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特開2023-140300硬化性樹脂組成物、樹脂硬化膜、半導体パッケージおよび表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140300
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、樹脂硬化膜、半導体パッケージおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/14 20060101AFI20230927BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20230927BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230927BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20230927BHJP
【FI】
C08F290/14
C08G59/42
H01L23/30 R
H01L23/30 F
H01L33/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032633
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2022045147
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 一幸
【テーマコード(参考)】
4J036
4J127
4M109
5F142
【Fターム(参考)】
4J036AD07
4J036AD08
4J036AD11
4J036AF06
4J036AF08
4J036EA03
4J036EA09
4J036FB11
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD171
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF291
4J127BF441
4J127BG101
4J127BG10Y
4J127BG121
4J127BG161
4J127BG171
4J127CB371
4J127DA52
4J127FA41
4M109AA01
4M109EA03
4M109EA15
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB06
4M109EC11
4M109GA01
5F142AA63
5F142AA76
5F142CG03
5F142CG04
5F142GA01
(57)【要約】
【課題】波長340~480nm前後の電磁波による経時的な黄変が生じにくい硬化膜を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)2つ以上の不飽和結合を有する重合性化合物と、(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(D)溶剤と、を含む硬化性樹脂組成物。前記(A)成分は、量子化学計算により算出される、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)との間のエネルギー差が3.7eV以上の樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)2つ以上の不飽和結合を有する重合性化合物と、
(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、
(D)溶剤と、
を含み、
前記(A)成分は、量子化学計算により算出される、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)との間のエネルギー差が3.7eV以上の樹脂である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される樹脂である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(2)もしくは下記一般式(3)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(4)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。)
【化2】
【化3】
(式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数であり、*は、結合部位である。)
【化4】
(式(4)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数であり、*は、結合部位である。)
【請求項3】
前記(A)成分は、重量平均分子量が1000以上40000以下、かつ酸価が50mgKOH以上200mgKOH以下の樹脂である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)重合開始剤および(F)増感剤の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化膜。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂硬化膜を少なくとも1層の保護膜として用いてなる半導体パッケージ。
【請求項7】
請求項5に記載の樹脂硬化膜を少なくとも1層の保護膜として用いてなる表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、樹脂硬化膜、半導体パッケージおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や画像表示装置などには、各素子を基板に封止し、保護するための保護膜が用いられる。透明性や耐熱性が求められるこれらの保護膜として、不飽和基とフルオレン骨格とを有するアルカリ可溶性樹脂を含む硬化性樹脂組成物を塗布し、パターン形成および硬化してなる硬化膜が用いられる(たとえば特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-089716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなフルオレン骨格を有するアルカリ可溶性樹脂を用いて作製した硬化膜は、透明性および耐熱性に優れることが知られている。しかし、本発明者らの知見によると、当該硬化膜には、UV-LEDやBlue-LEDなどが放出する波長340~480nm前後の電磁波を吸収すると徐々に変質し、経時的に黄変してしまうことがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、波長340~480nm前後の電磁波による経時的な黄変が生じにくい硬化膜を得ることができる硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物から形成した樹脂硬化膜、ならびに当該樹脂硬化膜を有する半導体パッケージおよび表示装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[4]の硬化性樹脂組成物に関する。
[1](A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)2つ以上の不飽和結合を有する重合性化合物と、
(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、
(D)溶剤と、
を含み、
前記(A)成分は、量子化学計算により算出される、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)との間のエネルギー差が3.7eV以上の樹脂である、硬化性樹脂組成物。
[2]前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される樹脂である、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
(式(1)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(2)もしくは下記一般式(3)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(4)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。)
【0009】
【化2】
【0010】
【化3】
【0011】
(式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数であり、*は、結合部位である。)
【0012】
【化4】
【0013】
(式(4)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数であり、*は、結合部位である。)
[3]前記(A)成分は、重量平均分子量が1000以上40000以下、かつ酸価が50mgKOH以上200mgKOH以下の樹脂である、[1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4](E)重合開始剤および(F)増感剤の少なくとも一方を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0014】
本発明の他の態様は、下記[5]の樹脂硬化膜に関する。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化膜。
【0015】
本発明の他の態様は、下記[6]の半導体パッケージに関する。
[6][5]に記載の樹脂硬化膜を少なくとも1層の保護膜として用いてなる半導体パッケージ。
【0016】
本発明の他の態様は、下記[7]の表示装置に関する。
[7][5]に記載の樹脂硬化膜を少なくとも1層の保護膜として用いてなる表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、波長340~480nm前後の電磁波による経時的な黄変が生じにくい硬化膜を得ることができる硬化性樹脂組成物、当該硬化性樹脂組成物から形成した樹脂硬化膜、ならびに当該樹脂硬化膜を有する半導体パッケージおよび表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.硬化性樹脂組成物
