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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140457
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液体吐出システム
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230928BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230928BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20230928BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230928BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/01 307
B41J2/165 101
B41J2/165 401
B41J2/01 401
B05C11/10
B05B12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046306
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】田中 智也
(72)【発明者】
【氏名】青木 健人
(72)【発明者】
【氏名】陳 秉賢
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂
【テーマコード(参考)】
2C056
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA16
2C056EC07
2C056EC18
2C056EC22
2C056EC23
2C056EC31
2C056EC35
2C056EC65
2C056FA02
2C056FA15
2C056FB09
2C056HA07
2C056HA10
2C056JA03
2C056JA06
2C056JA09
2C056JB15
2C056KB03
2C056KB08
2C056KB21
4F035AA03
4F035BC02
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA23
4F041BA34
4F041BA60
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA08
4F042CC04
4F042CC08
(57)【要約】
【課題】異なる方向の複数のヘッドの洗浄において生産性を向上することが可能な液体吐出システムを提供する。
【解決手段】液体を吐出するノズルが形成された第1ノズル面と、前記第1ノズル面を有する第1のヘッドと、液体を吐出するノズルが形成され、前記第1ノズル面と異なる方向に向いて設けられた第2ノズル面と、前記第2ノズル面を有する第2のヘッドと、前記第1のヘッドおよび前記第2のヘッドを備えるヘッド保持部材と、前記第1ノズル面に対して第1密着部を形成する第1密着部材と、前記第2ノズル面に対して第2密着部を形成する第2密着部材と、前記第1密着部を形成した状態で前記第1ノズル面を洗浄する第1洗浄装置と、前記第2密着部を形成した状態で前記第2ノズル面を洗浄する第2洗浄装置と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルが形成された第1ノズル面と、
前記第1ノズル面を有する第1のヘッドと、
液体を吐出するノズルが形成され、前記第1ノズル面と異なる方向に向いて設けられた第2ノズル面と、
前記第2ノズル面を有する第2のヘッドと、
前記第1のヘッドおよび前記第2のヘッドを備えるヘッド保持部材と、
前記第1ノズル面に対して第1密着部を形成する第1密着部材と、
前記第2ノズル面に対して第2密着部を形成する第2密着部材と、
前記第1密着部を形成した状態で前記第1ノズル面を洗浄する第1洗浄装置と、
前記第2密着部を形成した状態で前記第2ノズル面を洗浄する第2洗浄装置と、
を備えることを特徴とする液体吐出システム。
【請求項2】
前記第1ノズル面と前記第1密着部材とを相対的に移動させる第1移動手段と、前記第2ノズル面と前記第2密着部材とを相対的に移動させる第2移動手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の液体吐出システム。
【請求項3】
前記第1移動手段と前記第2移動手段とは駆動源が異なることを特徴とする請求項2記載の液体吐出システム。
【請求項4】
前記第1移動手段と前記第2移動手段の駆動方向は異なることを特徴とする請求項2または3記載の液体吐出システム。
【請求項5】
前記第1移動手段および前記第2移動手段のうち、少なくとも一方の移動手段は、エアを用いた駆動機構に接続されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項6】
前記液体吐出システムは、前記ヘッド保持部材を移動させるロボットを含み、前記第1移動手段および前記第2移動手段のうち、少なくとも一方の移動手段は、前記ロボットに接続されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項7】
前記第1ノズル面は、前記第2ノズル面よりも大きい面積を有し、前記第1ノズル面に対して前記第1密着部材を押圧するために必要な力は、前記第2ノズル面に対して前記第2密着部材を押圧するために必要な力よりも大きいことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項8】
前記第1ノズル面と前記第1密着部材とで第1密着部を形成した後に、前記第2ノズル面と前記第2密着部材との第2密着部の形成動作を開始することを特徴とする請求項7記載の液体吐出システム。
【請求項9】
前記第1密着部材および前記第2密着部材のうち、少なくとも一方の密着部材を、該密着部材に押圧されるノズル面の傾きに応じて変更可能に支持することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項10】
前記第1密着部材および前記第2密着部材のうち、少なくとも一方の密着部材を、該密着部材に押圧されるノズル面の傾きに追従可能に支持することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項11】
前記第1移動手段および前記第2移動手段による移動動作の速度が可変設定可能であることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか一項に記載の液体吐出システム。
