(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140048
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】液滴吐出装置及び液滴吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230927BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20230927BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20230927BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230927BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20230927BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230927BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230927BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01
B41J2/01 307
B41M3/00 Z
B05C11/00
B05C11/10
B05C13/02
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
B05D7/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045889
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】赤井 武志
(72)【発明者】
【氏名】山矢 優
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】野々山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】新井 大輔
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA07
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB36
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC13
2C056EC33
2C056EC35
2C056FB01
2C056FB10
2C056HA11
2C056HA12
2H113AA01
2H113AA05
2H113BA18
2H113BB09
2H113BB22
2H113BB24
2H113CA25
2H113FA55
4D075AC06
4D075AC93
4D075DA07
4D075DB13
4D075DC21
4D075DC24
4D075DC30
4F041AA03
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA24
4F041BA34
4F041BA38
4F042AA11
4F042BA08
4F042BA09
4F042BA11
4F042CB03
4F042CB11
4F042DF05
4F042DF34
4F042DH09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】凹部が形成された格納容器を吐出対象とし、凹部の深さに適した吐出動作を実行する。
【解決手段】液滴吐出装置は、凹部が複数形成された格納容器5と、吐出面を、格納容器5の凹部51に挿入して、水平方向に移動しながら凹部内へ液滴を吐出する吐出ヘッド1と、載置台と、吐出ヘッド1又は載置台を上下方向に移動させて、吐出ヘッドと載置台との上下方向相対位置を変化させる上下位置調整部と、上下位置調整制御部と、格納容器5の水平方向の位置を検出する水平位置検出部2と、一の凹部への吐出を開始する前に、上下方向基準位置から、格納容器5の凹部51の被吐出面までの距離を測定する対象位置検出部3と、を備え、上下位置調整制御部は、測定した一の凹部の被吐出面までの距離に基づいて、被吐出面に対する吐出面の吐出高さが一定になるように、吐出ヘッド1又は載置台の上下方向位置を制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納容器の凹部に液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
吐出された液滴を格納する凹部が複数形成された格納容器と、
液滴を吐出するノズル孔が形成された吐出面を、前記格納容器の凹部に挿入して、水平方向の2方向に移動しながら凹部内へ液滴を吐出する吐出ヘッドと、
前記格納容器が載置される載置台と、
前記吐出ヘッド又は前記載置台を上下方向に移動させて、前記吐出ヘッドと前記載置台との上下方向相対位置を変化させる上下位置調整部と、
前記上下位置調整部を制御する上下位置調整制御部と、
前記載置台に載置された前記格納容器の水平方向の位置を検出する水平位置検出部と、
一の凹部への吐出を開始する前に、上下方向基準位置から、前記格納容器の前記凹部の被吐出面までの距離を測定する対象位置検出部と、を備え、
前記上下位置調整制御部は、測定した前記一の凹部の被吐出面までの距離に基づいて、前記被吐出面に対する前記吐出面の吐出高さが一定になるように、前記一の凹部への吐出の際の前記吐出ヘッド又は前記載置台の上下方向位置を制御する
液滴吐出装置。
【請求項2】
前記一の凹部に対して初めて吐出する場合は、前記被吐出面は前記一の凹部の底面である
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記一の凹部の同じ位置に重ねて液滴を吐出する場合、前記被吐出面は、前記吐出ヘッドから吐出されて前記一の凹部の底面上に着弾した吐出物の上面である
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記格納容器には複数の凹部が形成されており、
前記対象位置検出部は、前記一の凹部への吐出を開始する前に、前記一の凹部の水平方向における特定の位置に対して、前記上下方向基準位置から、前記格納容器の前記凹部の被吐出面までの距離を測定し、
