(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140193
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】表面形状の測定方法および表面形状測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230927BHJP
G01B 9/0209 20220101ALI20230927BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01B9/0209
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046101
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】森 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶顕
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064EE01
2F064FF03
2F064FF07
2F064GG12
2F064GG22
2F064HH03
2F064HH08
2F065AA04
2F065AA53
2F065DD06
2F065FF52
2F065GG03
2F065GG07
2F065GG24
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL12
2F065LL46
2F065MM03
2F065MM14
2F065MM24
2F065PP03
2F065PP12
2F065PP22
2F065QQ14
2F065QQ17
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】測定時間を短縮することができる表面形状の測定方法および表面形状測定装置を提供する。
【解決手段】表面形状の測定方法は、測定ヘッドを光軸方向に走査させながら撮像したN枚のスタック画像を合成して被測定物の表面形状を測定する。この測定方法では、N枚のスタック画像における共通の位置について、軸方向に沿った画素値の変化を示すN点の値に基づく高さ依存信号を積分することにより得られる積分曲線から、測定対象面よりも始点側における、測定対象面の近傍と比較して傾斜が小さい範囲である始点側ノイズ部を近似する始点側ノイズ部直線、測定対象面よりも終点側における測定対象面の近傍と比較して傾斜が小さい範囲である終点側ノイズ部を近似する終点側ノイズ部直線、および測定対象面の近傍の表面近傍部を近似する表面近傍直線を求め、これらの直線に基づき測定対象面のZ軸方向の位置を求める。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ヘッドを光軸方向に走査させながら撮像したN枚のスタック画像を合成して被測定物の表面形状を測定する測定方法であって、
N枚の前記スタック画像における共通の位置について、
Z軸方向に沿った画素値の変化を示すN点の値に基づく高さ依存信号を積分することにより得られる、N点の値からなる積分曲線から、測定対象面よりも始点側における、前記測定対象面の近傍と比較して傾斜が小さい範囲である始点側ノイズ部を近似する始点側ノイズ部直線、前記測定対象面よりも終点側における前記測定対象面の近傍と比較して傾斜が小さい範囲である終点側ノイズ部を近似する終点側ノイズ部直線、および前記測定対象面の近傍の表面近傍部を近似する表面近傍直線を求め、
前記始点側ノイズ部直線、前記終点側ノイズ部直線、および前記表面近傍直線に基づいて、前記測定対象面のZ軸方向の位置を求めることを特徴とする表面形状の測定方法。
【請求項2】
前記測定ヘッドは、光源から照射したインコヒーレントな光をビームスプリッタにより参照ミラーへの参照光と測定対象面への測定光に分割して、それぞれから反射してきた光の光路差により発生させた干渉縞画像を取得する干渉計光学ヘッドであり、
前記スタック画像は、前記干渉計光学ヘッドを前記測定対象面に対して、前記干渉計光学ヘッドの光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながら得られるN枚(ただしN≧2)の前記干渉縞画像であり、
前記高さ依存信号は、Z軸方向に沿った干渉光強度の変化を示すN点の値からなる干渉信号の2乗または絶対値であることを特徴とする請求項1に記載の表面形状の測定方法。
【請求項3】
前記測定ヘッドは、前記被測定物の二次元画像を撮像する画像光学ヘッドであり、
前記スタック画像は、前記画像光学ヘッドを前記測定対象面に対して、前記画像光学ヘッドの光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながら得られるN枚(ただしN≧2)の前記二次元画像であり、
前記高さ依存信号は、Z軸方向に沿ったコントラストの変化を示すN点の値からなるコントラストカーブであることを特徴とする請求項1に記載の表面形状の測定方法。
【請求項4】
前記被測定物の測定対象面に所定の周期性を有するパターンの投影光を照射するパターン投影部をさらに備え、
前記測定ヘッドは、被測定物の二次元画像を撮像する画像光学ヘッドであり、
前記スタック画像は、前記パターン投影部が前記被測定物の前記測定対象面に前記投影光を照射した状態で、前記画像光学ヘッドを前記測定対象面に対して、前記画像光学ヘッドの光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながら得られるN枚(ただしN≧2)の前記二次元画像であり、
前記高さ依存信号は、前記投影光が前記測定対象面で反射された反射光の強度のZ軸方向に沿った変化を示すN点の値の2乗または絶対値であることを特徴とする請求項1に記載の表面形状の測定方法。
【請求項5】
前記積分曲線における連続する予め定められた数の点についての近似直線のうち傾き最大となる直線を前記表面近傍直線とすることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の表面形状の測定方法。
【請求項6】
