(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140211
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】インク吐出装置及びインク吐出方法、インク吐出物の製造方法、白色インク、並びに、処理液とインクのセット
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20230927BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20230927BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230927BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20230927BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230927BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C09D11/322
C09D11/54
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 114
B41J2/21
B41J2/01 501
B41J2/01 123
D06P5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046128
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩加
(72)【発明者】
【氏名】古川 壽一
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA13
2C056FB03
2C056FC01
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4J039AE04
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4J039EA46
4J039EA48
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4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 ノズルのワイピング耐久性に優れ、高い白色度及び優れた堅牢性を有する画像を得ることができ、かつインクの吐出安定性に優れたインク吐出装置の提供。
【解決手段】 SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクと、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備え、前記インクを吐出するインク吐出手段と、を有し、前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であるインク吐出装置
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクと、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備え、前記インクを吐出するインク吐出手段と、を有し、
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であることを特徴とするインク吐出装置。
【請求項2】
前記有機溶剤のSP値が、9.0以上10.6以下である請求項1に記載のインク吐出装置。
【請求項3】
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、8質量%以上11質量%以下である請求項1から2のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項4】
多価金属塩、及び水を含有する処理液を有する請求項1から3のいずれかに記載のインク吐出装置
【請求項5】
前記多価金属塩が、塩化カルシウム、及び硝酸カルシウムの少なくともいずれかである請求項4に記載のインク吐出装置。
【請求項6】
前記インクを収容しているインク収容容器を更に有する請求項1から5のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項7】
前記処理液を収容している処理液収容容器を更に有する請求項4または5のいずれかに記載のインク吐出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のインク吐出装置を用い、
前記インクを吐出するインク吐出工程、を含むことを特徴とするインク吐出方法。
【請求項9】
前記記録媒体が布帛である請求項8に記載のインク吐出方法。
【請求項10】
多価金属塩、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与工程と、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備えるインク吐出手段から、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクを吐出するインク吐出工程と、を含み、
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下である
ことを特徴とするインク吐出物の製造方法。
【請求項11】
SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有する白色インクであって
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であることを特徴とする白色インク。
【請求項12】
多価金属塩、及び水を含有する処理液と、
SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクのセットであって
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であることを特徴とする処理液とインクのセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出装置及びインク吐出方法、インク吐出物の製造方法、白色インク、並びに、処理液とインクのセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターはオンデマンドでカラー印刷が容易に形成できるといった利点があることから、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。
近年では、家庭用のみならず、コート紙等の緩浸透性メディアやプラスチックフィルム等の非吸収性メディア、織物や編物等のファブリックメディアに対しても、インクジェット記録方法により、従来のアナログ印刷並の画質を獲得することが要求されるようになっている。
例えば、捺染分野においても、Tシャツ等の衣類に直接印字するいわゆるDTG(Direct to Garment)分野の市場規模は年々拡大しており、また、近年のアパレル業界におけるパーソナルレコメンデーションビジネスの隆盛や、インテリアテキスタイル分野において認められるファインアートとのコラボレーションの活発化といった動向により、ファブリックに対して発色性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要がますます高まりつつある。
顔料を色材として含むインクを用いて直接生地にインクジェットで作像する捺染方式においては、スクリーン捺染及びその他の従来の捺染とは異なり、版の作製、保管、及び洗浄等の版に関する事柄が必要なく、少量多品種生産に適していること、転写等の工程を含まないため短納期化が可能なこと、耐光性に優れること等の点において優位性を有しており、そのためのインクが開発されてきている。
【0003】
近年では、無地の生地のみならず、捺染等によって既に着色された生地への作像に対するニーズも高まっている。
着色された生地への作像としては、生地をホワイトインクで被覆し、その上にカラーインクを付与するような方法が挙げられ、ブラックやネイビー等の濃色で着色した生地に対してもホワイトインクの層がカラーインクの下地となることで、カラーインクに十分な発色性を持たせることができる。したがって、上記の作像方法においては、ホワイトインクが生地の濃色を隠蔽することが重要であり、生地の上で高い白色度を発揮することが求められている。
【0004】
一方、特に、ホワイトインクは記録媒体を隠蔽する高い白色度が求められるため、不揮発成分が多く含まれ、(1)ホワイトインクを吐出するノズル孔周辺部にインクが付着して不均一なインクだまりが発生すること、(2)(1)により、吐出するインク滴の方向が曲がってしまったり、インク滴の大きさにばらつきが出てしまったり、インク滴の飛翔速度が不安定になること、(3)インクの揮発成分が蒸発することによる増粘によって吐出不良を発生させることがある。
これに対して、一般的には、ノズルの液滴吐出側の表面に、例えば、フッ素系化合物、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシシラン残基を有する化合物、又はシリコーン樹脂膜などを含む撥インク層(膜)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2など参照)。
【0005】
また、撥インク層を形成することに加えて、インクジェットプリンターにおいてノズルの液体吐出表面をクリーニングする機能を搭載することが一般的になっている。このクリーニング機能は、各ノズルから少量のインクを排出した後、ノズル孔周辺部をゴムワイパーなどで払拭するワイピングを行う一連の動作を行う。これにより、ノズル孔周辺部のインクだまりや固着物質を除去できるため、安定的にインクを吐出させることができる。
また、インクジェットプリンターを長期間使用するにあたり、このクリーニングが繰り返し実施されても吐出性が高い性能(以降、ワイピング耐久性と呼称する)を有することが好ましい。
例えば、顔料と樹脂を含有したインク組成物と複数のノズルを有する記録ヘッドと前記ノズルの吐出口及び前記ノズル形成面に付着した前記インク組成物を吸収する吸収部材と、前記吸収部材及び前記記録ヘッドのうち少なくとも一方を、相対的に移動させて、前記吸収部材によって前記ノズル形成面に付着した前記インク組成物を除去する清掃動作を行なう駆動機構と、を備えたインクジェット記録装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ノズルのワイピング耐久性に優れ、高い白色度及び優れた堅牢性を有する画像を得ることができ、かつインクの吐出安定性に優れたインク吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインク吐出装置は、
SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクと、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備え、前記インクを吐出するインク吐出手段と、を有し、