前記上下位置調整制御部は、測定した前記一の凹部の被吐出面までの距離に基づいて、前記被吐出面に対する前記吐出面の吐出高さが、液滴が吐出される複数の凹部間で一定になるように、前記一の凹部への吐出直前に前記吐出ヘッド又は前記載置台の上下方向位置を制御する
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記対象位置検出部は、
前記一の凹部への吐出を開始する前に、前記一の凹部の水平方向の全領域に対して、上下方向基準位置から、前記格納容器の前記凹部の被吐出面までの距離を測定し、
前記上下位置調整制御部は、測定した前記一の凹部の被吐出面までの距離に基づいて、前記被吐出面に対する前記吐出面の吐出高さが、前記一の凹部の前記水平方向の全領域において一定になるように、前記一の凹部への吐出期間中に前記吐出ヘッド又は前記載置台の上下方向位置を制御する
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記吐出ヘッドを水平方向に移動させるキャリッジを備え、
前記対象位置検出部と、前記水平位置検出部は、前記キャリッジに搭載されており、
前記吐出ヘッドと、前記対象位置検出部と、前記水平位置検出部は、相対的な位置が固定されている
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記吐出ヘッドの水平方向の位置を制御するヘッド水平位置制御部を備え、
前記水平位置検出部が撮影手段と容器位置算出部を有し、
前記載置台に対して、格納容器は取り換えて設置可能であり、
前記格納容器には、測定基準点が設定され、
前記撮影手段は、固定された撮影基準点を中心として前記載置台上の前記格納容器を撮影し、
前記容器位置算出部は、撮影された画像において、前記格納容器の前記測定基準点の、画像中心からの前記水平方向における直交する2方向のズレ量を算出して、前記載置台上の前記格納容器の位置を算出し、
前記ヘッド水平位置制御部は、位置が把握された前記格納容器における狙いの凹部の狙いの位置に対し液滴を吐出させるように、吐出動作中に前記キャリッジを駆動させて前記吐出ヘッドを移動させる
請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記載置台に、前記格納容器が載置されたことを検出する格納容器検出部を備える
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
吐出された液滴を格納する凹部が複数形成された格納容器と、
液滴を吐出するノズル孔が形成された吐出面を、前記格納容器の凹部に挿入して、凹部内へ液滴を吐出する吐出ヘッドと、
前記格納容器が載置され、水平方向の2方向に移動可能な載置台と、
前記吐出ヘッド又は前記載置台を上下方向に移動させて、前記吐出ヘッドと前記載置台との上下方向相対位置を変化させる上下位置調整部と、
前記上下位置調整部を制御する上下位置調整制御部と、
前記載置台に載置された前記格納容器の水平方向の位置を検出する水平位置検出部と、
一の凹部への吐出を開始する前に、上下方向基準位置から、前記格納容器の前記凹部の被吐出面までの距離を測定する対象位置検出部と、を備え、
前記上下位置調整制御部は、測定した前記一の凹部の底面までの距離に基づいて、前記被吐出面に対する前記吐出面の吐出高さが一定になるように、前記一の凹部への吐出時の前記吐出ヘッド又は前記載置台の上下方向位置を制御する
液滴吐出装置。
【請求項10】
格納容器の凹部へ液滴を吐出する液滴吐出装置における液滴吐出方法であって、
前記液滴吐出装置は、液滴を吐出するノズル孔が形成された吐出面を前記格納容器の凹部に挿入して水平方向に移動しながら液滴を吐出する吐出ヘッドと、載置台と、対象位置検出部と、水平位置検出部とを備え、
液滴吐出方法は、
前記水平位置検出部が、前記載置台に載置された前記格納容器の水平方向の位置を検出する水平位置検出ステップと、
前記対象位置検出部が、一の凹部への吐出を開始する前に、上下方向基準位置から、前記格納容器の前記凹部の底面までの距離を測定する可能するである対象位置検出ステップと、
測定した前記一の凹部の底面までの距離に基づいて、前記吐出ヘッドの前記吐出面の、前記一の凹部の前記底面からの距離が一定になるように、前記一の凹部への吐出時の前記吐出ヘッド又は前記載置台の上下方向位置を設定する上下位置設定ステップと、
設定された上下方向位置で、前記吐出ヘッドの一部を前記一の凹部に挿入させて、水平方向の2方向に移動しながら液滴を吐出する液滴吐出ステップと、を有する
液滴吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格納容器の凹部に液滴を吐出する液滴吐出装置および液滴吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット技術において、吐出ヘッドから吐出された液滴の位置を検出し、検出された位置に基づいて吐出ヘッドの位置を調整することで、着弾位置を調整することが知られている。
【0003】
また、近年、液滴吐出装置は、印刷に限られず、生体試料、電気回路の成膜材料、有機EL、ガラス基板等の凹凸の有する吐出対象上に液滴を吐出することがある。特許文献1では、光学センサである凹凸検出装置を所定の方向に走査させることで、吐出対象の表面の凹凸形状を把握して、吐出ヘッドで液滴を吐出する際に、把握した吐出対象の凹凸面の高さに合わせて吐出ヘッドの高さの調整をしつつ、吐出ヘッドを所定の方向に走査しながら吐出を行うことが開示されている。
【0004】
一方、近年、幹細胞技術の進展に伴い、複数の細胞を含む組織体を所望の位置に配置する技術開発が行われている。例えば、創薬や毒性評価等の分野では、井戸型の孔であるウェル(凹部)を複数有するウェルプレート(容器)を使用して細胞の薬剤への応答を確認する試験であるアッセイが行われ、ウェルプレート内に組織体を配置して、人間の体の中で起こっている現象をウェルプレート内で再現する技術が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1では凹凸の少ない吐出対象に対して、吐出ヘッドを水平方向に移動しながら上下方向も調整されるため、若干の凹凸しか対応できなかった。そのため、ウェルプレートのような深い凹部を有する格納容器に対して液滴を吐出する場合に、吐出ヘッドが、凹部に対向する位置と凹部以外の対向する位置とを連続して移動しようとすると、水平方向の移動よりも上下移動方向の移動量が多くなり、上記制御では、水平移動動作の途中における上下移動に時間がかかりすぎて対応できない。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、凹部が形成された格納容器を吐出対象とし、凹部の深さに適した吐出動作を実行することができる、液滴吐出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様では、