【請求項12】
前記第1移動手段および前記第2移動手段による移動動作の速度は、前記第1ノズル面および前記第2ノズル面が、前記第1密着部材および前記第2密着部材に近づくにつれて遅くなることを特徴とする請求項11記載の液体吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノズルが形成されたノズル形成面を有する流体噴射ヘッドと、ノズルと対向する領域に空間を有した状態でノズル形成面と密着するキャップ部材と、空間の内部に配置され、ノズル形成面に向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射口と、を有した構成により、流体噴射ヘッドとキャップ部材のメンテナンス処理を効率的に行えるようにした流体噴射装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では、ヘッドの密着は一方向にしか対応しておらず、異なる方向に取り付けられた複数のヘッドを洗浄することはできず、洗浄時の生産性が悪化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、液体を吐出するノズルが形成された第1ノズル面と、前記第1ノズル面を有する第1のヘッドと、液体を吐出するノズルが形成され、前記第1ノズル面と異なる方向に向いて設けられた第2ノズル面と、前記第2ノズル面を有する第2のヘッドと、前記第1のヘッドおよび前記第2のヘッドを備えるヘッド保持部材と、前記第1ノズル面に対して第1密着部を形成する第1密着部材と、前記第2ノズル面に対して第2密着部を形成する第2密着部材と、前記第1密着部を形成した状態で前記第1ノズル面を洗浄する第1洗浄装置と、前記第2密着部を形成した状態で前記第2ノズル面を洗浄する第2洗浄装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、異なる方向の複数のヘッドの洗浄において生産性を向上することが可能な液体吐出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出システムの全体概略図。
図2】ヘッドの一例を示した全体斜視図。
図3】バルブ機構の一例を示した動作説明図。
図4】ノズル汚れの様子を示す説明図。
図5】ノズル清掃の概略説明図。
図6】清掃ステーションの構成の一例を示す説明図。
図7】ヘッドユニットの一例を示した全体斜視図。
図8】密着部の形成動作の一例を示す説明図。
図9】清掃ステーションの構成の変形例を示す説明図。
図10】清掃ステーションの構成の変形例を示す説明図。
図11】塗装ロボットのハードウエアの概略構成の一例を示すブロック図。
図12】洗浄動作の一例を示すフローチャート。
図13】洗浄動作の一例を示すフローチャート。
図14】塗料の変更動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
<液体吐出システムの概略>
はじめに図1を用いて液体吐出システムの概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出システムの全体概略図である。ここに例示した液体吐出システムは、自動車の車体などを塗装する塗装システムである。
【0009】
図1において、塗装システム3000は、塗装ロボット1000と、清掃ステーション2000とを備え、塗装システム3000は、所定の塗装ブース1に設置される。塗装ロボット1000は、例えば多関節ロボットであり、ロボットアームの先端にヘッドユニット100を備える。塗装ロボット1000は、車体などの対象物5000に対してヘッドユニット100を自由に動かし、ヘッドユニット100に備えたヘッド(後述する)を、対象物5000の塗装を施す位置へ正確に配置させることができる。
【0010】
例えば、塗装ロボット1000は、ロボット本体10、多関節アームデバイス20およびヘッドユニット100を備える。ロボット本体10は、塗装ブース1の床面に固定され、多関節アームデバイス20を支持する。また、ロボット本体10は、内部に後述のロボット制御部70を有する。
【0011】
多関節アームデバイス20は、第1アーム21a、第2アーム21b、第3アーム21c、第4アーム21d、第1関節部22a、第2関節部22bおよび第3関節部22cを備える。第1アーム21aは、一端がロボット本体10に対して点線矢印r1の方向に回動(旋回)可能に支持され、他端が第1関節部22aを介して第2アーム21bの一端に接続される。第2アーム21bは、その一端が第1関節部22aを介して第1アーム21aに接続されることにより、点線矢印r2の方向に回動可能である。
【0012】
第2アーム21bの他端は、第2関節部22bを介して第3アーム21cの一端に接続される。第3アーム21cは、その一端が第2関節部22bを介して第2アーム21bに接続されることにより、点線矢印r3の方向に回動可能である。第3アーム21cの他端は、第3関節部22cを介して第4アーム21dの一端に接続される。第4アーム21dは、その一端が第3関節部22cを介して第3アーム21cに接続されることにより、点線矢印r4の方向に回動可能である。そして、第4アーム21dの他端には、ヘッドユニット100が支持されている。
【0013】
各アーム21a~21dの回動動作は、各関節部22a~22cに備えた駆動モータをロボット制御部70によって制御することで行われる。これにより、ヘッドユニット100は、対象物5000に対して垂直方向(上下方向)および水平方向(左右方向)への移動が可能となる。
【0014】
塗装位置に配置されたヘッドは、対象物5000に向けて液体の一例であるインクを吐出し、対象物5000を塗装する。塗装ロボット1000のロボットアームが届く領域内には、清掃ステーション2000が設置され、インク吐出終了時または所定時間が経過したとき、塗装ロボット1000はヘッドユニット100を清掃ステーション2000へ移す。清掃ステーション2000は、ヘッドを洗浄するための洗浄装置を備え、ヘッドユニット100に設けたヘッドに対して清掃処理を実施する。
【0015】
<ヘッドの構成>
次に、図2を用いてヘッドの概略構成を説明する。図2は、ヘッドの一例を示した全体斜視図である。
【0016】
図2において、ヘッド300はインクジェット方式を採用したヘッドである。ヘッド300は、ノズル面301、ノズル302およびハウジング303を主に備える。ノズル面301は、ハウジング303の一面に設けられ、液体を吐出するためのノズル302を備える。ノズル302は、微小な開口であって、後述のバルブ機構によって開閉が可能であり、ノズル302を開放状態にしたとき、ノズル302から液体が吐出される。ハウジング303は、ノズル302を開閉するバルブ機構等を内蔵している。
