給した水が蒸発水分量に達したことになる。このため、制御部30は、ステップS7に進み、給水ポンプ24を駆動停止して、今回の補給周期におけるインクへの水の補給を終了する(ステップS7)。これにより、液体循環装置100は、蒸発水分量に対応した供給量の水を補給することができる。
【0050】
また、制御部30は、負圧タンク2への水の補給の終了後に、ステップS1に戻り、蒸発水分量測定部25による測定を継続して、負圧タンク2の蒸発水分量を監視する。そして、次の補給周期において、再び上記の処理フローのステップS2以降の処理を行う。
【0051】
なお、粘度調整方法は、上記の処理に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、粘度調整方法は、貯水タンク22から蒸発水分量の水を負圧タンク2に供給できれば、その制御方法については特に限定されるものではない。一例として、液体循環装置100は、水供給経路23または給水ポンプ24自体に水の供給量(流量)を検出するセンサを備え、制御部30は、センサの検出信号を受信して蒸発水分量の水を供給したタイミングで給水ポンプ24の動作を停止する構成としてもよい。
【0052】
また、液体循環装置100は、蒸発水分量に基づき給水ポンプ24の回転速度を調整して、単位時間当たりの水の供給量を調整してもよい。この場合、ポンプ駆動時間は、単位時間当たりの水の供給量に基づき適宜変更すればよい。
【0053】
液体循環装置100は、水供給経路23の流路を開閉する開閉バルブを備え、水の供給開始時に開閉バルブを開放する一方で、水の供給停止時に開閉バルブを閉塞する構成でもよい。これにより、水の供給量の調整精度をより高めることができる。
【0054】
液体循環装置100は、所定の補給周期毎に水を供給する構成に限定されず、例えば、蒸発水分量測定部25で測定した蒸発水分量に関わる指標に基づき、蒸発水分量が所定の閾値以上となった場合に水の供給を開始する構成でもよい。この場合、負圧タンク2に供給する水の量は常に一定となるため、予め定められたポンプ駆動時間をセットして供給を行うことができる。
【0055】
制御部30は、負圧タンク2の蒸発水分量に基づき、正圧タンク3の蒸発水分量を推定し、液体循環系5全体として蒸発水分量を算出してもよい。例えば、負圧タンク2と正圧タンク3の容積および形状が同じであり、インクの貯留量が略一致している場合に、負圧タンク2の蒸発水分量の2倍を液体循環系5全体の蒸発水分量として算出する。
【0056】
そして、制御部30は、算出した液体循環系5全体の蒸発水分量と同量の水を、貯水タンク22から供給する。また、負圧タンク2への水の供給時または供給後に、制御部30は、液体回帰ポンプ10を駆動して負圧タンク2に供給された水の一部を正圧タンク3に送液する。これにより、負圧タンク2と正圧タンク3の両方のインクの粘度を元に戻すことができる。
【0057】
また、負圧タンク2からの蒸発水分量に関わる指標を測定する方法は、特に限定されるものではない。例えば、液体循環装置100は、負圧タンク2のインクの液位を液位センサにより測定し、制御部30において、測定した液位の変化量に基づき、蒸発水分量を容易に算出することができる。あるいは、液体循環装置100は、負圧タンク2の重量を重量センサにより測定し、制御部30において、測定した重量の変化量に基づき、蒸発水分量を算出することもできる。さらに、液体循環装置100は、負圧タンク2のインクの濃度を濃度センサまたは光学センサ等により測定し、制御部30において、測定した濃度の変化に基づき、蒸発水分量を算出することもできる。もちろん、液体循環装置100は、負圧タンク2のインクの粘度を粘度センサ等により直接測定し、制御部30において、測定した粘度の変化に基づき、蒸発水分量を算出してもよい。
【0058】
次に、以上の液体循環装置100を搭載してインクジェット式の液体吐出ユニットについて図6図8を参照して説明する。図6は、液体吐出ユニットの一例を示す側面図である。図7は、液体吐出ユニットの一例を示す上面図である。図8は、液体吐出ユニットの一例を示す側面図である。
【0059】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化したものであり、液体を吐出する機能に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0060】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッド4と機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0061】
例えば、液体吐出ユニット440として、図6に示すように液体吐出ヘッド404(液体循環装置100の液体吐出ヘッド4に相当)と、液体吐出ヘッドタンク441とが一体化されているものがある。液体吐出ユニット440はキャリッジ403に搭載されている。キャリッジ403は、主走査移動機構を構成するガイド部材401により保持され、主走査方向に往復移動する。
【0062】
図6には、後述する液体を吐出する装置を構成している部材のうち、被記録媒体(例えば、用紙等)を搬送するための手段である搬送ベルト412を示している。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと液体吐出ヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッドタンク441と液体吐出ヘッド404との間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニット440として、液体吐出ヘッド404とキャリッジ403が一体化されているものがある。
【0063】
また、液体吐出ユニット440として、液体吐出ヘッド404を主走査移動機構の一部を構成するガイド部材401に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッド404と主走査移動機構493が一体化されているものがある。また、図7に示すように、液体吐出ヘッド404とキャリッジ403と主走査移動機構493が一体化されているものがある。