格納容器の凹部に液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
吐出された液滴を格納する凹部が複数形成された格納容器と、
液滴を吐出するノズル孔が形成された吐出面を、前記格納容器の凹部に挿入して、水平方向の2方向に移動しながら凹部内へ液滴を吐出する吐出ヘッドと、
前記格納容器が載置される載置台と、
前記吐出ヘッド又は前記載置台を上下方向に移動させて、前記吐出ヘッドと前記載置台との上下方向相対位置を変化させる上下位置調整部と、
前記上下位置調整部を制御する上下位置調整制御部と、
前記載置台に載置された前記格納容器の水平方向の位置を検出する水平位置検出部と、
一の凹部への吐出を開始する前に、上下方向基準位置から、前記格納容器の前記凹部の被吐出面までの距離を測定する対象位置検出部と、を備え、
前記上下位置調整制御部は、測定した前記一の凹部の被吐出面までの距離に基づいて、前記被吐出面に対する前記吐出面の吐出高さが一定になるように、前記一の凹部への吐出の際の前記吐出ヘッド又は前記載置台の上下方向位置を制御する
液滴吐出装置、を提供する。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、液滴吐出装置は凹部が形成された格納容器を吐出対象とし、凹部の深さに適した吐出動作を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液滴吐出装置の側面全体図。
【
図2】第1実施形態に係る格納容器に対するキャリッジの移動を示す概略斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る液滴吐出装置の概略制御ブロック図。
【
図5】第1実施形態に係る液滴吐出装置において吐出動作中の側面全体図。
【
図6】吐出動作中の吐出ヘッドと格納容器を示す拡大図。
【
図7】吐出動作中と移動中の格納容器の凹部に対する吐出ヘッドの位置を示す図。
【
図8】対象位置検出中の格納容器の凹部の底面に対する対象位置検出部の位置を示す図。
【
図9】水平位置検出中の格納容器に対する水平位置検出部の位置を示す図。
【
図10】水平位置検出部で撮影される載置台上の格納容器の撮影画像と、格納容器のずれ量の説明図。
【
図11】第1制御例における液滴吐出動作のフローチャート。
【
図12】凹部内の吐出物上面に対する吐出ヘッドの位置を示す図。
【
図13】対象位置検出中の格納容器の凹部内の吐出物上面に対する対象位置検出部の位置を示す図。
【
図14】第2制御例における液滴吐出動作のフローチャート。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る液滴吐出装置の側面全体図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成の部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0011】
<全体構成>
まず、
図1、
図2、
図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る液滴吐出装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る液滴吐出装置100の側面全体図である。
図2は、第1実施形態に係る格納容器に対するキャリッジの移動を示す概略斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る液滴吐出装置100の概略制御ブロック図である。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態に係る液滴吐出装置100は、固定された載置台6上の格納容器5の凹部51に対して、吐出ヘッド1を搭載したキャリッジ4が上下方向及び水平方向に移動しながら、吐出ヘッド1が液滴を吐出する。
【0013】
液滴吐出装置100において、キャリッジ4には、吐出ヘッド1と、水平位置検出部2と、対象位置検出部3とが設けられている。
【0014】
本実施形態の吐出ヘッド1は、液滴を吐出するノズル孔11が形成された吐出面12を、格納容器5の凹部51(
図2参照)に挿入して、水平方向に移動しながら凹部51内へ液滴を吐出し、凹部51の底部に着弾させる。吐出ヘッド1は、例えばインクジェット方式の吐出ヘッドである。
【0015】
そのため、吐出ヘッド1を支持するキャリッジ4を移動させる手段として、キャリッジ昇降部(上下位置調整部)41と、キャリッジ水平移動部(ヘッド水平移動部)42、43を有しており、これらは、箱状又は板状(ピラー状)のキャリッジ支持部44によって支持されている。
【0016】
ここで、
図1では、キャリッジ4のX方向とZ方向の移動のみ示しているが、
図2に示すように、キャリッジ4は、上下方向の移動とともに、上下方向(鉛直方向)と垂直な平行方向において、X方向及びY方向の2方向に移動可能であるとともに、上下方向にも移動可能である。なお、説明のため、
図2では、キャリッジ4上の水平位置検出部2と、対象位置検出部3の図示を省略している。
【0017】
キャリッジ4は、3方向の単軸ロボット(単軸ステージ、単軸スライダともいう)の組合せによって移動可能な構成となっている。
図3に示すように、キャリッジ4は上下方向に延伸する、上下位置調整部41であるZ軸レールに対して、上下方向にスライド移動可能である。詳しくは、Z軸レール41とキャリッジ4は、単軸ロボットであり、Z軸レール内には、上下方向に延伸するボールネジと、モータが設けられており、キャリッジ4がスライダとして機能する。指示により、モータが回転することでボールネジが連動して回転し、ボールネジの回転によりスライダであるキャリッジ4が移動する。そのため、スライダでありキャリッジ4の上下位置はモータの回転量によって制御される。
【0018】
同様に、キャリッジ4を移動可能に保持するZ軸レール41は、Y軸レール43によって保持され、Z軸レール41がスライダとして、Y軸方向にスライド移動可能である。さらにY軸レール43は、2本のX軸レール42、42によって保持され、Y軸レール43がスライダとして、X軸方向にスライド移動可能である。