以下、本発明の一実施形態に関する硬化性樹脂組成物は、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)2つ以上の不飽和結合を有する重合性化合物と、(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(D)溶剤と、を含む。
【0019】
[(A)成分]
(A)成分は、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。(A)成分は、アルカリ現像液に対する可溶性を有し、硬化性樹脂組成物にパターニング性を付与することができる。
【0020】
(A)成分は、1分子中に重合性不飽和基と、アルカリ可溶性を発現するための酸性基を有することが好ましく、重合性不飽和基とカルボキシ基とを有することがより好ましい。(A)成分は、上記樹脂であれば特に限定されることなく、様々な種類の樹脂であり得る。(A)成分は、重合性不飽和基を有するため、硬化性樹脂組成物に優れた光硬化性を与え、また硬化時に分子量が大きくなりバインダーとしての作用を発揮する。また、(A)成分は、酸性基を有するため、現像性およびパターニング特性(パターン線幅、パターン直線性)などを向上させる。
【0021】
本実施形態において、(A)成分は、量子化学計算により算出される、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)との間のエネルギー差が3.7eV以上となる樹脂である。上記HOMOとLUMOの間のエネルギー差は、波長340~480nm前後の電磁波が有するエネルギーよりも大きい。そのため、(A)成分は、波長340~480nm前後の電磁波を吸収しにくく、上記電磁波の吸収による経時的な劣化が生じにくい。
【0022】
上記エネルギー差は、(A)成分の構成単位を基に、構成単位の構造中の最安定構造における、密度汎関数法(DFT)により求められたHOMOのエネルギーとLUMOのエネルギーとの間のエネルギー差である。最安定構造は、(A)成分の分子構造から公知の構造最適化手法により求めることができる。本明細書では、(A)成分のHOMOおよびLUMOのエネルギーは、「Gaussian16,RevisionB.01」ソフトウエアパッケージ(Gaussian Inc.)を用い、(A)成分の分子構造に対し、電荷0および多重度1で、密度汎関数法(DFT)により、汎関数にB3LYP、基底関数に6-31G(d)を用いて(Gaussian入力ライン「#B3LYP/6-31G(d)OPT」)算出した、分子構造の最安定構造における最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーとする。ただし、DFTおよびTDDFTの計算には、同様の機能を持つ別の計算科学ソフトウェアを用いてもよい。また、上記量子科学計算をする際には、共役していない(A)成分の部分的な構造のそれぞれについてHOMOおよびLUMOのエネルギーを求め、これらの部分構造から得られるHOMOとLUMOとのエネルギー差の最小値を、上記エネルギー差とすればよい。
【0023】
上記エネルギー差は、3.7eV以上6.0eV以下であることが好ましい。上記エネルギー差が3.7eV以上であれば波長340~480nm前後の電磁波を吸収しにくくして(A)成分の経時的な劣化、およびそれに伴う硬化膜の経時的な黄変を抑制することができる。上記エネルギー差の上限は特に限定されないものの、6.0eV以下とすることができる。
【0024】
(A)成分は、上記エネルギー差の要件を満たす限りにおいて、いかなるアルカリ可溶性樹脂であってもよい。(A)成分の例には、(i)エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を、さらに多塩基酸カルボン酸またはその無水物と反応させて得られる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(ii)アクリル(共)重合体である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(iii)複数のシロキサン結合を含むポリシロキサンである不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、などが含まれる。
【0025】
上記各(A)成分の合成に用いる不飽和基含有モノカルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリル酸にコハク酸、マレイン酸、フタル酸などのジカルボン酸やその酸一無水物などを反応させて得られる化合物などが含まれる。
【0026】
なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、いずれもこれらの一方または両方を意味する。
【0027】
上記(i)の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、製造時に、ヒドロキシ基と多塩基酸カルボン酸との反応で生成するポリエステルの平均の重合度が2~500程度の低分子量の樹脂であることが好ましい。
【0028】
上記エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jERYX4000:三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標)、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物などの芳香族構造を有するエポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの共重合体、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、リカレジンHBE-100:新日本理化株式会社製、「リカレジン」は同社の登録商標)などのグリシジル基を有するエポキシ化合物、1,4-シクロヘキサンジメタノール-ビス3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,1-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-m-ジオキサン(例えば、アラルダイトCY175:ハンツマン社製、「アラルダイト」は同社の登録商標)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、CYRACURE UVR-6128:ダウ・ケミカル社製)、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、「セロキサイド」は同社の登録商標)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製、「エポリード」は同社の登録商標)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE3150:株式会社ダイセル製)などの脂環式エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PB・JP-100:日本曹達株式会社製、「NISSO-PB」は同社の登録商標)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。
【0029】
上記(ii)のアクリル(共)重合体である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体であって、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシ基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂の例には、グリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させ、最後にジカルボン酸またはトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が含まれる。上記共重合体は、特開2014-111722号公報に示されている、両端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化されたジエステルグリセロールに由来する繰返し単位20~90モル%、およびこれと共重合可能な1種類以上の重合性不飽和化合物に由来する繰返し単位10~80モル%で構成され、数平均分子量(Mn)が2000~20000かつ酸価が35~120mgKOH/gである共重合体、および特開2018-141968号公報に示されている、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するユニットと、(メタ)アクリロイル基およびジまたはトリカルボン酸残基を有するユニットと、を含む、重量平均分子量(Mw)3000~50000、酸価30~200mg/KOHの重合体である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を参考にできる。
【0030】
上記(iii)のポリシロキサンである不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の例には、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシ基を有するポリシロキサン化合物が含まれる。上記化合物の例には、エポキシアクリレートとシロキサンジアミンと芳香族酸二無水物とを反応させて得られるシロキサン変性アクリル樹脂(特開2002-226549号公報等)、シロキサンジアミンとエチレン製不飽和結合を有する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるシロキサン含有ポリアミド樹脂(国際公開第2009/075217号等)、シロキサンジアミンを含むジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるシロキサン含有ポリアミック酸樹脂(特開2008-070477号公報、国際公開第2006/109514号、特開2010-204590号公報等)、イソシアヌル環骨格を有するエポキシシリコーン化合物と重合性二重結合を含有するカルボン酸とを反応させて得られる多価アルコール化合物にジカルボン酸又はその酸一無水物を反応させて得られる、重合性二重結合及びカルボキシル基を含んだ基がイソシアヌル環骨格に結合した置換基を有するアルカリ可溶性樹脂(特開2011-141518号公報等)等が含まれる。
【0031】
