IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出システム 図1
  • 特開-液体吐出システム 図2
  • 特開-液体吐出システム 図3
  • 特開-液体吐出システム 図4
  • 特開-液体吐出システム 図5
  • 特開-液体吐出システム 図6
  • 特開-液体吐出システム 図7
  • 特開-液体吐出システム 図8
  • 特開-液体吐出システム 図9
  • 特開-液体吐出システム 図10
  • 特開-液体吐出システム 図11
  • 特開-液体吐出システム 図12
  • 特開-液体吐出システム 図13
  • 特開-液体吐出システム 図14
  • 特開-液体吐出システム 図15
  • 特開-液体吐出システム 図16
  • 特開-液体吐出システム 図17
  • 特開-液体吐出システム 図18
  • 特開-液体吐出システム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140397
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液体吐出システム
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230928BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20230928BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20230928BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230928BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230928BHJP
   B05B 15/555 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/165 401
B41J2/14
B41J2/165 101
B41J2/01 401
B41J2/165 301
B05C11/10
B05B15/555
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046210
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】陳 秉賢
(72)【発明者】
【氏名】田中 智也
(72)【発明者】
【氏名】青木 健人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
4D073
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EC07
2C056EC18
2C056EC22
2C056EC23
2C056EC35
2C056EC65
2C056FA02
2C056FA15
2C056FB09
2C056JA03
2C056JB15
2C056KB03
2C056KB08
2C056KB21
2C057AF84
2C057BF04
4D073AA01
4D073BB01
4D073BB03
4D073CC04
4D073CC07
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA36
4F041BA38
4F041BA60
4F042AA09
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB19
4F042CC04
4F042CC08
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】ヘッドへの洗浄液の浸入を低減することが可能な液体吐出システムを提供する。
【解決手段】液体を吐出するノズルと、前記ノズルと連通口を介して連通する液室と、前記ノズルを有するノズル面と、前記連通口を開閉する弁体とを備えたヘッドと、前記ノズル面に洗浄液を供給する洗浄ノズルを有する洗浄装置と、を備え、前記弁体が前記連通口を閉じている状態で前記洗浄液を前記ノズル面に供給する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと、前記ノズルと連通口を介して連通する液室と、前記ノズルを有するノズル面と、前記連通口を開閉する弁体とを備えたヘッドと、
前記ノズル面に洗浄液を供給する洗浄ノズルを有する洗浄装置と、
を備え、
前記弁体が前記連通口を閉じている状態で前記洗浄液を前記ノズル面に供給することを特徴とする液体吐出システム。
【請求項2】
前記洗浄ノズルは、洗浄時において前記ノズルの中心から引いた法線上とは異なる位置に設置されることを特徴とする請求項1記載の液体吐出システム。
【請求項3】
前記ノズル面は、水平面に交差して設置されており、前記洗浄ノズルは、前記ノズル面の垂線に対して重力方向上側に設置されることを特徴とする請求項1または2記載の液体吐出システム。
【請求項4】
前記液体の種類を変更する場合、前記ノズル面の洗浄は、前記洗浄装置において前記ノズルに残った変更前の液体を排出した後に実施されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項5】
前記ノズル面に対して密閉部の形成を可能とする密閉部材を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項6】
前記ノズル面に対して前記密閉部が形成されている状態で、前記ノズル面に供給された前記洗浄液を除去する第1の洗浄液除去手段と、
前記ノズル面に対して前記密閉部が形成されていない状態で、前記ノズル面に供給された前記洗浄液を除去する第2の洗浄液除去手段と、
を備えることを特徴とする請求項5記載の液体吐出システム。
【請求項7】
前記第2の洗浄液除去手段は、前記ノズル面に向けて吹き付けられるエアを用いることを特徴とする請求項6記載の液体吐出システム。
【請求項8】
