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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140175
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像消去方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/475 20060101AFI20230927BHJP
   B41M 5/28 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B41J2/475 R
B41M5/28 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046078
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】濱 研吾
(72)【発明者】
【氏名】石見 知三
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 竜二
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA09
2H026BB02
2H026BB21
(57)【要約】
【課題】熱可逆記録媒体に伝わる熱エネルギーを制御して熱可逆記録媒体の記録層を狙いの温度範囲にして、迅速で安定した熱可逆記録媒体の消去を可能にする。
【解決手段】発光出力を調整可能なランプと、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動によって前記熱可逆記録媒体を全面加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去部と、を備え、前記画像消去部は、前記熱可逆記録媒体の到達温度を、前記熱可逆記録媒体の消去領域において規定の範囲内に収まるように制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光出力を調整可能なランプと、
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動によって前記熱可逆記録媒体を全面加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去部と、
を備え、
前記画像消去部は、前記熱可逆記録媒体の到達温度を、前記熱可逆記録媒体の消去領域において規定の範囲内に収まるように制御する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像消去部は、前記熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動方向において、前記熱可逆記録媒体の前記到達温度を所定の値とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像消去部は、前記熱可逆記録媒体の前記到達温度を所定の値とする制御として、前記ランプの発光開始時において、前記ランプの飽和発光出力に対して前記ランプの出力の発光指令を高く制御すること、及び、前記ランプの飽和発光出力時の前記熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動における相対速度に対して相対速度を低く制御すること、のうち少なくともいずれか一方を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像消去部は、前記熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動における相対速度を低く制御してランプによる加熱を行う、
ことを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像消去部は、少なくともランプ発光開始時において、前記熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動における相対速度を低く制御し、それ以外のランプ発光時は相対的な移動における相対速度を高く制御して前記ランプによる加熱を行う、
ことを特徴とする、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像消去部は、少なくともランプ発光終了時において、前記熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動における相対速度を低く制御し、それ以外のランプ発光時は相対的な移動における相対速度を高く制御して前記ランプによる加熱を行う、
ことを特徴とする、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像消去部は、前記ランプの発光開始時においては、前記ランプからの光を遮光して前記熱可逆記録媒体に照射せず、前記ランプの発光がほぼ飽和した後に前記熱可逆記録媒体に前記ランプからの光を照射する、
ことを特徴とする請求項1ないし6の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像消去部は、前記ランプと前記熱可逆記録媒体との相対的な移動を、往方向と復方向の両方向で行う、
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像消去部は、前記ランプの温度と前記ランプの発光履歴との少なくともいずれか一方を確認し、前記熱可逆記録媒体の前記到達温度が規定の温度となるように補正する、
ことを特徴とする請求項1ないし8の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記画像消去部は、前記ランプの出力の発光指令、及び、前記熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動における相対速度のうち少なくともいずれかを用いて、前記熱可逆記録媒体の前記到達温度が規定の温度となるように補正する、
ことを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記画像消去部は、前記ランプから前記熱可逆記録媒体までの距離計測結果に基づき、前記熱可逆記録媒体の前記到達温度が規定の温度となるように補正する、