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノズルのワイピング耐久性に優れ、高い白色度及び優れた堅牢性を有する画像を得ることができ、かつインクの吐出安定性に優れたインク吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のインク吐出装置を有する画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、処理液収容容器及びインク収容容器の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、液体吐出ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3における液体吐出ヘッドをY方向に垂直なIII-III断面で切断した場合の断面図である。
【
図5】
図5は、圧電素子の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、液体吐出ヘッドのノズル板の要部を拡大した断面図の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
(インク吐出装置及びインク吐出方法)
本発明のインク吐出装置は、
SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクと、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備え、前記インクを吐出するインク吐出手段と、を有し、インク収容容器、処理液収容容器、処理液付与手段、さらに必要に応じてその他部材及びその他の手段を有する。
【0012】
本発明のインク吐出方法は、
本発明のインク吐出装置を用い、前記インクを吐出するインク吐出工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
より詳細には、本発明のインク吐出方法は、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備えるインク吐出手段から、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクを吐出するインク吐出工程と、を含み、処理液付与工程、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
【0013】
本発明のインク吐出装置及びインク吐出方法における前記インクは、前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下である。
【0014】
従来では、以下の問題点があった。クリーニングにおいてワイピングが繰り返し実施されると、ノズル板の表層にある撥インク層が徐々に摩耗し、撥インク層の機能が損なわれてしまう。そのため、上記シークエンス中のノズルから液滴を吐出させる過程においてインクだまりができやすくなり、吐出不良のノズルが発生してしまい、画像品質を損ねてしまうという問題がある。この問題は、液体吐出ヘッドに充填されているインクの特性も大きく関与しており、特に、顔料粒径の大きい白色顔料を含むインクにおいて顕著に発生する。これは、撥インク層とワイパーとの間にあるインク中の白色顔料が研磨剤として働くためである。なかでも、シリコーン樹脂の撥インク膜を形成したノズル板と白色顔料を含むインクの組み合わせにおいてワイピング耐久性が顕著に低下してしまう。
本発明者らが鋭意検討したところ、従来技術において、以下の問題点があることを知見した。
従来技術の開示では、拭き取り性、クリーニング性及び撥液膜保存性の少なくともいずれかに優れた効果を奏することが記載されている。本発明者らは、この技術はカラーインクでは有効な手段になりえるが、白色顔料インクを用いた際に、ワイピング耐久性が十分ではないことを知見した。
また、本発明者らは、ワイピング耐久性に係る課題を解決する手段のひとつとして、インク中の白色顔料の含有量を減らすことについて検討した。この場合、白色顔料の含有量を減らすことで画像品質として十分な白色度が得られなくなってしまうという問題があった。
【0015】
本発明者らは、シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備えるインク吐出手段と、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤を0.5質量%以上2.5質量%以下で含有し、白色顔料を6質量%以上15質量%以下で含有し、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクと、を用いることによって、高い白色度を有する画像が得られ、かつ、優れたワイピング耐久性を奏することができることを見出した。
また、このインクは、インクの吐出安定性、及び得られる画像の堅牢性に優れることを見出した。
【0016】
本発明のインク吐出方法は本発明のインク吐出装置により好適に実施することができ、インク吐出工程はインク吐出手段により好適に実施することができ、その他の工程はその他の手段により好適に実施することができる。
【0017】
<インク収容容器>
前記インク収容容器は、インクを収容している収容容器である。
前記インクを収容しているとは、容器中にインクが存在している状態を意味する。
前記インク収容手段としては、特に制限はなく、例えば、吐出方式、塗布方式などで用いられる液体組成物の収容容器などが挙げられる。
前記吐出方式に用いられる収容容器としては、例えば、公知のインクカートリッジ等が挙げられる。
前記塗布方式に用いられる収容容器としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、ワイヤーバー塗布法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などに用いられる公知の液体組成物の収容容器などが挙げられる。
【0018】
-インク-
前記インクは、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有し、前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であり、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
【0019】
--有機溶剤--
前記有機溶剤は、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤を含み、さらに必要に応じてその他の有機溶剤を含有していてもよい。
【0020】
前記「SP値」は「溶解パラメーター」を意味し、溶剤、樹脂、顔料など、水や溶剤に対して溶解又は分散して用いられる材料との親和性及び溶解性の指標として一般に広く用いられている。
前記SP値の求め方は、実験により測定する方法や、浸漬熱など物理特性の測定から計算する方法、分子構造から計算する方法など様々な方法が提唱されているが、本発明ではFedorsが提唱した分子構造から計算する方法を用いる。
この方法は分子構造がわかればSP値が計算できる点と、実験による測定値との差が小さい点で有効である。
Fedorsの方法では、各原子や原子団の25℃における蒸発エネルギーΔei、モル体積Δviから式(A)を用いて、SP値を求めることができる。
SP値=(ΣΔei/Δvi)1/2・・・式(A)
【0021】
本発明においてはFedors法に基づき、分子構造から算出したSP値を用いるものとし、その単位は、(cal/cm3)1/2を用いることとする。
なお、本発明では、25℃におけるSP値を用い、温度換算等は行わない。
前記SP値は、(文献)「R.F.Fedors: Polym. Eng. Sci., 14〔2〕,147-154」に記載されているFedorsの法を用いて、計算することができる。
【0022】
前記有機溶剤のSP値としては、9.0以上12.0以下であり、9.0以上10.6以下が好ましい。
また、本発明においては、前記SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤の含有量としては、インクに対して0.5質量%以上2.5質量%以下含有であり、0.5質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がより好ましい。前記SP値が9.0以上である有機溶剤をインクに対して0.5質量%以上2.5質量%以下含有すると、得られる画像の白色度を高くすることができる。また、前記SP値が12.0以下である有機溶剤をインクに対して0.5質量%以上2.5質量%以下含有すると、優れたワイピング耐久性を得ることができる。
【0023】
前記SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシルメチルオキセタン(SP値=11.3(cal/cm3)1/2)、β-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド(SP値=9.2(cal/cm3)1/2)、β-ブトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド(SP値=9.0(cal/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(SP値=10.1(cal/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(SP値=9.8(cal/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(SP値=9.7(cal/cm3)1/2)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(SP値=9.8(cal/cm3)1/2)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(SP値=11.8(cal/cm3)1/2)、ポリプロピレングリコール 250(SP値=10.5(cal/cm3)1/2、数平均分子量:250)、ポリプロピレングリコール 400(SP値=9.8(cal/cm3)1/2、数平均分子量:400)、ポリプロピレングリコール・グリセリルエーテル(SP値=10.3(cal/cm3)1/2)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.1(cal/cm3)1/2)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(SP値=10.6(cal/cm3)1/2)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記有機溶剤としては、前記SP値が9.0以上12.0以下の有機溶剤を0.5質量%以上2.5質量%以下含有していれば、前記SP値が9.0以上12.0以下の有機溶剤以外のその他の有機溶剤を含んでいてもよい。