前記第2の洗浄液除去手段は、前記液体を吸収可能な吸収体であることを特徴とする請求項6記載の液体吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インクジェット記録ヘッドのインク滴を噴射するノズル内へ洗浄液滴を噴射する液滴噴射手段を備えたインクジェット記録ヘッド洗浄装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では、洗浄液がノズルから液室に侵入することで、内部のインクあるいは塗料が薄まり、塗装品質が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルと連通口を介して連通する液室と、前記ノズルを有するノズル面と、前記連通口を開閉する弁体とを備えたヘッドと、前記ノズル面に洗浄液を供給する洗浄ノズルを有する洗浄装置と、を備え、前記弁体が前記連通口を閉じている状態で前記洗浄液を前記ノズル面に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ヘッドへの洗浄液の浸入を低減することが可能な液体吐出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出システムの全体概略図。
図2】塗装ロボットのハードウエアの概略構成の一例を示すブロック図。
図3】ピエゾヘッドの吐出原理の概要説明図。
図4】ピエゾヘッドのノズル汚れの様子を示す説明図。
図5】ピエゾヘッドの洗浄の様子を示す説明図。
図6】バルブヘッドの一例を示した概略全体斜視図。
図7】バルブヘッドの吐出原理の概要説明図。
図8】バルブヘッドを構成する液体吐出モジュール単体の説明図。
図9】清掃ステーションの外観の一例を示す説明図。
図10】清掃ステーションの内部構成の一例を示す説明図。
図11】洗浄液およびエアの配線を模式的に示した説明図。
図12】洗浄プロセスの一例を示す説明図。
図13】洗浄後のノズル面の様子を示す説明図。
図14】残留洗浄液の除去構成の一例を示す説明図。
図15】本実施形態における塗装から洗浄の一連の動作を示したフローチャート。
図16】洗浄動作の一例を示すフローチャート。
図17】洗浄動作の一例を示すフローチャート。
図18】塗料の変更動作の一例を示すフローチャート。
図19】洗浄液除去構成の変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
<液体吐出システムの概略>
はじめに図1を用いて液体吐出システムの概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出システムの全体概略図である。ここに例示した液体吐出システムは、自動車の車体などを塗装する塗装システムである。
【0009】
図1において、塗装システム3000は、塗装ロボット1000と、清掃ステーション2000とを備え、塗装システム3000は、所定の塗装ブース1に設置される。塗装ロボット1000は、例えば多関節ロボットであり、ロボットアームの先端にヘッドユニット100を備える。塗装ロボット1000は、車体などの対象物5000に対してヘッドユニット100を自由に動かし、ヘッドユニット100に備えたヘッド(後述する)を、対象物5000の塗装を施す位置へ正確に配置させることができる。
【0010】
例えば、塗装ロボット1000は、ロボット本体10、多関節アームデバイス20およびヘッドユニット100を備える。ロボット本体10は、塗装ブース1の床面に固定され、多関節アームデバイス20を支持する。また、ロボット本体10は、内部に後述のロボット制御部70を有する。
【0011】
多関節アームデバイス20は、第1アーム21a、第2アーム21b、第3アーム21c、第4アーム21d、第1関節部22a、第2関節部22bおよび第3関節部22cを備える。第1アーム21aは、一端がロボット本体10に対して点線矢印r1の方向に回動(旋回)可能に支持され、他端が第1関節部22aを介して第2アーム21bの一端に接続される。第2アーム21bは、その一端が第1関節部22aを介して第1アーム21aに接続されることにより、点線矢印r2の方向に回動可能である。
【0012】
第2アーム21bの他端は、第2関節部22bを介して第3アーム21cの一端に接続される。第3アーム21cは、その一端が第2関節部22bを介して第2アーム21bに接続されることにより、点線矢印r3の方向に回動可能である。第3アーム21cの他端は、第3関節部22cを介して第4アーム21dの一端に接続される。第4アーム21dは、その一端が第3関節部22cを介して第3アーム21cに接続されることにより、点線矢印r4の方向に回動可能である。そして、第4アーム21dの他端には、ヘッドユニット100が支持されている。
【0013】
各アーム21a~21dの回動動作は、各関節部22a~22cに備えた駆動モータをロボット制御部70によって制御することで行われる。これにより、ヘッドユニット100は、対象物5000に対して垂直方向(上下方向)および水平方向(左右方向)への移動が可能となる。
【0014】
塗装位置に配置されたヘッドは、対象物5000に向けて液体の一例であるインクを吐出し、対象物5000を塗装する。塗装ロボット1000のロボットアームが届く領域内には、清掃ステーション2000が設置され、インク吐出終了時または所定時間が経過したとき、塗装ロボット1000はヘッドユニット100を清掃ステーション2000へ移す。清掃ステーション2000は、ヘッドを洗浄するための洗浄装置を備え、ヘッドユニット100に設けたヘッドに対して清掃処理を実施する。
【0015】
<ハードウエア構成>
次に、図2を用いて、実施形態に係る塗装ロボットのハードウエアの概略構成について説明する。なお、図2に示されているハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加または削除されてもよい。図2は、塗装ロボット1000のハードウエアの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0016】