【0017】
なお、ノズル302を備えるノズル面301は、ノズル板など別部材とし、ノズル板をハウジング303に保持させる構成としてもよい。また、ノズル302の数および配列は図示した構成に限るものではない。ノズル302の数は、18個より多くてもよいし、または複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル302の配列は、複数列ではなく1列であってもよい。
【0018】
<バルブ機構の構成>
次に、図3を用いてバルブ機構の構成を説明する。図3は、バルブ機構の一例を示した動作説明図であり、図3(a)はノズルを閉じた状態、図3(b)はノズルを開いた状態を示している。
【0019】
図2に示したヘッド300のハウジング303は、図3に示すようなバルブ機構304を内蔵している。バルブ機構304は、1個のノズル302に対して1個のバルブ機構304が備わるように設けられる。
【0020】
バルブ機構304は、バルブ305、液体供給口306およびバルブ保持部材307等を備える。バルブ保持部材307は、断面中空状の空間307aを有し、ノズル302の近傍には液体供給口306を備える。液体供給口306は、外部で加圧した状態で供給される液体をバルブ保持部材307内へ受け入れ、液体をノズル面301の後方部へ供給する。バルブ305は、バルブ保持部材307に設けた空間307aに配置され、軸受308を介して軸方向へ移動可能にバルブ保持部材307によって保持される。
【0021】
上記の構成において、図3(a)に示すようにバルブ305の先端がノズル302に密着している場合は、ノズル302は閉じた状態となるため、液体供給口306から供給された液体はノズル302から吐出されない。バルブ305に電圧が印加されると、バルブ305は図3(b)に示すように矢印Aの方向に移動し、ノズル302は開いた状態となる。これにより、液体供給口306とノズル302とが連通して液体がノズル302から液滴Dとなって吐出する。なお、バルブ305は、数kHzの周波数により高速でノズル302の開閉を行っており、一滴ずつ液体を吐出することが可能である。
【0022】
ここで、図4を用いてヘッドのノズル部分の汚れについて説明する。図4は、ノズル汚れの様子を示す説明図である。
【0023】
ノズル302からの液体吐出が終了した際、ノズル302およびノズル面301には図4(a)または図4(b)に示すように増粘した液体Laが残ることがある。また、ノズル302からの液体吐出時に発生するミストが、図4(c)に示すようにノズル面301のノズル302周囲に付着し、固着物Lbとなって残ることがある。
【0024】
増粘した液体Laや固着物Lbは、ノズル302から液体を吐出する際に抵抗となり、液体の吐出曲がり(液体を狙いの位置へ正しく吐出することができない)をまねく。また、液体Laの増粘が大きい場合には、不吐出(ノズル302からの液体吐出不能)をまねくことがある。したがって、吐出品質を維持するためには、増粘した液体Laおよび固着物Lbを取り除く必要がある。
【0025】
<ノズル清掃の概略>
次に、図5を用いてノズル清掃の概略を説明する。図5は、ノズル清掃の概略説明図であり、図5(a)はヘッドと洗浄装置の概略構成図、図5(b)は図5(a)のA部の拡大図である。
【0026】
上述のようにノズル302の周囲に増粘した液体Laや固着物Lbが存在すると吐出曲がりや不吐出の原因となる。そこで、本実施形態では、加圧された洗浄液Lcを洗浄ノズル201によってノズル面301に吹き付けることでノズル面301およびノズル302の清掃を行う。ノズル302の清掃を行う際は、図5(b)に示すようにバルブ305の先端をノズル302に密着させ、ノズル302を閉じた状態で洗浄液Lcを洗浄ノズル201から吹き付ける。これにより、ノズル面301およびノズル302に付着した液体Laや固着物Lb等の異物を洗い流すことができ、ヘッド300の吐出品質を保つことが可能となる。
【0027】
<清掃ステーションの概略構成>
次に、図6を用いて清掃ステーションの概略構成を説明する。図6は、清掃ステーションの構成の一例を示す説明図である。
【0028】
清掃ステーション2000は、上述のように塗装ブース1に設置され、塗装ロボット1000によってヘッドユニット100が清掃ステーション2000へ移された場合、清掃ステーション2000はヘッド300の清掃処理を実施する。清掃ステーション2000は、洗浄ノズル201と、洗浄ノズル201に接続したチューブ202と、一端側に洗浄ノズル201を保持したノズル保持部203と、ノズル保持部203の他端側を保持する本体筐体204とを備える。
【0029】
本体筐体204の一部には、ヘッド300のノズル面301の面積よりも小さい面積の開口部が形成されており、その開口部の周囲(縁の部分)には密着部材205が設けられている。密着部材205は、ヘッド300に対して清掃処理を実施する際、ノズル面301が密着部材205に押圧されることで、ヘッド300と清掃ステーション2000との間で密着された空間(以下、密着部)206を形成する。
【0030】
上記構成において、ヘッド300の清掃処理を実施する際は、バルブ305の先端をノズル302に密着させてノズル302を閉じると共に、ヘッド300と清掃ステーション2000との間で密着部206を形成した状態にする。この状態で、加圧された洗浄液Lcがチューブ202によって洗浄ノズル201に送られ、洗浄ノズル201は洗浄液Lcをノズル面301に向けて噴射する。
【0031】
ノズル面301に洗浄液Lcを噴射する際に、密着部材205とノズル面301が密着していない状態であると、洗浄液Lc等がノズル面301と密着部材205との隙間から清掃ステーション2000の外部に飛散してしまう。清掃ステーション2000の外部に飛散した洗浄液Lc等は、塗装ブース1を汚したり、対象物5000に降りかかり、対象物5000の品質悪化につながる。また、ヘッド300や塗装ロボット1000の電装部に洗浄液Lcが降りかかると、故障の原因にもなる。したがって、清掃処理時にはノズル面301と密着部材205とを確実に密着させる必要がある。
【0032】
<ヘッドユニットの構成>
次に、図7を用いてヘッドユニットの概略構成を説明する。図7は、ヘッドユニットの一例を示した全体斜視図である。
【0033】
インクジェット方式のヘッドを用いて塗装や印刷が施される対象物の形態は、用紙、板、布などの平面媒体に限らず、自動車の車体、建物の壁など対象物の形態は多様化しており、複雑な形状への液体吐出が必要とされている。
【0034】
本実施形態では、複雑な形状への液体吐出に対応するため、対象物の形状に合わせて使い分けが可能なようにヘッドユニット100に複数のヘッド300A、300Bを備えている。ヘッド300Aとヘッド300Bは、それぞれのノズル面301A、301Bの向きを異ならせてヘッド保持部材101に設けられている。本実施形態ではノズル面301Aとノズル面301Bとを90度ずらして設置している。