予め定められた数の点の全てについて最小二乗法を適用することにより近似直線を求めることを特徴とする請求項5に記載の表面形状の測定方法。
【請求項7】
連続する予め定められた数の点の両端の点を結ぶ直線を近似直線とすることを特徴とする請求項5に記載の表面形状の測定方法。
【請求項8】
前記始点側ノイズ部直線と前記終点側ノイズ部直線の傾き等しいという制約の下で前記始点側ノイズ部直線と前記終点側ノイズ部直線を求めることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の表面形状の測定方法。
【請求項9】
前記積分曲線における前記始点から予め定められた数の点に基づき前記始点側ノイズ部直線を求め、前記積分曲線における前記終点から予め定められた数の点に基づき前記終点側ノイズ部直線を求めることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の表面形状の測定方法。
【請求項10】
前記始点側ノイズ部直線の傾きと前記終点側ノイズ部直線の傾きを平均した傾きを有し、前記始点側ノイズ部直線の切片と前記終点側ノイズ部直線の切片を平均した切片を有する中間直線と、前記表面近傍直線との交点を、前記測定対象面のZ軸方向の位置とすることを特徴とする、請求項1から9の何れか1項に記載の表面形状の測定方法。
【請求項11】
1枚目の前記スタック画像を取得した後、
M枚目(ただし2≦M≦N)の前記スタック画像を順次取得しながらM-1枚目までの前記スタック画像に対する解析処理を実施し、
N枚目の前記スタック画像を取得した後、1枚目からN枚目までの前記スタック画像に対する前記解析処理を実施し、
前記解析処理は、最後に取得したK枚目の前記スタック画像内の各位置について、少なくとも、
前記積分曲線を構成する始点からK番目の点の値を求める積分曲線更新処理と、
前記積分曲線のK番目の点を最も終点側の点として含む連続する予め定められた数の点について、近似直線を求める最新近似直線算出処理と、
前記積分曲線のK番目までの点における連続する予め定められた数の点についての近似直線のうち傾きが最大である暫定表面近傍直線を求める暫定表面近傍直線更新処理であって、前記積分曲線のK-1番目までの点について求めた暫定表面近傍直線と、最新近似直線算出処理で求めた前記近似直線とを比較し、傾きが大きい方を新たな暫定表面近傍直線とする暫定表面近傍直線更新処理と、
を含み、
N枚目の前記スタック画像を取得した後に行う前記解析処理における暫定表面近傍直線更新処理で得られた前記暫定表面近傍直線を、前記表面近傍直線とすることを特徴とする、請求項1から10の何れか1項に記載の表面形状の測定方法。
【請求項12】
被測定物の測定対象面の表面形状を測定する表面形状測定装置であって、
インコヒーレントな光を照射する光源から照射した光を、ビームスプリッタにより参照ミラーへの参照光と前記測定対象面への測定光に分割して、それぞれから反射してきた光の光路差により発生させた干渉縞画像を撮像素子により取得する干渉計光学ヘッドと、
前記干渉計光学ヘッドにより取得した前記干渉縞画像に基づいて前記測定対象面の表面形状を求める解析手段と
を備え、
前記干渉計光学ヘッドは、前記測定対象面に対して、前記干渉計光学ヘッドの光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながらN枚(ただしN≧2)の前記干渉縞画像を取得し、
前記解析手段は、
前記干渉計光学ヘッドが取得したN枚の前記干渉縞画像における共通の位置について、
Z軸方向に沿った干渉光強度の変化を示すN点の値からなる干渉信号の2乗または絶対値を積分することにより得られる、N点の値からなる積分曲線から、前記測定対象面よりも始点側における干渉が生じない範囲である始点側ノイズ部を近似する始点側ノイズ部直線、前記測定対象面よりも終点側における干渉が生じない範囲である終点側ノイズ部を近似する終点側ノイズ部直線、および前記測定対象面の近傍の干渉が生じる範囲である干渉部を近似する干渉部直線を求め、
前記始点側ノイズ部直線、前記終点側ノイズ部直線、および前記干渉部直線に基づいて、前記測定対象面のZ軸方向の位置を求めることを特徴とする表面形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定ヘッドを光軸方向に走査させながら撮像した複数のスタック画像を合成して被測定物の表面形状を測定する測定方法および表面形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定ヘッドを光軸方向に走査させながら撮像した複数のスタック画像を用いて被測定物の表面形状を精密に測定する表面形状測定装置が知られている。
【0003】
このような表面形状測定装置としては、例えば光源から白色光を被測定物に照射し、光の干渉によって生じる干渉縞の輝度情報を用いるものがある。この表面形状測定装置においては、参照光路と測定光路の光路長が一致するピント位置では各波長の干渉縞のピークが重なり合い合成される干渉縞の輝度が大きくなる。したがって、表面形状測定装置では、参照光路または測定光路の光路長を変化させながら干渉光強度の二次元の分布を示す干渉縞画像をCCDカメラ等の撮像素子により撮影し、撮影視野内の各測定位置で干渉光の強度がピークとなるピント位置を検出することで、各測定位置における測定面(つまり被測定物の表面)の高さを測定し、被測定物の表面形状を測定することができる。
【0004】
また、干渉縞の輝度情報を用いるものの他、各画素位置でのコントラストの変化から合焦する位置(高さ)を求めるもの(例えば、特許文献2参照)、周期的パターンを被測定物に投影し、縞パターンのコントラストが最大となる位置を求めるもの(例えば、特許文献3参照)、等もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-191118号公報
【特許文献2】特許第6976712号
【特許文献3】特許第5592763号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような光の干渉によって生じる干渉縞の輝度情報を用いる表面形状測定装置では、干渉を生じる光の波長程度の周期で干渉光の輝度変化が生じるため、波長よりも十分に細かい間隔で参照光路または測定光路の光路長を変化させながら干渉縞画像の撮影を繰り返す必要がある。そして、表面形状測定装置は、撮りためた数百~千枚程度の干渉縞画像を解析して各画素位置における測定面の高さを特定する。この解析には、干渉光の強度が最大となる高さを大まかに検出するラフピーク検出処理と詳細な高さを求めるファインピーク検出処理が含まれる。