塗装ロボット1000は、ロボット本体10の内部にロボット制御部70を有する。なお、ロボット制御部70は、ロボット本体10の外部に設けられてもよく、または塗装ロボット1000とは別の装置として設けられていてもよい。
【0017】
ロボット制御部70は、CPU(Central Processing Unit)701、ROM(Read Only Memory)702、RAM(Random Access Memory)703、I/F(Interface)704を備える。
【0018】
CPU701は、塗装ロボット1000全体の制御を行う。CPU701は、ROM702または記憶部705等に格納された、プログラムもしくはデータをRAM703上に読み出し、処理を実行することで、塗装ロボット1000の各機能を実現する演算装置である。
【0019】
ROM702は、電源を切ってもプログラムまたはデータを保持することができる不揮発性のメモリである。RAM703は、CPU701のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリである。I/F704は、文字、数値、各種指示等を各種外部装置等との間で入出力するためのインターフェースである。I/F704は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部706に対するカーソル、メニュー、ウィンドウ、文字または画像等の各種情報の表示を制御する。
記憶部705は、プログラム等の各種データを記憶する。
【0020】
表示部706は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字または画像等の各種情報を表示する。操作パネル707は、文字、数値、各種指示等の入力、各種指示の選択、もしくは実行、処理対象の選択、またはカーソルの移動等を行う入力手段の一種である。
【0021】
さらに、ロボット制御部70には、ヘッド300、清掃ステーション駆動部708、および関節部駆動モータ709などが接続されている。ヘッド300は、CPU701からの命令に基づき、対象物5000に対する液体吐出動作を実行する。清掃ステーション駆動部708は、ヘッド300のノズル面301を洗浄する際、CPU701からの命令に基づき、清掃ステーション2000の密閉部材205に対するヘッド300の移動を実行する。関節部駆動モータ709は、CPU701からの命令に基づき、塗装ロボット1000の多関節アームデバイス20の各関節部22a~22cを駆動し、各アーム21a~21dの回動動作を実行する。
【0022】
<ヘッド洗浄の課題>
ここで、図3乃至図5を用いて、ピエゾヘッドにおけるヘッド洗浄時の課題を説明する。図3は、ピエゾヘッドの吐出原理の概要説明図、図4は、ピエゾヘッドのノズル汚れの様子を示す説明図、図5は、ピエゾヘッドの洗浄の様子を示す説明図である。
【0023】
図3において、図3(a)は液体を吐出していない状態、図3(b)は液体を吐出している状態を示している。ピエゾヘッドは、液室311に液体が充填されている状態で、ピエゾ素子312を振動させることで液室311の液体を押し出し、ノズル302から液体を吐出するように構成されたヘッドである。ピエゾヘッドは、例えば図2に示したヘッド300のハウジング303に、図3に示すようなピエゾ機構310を内蔵して構成される。
【0024】
ピエゾ機構310は、ピエゾ素子312、液体供給口306、液室311およびピエゾ素子保持部材307等を備える。ピエゾ素子保持部材307は、断面中空状の空間307aを有し、ノズル302の近傍には液体供給口306を備える。液体供給口306は、外部から供給される液体を液室311内へ供給する。ピエゾ素子312は、ピエゾ素子保持部材307に設けた空間307aに配置され、振動動作が可能なようにピエゾ素子保持部材307によって保持される。
【0025】
上記の構成において、ピエゾ素子312に駆動電圧が印加されていない場合は、図3(a)に示すように液室311内の液体はノズル302から吐出されない。ピエゾ素子312に駆動電圧が印加されると、ピエゾ素子312は振動し、図3(b)に示すように液室311内の液体がノズル302から液滴Dとなって吐出する。
【0026】
このようにしてノズル302からの液体吐出が終了した際、ノズル302およびノズル面301には図4(a)または図4(b)に示すように増粘した液体Laが残ることがある。また、ノズル302からの液体吐出時に発生するミストが、図4(c)に示すようにノズル面301のノズル302周囲に付着し、固着物Lbとなって残ることがある。
【0027】
増粘した液体Laや固着物Lbは、ノズル302から液体を吐出する際に抵抗となり、液体の吐出曲がり(液体を狙いの位置へ正しく吐出することができない)をまねく。また、液体Laの増粘が大きい場合には、不吐出(ノズル302からの液体吐出不能)をまねくことがある。したがって、吐出品質を維持するためには、増粘した液体Laおよび固着物Lbを取り除く必要がある。
【0028】
そこで従来は、例えば、図5(a)に示すようにノズル面301と対向可能な位置に洗浄ノズル201およびエアノズル211を設け、洗浄ノズル201からの洗浄液およびエアノズル211からの洗浄エアをノズル面301に吹き付けてノズル面301およびノズル302の洗浄が行われていた。図5(b)は、図5(a)のA-A線で断面した一部拡大図である。ノズル面301に付着した、増粘した液体Laおよび固着物Lb等の異物を除去するためには、洗浄液および洗浄エア共に高い圧力を必要とし、その結果、図5(b)の破線で示すように洗浄液が液室311に浸入してしまうことがある。液室311に洗浄液が浸入すると液室311内の液体が薄められ、対象物5000の品質に影響を与えてしまうため、従来は、次の液体吐出動作を開始する前に、洗浄液によって薄められた液体を液室311から排出し、廃棄する必要があった。
【0029】
<バルブヘッドの構成>
以下、本発明で用いられるバルブヘッドの構成について、図6乃至図8を用いて説明する。まず、図6を用いてバルブヘッドの概略構成を説明する。図6は、バルブヘッドの一例を示した概略全体斜視図である。
【0030】