【0035】
上記構成のヘッドユニット100を塗装ロボット1000に装着し、対象物5000に対してヘッド300A、300Bを使い分けながらヘッドユニット100を移動させることで、複雑な形状への塗装が可能になる。なお、ヘッド300A、300Bにおいて、ノズル302A、302Bの数および配列等は図示した構成に限るものではない。ここで、ヘッド300Aは「第1のヘッド」の一例であり、ヘッド300Bは「第2のヘッド」の一例である。また、ヘッド300Aのノズル面301Aは「第1ノズル面」の一例であり、ヘッド300Bのノズル面301Bは「第2ノズル面」の一例である。
【0036】
<ハードウエア構成>
次に、図11を用いて、実施形態に係る塗装ロボットのハードウエアの概略構成について説明する。なお、図11に示されているハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加または削除されてもよい。図11は、塗装ロボット1000のハードウエアの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0037】
塗装ロボット1000は、ロボット本体10の内部にロボット制御部70を有する。なお、ロボット制御部70は、ロボット本体10の外部に設けられてもよく、または塗装ロボット1000とは別の装置として設けられていてもよい。
【0038】
ロボット制御部70は、CPU(Central Processing Unit)701、ROM(Read Only Memory)702、RAM(Random Access Memory)703、I/F(Interface)704を備える。
【0039】
CPU701は、塗装ロボット1000全体の制御を行う。CPU701は、ROM702または記憶部705等に格納された、プログラムもしくはデータをRAM703上に読み出し、処理を実行することで、塗装ロボット1000の各機能を実現する演算装置である。
【0040】
ROM702は、電源を切ってもプログラムまたはデータを保持することができる不揮発性のメモリである。RAM703は、CPU701のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリである。I/F704は、文字、数値、各種指示等を各種外部装置等との間で入出力するためのインターフェースである。I/F704は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部706に対するカーソル、メニュー、ウィンドウ、文字または画像等の各種情報の表示を制御する。
記憶部705は、プログラム等の各種データを記憶する。
【0041】
表示部706は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字または画像等の各種情報を表示する。操作パネル707は、文字、数値、各種指示等の入力、各種指示の選択、もしくは実行、処理対象の選択、またはカーソルの移動等を行う入力手段の一種である。
【0042】
さらに、ロボット制御部70には、第1ヘッド300A、第2ヘッド300B、清掃ステーション駆動部708、および関節部駆動モータ709などが接続されている。第1ヘッド300Aおよび第2ヘッド300Bは、CPU701からの命令に基づき、対象物5000に対する液体吐出動作を実行する。清掃ステーション駆動部708は、ヘッド300Aのノズル面301Aを洗浄する際、CPU701からの命令に基づき、清掃ステーション2000の密着部材205Aに対するヘッド300Aの移動を実行する。関節部駆動モータ709は、CPU701からの命令に基づき、塗装ロボット1000の多関節アームデバイス20の各関節部22a~22cを駆動し、各アーム21a~21dの回動動作を実行する。
【0043】
ところで、ヘッドユニット100のように、複数のヘッドのノズル面が異なる方向を向いている場合、図6に示した構成だけでは複数のノズル面301A、301Bに対して同時に密着部206を形成することができない。そのため、図6に示した構成の場合は、例えばヘッド300Aに対して密着および洗浄を実施した後、ヘッド300Bに対して密着および洗浄を実施する必要があり、ヘッドの清掃処理に時間がかかるという課題が生じてしまう。本発明は、このような向きの異なるノズル面に対して同時に清掃処理を実施可能にしたものであり、以下にその詳細を説明する。
【0044】
<実施形態の動作>
図8を用いてヘッドユニットに設けた2つのヘッドに対して密着部を形成する際の動作について説明する。図8は、密着部の形成動作の一例を示す説明図である。
【0045】
本実施形態では、ノズル面301Aとノズル面301Bとが異なる方向を向いた2つのヘッド300A、300Bに対して密着部を形成し、ノズル面301Aとノズル面301Bの同時洗浄を可能にする。これにより清掃処理の生産性を向上することができる。
【0046】
図8において、ヘッドユニット100は塗装ロボット1000のロボットアームの先端に装着されている。図8(a)に示すように、清掃ステーション2000の本体筐体204には、ヘッド300Aのノズル面301Aを密着するための密着部材205Aが設けられている。さらに、本体筐体204には、ヘッド300Bのノズル面301Bに対して密着部材205Bを進退移動(図では左右方向に移動)させるための動力シリンダ207が設けられている。なお、図8(a)に示された状態は、ヘッド300Aおよびヘッド300B共に密着されていない状態である。
【0047】
この状態から、まず図8(b)に示すように、ヘッド300Aを密着部材205A側(矢印aの方向)へ移動させ、ノズル面301Aを密着部材205Aに押圧する。これにより、ヘッド300Aと清掃ステーション2000との間で密着部206Aが形成された状態となる。
【0048】
また、洗浄ノズル201Aは、密着部206Aを形成した状態においてノズル面301Aに対し洗浄液の噴射が可能なように配置される。なお、ヘッド300Aの密着部材205A側への移動は、塗装ロボット1000によって行われる。また、ノズル面301Aの密着部材205Aに対する押圧は、ヘッドユニット100を保持した塗装ロボット1000の力を利用する。図8(b)に示された状態は、ヘッド300Aは密着され、ヘッド300Bが密着されていない状態である。
【0049】
ヘッド300Aを密着したならば、塗装ロボット1000は、ヘッド300Aを密着した状態で動作を終了し、その場で停止する。次に、動力シリンダ207にシリンダを押し出す方向のエアが入力され、図8(c)に示すように、シリンダが密着部材205Bをヘッド300B側(矢印bの方向)へ移動させ、密着部材205Bをノズル面301Bに押圧する。これにより、ヘッド300Bと清掃ステーション2000との間で密着部206Bが形成された状態となる。