ことを特徴とする請求項1ないし10の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記画像消去部は、前記距離計測結果に基づき、前記ランプの出力の発光指令、及び、前記熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動における相対速度のうち少なくともいずれかを制御する、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記画像消去部は、画像消去工程以外であっても、前記熱可逆記録媒体の画像を消去しない弱い出力で、前記ランプを発光させる、
ことを特徴とする請求項1ないし12の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記熱可逆記録媒体は、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、前記可逆性感熱記録層が樹脂及び有機低分子物質を含有する、
ことを特徴とする請求項1ないし13の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記熱可逆記録媒体は、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、前記可逆性感熱記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する、
ことを特徴とする請求項1ないし14の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項16】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去方法であって、
発光出力を調整可能なランプと前記熱可逆記録媒体との相対的な移動によって前記熱可逆記録媒体を全面加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程を含み、
前記画像消去工程は、前記熱可逆記録媒体の到達温度を、前記熱可逆記録媒体の消去領域において規定の範囲内に収まるように制御する、
ことを特徴とする画像消去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像消去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可逆記録媒体(以下、単に「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある)への画像消去は、イレーズバー、ホットスタンプなどの加熱源を記録媒体に接触させて媒体を加熱する接触式、もしくはレーザ光などの高出力の光を熱可逆記録媒体に照射して、媒体が光を吸収して熱に変換して消去する非接触式がある。
【0003】
特許文献1には、非接触式(ランプ方式)として、フラッシュランプの熱エネルギーを用いて、熱可逆記録媒体に対する画像消去を行う技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によれば、ランプ発光の安定待ち、ランプ自体による加熱、ランプの拡散光により、条件により高速で、狙いの温度範囲に加熱が困難なため、迅速な安定した熱可逆記録媒体の消去ができない、という課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、熱可逆記録媒体に伝わる熱エネルギーを制御して熱可逆記録媒体の記録層を狙いの温度範囲にして、迅速で安定した熱可逆記録媒体の消去を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、発光出力を調整可能なランプと、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体と前記ランプとの相対的な移動によって前記熱可逆記録媒体を全面加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去部と、を備え、前記画像消去部は、前記熱可逆記録媒体の到達温度を、前記熱可逆記録媒体の消去領域において規定の範囲内に収まるように制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱可逆記録媒体に伝わる熱エネルギーを制御して熱可逆記録媒体の記録層を狙いの温度範囲にすることで、迅速で安定した熱可逆記録媒体の消去を可能にする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態にかかる画像消去システムの構成を示す図である。
図2図2は、熱可逆記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、熱可逆記録媒体の画像記録及び画像消去のメカニズムについて説明する図である。
図4図4は、画像消去装置のヘッドユニットの構成を示す図である。
図5図5は、画像消去装置のコントローラユニットのハードウェア構成図である。
図6図6は、画像消去装置のコントローラユニットが発揮する機能構成を示す機能ブロック図である。
図7図7は、発光履歴の有無によるランプ制御について説明する図である。
図8図8は、発光履歴の有無およびランプから熱可逆記録媒体までの距離の違いによるランプ制御について説明する図である。
図9図9は、画像消去システムの構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像処理装置および画像消去方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施の形態にかかる画像消去システム100の構成を示す図である。図1(a)は、画像を消去中の画像消去システム100を示し、図1(b)は、画像を消去後の画像消去システム100を示している。図1に示すように、画像消去システム100は、画像処理装置である画像消去装置10と、コンベア20と、を備える。本実施形態の画像消去システム100は、熱可逆記録媒体30が貼り付けられたコンテナ40をコンベア20で移動させ、画像消去装置10の前でストッパ21を上げて停止させ、画像消去装置10によって熱可逆記録媒体30の画像を消去するものである。なお、画像消去システム100は、画像消去後、ストッパ21を下ろし、次のコンテナ40を画像消去装置10の前まで移動させる。
【0011】
図1に示すように、画像消去装置10は、熱可逆記録媒体30の画像消去の主体となるヘッドユニット11と、ヘッドユニット11の動作を制御するコントローラユニット12と、を備える。
【0012】
まず、熱可逆記録媒体30について説明する。
【0013】