図6において、ヘッド300はインクジェット方式を採用したバルブヘッドである。ヘッド300は、ノズル面301、ノズル302およびハウジング303を主に備える。ノズル面301は、ハウジング303の一面に設けられ、液体を吐出するためのノズル302を備える。ノズル302は、微小な開口であって、後述のバルブ機構によって開閉が可能であり、ノズル302を開放状態にしたとき、ノズル302から液体が吐出される。ハウジング303は、ノズル302を開閉するバルブ機構等を内蔵している。
【0031】
なお、ノズル302を備えるノズル面301は、ノズル板など別部材とし、ノズル板をハウジング303に保持させる構成としてもよい。また、ノズル302の数および配列は図示した構成に限るものではない。ノズル302の数は、18個より多くてもよいし、または複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル302の配列は、複数列ではなく1列であってもよい。
【0032】
図7は、バルブヘッドの吐出原理の概要説明図であり、図7(a)はノズルを閉じた状態、図7(b)はノズルを開いた状態、図7(c)はノズル面洗浄時の状態を示している。
【0033】
図6に示したヘッド300のハウジング303は、図7に示すようなバルブ機構304を内蔵している。バルブ機構304は、1個のノズル302に対して1個のバルブ機構304が備わるように設けられる。
【0034】
バルブ機構304は、バルブ305、液体供給口306およびバルブ保持部材307等を備える。バルブ保持部材307は、断面中空状の空間307aを有し、ノズル302の近傍には液体供給口306を備える。液体供給口306は、外部で加圧した状態で供給される液体をバルブ保持部材307内へ受け入れ、液体をノズル面301の後方部へ供給する。バルブ305は、バルブ保持部材307に設けた空間307aに配置され、軸受308を介して軸方向へ移動可能にバルブ保持部材307によって保持される。ここで、バルブ305は「弁体」の一例である。
【0035】
上記の構成において、図7(a)に示すようにバルブ305の先端がノズル302に密着している場合は、ノズル302(連通口301a)は閉じた状態となるため、液体供給口306から供給された液体はノズル302から吐出されない。バルブ305に電圧が印加されると、バルブ305は図7(b)に示すように矢印Aの方向に移動し、ノズル302は開いた状態となる。これにより、液体供給口306とノズル302とが連通口301aを介して連通して液体がノズル302から液滴Dとなって吐出する。なお、バルブ305は、数kHzの周波数により高速でノズル302の開閉を行っており、一滴ずつ液体を吐出することが可能である。
【0036】
ノズル面301を洗浄する際、図7(c)に示すようにバルブ305の先端はノズル302に密着してノズル302を閉じる。この状態で洗浄ノズル201(後述)からノズル面301に向けて破線で示すように洗浄液を吹き付けるため、バルブ保持部材307内への洗浄液の浸入を防止しつつ、ノズル面301およびノズル302を洗浄することが可能となる。
【0037】
図8を用いて、バルブ機構304の構成について補足する。図8は、ヘッド300を構成するバルブ機構単体の説明図である。図8(a)はバルブ機構の全体断面図、図8(b)は図8(a)のB部の拡大図である。
【0038】
バルブ機構304は、ノズル302を開閉するバルブ305と、バルブ305を駆動する圧電素子332とを備えている。ノズル板310はハウジング303に接合している。また、液室312はハウジング303に設けた複数のバルブ機構304に共通の液体流路を形成する。
【0039】
バルブ305の先端には弾性部材331を備えており、バルブ305の先端をノズル板310に押し付けた際にノズル302を確実に閉塞するようにしている。また、バルブ305とハウジング303との間には、軸受部321を設け、軸受部321とバルブ305との間にはOリングなどのシール部材315を設けている。
【0040】
ハウジング303の空間322内には圧電素子309を収容している。保持部材333の中央空間333aが圧電素子309を保持しており、圧電素子309とバルブ305とは同軸上に保持部材333の先端部333bを介して連結している。すなわち、保持部材333は、圧電素子309を収容する中央空間333aを有し、先端部333b側はバルブ305と連結し、後端部333c側はハウジング303に取り付けた規制部材314により固定してある。
【0041】
ここで、圧電素子309は、電圧印加手段200によって電圧を印加したときに、ノズル302が開く方向にバルブ305を駆動する。したがって、圧電素子309に電圧を印加していないときは、バルブ305がノズル302を閉塞しているので、液室312にインクが加圧供給されていても、ノズル302からインクが吐出することはない。そして、圧電素子309に電圧を印加することで、圧電素子309が収縮し、保持部材333を介してバルブ305を引っ張るので、バルブ305がノズル302から離間してノズル302を開放する。これにより、ノズル302と液室312とが、連通口301aを介して連通し、液室312に加圧供給したインクがノズル302から吐出される。
【0042】
上述のように本実施形態は、液体を吐出するノズル302と、ノズル302と連通口301aを介して連通する液室312と、ノズル302を有するノズル面301と、連通口301aを開閉するバルブ305とを備えたヘッド300と、ノズル面301に洗浄液を供給する洗浄ノズル201を有する洗浄装置(洗浄ノズル201およびチューブ202等)と、を備え、バルブ305がノズル302(連通口301a)を閉じている状態で洗浄液をノズル面301に供給する。これにより、ヘッド300内への洗浄液の浸入を防止しつつ、ノズル面301およびノズル302を洗浄することができる。
【0043】
<清掃ステーションの構成>
図9乃至図11を用いて清掃ステーションの構成を説明する。
【0044】
<<外観構成>>
はじめに図9を用いて清掃ステーション2000の外観構成について説明する。図9は、清掃ステーションの外観の一例を示す説明図である。
【0045】