【0019】
このような構造により、キャリッジ4は、X、Y、Zの3方向で移動可能であるので、二次元平面及び上下方向に、吐出ヘッド1と格納容器5とを相対的に移動させることができる。
【0020】
水平位置検出部2は、載置台6に載置された格納容器5の水平方向の位置を検出する。
図3を参照して、水平位置検出部2は、撮影手段201と、位置算出部202とを有している。液滴吐出装置100は、水平位置検出部2で検出された格納容器5の水平方向の位置に基づいて、キャリッジ水平移動部42、43を制御するキャリッジ水平位置制御部420を備えている。水平位置検出部2及びキャリッジ水平位置制御部420における制御の詳細については、
図8、
図9とともに詳述する。
【0021】
対象位置検出部3は、上下方向の基準位置から、液滴が着弾する吐出対象面(被吐出面)となる格納容器5の凹部51の底面52(
図7参照)、又は格納された吐出物の上面L(
図12参照)までの距離を測定する。
図3を参照して、液滴吐出装置100は、対象位置検出部3で検出された底面52又は吐出物上面までの距離に基づいて、キャリッジ昇降部41を制御するキャリッジ昇降制御部410を備えている。本実施形態における、キャリッジ昇降制御部410は、吐出ヘッド1と、載置台6に載置された格納容器5との上下方向相対位置を変化させる上下位置調整部を制御する上下位置調整制御部として機能する。対象位置検出部3及びキャリッジ昇降制御部410の動作については、
図4~
図7とともに詳述する。
【0022】
図4に、格納容器5の一例の説明図を示す。
図4において、(a)は格納容器5の上面図であり、(b)は格納容器5の側面断面図である。
【0023】
液滴が吐出される吐出対象となる格納容器5は、例えば、井戸型の凹部(ウェル)51を複数有する平板状のウェルプレートである。ウェルプレートは、創薬や毒性評価等の分野で使用される、組織体入り容器の一例である。また、格納容器5はウェルプレートに限定されず、格納容器5はプレートやスライドガラスのような板状であっても、チューブ状であっても良いが、いずれも凹部が形成されており、液滴は凹部へ吐出される。なお、格納容器5に形成される凹部51が複数である例を下記説明するが、凹部51は、1つであってもよい。
【0024】
また、格納容器5がウェルプレートの場合、吐出ヘッド1から液滴として吐出される液体は、細胞を懸濁した細胞懸濁液、生体を構成する材料、又は生体適合性のある材料等である。
【0025】
格納容器5において、複数の凹部51が形成されている場合、一例として、
図4(a)に示すように、水平方向の2方向(X方向、Y方向)に複数の凹部51がそれぞれ配列している。そして、
図4(b)に示すように、格納容器5の設置面から凹部底面52間の距離Hb、即ち、底部の厚みによって、格納容器5の凹部51の深さDpが定まる。
【0026】
なお、格納容器5に設けられる複数の凹部51は、
図4(a)のように整列していなくてもよく、例えば、上面視で、千鳥状に配列されていたり、任意の一方向に並んでいたり、ランダムに配置されていてもよい。
【0027】
例えば、凹部底面52に対する吐出面12の吐出高さHgは0.5~10mmであり、隣接する凹部51間のピッチPは9~39mmであり、凹部51の深さDpは11~18mmである。なお、このような凹部51を有する格納容器5を吐出対象とする際に、凹部51の深さDpが隣接する凹部51間のピッチPよりも長いと、本発明による検出および吐出動作による効果が、さらに大きい。
【0028】
以下に示す図でX軸、Y軸及びZ軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、
図4(a)に示す、格納容器5に形成される複数の凹部51が配列する配列平面内での所定方向を示し、Y軸に沿うY方向は、配列平面内でX方向に直交する方向を示し、Z軸に沿うZ方向は、配列平面に直交する方向を示すものとする。
【0029】
またX方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。実施形態では、吐出ヘッドは一例として-Z方向側(下側)に液滴を吐出するものとする。
【0030】
格納容器5は、載置台6上に載置される。本実施形態では、載置台6は、載置台支持部61によって位置が固定されている。また、載置台6には、格納容器5が載置台6に載置されたことを検出する格納容器検出部7が設けられている。
【0031】
さらに、液滴吐出装置100は、吐出ヘッド1に吐出用の液体を供給する液体供給部8を有している。液体供給部8は、供給部支持部81によって支持され、位置が固定されている。
図3に示すように、液滴吐出装置100は、液体供給部8の吐出ヘッド1への液体の供給を制御する、供給制御部80を有している。
【0032】
また、本実施形態では、供給部支持部81、キャリッジ支持部44、及び、載置台支持部61は、液滴吐出装置100の土台となるベース部材9から起立しており、位置が固定されている。
【0033】
以下に示す図でX軸、Y軸及びZ軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、格納容器5に形成される複数の凹部51が配列する配列平面内での所定方向(
図9(a)参照)を示し、Y軸に沿うY方向は、配列平面内でX方向に直交する方向を示し、Z軸に沿うZ方向は、配列平面に直交する方向を示すものとする。
【0034】
またX方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。実施形態では、吐出ヘッドは一例として-Z方向側(下側)に液滴を吐出するものとする。
【0035】
(吐出動作)
次に
図5~
図7を用いて液滴吐出動作について説明する。
図5は、第1実施形態に係る液滴吐出装置において吐出動作中の側面全体図である。
図6は、吐出動作中の吐出ヘッドと格納容器を示す拡大図である。
図7は、吐出動作中と移動中の格納容器5に対する吐出ヘッド1の位置を示す図である。
【0036】
図5、
図6、
図7に示すように、本発明の吐出ヘッド1は、液滴を吐出するノズル孔11が形成された吐出面12を、格納容器5の凹部51に挿入した状態で、水平方向に移動しながら凹部51内へ液滴Lを吐出する。
【0037】
吐出ヘッド1は、