前記その他の有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性有機溶剤などが挙げられる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
前記水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。
【0025】
前記その他の有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
--白色顔料--
前記白色顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。
これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
前記白色顔料としては、その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
前記顔料の具体例としては、例えば、酸化チタン等の金属類、有機顔料などが挙げられる。
【0027】
前記白色顔料を分散してインクを得るためには、前記白色顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、前記白色顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
前記白色顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、前記白色顔料にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
前記白色顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、前記白色顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される白色顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない白色顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
前記分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
前記分散剤としては、前記白色顔料に応じて、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
前記分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
[顔料分散体]
前記白色顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、前記白色顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
前記顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、前記白色顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、インクに対して、固形分で、6質量%以上15質量%以下が好ましく、8質量%以上11質量%以下がより好ましい。6質量%以上含有することで、良好な白色度を発現し、15質量%以下含有することで良好な吐出安定性及びワイピング耐久性を得ることができる。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0029】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1,000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0030】
インクの物性としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましく、8mPa・s以上15mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0031】
--ポリウレタン樹脂--
前記ポリウレタン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂である。
前記ポリウレタン樹脂としては、エステルを基本構造に含むウレタン樹脂エマルション(樹脂粒子)であることが好ましい。
エステルを基本構造に含むガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリウレタン樹脂エマルションを用いることで、優れた堅牢性と風合いを有する画像を得ることができる。なお、本発明における「堅牢性」とは、特に、JIS L0844に準拠して評価される「洗濯堅牢性」を意味する。また、「風合い」とは、得られた画像の柔軟性を意味するものである。
前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上2,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0033】
前記ポリウレタン樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、堅牢性、インクの保存安定性の点から、インクに対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0034】
--水--
前記インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記処理液の乾燥性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0035】
--その他の成分--
前記その他の成分としては、前記処理液に用いる添加剤と同様のものを用いることができる。
【0036】
[インクの物性]
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
なお、インクに含有されている有機溶剤、樹脂、顔料、その他成分等の定性方法、定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。例えば、前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置としては、例えば、GCMS-QP2020NX(株式会社島津製作所製)などが挙げられる。
インクに含まれる水分量は、一般的な方法として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による揮発成分の定量や、熱重量・示差熱同時測定法(TG-DTA)による質量変動等により測定することができる。
【0037】
<インク吐出手段及びインク吐出工程>
前記インク吐出手段は、前記インクを吐出し、シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備える手段であり、インク収容容器に収容されている前記インクを記録媒体に吐出する手段である。
前記インク吐出工程は、前記インクを吐出する工程である。
前記インク吐出手段及び前記インク吐出工程は、前記インクを前記記録媒体において後述する処理液を吐出した領域に付与することが好ましい。
【0038】
本発明のインク吐出装置及びインク吐出方法における前記インク吐出手段においては、シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備える。
なお、前記撥液層としては、単層からなる膜でもよく、二層以上が積層した多層構造であってもよい。
前記シリコーン樹脂を含有する撥液層をノズル板に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2020-117683に記載の方法など挙げられる。
前記シリコーン樹脂の撥液層の平均厚みとしては、0.1μm以上1μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下がより好ましい。
【0039】
前記インク吐出手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第4936738号、特開2020-117683に記載のような液体吐出ヘッドなどが挙げられる。
【0040】
(液体吐出ヘッド)
前記液体吐出ヘッドの一例について
図3から
図6を参照して説明する。なお、液体吐出ヘッドは既存、公知のものを適宜選択して用いることができるため、
図3~
図6に記載のヘッドに限定されない。
なお、
図3は、液体吐出ヘッド120の分解斜視説明図、
図4は、
図3における液体吐出ヘッド26をY方向に垂直なIII-III断面で切断した場合の断面図である。
図5は、圧電素子44の断面図である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッド26は、第1ノズル列L1の各ノズルN(第1ノズルの例示)に関連する要素と第2ノズル列L2の各ノズルN(第2ノズルの例示)に関連する要素とが仮想面Oを挟んで面対称に配置された構造である。すなわち、液体吐出ヘッド26のうち仮想面Oを挟んでX方向の正側の部分(以下「第1部分」という)P1とX方向の負側の部分(以下「第2部分」という)P2とで構造は実質的に共通する。第1ノズル列L1の複数のノズルNは第1部分P1に形成され、第2ノズル列L2の複数のノズルNは第2部分P2に形成される。仮想面Oは、第1部分P1と第2部分P2との境界面に相当する。
【0041】
液体吐出ヘッド26は、第1流路部材30と第2流路部材48とを備える。
第1流路部材30は、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する構造体である。第1流路部材30と第2流路部材48とは、Z方向に互いに重なるように積層される。第1流路部材30は、連通板32と圧力室基板34と振動部42とを積層して構成される。連通板32及び圧力室基板34と振動部42とのそれぞれは、Y方向に長尺な板状部材である。
【0042】
図3に示すように、第1流路部材30のZ方向の負側の表面は、配線基板45を介して第2流路部材48に積層される第1領域Aと、配線基板45を介さずに第2流路部材48に積層される第2領域Bとを含む。連通板32は、これら第1領域Aと第2領域とにわたって設けられる。例えば、本図に記載の圧力室基板34と振動部42とはこの順番で、連通板32のZ方向の負側の表面Fa(上面)に接着剤などで接合され、第1領域Aに配置される。
【0043】
連通板32の表面Faには、圧力室基板34と振動部42との他、複数の圧電素子44と配線基板45と第2流路部材48とが設置される。複数の圧電素子44と配線基板45とは、振動部42のZ方向の負側の表面に設置され、第1領域Aに配置される。第2流路部材48は、第1領域Aと第2領域Bとに重なるように第1流路部材30に積層され、連通板32の表面Faのうち第2領域Bに接着剤などで接合される。
なお、複数の圧電素子44、配線基板45などの具体的な配置構成の詳細は後述する。