清掃ステーション2000は、上述のように塗装ブース1に設置され、塗装ロボット1000によってヘッドユニット100が清掃ステーション2000へ移された場合、清掃ステーション2000はヘッド300の清掃(洗浄)処理を実施する。清掃ステーション2000は、本体筐体204と、密閉部材205と、ベース板260とを備える。
【0046】
本体筐体204は、その側面の一部にヘッド300のノズル面301の面積よりも小さい面積の開口部204aを備える。開口部204aの周囲(縁の部分)には、ベース板260を介して密閉部材205が設けられている。密閉部材205は、ヘッド300に対して清掃処理を実施する際、ノズル面301が密閉部材205に押圧されることで、ヘッド300と清掃ステーション2000との間で密閉された空間(以下、密閉部)を形成する(密閉部については後述する)。
【0047】
清掃ステーション2000は、ヘッド300を搭載したシステム側(ないしは装置側)と一体に設けられる場合が一般的であるが、本実施形態では塗装ロボット1000と清掃ステーション2000とは独立した構造としている。これにより、塗装ロボット1000の運搬または設置等における塗装ロボット1000からの洗浄液のこぼれを防止することができ、また、塗装ロボット1000の可搬重量を軽減できる。
【0048】
上述のように本実施形態は、ヘッド300と清掃ステーション2000(具体的には後述の洗浄ノズル201、エアノズル211およびチューブ202、212等)とは独立した装置として塗装ブース1内に設置される。これにより、塗装ロボット1000の設置等における洗浄液のこぼれ防止、および塗装ロボット1000の可搬重量の軽減を図ることができる。また、ヘッド300と切り離すことで洗浄時のヘッド向きの自由度が上がる。また、清掃ステーション2000における廃液処理の清掃性が向上する。
【0049】
<<内部構成>>
次に、図10を用いて清掃ステーション2000の内部構成について説明する。図10は、清掃ステーションの内部構成の一例を示す説明図であり、図10(a)は密閉部を形成した状態における各部材の位置関係を示す説明図、図10(b)はノズル面に洗浄液を噴射した状態を示す説明図、図10(c)はノズル面に洗浄エアを吹き付けた状態を示す説明図である。なお、図10では、図9に示したベース板260を省略し、簡略化して説明する。
【0050】
図10(a)において、清掃ステーション2000は、その内部に、洗浄ノズル201と、洗浄ノズル201に接続したチューブ202と、エアノズル211と、エアノズル211に接続したチューブ212と、一端側に洗浄ノズル201およびエアノズル211を保持したノズル保持部203と、ノズル保持部203の他端側を保持する本体筐体204とを備える。ここで、洗浄ノズル201、エアノズル211およびチューブ202、212は「洗浄装置」の一例である。また、このうちの洗浄ノズル201およびチューブ202は「第1の洗浄液除去手段」の一例でもあり、エアノズル211およびチューブ212は「第2の洗浄液除去手段」の一例でもある。
【0051】
本体筐体204の一部に形成した開口部204aの周囲には密閉部材205が設けられている。密閉部材205は、ヘッド300に対して清掃処理を実施する際に、ヘッド300のノズル面301が密閉部材205に押圧されることで、ヘッド300と清掃ステーション2000との間で密閉部206を形成する。なお、このときのヘッド300のノズル302は、図7(a)などに示した「閉じた状態」である。
【0052】
ノズル面301は、水平面に対して交差する方向(本実施形態では垂直方向)に向けて固定されている。ノズル面301を重力方向の下向きで固定した場合は、洗浄液をノズル面301に向けて吹き上げる方向となり、重力に逆らって洗浄液を噴射しなければならず洗浄効率が落ちる。また、ノズル面301を水平面に対して90度より大きい角度に傾けて固定した場合は、ノズル面301で跳ね返った洗浄液の飛散範囲が大きくなり、飛散防止部材の大型化により装置全体が大型化してしまう。さらに、密閉部材205とノズル面301の角部に洗浄液が残りやすくなり、洗浄後の洗浄液を除去しきれない可能性もある。ノズル面301の水平面に対する角度は、上記の点などを踏まえ、洗浄液を吹き上げない範囲で適宜設定してよい。
【0053】
洗浄ノズル201とエアノズル211は、ヘッド300のノズル面301に設けたノズルの中心から引いた法線(図10(a)の破線上)を避けた位置(本実施形態では法線よりも重力方向上側となる位置)に設置している。対象物5000に対して吐出される液体は、単色とは限らず、色や特性等、種類を変更する場合がある。その場合は、ヘッド300のノズル内などに残った液体を一度排出し、液体を入れ替える処理が必要となる。本実施形態では、液体の入替(変更)処理についても清掃ステーション2000内で実施することで新たな装置を必要とせず、設備の小型化やコストダウンが可能となる。
【0054】
この液体の入替処理の際に、洗浄ノズル201およびエアノズル211が上述の法線上に存在すると、液体の入替処理で吐出された液体が洗浄ノズル201およびエアノズル211にかかり、洗浄ノズル201とエアノズル211を汚してしまう。そこで、本実施形態では、洗浄ノズル201とエアノズル211を、ノズルの中心から引いた法線を避けた位置に設置することにより、ノズル201、211の汚損を防止する。
【0055】
上述のように本実施形態は、洗浄ノズル201は、洗浄時においてノズル302の中心から引いた法線上とは異なる位置に設置される。
【0056】
また、上述のように、ノズル面301は、水平面に交差して設置されており、洗浄ノズル201は、ノズル面301の垂線に対して重力方向上側に設置される。
【0057】
これらにより、液体の入替(変更)処理などで排出された液体が洗浄ノズル201に当たらなくなり、洗浄ノズル201の汚損を防止できる。
【0058】
また、上述のように、液体の種類を変更する場合、ノズル面301の洗浄は、洗浄装置においてノズル302に残った変更前の液体を排出した後に実施される。これらにより、少ない洗浄回数で液体の入替(変更)処理を行うことができる。
【0059】
また、上述のように、ノズル面301に対して密閉部206の形成を可能とする密閉部材205を備える。これにより、清掃ステーション2000周囲への洗浄液の飛散を防ぐことができる。