熱可逆記録媒体30は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化するものである。熱可逆記録媒体30としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、紫外線吸収層、バック層、保護層、中間層、アンダー層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。熱可逆記録層に光熱変換材料を添加することで、光熱変換層を省略して第1及び第2の熱可逆記録層を1つにすることも可能である。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。ただし、光熱変換層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために該特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい。
【0014】
図2は、熱可逆記録媒体30の層構成の一例を示す概略断面図である。熱可逆記録媒体30の層構成としては、図2(a)に示されるように、支持体301と、該支持体301上に、第1の熱可逆記録層302と、光熱変換層303と、第2の熱可逆記録層304とをこの順に有する態様がある。
【0015】
また、熱可逆記録媒体30の層構成としては、図2(b)に示されるように、支持体301と、該支持体301上に、第1の酸素バリア層305、第1の熱可逆記録層302と、光熱変換層303と、第2の熱可逆記録層304と、第2の酸素バリア層306とをこの順に有する態様がある。
【0016】
また、熱可逆記録媒体30の層構成としては、図2(c)に示されるように、支持体301と、該支持体301上に、第1の酸素バリア層305、第1の熱可逆記録層302と、光熱変換層303と、第2の熱可逆記録層304と、紫外線吸収層307と、第2の酸素バリア層306とをこの順に有してなり、支持体301の熱可逆記録層等を有していない側の面にバック層308を有する態様がある。
【0017】
なお、図示を省略しているが、図2(a)の第2の熱可逆記録層304上、図2(b)の第2の酸素バリア層306上、図2(c)の第2の酸素バリア層306上の最表層に保護層を形成してもよい。
【0018】
支持体301としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、大きさとしては、熱可逆記録媒体30の大きさ等に応じて適宜選択することができる。支持体301の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
【0019】
第1の熱可逆記録層302及び第2の熱可逆記録層304(以下、「熱可逆記録層」と称することがある)は、いずれも電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0020】
熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
【0021】
ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0022】
可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
【0023】
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
【0024】
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0025】
バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0026】
熱可逆記録層中における発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1~10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0027】
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
【0028】
架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量としては、特に制限はないが、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01~2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0029】
熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率としては、特に制限はなく、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0030】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0031】
前記熱可逆記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、有機低分子物質である界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
【0032】
熱可逆記録層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は公知の方法を用いることができる。
【0033】
なお、熱可逆記録層用塗布液は分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0034】
次に、熱可逆記録媒体30の画像記録及び画像消去のメカニズムについて説明する。
【0035】
熱可逆記録媒体30は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する。熱可逆記録媒体30の画像記録及び画像消去のメカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
【0036】
図3は、熱可逆記録媒体30の画像記録及び画像消去のメカニズムについて説明する図である。図3(a)に、樹脂中にロイコ染料及び顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体30について、その温度-発色濃度変化曲線の一例を示し、図3(b)に、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する熱可逆記録媒体30の発消色メカニズムを示す。
【0037】
まず、初め消色状態(A)にある記録層を昇温していくと、溶融温度Tにて、ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度Tにて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
【0038】