【0044】
他方、連通板32のうちZ方向の正側(すなわち表面Faとは反対側)の表面Fbにはノズル板52と吸振体54とが設置される。液体吐出ヘッド26の各要素は、概略的には連通板32や圧力室基板34と同様にY方向に長尺な板状部材であり、接着剤などで接合される。液体吐出ヘッド26を構成する板状の各要素は、その板状の各要素の表面に垂直な方向であるZ方向に積層されるので、例えば連通板32と圧力室基板34とが積層される方向や連通板32とノズル板52とが積層される方向は、Z方向に相当する。
【0045】
ノズル板52は、複数のノズルNが形成された板状部材であり、連通板32の表面Fbに接着剤などで接合される。ノズル板52のうち連通板32側の表面とは反対側の表面が媒体12に対向する吐出面260となる。複数のノズルNのそれぞれは、吐出面260から連通板32側の表面まで貫通する円筒状の貫通孔である。ノズル板52には、第1ノズル列L1を構成する複数のノズルNと第2ノズル列L2を構成する複数のノズルNとが形成される。具体的には、ノズル板52のうち仮想面OからみてX方向の正側の領域に、第1ノズル列L1の複数のノズルNがY方向に沿って形成され、X方向の負側の領域に、第2ノズル列L2の複数のノズルNがY方向に沿って形成される。ノズル板52は、第1ノズル列L1の複数のノズルNが形成された部分と第2ノズル列L2の複数のノズルNが形成された部分とに渡って連続する単体の板状部材である。ノズル板52は、半導体製造技術(例えばドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術)を利用してSi(シリコン)の単結晶基板を加工することで製造される。
ただし、ノズル板52の製造には公知の材料や製法を適用可能である。
【0046】
図2及び
図3に示すように、連通板32には、第1部分P1及び第2部分P2のそれぞれについて、空間Raと供給液室60と複数の供給路61と複数の連通路63とが形成される。空間Raは、平面視で(すなわちZ方向から見て)Y方向に沿う長尺状に形成された開口であり、供給路61及び連通路63はノズルN毎に形成された貫通孔である。供給液室60は、複数のノズルNにわたりY方向に沿う長尺状に形成された空間であり、空間Raと複数の供給路61とを相互に連通させる。複数の連通路63は平面視でY方向に配列し、複数の供給路61は、複数の連通路63の配列と空間Raとの間でY方向に配列する。複数の供給路61は、空間Raに共通に連通する。また、任意の1個の連通路63は、これに対応するノズルNに平面視で重なる。具体的には、第1部分P1の任意の1個の連通路63は、第1ノズル列L1のうちその任意の1個の連通路63に対応する1個のノズルNに連通する。同様に、第2部分P2の任意の1個の連通路63は、第2ノズル列L2のうちその任意の1個の連通路63に対応する1個のノズルNに連通する。
【0047】
圧力室基板34は、第1部分P1及び第2部分P2のそれぞれについて複数の圧力室C(キャビティ)が形成された板状部材である。複数の圧力室CはY方向に配列する。各圧力室Cは、ノズルN毎に形成されて平面視でX方向に沿う長尺状の空間である。連通板32及び圧力室基板34は、前述のノズル板52と同様に、例えば半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。
ただし、連通板32及び圧力室基板34の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。
以上の通り、第1流路部材30(連通板32及び圧力室基板34)とノズル板52とはシリコンで形成された基板を包含する。
したがって、例えば上述した例示のように半導体製造技術を利用することで、第1流路部材30及びノズル板52に微細な流路を高精度に形成できる。
【0048】
圧力室基板34のうち連通板32とは反対側の表面には振動部42が設置される。振動部42は、弾性的に振動可能な振動板である。
なお、所定の板厚の板状部材のうち圧力室Cに対応する領域について板厚方向の一部を選択的に除去することで、圧力室基板34と振動部42とを一体に形成することも可能である。振動部42は、Si層の単体やSi層を含む複数層の積層体で構成することができる。Si層を含む複数層の積層体としては、Si層とSiO2層との積層体、Si層とSiO2層とZrO2層との積層体などが挙げられる。
【0049】
連通板32の表面Faと振動部42とは、各圧力室Cの内側で相互に間隔をあけて対向する。圧力室Cは、連通板32の表面Faと振動部42との間に位置する空間であり、当該空間に充填されたインクに圧力変化を発生させる。各圧力室Cは、例えばX方向を長手方向とする空間であり、ノズルN毎に個別に形成される。第1ノズル列L1及び第2ノズル列L2のそれぞれについて、複数の圧力室CがY方向に配列する。
図2及び
図3の構成では、任意の1個の圧力室Cのうち仮想面O側の端部は平面視で連通路63に重なり、仮想面Oとは反対側の端部は平面視で供給路61に重なる。したがって、第1部分P1及び第2部分P2のそれぞれにおいて、圧力室Cは、連通路63を介してノズルNに連通するとともに、供給路61を介して空間Raに連通する。
なお、流路幅が狭窄された絞り流路を圧力室Cに形成することで所定の流路抵抗を付加するようにしてもよい。
【0050】
図2及び
図3に示すように、振動部42のうち圧力室Cとは反対側の表面上には、第1部分P1及び第2部分P2のそれぞれについて、相異なるノズルNに対応する複数の圧電素子44が設置される。圧電素子44は、駆動信号の供給により変形する受動素子である。複数の圧電素子44は、各圧力室Cに対応するようにY方向に配列する。駆動信号が供給された圧電素子44の変形に連動して振動部42が振動すると、その圧電素子44に対応する圧力室C内の圧力が変動することで、その圧力室Cに充填されたインクが連通路63とノズルNとを通過して吐出される。
【0051】
図4に示すように、任意の1個の圧電素子44は、相互に対向する第1電極441と第2電極442との間に圧電体層443を介在させた積層体から成る駆動素子である。第1電極441と第2電極442と圧電体層443とが平面視で重なる部分が圧電素子44として機能する。
なお、駆動信号の供給により変形する部分(すなわち振動部42を振動させる能動部)を圧電素子44として画定することも可能である。
第1電極441及び第2電極442の一方を、複数の圧電素子44に渡って連続する電極(すなわち共通電極)とし、他方を複数の圧電素子44にそれぞれ別々の個別電極とすることが可能である。
本実施形態では、第1電極441を共通電極とし、第2電極442を個別電極とする場合を例示する。
なお、圧電素子44を駆動する配線構造については後述する。
【0052】
図2及び
図3に示す第2流路部材48は、複数の圧力室C(さらには複数のノズルN)に供給されるインクを貯留するためのケース部材である。
第2流路部材48のうちZ方向の正側の表面が接着剤などで連通板32の表面Faに接合される。第2流路部材48は、第1流路部材30とは別個の材料で形成される。例えば樹脂材料の射出成形で第2流路部材48を製造することが可能である。
【0053】
図3に示すように、第2流路部材48には、第1部分P1及び第2部分P2のそれぞれについて、Y方向に長尺な空間Rbと空間Rcとが形成される。空間Rcは空間RbよりもZ方向に長く、空間Rbは空間RcよりもX方向に長い。空間Rcは、空間Rbから連通板32の空間Raまで延出して、空間Rbと空間Raとを連通する。空間Raと空間Rbと空間Rcとで構成される空間は、複数の圧力室Cのインクを循環させるための循環流路であり、複数の圧力室Cにインクを供給する共通液室(リザーバー)として機能する。
【0054】
本実施形態では、第1部分P1側において空間Raと空間Rbと空間Rcとで構成される空間を第1循環流路R1とし、第2部分P2側において空間Raと空間Rbと空間Rcとで構成される空間を第2循環流路R2とする。
第1循環流路R1は、第1部分P1側の複数の圧力室Cにインクを供給する流入側の循環流路であり、第2循環流路R2は、第2部分P2側の複数の圧力室Cにインクを供給する流入側の循環流路である。
【0055】
第1循環流路R1は、仮想面OからみてX方向の正側に位置し、第2循環流路R2は、仮想面OからみてX方向の負側に位置する。第2流路部材48のうち連通板32とは反対側の表面には、液体容器14から供給されるインクを第1循環流路R1に導入するための接続口482と、液体容器14から供給されるインクを第2循環流路R2に導入するための接続口482と、が形成される。第1循環流路R1内のインクは、第1部分P1側の供給液室60と各供給路61とを介して、第1部分P1側の圧力室Cに供給される。第2循環流路R2内のインクは、第2部分P2側の供給液室60と各供給路61とを介して、第2部分P2側の圧力室Cに供給される。
【0056】
連通板32の表面Fbには、第1部分P1及び第2部分P2のそれぞれについて吸振体54が設置される。吸振体54は、可撓性のフィルム(コンプライアンス基板)で構成される。第1部分P1の吸振体54は、第1循環流路R1内のインクの圧力変動を吸収し、第2部分P2の吸振体54は、第2循環流路R2内のインクの圧力変動を吸収する。
図3に示すように、第1部分P1の吸振体54は、第1部分P1の連通板32の空間Raと複数の供給路61とを閉塞するように連通板32の表面Fbに設置されて、第1循環流路R1の壁面(具体的には底面)を構成する。第2部分P2の吸振体54は、第2部分P2の連通板32の空間Raと複数の供給路61とを閉塞するように連通板32の表面Fbに設置されて、第2循環流路R2の壁面(具体的には底面)を構成する。
【0057】
連通板32のうちノズル板52に対向する表面Fbには循環液室Sが形成される。
循環液室Sは、平面視でY方向に延在する長尺状の有底孔(溝部)である。連通板32の表面Fbに接合されたノズル板52により循環液室Sの開口は閉塞される。循環液室Sは、第1部分P1の圧力室Cと第1循環流路R1との間及び第2部分P2と第2循環流路R2との間で、インクを循環させるための循環流路の一部である。循環液室Sは、第1部分P1の圧力室Cと第2部分P2の圧力室Cとからインクを流出する流出側の循環流路として機能する。第2流路部材48のうち連通板32とは反対側の表面に、循環液室Sと連通する接続口482を設け、循環液室Sからのインクを接続口482から導出してもよい。
【0058】
そこで、この液体吐出ヘッドにおけるノズル形成部材であるノズル板52について更に
図6を参照して説明する。このノズル板52は、ノズルNとなるノズル穴34を形成したNi金属プレートからなるノズル基材31の吐出面側表面に樹脂を塗布形成してなる。このようにして、ノズル板52上に撥液層35を形成する。撥液層35を形成する樹脂は、シリコーン樹脂であることが好ましい。
本発明におけるシリコーン樹脂とは、主鎖がシロキサン結合から成る重合体のことを指す。
撥液層35を形成するためのシリコーン樹脂としては、常温硬化型の液状シリコーンレジンを用いることで大気中での塗布が可能になる。特に、加水分解作用を伴う液状シリコーンレジンを用いることが好ましい。
【0059】