【0050】
本実施形態において、密着部206Bは、ノズル面301Bと、動力シリンダ207のシリンダに取り付けた洗浄ノズル保持部材208Bとを密着部材205Bによって密着することで形成される。また、洗浄ノズル201Bは、密着部206Bを形成した状態においてノズル面301Bに対し洗浄液の噴射が可能なように、洗浄ノズル保持部材208B内に配置される。
【0051】
ここで、密着部206Aは「第1密着部」の一例であり、密着部材205Aは「第1密着部材」の一例である。また、密着部206Bは「第2密着部」の一例であり、密着部材205Bは「第2密着部材」の一例である。また、洗浄ノズル201Aは「第1洗浄装置」の一例であり、洗浄ノズル201Bは「第2洗浄装置」の一例である。さらに、塗装ロボット1000は「第1移動手段」の一例であり、動力シリンダ207は「第2移動手段」の一例である。
【0052】
このように、ノズル面301Aと密着部材205Aとの押圧を塗装ロボット1000の駆動によって行い、ノズル面301Bと密着部材205Bとの押圧を動力シリンダ207の駆動によって行うことで、向きの異なるノズル面301A、301Bに対して同時に密着部206A、206Bの形成が可能になる。その結果、それぞれの密着部206A、206B内に設置した洗浄ノズル201A、201Bから同時に洗浄液を噴射でき、清掃処理の生産性を向上することが可能となる。
【0053】
ヘッド300A、300Bの清掃が終了すると、密着部形成時の手順とは逆の手順で密着を解除する。動力シリンダ207においては、シリンダを押し出す方向のエアの入力を終了し、シリンダを引き入れる方向のエアが入力され、ヘッド300Bの密着が解除される。ヘッド300Bの密着が解除された後に、塗装ロボット1000が図8(b)の矢印aと反対の方向に動き、ヘッド300Aの密着が解除される。
【0054】
上述のように本実施形態は、液体を吐出するノズル302Aが形成されたノズル面301Aと、ノズル面301Aを有するヘッド300Aと、液体を吐出するノズル302Bが形成され、ノズル面301Aと異なる方向に向いて設けられたノズル面301Bと、ノズル面301Bを有するヘッド300Bと、ヘッド300Aおよびヘッド300Bを備えるヘッド保持部材101と、ノズル面301Aに対して密着部206Aを形成する密着部材205Aと、ノズル面301Bに対して密着部206Bを形成する密着部材205Bと、密着部206Aを形成した状態でノズル面301Aを洗浄する洗浄ノズル201Aと、密着部206Bを形成した状態でノズル面301Bを洗浄する洗浄ノズル201Bとを備える。
【0055】
これにより、異なる方向の複数のヘッド300A、300Bの洗浄において生産性を向上することが可能な液体吐出システムを提供することができる。ここで、例えば、塗装ロボットを2台用意し、ロボットアームにヘッド300Aを備えた塗装ロボットと、ロボットアームにヘッド300Bを備えた塗装ロボットとを用いて対象物5000を塗装する構成も考えられる。しかし、その場合は、塗装ロボット固有の精度誤差等により、対象物5000との位置精度が悪くなる。また、塗装ロボットの台数増加に伴い、生産コストが高くなり、可搬重量も増大するため塗装ロボットの設置コスト等も高くなるという課題が生じる。本実施形態のように1つのロボットアームに複数のヘッドを備える構成は、上記のような課題に対しても有利となる。
【0056】
上記のように、向きの異なるノズル面に対して密着状態を作り出すための移動手段を別々に備えることで、清掃処理の生産性を向上することができる。なお、本実施形態において、ノズル面301Bと密着部材205Bとを押圧させる移動手段の駆動源には動力シリンダ207を用いたが、駆動源はこれに限るものではない。例えばモータ駆動により密着部材205Bをノズル面301B側へ移動させてもよい。しかし、インクや塗料、洗浄液が溶剤を含む液体であり、塗装ブース1が防爆エリアとして定められている場合は、電気機器の使用が防爆規格に抵触する可能性がある。したがって、駆動源としては、動力シリンダの中でもエアを利用するエアシリンダを採用することが、防爆の観点で有利であると考えられる。
【0057】
また、本実施形態において、ノズル面301Aと密着部材205Aとを押圧させる移動手段の駆動源には塗装ロボット1000を用いたが、駆動源はこれに限るものではない。向きの異なるノズル面301A、301Bを同時に洗浄するには、それぞれのヘッドで別々の駆動源を備えていればよいため、2つのヘッドとも動力シリンダを使用してもよい。ただし、駆動源を両方とも動力シリンダにする場合は、清掃ステーション2000に動力シリンダの取付部を2箇所設ける必要が生じる。したがって、一方の駆動源は上述のように塗装ロボット1000とするのが清掃ステーション2000の構成の簡素化を図る上で有利となり、清掃ステーション2000の省スペース化、低コスト化を実現することが可能になる。
【0058】
上述のように本実施形態は、ノズル面301Aと密着部材205Aとを相対的に移動させる塗装ロボット1000と、ノズル面301Bと密着部材205Bとを相対的に移動させる動力シリンダ207とを備える。
【0059】
また、上述のように、塗装ロボット1000と動力シリンダ207とは駆動源が異なる。
【0060】
また、上述のように、塗装ロボット1000と動力シリンダ207の駆動方向は異なる。
【0061】
これらにより、清掃ステーション2000の省スペース化、低コスト化を実現することができる。
【0062】
また、上述のように、塗装ロボット1000および動力シリンダ207のうち、少なくとも一方は、エアを用いた駆動機構に接続されている。
【0063】
これにより、溶剤を含む液体等、多種の液体に対応可能とすることができる。
【0064】
また、図7に示したように、ヘッド300Aとヘッド300Bとでは、ヘッド300Aの方を大きいサイズにしている。ノズル面の面積が大きいほど、密着部材に密着させる際により大きな力が必要となる。そこで、本実施形態では、ノズル面の面積が大きいヘッド300Aを密着部材205Aに押圧する移動手段の駆動源を塗装ロボット1000としている。密着に必要な力が大きい方の駆動源をロボットにすることで、清掃ステーション2000に設ける移動手段の駆動源に必要となる押圧力は小さい力で足りるようになる。そして、清掃ステーション2000に設ける移動手段の駆動源を小さくすることができるので、清掃ステーション2000の省スペース化および低コスト化を実現することが可能となる。
【0065】
上述のように本実施形態は、塗装システム3000は、ヘッド保持部材101を移動させる塗装ロボット1000を含み、ノズル面301Aと密着部材205Aとを相対的に移動させる第1移動手段、およびノズル面301Bと密着部材205Bとを相対的に移動させる第2移動手段のうち、少なくとも一方の移動手段は、塗装ロボット1000に接続されている。