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、ロイコ染料と顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、ロイコ染料と顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化したりした状態であり、凝集あるいは結晶化することによりロイコ染料と顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
【0039】
なお、図3(a)に示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもTで凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が生じている。
【0040】
更に図3(a)において、記録層を溶融温度T以上の温度Tに繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる熱可逆記録媒体30の劣化を抑えるためには、熱可逆記録媒体30を加熱する際に図3(a)の前記溶融温度Tと前記温度Tの差を小さくすることにより、繰返しによる熱可逆記録媒体30の劣化を抑えられる。
【0041】
次に、画像消去装置10のヘッドユニット11の構成について説明する。
【0042】
図4は、画像消去装置10のヘッドユニット11の構成を示す図である。図4(a)はヘッドユニット11の内部構成図、図4(b)はヘッドユニット11の斜視図である。図4(a)に示すように、ヘッドユニット11は、ランプモジュール112と、スライダ113と、モータ114と、を備える。
【0043】
図4(a)に示すように、ランプモジュール112は、ランプ111を搭載する。ランプ111は、ハロゲンヒータを用いる。ランプ111は、ランプ発光出力を調整可能である。加えて、ランプモジュール112は、ランプ111からの光を効率よく熱可逆記録媒体30に集めるために、光を反射させるリフレクタ123を備える。
【0044】
スライダ113は、モータ114を駆動源としてランプモジュール112を上下方向に走査させる。スライダ113は、モータ114に対する回転駆動制御によって、ランプモジュール112の走査速度を調整可能である。ヘッドユニット11は、ランプモジュール112の走査速度が遅いほど、熱可逆記録媒体30に多くの熱エネルギーを与えることが可能となっている。
【0045】
図4(b)に示すように、ヘッドユニット11は、金属で形成された箱状の筐体115の正面であって、コンベア20で移動するコンテナ40に貼り付けられた熱可逆記録媒体30に対向する位置に、照射窓116を備える。照射窓116は、スライダ113によるランプモジュール112の走査軌道に対向する位置に設けられる。すなわち、ヘッドユニット11は、照射窓116を介して、ランプモジュール112のランプ111からの光を、コンベア20で移動するコンテナ40に貼り付けられた熱可逆記録媒体30に与えることができる。
【0046】
また、図4(b)に示すように、ヘッドユニット11は、照射窓116の上下位置をランプモジュール112の退避位置117,118とする。ヘッドユニット11は、退避位置117,118にランプモジュール112を位置づけることにより、ランプモジュール112のランプ111からの光を遮光し、熱可逆記録媒体30やコンテナ40の熱可逆記録媒体30の貼り付け面を、不必要に加熱しないようにすることができる。
【0047】
加えて、図4(a)または図4(b)に示すように、ヘッドユニット11は、環境温度センサ119と、ヒータ温度センサ120と、ヒータ近傍温度センサ121と、距離センサ122と、を備える。環境温度センサ119は、筐体115の下部に設けられ、ヘッドユニット11の外部の温度を測定するセンサである。環境温度センサ119を筐体115の下部に設けるのは、筐体115の上部では熱が溜まり、環境温度の正確な測定ができないためである。ヒータ温度センサ120は、ランプモジュール112に設けられ、ランプ111の温度を測定するセンサである。ヒータ近傍温度センサ121は、筐体115の照射窓116の近傍に設けられ、ランプ111の近傍の温度を測定するセンサである。距離センサ122は、スライダ113に設けられ、ランプ111から熱可逆記録媒体30までの距離を測定するレーザセンサである。コントローラユニット12は、これらセンサ119~122の情報をもとに、ランプモジュール112のランプ111の発光出力、またはランプモジュール112の走査速度を制御する。
【0048】
接触式の利点としては安価な書換え装置の提供が可能であり、本実施形態のような非接触式の利点としては熱可逆記録媒体30の状態に制約なく書換えが可能なことである。例えば、熱可逆記録媒体30をコンテナ40などの箱に貼り付けた状態で情報を書換えが可能となる。非接触式では、流通で使用している通い箱、製造業で使用している部品管理の箱に対して箱の識別用の情報の情報更新に使用出来、要求がある。
【0049】
上記の運用では、コンテナ40などの箱の運用として重要な情報を媒体に書き込むことになるので、消去としても消え残りなく安定して消去処理が必要となる。正確な情報を書き込めなければ迷い箱になったり、運用システムが停止したりする事態となる。また、上記の運用では、コンベア20のようなシステムで箱を搬送するが、書換えの処理能力が低いと運用ライン速度が低下してしまうので、高速な消去処理が要求される。
【0050】
次に、画像消去装置10の制御系の構成について説明する。
【0051】
図5は、画像消去装置10のコントローラユニット12のハードウェア構成図である。図5に示されているように、コントローラユニット12は、コンピュータによって構築されている。図5に示されているように、コントローラユニット12は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、HD504、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505、ディスプレイ506、外部機器接続I/F(Interface)508、データバス510、各種のスイッチ511を備えている。
【0052】
これらのうち、CPU501は、画像消去装置10全体の動作を制御する。ROM502は、IPL等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。HD504は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御にしたがってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。
【0053】
