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特開2023-140213硬化型組成物、収容容器、及び立体造形物の製造方法
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  • 特開-硬化型組成物、収容容器、及び立体造形物の製造方法 図1
  • 特開-硬化型組成物、収容容器、及び立体造形物の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140213
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】硬化型組成物、収容容器、及び立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230927BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20230927BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230927BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20230927BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20230927BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F292/00
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B29C64/112
B29C64/314
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046131
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】新谷 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】内藤 寛之
【テーマコード(参考)】
2H186
4F213
4J026
4J127
【Fターム(参考)】
2H186AB11
2H186FB04
2H186FB20
2H186FB21
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
4F213AA21
4F213AB16
4F213AR12
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4F213AR17
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL72
4F213WL96
4J026AC00
4J026AC22
4J026BA27
4J026BA36
4J026BA50
4J026BB02
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4J026DB06
4J026DB11
4J026DB36
4J127AA03
4J127AA06
4J127BA031
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC121
4J127BD421
4J127CB142
4J127CB281
4J127CC121
4J127DA12
4J127EA13
4J127FA06
(57)【要約】
【課題】良好なインクジェット吐出性を有しつつ、高強度、及び高透明性を兼ね備えた硬化物を造形できる硬化型組成物の提供。
【解決手段】多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)と、(メタ)アクリレートモノマー(成分2)と、無機フィラー(成分3)と、を含有し、前記成分1と前記成分2との含有量の質量比率(成分1:成分2)が65:35~40:60である硬化型組成物である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)と、(メタ)アクリレートモノマー(成分2)と、無機フィラー(成分3)と、を含有し、
前記成分1と前記成分2との含有量の質量比率(成分1:成分2)が65:35~40:60であることを特徴とする硬化型組成物。
【請求項2】
前記成分1の屈折率n25D(1)と、前記成分3の屈折率n25D(3)と、の屈折率差Δn25D(1_3)が、0.07以下である請求項1に記載の硬化型組成物。
【請求項3】
前記成分2の屈折率n25D(2)と、前記成分3の屈折率n25D(3)と、の屈折率差Δn25D(2_3)が、0.07以下であり、
前記成分2の25℃における粘度が50mPa・s以下である請求項1から2のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項4】
前記成分3の屈折率n25D(3)が1.40以上1.50以下である請求項1から3のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項5】
前記成分2の屈折率n25D(2)が1.48以下である請求項1から4のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項6】
前記成分2が、下記一般式(2)で表されるエチレングリコールジメタクリレート(n=1)、及びジエチレングリコールジメタクリレート(n=2)の少なくともいずれかの2官能ジ(メタ)アクリレートを含有する請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物。
【化1】
【請求項7】
前記成分2が、屈折率n25Dが1.48以下、かつ、25℃における粘度が50mPa・s以下である単官能(メタ)アクリレートを含有する請求項1から6のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項8】
前記成分1が、下記構造式(1)で表される脂肪族ウレタンジメタクリレートであり、
前記脂肪族ウレタンジメタクリレートの屈折率n25D(1)が1.50以下である請求項1から7のいずれかに記載の硬化型組成物。
【化2】
【請求項9】
前記成分3の含有量が、前記成分1及び前記成分2の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下である請求項1から8のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項10】
前記成分3の無機フィラーの体積平均一次粒子径が10nm以上300nm以下であり、
前記無機フィラーがシリカ粒子を含有する請求項1から9のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項11】
前記シリカ粒子の表面に炭素を含有し、
前記炭素の含有量が、前記シリカ粒子の質量に対して、0.5質量%以上1.5質量%以下である請求項10に記載の硬化型組成物。
【請求項12】
25℃における粘度が400mPa・s以下である請求項1から11のいずれかに記載の硬化型組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の硬化型組成物を収容していることを特徴とする収容容器。
【請求項14】
請求項1から12のいずれかに記載の硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出工程と、
前記硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する硬化工程と、を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型組成物、収容容器、及び立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元積層製造技術の中でもインクジェットヘッドを用いて硬化型組成物を必要箇所に配置し、配置された硬化型組成物を光照射装置等で活性エネルギー照射により硬化させることにより三次元の立体物を造形するマテリアルジェッティング方式(以下、「MJ方式」と称することがある)が注目されている。