【0060】
塗装ロボット1000によってヘッド300が清掃ステーション2000に移動し、密閉部206が形成されると、図10(b)に示すように洗浄ノズル201から洗浄液Lcがノズル面301に向けて噴射される。洗浄ノズル201からの洗浄液Lcの噴射は、所定の時間を経過すると終了する。
【0061】
洗浄ノズル201のノズル形状は特に限定はされないが、本実施形態では洗浄ノズル201から噴射される洗浄液Lcは所定の噴射幅を有して噴射される。この噴射幅は、洗浄ノズル201として、例えば、充円錐型のノズルを選択することで1つのノズルで広範囲を洗浄することが可能になる。なお、洗浄ノズル201として直線型のノズルを選択すれば、ピンポイントで洗浄液Lcをノズル面301に当てることができ、より洗浄力を高めることも可能である。さらに、洗浄ノズル201として扇型のノズルを選択すれば、広範囲の洗浄と洗浄力の両立を狙うことも可能となる。
【0062】
ノズル面301に洗浄液Lcが付着したままの状態にしておくと、対象物5000に対して液体を吐出する際に、洗浄液Lcが対象物5000に落下し、対象物5000の品質悪化につながる。液体吐出動作中の対象物5000への洗浄液Lcの落下を防ぐため、図10(c)に示すように洗浄液Lcの噴射後は、エアノズル211から洗浄エアAcを噴射し、ノズル面301に付着した洗浄液Lcを除去する。エアノズル211からの洗浄エアAcの噴射も、所定の時間が経過すると終了する。
【0063】
<<洗浄液およびエアの供給系統>>
次に、図11を用いて清掃ステーション2000における洗浄液およびエアの供給系統について説明する。図11は、洗浄液およびエアの配線を模式的に示した説明図である。
【0064】
設備等のエア源である設備エア220は、加圧したエアを1次レギュレータ221へ供給する。1次レギュレータ221は、エアの圧力を調整し、圧力調整後のエアを1次継手222へ供給する。1次継手222は、1次レギュレータ221からのエアを2系統に分岐し、1次継手222は、一方を2次継手223へ供給し、他方をソレノイドバルブ224へ供給する。
【0065】
2次継手223は、1次継手222からのエアをさらに2系統に分岐し、2次継手223は、一方を液圧調整レギュレータ225へ供給し、他方をエア圧調整レギュレータ226へ供給する。液圧調整レギュレータ225は、その後段に設置された加圧タンク227の圧力を調整し、加圧タンク227に収容された洗浄液を所定の圧力で加圧して洗浄ノズル201へ供給する。
【0066】
一方で、1次継手222からソレノイドバルブ224に供給されたエアは、加圧タンク227の後段に設置した洗浄液ON/OFFバルブ228と、エア圧調整レギュレータ226の後段に設置したエアON/OFFバルブ229とに供給され、各ON/OFFバルブ228、229のオンオフ制御に用いられる。ソレノイドバルブ224は、PC(Personal Computer)等の制御端末230に接続している。
【0067】
上記の構成において、ヘッド300が清掃ステーション2000に移動し、ノズル面301と清掃ステーション2000との間が密閉部材205によって密閉されたと制御端末230が判断すると、制御端末230は、ソレノイドバルブ224から洗浄液ON/OFFバルブ228へのエアの入力(供給)をONにする。これにより、洗浄ノズル201から洗浄液Lcがノズル面301に向けて噴射される。所定の時間を経過すると制御端末230は、ソレノイドバルブ224から洗浄液ON/OFFバルブ228へのエアの入力(供給)をOFFにし、洗浄液Lcの噴射を終了する。
【0068】
なお、上記の制御端末230での判断は、予め塗装ロボット1000に、密閉部206が形成される位置を示す座標をティーチングしておき、塗装ロボット1000のロボットアームが当該座標に到達したか、座標情報に基づいて判断している。座標情報を用いずに、ロボットアームの位置を位置センサによって検出する方法も考えられる。
【0069】
しかし、インクや塗料、洗浄液が溶剤を含む液体であり、塗装ブース1が防爆エリアとして定められている場合は、電気機器の使用が防爆規格に抵触する可能性があり、位置センサを使用できないことがあるためである。ただし、本実施形態は、座標情報に基づき判断を行う構成に限るものではない。例えば、塗装ブース1が防爆エリアとなっていない場合は、位置センサ等の検出結果に基づいて密閉部206の形成状態を制御端末230に判断させてもよい。
【0070】
ノズル面301への洗浄液Lcの噴射が終了したならば、制御端末230は、ソレノイドバルブ224からエアON/OFFバルブ229へのエアの入力(供給)をONにする。これにより、エアノズル211から洗浄エアAcがノズル面301に向けて噴射される。所定の時間を経過すると制御端末230は、ソレノイドバルブ224からエアON/OFFバルブ229へのエアの入力(供給)をOFFにし、洗浄エアAcの噴射を終了する。
【0071】
<洗浄動作の説明>
次に、図12乃至図14を用いて本実施形態の洗浄動作について説明する。図12は、洗浄プロセスの一例を示す説明図である。
【0072】
ヘッド300のノズル面301の洗浄は、図12(a)から図12(e)の順で実施される。対象物5000に対する液体吐出が終了すると、塗装ロボット1000はヘッド300を清掃ステーション2000に移し、塗装ロボット1000は、ヘッド300のノズル面301を清掃ステーション2000の密閉部材205に押圧する。そして、図12(a)に示すように、密閉部206が形成された位置で塗装ロボット1000はヘッド300の位置を固定(保持)する。なお、このときのヘッド300のノズル302は、図7(a)などに示した「閉じた状態」である。
【0073】
次に、図12(b)に示すように、洗浄ノズル201からノズル面301に向けて洗浄液Lcを噴射し、ノズル面301およびノズル302に付着した、増粘した液体Laおよび固着物Lb等を洗い流す。続いて、図12(c)に示すように、エアノズル211からノズル面301に向けて洗浄エアAcを噴射し、ノズル面301およびノズル302に残った洗浄液Lc等を吹き飛ばす。
【0074】