【0064】
図7に示す液体吐出ユニット440は、後述する液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491Bおよび背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。図中矢印D1は主走査方向を示す。また、液体吐出ユニット440として、液体吐出ヘッド404が取り付けられたキャリッジ403に、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッド404とキャリッジ403と維持回復機構が一体化されているものがある。
【0065】
また、液体吐出ユニット440として、図8に示すように流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404にチューブ456が接続されて、液体吐出ヘッド404と供給機構が一体化されているものがある。このチューブ456を介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッド404に供給される。流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えて液体吐出ヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0066】
〔液体を吐出する装置〕
図9は、液体を吐出する装置の機構部の一例を示す平面図である。液体を吐出する装置の一例としては、図9に示すように、シリアル型の画像形成装置があげられる。
【0067】
上述の本発明に係る液体循環装置100は、図中の第1液体吐出ヘッド4aおよび第2液体吐出ヘッド4b(区別しないときは「液体吐出ヘッド4」という)に図1で示した、各タンクが取り付けられてなる。
【0068】
図9に示す液体を吐出する装置は、左右の側板に横架した主ガイド部材101および従ガイド部材でキャリッジ103を移動可能に保持している。そして、主走査モータ105によって、駆動プーリ106と従動プーリ107間に架け渡したタイミングベルト108を介して主走査方向(キャリッジ移動方向)D1に往復移動する。
【0069】
このキャリッジ103には、液体吐出ヘッド4を搭載している。液体吐出ヘッド4は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する。また、液体吐出ヘッド4は、複数のノズルからなるノズル列8nを主走査方向D1と直交する副走査方向D2に配置し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0070】
液体吐出ヘッドには、例えば、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータを用いることができる。
【0071】
一方、用紙Pを搬送するために、用紙を静電吸着して液体吐出ヘッド4に対向する位置で搬送するための用紙搬送手段である用紙搬送ベルト112を備えている。この用紙搬送ベルト112は無端状ベルトであり、ベルト搬送ローラ113とテンションローラ114との間に掛け渡されている。
【0072】
そして、用紙搬送ベルト112は、副走査モータ116によってタイミングベルト117およびタイミングプーリ118を介してベルト搬送ローラ113が回転駆動されることによって、副走査方向D2に周回移動する。この用紙搬送ベルト112は、周回移動しながら帯電ローラによって帯電(電荷付与)される。
【0073】
さらに、キャリッジ103の主走査方向D1の一方側には用紙搬送ベルト112の側方に液体吐出ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構(クリーニング部)120が配置され、他方側には用紙搬送ベルト112の側方に液体吐出ヘッド4から空吐出を行う空吐出受け121がそれぞれ配置されている。維持回復機構120は、例えば液体吐出ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材120a、ノズル面を払拭する払拭機構120b、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出受けなどで構成されている。払拭機構120bとしては、後述する液体を吸収可能な長尺状の払拭部材を少なくとも備え、さらに弾性材料(例えば、ゴム等)によって形成されたブレード状の部材を備えていてもよい。
【0074】
また、用紙搬送ベルト112と維持回復機構120との間の記録領域外であって、液体吐出ヘッド4に対向可能な領域には、吐出検知ユニット110が配置されている。一方、キャリッジ103には、吐出検知ユニット110の電極板を清掃する清掃ユニット200が設けられている。
【0075】
また、キャリッジ103の主走査方向D1に沿って両側板間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール123を張装し、キャリッジ103にはエンコーダスケール123のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ124を設けている。これらのエンコーダスケール123とエンコーダセンサ124によってキャリッジ103の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)を構成している。
【0076】
また、ベルト搬送ローラ113の軸にはコードホイール125を取り付け、このコードホイール125に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ126を設けている。これらのコードホイール125とエンコーダセンサ126によって用紙搬送ベルト112の移動量および移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)を構成している。