ここで、ノズル基材31としては、Ni金属プレートで説明しているが、これに限るものではなく、ポリイミドなど樹脂材料にエキシマレーザーでノズル穴を穿孔したもの、あるいは金属材料と樹脂材料との積層部材などを用いることもできる。ノズル基材31として金属材料を用いることで剛性の高いノズル板が得られ、また、樹脂材料を用いることで、撥液層35との密着性が良く、耐久性が向上する。
【0060】
撥液層35の平均厚みは、ワイピング耐久性と撥液性や滴吐出に与える影響などを考慮すると、10μm未満が好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。また、撥液層35の表面粗さRa(μm)は、0.2μm以下にすることで良好な撥液性を得ることができる。
【0061】
撥液層35がシリコーン樹脂から成る液体吐出ヘッドはフッ素系化合物を含むインクに対して良好な撥液性を得ることができる。フッ素系樹脂から成る液体吐出ヘッドはフッ素系化合物を含むインクに対して撥液性に課題があるが、シリコーン樹脂の撥液層を用いることで、フッ素系化合物を含むインクに対しても十分な撥液性を得ることができる。
【0062】
<処理液収容容器>
前記処理液収容容器は、処理液を収容している収容容器である。
前記処理液を収容しているとは、容器中に処理液が存在している状態を意味する。
前記処理液収容手段としては、特に制限はなく、例えば、吐出方式、塗布方式などで用いられる液体組成物の収容容器などが挙げられる。
前記吐出方式に用いられる収容容器としては、例えば、公知のインクカートリッジ等が挙げられる。
前記塗布方式に用いられる収容容器としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、ワイヤーバー塗布法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などに用いられる公知の液体組成物の収容容器などが挙げられる。
【0063】
-処理液-
前記処理液は、多価金属塩、及び水を含有し、さらに必要に応じて、有機溶剤、樹脂、その他の成分としての添加剤を含有する。
また、処理液の用途としては特に限定されないが、例えば、記録媒体に対して色材等を含有するインクが付与される前に、記録媒体に対して付与される液体などであることが好ましい。なお、
【0064】
--多価金属塩--
前記多価金属塩は、前記処理液が前記インクと接触したときに、前記インク中の色材との電荷的な作用によって会合し、色材の凝集体を形成させ、色材を液相から分離させて記録媒体に対する定着を促進させる。
前記処理液中に前記多価金属塩を含有させることで、空隙の大きい記録媒体を用いたとしても凝集体による層を形成することで色材を記録媒体上に留めることができ、高白色度、高発色の画像を形成することができる。
また、インク吸収性の低い記録媒体を用いたとしてもビーディングを抑制でき、高画質な画像を形成できる。
また、前記多価金属塩は、カチオンポリマー等の凝集剤と異なり、前記処理液を記録媒体に付与した後であって、前記インクが吐出されるまでの間において、前記処理液が付与された記録媒体の領域に部材が接触する場合であっても、その部材に前記処理液が付着することを抑制することができる。
【0065】
前記多価金属塩としては、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、ニッケル化合物などの塩が挙げられる。これらは、1種以上を併用しても良い。これらのなかでも、顔料を効果的に凝集させることができる点から、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、ニッケル化合物の塩が好ましく、カルシウム化合物、マグネシウム化合物のアルカリ土類金属塩がより好ましい。
【0066】
前記マグネシウム化合物としては、例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、珪酸マグネシウムなどが挙げられる。
前記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウムなどが挙げられる。バリウム化合物としては、例えば、硫酸バリウムなどが挙げられる。亜鉛化合物としては、例えば、硫化亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。アルミニウム化合物としては、例えば、珪酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのなかでも、水に対する溶解性、顔料を効果的に凝集させることができる点から、塩化カルシウム、硝酸カルシウムが好ましい。
なお、前記多価金属塩としては、これらの水和物を用いることもできる。
【0067】
--有機溶剤--
本発明に使用する有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0068】
処理液に対する前記有機溶剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0069】
--樹脂--
前記処理液中に含有する前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。
前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0071】
処理液に対する前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0072】
--水--
前記処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記処理液の乾燥性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0073】
--添加剤(その他の成分)--
前記処理液には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0074】
---界面活性剤---
前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0075】
前記シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0076】
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
【0077】
前記両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0078】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0079】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0080】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0081】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
一般式(F-1)
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
C
nF
2n+1-CH
2CH(OH)CH
2-O-(CH
2CH
2O)
a-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC
mF
2m+1でmは1~6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2-C
mF
2m+1でmは4~6の整数、又はCpH
2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。
この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。
【0082】
前記処理液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0083】
---消泡剤---
前記消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0084】
---防腐防黴剤---
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0085】
---防錆剤---
前記防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0086】
---pH調整剤---
前記pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0087】
<処理液付与手段及び処理液付与工程>
前記処理液付与手段は、前記処理液収容容器に収容されている前記処理液を記録媒体に付与する手段である。
前記処理液付与工程は、前記処理液収容容器に収容されている前記処理液を記録媒体に付与する工程である。
【0088】
前記処理液付与工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吐出方式、塗布方式などが挙げられる。
前記吐出方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電素子アクチュエータを用いる方式、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータを用いる方式、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いる方式などが挙げられる。
前記塗布方法としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、ワイヤーバー塗布法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0089】
前記処理液付与工程において、記録媒体に対する前記処理液の付与量としては、10mg/cm2以上50mg/cm2以下が好ましく、20mg/cm2以上40mg/cm2以下がより好ましい。付与量が、10mg/cm2以上であると、画像品質を向上することができ、50mg/cm2以下であると、処理液の固形分が析出して色ムラが生じる現象を抑制することができる。
【0090】
[記録媒体]
前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、布帛などが挙げられる。前記記録媒体が布帛である場合には、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
なお、記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【0091】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後処理手段、第一の乾燥手段、第二の乾燥手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後処理工程、第一の乾燥工程、第二の乾燥工程などが挙げられる。
【0092】
<<後処理手段及び後処理工程>>
前記後処理手段は、後処理液を付与する手段である.