図3に示したように、吐出制御部101と、駆動波形発生源102と、MEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ103とを備えている。MEMSチップ103の外側面が、吐出ヘッド1の下面(先端面)である吐出面12を構成し、MEMSチップ103を貫通するようにノズル孔11が形成されている。MEMSチップ103に対し、吐出制御部101が制御したタイミングで、駆動波形発生源102が駆動波形(駆動電圧)を印加することで、吐出ヘッド1はMEMSチップ103よりも内側に保持された液体を、ノズル孔11から、液滴Lとして凹部51内へ吐出する。
【0038】
ここで、吐出ヘッド1は、液滴Lの凹部51内への配置精度の観点から、吐出中は、凹部51の底面52から0.5~3.0mmの高さの範囲内に、吐出ヘッド1の吐出面12が位置していることが好ましい。例えば、格納容器5の一例である、96ウェルのウェルプレートにおける各凹部(ウェル)51の高さは12mm前後であるため、吐出中、凹部51の深さに対して70%以上の深さにノズル孔11の開口面(吐出面)12を配置することが好ましい。
【0039】
仮に、凹部51が形成された上面53よりも外側(上側)に吐出面12が出ている状態で液滴を吐出すると、吐出面12の凹部51の底面52からの距離が長いため、飛翔距離が長くなり、凹部51内での液滴の配置精度が低くなる場合がある。また、凹部51の開放部側(Z方向における底部の反対側(上側))から数%程度の深さに吐出面12を配置して液滴を吐出する場合にも、同様に凹部51の底面52からの距離が長いため、液滴の配置精度が低くなる場合がある。このように、吐出面12が、凹部51の底面52からの距離が長いことにより、吐出した液体の一部が飛散し、所望の液滴の形状を得られない場合がある。
【0040】
これに対し、本発明の制御では、ノズル孔11が形成された吐出面12が、凹部51の内部に位置する状態で、液滴を吐出するため、凹部51の底面52から短い距離で液滴Dを吐出できる。これにより、凹部51内での液滴の配置精度を向上できる。また、底面52から短い距離で液滴を吐出することで、吐出した液体の一部の飛散を抑制できる。
【0041】
また吐出ヘッド1は、凹部51の底面52に対してノズル孔11が形成された吐出面12を近づける際に、凹部51の内側面と接触しないように水平方向、及び上下方向に移動させて、吐出ヘッド1が、凹部51の底面52及び側壁と干渉させないことが好ましい。
【0042】
ここで、格納容器5に形成された1又は複数の凹部51は、略円筒形、略四角柱などの形状である。ここで、凹部51の底面52は平坦であることが好ましいが、製造誤差によって、底面52が傾斜していたり、凹凸であったりする構成もありうる。あるいは、1つの格納容器5に形成された複数の凹部51におけるそれぞれの凹部の深さが、製造誤差等によりばらついていることや、意図的に吐出物の格納量の違いを出すように1つの格納容器5内で複数の凹部の深さを設定していることもある。
【0043】
あるいは、格納容器5として、種類の異なる格納容器(例えばウェルプレート、スライドガラス、シャーレなど)を取り換えて用いる場合、あるいは、同種であっても製造元の異なる格納容器5を使用する場合は、取り換え直後は、前回吐出動作に対して元から凹部の深さが異なる。
【0044】
詳しくは、格納容器5において、
図4(a)に示す格納容器5の設置面から凹部底面52までの距離である底部厚みHbのばらつきに起因して、
図7(a)に示す液滴吐出時の吐出ヘッド1の吐出面12と、格納容器5の凹部51の底面52と間の距離、即ち、凹部底面52に対する吐出面12の吐出高さ(吐出時距離)Hgのばらつきも発生する。
【0045】
そこで、凹部51の底面52に着弾される液滴の配置精度を維持するように、
図7(a)に示す、着弾対象物(被吐出面、凹部底面)に対する吐出高さHgが一定になるように吐出ヘッド1の高さを制御すると好適である。
【0046】
そのため、対象位置検出部3は、それぞれの凹部51への吐出動作の直前に、基準点から凹部底面52までの距離を測定し、凹部51の深さのばらつきや底面52の表面凹凸などを予め把握しておく。
【0047】
(凹部底面までの距離の検出)
図8は、対象位置検出中の格納容器5の凹部底面52に対する対象位置検出部3の位置を示す図である。
【0048】
吐出ヘッド1と、水平位置検出部2と、対象位置検出部3はいずれもキャリッジ4に設けられているため、キャリッジ4が移動すると、吐出ヘッド1と、水平位置検出部2と、対象位置検出部3は一緒に移動する。そのため、吐出ヘッド1と、水平位置検出部2と、対象位置検出部3は、水平方向(X方向、Y方向)における相対的な位置、及び上下方向(Z方向)における相対的な位置が固定されている。
【0049】
ここで、対象位置検出部3は、一例として光学センサである。
図8では光路のみを点線示しているが、光学センサは、発光部から発光された光が、凹部51の底面52で反射し、戻ってきた光を受光部が受光することで、光学センサから凹部底面52までの位置を検出する。そのため、検出時は、
図8に示すように、対象位置検出部3が、水平方向において、検出対象となる凹部51と対向する領域に位置し、かつ上下方向において基準位置に位置するようセットされる。
【0050】
そして、対象位置検出部3は、次回の吐出先である一の凹部51への吐出を開始する前に、上下方向基準位置から、格納容器5の凹部51の底面52までの距離を測定する。
【0051】
この際、対象となる一の凹部51内の底面52の凹凸を考慮せず、複数の凹部51間の深さのばらつきのみを検出したい場合は、1つの凹部に対して特定の位置、例えば1点のみを検出する。この場合は、キャリッジ昇降制御部410は、測定した凹部の被吐出面までの距離に基づいて、凹部底面52に対する吐出面12の吐出高さHg(吐出ヘッド1の吐出面12の、凹部底面52からの距離)が、液滴が吐出される複数の凹部51間で一定になるように、吐出ヘッド1の移動量を算出し、一の凹部への吐出直前に吐出ヘッド1の上下方向位置を制御する。
【0052】
一方、凹部51の深さに加えて凹部51の底面52の傾斜や凹凸までを検出したい場合は、一の凹部の水平方向の全領域に対して、上下方向基準位置から、格納容器5の凹部の底面までの距離を測定する。この場合は、キャリッジ昇降制御部410は、測定した凹部51の被吐出面(凹部底面52)までの距離に基づいて、凹部底面52に対する吐出面12の吐出高さHgが、その凹部51内の水平方向の全領域において一定になるように、吐出直前に加えて、その凹部51への吐出期間中にも吐出ヘッドの上下方向位置を制御する。
【0053】
詳しくは、いずれの場合も、
図8に示す対象位置検出部3と格納容器5の凹部底面52間の距離Hを測定することにより、基準位置からの、キャリッジ昇降部41による吐出ヘッド1の上下方向の必要移動量Dを以下の式より算出する。