【0066】
また、上述のように、ノズル面301Aは、ノズル面301Bよりも大きい面積を有し、ノズル面301Aに対して密着部材205Aを押圧するために必要な力は、ノズル面301Bに対して密着部材205Bを押圧するために必要な力よりも大きい。
【0067】
これにより、密着部材に密着させる際に大きな力を必要とする方のヘッド(本実施形態ではノズル面の面積が大きいヘッド300A)を、塗装ロボット1000の大きな力で密着部材205Aに押圧し、確実な密着を行うことができる。
【0068】
また、2つのヘッド300A、300Bを密着部材205A、205Bに押し付ける順番は、ノズル面の面積が大きいヘッド300Aを先に密着部材205Aに押し付けている。密着に必要な力が大きい方のヘッド300Aを先に密着することで、2つのヘッド300A、300Bの密着時の安定性が高くなる。
【0069】
密着に必要な力が小さいヘッド300Bを先に密着し、その後、密着に大きな力を必要とするヘッド300Aを密着した場合、ヘッド300Aを密着した際に、先に密着したヘッド300Bがヘッド300Aを密着する力に負けて位置ずれを起こすことがある。この位置ずれによりヘッド300A、300Bと密着部材205A、205Bとが密着状態でなくなった場合、洗浄液が周囲に飛散する可能性がある。したがって、密着の順番としては、密着に必要な力が大きい方のヘッドを先に密着することが望ましい。
【0070】
上述のように本実施形態は、ノズル面301Aと密着部材205Aとで密着部206Aを形成した後に、ノズル面301Bと密着部材205Bとの密着部206Bの形成動作を開始する。
【0071】
これにより、密着部を形成する際の動作において、複数のノズル面に対して密着部材が位置ずれを起こすことなく、密着部を確実に形成することができる。
【0072】
以上のように、塗装システム3000のヘッドユニット100は、ヘッド300Aの第1ノズル面301Aおよびヘッド300Bの第2ノズル面301Bを保持するヘッド保持部材101を備える。また、塗装システム3000は、ヘッドユニット100のヘッド保持部材101を第1密着部材205Aおよび第2密着部材205Bに対して移動させる移動手段としてのロボットアームを備える。
【0073】
ロボットアームは、ヘッド保持部材101に保持されたヘッド300Aの第1ノズル面301Aおよびヘッド300Bの第2ノズル面301Bを一体で移動させる。ロボットアームは、車体などの対象物5000に対してヘッドユニット100を動かし、ヘッドユニット100に備えたヘッド300Aおよびヘッド300Bを、対象物5000の塗装を施す位置へ正確に配置させる機能を兼ねる。
【0074】
清掃ステーション2000には、ロボットアームによりヘッド保持部材101を移動させたとき、第1ノズル面301Aが第1密着部材205Aに対向し且つ第2ノズル面301Bが第2密着部材205Bに対向するように、第1密着部材205Aおよび第2密着部材205Bが設けられている。
【0075】
これらのロボットアームおよび清掃ステーション2000の構成により、ヘッド300Aの第1ノズル面301Aとヘッド300Bの第2ノズル面301Bを別々に移動させることなく、ヘッド保持部材101の一つの移動動作だけで、異なる方向を向く2つのヘッドをそれぞれの密着部材205A、205Bに対向する位置へ移動させることができる。第1ノズル面301Aと第2ノズル面301Bを清掃ステーション2000へ移動させた後、第1ノズル面301Aおよび第2ノズル面301Bの密着を効率的に行える。また、第1ノズル面301Aを洗浄する第1洗浄装置および第2ノズル面301Bを洗浄する第2洗浄装置を備えることで、2つのノズル面を同時に洗浄できる。
【0076】
ここで、図12乃至図14を用いて、本実施形態における洗浄動作のフローの一例を説明する。図12は洗浄動作の一例を示すフローチャートである。
【0077】
ヘッド300A,300Bに対する洗浄動作が開始されると、ロボットアームは塗装動作のホーム位置から洗浄動作のホーム位置へ移動する(ステップS1)。ロボットアームが洗浄ホーム位置に到達したならば、ロボット制御部70は、ヘッド300A,300Bのバルブ305が閉じている(ノズル302A,302Bが閉じている)かを判断する(ステップS2)。ステップS2においてバルブ305が閉じていない(No)と判断された場合は、バルブ305を閉じ、ノズル302A,302Bを閉じた状態にする(ステップS3)。
【0078】
バルブ305が閉じた状態となったならば、ヘッド300A,300Bと密着部材205A、205Bとを当接させ、ヘッド300A,300Bと清掃ステーション2000との間に密着部206A,206Bを形成する(ステップS4)。密着部206A,206Bが形成されたならば、密着部206A、206B内に設置した洗浄ノズル201A、201Bは洗浄液を吐出(噴射)し、ノズル面301A、301Bを清掃する(ステップS5)。
【0079】
密着部206A、206Bには、洗浄ノズル201A、201Bと別にエア噴射が可能なエアノズルを設けてもよく、その場合は、洗浄液が付着したノズル面301A、301Bに対してエアノズルはエアを噴射する(ステップS6)。次に、ヘッド300A,300Bと密着部材205A、205Bとを所定距離離間させ、密着部206A,206Bを解除する(ステップS7)。
【0080】
ステップS7による密着部206A,206Bの解除後は、再びエアノズルによってノズル面301A、301Bに対してエアを噴射する(ステップS8)。この2回目のエア噴射を行うことで、1回目のエア噴射の際に、ノズル面301A、301Bと密着部材205A、205Bとの当接部分に押しやられた汚れなどの異物をノズル面301A、301Bの外に吹き飛ばすことが可能になる。2回目のエア噴射が終了したならば、ロボットアームはホーム位置へ移動して洗浄動作は完了する(ステップS9)。
【0081】
図13は、別の洗浄動作の一例を示すフローチャートである。図13に示したフローチャートは、図12に示されたフローチャートに対しステップS1とステップS2の間に塗料の変更動作が追加されている点が異なる。したがって、図12に示されたフローと同じ処理もしくは動作については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0082】
図13に示されたフローの場合は、ステップS1の後に、ロボット制御部70は、塗装に使用する塗料を変更するかを判断する(ステップS10)。ステップS10において塗料を変更しない(No)と判断された場合は、ステップS2へ移り、以降は図12のフローと同様の処理ないしは動作が実行される。ステップS10において塗料を変更する(Yes)と判断された場合は、塗料の変更動作を実施する(ステップS11)。