【0007】
ラフピーク検出処理では、干渉縞画像を構成する各画素位置について、高さ方向の位置に対する輝度値の変化を示す信号波形を求める処理、信号波形に対し二乗、積分、平滑化微分等の信号処理を施した上でピークサーチを行って干渉光の強度が最大となる高さを求める。また、ファインピーク検出処理では、干渉縞画像を構成する各画素位置における信号波形の位相に着目して、測定面の詳細な高さを求める。
【0008】
このように、従来の表面形状測定装置では、多数の干渉縞画像を撮影した後に、さらに得られた全ての画像に対する解析処理を行うため、1回の表面形状測定に多くの時間がかかっていた。また、撮り溜めた多数の画像に対して横断的に実施する解析処理は、膨大なワークメモリと高い演算処理能力を必要とするものであった。
【0009】
各画素位置でのコントラストの変化から合焦する位置(高さ)を求める合焦位置検出方式を用いた表面形状測定装置や、周期的パターンを被測定物に投影し縞パターンのコントラストが最大となる位置を求める表面形状測定装置でも、測定ヘッドを光軸方向に走査させながら撮像した複数の画像を合成して被測定物の表面形状を求めるために、同様の解析処理が必要であり、同様の課題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記の課題を解決し、解析処理に必要なワークメモリや演算処理能力を抑制することができ、延いては測定時間を短縮することができる表面形状の測定方法および表面形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく、本発明に係る表面形状の測定方法は、測定ヘッドを光軸方向に走査させながら撮像したN枚のスタック画像を合成して被測定物の表面形状を測定する。この測定方法では、N枚のスタック画像における共通の位置について、軸方向に沿った画素値の変化を示すN点の値に基づく高さ依存信号を積分することにより得られる、N点の値からなる積分曲線から、測定対象面よりも始点側における、測定対象面の近傍と比較して傾斜が小さい範囲である始点側ノイズ部を近似する始点側ノイズ部直線、測定対象面よりも終点側における測定対象面の近傍と比較して傾斜が小さい範囲である終点側ノイズ部を近似する終点側ノイズ部直線、および測定対象面の近傍の表面近傍部を近似する表面近傍直線を求め、始点側ノイズ部直線、終点側ノイズ部直線、および表面近傍直線に基づいて、測定対象面のZ軸方向の位置を求める。
【0012】
本発明では、測定ヘッドは、光源から照射したインコヒーレントな光をビームスプリッタにより参照ミラーへの参照光と測定対象面への測定光に分割して、それぞれから反射してきた光の光路差により発生させた干渉縞画像を取得する干渉計光学ヘッドとするとよい。この場合、スタック画像は、干渉計光学ヘッドを測定対象面に対して、干渉計光学ヘッドの光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながら得られるN枚(ただしN≧2)の干渉縞画像とするとよく、高さ依存信号は、Z軸方向に沿った干渉光強度の変化を示すN点の値からなる干渉信号の2乗または絶対値とするとよい。
【0013】
あるいは、本発明では、測定ヘッドは、被測定物の二次元画像を撮像する画像光学ヘッドとしてもよい。この場合、スタック画像は、画像光学ヘッドを測定対象面に対して、画像光学ヘッドの光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながら得られるN枚(ただしN≧2)の二次元画像とするとよく、高さ依存信号は、Z軸方向に沿ったコントラストの変化を示すN点の値からなるコントラストカーブとするとよい。
【0014】
あるいは、本発明では、被測定物の測定対象面に所定の周期性を有するパターンの投影光を照射するパターン投影部をさらに備え、測定ヘッドは、被測定物の二次元画像を撮像する画像光学ヘッドとしてもよい。この場合、スタック画像は、パターン投影部が被測定物の測定対象面に投影光を照射した状態で、画像光学ヘッドを測定対象面に対して、画像光学ヘッドの光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながら得られるN枚(ただしN≧2)の二次元画像とするとよく、高さ依存信号は、投影光が測定対象面で反射された反射光の強度のZ軸方向に沿った変化を示すN点の値の2乗または絶対値とするとよい。
【0015】
本発明では、積分曲線における連続する予め定められた数の点についての近似直線のうち傾き最大となる直線を表面近傍直線とするとよい。例えば、予め定められた数の点の全てについて最小二乗法を適用することにより近似直線を求めるとよい。あるいは、連続する予め定められた数の点の両端の点を結ぶ直線を近似直線とするとよい。
【0016】
本発明では、始点側ノイズ部直線と終点側ノイズ部直線の傾き等しいという制約の下で始点側ノイズ部直線と終点側ノイズ部直線を求めるとよい。
【0017】
本発明では、積分曲線における始点から予め定められた数の点に基づき始点側ノイズ部直線を求め、積分曲線における終点から予め定められた数の点に基づき終点側ノイズ部直線を求めるとよい。
【0018】
本発明では、始点側ノイズ部直線の傾きと終点側ノイズ部直線の傾きを平均した傾きを有し、始点側ノイズ部直線の切片と終点側ノイズ部直線の切片を平均した切片を有する中間直線と、表面近傍直線との交点を、測定対象面のZ軸方向の位置とするとよい。
【0019】