D=H-ha-hg
Haは、
図8に示すキャリッジ4の高さが基準位置にある場合の、対象位置検出部3と吐出ヘッド1の吐出面12間の距離であって、配置により決まるため既知である。
【0054】
このように、吐出の際の、吐出ヘッド1の上下方向必要移動量Dは、基準位置で測定した被吐出面までの距離によって算出できる。その移動量を用いて、キャリッジ昇降部41によって、吐出動作中、
図7(a)に示す吐出時の凹部底面に対する吐出面12の吐出高さhgが、複数の凹部間、凹部全域、又は複数の凹部間かつ凹部全域で、吐出中に一定になるように吐出ヘッド1の上下位置が調整される。このように吐出ヘッドの上下方向の移動量が制御されることで、吐出ヘッド1の凹部51への挿入深さが調整される。
【0055】
したがって、吐出対象である格納容器において隣接する凹部間距離に対して凹部が深い場合であって、底面にばらつきや歪みが生じていても、適切に凹部の深さを把握して、凹部の深さに適した吐出動作を実行することができる。このように凹部の深さに適するように、凹部底面などの被吐出面上で均等な吐出高さから液滴を吐出することで、格納容器の凹部内へ吐出される着弾滴のサイズをそろえ、液滴の配置精度を向上させることができる。
【0056】
(水平方向の位置検出)
次に、
図9、
図10を用いて格納容器の水平方向の位置について説明する。
図9は、水平位置検出中の格納容器5に対する水平位置検出部2の位置を示す図である。
図10は、水平位置検出部2で撮影される載置台6上の格納容器5の撮影画像と、格納容器5のずれ量の説明図である。
【0057】
ここで、載置台6に対して、格納容器5は取り換えて設置可能である。例えば、種類の異なる格納容器5(例えばスライドガラス、シャーレ、ウェルプレート)や、同種であっても、製造元の異なる格納容器の場合は、凹部51の深さや大きさ、さらに格納容器5全体のサイズが異なる。
【0058】
そのため、液滴吐出装置100において、様々な種類やサイズの格納容器5に対しても、適切な吐出動作ができるように、載置台6上の格納容器5の位置を把握する必要がある。
【0059】
また、上述の
図3で示したように、水平位置検出部2は、撮影手段(カメラ)201と、位置算出部202を有している。
図9で示すように、水平位置検出部2は、キャリッジ4内に設けられているため、吐出ヘッド1と一緒に、格納容器5に対して、水平方向に移動可能である。
【0060】
載置台6上に、格納容器5が新たにセットされたことを、格納容器検出部7が検出すると、水平位置検出部2が、
図9に示すような、格納容器5と対向する位置にない場合は、キャリッジ4を移動させることで、水平位置検出部2をその位置に移動させる。
【0061】
詳しくは、格納容器5には、吐出対処物側の位置の基準点となる測定基準点が設定されている。なお、
図10(a)では、格納容器5の角部を測定基準点とする例を示しているが、格納容器5において、測定基準点を規定するための目印が設けられていてもよい。
【0062】
撮影手段201は、
図8に示すように、載置台6上の格納容器5と対向する位置にある状態で、固定された撮影基準点を中心とする撮影基準位置から、載置台6上の格納容器5を撮影する。撮影された画像の一例を、
図10(a)に示す。撮影手段201が、基準撮影位置で、格納容器5の測定基準点(格納容器基準点)CRを撮影して画像として撮像すると、取得した画像では、格納容器基準点CRが含まれる。
【0063】
さらに、格納容器検出部7は、格納容器5が載置台6に載置されたことを検出する際に、格納容器5の種類情報を検出可能である。そのため、種類を把握することで、格納容器5の全体サイズや凹部51の径、凹部51間ピッチの情報を取得することができる。この際、格納容器検出部7は、たとえば、RFID(Radio Frequency Identification)によって格納容器を識別したり、重量によって、予め登録された格納容器の種類を識別してもよい。あるいは、液滴吐出装置100に格納容器5の種類の情報が予め入力されていてもよい。
【0064】
そして、検出又は入力によりサイズや形状が把握された格納容器5が、載置台6上のどこに設置されたかの設置ばらつきを、撮影によって検出する。詳しくは、位置算出部202は、撮影された画像において、格納容器の測定基準点CRの、撮影中心位置からの、水平方向における直交する2方向(X方向、Y方向)のズレ量を算出して、載置台6上の格納容器5の位置を算出する。詳しくは、取得画像の中心からの格納容器5の測定基準点CRの座標(Xp,Yp)を画像処理により取得し、画像中心からのずれ分を、吐出ヘッド1からの吐出される吐出位置に対する補正値として計算する。
【0065】
そして、キャリッジ水平位置制御部(ヘッド水平位置制御部)420は、位置が把握された格納容器5における狙いの凹部51の狙いの位置に対し液滴を吐出させるように、吐出動作中にキャリッジ4を駆動させて吐出ヘッド1を移動させる。
【0066】
このようにして、事前に格納容器5の水平方向位置を検出しておくことで、格納容器5上の狙いの位置に誤差なく液滴を吐出することができる。
【0067】
(全体の流れ)
上記対象位置検出及び水平位置検出を含む液滴吐出動作の全体フローを、
図11を用いて説明する。
図11は、第1制御例における液滴吐出動作のフローチャートである。
【0068】
ステップS101で、格納容器検出部7は、載置台6上に、格納容器5がセットされたことを検出する。この検出後、必要に応じて、キャリッジ水平移動部42、43に、水平位置検出部2が、格納容器5の測定基準点CRと対向する位置に到達するように、キャリッジ4の水平方向位置を移動させるように指示する。
【0069】
ステップS102で、水平位置検出部2の撮影手段201が、上方から載置台6上の格納容器5を撮影する。
【0070】
ステップS103で、水平位置検出部2の位置算出部202が、格納容器5の測定基準点CRの、撮影中心位置からの水平方向2方向(X、Y)のずれ量を基に、載置台6上の格納容器5の位置を把握する。S102、S103が、水平位置検出ステップである。
【0071】
ステップS104で、キャリッジ4を水平方向に移動させることで、把握した位置にある格納容器5の、吐出対象となる凹部(一の凹部)51に対象位置検出部3が対向するように水平方向に吐出ヘッド1を移動する。
【0072】