ところが、図12(a)~(c)の工程を実施するだけでは、ノズル面301の汚れを取り切れない場合がある。例えば、図13に示すように、ノズル面301と密閉部材205との縁などに洗浄エアAcで除去しきれなかった洗浄液Lc等が残る場合がある。
【0075】
そこで、密閉部206を形成した状態での洗浄エアAcの噴射が終了したならば、塗装ロボット1000は、ノズル面301と密閉部材205との押圧を解除する方向にヘッド300を動かす。そして、図12(d)に示すように、密閉部材205に対してノズル面301を所定の距離だけ離間させる。続いて、図12(e)に示すように、エアノズル211からノズル面301に向けて再度、洗浄エアAcを噴射し、ノズル面301に残った洗浄液Lc等を吹き飛ばす。
【0076】
これにより、ノズル面301と密閉部材205との縁の部分などに残っていた洗浄液Lc等についても除去が可能になる。また、エアノズル211を用いた再噴射であり、既存の部品を使用するため、消耗品の交換がなく、コスト削減および装置のコンパクト化が図れる。
【0077】
なお、図12(e)に示した洗浄エアAcの再噴射は、密閉部206を形成していない状態で行われるため、洗浄エアAcによって吹き飛ばされた洗浄液Lc等が周囲に飛散する。したがって、例えば図14に示すように、清掃ステーション2000の本体筐体204に部材240を設けることが望ましい。
【0078】
上述のように本実施形態は、ノズル面301に対して密閉部206が形成されている状態で、ノズル面301に供給された洗浄液Lcを除去する洗浄ノズル201と、ノズル面301に対して密閉部206が形成されていない状態で、ノズル面301に供給された洗浄液Lcを除去するエアノズル211とを備える。
【0079】
また、上述のように、エアノズル211は、ノズル面301に向けて吹き付けられる洗浄エアAcを用いる。
【0080】
これらにより、ノズル面301の隅々まで洗浄エアAcが行き渡り、ノズル面301と密閉部材205との縁の部分などに残っていた洗浄液Lc等を除去することができる。なお、上述の洗浄動作は、1つの車体の塗装が終了した後、または1日の車体塗装スケジュールが終了した後に実行される。また、洗浄動作が実行されるタイミングは特に限定されるものではなく、例えば、塗装開始前に実行するようにしてもよい。図15は、本実施形態における塗装から洗浄の一連の動作を示したフローチャートである。図15に示されるように、塗装システム3000では、対象物5000に対する塗装が実行される(ステップS100)。塗装が終了したならば、塗装システム3000では洗浄動作が実行される(ステップS200)。次に、洗浄動作が終了したならば、塗装システム3000は、塗装を行う対象物5000が残っているかを判断する(ステップS300)。対象物5000が残っていないと判断した場合は一連の塗装作業を終了する。また、ステップS300において、対象物5000が残っていると判断した場合はステップS100へ戻り、対象物5000に対する塗装を開始する。
【0081】
ここで、図16乃至図18を用いて、本実施形態における洗浄動作のフローの一例を説明する。図16は洗浄動作の一例を示すフローチャートである。
【0082】
ヘッド300に対する洗浄動作が開始されると、ロボットアームは塗装動作のホーム位置から洗浄動作のホーム位置へ移動する(ステップS1)。ロボットアームが洗浄ホーム位置に到達したならば、ロボット制御部70は、ヘッド300のバルブ305が閉じている(ノズル302が閉じている)かを判断する(ステップS2)。ステップS2においてバルブ305が閉じていない(No)と判断された場合は、バルブ305を閉じ、ノズル302を閉じた状態にする(ステップS3)。
【0083】
バルブ305が閉じた状態となったならば、ヘッド300と密閉部材205とを当接させ、ヘッド300と清掃ステーション2000との間に密閉部206を形成する(ステップS4)。密閉部206が形成されたならば、密閉部206内に設置した洗浄ノズル201は洗浄液を吐出(噴射)し、ノズル面301を清掃する(ステップS5)。
【0084】
次に、密閉部206内に設置したエアノズル211により、洗浄液が付着したノズル面301に対してエアを噴射する(ステップS6)。その後、ヘッド300と密閉部材205とを所定距離離間させ、密閉部206を解除する(ステップS7)。
【0085】
ステップS7による密閉部206の解除後は、再びエアノズル211によってノズル面301に対してエアを噴射する(ステップS8)。この2回目のエア噴射を行うことで、1回目のエア噴射の際に、ノズル面301と密閉部材205との当接部分に押しやられた汚れなどの異物をノズル面301の外に吹き飛ばすことが可能になる。2回目のエア噴射が終了したならば、ロボットアームはホーム位置へ移動して洗浄動作は完了する(ステップS9)。
【0086】
図17は、別の洗浄動作の一例を示すフローチャートである。図17に示したフローチャートは、図16に示されたフローチャートに対しステップS1とステップS2の間に塗料の変更動作が追加されている点が異なる。したがって、図16に示されたフローと同じ処理もしくは動作については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0087】
図17に示されたフローの場合は、ステップS1の後に、ロボット制御部70は、塗装に使用する塗料を変更するかを判断する(ステップS10)。ステップS10において塗料を変更しない(No)と判断された場合は、ステップS2へ移り、以降は図16のフローと同様の処理ないしは動作が実行される。ステップS10において塗料を変更する(Yes)と判断された場合は、塗料の変更動作を実施する(ステップS11)。
【0088】
塗料の変更動作は、例えば、図18に示されたフローに基づいて実施される。まず、ロボット制御部70は、変更前の塗料をヘッド300から吐出させる(ステップS111)。次に、ヘッド300へ塗料を供給するチューブを洗浄するかを判断する(ステップS112)。ステップS112においてチューブを洗浄しない(No)と判断された場合は、変更後の塗料をヘッド300へ供給し、塗料の変更動作を完了する(ステップS114)。ステップS112においてチューブを洗浄する(Yes)と判断された場合は、チューブの洗浄を実施し(ステップS113)、その後、ステップS114を実施する。塗料の変更動作が完了したならば、ステップS2へ移り、以降は図16のフローと同様の処理ないしは動作が実行される。