本発明では、1枚目のスタック画像を取得した後、M枚目(ただし2≦M≦N)のスタック画像を順次取得しながらM-1枚目までのスタック画像に対する解析処理を実施し、N枚目のスタック画像を取得した後、1枚目からN枚目までのスタック画像に対する解析処理を実施するとよい。そして、解析処理は、最後に取得したK枚目のスタック画像内の各位置について、少なくとも、積分曲線を構成する始点からK番目の点の値を求める積分曲線更新処理と、積分曲線のK番目の点を最も終点側の点として含む連続する予め定められた数の点について、近似直線を求める最新近似直線算出処理と、積分曲線のK番目までの点における連続する予め定められた数の点についての近似直線のうち傾きが最大である暫定表面近傍直線を求める暫定表面近傍直線更新処理であって、積分曲線のK-1番目までの点について求めた暫定表面近傍直線と、最新近似直線算出処理で求めた近似直線とを比較し、傾きが大きい方を新たな暫定表面近傍直線とする暫定表面近傍直線更新処理と、を含むとよく、N枚目のスタック画像を取得した後に行う解析処理における暫定表面近傍直線更新処理で得られた暫定表面近傍直線を、表面近傍直線とするとよい。
【0020】
また、本発明に係る表面形状測定装置は、被測定物の測定対象面の表面形状を測定する。当該表面形状測定装置は、インコヒーレントな光を照射する光源から照射した光を、ビームスプリッタにより参照ミラーへの参照光と測定対象面への測定光に分割して、それぞれから反射してきた光の光路差により発生させた干渉縞画像を撮像素子により取得する干渉計光学ヘッドと、干渉計光学ヘッドにより取得した干渉縞画像に基づいて測定対象面の表面形状を求める解析手段とを備える。干渉計光学ヘッドは、測定対象面に対して、干渉計光学ヘッドの光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながらN枚(ただしN≧2)の干渉縞画像を取得する。解析手段は、干渉計光学ヘッドが取得したN枚の干渉縞画像における共通の位置について、Z軸方向に沿った干渉光強度の変化を示すN点の値からなる干渉信号の2乗または絶対値を積分することにより得られる、N点の値からなる積分曲線から、測定対象面よりも始点側における干渉が生じない範囲である始点側ノイズ部を近似する始点側ノイズ部直線、測定対象面よりも終点側における干渉が生じない範囲である終点側ノイズ部を近似する終点側ノイズ部直線、および測定対象面の近傍の干渉が生じる範囲である干渉部を近似する表面近傍直線を求め、始点側ノイズ部直線、終点側ノイズ部直線、および表面近傍直線に基づいて、測定対象面のZ軸方向の位置を求める。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】表面形状測定装置1の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】干渉計光学ヘッド152の構成を光路とともに示す模式図である。
【
図3】対物レンズ部22の構造と測定光路および参照光路を示す要部拡大図である。
【
図4】コンピュータ本体201の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5(a)は干渉信号の一例を示し、
図5(b)は干渉信号に基づく積分曲線wの一例を示している。
【
図6】積分曲線を近似する3本の直線(L1~L3)と、これらの直線から算出される中間直線L4、並びに測定対象面の位置Z
crossを示す図である。
【
図7】本実施形態の表面形状測定の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る表面形状測定装置1の第1実施形態である干渉光学系と画像測定装置とを組み合わせた表面形状測定装置1について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、第1実施形態に係る表面形状測定装置1の全体構成を示す斜視図である。表面形状測定装置1は、被測定物(ワーク)Wの測定対象面の表面形状を測定する。表面形状測定装置1は、非接触型の画像測定機10と、この画像測定機10を駆動制御すると共に、必要なデータ処理を実行するコンピュータシステム2とを備える。なお、表面形状測定装置1は、これらの他、計測結果等をプリントアウトするプリンタ等を適宜備えてもよい。
【0024】
画像測定機10は、架台11と、試料台(ステージ)12と、支持アーム13aおよび13bと、X軸ガイド14と、撮像ユニット15とを備える。
図1に示されるように、表面形状測定装置1は、フロアに設置された除振台3上に配置される。除振台3はフロアの振動が台上の表面形状測定装置1に伝搬するのを防ぐ。除振台3はアクティブ型及びパッシブ型のいずれであってもよい。除振台3の天板上には架台11が配置され、その上に、ワークWを載置するステージ12がその上面をベース面として水平面と一致するように載置される。以下では、ステージ12のベース面と平行な方向にX軸およびY軸、ベース面に垂直な方向にZ軸が伸びるものとして説明する。ステージ12は、図示しないY軸駆動機構によってY軸方向に駆動され、ワークWを撮像ユニットに対してY軸方向に移動可能とされている。架台11の両側縁中央部には上方に延びる支持アーム13a、13bが固定され、この支持アーム13a、13bの両上端部を連結するようにX軸ガイド14が固定される。このX軸ガイド14は、撮像ユニット15を支持する。撮像ユニット15は、図示しないX軸駆動機構によってX軸ガイド14に沿って駆動される。
【0025】
撮像ユニット15は、ワークWの二次元画像を撮像する画像光学ヘッド151および光干渉測定によりワークWの表面形状を測定する干渉計光学ヘッド152を備え、いずれかのヘッドを用いて、コンピュータシステム2が設定する測定位置でワークWを測定する。画像光学ヘッド151の測定視野は干渉計光学ヘッド152の測定視野よりも通常広く設定し、コンピュータシステム2による制御により、両ヘッドを切り替えて使用できる。画像光学ヘッド151と干渉計光学ヘッド152は、一定の位置関係を保つよう、共通の支持板により支持され、切り替えの前後で測定の座標軸が変化しないよう予めキャリブレーションされる。
【0026】
画像光学ヘッド151は、CCDカメラ、照明装置、フォーカシング機構等を備え、ワークWの二次元画像を撮影する。撮影された二次元画像のデータはコンピュータシステム2に取り込まれる。
【0027】
図2は、干渉計光学ヘッド152の構成を光路とともに示す模式図である。干渉計光学ヘッド152は、後述するように、測定光路および参照光路のそれぞれから反射してきた光の光路差により発生させた干渉縞画像を撮像素子により取得する。干渉計光学ヘッド152は、
図2に示すようにマイケルソン型の干渉計を構成し、光出射部20と、照明導光部21と、対物レンズ部22と、結像レンズ24と、撮像部25と、駆動機構部26とを備える。