【0003】
前記MJ方式は、硬化型組成物の硬化物が強度、硬度、弾性率等の各種特性を備えていることが要求される。これらの特性を向上させる方法として、硬化型組成物中に無機フィラーを添加する方法が試みられている。
また、歯科用材料をはじめとする生体材料への適応も検討されており、生体適合性を有するモノマーを用いた硬化型組成物の設計も要求されている。さらに、機械特性などだけでなく、硬化物に所望の色味を付すために、ベースとなる硬化型組成物及びその硬化物には高い透明性が要求されてきている。
【0004】
歯科用材料を造形する組成物として、例えば、(a1)ウレタン構造を含む(メタ)アクリレートモノマーと、(a2)ウレタン構造を含まない(メタ)アクリレートモノマーと、(b)無機フィラーと、(c)光重合開始剤とを含有し、各材料を所定の質量比率で含有する3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、良好なインクジェット吐出性を有しつつ、高強度、及び高透明性を兼ね備えた硬化物を造形できる硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の硬化型組成物は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)と、(メタ)アクリレートモノマー(成分2)と、無機フィラー(成分3)と、を含有し、前記成分1と前記成分2との含有量の質量比率(成分1:成分2)が65:35~40:60である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、良好なインクジェット吐出性を有しつつ、高強度、及び高透明性を兼ね備えた硬化物を造形できる硬化型組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の立体造形物の製造方法にかかる立体造形物の製造装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、実施例における全光透過率の測定用サンプルの作製方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(硬化型組成物)
本発明の硬化型組成物は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)と、(メタ)アクリレートモノマー(成分2)と、無機フィラー(成分3)と、を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0010】
「硬化型組成物」は、活性エネルギー線の照射や加熱されることで硬化して硬化物を形成する組成物であり、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物、熱硬化型組成物などが挙げられる。
前記硬化型組成物は、インクジェット方式を専ら好適に用いることができ、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物、インクジェット用熱硬化型組成物であることが好ましく、インクジェット用活性エネルギー線硬化型組成物がより好ましい。
なお、本発明において「硬化する」とは、ポリマーが形成されることを表すが、固化する場合に限られず、増粘する場合や、固化と増粘がともに生じる場合なども含まれる。
また、「固化物(硬化物)」とは、ポリマーを表すが、固体に限られず、増粘物や、固体と増粘物の混在物なども含まれる。
【0011】
従来技術では、高強度及び高透明性を実現するために、ウレタンジ(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型組成物を用いた光造形方式による造形が提案されていたが、このモノマーは非常に高粘度であり、インクジェット方式に使用できないという問題があった。
また、機械特性を向上させるために、組成物中に無機フィラーを含有させることが知られているが、無機フィラーを含有させると、組成物の粘度が上昇してしまい、インクジェット方式で吐出することが難しくなるという問題があった。さらに、組成物に無機フィラーを含有させて造形した造形物の透明性にも問題があった。
【0012】
本発明者らは、透明性及び強度の高い硬化物が得られる高粘度の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(成分1)に、低粘度のモノマー成分としての(メタ)アクリレートモノマー(成分2)と、を所定の質量比率で含有させることでIJ吐出可能であり、透明性及び強度の高い硬化物を得ることができること見出した。
さらに、透明無機フィラー(シリカ)を含有させることによって、高い機械特性(高強度)、及び高透明性(構造色が少ない)を有する硬化物(立体造形物)が得られる組成物とすることができることを見出した。
【0013】
なお、本発明において、「透明性を有する」とは、JIS K7361-1 / HAZE :JIS K7136に準拠して測定した全光線透過率が、60%以上であることを意味する。
前記全光線透過率としては、以下の方法により測定することができる。
図2に示すようにガラス基板40a上にOHPシート41aを載せて、シリコン型42(形状:縦20mm、横20mm、厚さ1mm)をOHPシート41aに密着させる。次に、測定対象の硬化型組成物43をシリコン型42に充填し、OHPシート41bを被せ、その上にガラス基板40bを置く。次に、紫外線照射機(装置名:SPOT CURE SP5-250DB、ウシオ電機株式会社製)を用いて、ガラス基板40b越しに照射強度200mW/cmの紫外線を10分間照射する。次に、先程紫外線を照射した面とは反対の面から、前記紫外線照射機を用いて、ガラス基板40a越しに照射強度200mW/cmの紫外線を10分間照射する。次に、OHPシート41bを剥がし、シリコン型42から、硬化型組成物が硬化した硬化物を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置して、厚さ1mmの試験片を得る。
DIRECT READING HAZEMETER(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、JIS K7361-1 / HAZE :JIS K7136に準拠して上記で作製した試験片の全光透過率(Tt)を測定する。
また、硬化型組成物を用いて製造した立体造形物からの全光線透過率の測定方法としては、これらの造形物を金属やすり又は切削加工により厚み1mmに加工し、耐水研磨紙P600又はこれと同程度で両面研磨を行い、水に懸濁させたアルミナ研磨粉末とフェルトで両面を光沢研磨した加工物の全光線透過率を測定する方法が挙げられる。
なお、前記立体造形物から切り出した部分について、耐水研磨紙P600又はこれと同程度で両面研磨を行い、水に懸濁させたアルミナ研磨粉末とフェルトで両面を光沢研磨する工程を含む限り、加工物の大きさや測定機器が異なる場合であっても、全光線透過率を測定することができる。
【0014】
本発明の硬化型組成物は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)及び低粘度の(メタ)アクリレートモノマー(成分2)を含むモノマー成分と、無機フィラー(成分3)とを含有し、重合開始剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0015】
<モノマー成分>
前記モノマー成分は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)及び低粘度の(メタ)アクリレートモノマー(成分2)を含有し、更に必要に応じてその他のモノマーを含有する。
【0016】
<<多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)>>
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)としては、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