ディスプレイ506は、各種情報を表示する。外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、ヘッドユニット11(ランプ111、モータ114、環境温度センサ119、ヒータ温度センサ120、ヒータ近傍温度センサ121、距離センサ122)である。バスライン510は、図5に示されているCPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。また、各種スイッチ511は、各種指示などの入力のための入力手段の一種である。
【0054】
次に、画像消去装置10のコントローラユニット12が発揮する機能について説明する。
【0055】
図6は、画像消去装置10のコントローラユニット12が発揮する機能構成を示す機能ブロック図である。なお、図6に示す各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部を、上述のCPU501が実行するプログラムで実現してもよいし、又は、ワイヤードロジック等によるハードウェアで実現してもよい。
【0056】
図6において、画像消去装置10のコントローラユニット12は、画像消去部12aと、ランプ111の発光履歴を記録する発光履歴記録部12bと、を備える。
【0057】
画像消去部12aは、熱可逆記録媒体30とランプ111との相対的な移動によって熱可逆記録媒体30を全面加熱することにより、熱可逆記録媒体30に記録された画像を消去する。
【0058】
また、画像消去部12aは、熱可逆記録媒体30の到達温度を、熱可逆記録媒体30の消去領域において規定の範囲内に収まるように制御する。熱可逆記録媒体30の熱可逆記録層の到達温度が低いと熱可逆記録媒体30の消去が不十分で消え残りが発生してしまい、温度が高いと再発色の発生で消え残りが発生したり、媒体表面の破損、媒体ダメージによる印字不良、箱の変形、媒体剥がれが生じたりする可能性がある。そのため、安定した消去の実現には、到達温度の制御は非常に重要である。
【0059】
次に、画像消去システム100を用いた画像消去におけるランプ制御処理について説明する。
【0060】
ここで、図7は発光履歴の有無によるランプ制御について説明する図である。図7(a)はランプ111の照射時間と照射パワーとの関係を示し、図7(b)はランプ111の照射時間と走査速度との関係を示したものである。
【0061】
図7に示すように、ランプ111は発光が開始してから出力が飽和するまで1秒程度かかる。そのため、熱可逆記録媒体30への到達温度を一定とするためには、発光開始時においてはランプ111の照射パワーを強めに設定する、あるいはランプモジュール112の走査速度を遅めに設定する必要がある。さらに、ランプ111そのものが熱をもつ性質のため、発光履歴がない状態、すなわちランプ111が常温に冷え切った状態では、発光開始時のランプ111の照射パワーを、強く設定する必要がある。一方、発光履歴がある状態、すなわちランプ111が熱を持った状態では、発光開始時のランプ111の照射パワーを、発光履歴なしと比較して弱めに設定する必要がある。
【0062】
ここで、図8は発光履歴の有無およびランプ111から熱可逆記録媒体30までの距離の違いによるランプ制御について説明する図である。図8(a)はランプ111の照射時間と照射パワーとの関係を示し、図8(b)はランプ111の照射時間と走査速度との関係を示したものである。
【0063】
図8に示すように、発光履歴の有無に加え、ランプ111から熱可逆記録媒体30までの距離の違いを考慮した場合、ランプ111から熱可逆記録媒体30までの距離(WD:Working Distance)が15mmの場合と比べて35mmの場合には、ランプ111からのエネルギーが拡散することでエネルギーが伝わりにくくなることから、ランプ111の照射パワーを強めに設定する、あるいはランプモジュール112の走査速度を遅めに設定する必要がある。
【0064】
そこで、本実施形態の画像消去装置10のコントローラユニット12(画像消去部12a)は、熱可逆記録媒体30の到達温度を、熱可逆記録媒体30の消去領域において規定の範囲内に収まるように制御する。
【0065】
具体的には、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、ランプ111と熱可逆記録媒体30との相対的な移動方向における熱可逆記録媒体30の到達温度を狙いの温度範囲である所定の値(範囲)とする。コントローラユニット12は、熱可逆記録媒体30の到達温度を所定の値(範囲)とする制御として、ランプ111の発光開始時において、ランプ111の飽和発光出力に対してランプ111の出力の発光指令を高く制御すること、及び、ランプ111の飽和発光出力時の熱可逆記録媒体30とランプ111との相対的な移動における相対速度に対して相対速度を低く制御すること、のうち少なくともいずれか一方を行う。
【0066】
従来のランプ方式においては、発光が安定するまで時間が掛かり、ランプ光を走査させる場合、ランプ加熱の開始直後では到達温度が低く消え残りが発生し、さらに、熱可逆記録媒体の貼り付け面が変形する、という課題があった。この点、本実施形態によれば、ランプ111の出力の弱い発光開始時は熱可逆記録媒体30に長時間熱を与えるか、最大出力で加熱し、ランプ111の出力が飽和したときは弱いパワーでの加熱または短時間で熱を与えるように制御することで、ランプ111を走査しながら照射を行ったときに、熱可逆記録媒体30に伝わる熱エネルギーを照射位置によらず一定にすることができる。
【0067】
なお、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、モータ114を制御して、ランプ111と熱可逆記録媒体30との相対的な移動を、往方向と復方向の両方向で行う。これにより、画像に対する消去ムラを打ち消すことができる。
【0068】
また、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、ランプ111の発光開始時においては、モータ114を制御して退避位置117または118にランプモジュール112を位置づけることにより、ランプモジュール112のランプ111からの光を遮光して熱可逆記録媒体30に照射しないようにする。そして、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、ランプ111の発光がほぼ飽和した後に、モータ114を制御して照射窓116にランプモジュール112を位置づけることにより、ランプモジュール112のランプ111からの光を熱可逆記録媒体30に照射する。なお、遮光手段は、これに限るものではなく、他部材でマスクしてランプ111からの光を遮光するなど、各種の手段を適用可能である。
【0069】