【0028】
光出射部20は、コヒーレンシーの低い(インコヒーレントな)光を照射する光源である。ここで、コヒーレンシーの低い光とは、例えば、コヒーレンス長が100μm程度以下の光とするとよい。光出射部20は、広帯域(例えば波長500~800nm)にわたる多数の波長成分を有しコヒーレンシーの低い広帯域光を出力する。光出射部20には、例えば、ハロゲン等のランプ光源、LED(Light Emitting Diode)、SLD(Super Luminescent Diode)などが用いられる。光出射部20が出力する光は、例えば白色光が好適であるが、コヒーレンシーの低い光であればこれに限定されない。
【0029】
照明導光部21は、ビームスプリッタ211と、コリメータレンズ212とを備えている。光出射部20から出射した光は、対物レンズ部22の光軸と直角の方向から、コリメータレンズ212を介してビームスプリッタ211に平行に照射され、ビームスプリッタ211からは光軸に沿った光が出射されて、対物レンズ部22に対して上方から平行ビームが照射される。
【0030】
対物レンズ部22は、対物レンズ221、ビームスプリッタ222、参照ミラー部223等を備えて構成される。また、参照ミラー部223は、所定位置に参照ミラー224を備える。対物レンズ部22においては、上方から平行ビームが対物レンズ221に入射した場合、入射光は対物レンズ221で収束光となり、ビームスプリッタ222の内部の反射面222aに入射する。
【0031】
入射光は、ビームスプリッタ222にて参照ミラー部223内の参照光路を進む反射光(参照光)と、ワークWを配置した測定光路を進む透過光(測定光)とに分岐する。反射光は、参照ミラー224で反射されて、更にビームスプリッタ222の反射面222aにより反射される。一方、透過光は、集束しつつワークWで反射され、ビームスプリッタ222の反射面222aを透過する。参照ミラー224からの反射光とワークWからの反射光とはビームスプリッタ222の反射面222aにより合成されて合成波となる。
【0032】
ビームスプリッタ222の反射面222aの位置で合成された合成波は、対物レンズ221で平行ビームになり上方へ進み、照明導光部21を通過して、結像レンズ24に入射する(
図2中一点鎖線)。結像レンズ24は合成波を収束させ撮像部25上に干渉縞画像を結像させる。
【0033】
撮像部25は、撮像手段を構成するための2次元の撮像素子からなるCCDカメラ等であり、対物レンズ部22から出力された合成波(ワークWからの反射光と参照ミラー224からの反射光)の干渉縞画像を撮像する。撮像部25が撮像する干渉縞画像は、本発明におけるスタック画像に相当する。
【0034】
図3は、対物レンズ部22の要部拡大図である。駆動機構部26は、本発明の光路長可変手段に相当し、コンピュータシステム2からの移動指令によって、干渉計光学ヘッド152を光軸方向に移動させる。
図3は参照光路(破線)と、測定光路(実線)の光路長が等しい状態を示している。測定に際しては、干渉計光学ヘッド152を光軸方向(すなわちZ軸方向)に移動させつつ干渉縞画像を撮影することで、測定光路の長さが異なった状態で多数の干渉縞画像を取得するが、測定光路の長さと参照光路の長さとの差が光源からのコヒーレント長程度以下の場合に干渉が生じ、測定光路の長さが参照光路の長さに一致するときに干渉強度が最も強くなる(つまり、干渉縞のコントラストが最大となる)。なお、上記では干渉計光学ヘッド152を移動させる場合を例示して説明したが、ステージ12を移動させることで測定光路の長さを調整する構成としてもよい。また、参照ミラー224を光軸方向(すなわち
図3の左右方向)に移動することにより参照光路の長さを可変とする構成としてもよい。このように、干渉計光学ヘッド152において、参照光路または測定光路の何れか一方の光路長が可変とされる。
【0035】
干渉計光学ヘッド152は、コンピュータシステム2による制御の下、駆動機構部26により光軸方向の位置を移動走査され、所定の距離を移動する毎に撮像部25が撮像を行う。干渉縞画像は、順次、コンピュータシステム2に転送されて取り込まれる。
【0036】
図1に戻ると、コンピュータシステム2は、コンピュータ本体201、キーボード202、ジョイスティックボックス(以下、J/Sと呼ぶ)203、マウス204及びディスプレイ205を備える。コンピュータシステム2は、干渉計光学ヘッド152により取得した干渉縞画像に基づいて測定対象面の表面形状を求める。コンピュータシステム2は、本発明における解析手段として機能する。
【0037】
図4は、コンピュータ本体201の構成を示すブロック図を示す。
図4に示すように、コンピュータ本体201は、制御の中心をなすCPU40と、記憶部41と、ワークメモリ42と、インタフェース(
図5において「IF」と示す。)43、44、45、46と、ディスプレイ205での表示を制御する表示制御部47とを備える。
【0038】
キーボード202、J/S203又はマウス204から入力されるオペレータの指示情報は、インタフェース43を介してCPU40に入力される。インタフェース44は、画像測定機10と接続され、画像測定機10に対しCPU40からの各種制御信号を供給し、画像測定機10から各種のステータス情報や画像等を受信してCPU40に入力する。
【0039】
画像測定モードが選択されている場合、表示制御部47は、ディスプレイ205に画像光学ヘッド151のCCDカメラから供給された画像信号による画像を表示する。光干渉測定モードが選択されている場合、表示制御部47は、干渉計光学ヘッド152により撮影した画像、干渉計光学ヘッド152により測定した表面形状データ等を、CPU40による制御に基づき適宜ディスプレイ205に表示する。画像光学ヘッド151や干渉計光学ヘッド152による測定結果は、インタフェース45を介してプリンタに出力することができる。
【0040】
ワークメモリ42は、CPU40の各種処理のための作業領域を提供する。記憶部41は、例えばハードディスクドライブやRAM等により構成され、CPU40により実行されるプログラム、表面形状測定装置1による測定結果等を格納する。CPU40により実行されるプログラムには、後述の解析処理を行うプログラムが含まれる。