なお、前記成分1の官能基数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2官能、3官能などが挙げられる。
【0017】
前記成分1としては、例えば、下記構造式(1)で表される1,6-ビス(メタクリロイルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン(ウレタンジメタクリレート)などが挙げられる。
【化1】
【0018】
前記成分1としては、合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、例えば、ジウレタンジメタクリラート、異性体混合物(化合物名:1,6-ビス(メタクリロイルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、シグマアルドリッチ社製)などが挙げられる。
【0019】
前記成分1としては、前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)の屈折率n25D(1)が、後述する無機フィラー(成分3)の屈折率n25D(3)と近いことが好ましい。前記屈折率n25D(1)が、前記屈折率n25D(3)と近いことにより、硬化型組成物の硬化物の透明性を向上させることができる。
【0020】
前記成分1の屈折率n25D(1)の測定は、以下の方法により行う。
[成分1の屈折率n25D(1)の測定方法]
前記屈折率とは、JIS K 7142に記載のアッベ屈折計を用いたB法により、ナトリウムランプのD線(波長589.3nmの光)において測定された屈折率nDを意味する。前記成分1の前記屈折率としては、例えば、アッベ屈折計NAR-1T(株式会社アタゴ製)を使用して光源ランプD線(589.3nm)、25℃で測定することができる。
【0021】
なお、成分1の硬化前の状態の屈折率は、成分1を質量分析法などの方法により特定し、成分1の市販品の安全データシートやカタログに記載の数値を参照することができる。
【0022】
また、組成物の硬化物から成分1の屈折率n25D(1)を同定することも可能であり、具体的には、熱分解GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)、顕微ラマン分光分析、各種NMR(核磁気共鳴分析)、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析計)などによって、組成物中に含まれるモノマーを特定し、モノマーが市販品であれば公知の屈折率、又はアッベ屈折率計で25℃で測定したモノマーの屈折率から、組成物の組成比に応じて、成分1の屈折率n25D(1)を同定及び算出することができる。
【0023】
前記成分1の屈折率n25D(1)と、前記成分3の屈折率n25D(3)とが近いとは、前記成分1の屈折率n25D(1)と、前記成分3の屈折率n25D(3)との屈折率差Δn25D(1_3)が一定の値以下であることを意味する。
なお、本明細書において、屈折率差は算出された値の絶対値を意味する。
前記成分1の屈折率n25D(1)と、前記成分3の屈折率n25D(3)との屈折率差Δn25D(1_3)としては、0.07以下が好ましく、0.04以下がより好ましい。前記屈折率差Δn25D(1_3)が0.07以下であると、硬化型組成物の硬化物の透明性を向上させることができる。
なお、前記成分3の屈折率n25D(3)の測定方法は、後述する。
【0024】
前記成分1の屈折率n25D(1)としては、1.50以下が好ましく、1.43以上1.49以下がより好ましい。前記成分1の硬化物の屈折率n25D(1)が、1.50以下であると、硬化物(立体造形物)の透明性を向上させることができる。
【0025】
前記成分1の25℃における粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、8,000mPa・s以上30,000mPa・s以下が挙げられる。
25℃での粘度は常法により計測することができ、例えば、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度25℃で測定することができる。
【0026】
前記成分1の含有量としては、硬化型組成物全量に対して、40質量%以上65質量%以下が好ましく、50質量%以上60質量%以下がより好ましい。
また、成分1の含有量と成分2との含有量との質量比率(成分1:成分2)が65:35~40:60を満たす。詳細は後述する。
【0027】
<<(メタ)アクリレートモノマー(成分2)>>
前記(メタ)アクリレートモノマー(成分2)としては、例えば、25℃での粘度が100mPa・s以下の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
前記成分2を含有することによって、前記成分1の粘度を低下させつつ、高い強度の硬化物を得ることができる。
なお、25℃での粘度の測定方法としては、前記成分1の硬化前の状態の粘度の測定方法と同様である。
【0028】
前記成分2としては、(メタ)アクリレートモノマーであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、入手の容易さと硬化物の機械特性の点から、ジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
前記成分2としては、例えば、下記一般式(2)で表されるエチレングリコールジメタクリレート(n=1)、及びジエチレングリコールジメタクリレート(n=2)などの2官能ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
【化2】
【0031】
また、前記成分2としては、単官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
前記単官能(メタ)アクリレートとしては、硬化前の屈折率n25Dが、1.48以下が好ましく、1.42以上1.47以下がより好ましい。
【0032】
前記単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0033】
前記成分2の屈折率n25D(2)としては、1.48以下が好ましく、1.42以上1.47以下がより好ましい。
前記成分2の屈折率n25D(2)の測定は、前記成分1と同様の方法により行うことができる。
【0034】
また、前記成分2の屈折率n25D(2)と、前記成分3の屈折率n25D(3)と、の屈折率差Δn25D(2_3)が、0.07以下が好ましく、0.04以下がより好ましい。前記屈折率差Δn25D(2_3)が0.07以下であると、硬化型組成物の硬化物の透明性を向上させることができる。
【0035】
前記成分2の25℃における粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、100mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好ましい。
【0036】
前記成分2の含有量としては、硬化型組成物全量に対して、35質量%以上60質量%以下が好ましく、40質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0037】
前記モノマー成分において、前記成分1と、前記成分2との含有量の質量比率(成分1:成分2)が65:35~40:60であり、55:45が好ましく、60:40がより好ましい。前記成分1と前記成分2との含有量の質量比率(成分1:成分2)が65:35~40:60であると、高強度及び高透明性を有する硬化物を得ることができ、かつ、インクジェット吐出可能な粘度の硬化型組成物とすることができる。
一般に、ラジカル重合における停止反応は、成長ラジカル同士の2分子間で起こる。モノマー成分の重合が進んでポリマーが成長するとともに重合系の粘度も高くなり、連鎖停止反応速度が著しく小さくなる。また、ポリマーの重合度が大きくなると重合速度が著しく増大する。
本発明においては、前記成分1の含有量と前記成分2の含有量との質量比率(成分1:成分2)が65:35~40:60を満たすことによって、前記成分1の質量比率を下げすぎずに、得られる硬化物が成分1の硬化物の性状(高透明性及び高強度)を維持しつつ、インクジェット吐出可能な硬化型組成物とすることができることを見出した。
