(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140528
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230928BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/14 501
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046413
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】坂東 佳憲
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA07
2C056HA22
2C056HA46
2C057AF21
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】媒体搬送またはヘッド走査による気流の影響を低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向とがなす平面上に複数のノズルを形成したノズル板を備える液体吐出ヘッドであって、前記第2の方向を、前記複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、前記複数のノズルによって構成される複数のノズル列は、前記第1の方向に対して傾斜をなして前記ノズル板に形成され、前記複数のノズル列において、ノズル数が同一である、隣接する複数のノズル列の一端部を結ぶ仮想直線を第1の仮想直線と定義したとき、前記ノズル板の前記第2の方向の一方の端部において、前記ノズル列の先頭位置が前記第1の仮想直線から離れた前記ノズル列の他端部側に配置される第1の部位を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向とがなす平面上に複数のノズルを形成したノズル板を備える液体吐出ヘッドであって、
前記第2の方向を、前記複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、前記複数のノズルによって構成される複数のノズル列は、前記第1の方向に対して傾斜をなして前記ノズル板に形成され、
前記複数のノズル列において、ノズル数が同一である、隣接する複数のノズル列の一端部を結ぶ仮想直線を第1の仮想直線と定義したとき、前記ノズル板の前記第2の方向の一方の端部において、前記ノズル列の先頭位置が前記第1の仮想直線から離れた前記ノズル列の他端部側に配置される第1の部位を有する液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記複数のノズル列において、ノズル数が同一である、隣接する複数のノズル列の他端部を結ぶ仮想直線を第2の仮想直線と定義したとき、前記ノズル板の前記第2の方向の他方の端部において、前記ノズル列の後尾位置が前記第2の仮想直線を越えて外側に配置される第2の部位を有する液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2において、前記第2の部位を、前記ノズル板の対角に設けた液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記複数のノズルは、2回対称が成立する配列によって前記ノズル板に形成される液体吐出ヘッド。
【請求項5】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向とがなす平面上に複数のノズルを形成したノズル板を備える液体吐出ヘッドであって、
前記第2の方向を、前記複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、前記複数のノズルによって構成される複数のノズル列は、前記第1の方向に対して傾斜をなして前記ノズル板に形成され、
前記ノズル板には、
前記第2の方向の両端部のうち少なくとも一方の端部において、前記第2の方向の中央から前記一方の端部にかけて前記ノズル列をなすノズルの数が、一度増加してから減少するように、前記ノズルが配置される液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5において、前記ノズル板には、前記第2の方向の他方の端部において、前記第2の方向の中央から前記他方の端部にかけて前記ノズル列をなすノズルの数が減少するように、前記ノズルが配置される液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項5において、前記ノズル板には、前記第2の方向の他方の端部において、前記第2の方向の中央から前記他方の端部にかけて前記ノズル列をなすノズルの数が、一度増加してから減少するように、前記ノズルが配置される液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項7において、前記ノズルの数が一度増加してから減少する部分を、前記ノズル板の対角に配置する液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを、前記第2の方向に複数隣接させてなる液体吐出ユニット。
【請求項10】