【0083】
塗料の変更動作は、例えば、図14に示されたフローに基づいて実施される。まず、ロボット制御部70は、変更前の塗料をヘッド300A,300Bから吐出させる(ステップS111)。次に、ヘッド300A,300Bへ塗料を供給するチューブを洗浄するかを判断する(ステップS112)。ステップS112においてチューブを洗浄しない(No)と判断された場合は、変更後の塗料をヘッド300A,300Bへ供給し、塗料の変更動作を完了する(ステップS114)。ステップS112においてチューブを洗浄する(Yes)と判断された場合は、チューブの洗浄を実施し(ステップS113)、その後、ステップS114を実施する。塗料の変更動作が完了したならば、ステップS2へ移り、以降は図12のフローと同様の処理ないしは動作が実行される。
【0084】
<変形例>
次に、図9を用いて清掃ステーションの変形例を説明する。図9は、清掃ステーションの構成の変形例を示す説明図である。
【0085】
図6に示した構成では密着部材205を本体筐体204に設けていたのに対し、本変形例では密着部材205が弾性部材210を介して本体筐体204に設けられている点が異なる。
【0086】
ノズル面301を確実に密着するためには、ノズル面301を密着部材205に平行に押し付ける必要がある。しかし、塗装ロボット1000の移動誤差などによりノズル面301が密着部材205に対して傾いてしまう可能性がある。また、上述のようにヘッド300Aは塗装ロボット1000の駆動により密着するが、ヘッド300Bは清掃ステーション2000に取り付けられた動力シリンダ207の駆動により密着するため、動力シリンダ207の取り付け誤差もノズル面301が密着部材205に対して傾く要因の一つとなる。
【0087】
このようなノズル面301に対する密着部材205の傾きを解消するため、本変形例のように密着部材205を、弾性部材210を介して設置するとよい。密着部材205は、密着部材保持部材209に保持されており、密着部材205を保持した密着部材保持部材209にはバネなどの弾性部材210の一端が掛けられている。また、弾性部材210の他端は、本体筐体204に掛けられている。
【0088】
上記の構成により、図9(b)のようにノズル面301が本体筐体204に対して傾いた状態であっても、ノズル面301と密着部材205とを押圧する段階で弾性部材210が傾きを吸収し、密着部材205の姿勢はノズル面301に対して平行な状態に保たれ、密着性の向上が可能となる。
【0089】
本変形例は、塗装ロボット1000により密着する場合、および動力シリンダ207により密着する場合のどちらの場合にも適用が可能であり、密着部材205に弾性力を保持させることにより、ヘッド300の姿勢が若干傾いている場合であっても密着性を向上することが可能となる。なお、弾性部材210の他端は、本体筐体204に直接掛けるのではなく、本体筐体204とは別に設けたベース板等の別部材に掛ける構成であってもよい。
【0090】
なお、図9に示した変形例の弾性部材210は、図10に示すようにヘッド300側に弾性部材310として設ける構成であってもよい。図10に示した変形例では、密着部材205に対するノズル面301の傾きを解消するため、ヘッド300に、密着部材205に当接する部材309を、弾性部材310を介して設置する。なお、密着部材205は本体筐体204に固定されている。
【0091】
上記の構成により、図10(b)のようにノズル面301が本体筐体204に対して傾いた状態であっても、ノズル面301と密着部材205とを押圧する段階で弾性部材310が傾きを吸収し、部材309の姿勢は密着部材205に対して平行な状態に保たれ、密着性の向上が可能となる。
【0092】
上述のように本実施形態は、密着部材205Aおよび密着部材205Bのうち、少なくとも一方の密着部材を、当該密着部材に押圧されるノズル面301の傾きに応じて変更可能に支持する。
【0093】
また、上述のように、密着部材205Aおよび密着部材205Bのうち、少なくとも一方の密着部材を、当該密着部材に押圧されるノズル面301の傾きに追従可能に支持する。
【0094】
これにより、ノズル面301が本体筐体204に対して傾いた状態であっても、密着部材205の姿勢をノズル面301に対して平行な状態に保持し、密着性を高めることができる。
【0095】
また、本変形例の構成において、塗装ロボット1000あるいは動力シリンダ207が速い速度のまま等速で駆動し、ヘッド300を密着部材205に押圧して急停止した場合、弾性部材210の作用によって密着部材205に振動が発生することがある。密着部材205が振動すると、ノズル面301と密着部材205との密着力が弱くなり、この状態で清掃処理を実施した場合には清掃ステーション2000の外に洗浄液が飛散する可能性がある。また、ノズル面301に対して密着部材205が適切な位置で止まらず、ノズル面301を適切に洗浄できなくなる可能性がある。
【0096】
そこで、塗装ロボット1000または動力シリンダ207の押圧動作の速度を可変設定できるようにしてもよい。例えば、ノズル面301が密着部材205に近づくにつれて、塗装ロボット1000または動力シリンダ207の押圧動作の速度を徐々に遅くすることで、弾性部材210による密着部材205の振動を抑制することが可能となる。塗装ロボット1000や動力シリンダ207を密着部材205に近づくにつれて徐々に遅くし、弾性部材210が振動しない速度でノズル面301と密着部材205とを押圧しヘッド300を停止させることで、ノズル面301と密着部材205を適切な位置で確実に密着することができる。
【0097】
上述のように本実施形態は、塗装ロボット1000および動力シリンダ207による移動動作の速度が可変設定可能である。
【0098】
また、上述のように、塗装ロボット1000および動力シリンダ207による移動動作の速度は、ノズル面301Aおよびノズル面301Bが、密着部材205Aおよび密着部材205Bに近づくにつれて遅くなる。
【0099】
これにより、弾性部材210による密着部材205の振動が抑制され、ノズル面301A、301Bと密着部材205A、205Bを適切な位置で確実に密着することができる。
【0100】
<補足>
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。また、液体は金属粉などの微粒粉末を含むものであってもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0101】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0102】