本発明者らは、ラジカル反応中期まで重合系の粘度を下げすぎないように硬化型組成物の組成を調整することによって、硬化物(立体造形物)の透明性を維持しつつ、ラジカル重合における停止反応の進行を抑制することができることを見出した。
【0038】
<無機フィラー(成分3)>
前記無機フィラー(成分3)としては、特に制限はなく、適宜目的に応じて選択することができ、例えば、アルミナ、タルク、シリカ、チタニア、ジルコニア、ケイ酸マグネシウム、雲母、ガラスファイバー、ガラスビーズ、カーボンブラック、カーボンファイバー、アルミニウムボールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアが好ましい。
【0039】
前記成分3の形状としては、粒子状であることが好ましい。
また、粒子状の前記成分3の形状としては、例えば、球状、不定形形状などが挙げられる。これらの中でも、球状であることが分散性及びインクジェット吐出性の点から好ましい。
前記「球状」とは、真球状に限らず、回転楕円体又は多面体などの形状を含み得る。これに限定するものではないが、例えば、粒子の中心点から粒子外延までの最も長い径(長径)が最も短い径(短径)と比較して2倍程度の長さとなる粒子であれば、本発明における「球状」に含まれる。短径と長径の比は、1:1~1:5が好ましく、1:1~1:2がより好ましい。
【0040】
前記成分3の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
前記成分3の粒子の表面は炭素を含有することが好ましい。
前記炭素としては、特に制限はなく、炭素を含有する化合物などが挙げられる。
前記炭素を含有する化合物としては、例えば、表面改質剤などが挙げられる。
前記表面改質剤としては、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0042】
前記成分3の粒子の表面に炭素を含有することにより、インク中の無機フィラーの分散安定性を向上させることができる。
前記炭素の含有量が、前記無機フィラーの粒子の質量に対して、0.5質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.7質量%以上1.2質量%以下がより好ましい。前記炭素の含有量が、前記シリカ粒子全量に対して、0.5質量%以上1.5質量%以下であると、インク中の無機フィラーの分散安定性を向上させつつ硬化物中の樹脂と無機フィラーの界面接着性を高めることができる。
なお、前記炭素の含有量の測定は、熱重量示差熱分析(TG-DTA)を用いて、10℃/minの昇温で600℃まで加熱し、重量減少を確認することで測定することができる。
【0043】
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、スチリル p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビニルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメト
キシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランのように、不飽和二重結合を
有するシランカップリング剤が特に好ましい。
【0044】
前記成分3の体積平均一次粒子径としては、10nm以上300nm以下が好ましく、50nm以上250nm以下がより好ましい。前記成分3の体積平均一次粒子径が10nm以上300nm以下であると、硬化型組成物の透明性を向上させることができる。
前記体積平均一次粒径としては、例えば、動的光散乱法により測定することができる。装置は大塚電子株式会社製のELS-Zを用い、無機フィラーを、組成物に含まれるモノマーに分散した分散液を酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、又は前記モノマーで100倍希釈したもので測定することができる。
【0045】
前記成分3の屈折率n20D(3)としては、1.40以上1.50以下が好ましく、1.43以上1.47以下がより好ましい。前記成分3の屈折率n20D(3)が1.40以上1.50以下であると、前記成分1及び成分2との屈折率差を小さくすることができるため、硬化型組成物の硬化物の透明性を向上させつつ、硬化物の強度も向上させることができる。
【0046】
前記成分3の屈折率n25D(3)の測定は、成分1の硬化物と同様の方法で測定することができる。
【0047】
前記成分3の含有量としては、前記成分1及び前記成分2の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下が好ましく、25質量%以上40質量%以下がより好ましい。前記成分3の含有量が、前記成分1及び前記成分2の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下であると、硬化型組成物の硬化物の強度を向上させることができる。
【0048】
<重合開始剤>
前記重合開始剤としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることができる。
前記重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2、2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-クロロベンゾフェノン、p,p-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合開始剤の含有量は、硬化型組成物の全量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。
【0049】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、重合禁止剤、色材、粘度調整剤、酸化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、溶媒、分散剤などが挙げられる。
【0050】
<<界面活性剤>>
前記界面活性剤としては、例えば、分子量200以上5000以下の化合物であることが好ましく、具体的には、PEG型非イオン界面活性剤[ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)1~40モル付加物、ステアリン酸EO1~40モル付加物等]、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1~50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
<<重合禁止剤>>
前記重合禁止剤としては、例えば、フェノール化合物[ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等]、硫黄化合物[ジラウリルチオジプロピオネート等]、リン化合物[トリフェニルフォスファイト等]、アミン化合物[フェノチアジン等]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
<<色材>>
前記色材としては、硬化型組成物中に溶解又は安定に分散し熱安定性に優れた染料又は顔料が適している。これらの中でも、溶解性染料(Solvent Dye)が好ましい。なお、色の調整等を行うために2種以上の色材を適宜混合してもよい。
【0053】
<<分散剤>>
分散剤は、固体成分の表面に吸着することで、固体成分を硬化型組成物中に安定して分散させる機能を有する添加剤である。分散剤としては、適宜公知のものを用いることができる。
【0054】
<<有機溶媒>>
硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、重合性化合物とは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まない(例えば有機溶媒の特性等が組成物に影響する程度には含まない)ことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0055】