ステップS105で、対象位置検出部3が、一の凹部51への吐出を開始する前に、一の凹部の水平方向の全領域に対して、上下方向基準位置から、格納容器5の凹部底面52までの距離Hを測定する。この際、設定状況に応じて、凹部底面52に対して特定の位置1点のみ距離Hを測定してもよいし、あるいは、一の凹部の水平方向の全領域に対して距離Hを測定してもよい。S105が対象位置測定ステップである。
【0073】
ステップS106で、測定した一の凹部底面52までの距離Hに基づいて、凹部底面52から吐出ヘッド1の吐出面12の吐出高さ(一の凹部の底面からの距離)Hgが一定になるように、一の凹部への吐出時の吐出ヘッド1の上下方向位置を設定する。具体的には、キャリッジ昇降部41によって、吐出ヘッド1が搭載されたキャリッジ4を降下させる移動量を設定する。S106が上下位置設定ステップである。
【0074】
ステップS107で、キャリッジ4を水平方向に移動させることで、把握した位置にある格納容器5の特定の凹部51に吐出面12が対向するように水平方向に吐出ヘッド1を移動する。
【0075】
ステップS108で、キャリッジ4を降下させることで、吐出面12の凹部底面52までの距離が、設定された吐出高さHgになる位置である設定された上下位置まで、吐出ヘッド1の一部が凹部51に挿入されるように、吐出ヘッド1を降下させる。
【0076】
ステップS109で、吐出ヘッド1が、水平方向位置を把握した凹部内を水平方向に移動しながら凹部の底面52への液滴を吐出動作を行う。S109が、液滴吐出ステップである。
【0077】
この際、S105で対象位置検出部3が凹部の特定の位置1点のみ距離Hを検出した場合は、凹部底面52に対する吐出面12の吐出高さHgが、液滴が吐出される複数の凹部51間で一定になるように、吐出直前のS109で吐出ヘッド1の上下方向位置を制御した後、S110での吐出動作中は、吐出ヘッド1の上下位置を固定する。
【0078】
一方、S105で、対象位置検出部3が、一の凹部の水平方向の全領域に対して距離Hを検出した場合は、吐出直前のS109で吐出ヘッド1の上下方向位置を制御した後、S110における吐出動作中においても、吐出ヘッド1の水平位置の移動に加えて、上下位置も測定結果に応じて移動させる。
【0079】
ステップS110で、特定の凹部への液滴吐出動作完了したら、S111で吐出面が凹部の外に位置するように吐出ヘッドを移動させる。
【0080】
ステップS112で、予定されたすべての凹部への吐出動作が完了してなかったら(No)、S104に戻り、次の凹部についても、S104~S110の動作を繰り返す。
【0081】
ステップS212で、予定された凹部全てへの吐出が完了したら、吐出動作を終了する。
【0082】
本発明では、このような液滴吐出方法により、凹部への吐出動作毎に、都度上下方向の凹部底面までの距離を計測することにより、凹部が深い格納容器でも、適切な吐出位置に調整して、吐出時の凹部底面までの距離を常に一定に保つことができる。そのため、凹部内へ吐出される着弾滴のサイズをそろえ、液滴の配置精度を向上させることができる。
【0083】
(重ねて吐出する場合の検出(第2制御例))
上記では、吐出高さが調整される対象となる凹部における被吐出面として、一の凹部に対して初めて吐出する場合における、凹部51の底面52の上面である例を説明した。しかし、一の凹部の同じ位置に重ねて液滴を吐出する場合では、被吐出面は、吐出ヘッド1から吐出されて一の凹部の底面上に着弾した吐出物の上面となる。その場合の制御について説明する。
【0084】
図12は、凹部51内の吐出物上面Uに対する吐出ヘッド1の位置を示す図である。
図13は、対象位置検出中の格納容器5の凹部51内の吐出物上面Uに対する対象位置検出部3の位置を示す図である。
【0085】
図13に示すように、対象位置検出部3は、同一の凹部の同じ位置に重ねて液滴を吐出する場合、基準位置から、凹部底面52に着弾した吐出物の上面(着弾積層物上面)Uまでの距離H2を検出する。
【0086】
この際、対象となる一の凹部51内の底面52の凹凸を考慮せず、複数の凹部51間の深さのばらつきのみを検出したい場合は、1つの凹部に対して特定の位置、例えば1点のみ距離H2を検出する。
【0087】
この場合は、キャリッジ昇降制御部410は、測定した凹部の被吐出面までの距離に基づいて、吐出物上面Uに対する吐出面12の吐出高さHu(吐出ヘッド1の吐出面12の吐出物上面Uからの距離)が、液滴が吐出される複数の凹部51間で一定になるように、吐出ヘッド1の移動量を算出し、一の凹部への吐出直前に吐出ヘッド1の上下方向位置を制御する。
【0088】
一方、例えば吐出する液体の粘性が高い場合などは、
図12に示すように、同一の凹部51内においても、前回吐出した1層目の吐出物の上面は、傾斜している、凹凸している等、平面でないことがありうる。このように、凹部51内に着弾した液体吐出物の傾斜や凹凸までを検出したい場合は、一の凹部51の水平方向の全領域に対して、上下方向基準位置から、格納容器5の吐出物上面Uのそれぞれの距離H2を測定する。
【0089】
この場合は、キャリッジ昇降制御部410は、凹部51内の吐出物上面Uの水平方向各座標点において測定される上下方向の距離H2に基づいて、堆積された吐出物上面Uに対する吐出面12の吐出高さHgが、その凹部51内の水平方向の全領域において一定になるように、吐出直前に加えて、その凹部51への吐出期間中にも吐出ヘッドの上下方向位置を制御する。なお、2層目に重ねて液滴を吐出する場合は、
図12に示すように着弾積層物が平面でない可能性があるため、凹部内の水平方向全領域の距離H2を検出してそれを反映するように位置調整を行う本制御の方が、より好適である。
【0090】
このように、調整することで、吐出物上に積層するように液滴を吐出する場合であっても、吐出物上面からの高さが均一になるように、上下方向の位置を調整して吐出ヘッドから液滴を吐出することができる。
【0091】
図14は、第2制御例における液滴吐出動作のフローチャートである。
図10との相違点のみ説明する。
【0092】
ステップS212で、同一の凹部へ2層目(次の層)の液滴吐出動作あるかどうか判断し、次の層の液滴吐出がある場合は、S213へ進む。
【0093】
ステップS213で、格納容器5の1層目を吐出した凹部に対象位置検出部3が対向するように水平方向に吐出ヘッドを移動する。
【0094】
ステップS214で、対象位置検出部3が、吐出面から格納容器の着弾積層物の上面(吐出物上面)Uまでの距離H2を測定する。この際、設定状況に応じて、着弾積層物上面に対して特定の位置1点のみ距離H2を測定してもよいし、あるいは、一の凹部の水平方向の全領域に対して距離H2を測定してもよい。