前記後処理工程は、後処理液を付与する工程である.
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。
前記後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。
また、前記後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布してもよいし、インク像が形成された領域のみに塗布してもよい。
前記後処理液を付与する方法としては、特に制限はなく、前記処理液を付与する方法と同様の方法を用いることができる。
【0093】
<<第一の乾燥手段及び第一の乾燥工程>>
前記第一の乾燥手段は、前記処理液が付与された記録媒体を乾燥する手段である。
前記第一の乾燥工程は、前記処理液が付与された記録媒体を乾燥する工程である。
前記処理液付与工程後に、前記処理液が付与された記録媒体を乾燥する工程(第一の乾燥工程とも称する)を有していてもよい。
前記第一の乾燥工程を実施することにより、前記記録媒体に付与された前記処理液を乾燥させる。
前記第一の乾燥手段及び乾燥工程は、記録媒体を乾燥することができれば特に制限されないが、加熱工程であることが好ましい。
前記第一の乾燥工程における加熱温度は、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。
【0094】
前記第一の乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の加熱手段の中から適宜選択することができる。加熱により乾燥を行う場合には、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などが挙げられる。
【0095】
<<第二の乾燥手段及び第二の乾燥工程>>
前記第二の乾燥手段は、インク吐出工程後に、前記処理液及び前記インクが付与された記録媒体を乾燥する乾燥手段である。
前記第二の乾燥工程は、インク吐出工程後に、前記処理液及び前記インクがされた記録媒体を乾燥する工程である。
前記第二の乾燥工程により記録媒体に付与された前記処理液及び前記インクを乾燥させる。
前記第二の乾燥手段及び乾燥工程は、記録媒体を乾燥することができれば特に制限されないが、加熱工程であることが好ましい。
前記第二の乾燥工程における加熱温度は、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。
【0096】
前記第二の乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥手段の中から適宜選択することができ、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などが挙げられる。
【0097】
本発明のインク吐出装置は、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンター、ファクシミリ装置、複写装置、プリンター/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、インク吐出装置、インク吐出方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付与可能なものを意味する。更に、この記録装置には、卓上型や、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅のインク吐出装置、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンター等も含まれる。
【0098】
図1に、本発明のインク吐出装置を有する画像形成装置の一例を示す。
なお、本発明のインク吐出方法におけるインクを吐出する工程と、処理液を付与する工程とは同じ印刷機器で実施してもよいし、別々の印刷機器で実施してもよい。
【0099】
図1の画像形成装置100は、前処理液付与部110、インク吐出部120、後処理液付与部130、乾燥部140、及び搬送部150を有し、前処理液付与部110は記録媒体Mに前処理液を付与する。
なお、前処理液付与部110、後処理液付与部130、乾燥部140、搬送部150は必要に応じて省略してもよい。
【0100】
前処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法等が挙げられる。
なお、あらかじめバーコート法等で前処理液を手作業にて記録媒体に塗布した後に画像形成装置を用いて印刷してもよいため、前処理液付与部110は省略してもよい。
【0101】
記録に用いる記録媒体Mとしては、特に限定されないが、例えば、普通紙、光沢紙、特
殊紙、段ボール、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙などが挙げられる。
【0102】
インク吐出部120は、記録媒体Mの前処理液が付与された面に、インクジェットインクを吐出する。
インク吐出部120としては、例えば公知のインクジェットヘッドを用いることができる。
インク吐出部120は、任意の色のインクを吐出するヘッドであってよく、例えば、必要に応じてY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)、W(ホワイト)の色のインクを吐出するヘッドを設けてもよい。
【0103】
後処理液付与部130は、記録媒体Mのインクジェットインクが付与された面のインクジェットインクが付与された領域に後処理液を付与できればよく、例えば、インクジェットヘッド以外にも、スプレーやローラーなどを用いることができる。
なお、後処理液付与部130は、省略してもよい。
【0104】
後処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0105】
乾燥部140は、後処理液が付与された記録媒体Mを温風で乾燥させる。なお、後処理液付与部がない場合には、乾燥部140を省略してもよい。
乾燥部140は、温風の代わりに、赤外線、マイクロ波、ロールヒーター等を用いて、後処理液が付与された記録媒体Mを加熱乾燥させてもよいし、乾燥部140を作動させないで後処理液が付与された記録媒体Mを自然乾燥させてもよい。
【0106】
搬送部150は、記録媒体Mを搬送する。
搬送部150としては、記録媒体Mを搬送することが可能であれば、特に限定されない
が、搬送ベルト、プラテンなどが挙げられる。
【0107】
なお、画像形成装置100は、記録媒体Mに形成された画像を加熱定着させる定着部を更に有してもよい。定着部としては、特に限定されないが、定着ローラーなどが挙げられる。
【0108】
図2は、処理液収容容器及びインク収容容器の一例を示す概略図である。
収容容器411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これにより各収容容器410は、カートリッジとして用いられる。各収容容器410の排出口413とインクジェット吐出ヘッドとが連通し、インクジェット吐出ヘッドから記録媒体へ処理液及び白色インクを吐出可能となる。
【0109】
(インク吐出物の製造方法及びインク吐出物製造装置)
本発明のインク吐出物の製造方法は、多価金属塩、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与工程と、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備えるインク吐出手段から、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクを吐出するインク吐出工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
本発明のインク吐出物の製造方法にかかるインク吐出物の製造装置は、多価金属塩、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与手段と、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備え、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクを吐出するインク吐出手段と、を有し、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
【0110】
なお、本明細書においては、前記インク吐出物とは、インクと記録媒体とを含み、記録媒体上にインクが吐出されたものや、それを乾燥した物を意味する。
【0111】