<<水>>
硬化型組成物は、水を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。また、水を「含まない」とは、実質的に含まない(例えば水の特性等が組成物に影響する程度には含まない)ことを意味し、1.0質量%未満であることが好ましい。水の含有量が一定量以下であることで、硬化速度の低下、硬化強度の低下、吸水性の増加、後述するサポート部形成材料との分離性低下等を抑制することができる。
【0056】
[硬化型組成物の調製方法]
本発明の硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて調製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、前記成分1、前記成分2、前記成分3、及びその他の成分をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させることにより調製することができる。
【0057】
[硬化型組成物の物性]
本発明の硬化型組成物としては、ノズルからの吐出性などに鑑みると、粘度が低いことが好ましい。したがって、一態様において、本発明の硬化型組成物の粘度は、25℃環境下において、400mPa・s以下が好ましく、300mPa・s以下がより好ましく、200mPa・s以下が更に好ましい。また、吐出性、造形精度の観点から、25℃環境下において、10mPa・s以上であることが好ましい。なお、造形中は、インクジェットヘッドや流路の温度を調節することにより、硬化型組成物の粘度を調整することが可能である。
前記粘度は、例えば、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度25℃で測定することができる。
【0058】
また、インクジェット用途に用いることができる硬化型組成物は、吐出安定性、及び造形精度の点から、静的表面張力が25℃環境下において20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。
なお、静的表面張力は常法により測定することができ、例えば、プレート法、リング法、ペンダントドロップ法などが挙げられる。
【0059】
本発明の硬化型組成物は、例えば、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。
前記活性エネルギー線としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものなどが挙げられる。これらの中でも、特に、高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
また、前記活性エネルギー線が紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0060】
本発明の硬化型組成物は、インクジェット用途、特にインクジェットによる立体造形物の製造に好適に用いることができる。したがって本発明には、本発明の硬化型組成物を用いて造形された立体造形物も包含される。
【0061】
(収容容器)
本発明の収容容器は、本発明の硬化型組成物を収容している。即ち、本発明の収容容器は、硬化型組成物が収容された状態の容器を意味する。
本発明の硬化型組成物が収容された収容容器は、カートリッジ及びボトルとして使用することができ、これにより、搬送や交換等の作業において、硬化型組成物に直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。
また、硬化型組成物へのごみ等の異物の混入を防止することができる。
また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、又は容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0062】
(立体造形物の製造方法及び立体造形物の製造装置)
本発明の立体造形物の製造方法は、
本発明の硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出工程と、
前記硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する硬化工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の立体造形物の製造装置は、
本発明の硬化型組成物を収容している収容容器と、
本発明の硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出手段と、
前記硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する硬化手段と、を有し、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
【0063】
<吐出工程及び吐出手段>
前記吐出工程は、本発明の硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する工程であり、吐出手段により実施される。
前記吐出手段は、本発明の硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する手段である。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
前記吐出工程は、本発明の硬化型組成物を、昇降機能を有するステージ上にインクジェット方式で吐出することが好ましい。前記ステージ上に吐出された硬化型組成物は、液膜を形成する。
【0064】
<硬化工程及び硬化手段>
前記硬化工程は、前記硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程である。
前記硬化手段は、前記硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる手段である。
前記硬化工程は、硬化手段により好適に実施される。
前記硬化工程において、ステージ上に形成された硬化型組成物からなる液膜は活性エネルギー線を照射することにより硬化される。
【0065】
-活性エネルギー線-
硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、光が好ましく、特に波長220nm以上400nm以下の紫外線が好ましい。紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0066】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、例えば、平滑化工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、例えば、平滑化手段などが挙げられる。
【0067】
<<平滑化工程及び平滑化手段>>
前記平滑化工程は、前記吐出工程により吐出された硬化型組成物からなる液膜の表面を平滑化する工程である。
前記平滑化工程は吐出された硬化型組成物のうち余剰な部分を掻き取ることで、硬化型組成物からなる液膜、又は層の有する凸凹を平滑化する。
前記平滑化工程は前記平滑化手段により好適に実施される。
前記平滑化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ローラーなどが挙げられる。
【0068】
本発明の立体造形物の製造方法では、前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことにより所望の形状の立体造形物を製造する。
【0069】
以下、本発明の硬化型組成物をモデル部形成材料として使用した場合の立体造形物の造形方法、及び立体造形物の製造装置について説明する。
【0070】