第1の態様は、液体を吐出するノズルが形成された第1ノズル面(例えばノズル面301A)と、前記第1ノズル面を有する第1のヘッド(例えばヘッド300A)と、液体を吐出するノズルが形成され、前記第1ノズル面と異なる方向に向いて設けられた第2ノズル面(例えばノズル面301B)と、前記第2ノズル面を有する第2のヘッド(例えばヘッド300B)と、前記第1のヘッドおよび前記第2のヘッドを備えるヘッド保持部材(例えばヘッド保持部材101)と、前記第1ノズル面に対して第1密着部(例えば密着部206A)を形成する第1密着部材(例えば密着部材205A)と、前記第2ノズル面に対して第2密着部(例えば密着部206B)を形成する第2密着部材(例えば密着部材205B)と、前記第1密着部を形成した状態で前記第1ノズル面を洗浄する第1洗浄装置と(例えば洗浄ノズル201A)、前記第2密着部を形成した状態で前記第2ノズル面を洗浄する第2洗浄装置(例えば洗浄ノズル201B)と、を備えることを特徴とするものである。
【0103】
第1の態様によれば、異なる方向の複数のヘッドの洗浄において生産性を向上することが可能な液体吐出システムを提供することができる。
【0104】
第2の態様は、第1の態様において、前記第1ノズル面(例えばノズル面301A)と前記第1密着部材(例えば密着部材205A)とを相対的に移動させる第1移動手段(例えば塗装ロボット1000)と、前記第2ノズル面(例えばノズル面301B)と前記第2密着部材(例えば密着部材205B)とを相対的に移動させる第2移動手段(例えば動力シリンダ207)と、を備えることを特徴とするものである。
【0105】
第3の態様は、第2の態様において、前記第1移動手段(例えば塗装ロボット1000)と前記第2移動手段(例えば動力シリンダ207)とは駆動源が異なることを特徴とするものである。
【0106】
第4の態様は、第2の態様または第3の態様において、前記第1移動手段(例えば塗装ロボット1000)と前記第2移動手段(例えば動力シリンダ207)の駆動方向は異なることを特徴とするものである。
【0107】
第2乃至第4の態様によれば、清掃ステーションの省スペース化、低コスト化を実現することができる。
【0108】
第5の態様は、第2乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記第1移動手段(例えば塗装ロボット1000)および前記第2移動手段(例えば動力シリンダ207)のうち、少なくとも一方の移動手段は、エアを用いた駆動機構に接続されていることを特徴とするものである。
【0109】
第5の態様によれば、溶剤を含む液体等、多種の液体に対応可能とすることができる。
【0110】
第6の態様は、第2乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記液体吐出システム(例えば塗装システム3000)は、前記ヘッド保持部材(例えばヘッド保持部材101)を移動させるロボット(例えば塗装ロボット1000)を含み、前記第1移動手段および前記第2移動手段のうち、少なくとも一方の移動段は、前記ロボットに接続されていることを特徴とするものである。
【0111】
第7の態様は、第2乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記第1ノズル面(例えばノズル面301A)は、前記第2ノズル面(例えばノズル面301B)よりも大きい面積を有し、前記第1ノズル面に対して前記第1密着部材(例えば密着部材205A)を押圧するために必要な力は、前記第2ノズル面に対して前記第2密着部材(例えば密着部材205B)を押圧するために必要な力よりも大きいことを特徴とするものである。
【0112】
第6および第7の態様によれば、密着部材に密着させる際に大きな力を必要とするヘッドに対して確実な密着を行うことができる。
【0113】
第8の態様は、第7の態様において、前記第1ノズル面(例えばノズル面301A)と前記第1密着部材(例えば密着部材205A)とで第1密着部(例えば密着部206A)を形成した後に、前記第2ノズル面(例えばノズル面301B)と前記第2密着部材(例えば密着部材205B)との第2密着部(例えば密着部206B)の形成動作を開始することを特徴とするものである。
【0114】
第8の態様によれば、密着部を形成する際の動作において、複数のノズル面に対して密着部材が位置ずれを起こすことなく、密着部を確実に形成することができる。
【0115】
第9の態様は、第1乃至第8の態様のいずれかにおいて、前記第1密着部材(例えば密着部材205A)および前記第2密着部材(例えば密着部材205B)のうち、少なくとも一方の密着部材を、該密着部材に押圧されるノズル面の傾きに応じて変更可能に支持することを特徴とするものである。
【0116】
第10の態様は、第1乃至第8の態様のいずれかにおいて、前記第1密着部材(例えば密着部材205A)および前記第2密着部材(例えば密着部材205B)のうち、少なくとも一方の密着部材を、該密着部材に押圧されるノズル面の傾きに追従可能に支持することを特徴とするものである。
【0117】
第9および第10の態様によれば、ノズル面が本体筐体に対して傾いた状態であっても、密着部材の姿勢をノズル面に対して平行な状態に保持し、密着性を高めることができる。
【0118】
第11の態様は、第2乃至第10の態様のいずれかにおいて、前記第1移動手段(例えば塗装ロボット1000)および前記第2移動段(例えば動力シリンダ207)による移動動作の速度が可変設定可能であることを特徴とするものである。
【0119】
第12の態様は、第11の態様において、前記第1移動段(例えば塗装ロボット1000)および前記第2移動段(例えば動力シリンダ207)による移動動作の速度は、前記第1ノズル面(例えばノズル面301A)および前記第2ノズル面(例えばノズル面301B)が、前記第1密着部材(例えば密着部材205A)および前記第2密着部材(例えば密着部材205B)に近づくにつれて遅くなることを特徴とするものである。
【0120】
第11および第12の態様によれば、押圧動作時の密着部材の振動が抑制され、ノズル面と密着部材を適切な位置で確実に密着することができる。
【符号の説明】
【0121】
3000 塗装システム
1000 塗装ロボット
100 ヘッドユニット
300 ヘッド
301、301A、301B ノズル面
302、302A、302B ノズル
2000 清掃ステーション
201、201A、201B 洗浄ノズル
205、205A、205B 密着部材
206、206A、206B 密着部
5000 対象物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】
【特許文献1】特開2012-144003号公報
図1
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