【0089】
<変形例>
図19を用いて本実施形態の変形例について説明する。図19は、洗浄液除去構成の変形例を示す説明図である。
【0090】
本変形例は、図12(e)の工程に代わるものである。図12(e)では、エアノズル211からノズル面301に向けて洗浄エアAcを再噴射し、ノズル面301に残った洗浄液Lc等を吹き飛ばす構成としたが、本変形例では、清掃ステーション2000または塗装ブース1内の別の位置に設置した液体吸収体250を用いる点が異なる。
【0091】
つまり、図12(d)に示したように、密閉部材205に対してノズル面301を所定の距離だけ離間させた後、図19に示すように、まずヘッド300が90度回動し、ノズル面301を垂直方向下側に向かせる。続いて、ノズル面301を液体吸収体250に押圧する。これにより、液体吸収体250は、液体吸収体250の毛細管現象でノズル面301に残留した洗浄液Lcを吸い取る。なお、液体吸収体250は、洗浄液Lc等が溜まり過ぎると吸収性が悪くなるため、交換可能に構成することが好ましい。本変形例の場合は、ノズル面301に対して液体吸収体250を接触させて洗浄液Lc等の除去がなされるため、除去効果に優れ、洗浄液等の周囲への飛散を低減することができる。
【0092】
上述のように本変形例では、エアノズル211に代えて、液体を吸収可能な液体吸収体250を用いる。これにより、ノズル面301に液体吸収体250を接触させて洗浄液Lc等を除去するため、洗浄液等の周囲への飛散を低減することができる。
【0093】
<補足>
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。また、液体は金属粉などの微粒粉末を含むものであってもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0094】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0095】
第1の態様は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルと連通口を介して連通する液室と、前記ノズルを有するノズル面と、前記連通口を開閉する弁体(例えばバルブ305)とを備えたヘッドと、前記ノズル面に洗浄液を供給する洗浄ノズルを有する洗浄装置(例えば洗浄ノズル201、エアノズル211およびチューブ202、212)と、を備え、前記弁体が前記連通口を閉じている状態で前記洗浄液を前記ノズル面に供給することを特徴とするものである。
【0096】
第1の態様によれば、ヘッドへの洗浄液の浸入を低減することが可能な液体吐出システムを提供することができる。
【0097】
第2の態様は、第1の態様において、前記洗浄ノズルは、洗浄時において前記ノズルの中心から引いた法線(例えば図8(a)に示した破線)上とは異なる位置に設置されることを特徴とするものである。
【0098】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記ノズル面は、水平面に交差して設置されており、前記洗浄ノズルは、前記ノズル面の垂線に対して重力方向上側に設置されることを特徴とするものである。
【0099】
第2および第3の態様によれば、液体が洗浄ノズルに当たらなくなり、洗浄ノズルの汚損を防止できる。
【0100】
第4の態様は、第1乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記液体の種類を変更する場合、前記ノズル面の洗浄は、前記洗浄装置において前記ノズルに残った変更前の液体を排出した後に実施されることを特徴とするものである。
【0101】
第4の態様によれば、少ない洗浄回数で液体の変更処理を行うことができる。
【0102】
第5の態様は、第1乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記ノズル面に対して密閉部の形成を可能とする密閉部材を備えることを特徴とするものである。
【0103】
第5の態様によれば、洗浄装置周囲への洗浄液の飛散を防ぐことができる。
【0104】
第6の態様は、第5の態様において、前記ノズル面に対して前記密閉部が形成されている状態で、前記ノズル面に供給された前記洗浄液を除去する第1の洗浄液除去手段(例えば洗浄ノズル201)と、前記ノズル面に対して前記密閉部が形成されていない状態で、前記ノズル面に供給された前記洗浄液を除去する第2の洗浄液除去手段(例えばエアノズル211)と、を備えることを特徴とするものである。
【0105】
第7の態様は、第6の態様において、前記第2の洗浄液除去手段(例えばエアノズル211)は、前記ノズル面に向けて吹き付けられるエア(例えば洗浄エアAc)を用いることを特徴とするものである。
【0106】
第6および第7の態様によれば、ノズル面からの洗浄液の取り残しを少なくすることができる。
【0107】
第8の態様は、第6の態様において、前記第2の洗浄液除去手段は、前記液体を吸収可能な吸収体(例えば液体吸収体250)であることを特徴とするものである。
【0108】
第8の態様によれば、ノズル面に吸収体を接触させて洗浄液等を除去するため、洗浄液等の周囲への飛散を低減することができる。
【符号の説明】
【0109】
3000 塗装システム
1000 塗装ロボット
100 ヘッドユニット
300 ヘッド
301 ノズル面
302 ノズル
305 バルブ
2000 清掃ステーション
201 洗浄ノズル
211 エアノズル
205 密閉部材
206 密閉部
5000 対象物
Lc 洗浄液
Ac 洗浄エア
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特開2005-035031号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19