ここで、図1は、本発明の立体造形物の製造装置の一例を示す概略図である。この図1の立体造形物の製造装置30は、ヘッドユニット31、32、紫外線照射機33、ローラー34、キャリッジ35、及びステージ37を有する。ヘッドユニット31は、モデル部形成材料1を吐出する。ヘッドユニット32は、サポート部形成材料2を吐出する。ローラー34は、モデル部形成材料1、及びサポート部形成材料2の液膜を平滑化する。紫外線照射機33は、吐出されたモデル部形成材料1、及びサポート部形成材料2に紫外線を照射して硬化する。キャリッジ35は、ヘッドユニット31,32等の各手段を、図1におけるX方向に往復移動させる。ステージ37は、基板36を、図1に示すZ方向、及び図1の奥行方向であるY方向に移動させる。なお、Y方向への移動は、ステージ37ではなくキャリッジ35において行ってもよい。
【0071】
モデル部形成材料が色ごとに複数ある場合、立体造形物の製造装置30には、各色のモデル部形成材料を吐出するための複数のヘッドユニット31が設けられていてもよい。ヘッドユニット31,32におけるノズルとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるノズルを好適に使用することができる。
【0072】
ローラー34に使用できる金属としては、SUS300系、SUS400系、SUS600系、六価クロム、窒化珪素、タングステンカーバーイドなどが挙げられる。また、これらのいずれかをフッ素やシリコーンなどで被膜コーティングした金属を、ローラー34に使用してもよい。これらの金属の中でも、強度及び加工性の面からSUS600系が好ましい。
ローラー34を使用する場合、立体造形物の製造装置30は、ローラー34と造形物の面とのギャップを一定に保つため、積層回数に合わせて、ステージ37を下げながら積層する。ローラー34は紫外線照射機33に隣接している構成が好ましい。
【0073】
また、休止時のインク(本発明の硬化型組成物に相当)の乾燥を防ぐため、立体造形物の製造装置30には、ヘッドユニット31,32におけるノズルを塞ぐキャップなどの手段を設置してもよい。また、長時間連続使用時のノズルの詰まりを防ぐため、立体造形物の製造装置30には、ヘッドをメンテナンスするためのメンテナンス機構を設置してもよい。
【0074】
以下、本発明の立体造形物の製造装置で行われる、前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返す造形物(硬化物)の造形工程について説明する。
立体造形物の製造装置30のエンジンは、キャリッジ35、又はステージ37を移動させながら、入力された二次元データのうち最も底面側の断面を示す二次元データに基づいて、ヘッドユニット31からモデル部形成材料1の液滴を吐出させ、ヘッドユニット32からサポート部形成材料2の液滴を吐出させる。これにより、最も底面側の断面を示す二次元データにおけるモデル部を示す画素に対応する位置にモデル部形成材料1の液滴が配され、サポート部を示す画素に対応する位置にサポート部形成材料2の液滴が配され、隣り合う位置の液滴同士が接した液膜が形成される。なお、造形する造形物が1個の場合は、ステージ37の真中に断面形状の液膜が形成される。造形する造形物が複数個の場合、立体造形物の製造装置30は、ステージ37に複数個の断面形状の液膜を形成してもよいし、先に造形された造形物に液膜を積み重ねてもよい。
【0075】
ヘッドユニット31及び32にはヒータを設置することが好ましい。更に、ヘッドユニット31にモデル部形成材料を供給する経路及びヘッドユニット32にサポート部形成材料を供給する経路にプレヒータを設置することが好ましい。
【0076】
平滑化工程において、ローラー34は、ステージ37上に吐出されたモデル部形成材料、及びサポート部形成材料のうち余剰な部分を掻き取ることで、モデル部形成材料、及びサポート部形成材料からなる液膜、又は層の有する凸凹を平滑化する。平滑化工程はZ軸方向へ積層毎に1回行われてもよいし、2乃至50回の積層毎に1回行われてもよい。平滑化工程において、ローラー34は停止していてもよいし、ステージ37の進行方向に対して正もしくは負の相対速度で回転していてもよい。またローラー34の回転速度は定速でも一定加速度、一定減速度でもよい。ローラー34の回転数は、ステージ37との相対速度の絶対値として、50mm/s以上400mm/s以下が好ましい。相対速度が小さすぎる場合、平滑化が不十分で平滑性が損なわれる。また相対速度が大きすぎる場合、装置が大型化を要し、振動などによって、吐出された液滴の位置ずれなどが発生しやすく、結果として平滑性が低下することがある。平滑化工程において、ローラー34の回転方向はヘッドユニット31,32の進行方向と逆向きであることが好ましい。
【0077】
硬化工程において、立体造形物の製造装置30のエンジンは、キャリッジ35により紫外線照射機33を移動させて、吐出工程で形成された液膜に、モデル部形成材料、及びサポート部形成材料に含まれる光重合開始剤の波長に応じた紫外線を照射する。これにより、立体造形物の製造装置30は、液膜を硬化して、層を形成する。
【0078】
最も底面側の層の形成後、立体造形物の製造装置30のエンジンは、ステージを一層分、下降させる。
立体造形物の製造装置30のエンジンは、キャリッジ35、又はステージ37を移動させながら、底面側から二つ目の断面を示す二次元画像データに基づいて、モデル部形成材料1の液滴を吐出させ、サポート部形成材料2の液滴を吐出させる。吐出方法は、最も底面側の液膜を形成するときと同様である。これにより、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の二次元データが示す断面形状の液膜が形成される。更に、立体造形物の製造装置30のエンジンは、キャリッジ35により紫外線照射機33を移動させて、液膜に紫外線を照射することにより、液膜を硬化して、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の層を形成する。
立体造形物の製造装置30のエンジンは、入力された二次元データについて、底面側に近いものから順に利用して、上記と同様に、液膜の形成と、硬化と、を繰り返し、層を積層させる。繰り返しの回数は、入力された二次元画像データの数、あるいは三次元モデルの高さ、形状などに応じて異なる。すべての二次元画像データを用いた造形が完了すると、サポート部に支持された状態のモデル部の造形物が得られる。
【0079】
立体造形物の製造装置30により造形された造形物は、モデル部及びサポート部を有する。サポート部は、造形後に造形物から除去される。除去方法としては、物理的除去、及び化学的除去がある。物理的除去では、機械的な力を加えて除去する。一方、化学的除去では、溶媒に浸漬し、サポート部を崩壊させて除去する。サポート部の除去方法としては、特に制限はないが、物理的除去では造形物が破損する可能性があるため、化学的除去がより好ましい。更に、コストを考慮すると水に浸漬して除去する方法がより好ましい。水に浸漬して除去する方法が採用される場合、サポート部形成材料の硬化物は、水崩壊性を有するものが選択される。
【0080】
本発明の立体造形物の製造方法及び本発明の立体造形物の製造装置により造形された立体造形物は、生体適合性を有しており、以下に示すように高弾性率、高強度、及び高硬度を兼ね備えているので、例えば、人工歯などの歯科用材料などに好適に用いることができる。
なお、本明細書において、「人工歯」とは、う蝕、外傷、歯周病などにより失った天然歯の代わりに、その機能を回復するために用いられる人工的に形成された歯や、審美性を高めるために天然歯の表面に張り付けるラミネートを意味する。
前記歯の一部としては、例えば、インレー、アンレー、クラウン、ブリッジなどが挙げられる。
前記歯の全部としては、例えば、インプラント、入れ歯等の義歯などが挙げられる。
また、前記立体造形物は、人工歯等の歯科用材料以外にも、眼鏡フレーム、靴のアウトソール、ミドルソール、ハンドルなどのグリップ部、補聴器、イヤホン、義歯の床、義肢などに好適に用いることができる。
【0081】
立体造形物のビッカース硬度は、22以上が好ましく、26以上がより好ましく、30以上が更に好ましい。
ビッカース硬度は、例えば、JIS Z2244の手順に基づき測定することができる。
【0082】
立体造形物の曲げ強度は100MPa以上が好ましく、130MPa以上がより好ましく、160MPa以上が更に好ましい。
曲げ強度の測定は、万能試験機(オートグラフ、型式AG-I、株式会社島津製作所製)を使用し、1kN用ロードセル、及び3点曲げ治具を用いた。また、支点間距離は24mmとし、荷重点を1mm/分間の速度で変位させた際の応力を歪量に対してプロットし、破断点の応力を最大応力とすることができる。