これらの樹脂について、たとえば芳香環の数を減らすことで、HOMOのエネルギーとLUMOのエネルギーとの間のエネルギー差を高めることができる。具体的には、従来のアルカリ可溶性樹脂の合成時に使用する芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸またはその無水物等について、これらの少なくとも一部を非芳香族のカルボン酸またはその無水物とすることにより、HOMOのエネルギーとLUMOのエネルギーとの間のエネルギー差を上記範囲に高めることができる。
【0032】
樹脂硬化膜の熱による分解を抑制し、かつガラス転移点を高めて熱による変形を抑制する観点からは、(A)成分は複数個の芳香環を有することが好ましく、さらに密着性および耐溶剤性をより高める観点からは、(A)成分はフルオレン構造を含む繰り返し単位を有することがより好ましく、ビスアリールフルオレン骨格を含む繰り返し単位を有することがさらに好ましい。たとえば、(A)成分は、下記一般式(1)で表される樹脂であることが好ましい。
【0033】
【化5】
【0034】
式(1)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(2)もしくは下記一般式(3)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(4)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数であり、*は、結合部位である。
【0038】
【化8】
【0039】
式(4)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数であり、*は、結合部位である。
【0040】
一般式(1)で表される樹脂は、以下の方法で合成することができる。
【0041】
まず、下記一般式(5)で表される、1分子内にいくつかのアルキレンオキサイド変性基を有してもよい、ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a-1)(以下、単に「エポキシ化合物(a-1)」ともいう。)に、(メタ)アクリル酸、下記一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸誘導体、および下記一般式(7)で表される(メタ)アクリル酸誘導体の少なくとも1種を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートであるジオール化合物を得る。なお、上記ビスアリールフルオレン骨格は、ビスナフトールフルオレン骨格またはビスフェノールフルオレン骨格であることが好ましい。
【0042】
【化9】
【0043】
式(5)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0044】
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
式(6)、(7)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。
【0047】
上記エポキシ化合物(a-1)と(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本実施形態において、上記反応で得られる化合物は、下記一般式(8)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「ジオール(d)」ともいう。)である。
【0048】
【化12】
【0049】
式(8)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であり、Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0050】
【化13】
【0051】
【化14】
【0052】
式(2)および(3)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数であり、*は、結合部位である。
【0053】
次に、上記得られるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(1)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する不飽和基含有硬化性樹脂を得ることができる。
【0054】
上記酸成分は、ジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分である。一般式(1)で表される樹脂を得るためには、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)と、を併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基などのヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0055】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、およびこれらの酸一無水物などが含まれる。
【0056】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、およびジグリコール酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0057】
上記脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸およびノルボルナンジカルボン酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0058】
上記芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、およびトリメリット酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸が含まれる。
【0059】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸は、これらのうち、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、およびトリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、およびテトラヒドロフタル酸がより好ましい。
【0060】
上記ジカルボン酸またはトリカルボン酸は、その酸一無水物を用いることが好ましい。
【0061】
なお、より微細なパターン形成を可能にする観点からは、これらのジカルボン酸またはトリカルボン酸は、環状構造を有することが好ましい。より具体的には、脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはこれらの酸一無水物を用いることが好ましい。環状構造を有するジカルボン酸、トリカルボン酸を用いると、末端に環状構造が導入されて樹脂の流動性が下がるため、パターン形成時の塗膜の剥離が抑制されるため、微細なパターンが形成となるものと考えられる。
【0062】
上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、およびこれらの酸二無水物などが含まれる。これらのうち、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、およびこれらの酸二無水物が好ましい。
【0063】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、ならびに、脂環式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの鎖式炭化水素テトラカルボン酸などが含まれる。
【0064】
上記脂環式炭化水素テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、およびノルボルナンテトラカルボン酸、ならびに、鎖式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの脂環式テトラカルボン酸などが含まれる。
【0065】
上記芳香族炭化水素テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、およびナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸などが含まれる。LUMOを高めて、HOMOとLUMOとの間のエネルギー差をより高める観点からは、これらの芳香族炭化水素テトラカルボン酸は、酸無水物部分の芳香環に酸素など電子供与性原子を導入したり、酸無水物骨格が共役しない複数の芳香環に分散したものを使用したりすることが好ましい。たとえば、テトラカルボン酸は、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸が好ましい。
【0066】
上記テトラカルボン酸は、その酸二無水物を用いることが好ましい。
【0067】
また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)のかわりに、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、たとえば国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物であり、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、およびターフェニルジオールなど)の2個のヒドロキシル基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基がそれぞれ反応してエステル結合した形の酸二無水物である。
【0068】
ジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0069】
このとき、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(ジオール(d))、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸二無水物(c)のモル比が、(d):(b):(c)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0070】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、ジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[〔(b)/2+(c)〕/(d)]が0.5より大きく1.0以下となるように反応させることが好ましい。上記モル比が1.0以下だと、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大するのを抑制して、硬化性組成物の経時安定性を高めることができる。また、上記モル比が0.5より大きいと、重合性不飽和基を含有するジオール(d)のうち未反応の成分の残存量が増大するのを抑制して、硬化性組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比を、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0071】