【0041】
CPU40は、各インタフェースを介した各種入力情報、オペレータの指示及び記憶部41に格納されたプログラム等に基づいて、画像光学ヘッド151による画像測定モードと干渉計光学ヘッド152による光干渉測定モードとの切り替え、測定範囲の指定、撮像ユニット15のX軸方向への移動、ステージ12のY軸方向への移動、画像光学ヘッド151による二次元画像の撮像、干渉計光学ヘッド152による干渉縞画像の測定および表面形状の算出等の各種の処理を実行する。
【0042】
表面形状を算出する際には、CPU40は、干渉縞画像内の各画素位置について、干渉縞のピークが生じる移動走査位置を特定し、干渉縞画像内の各画素位置における高さ(Z軸方向の位置)とする。
【0043】
続いて、本実施形態の表面形状測定装置1を用いて干渉縞画像内の各画素位置における高さを求める手法について説明する。以下では、干渉計光学ヘッド152を光軸に沿ったZ軸方向に始点(例えばZ軸方向の走査範囲におけるワークWに最も近い位置)から終点(例えばZ軸方向の走査範囲におけるワークWから最も離れた位置)に向かって走査しながらN枚(ただしN≧2)の干渉縞画像を取得するものとする。そして、このようにして取得したN枚の干渉縞画像に基づいて各画素位置における高さ(Z軸方向位置)を求める。求めた各画素位置の高さから、ワークWの表面形状を把握することができる。
【0044】
本実施形態の手法では、N枚の干渉縞画像における共通の画素位置について、Z軸方向に沿った各撮像位置における干渉光強度(画素の輝度値)の変化を示す信号を干渉信号(
図5(a))とし、この干渉信号を2乗した値または干渉信号の絶対値を求め、さらにこれを積分することにより得られる積分曲線から各画素位置における高さ(Z軸方向位置)を求める。干渉信号の2乗または絶対値は、本発明における高さ依存信号に相当する。
【0045】
本実施形態の手法では、このような積分曲線を、
図6に示したように、始点側ノイズ部直線L1、干渉部直線L2、および終点側ノイズ部直線L3からなる3本の直線で近似する。始点側ノイズ部直線L1は、測定対象面よりも始点側における干渉が生じない範囲である始点側ノイズ部を近似する。また、終点側ノイズ部直線L3は、測定対象面よりも終点側における干渉が生じない範囲である終点側ノイズ部を近似する。また、干渉部直線L2は、測定対象面の近傍の干渉が生じる範囲である干渉部を近似する。なお、干渉部は本発明の表面近傍部に相当し、干渉部直線は本発明の表面近傍直線に相当する。また、始点側ノイズ部および終点側ノイズ部は、測定対象面の近傍の表面近傍部と比較して積分曲線の傾斜が小さい範囲である。
【0046】
始点側ノイズ部直線L1は、積分曲線における始点から予め定められた数の点(例えば10点)に基づき求めるとよい。終点側ノイズ部直線L3は、積分曲線における終点から予め定められた数の点(例えば10点)に基づき求めるとよい。また、始点側ノイズ部直線L1と終点側ノイズ部直線L3の傾きが等しいという制約の下で始点側ノイズ部直線L1と終点側ノイズ部直線L3を求めるとよい。
【0047】
干渉部直線L2は、積分曲線における連続する予め定められた数の点についての近似直線のうち傾き最大となる直線とするとよい。例えば、連続する予め定められた数の点の全てについて最小二乗法を適用することにより近似直線を求めるとよい。あるいは、連続する予め定められた数の点の両端の点を結ぶ直線を近似直線としてもよい。
【0048】
そして、始点側ノイズ部直線L1、終点側ノイズ部直線L3、および干渉部直線L2に基づいて、測定対象面のZ軸方向の位置(高さ)を求める。具体的には、始点側ノイズ部直線L1の傾きと終点側ノイズ部直線L3の傾きを平均した傾きを有し、始点側ノイズ部直線の切片と終点側ノイズ部直線の切片を平均した切片を有する中間直線L4を求める。そして、中間直線L4と干渉部直線L2との交点Zcrossを求め、この交点の位置を測定対象面のZ軸方向の位置(高さ)とする。
【0049】
干渉縞画像内のすべての画素について上記の手法を適用してZ軸方向の位置Zcrossを求めることにより、ワークWの表面形状が得られる。
【0050】
測定対象面のZ軸方向の位置は、上記の手法により積分曲線から求められるが、積分曲線を構成するN個の点の全てが揃う前に(つまりN枚の干渉縞画像を撮像し終える前に)、画素位置における高さを求めるための解析処理を始めることができる。以下では、
図7に示したフローチャートを参照しつつ、干渉計光学ヘッド152での干渉縞画像の撮像およびコンピュータシステム2への転送を行いながら、既にコンピュータシステム2に格納されている干渉縞画像を用いて、N枚の干渉縞画像全てが揃う前に、解析処理の少なくとも一部を実行する手法を説明する。この手法により、処理時間の短縮と処理負荷の軽減を実現することができる。
【0051】
すでに説明したように、表面形状測定装置1では、干渉計光学ヘッド152の光軸に沿ったZ軸方向に始点から終点に向かって走査しながらN枚(ただしN≧2)の干渉縞画像を順次撮像し、コンピュータシステム2に転送する。本手法では、表面形状測定装置1は、測定を開始すると、はじめに1枚目の干渉縞画像を取得する(ステップS10)。その後、干渉計光学ヘッド152の位置を走査しつつM枚目(ただし2≦M≦N)の干渉縞画像を順次取得し、これと並行してコンピュータシステム2では、M-1枚目までの干渉縞画像に対する解析処理を実施する(ステップS20)。
【0052】
M-1枚目までの干渉縞画像に対する解析処理は、最後に取得したM-1枚目の干渉縞画像内の各位置について、積分曲線を構成する始点からM-1番目の点の値を求める積分曲線更新処理(ステップS21)を含む。この積分曲線更新処理は、M-1枚目の干渉縞画像内の各位置について、輝度値を2乗した値を、M-2枚目までの積分値に加算することにより積分曲線におけるM-1番目の点を求める処理である。なお、積分値の初期値(つまりM=2のときに輝度値を2乗した値を加算するM-2=0枚目までの積分値)は0とする。
【0053】
また、M-1枚目までの干渉縞画像に対する解析処理は、積分曲線のM-1番目の点を最も終点側の点として含む連続する予め定められた数の点について、近似直線を求める最新近似直線算出処理(ステップS22)を含む。なお、M-1が予め定められた数に満たない場合には、最新近似直線算出処理は実施しなくてよい。