請求項9において、前記隣接させた液体吐出ヘッドは、一方の液体吐出ヘッドにおいてノズルの数が減少する部分と、他方の液体吐出ヘッドにおいてノズルの数が減少する部分とが、前記第1の方向において重なるように配置される液体吐出ユニット。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド、あるいは請求項9または10に記載の液体吐出ユニットを備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体を吐出する複数のノズルを配置したヘッドモジュールを複数つなぎあわせて構成した液滴吐出ヘッドが開示されている。
【0003】
特許文献2には、平行四辺形の外形形状を有したアクチュエータユニットを複数配置して構成したインクジェットヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-173264号公報
【特許文献2】特開2007-160566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような構成では、複数のヘッドモジュールのつなぎ部分と、ノズルが形成されるノズル領域との間に大きなスペースを設けることが難しく、ヘッドの堅牢性が低いという課題があった。
【0006】
特許文献2のような構成では、複数のアクチュエータユニットのつなぎ部分と、アクチュエータユニット内でノズルが形成されるノズル領域との間に大きなスペースを設けることが難しく、ヘッドの堅牢性が低いという課題があった。
【0007】
なお、特許文献1,2には、用紙搬送やヘッド走査で生じる気流が、ヘッドから吐出された液体に及ぼす影響についての示唆はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向とがなす平面上に複数のノズルを形成したノズル板を備える液体吐出ヘッドであって、前記第2の方向を、前記複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、前記複数のノズルによって構成される複数のノズル列は、前記第1の方向に対して傾斜をなして前記ノズル板に形成され、前記複数のノズル列において、ノズル数が同一である、隣接する複数のノズル列の一端部を結ぶ仮想直線を第1の仮想直線と定義したとき、前記ノズル板の前記第2の方向の一方の端部において、前記ノズル列の先頭位置が前記第1の仮想直線から離れた前記ノズル列の他端部側に配置される第1の部位を有する液体吐出ヘッドである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、媒体搬送またはヘッド走査による気流の影響を低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】比較例のヘッドを複数並べた状態を示す説明図。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係るヘッドの説明図。
【
図10】第1の実施形態におけるノズル板長手方向のノズル列内のノズル数の推移を示す説明図。
【
図11】第1の実施形態においてヘッドを複数並べた状態を示す説明図。
【
図12】第1の実施形態のヘッドつなぎ部分を示す説明図。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係るヘッドの説明図。
【
図14】第2の実施形態におけるノズル板長手方向のノズル列内のノズル数の推移を示す説明図。
【
図15】第2の実施形態においてヘッドを複数並べた状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<液体吐出装置の概略>
はじめに
図1を用いて液体吐出装置の概略を説明する。
図1は、液体吐出装置の一例を示す概略構成図である。例示した液体吐出装置は、インクジェット方式により用紙にインクを吐出し、用紙に画像を形成する印刷装置である。
【0013】
印刷装置500は、給紙部501、搬送部503、印刷部505、乾燥部507および排紙部509を備える。給紙部501は、ロール状に巻かれた用紙510を保持する保持ローラ511を備え、長尺に連続した用紙510を印刷部505側へ供給する。搬送部503は、給紙部501から供給された用紙510に対して、例えば、張力制御や蛇行補正を行い、用紙510の張力や搬送位置の状態を整えて、用紙510を印刷部505へ搬送する。
【0014】
印刷部505は、ヘッドユニット555を搭載したインクジェット記録部550と、インクジェット記録部550に対向する搬送ガイド部材559とを備える。印刷部505は、搬送ガイド部材559上を移動する用紙510に対してヘッドユニット555からインクを吐出させることにより、用紙510に画像を形成する。
【0015】
なお、インクジェット記録部550に搭載するヘッドユニット555の数は、印刷装置500で用いるインクの色の種類や数に応じて適宜増減してよい。また、ヘッドユニット555で用いる液体は、インクに限らず、用紙510の表面を改質するための処理液、または用紙510に形成した画像を保護するためのコート剤などを含む構成でもよい。
【0016】
乾燥部507は、画像を載せた用紙510を加熱し、用紙510および用紙510に形成された画像を乾かす。排紙部509は、用紙510を巻き取る巻取ローラ591を備え、乾燥部507から送り出された用紙510を巻き取る。
【0017】