さらに、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、ランプ111の温度とランプ111の発光履歴との少なくともいずれか一方を確認し、熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度となるように補正する。より詳細には、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、ランプ111の出力の発光指令、及び、熱可逆記録媒体30とランプ111との相対的な移動における相対速度のうち少なくともいずれかを用いて、熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度となるように補正する。
【0070】
従来のランプ方式においては、ランプ加熱では光以外にランプ自体の温度で熱可逆記録媒体が加熱されるので、ランプの温度により媒体加熱温度が異なる、という課題があった。この点、本実施形態によれば、ランプ111が冷え切っている状態ではランプ111に熱が吸収されてしまうので、ランプ111の出力または照射時間を強めに設定し、ランプ111が温まっている状態ではランプ111に吸収される熱が少ないので、ランプ111の出力または照射時間を弱めに設定することで、ランプ111の発光履歴による熱可逆記録媒体30に伝わる熱エネルギーのばらつきを小さく抑えることができる。
【0071】
また、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、ランプ111から熱可逆記録媒体30までの距離を測定する距離センサ122の距離計測結果に基づき、熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度となるように補正する。より詳細には、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、距離計測結果に基づき、ランプ111の出力の発光指令、及び、熱可逆記録媒体30とランプ111との相対的な移動における相対速度のうち少なくともいずれかを制御する。
【0072】
従来のランプ方式においては、ランプの光は平行に進まず、拡散されるのでランプから熱可逆記録媒体までの距離により発光密度が異なり、拡散されるのでランプから熱可逆記録媒体までの距離により熱可逆記録媒体の加熱温度が異なる、という課題があった。この点、本実施形態によれば、ランプ111から熱可逆記録媒体30までの距離が近い場合はランプ111の出力または照射時間を弱めに設定し、ランプ111から熱可逆記録媒体30までの距離が遠い場合はランプ111の出力または照射時間を強めに設定することで、熱可逆記録媒体30に伝わる熱エネルギーのランプ111から熱可逆記録媒体30までの距離の違いによるばらつきを小さく抑えることができる。
【0073】
なお、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、画像消去工程以外であっても、熱可逆記録媒体30の画像を消去しない弱い出力で、ランプ111を発光させるようにしてもよい。このように弱い出力での発光履歴を残しておくことで、弱い出力での発光履歴からランプ111の出力を補正することができるようになる。
【0074】
このように本実施形態によれば、コントローラユニット12(画像消去部12a)は、熱可逆記録媒体30の到達温度を、熱可逆記録媒体30の消去領域において規定の範囲内に収まるように制御することにより、熱可逆記録媒体30に伝わる熱エネルギーを一定にすることで、迅速で安定した熱可逆記録媒体30の消去を可能にすることができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、画像消去システム100として、熱可逆記録媒体30が貼り付けられたコンテナ40をコンベア20で移動させ、画像消去装置10の前でストッパ21を上げて停止させ、画像消去装置10によって熱可逆記録媒体30の画像を消去する構成について説明したが、これに限るものではない。ここで、図9は画像消去システム100の構成の変形例である画像消去システム200の構成を示す図である。図9(a)は、画像消去直前の画像消去システム200を示し、図1(b)は、画像消去直後の画像消去システム200を示している。図9に示すように、画像消去システム200として、熱可逆記録媒体30が貼り付けられたコンテナ40をスライダ210で移動させながら、画像消去装置10によって熱可逆記録媒体30の画像を消去する構成であってもよい。すなわち、図9に示す画像消去システム200によれば、画像消去システム200のようにヘッドユニット11内でランプ111をスライダ113により移動させて熱可逆記録媒体30の画像を消去するのではなく、ランプ111を移動させずに熱可逆記録媒体30が貼り付けられたコンテナ40をスライダ210で移動させながら画像消去する。
【実施例0076】
所定の熱可逆記録媒体30(例えば、特許第5892366号公報の製造例1を参照)を用いて、以下のようにして画像処理を行い、画像評価を行った。画像評価結果を表1に示す。なお、表1における左端、右端、上端、下端は、熱可逆記録媒体30とランプ111との相対的な移動方向(走査方向)として横向き方向を想定する。
【0077】
(実施例1)
25℃環境下において、出力500Wのハロゲンランプ111(ウシオ電機製)4本で構成されたランプモジュール112を、スライダ113(IAI製RCP4-SA5C-I-42P-3-250-P3-S)を用いて走査速度40mm/Sで50mm走査させ、ランプ発光強度75%、熱可逆記録媒体30からランプモジュール112までの距離25mmで、の熱可逆記録媒体30に対し加熱を行い、画像消去を行った。ただし、照射開始前のランプ111の温度は環境温度とほぼ同じであり、制御方式としてランプ111の照射開始時の発光強度を90%とし1秒間に75%まで強度を落とす制御をする。
【0078】
(実施例2)
実施例1において、制御方式としてランプ111の走査速度を開始時は20mm/Sで1秒間に40mm/Sまで加速するように制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0079】
(実施例3)
実施例1において、制御方式としてランプ111の照射開始時の発光強度を80%とし1秒間に75%まで強度を落とす制御、及びランプ111の走査速度を開始時は30mm/Sで1秒間に40mm/Sまで加速するように制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0080】
(実施例3.1)
実施例1において、制御方式としてランプ111の発光開始直後は走査速度0mm/Sで、1秒後に走査速度50mm/Sで50mm走査するように制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0081】
(実施例3.2)