【0077】
このように構成した画像形成装置においては、給紙トレイから用紙Pが帯電された用紙搬送ベルト112上に給紙されて吸着され、用紙搬送ベルト112の周回移動によって用紙Pが副走査方向D2に搬送される。そこで、キャリッジ103を主走査方向D1に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙Pにインク滴を吐出して1行分を記録する。そして、用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙Pを排紙トレイに排紙する。
【0078】
なお、本明細書において「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。上述の例の他、液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中または液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0079】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0080】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0081】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0082】
また、「液体」は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0083】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0084】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルから噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る液体循環装置100、液体吐出ユニット440、液体を吐出する装置は、液体循環系5において液体から蒸発する蒸発水分量に基づき、給水ポンプ24を動作させることで、液体循環系5に適量の水を補給することができる。したがって、液体循環装置100は、蒸発により液体の粘度が増加しても、水の補給によって液体の粘度を容易に戻すことが可能となる。その結果、液体循環装置100は、液体の詰まり等をなくして安定的に吐出でき、また液体の吐出時の速度を一定に維持して吐出精度を高めることができる。
【0086】
また、液体循環装置100は、給水ポンプ24が設けられる水供給経路23が負圧タンク2に接続されている。これにより、液体循環装置100は、負圧タンク2の液体の粘度をスムーズに調整することができる。
【0087】
また、液体循環装置100は、負圧タンク2に接続される負圧エア経路14と、負圧エア経路14に設けられ、負圧タンク2に負圧を付与する負圧エアポンプ15と、負圧エア経路14に接続される負圧エアタンク12と、正圧タンク3に接続される正圧エア経路16と、正圧エア経路16に設けられ、正圧タンク3に正圧を付与する正圧エアポンプ17と、正圧エア経路16に接続される正圧エアタンク13と、を有し、蒸発水分量測定部25は、負圧エア経路14に設けられる。これにより、液体循環装置100は、負圧タンク2における液体の蒸発を蒸発水分量測定部25において精度よく測定することができる。
【0088】
また、制御部30は、蒸発水分量に関わる指標に基づき、給水ポンプ24のポンプ動作時間を算出し、当該ポンプ動作時間にわたって給水ポンプ24を動作させる。これにより、液体循環装置100は、蒸発水分量に応じた量の水を液体循環系5に精度よく供給することができる。
【0089】
また、液体循環装置100は、液体を収容した液体供給タンク1と、液体供給タンク1の液体を液体循環系5に供給する液体供給ポンプ7と、を有し、制御部30は、液体供給ポンプ7の停止状態で、蒸発水分量測定部25による測定と、給水ポンプ24による液体循環系5への水の供給と、を行う。これにより、液体循環装置100は、液体循環系5に液体が供給されていない状態(印刷停止状態)において、生じる蒸発を精度よく監視し粘度を調整することが可能となる。
【0090】
また、液体循環装置100は、液体回帰経路9に設けられて負圧タンク2から正圧タンク3に液体を循環させる液体回帰ポンプ10を有し、制御部30は、給水ポンプ24による液体循環系5への水の供給に伴い、液体回帰ポンプ10を動作させる。これにより、液体循環装置100は、液体循環系5に液体が供給されていない状態で、負圧タンク2の液体と正圧タンク3の液体とに水を供給することができ、各タンクの液体の粘度を良好に調整できる。
【0091】
また、制御部30は、蒸発水分量測定部25による測定と、給水ポンプ24による液体循環系5への水の供給と、を所定の周期毎に繰り返して行う。これにより、液体循環装置は、液体の粘度調整を所定の周期毎に行うことで、印刷開始時等において液体の粘度が高くなっている機会を低減することができる。
【0092】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 液体供給タンク
2 負圧タンク
3 正圧タンク
4 液体吐出ヘッド
5 液体循環系
7 液体供給ポンプ
8 液体移送経路
9 液体回帰経路
10 液体回帰ポンプ
12 負圧エアタンク
14 負圧エア経路
13 正圧エアタンク
15 負圧エアポンプ
16 正圧エア経路
17 正圧エアポンプ
23 水供給経路
24 給水ポンプ
25 蒸発水分量測定部
30 制御部
100 液体循環装置
103、403 キャリッジ
440 液体吐出ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】特開2020-124894号公報
【特許文献2】特開2009‐184327号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9