本発明のインク吐出物の製造方法及びインク吐出物の製造装置における前記インクは、前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下である。
【0112】
本発明のインク吐出方法、及び本発明のインク吐出装置において説明した、共通する各事項については、本発明のインク吐出物の製造方法、及びインク吐出物の製造装置においても、適宜選択することができる。
【0113】
(白色インク)
本発明の白色インクは、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有する白色インクであって
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であり、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
本発明のインク吐出方法、及び本発明のインク吐出装置において説明した、共通する各事項については、本発明の白色インクにおいても、適宜選択することができる。
【0114】
(処理液とインクのセット)
本発明の処理液とインクのセットは、多価金属塩、及び水を含有する処理液と、
SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクのセットであって
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であり、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
本発明のインク吐出方法、及び本発明のインク吐出装置において説明した、共通する各事項については、本発明の処理液とインクのセットにおいても、適宜選択することができる。
【実施例0115】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下「部」とは「質量部」を意味し、「%」とは「質量%」を意味する。
【0116】
<処理液の調製>
[処理液1~3の調整例]
表1に示す処方の材料を混合撹拌することにより処理液1~3を調製した。
なお、表1中、塩の含有量は水和水を含む質量部を、樹脂粒子の含有量は固形分の質量部で示している。
【0117】
【0118】
なお、表1に示す各材料の詳細(商品名、製造会社名等)は以下の通りである。
【0119】
-有機溶剤-
・グリセリン(東京化成工業株式会社製)
-塩-
・塩化カルシウム・二水和物(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)
・硝酸カルシウム・四水和物(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)
・乳酸アンモニウム溶液(濃度40%、富士フィルム和光純薬工業株式会社製)
-界面活性剤-
・BYK-348(ビックケミー株式会社製)
-樹脂粒子-
・エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合樹脂エマルション(商品名:スミカフレックス850HQ、固形分濃度:50質量%、住化ケムテックス株式会社製)
【0120】
<白色インクの調製>
-ウレタン樹脂エマルションAの調製-
撹拌機、温度計、窒素シール管及び冷却器の付いた容量2Lの反応器に、以下の処方を仕込み、60℃にて均一に混合した。
[処方]
・メチルエチルケトン :100質量部
・ポリエステルポリオール(イソフタル酸/アジピン酸=6/4(モル比)とエチレングリコール/ネオペンチルグリコール=1/9(モル比)から得られたポリエステルポリオール:数平均分子量=2,000、平均官能基数=2) :345質量部
・2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA) :9.92質量部
【0121】
その後、この混合液に、トリエチレングリコールジイソシアネート(TEGDI)を45.1質量部、ジオクチルチンジラウレート(DOTDL)を0.08質量部仕込み、72℃で3時間反応させて、ポリウレタン溶液を得た。
このポリウレタン溶液に、イソプロピルアルコール(IPA)を80質量部、メチルエチルケトン(MEK)を220質量部、トリエタノールアミン(TEA)を3.74質量部、水を596質量部仕込んで転相させた。
その後、ロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)で、MEKとIPAを除去して、ポリウレタン樹脂エマルションAを得た。
得られたポリウレタン樹脂エマルションAを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分濃度50質量%、pH8に調整した。
得られたポリウレタン樹脂エマルションAを用いて、「Thermo plus EVO2」(株式会社リガク製)で測定したガラス転移温度(Tg)は-5℃であった。
【0122】
<ウレタン樹脂エマルションBの調製>
(1)1,6-ヘキサンジオールを1モルと、(2)ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1.4モルと、(3)1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体1モルと、(4)分子量1,000のポリエチレングリコールモノメチルエーテルを1/3モル反応させたジイソシアネート化合物を1,6-ヘキサンジオール1モルに対して0.1モルと、(5)全質量の15モル%のN-メチル-2-ピロリドンと、を反応フラスコに仕込み、窒素気流下で、90℃で2時間反応させてプレポリマー組成物を得た。
シリコーン系消泡剤SE-21(旭化成ワッカーシリコン株式会社製)0.2gを溶解した600gの水に上記で得られた固形分85%のプレポリマー組成物450gを15分で滴下し、25℃で10分撹拌後、下記式(A)の化合物とエチレンジアミン、及びアジピン酸ヒドラジドを滴下してポリウレタン樹脂エマルションBを得た。
【化1】
ポリウレタン樹脂エマルションBのガラス転移温度(Tg)を、DSC(株式会社リガク製、Thermo plus EVO2/DSC)にて測定したところ20℃であった。
【0123】
-白色顔料分散体(二酸化チタン顔料分散体)の調製-
ビーカー中でアクリルコポリマー(DISPERBYK-2008:BYK製、固形分濃度:60質量%)37.5質量部を高純水20.0部に溶解させ、酸化チタン(JR-600A:テイカ製(一次粒子径:250nm、表面処理:Al))30.0質量部を添加し、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)で5,000rpm、30分間撹拌を行い、塊のない状態まで分散し、徐々に回転数を上げていき10,000rpmで30分間撹拌を行った。
得られた二酸化チタン顔料分散液を水冷しながら超音波ホモジナイザーUS-300T(株式会社日本精機製作所製、チップφ26)を用いて200μAで1時間処理し、5μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行って、二酸化チタン顔料の固形分濃度が34.3質量%の白色顔料分散体を得た。
【0124】
[白色インク1~16の調整例]
白色顔料分散体と、ウレタン樹脂エマルションと、を除く表2~表6に記載の処方の材料をイオン交換水(最終的にインク全量が100となるように調製)溶解させてビヒクルを作製した。次に、ウレタン樹脂エマルションと混合させ、最後に白色顔料分散体と混合させ、平均孔径0.8μmのフィルターでろ過して、白色インク1~16を得た。
【0125】
なお、表2~表6に示す各材料の詳細(商品名、製造会社名等)は以下の通りである。
【0126】
-有機溶剤-
・グリセリン(SP値:16.4、東京化成工業株式会社製)
・3-メチル-1,3-ブタンジオール(SP値:12.1、東京化成工業株式会社製)
・3-エチル-3-ヒドロキシルメチルオキセタン(SP値:11.3、東京化成工業株式会社製)
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(SP値:10.6、東京化成工業株式会社製)
・β-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド(SP値:9.2、東京化成工業株式会社製)
・トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(SP値:8.4、東京化成工業株式会社製)
【0127】
-樹脂-