【0054】
また、M-1枚目までの干渉縞画像に対する解析処理は、積分曲線のM-1番目までの点における連続する予め定められた数の点についての近似直線のうち傾きが最大である暫定干渉部直線を求める暫定干渉部直線更新処理(ステップS23)を含む。この暫定干渉部直線更新処理は、積分曲線のM-2番目までの点について求めた暫定干渉部直線と、最新近似直線算出処理で求めた近似直線とを比較し、傾きが大きい方を新たな暫定干渉部直線とする。なお、M-1が予め定められた数に満たない場合には、暫定干渉部直線更新処理は実施しなくてよい。
【0055】
このように、M枚目の干渉縞画像を取得しながら、既に取得済みのM-1枚目までの干渉縞画像に対する解析処理を進めることで、N枚の干渉縞画像の全てを取得する前に、測定対象面の高さを求める処理の一部を進めることができる。
【0056】
ステップS20の後、N枚目の干渉縞画像を未だ取得していない場合(ステップS30;No)には、ステップS20に戻り次の干渉縞画像を取得しつつ、取得済みの干渉縞画像についての解析処理を実施する。
【0057】
N枚目の干渉縞画像を取得するまでステップS20を繰り返した後(ステップS30;Yes)、1枚目からN枚目までの干渉縞画像に対する解析処理(ステップS40)を実施する。1枚目からN枚目までの干渉縞画像に対する解析処理は、積分曲線におけるN番目の点の値を求める積分曲線更新処理(ステップS41)、最新近似直線算出処理(ステップS42)、および暫定干渉部直線更新処理(ステップS43)を含む。1枚目からN枚目までの干渉縞画像に対する解析処理における暫定干渉部直線更新処理で得られた暫定干渉部直線を、干渉部直線とする。
【0058】
このようにすることで、N枚目の干渉縞画像を取得した時点で、既に取得済みのN-1点目までの積分曲線や、N-1点目までの積分曲線に基づく暫定的な干渉部直線を求めておくことができる。そして、N枚目の干渉縞画像を取得した後は、積分曲線におけるN点目(最後の1点)を求めるだけで積分曲線の全体が確定する。さらに、N番目の点を含む近似直線を求めて、それをN-1点目までの積分曲線に基づく暫定的な干渉部直線と比較して選択するだけで、最終的な干渉部直線を得ることができる。
【0059】
また、N枚目の干渉縞画像を取得した後の解析処理において、積分曲線における始点から予め定められた数の点と積分曲線における終点から予め定められた数の点とに基づき、始点側ノイズ部直線L1と終点側ノイズ部直線L3を求める(ステップS44)。
【0060】
なお、始点側ノイズ部直線L1と終点側ノイズ部直線L3の傾きが等しいという制約を設けない場合には、M-1が始点側ノイズ部直線L1を求めるのに必要な点の数に一致したときに、M-1枚目までの干渉縞画像に対する解析処理において、始点側ノイズ部直線L1を求め、N枚目の干渉縞画像を取得した後の解析処理において、終点側ノイズ部直線L3を求めてもよい。
【0061】
N枚目の干渉縞画像を取得した後の解析処理では、続いて、始点側ノイズ部直線L1と終点側ノイズ部直線L3から中間直線を求める(ステップS45)。さらに中間直線と干渉部直線の交点を求め、この交点の位置Zcrossを測定対象面のZ軸方向の位置(高さ)とする(ステップS46)。
【0062】
このように、干渉部直線を求めた後は、比較的少ない点数での直線近似、直線同士の交点算出といた、処理負荷が比較的低く、膨大なワークメモリを要しない処理により測定対象面の高さを求めることができる。
【0063】
以上で説明したように、本実施形態に係る表面形状測定装置1では、解析処理に必要なワークメモリや演算処理能力を抑制することができる。また、干渉縞画像の撮影と解析処理とを並行して行うことで、測定時間を短縮することができる。
【0064】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る表面形状測定装置1Bは、測定ヘッドを光軸方向に走査させながらワークの測定対象面を撮像した複数のスタック画像を用いて、スタック画像内の各画素位置でのコントラストの変化から合焦する位置(高さ)を測定対象面の高さとして求める、いわゆるPFF(Point From Focus)測定を行う点で、第1実施形態の表面形状測定装置1と異なる。以下、表面形状測定装置1Bについて、第1実施形態の表面形状測定装置1と異なる点を中心に説明する。特に説明の無い構成については、第1実施形態の表面形状測定装置1と同様であるものとして理解されたい。
【0065】
表面形状測定装置1Bは、第1実施形態の表面形状測定装置1と同様、非接触型の画像測定機10と、この画像測定機10を駆動制御すると共に、必要なデータ処理を実行するコンピュータシステム2とを備える。画像測定機10は、第1実施形態に関して
図1に示されたものと同様、架台11と、試料台(ステージ)12と、支持アーム13aおよび13bと、X軸ガイド14と、撮像ユニット15を備える。
【0066】
第2実施形態における撮像ユニット15は、ワークWの二次元画像を撮像する画像光学ヘッド151を備え、コンピュータシステム2が設定する測定位置でワークWの画像を撮像する。画像光学ヘッド151は、CCDカメラ、照明装置、フォーカシング機構等を備え、ワークWの二次元画像を撮影する。撮影された二次元画像のデータはコンピュータシステム2に取り込まれる。
【0067】
PFF測定により表面形状を測定する際には、フォーカシング機構による焦点距離を所定の距離に固定した状態で、測定ヘッドを光軸方向(Z軸方向)に走査させながら複数枚のスタック画像を撮像する。
【0068】
撮像したスタック画像から、ワークの測定対象面の高さを算出する際には、コンピュータシステム2のCPU40が、スタック画像内の各画素位置について、撮像時の高さ(測定ヘッドの走査位置)に応じた局所的な合焦度の程度を示すコントラストカーブを求め、このコントラストカーブにピークが生じる移動走査位置を特定し、スタック画像内の各画素位置における高さ(Z軸方向の位置)とする。
【0069】
第2実施形態の表面形状測定装置1では、干渉画像内の各画素位置について、撮像時の高さ(測定ヘッドの走査位置)に応じた干渉の強度を示す干渉信号について、その2乗または絶対値を高さ依存信号とした。そして、この高さ依存信号を積分して得られる積分曲線を解析することで、測定対象面の高さを求めた。