実施例1において、制御方式としてランプ111が発光して走査速度50mm/Sで50mm走査した後、走査速度を0mm/Sに設定した状態で0.5秒間ランプ111を照射する制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0082】
(実施例4)
実施例1において、ランプ111の発光開始時は熱可逆記録媒体30を加熱しないように遮蔽するマスクをランプの目の前に設置し、ランプ111の発光がほぼ飽和した後に熱可逆記録媒体30に照射するように制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0083】
(実施例5)
実施例1において、画像消去工程以外ではランプ111の発光強度20%で発光し続け、画像消去工程ではランプ111の発光強度が75%となるよう制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0084】
(実施例5.1)
実施例1において、ランプ111の走査速度を80mm/Sとし、往方向で50mm走査した後、復方向で50mm走査する制御に設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0085】
(実施例6)
実施例1において、ランプ111の温度を確認可能なヒータ温度センサ120を追加し、制御方式としてセンサ情報をもとに熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるようにランプ111の発光強度を制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0086】
(実施例7)
実施例1において、ランプ111の温度を確認可能なヒータ温度センサ120を追加し、制御方式としてセンサ情報をもとに熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるようにランプ111の走査速度を制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0087】
(実施例8)
実施例1において、ランプ111の温度を確認可能なヒータ温度センサ120を追加し、制御方式としてセンサ情報をもとに熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるようにランプ111の発光強度及びランプ111の走査速度を制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0088】
(実施例9)
実施例1において、ランプ111の温度を確認可能なヒータ温度センサ120を追加し、画像消去工程以外ではランプ発光強度5%で発光し続け、画像消去工程ではセンサ情報をもとに熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるようにランプ111の発光強度を制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0089】
(実施例10)
実施例1において、照射距離を35mmとし、制御方式として熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるようにランプ111の発光強度を制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0090】
(実施例11)
実施例1において、照射距離を35mmとし、制御方式として熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるようにランプ111の走査速度を制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0091】
(実施例12)
実施例1において、照射距離を35mmとし、制御方式として熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるようにランプ111の発光強度及びランプ111の走査速度を制御することに設定した以外は、実施例1と同様にして画像消去を行った。
【0092】
(比較例1)
実施例1において、ランプ111の照射開始時の発光強度の制御及びランプ111の走査速度の制御を行わず、常に発光強度75%及び走査速度40mm/Sとしたこと以外は、実施例1と同様にして、画像消去を行い、画像評価を行った。
【0093】
(比較例2)
実施例6において、熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるように、ランプ111の発光強度の制御及びランプ111の走査速度の制御を行わなかった以外は、実施例6と同様にして、画像消去を行い、画像評価を行った。
【0094】
(比較例3)
実施例10において、熱可逆記録媒体30の到達温度が規定の温度になるように、ランプ111の発光強度の制御及びランプ111の走査速度の制御を行わなかった以外は、実施例10と同様にして、画像消去を行い、画像評価を行った。
【0095】
【表1】
【0096】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明にかかる画像処理装置および画像消去方法は、熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高速で繰返し記録及び消去可能なので、例えば入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの大きな画面、多様な表示に幅広く用いることができ、特に、物流・配送システムや工場内での工程管理システムなどの使用に適したものである。
【0098】
特に物流システムにおいては箱の流れを止めないようにするために処理速度が重要となる。具体的には、顧客の処理速度の要望として、2000~2400箱/hが要求されている。画像消去装置を2台使用した場合、1箱あたり3~3.6秒の処理が必要となる。次の箱に入れ替えるための搬送時間も考慮すると、必要なランプ発光時間は高速コンベアでは2~2.6秒、中速コンベアでは1.5~2.1秒要求される。本発明の装置を用いることで、1.5~2秒の処理速度を実現することができるため、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0099】
10 画像処理装置
12a 画像消去部
30 熱可逆記録媒体
111 ランプ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特開2002-361913号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9