・アクリル樹脂エマルション(商品名:ボンコートCF-6140、Tg:12℃、DIC社製)
【0128】
-界面活性剤-
・BYK348(ビックケミー株式会社製、シリコーン系界面活性剤)
・FS300(Dupont社製、フッ素系界面活性剤)
【0129】
-添加剤(防腐防黴剤)-
・プロキセルLV(アーチ・ケミカルズ・ジャパン製)
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
次に、得られた処理液及び白色インクを用いて、以下のようにして、「ワイピング耐久性」、「白色度」、「選択堅牢性」、「吐出安定性」、及び「風合い」を評価した。結果を下記表7~表8に示す。
【0136】
<ワイピング耐久性>
インク1~21をインクジェットプリンター(装置名:IPSiO GXe5500、株式会社リコー製)に充填し、クリーニングのシークエンスを行った。なお、ノズル板としては、シリコーン層の平均厚みが0.5μm~1.0μmのノズル板を作製して使用した。
その後、ノズルチェックパターンを印字し、不吐出となるノズル数が10個以上になったときのクリーニングのシークエンス回数を測定し、下記評価基準でワイピング耐久性を評価した。なお、前記評価がA及びBであることが実使用上望ましい。
なお、「クリーニング」とはインクジェットノズルから少量のインクは排出した後、インクジェットノズル及びその周辺をワイパーで払拭する動作であり、前記プリンターに搭載された機能である。
[評価基準]
A:クリーニングのシークエンス回数が3,000回以上
B:クリーニングのシークエンス回数が2,000回以上3,000回未満
C:クリーニングのシークエンス回数が2,000回未満
【0137】
<白色度>
調製した処理液1~3を高速ガーメントインクジェットプリンター(装置名:RICOH Ri 2000、株式会社リコー製)に充填し、処理液の付着量が20mg/cm2になるように調整した後、薄手濃色綿生地(商品名:ヘビーウェイトTシャツ ブラック、トムス株式会社製)に、解像度600dpi×1,200dpiで縦:27cm×横23cmの領域を塗りつぶした画像(ベタ画像)を印刷(記録)した。その後、165℃、60秒間乾燥させた。
次に、調製したインク1~21を同じく高速ガーメントプリンター(装置名:RICOH Ri 2000、株式会社リコー製)に充填し、インクの付着量が20mg/cm2になるように調整した後、処理液を印刷した領域に対して、解像度600dpi×1,200dpiで縦:10cm×横10cmの領域を塗りつぶした画像(ベタ画像)を印刷(記録)した。その後、165℃、90秒間乾燥させ、画像サンプル1~16を得た。
次に、得られた画像サンプルのベタ画像部において分光測色計(装置名:X-rite eXact、X-Rite社製)を用いて明度(L*)を測定し、白色度(発色性)を下記評価基準に基づいて評価した。なお、前記評価がA及びBであることが実使用上望ましい。
[評価基準]
A:L*が75以上
B:L*が65以上75未満
C:L*が65未満
【0138】
<洗濯堅牢性>
JIS L0844に基づいて、全自動洗濯機(装置名:ASW-45A1型、三洋電機株式会社製)を用いて、各画像サンプルを10回洗濯し、変退色グレースケールを用いて、退色の度合いを目視にて確認し、下記評価基準に基づいて、「洗濯堅牢性」を評価した。
[評価基準]
A:4級以上
B:3級以上4級未満
C:3級未満
【0139】
<風合い>
画像サンプルを手で触り、下記評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:肌触りがやわらかい
B:若干肌触りが硬い
C:肌触りが硬い
【0140】
<吐出安定性>
インク1~21を高速ガーメントインクジェットプリンター(装置名:RICOH Ri 2000、株式会社リコー製)に充填し、解像度:600×1,200dpi、縦:297mm×横:420mmの白ベタ画像を印字した後、ノズルチェックパターンを印字し、不吐出となるノズル数を測定した。下記評価基準に基づき、吐出安定性を評価した。前記評価がA及びBであることが実使用上望ましい。
[評価基準]
A:不吐出ノズル数が0個以上3個未満である
B:不吐出ノズル数が3個以上10個未満である
C:不吐出ノズル数が10個以上である
【0141】
【0142】
【0143】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクと、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備え、前記インクを吐出するインク吐出手段と、を有し、
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であることを特徴とするインク吐出装置である。
<2> 前記有機溶剤のSP値が、9.0以上10.6以下である前記<1>に記載のインク吐出装置である。
<3> 前記白色顔料の含有量が、インクに対して、8質量%以上11質量%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載のインク吐出装置である。
<4> 多価金属塩、及び水を含有する処理液を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載のインク吐出装置である。
<5> 前記多価金属塩が、塩化カルシウム、及び硝酸カルシウムの少なくともいずれかである前記<4>に記載のインク吐出装置である。
<6> 前記インクを収容しているインク収容容器を更に有する前記<1>から<5>のいずれかに記載のインク吐出装置である。
<7> 前記処理液を収容している処理液収容容器を更に有する前記<1>から<6>のいずれかに記載のインク吐出装置である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のインク吐出装置を用い、
前記インクを吐出するインク吐出工程、を含むことを特徴とするインク吐出方法である。
<9> 前記記録媒体が布帛である前記<8>に記載のインク吐出方法である。
<10> 多価金属塩、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与工程と、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備えるインク吐出手段から、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクを吐出するインク吐出工程と、を含み、
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下である
ことを特徴とするインク吐出物の製造方法である。
<11> 多価金属塩、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与手段と、
シリコーン樹脂を含有する撥液層を有するノズル板を備え、SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクを収容するインク収容容器と、
前記インクを吐出するインク吐出手段と、を有し、
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下である
ことを特徴とするインク吐出物の製造装置である。
<12> SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有する白色インクであって
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であることを特徴とする白色インクである。
<13> 多価金属塩、及び水を含有する処理液と、
SP値が9.0以上12.0以下である有機溶剤、白色顔料、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるポリウレタン樹脂、及び水を含有するインクのセットであって
前記有機溶剤の含有量が、インクに対して、0.5質量%以上2.5質量%以下であり、
前記白色顔料の含有量が、インクに対して、6質量%以上15質量%以下であることを特徴とする処理液とインクのセットである。
【0144】
前記<1>から<7>のいずれかに記載のインク吐出装置、前記<8>から<9>のいずれかに記載のインク吐出方法、前記<10>に記載のインク吐出物の製造方法、前記<11>に記載のインク吐出物の製造装置、前記<12>に記載の白色インク、及び前記<13>に記載の処理液とインクのセットによれば、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。