【実施例0083】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
<硬化型組成物の作製>
(成分1)として1,6-ビス(メタクリロイルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン(ウレタンジメタクリレート)(シグマアルドリッチ社製)42.0質量部と、(成分2)としてジエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル2G、新中村化学工業株式会社製)28.0質量部と、(成分3)としてシリカ粒子(商品名:アドマナノY100SM-C6、体積平均一次粒径:100nm、粒子表面炭素含有量:0.7質量%、株式会社アドマテックス製)30.0質量部を混合した。
次に、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:Omunirad TPO H、BASF社製)3.0質量部を加え、混合した。
その後、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、アドバンテック株式会社製、平均孔径:3μm)により濾過して、実施例1の硬化型組成物を得た。
【0085】
(実施例2~9及び比較例1~5)
実施例1において、表1から表3に記載の組成及び含有量に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~9及び比較例1~5の硬化型組成物を得た。
【0086】
次に、得られた各硬化型組成物について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1から表3に示した。
【0087】
<屈折率の測定方法>
-原材料(硬化前)の屈折率の測定方法-
原材料(硬化前)の屈折率は、アッベ屈折計NAR-1T(株式会社アタゴ製)を使用して光源ランプD線(589.3nm)で測定した。
【0088】
-組成物の硬化物の屈折率の測定方法-
組成物の硬化物の屈折率は、アッベ屈折計NAR-1T(株式会社アタゴ製)を使用して光源ランプD線(589.3nm)で測定した。
【0089】
-成分3の屈折率の測定方法-
成分3の屈折率については、成分3(製品)をそのまま測定に使用し、JIS K 7142に記載のアッベ屈折計を用いたB法により測定した。
具体的には、JIS K 7142に記載のアッベ屈折計を用いたB法の「粉、ペレット及び粒状の場合は、5回以上の測定に必要な試料量を用意し、5回測定を行う。その後、平均値を算出し、有効数字4桁まで求める。」に基づき算出した成分3の平均屈折率を、成分3の屈折率n25D(3)とした。
【0090】
<粘度の測定方法>
各硬化型組成物について、コーンプレート型回転粘度計(VISCOMETER TVE-22L、東機産業株式会社製)を用いて測定し、下記基準で評価した。なお、測定容器内の温度は高温循環槽を用いて25℃に固定し、ロータはコーンロータ(1°34’×R24)を使用した。なお、評価がA及びBであれば実使用可能なレベルである。
[評価基準]
A:25℃での粘度が300mPa・s以下
B:25℃での粘度が300mPa・s超400mPa・s以下
C:25℃での粘度が400mPa・s超
【0091】
<1mm厚みの全光線透過率の測定方法>
<<透過率測定用の試験片の作製>>
図2に示すようにガラス基板40a上にOHPシート41aを載せて、シリコン型42(形状:縦20mm、横20mm、厚さ1mm)をOHPシート41aに密着させた。次に、測定対象の硬化型組成物43をシリコン型42に充填し、OHPシート41bを被せ、その上にガラス基板40bを置いた。次に、紫外線照射機(装置名:SPOT CURE SP5-250DB、ウシオ電機株式会社製)を用いて、ガラス基板40b越しに照射強度200mW/cmの紫外線を10分間照射した。次に、先程紫外線を照射した面とは反対の面から、前記紫外線照射機を用いて、ガラス基板40a越しに照射強度200mW/cmの紫外線を10分間照射した。次に、OHPシート41bを剥がし、シリコン型42から、硬化型組成物が硬化した硬化物を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置して、厚さ1mmの試験片を得た。
<<透過率の測定方法>>
DIRECT READING HAZEMETER(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、JIS K7361-1 / HAZE :JIS K7136に準拠して上記で作製した試験片の厚み方向の全光線透過率(Tt)を測定し、以下の評価基準により評価した。
なお、評価がA及びBであれば実使用可能なレベルである。
[評価基準]
A:全光線透過率が70%以上
B:全光線透過率が60%以上70%未満
C:全光線透過率が60%未満
【0092】
<ビッカース硬度(HV 0.2)>
縦40mm、横10mm、平均厚み1mmのサイズとしたこと以外は、透過率測定用の試験片の製造と同様に、ビッカース硬度測定用の試験片を製造した。
得られた各立体造形物について、JIS Z2244の手順に基づき、ビッカース硬度を測定し、下記の基準で評価した。なお、評価がA、B、Cであれば実使用可能なレベルである。
[評価基準]
A:ビッカース硬度が30以上
B:ビッカース硬度が26以上30未満
C:ビッカース硬度が22以上26未満
D:ビッカース硬度が22未満
【0093】
<曲げ強度の測定方法>
縦40mm、横10mm、平均厚み1mmのサイズとしたこと以外は、透過率測定用の試験片の製造と同様に、曲げ強度測定用の試験片を製造した。
得られた各立体造形物について、以下のようにして曲げ強度を測定し下記評価基準に基づき評価した。各立体造形物の曲げ強度の測定には、万能試験機(オートグラフ、型式AG-I、株式会社島津製作所製)を使用し、1kN用ロードセル、及び3点曲げ治具を用いた。また、支点間距離は24mmとし、荷重点を1mm/分間の速度で変位させた際の応力を歪量に対してプロットし、破断点の応力を最大応力とした。なお、評価がA及びBであれば実使用可能なレベルである。
[評価基準]
A:曲げ強度が160MPa以上
B:曲げ強度が130MPa以上160MPa未満
C:曲げ強度が100MPa以上130MPa未満
D:曲げ強度が100MPa未満
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
表1から表3中の各成分の詳細については、以下のとおりである。
[モノマー成分]
-(成分1)多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー-
・1,6-ビス(メタクリロイルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン(ウレタンジメタクリレート):シグマアルドリッチ社製、25℃における粘度8,000mPa・s、原材料(硬化前)の屈折率n25D(1):1.485、硬化物の屈折率n25D:1.52
-(成分2)(メタ)アクリレートモノマー-
・NKエステル2G:ジエチレングリコールジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製、25℃における粘度3.0mPa・s、原材料(硬化前)の屈折率n25D(2):1.458、硬化物の屈折率n25D:1.49
・メチルメタクリレート:三菱ケミカル株式会社製、25℃における粘度0.5mPa・s、原材料(硬化前)の屈折率n25D(2):1.414、硬化物の屈折率n25D:1.49
-その他の(メタ)アクリレートモノマー-
・Bis-EMA:ジエトキシビスフェノールAメタクリレート、シグマアルドリッチ社製、25℃における粘度900mPa・s、原材料(硬化前)の屈折率n25D(2):1.546、硬化物の屈折率n25D:1.58
・ライトエステルBZ:ベンジルメタクリレート、共栄社化学株式会社製、25℃における粘度3.5mPa・s、原材料(硬化前)の屈折率n25D(2):1.512、硬化物の屈折率n25D:1.55
[無機フィラー]