なお、ジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の反応は、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて行う。
【0072】
上記溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、およびブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの高沸点のエーテル系またはエステル系の溶媒、ならびに、シクロヘキサノン、およびジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、たとえば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0073】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシル基との反応は、触媒を使用して行うことが好ましい。上記触媒として、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、およびトリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン類などが記載されている。
【0074】
(A)成分として上記の一般式(1)で表される樹脂を用いるときには、樹脂硬化膜の熱による分解を抑制し、かつガラス転移点を高めて熱による変形を抑制する観点からは、(A)成分のLUMOのエネルギーは、-2.0eV以上であることが好ましい。LUMOのエネルギーが-2.0eV以上であると、樹脂中の芳香環(具体的にはジカルボン酸もしくはトリカルボン酸もしくはその酸一無水物(b)、またはテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)に由来する芳香環)を適度に増やすことにより、樹脂硬化膜の耐熱性を高めることができる。
【0075】
(A)成分は、重量平均分子量(Mw)が1000以上40000以下の化合物であることが好ましく、2000以上20000以下の化合物であることがより好ましい。(A)成分のMwがより高いほど、樹脂硬化膜の密着性および柔軟性を高め、かつ架橋密度を調整しやすくなる。一方で、(A)成分のMwがより低いほど、溶媒への(A)成分の溶解性が高まり、かつ(B)成分との相溶性を高めて、樹脂硬化膜の白濁抑止性、平坦性およびパターニング性を高めることができる。(B)成分との相溶性をさらに高める観点からは、(A)成分のMwは1000以上30000以下であることが好ましく、1500以上25000以下であることがより好ましい。また、(A)成分として上記の一般式(1)で表される樹脂を用いるときには、(A)成分のMwは1000以上6000以下であることが好ましく、2000以上4000以下であることがより好ましい。本実施形態では、(B)成分としてアクリル当量が比較的大きく、分子量も大きい化合物を用いる。たとえば(B)成分の分子量(Mw)が3000以上であるようなときに、(A)成分のMwを6000以下とすることで、これらの相溶性を十分に高めることができる。
【0076】
(A)成分は、同様の観点から、酸価が30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0077】
本明細書において、各成分の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)(たとえば、「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製))で求めたスチレン換算値とすることができる。また、酸価は、電位差滴定装置(たとえば「COM-1600」(平沼産業株式会社製))を用いて求めた値とすることができる。ただし、モノマーなどの、構造から分子量が計算できる化合物については、構造から計算して得た値をその化合物の分子量としてもよい。
【0078】
(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、パターニング特性を重視する場合には40質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。(A)成分の上記含有量が10質量%以上であると、高解像度のパターンを形成することが可能となる。
【0079】
なお、(A)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
[(B)成分]
(B)成分は、2個以上の不飽和結合を有する重合性化合物である。(B)成分の例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が含まれる。これらの重合性化合物の1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。(B)成分は、(A)成分の分子同士を架橋する役割を果たすことができればよく、この機能をより十分に発揮させる観点からは、不飽和結合を3個以上有するものを用いることが好ましい。また、重合性化合物の分子量を1分子中の(メタ)アクリロイル基の数で除したアクリル当量が50~300であることが好ましく、アクリル当量は80~200であることがより好ましい。なお、(B)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0081】
(B)成分として、(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマー等も挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーの例には、多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の中の炭素-炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物を付加して得られる樹枝状ポリマーを例示することができる。具体的には、下記一般式(9)で表される多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基と下記一般式(10)で表される多価メルカプト化合物を反応させて得られる樹枝状ポリマーなどが含まれる。
【0082】
【化15】
【0083】
(式(9)中、Rは水素原子またはメチル基であり、RはR(OH)のk個のヒドロキシ基の内q個のヒドロキシ基を式中のエステル結合に供与した残り部分である。好ましいR(OH)は、炭素数2~8の非芳香族の直鎖または分枝鎖の炭化水素骨格を有する多価アルコールであるか、当該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、またはこれらの多価アルコールもしくは多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。kおよびqは独立に2~20の整数を表すが、k≧qである。)
【0084】
【化16】
【0085】
(式(10)中、Rは単結合または2~6価の炭素数1~6の炭化水素基であり、rはRが単結合であるときは2であり、Rが2~6価の基であるときはRの価数と同じ数である。)
【0086】
一般式(9)で表される多官能(メタ)アクリレートの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびカプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。これらの化合物は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
一般式(10)で表される多価メルカプト化合物の例には、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)等が含まれる。これらの化合物は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0088】
ここで、一般式(9)で示される多官能(メタ)アクリレートへの一般式(10)で示される多価メルカプト化合物のマイケル付加は、得られる樹枝状ポリマーが、その後もなお炭素-炭素二重結合に基づく放射線重合を行うことができるように、一般式(9)で示される化合物が有する炭素-炭素二重結合の全量を100モル%としたとき、炭素-炭素二重結合が0.1~50モル%の範囲で残存するように行われることが好ましい。
【0089】
例えば、一般式(10)で示される多価メルカプト化合物のメルカプト基と、一般式(9)で示される多官能(メタ)アクリレートの炭素-炭素二重結合(一般式(9)において、CH=C(R)-で表わされる二重結合をいい、モル比の計算の場合は二重結合という。)との付加の割合は、メルカプト基/二重結合のモル比が1/100~1/3であることが好ましく、1/50~1/5であることがより好ましく、1/20~1/8であることが特に好ましい。
【0090】
また、上記樹枝状ポリマーは、放射線重合のための十分な量の官能基を有することが好ましい。このため、樹枝状ポリマーのアクリル当量は100~10000の範囲にあることが好ましい。また、(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーは分子量が大きいため、パターン形成時に、塗膜の露光部に現像液が浸透することを抑制し、本硬化(ポストベーク)時に樹脂硬化膜が黄変することを抑制することができる。たとえば、(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が1000以上20000以下の範囲にあることが好ましく、7000以上20000以下の化合物であることがより好ましく、8000以上15000以下の範囲にあることがさらに好ましい。
【0091】