【0095】
ステップS215で、測定された距離を基に、吐出物上面Uから吐出ヘッド1の吐出面12までの吐出高さHgが一定になるように、今回の凹部51へ吐出する際の吐出ヘッド1の上下方向位置を設定する。
【0096】
ステップS216で、格納容器の今回吐出対象となる凹部に、吐出面が対向するように水平方向に吐出ヘッドを移動する。
【0097】
ステップS217で、設定された対象位置になるように、吐出ヘッド1の一部が凹部に挿入するように吐出ヘッド1を降下する。
【0098】
ステップS218で、吐出ヘッド1が、水平方向位置を把握した凹部内を水平方向に移動しながら、凹部の着弾積層面へ液滴を吐出する。この際、S214で、一の凹部の水平方向の全領域に対して距離H2を測定した場合は、S218における吐出動作中においても、吐出ヘッド1の水平位置の移動に加えて、上下位置も測定結果に応じて移動させる。
【0099】
ステップ219で、特定の凹部への2層目の液滴吐出動作完了したら、ステップ220で、吐出面が凹部の外に位置する高さ基準位置まで吐出ヘッドを上昇させる。
【0100】
ステップS221で、同一の凹部へ3層目(次の層)の液滴吐出動作ある場合は、S104に戻り、次の凹部についても、S104~S110の動作を繰り返す。
【0101】
次の層の液滴吐出動作がない場合は(S221でNo)、S222で、予定された全ての凹部への液滴吐出動作完了したか、即ち、別の凹部に対する吐出があるか確認する。全ての凹部への吐出が完了しておらず、別の凹部に対する吐出がある場合は、S204に戻り、次の凹部についても、S204~S210の動作を繰り返す。
【0102】
本制御においても、凹部への吐出動作毎に都度上下方向の凹部底面までの距離、及び重ねて吐出する凹部においては、都度上下方向に着弾積層物上面までの距離を計測する。これにより、凹部が深い格納容器でも、さらに重ねて吐出する場合でも、適切な吐出位置に調整して、吐出時の凹部底面までの距離を常に一定に保つことができる。そのため、凹部内へ吐出される着弾滴のサイズをそろえ、液滴の配置精度を向上させることができるとともに、吐出ヘッドが着弾積層物と衝突することを回避できる。
【0103】
<第2実施形態>
図15は、本発明の第2実施形態に係る液滴吐出装置200の側面全体図を示す。
【0104】
上記例では、キャリッジを、上下方向に移動させるとともに、水平方向にも移動させる例を説明したが、本実施形態では、キャリッジ4Aの水平方向位置を固定し、載置台6Aを水平方向に移動することで、吐出ヘッド1Aに対する格納容器5Aの位置を変更可能等とする。
【0105】
詳しくは、
図15に示すように、キャリッジ4Aは液体供給部8によって供給される位置で水平方向が固定されて支持台45によって支持されている。そして、載置台6Aは、移動支持部62によって支持され、移動支持部62は、ベース部材9Aに対して水平方向であるX、Y方向の2方向に移動可能である。
【0106】
本実施形態の構成は、吐出ヘッド1A、水平位置検出部2A、対象位置検出部3Aと、格納容器5Aとを水平方向において相対移動させる際に、キャリッジではなく、載置台6Aに載置された格納容器5Aの位置を移動させる点のみが異なり、他の制御は同様である。
【0107】
本実施形態では、吐出ヘッド1Aと格納容器5Aとの上下の相対移動については、第1実施形態と同様に、キャリッジ4A側が移動する。
【0108】
(変形例1)
なお、第2実施形態の変形例として、キャリッジが上下方向も固定されており、載置台が、水平方向(X方向、Y方向)、及び上下方向に移動可能な構成にしてもよい。この構成では、相対移動の際に、載置台に載置された格納容器を、吐出ヘッド、水平位置検出部、対象位置検出部に対して、水平方向及び上下方向において移動させる。この場合、載置台を昇降させる載置台昇降部が、吐出ヘッドと載置台との上下方向相対位置を変化させる上下位置調整部として機能する。
【0109】
(変形例2)
さらに別の変形例として、キャリッジがX方向と、Z方向(上下方向)に移動可能であり、載置台がY方向に移動可能であってもよい。
【0110】
(変形例3)
あるいは、キャリッジが水平方向であるX方向とY方向に移動可能であり、載置台がZ方向(上下方向)に移動可能であってもよい。この場合も、載置台を昇降させる載置台昇降部が、吐出ヘッドと載置台との上下方向相対位置を変化させる上下位置調整部として機能する。
【0111】
(変形例4)
また、キャリッジ及び載置台の両方が、X方向及びY方向に移動可能であり、キャリッジ又は載置台のいずれか一方が、Z方向(上下方向)に移動可能であってもよい。
【0112】
本実施形態や変形例においても、凹部への吐出動作毎に、都度上下方向の凹部底面までの距離を計測することにより、凹部が深い格納容器でも、適切な吐出位置に調整して、吐出時の凹部底面までの距離を常に一定に保つことができる。そのため、凹部内へ吐出される着弾滴のサイズをそろえ、液滴の配置精度を向上させることができる。
【0113】
また、本実施形態や変形例においても第2制御例のように、重ねて吐出してもよく、重ねて吐出する凹部においては、都度上下方向に着弾積層物上面までの距離を計測する。これにより、凹部が深い格納容器でも、さらに重ねて吐出する場合でも、適切な吐出位置に調整して、吐出時の凹部底面までの距離を常に一定に保つことができる。そのため、凹部内へ吐出される着弾滴のサイズをそろえ、液滴の配置精度を向上させることができるとともに、吐出ヘッドが着弾積層物と衝突することを回避できる。
【0114】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0115】
1、1A 吐出ヘッド
2、2A 水平位置検出部
3、3A 対象位置検出部
4、4A キャリッジ
5、5A 格納容器
6、6A 載置台
7 格納容器検出部
11 ノズル孔
12 吐出面
41 キャリッジ昇降部(上下位置調整部)
42 キャリッジ水平移動部(ヘッド水平移動部、X軸レール)
43 キャリッジ水平移動部(ヘッド水平移動部、Y軸レール)
51 凹部
52 凹部底面(底面)
62 移動支持部
53 上面
100、200 液滴吐出装置
201 撮影手段
202 位置算出部
410 キャリッジ昇降制御部(上下位置調整制御部)
420 キャリッジ水平位置制御部(ヘッド水平位置制御部)
Hg 凹部底面に対する吐出面の吐出高さ
Hu 凹部内の着弾上面に対する吐出面の吐出高さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】