・アドマファイン 3SM-C11:シリカ、体積平均一次粒子径=300nm、株式会社アドマテックス製、球状、シランカップリング剤によるメタクリレート処理、粒子表面炭素含有量=1.0質量%、屈折率n25D(3):1.46
・アドマナノ Y100SM-C6:シリカ、体積平均一次粒子径=100nm、株式会社アドマテックス製、球状、シランカップリング剤によるメタクリレート処理、粒子表面炭素含有量=0.7質量%、屈折率n25D(3):1.45
・アドマナノ Y100C-SM2:シリカ、体積平均一次粒子径=100nm、株式会社アドマテックス製、球状、シランカップリング剤によるメタクリレート処理、粒子表面炭素含有量=1.5質量%、屈折率n25D(3):1.45
・アドマナノ YA10C-SM1:シリカ、体積平均一次粒子径=10nm、株式会社アドマテックス製、球状、シランカップリング剤によるメタクリレート処理、粒子表面炭素含有量=1.5質量%、屈折率n25D(3):1.45
・アドマファイン AO-502:アルミナ、体積平均一次粒子径=300nm、株式会社アドマテックス製、球状、シランカップリング剤によるメタクリレート処理、粒子表面炭素含有量=0.7質量%、屈折率n25D(3):1.46
なお、上記無機フィラーの体積平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定した値であり、装置は大塚電子株式会社製のELS-Zを用い、無機フィラー分散液を酢酸2-メトキシ-1-メチルエチルに100倍希釈したもので測定した。
[重合開始剤]
・Omirad TPO H:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、BASF社製
【0098】
なお、表1から表3中に示す「屈折率差」は、絶対値の値を示す。
【0099】
表1から表3の結果から、実施例1~5は、比較例1~5に比べて、良好なインクジェット吐出性を有しつつ、高強度、及び高透明性を兼ね備えた硬化物(立体造形物)を造形できることがわかった。
実施例1の結果から、成分1:成分2=60:40では、インクジェットで吐出可能かつ、高強度、及び高透明性を有する硬化物(立体造形物)が得られた。
実施例2の結果から、成分1:成分2=40:60とすると、実施例1に比べてビッカース硬度及び曲げ強度は低くなったが、硬化することができ、実施例1の組成物に比べてより低粘度化することができた。
実施例3の結果から、実施例1において、体積平均一次粒子径が300nmのシリカ粒子に変更してもインクジェットで吐出可能かつ、高強度、及び高透明性を有する硬化物(立体造形物)が得られた。
実施例5の結果から、(成分3)無機フィラーの含有量が20質量%と低い場合においても、高硬度及び高強度の硬化物(立体造形物)を得られた。
比較例1の結果から、原料における屈折率の高いBis-EMAを用いた場合、得られた硬化物(立体造形物)の全光線透過率Ttが低く、曲げ強度に関しても、(成分1)としてウレタンジメタクリレートを用いた実施例1と比較して悪いことが分かった。
比較例3の結果から、全モノマー成分中の(成分1)の比率が70質量%以上であると、組成物が増粘して、インクジェットでの吐出が困難となった。
比較例4の結果から、(成分2)を粘度が低く高屈折率(1.512)のモノマーに置き換えると、全光線透過率だけでなく、強度も大幅に悪化することが分かった。
比較例5の結果から、組成物の粘度を低下させるために、モノマー中の(成分2)の質量比率を増加させると、全モノマー成分中の(成分1)の質量比率が想定的に少なくなりすぎてしまい、(成分1)のモノマーの含有量が30質量%程度になると、組成物が硬化しないことがわかった。
【0100】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(成分1)と、(メタ)アクリレートモノマー(成分2)と、無機フィラー(成分3)と、を含有し、
前記成分1と前記成分2との含有量の質量比率(成分1:成分2)が65:35~40:60であることを特徴とする硬化型組成物である。
<2> 前記成分1の屈折率n25D(1)と、前記成分3の屈折率n25D(3)と、の屈折率差Δn25D(1_3)が、0.07以下である前記<1>に記載の硬化型組成物である。
<3>前記成分2の屈折率n25D(2)と、前記成分3の屈折率n25D(3)と、の屈折率差Δn25D(2_3)が、0.07以下であり、
前記成分2の25℃における粘度が50mPa・sである前記<1>から<2>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<4> 前記成分3の屈折率n25D(3)が1.40以上1.50以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<5> 前記成分2の屈折率n25D(2)が1.48以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<6> 前記成分2が、下記一般式(2)で表されるエチレングリコールジメタクリレート(n=1)、及びジエチレングリコールジメタクリレート(n=2)の少なくともいずれかの2官能ジ(メタ)アクリレートを含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
【化3】
<7> 前記成分2が、屈折率n25Dが1.48以下、かつ、25℃における粘度が50mPa・s以下である単官能(メタ)アクリレートを含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<8> 前記成分1が、下記構造式(1)で表される脂肪族ウレタンジメタクリレートであり、
前記脂肪族ウレタンジメタクリレートの屈折率n25D(1)が1.50以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<9> 前記成分3の含有量が、前記成分1及び前記成分2の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<10> 前記成分3の無機フィラーの体積平均一次粒径が10nm以上300nm以下であり、
前記無機フィラーがシリカ粒子を含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<11> 前記シリカ粒子の表面に炭素を含有し、
前記炭素の含有量が、前記シリカ粒子の質量に対して、0.5質量%以上1.5質量%以下である前記<10>に記載の硬化型組成物である。
<12> 25℃における粘度が400mPa・s以下である前記<1>から<11>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<13> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の硬化型組成物を収容していることを特徴とする収容容器である。
<14> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出工程と、
前記硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する硬化工程と、を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<15> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の硬化型組成物を収容している収容容器と、
前記硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出手段と、
前記硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する硬化手段と、を有することを特徴とする立体造形物の製造装置である。
【0101】
前記<1>から<12>のいずれかに記載の硬化型組成物、前記<13>に記載の収容容器と、前記<14>に記載の立体造形物の製造方法、及び前記<15>に記載の立体造形物の製造装置によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特開2021-035941号公報
図1
図2