(A)成分と(B)成分との配合割合は、質量比(A)/(B)で、30/70~90/10であることが好ましく、60/40~80/20であることがより好ましい。(A)成分の配合割合が30/70以上であると、光硬化後の硬化物が脆くなりにくく、また、未露光部において塗膜の酸価が低くなりにくいためにアルカリ現像液に対する溶解性の低下を抑制できる。よって、パターンエッジがギザつくことや、シャープにならないといった不具合が生じにくい。また、(A)成分の配合割合が90/10以下であると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が十分なので、所望する架橋構造の形成を行うことができる。また、樹脂成分における酸価度が高過ぎないので、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなりにくいことから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落を抑制することができる。
【0092】
[(C)成分]
(C)成分は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物である。(C)成分は、樹脂硬化膜の耐薬品性を高め、かつ樹脂硬化膜の耐湿密着性を高めることができる。これは、(A)成分のカルボキシ基を、(C)成分のエポキシ基と本硬化(ポストベーク)時に反応させて保護することで、カルボキシ基に起因する(A)成分の吸湿性を低減することができるためと考えられる。
【0093】
(C)成分の例には、(A)成分について説明したエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が含まれる。なお、これらの化合物は、その1種類の化合物のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物が好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物がより好ましい。ビフェニル型のエポキシ化合物は、要求特性に合わせた硬化物の機械的強度や耐薬品性を両立することができる。
【0095】
(C)成分のエポキシ当量は、100g/eq以上300g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上250g/eq以下であることがより好ましい。また、(C)成分の数平均分子量(Mn)は、100以上5000以下であることが好ましい。(C)成分のエポキシ当量が100g/eq以上であると、硬化膜の耐溶剤性が高まる。(C)成分のエポキシ当量が300g/eq以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。また、(C)成分のMnが5000以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。
【0096】
なお、(C)成分のエポキシ当量は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めることができる。
【0097】
(C)成分の含有量は、固形分の全質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の上記含有量を1質量%以上とすると、樹脂硬化膜の耐薬品性および耐湿密着性をより高めることができる。(C)成分の上記含有量を30質量%以下とすると、基板への樹脂硬化膜の密着性をより高めることができる。
【0098】
[(D)成分]
(D)成分は、溶剤である。
【0099】
(D)成分の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、およびジアセトンアルコール等のアルコール類、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類などが含まれる。(D)成分は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0100】
(D)成分の含有量は、目標とする粘度によって変化するが、硬化性樹脂組成物の全質量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。(D)成分の含有量が30質量%以上であると、基板上に硬化性樹脂組成物を塗布しやすい粘度とすることができ、90質量%以下であると、基板上に硬化性樹脂組成物を塗布した後の乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0101】
[(E)成分、(F)成分]
(E)成分は、重合開始剤であり、(F)成分は、増感剤である。
【0102】
(E)成分は、重合性不飽和結合を有し付加重合可能な化合物の重合を開始させ得る化合物であれば、特に限定されるものではない。(E)成分の例には、アセトフェノン化合物、トリアジン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、イミダゾール化合物、アシルオキシム化合物などの光重合開始剤が含まれる。なお、本明細書において、光重合開始剤は増感剤を含む意味で使用される。
【0103】
アセトフェノン化合物の例には、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが含まれる。
【0104】
トリアジン化合物の例には、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(ピプロニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0105】
ベンゾイン化合物の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-tert-ブチルエーテルなどが含まれる。
【0106】
ベンゾフェノン化合物の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4‘-ビス(N,N-ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0107】
チオキサントン化合物の例には、チオキサントン、2-クロロチオキサン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが含まれる。
【0108】
イミダゾール化合物の例には、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5-トリアリールイミダゾール2量体などが含まれる。
【0109】
アシルオキシム化合物の例には、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボキシレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-o-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-o-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-o-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジエン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセテート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセテート、4-エトキシ-2-メチルフェニル-9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾロ-3-イル-O-アセチルオキシム、5-(4-イソプロピルフェニルチオ)-1,2-インダンジオン,2-(O-アセチルオキシム)などが含まれる。上記光重合開始剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0110】
アシルオキシム系光重合開始剤の他の例には、一般式(11)または一般式(12)で表されるO-アシルオキシム系光重合開始剤が含まれる。
【0111】
【化17】
【0112】
式(11)中、R、R10は、それぞれ独立に炭素数1~15のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基または炭素数4~12の複素環基を表し、R11は炭素数1~15のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を表す。ここで、アルキル基およびアリール基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐、または環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0113】
【化18】
【0114】
(式(12)中、R12およびR13はそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R14はそれぞれ独立に、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR12~R14の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0115】
また、(E)成分は、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であることが好ましい。このような光重合開始剤は、感度が高いため、アクリル当量が比較的大きい(B)成分を含む硬化性樹脂組成物でも、十分な感光性を担保することができ、硬化性樹脂組成物の現像性(解像性)を十分に高めることができる。このような光重合開始剤の例には、Omnirad1312(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標)、およびアデカアークルズNCI-831(株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0116】
本明細書において、光重合開始剤のモル吸光係数は、紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、0.001重量%濃度のアセトニトリル溶液の吸光度を、光路長1cm石英セル中にて測定し求めた値とすることができる。
【0117】