【0070】
これに対し、第2実施形態の表面形状測定装置1Bでは、コントラストカーブを高さ依存信号として用いる。すなわち、コントラストカーブを積分したものを積分曲線とし、第1実施形態と同様の解析手法を適用することで、測定対象面の高さを求めることができる。
【0071】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る表面形状測定装置1Cは、いわゆる構造化照明顕微鏡(SIM)法による測定を行う点で、上記の第1および第2実施形態の表面形状測定装置1、1Bと異なる。SIM法による測定では、光軸に垂直な方向において周期性を有するパターンの投影光をワークに照射し、その状態で測定ヘッドを光軸方向に走査させながらワークの測定対象面を撮像して、ワークの測定対象面で反射された投影光を撮像し複数のスタック画像を得る。そして得られたスタック画像を用いて、スタック画像内の各画素位置でのパターンのコントラストの変化から合焦する位置(高さ)を測定対象面の高さとして求める。以下、表面形状測定装置1Cについて、第1および第2実施形態の表面形状測定装置1、1Bと異なる点を中心に説明する。特に説明の無い構成については、第1、第2実施形態の表面形状測定装置1、1Bと同様であるものとして理解されたい。
【0072】
表面形状測定装置1Cは、第1実施形態の表面形状測定装置1や第2実施形態の表面形状測定装置1Bと同様、非接触型の画像測定機10と、この画像測定機10を駆動制御すると共に、必要なデータ処理を実行するコンピュータシステム2とを備える。画像測定機10は、第1実施形態に関して
図1に示されたものと同様、架台11と、試料台(ステージ)12と、支持アーム13aおよび13bと、X軸ガイド14と、撮像ユニット15を備える。
第3実施形態における撮像ユニット15は、ワークWの二次元画像を撮像する画像光学ヘッド151を備え、コンピュータシステム2が設定する測定位置でワークWの画像を撮像する。画像光学ヘッド151は、CCDカメラ、照明装置、フォーカシング機構等を備え、ワークWの二次元画像を撮影する。撮影された二次元画像のデータはコンピュータシステム2に取り込まれる。
【0073】
第3実施形態における撮像ユニット15は、上記に加えワークの測定対象面に所定の周期性を有するパターンの投影光を照射するパターン投影部153を備える。パターン投影部153は、例えばプロジェクタである。パターン投影部153は照明光源やフォーカシング機構等を備えるが、これらは画像光学ヘッド151の照明装置やフォーカシング機構とは独立している。すなわち、画像光学ヘッドを光軸方向に走査させたときに、パターン投影部153はその走査に連動して動くことはない。
【0074】
SIM法の測定により表面形状を測定する際には、パターン投影部153によってワークの測定対象面に焦点が合うように所定のパターンを投影する。そして、第2実施形態のPFF測定と同様、画像光学ヘッド151のフォーカシング機構による焦点距離を所定の距離に固定した状態で、測定ヘッドを光軸方向(Z軸方向)に走査させながら複数枚のスタック画像を撮像する。
【0075】
撮像したスタック画像から、ワークの測定対象面の高さを算出する際には、コンピュータシステム2のCPU40が、スタック画像内の各画素位置について、撮像時の高さ(測定ヘッドの走査位置)に応じた反射光の強度の変化を求め、この反射光の強度の変化のピークが生じる移動走査位置を特定し、スタック画像内の各画素位置における高さ(Z軸方向の位置)とする。
【0076】
投影光がワークの測定対象面で反射された反射光の強度のZ軸方向位置に対する変化は、
図5(a)に示した第1実施形態の干渉信号と類似した曲線となり、合焦位置から十分に離れた位置では略一定であるが、合焦位置の近傍では増減し、合焦位置において振幅が最大となる。この反射光強度の変化は第1実施形態における干渉信号の変化と類似しているため、第1実施形態の表面形状測定装置1と同様の手法で測定対象面の高さを求める。すなわち、第1実施形態では、干渉画像内の各画素位置について、撮像時の高さ(測定ヘッドの走査位置)に応じた干渉の強度を示す干渉信号について、その2乗または絶対値を高さ依存信号とした。そして、この高さ依存信号を積分して得られる積分曲線を解析することで、測定対象面の高さを求めた。
【0077】
これに倣い、第3実施形態の表面形状測定装置1Cでは、反射光の強度の変化の2乗または絶対値を高さ依存信号として用いる。すなわち、反射光の強度の変化の2乗または絶対値を積分したものを積分曲線とし、第1実施形態と同様の解析手法を適用することで、測定対象面の高さを求めることができる。
【0078】
以上で説明した各実施形態によれば、解析処理に必要なワークメモリや演算処理能力を抑制することができ、延いては測定時間を短縮することができる表面形状の測定方法および表面形状測定装置を実現することができる。
【0079】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0080】
例えば、上記第1実施形態では、マイケルソン型の干渉計を用いた画像測定装置を例に説明したが、本発明は、画像測定装置以外の干渉計を用いた様々な測定装置や顕微鏡等にも適用することができる。また、ミロー型、フィゾー型、トワイマングリーン型その他の等光路干渉計を用いた測定装置にも本発明を適用することができる。
【0081】
また、上記の各実施形態では、コンピュータシステム2により解析処理を行ったが、解析処理の一部または全部をASICやFPGAを用いた専用のハードウェアによりで実現してもよい。
【0082】
また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、表面形状測定装置に適用することで、解析処理に必要なワークメモリや演算処理能力を抑制することができ、延いては測定時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0084】
1,1B,1C・・・表面形状測定装置
2・・・コンピュータシステム
3・・・除振台
10・・・画像測定機
11・・・架台
12・・・ステージ
13a、13b・・・支持アーム
14・・・X軸ガイド
15・・・撮像ユニット
W・・・被測定物(ワーク)