また、(E)成分としては、熱重合開始剤を使用してもよい。熱重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン-1-カルボニトリル、アゾジベンゾイル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。熱重合開始剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の保存安定性や、硬化物の形成条件を考慮して選定できる。
【0118】
なお、(E)成分としては、活性ラジカル発生剤または酸発生剤を使用してもよい。
【0119】
活性ラジカル発生剤の例には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアントラキノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などが含まれる。
【0120】
酸発生剤の例には、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのオニウム塩類、ニトロベンジルトシレート類、ベンゾイントシレート類などが含まれる。
【0121】
(F)増感剤の例には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、およびp-tert-ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系;4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
【0122】
(E)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。また、(D)成分として、アシルオキシム系光重合開始剤を用いる場合には、(E)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。(E)成分の含有量が上記下限値以上であると、適度な光重合の速度を有するので、十分な感度を担保できる。また、(E)成分の含有量が上記上限値以下であると、マスクに対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。
【0123】
(F)成分の含有量は、(E)成分の全質量を100質量部としたときに0.5質量部以上400質量部以下であることが好ましく、1質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。光増感剤の上記含有量が0.5質量部以上であると、光重合開始剤の感度を向上させて、光重合の速度を速めることができる。また、光増感剤の上記含有量が400質量部以下であると、感度の過剰な高まりを抑制して、光を照射する際に、焦げ、剥離カスなどを生じにくくすることができる。
【0124】
[その他の成分]
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、その他の樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、カップリング剤、および粘度調整剤等の添加剤を配合することができる。
【0125】
その他の樹脂成分の例には、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、およびメラミン樹脂等が含まれる。
【0126】
硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。
【0127】
硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。
【0128】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。
【0129】
可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。
【0130】
レベリング剤や消泡剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。
【0131】
紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などが含まれる。
【0132】
界面活性剤の例には、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが含まれる。
【0133】
カップリング剤としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、反応基として、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基等を有するものが好ましく、エポキシ基、イソシアネート基、メタクリル基を有するものがより好ましい。上記カップリング剤の具体例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0134】
[製造方法]
硬化性樹脂組成物は、上述の各成分を混合することにより得ることができる。
【0135】
2.用途
上述の硬化性樹脂組成物は、放射線の照射により樹脂硬化膜を形成して、液晶ディスプレイ、有機EL表示装置、μLED表示装置、および量子ドットを適用した表示装置などの各種表示装置における保護層、プリント配線基板および半導体パッケージ用の絶縁膜、たとえばソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層などのレジスト層、多層プリント配線板などの層間絶縁層、ガスバリア用のフィルム、レンズおよび発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子用の封止材、塗料やインキのトップコート、プラスチック類のハードコート、金属類の防錆膜等に用いることができる。なお、本明細書において、半導体パッケージは、フリップチップパッケージ、ウエハレベルパッケージ等に加えて、例えば、フリップチップパッケージをインターポーザー上に積層したもの等のように、半導体チップを含みプリント基板上に実装できるような形態にしたものを含めたものを意味する。特に、発光素子(好ましくはUV-LEDやBlue-LEDなどのLED)と組み合わされる光半導体パッケージに有用である。また、熱硬化性組成物そのものを成形してフィルム、基板、プラスチック部品、光学レンズ等の作製にも応用できる。
【0136】
特に、上記樹脂硬化膜は、波長340~480nm前後の電磁波による経時的な黄変が生じにくいことから、上記電磁波を出射する光源(たとえばUV-LEDやBlue-LEDなど)を有する各種装置に用いたときに、経時的な黄変による弊害を抑制することができる。この観点からは、上記樹脂硬化膜は、上記光源により近い位置に配置されることが好ましく、特に上記光源を実装基板上に配列させて封止するための保護膜(封止材)として用いたときに、他の材料と比較しての経時的な黄変による弊害を抑制する効果が顕著である。
【0137】
上記樹脂硬化膜は、たとえば、上記硬化性樹脂組成物を基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射(露光)し、これを硬化させることにより、作製することができる。このとき、フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの硬化物が得られる。
【0138】
硬化性樹脂組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。
【0139】
これらの方法によって、硬化性樹脂組成物を所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークは、オーブンおよびホットプレートなどによる加熱、真空乾燥、ならびにこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80~120℃の温度で1~10分間行われる。
【0140】
露光に使用される放射線の例には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線およびX線などが含まれるが、波長が250~450nmの範囲にある放射線が好ましい。
【0141】
アルカリ現像は、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの水溶液を現像液として用いて行うことができる。これらの現像液は樹脂層の特性に合わせて選択されるが、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。現像は、20~35℃の温度で行うことが好ましい。市販の現像機や超音波洗浄機等を用いることで、微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法の例には、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、およびパドル(液盛り)現像法などが含まれる。
【0142】
このようにして現像した後、180~250℃の温度及び20~100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。ポストベークは、プレベークと同様に、オーブンおよびホットプレートなどにより加熱することによって行われる。
【0143】
その後、熱により重合または硬化(両者を合わせて硬化ということがある) を完結させて、絶縁膜等の硬化膜を得ることができる。このときの硬化温度は160~250℃の範囲が好ましい。
【0144】
なお、熱重合開始剤を用いて熱硬化により樹脂硬化膜を作製する際には、上記硬化性樹脂組成物を基板等に塗布し、乾燥し、熱処理すればよい。このときの塗布、乾燥(プレベーク)および熱処理(ポストベーク)の条件は、上述した露光およびアルカリ現像を含む方法について説明したものと同様の条件とすることができる。
【実施例0145】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0146】
まず、(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0147】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用の樹脂硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0148】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W(g)〕に含浸させて秤量し〔W(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W(g)〕から次式により求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W-W)/(W-W
【0149】
[酸価]
酸価は、樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0150】
[分子量]
分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0151】
合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(5)において、Arがベンゼン環で、lが0のエポキシ樹脂、エポキシ当量256g/eq)
TPP :トリフェニルホスフィン
AA :アクリル酸
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
HPMDA :1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
ODPA :4,4’-オキシジフタル酸二無水物
THPA :1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
PA :無水フタル酸
SA :無水コハク酸
DCPMA :ジシクロペンタニルメタクリレート
GMA :グリシジルメタクリレート
St :スチレン
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TDMAMP :トリスジメチルアミノメチルフェノール
HQ :ハイドロキノン
TEA :トリエチルアミン
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA :3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PMDA :ベンゼン1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物
DPHA :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
PTMA :ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)
BzDMA :ベンジルジメチルアミン
【0152】
(不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
[合成例1]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0153】
次いで、得られた反応生成物にHPMDA(10.95g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.0質量%であり、酸価(固形分換算)は105mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4000であった。
【0154】
[合成例2]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0155】
次いで、得られた反応生成物に1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(9.67g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6質量%であり、酸価(固形分換算)は106mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3300であった。
【0156】
[合成例3]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0157】
次いで、得られた反応生成物に1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(9.67g、0.05mol)およびPA(7.23g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.9質量%であり、酸価(固形分換算)は110mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2500であった。
【0158】
[合成例4]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0159】
次いで、得られた反応生成物に1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(9.67g、0.05mol)およびSA(4.89g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-4を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は54.8質量%であり、酸価(固形分換算)は110mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4000であった。
【0160】
[合成例5]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0161】
次いで、得られた反応生成物にODPA(15.15g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-5を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.2質量%であり、酸価(固形分換算)は96mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3500であった。
【0162】
[合成例6]
還流冷却機付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA(300g)を入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。フラスコ内にモノマー混合物(DCPMA(77.1g、0.35mol)、GMA(49.8g、0.35mol)、St(31.2g、0.30mol)にAIBN(10g)を溶解した混合物を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間攪拌し、共重合体溶液を得た。
【0163】
次いで、フラスコ系内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にAA(24.0g、グリシジル基のモル数の95%)、TDMAMP(0.8g)およびHQ(0.15g)を添加し、120℃で6時間攪拌し、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にSA(30.0g、AA添加モル数の90%)、TEA(0.5g)を加え120℃で4時間反応させ、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性共重合体樹脂溶液(A)-6を得た。樹脂溶液の固形分濃度は46.0質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0164】
[合成例7]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0165】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(14.37g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)’-7を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.0質量%であり、酸価(固形分換算)は96mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0166】
[合成例8]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0167】
次いで、得られた反応生成物にBTDA(15.73g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)’-8を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.4質量%であり、酸価(固形分換算)は105mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3200であった。
【0168】
[合成例9]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(25.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0169】
次いで、得られた反応生成物にPMDA(10.65g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)’-9を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.9質量%であり、酸価(固形分換算)は105mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0170】
[合成例10]
1Lの4つ口フラスコ内に、PTMA(20.00g、メルカプト基0.19mol)、DPHA(212.00g、アクリル基2.12mol)、PGMEA(58.00g)、HQ(0.1g)、およびBzDMA(0.01g)を加え、60℃で12時間反応させて、樹枝状ポリマー溶液(B)-2を得た。得られた樹枝状ポリマーにつき、ヨードメトリー法にてメルカプト基の消失を確認した。得られた樹枝状ポリマー溶液の固形分濃度は80.0質量%であり、GPC分析によるMwは10000であった。
【0171】
表1に記載の配合量(単位は質量%)で実施例1~10、比較例1~3の硬化性樹脂組成物を調製した。表1で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0172】
(不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A)-1:合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.0質量%)
(A)-2:合成例2で得られた樹脂溶液(固形分濃度55.6質量%)
(A)-3:合成例3で得られた樹脂溶液(固形分濃度55.9質量%)
(A)-4:合成例4で得られた樹脂溶液(固形分濃度54.8質量%)
(A)-5:合成例5で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.2質量%)
(A)-6:合成例6で得られた樹脂溶液(固形分濃度46.0質量%)
(A)’-7:合成例7で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.0質量%)
(A)’-8:合成例8で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.4質量%)
(A)’-9:合成例9で得られた樹脂溶液(固形分濃度55.9質量%)
【0173】
(重合性化合物)
(B)-1:ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート混合物(KAYARAD DPHA、分子量740、日本化薬株式会社製、「KAYARAD」は同社の登録商標)
(B)-2:合成例10で得られた樹枝状ポリマー溶液(固形分濃度80.0質量%)
【0174】
(エポキシ化合物)
(C):ビフェニル型エポキシ樹脂(jER YX4000、三菱ケミカル株式会社製)
【0175】
(溶剤)
(D):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0176】
(重合開始剤)
(E):2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(「Omnirad907」IGM Resins B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標)
【0177】
(増感剤)
(F):ミヒラーケトン
【0178】
【表1】
【0179】
[評価]
[最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)の算出]
不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂((A)-1~(A)-5、および(A)’-7~(A)’-9)の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーは、下記一般式(13)で表されるこれらの樹脂の構成単位を基に、量子化学計算により求めた。量子化学計算には、「Gaussian16,Revision B.01」ソフトウエアパッケージ(Gaussian Inc.)を使用した。具体的には、一般式(13)で表されるこれらの樹脂の構成単位(末端は水素で置換)の分子構造(分子座標)に対し、電荷0および多重度1で、密度汎関数法(DFT)により、汎関数にB3LYP、基底関数に6-31G(d)を用いて、構成単位の最安定構造とその構造における最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーを算出した(Gaussian入力ライン「#B3LYP/6-31G(d)OPT」)。
【0180】
【化19】
(式(13)中、Yはそれぞれの樹脂の合成に用いたテトラカルボン酸二無水物に由来する残基であり、Zはそれぞれの樹脂の合成に用いたジカルボン酸無水物に由来する残基である。)
【0181】
不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂((A)-6)の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーは、下記一般式(14)で表されるこれらの樹脂の構成単位を基に、(A)-1~(A)-5、および(A)’-7~(A)’-9と同様に算出した。
【0182】
【化20】
(式(14)中、a、bおよびcは各構成単位のモル比であり、算出時にはa:b:c=1:1:1とした。)
【0183】
(初期透過率・耐光性試験後の透過率評価用の樹脂硬化膜付き基板の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cmの紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~10、比較例1~3に係る樹脂硬化膜付き基板を得た。
【0184】
[初期透過率評価]
紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、本硬化後、対光性試験前の上記硬化膜付き基板の波長400nmにおける透過率を測定した。
【0185】
[耐光性試験後の透過率評価]
本硬化後の上記硬化膜付き基板に、ブルーフィルター「IEB400」(株式会社五鈴精工硝子製、50mm×50mm×5mmt、340nm以下・480nm以上の波長の透過率が10%未満)を乗せ、Xeテストチャンバー「Q-SUN Xe-1」(Q-Lab Corporation製)にて500時間光照射を行った。前記樹脂硬化膜付き基板における、ブルーフィルターを介して光照射を行った領域を、紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、波長400nmにおける透過率を測定した。
【0186】
(耐熱分解性評価用の樹脂硬化膜粉末の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~10、比較例1~3に係る樹脂硬化膜付き基板を得た。得られた硬化膜を削り出して粉末状にし、TG-DTAの測定に用いた。
【0187】
[耐熱分解性評価]
(評価方法)
得られた樹脂硬化膜の粉末を、TG-DTA装置「TG/DTA6200」(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、空気中、30℃から400℃まで昇温速度5℃/minで昇温し、検体の重量が5%減少する温度を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0188】
(評価基準)
◎:5%重量減少温度が、320℃以上である
○:5%重量減少温度が、300℃以上、320℃未満である
△:5%重量減少温度が、280℃以上、300℃未満である
×:5%重量減少温度が、280℃未満である
【0189】
(ガラス転移点評価用の樹脂硬化膜の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、離型アルミ箔「セパニウム」(東洋アルミ株式会社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が30.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)した。最後に、樹脂硬化膜を離型アルミ箔より剥離し、実施例1~10、比較例1~3に係る樹脂硬化膜を得た。
【0190】
[ガラス転移点評価]
動的粘弾性(DMA)測定装置(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製RSA-G2)を用い、幅5mmの硬化フィルムをチャック間長さ22mmとなるようにセットし、30℃から300℃の温度範囲でガラス転移点を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0191】
(評価基準)
◎:ガラス転移点が、180℃以上である
○:ガラス転移点が、160℃以上、180℃未満である
△:ガラス転移点が、140℃以上、160℃未満である
×:ガラス転移点が、140℃未満である
【0192】
(現像密着性・パターン初期透過率評価用の樹脂硬化膜付き基板の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上にi線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで500mJ/cmの紫外線を照射して、乾燥膜の光硬化反応を行った。
【0193】
次いで、露光した上記露光膜を23℃の2.38%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて60秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、未露光部を除去して10μmのドットパターンを形成した。最後に、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~10、比較例1~3に係る樹脂硬化膜付き基板を得た。
【0194】
[現像密着性]
得られた樹脂硬化膜付き基板の樹脂硬化膜の10μmのドットパターンを、光学顕微鏡を用いて観察し、パターンの剥離の有無を判定した。なお、△以上を合格とした。
【0195】
(評価基準)
○:パターンに剥離が見られない
△:パターンのごく一部に剥離が見られる
×:パターンの大部分が剥離している
【0196】
[パターン初期透過率評価]
紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、現像・本硬化後の上記硬化膜付き基板の波長400nmにおける透過率を測定した。
【0197】
評価結果を表2に示す。
【0198】
【表2】
【0199】
表2に示されるように、本発明の感光性樹脂組成物から得られる実施例1~10の樹脂硬化膜は、340nm~480nmの波長の光を照射した際、塗膜の透過率変化が小さく、塗膜の黄変が抑制できていることがわかった。これは、(A)成分のHOMOとLUMOのエネルギー差を3.7eV以上とすることで、当該波長領域の光の吸収を抑制することができ、樹脂硬化膜の変質を抑制できたためと考えられる。
【0200】
(A)成分として、一般式(1)で表される不飽和基含有熱硬化性樹脂を用いることにより、耐熱分解性を向上させることができ、さらには、ガラス転移点を高めることができるため、昇温時の寸法安定性を向上することができる。これは、一般式(1)で表される不飽和基含有熱硬化性樹脂が芳香環を多数有することにより、熱安定性に優れているためと考えられる。
【0201】
実施例7~9で示されるように、(A)成分として環状構造を有するジカルボン酸またはトリカルボン酸またはその酸一無水物からなる樹脂を用いることで、パターン形成時の剥離が抑制され、樹脂硬化膜の微細なパターンを形成することが可能になることがわかった。
【0202】
実施例7~10で示されるように、(B)成分として樹枝状ポリマーを用いることで、光硬化部への現像液の浸透が抑制され、本硬化(ポストベーク)時の樹脂硬化膜の黄変を抑制できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明は、様々な製品の製造時に使用され得る感光性樹脂組成物を提供することができる。特に、光半導体を実装基板に固定・封止する用途において、好適な樹脂硬化膜を提供することができる。