以降、上述の印刷装置500の構成に基づいて説明するが、本発明に係る液体吐出装置は印刷装置に限られるものではない。例えば、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)に適用することも可能である。また、電子回路のレジストパターンを形成するために、レジストパターン形成用液を吐出させる電子素子生産装置などへの適用も可能である。
【0018】
また、媒体は、用紙510に限られるものではない。紙以外に、例えば、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど種々材質に適用することが可能である。媒体の形態についても、長尺物に限られるものではなく、所定サイズに裁断された媒体でもよい。
【0019】
また、印刷装置500は、定位置のインクジェット記録部550に対して用紙510を移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるライン型の装置構成を例示したが、ライン型に限られるものではない。インクジェット記録部550と用紙510とは相対的に移動する構成であればよい。したがって、例えば、間欠送りされる用紙に対してインクジェット記録部を用紙送り方向と直交する方向へ移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるシリアル型の装置構成でもよい。あるいは、用紙載置テーブルに保持された用紙に対してインクジェット記録部をXY方向へ移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるフラットベッド型の装置構成でもよい。
【0020】
また、液体を吐出する装置で用いられる吐出物は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。また、液体は金属粉などの微粉末を含むものでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0021】
<ヘッドユニットの構成>
次に、
図2を用いてヘッドユニットの構成を説明する。
図2は、ヘッドユニットの一例を示す説明図であり、
図1のインクジェット記録部550に図示された8つのヘッドユニット555のうちの1つを、搬送ガイド部材559側から見た図である。
【0022】
ヘッドユニット555は、媒体送り方向と直交する方向に隣接して並ぶ複数のヘッド1a,1b,1c,1dを備える。以降、これらヘッド1a~1dを総称する場合は「ヘッド1」と称する。なお、本実施形態において「媒体送り方向と直交する方向」は、後述の「第2の方向」(複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向)とおおよそ一致する。また、「媒体送り方向」は、後述の「第1の方向」(第2の方向に直交する方向)とおおよそ一致する。
【0023】
ヘッド1a~1dは、液体吐出部101a~101d、ノズル板保持部材102a~102dおよびマウント部材103a~103dを備える。以降、液体吐出部101a~101dを総称する場合は「液体吐出部101」、ノズル板保持部材102a~102dを総称する場合は「ノズル板保持部材102」、マウント部材103a~103dを総称する場合は「マウント部材103」と称する。
【0024】
ヘッド1の液体吐出部101は、外形形状が概略平行四辺形をしたノズル板10を備え、ノズル板10は、液体を吐出するノズル11が形成されるノズル面12を有する。なお、
図2ではノズル11の図示を一部省略しているが、実際はノズル面12の空白部分にもノズル11が形成される。ノズル板10は、ノズル板保持部材102によって保持される。ノズル板保持部材102は、その一部にマウント部材103を備え、マウント部材103をインクジェット記録部550に設けた支持部材550aに取り付けることで、ヘッドユニット555はインクジェット記録部550に固定される。
【0025】
<ヘッドの構成>
次に、
図3乃至
図5を用いてヘッドの構成を説明する。
図3は、ヘッドの一例を示す概略分解図であり、
図2のヘッド1を構成する液体吐出部101のみを表した図である。
図4は、ヘッドの流路部分の一例を示す説明図、
図5は、ヘッドの流路部分の一例を示す断面斜視図である。なお、ノズル板10は、
図2に示したように概略平行四辺形の外形形状を成すが、ここでは長方形に簡略化した図を用いて説明する。
【0026】
ヘッド1の液体吐出部101は、ノズル板10、流路板(個別流路部材)20、振動板部材30、共通流路部材50、ダンパ部材60、フレーム部材80および駆動回路104を実装した基板(フレキシブル配線基板)105などを備える。
【0027】
ノズル板10は、液体(本実施形態ではインク)を吐出する複数のノズル11を備え、複数のノズル11は、ノズル板10の短手方向(ノズル板短手方向)およびこれと直交するノズル板長手方向に二次元状に並んで配置されている。
【0028】
個別流路部材20は、複数のノズル11に各々連通する複数の圧力室(個別液室)21と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別供給流路22と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別回収流路23とを形成している。なお、1つの圧力室21およびこれに通じる個別供給流路22と個別回収流路23を併せて個別流路25と称する。
【0029】
振動板部材30は、圧力室21の変形が可能な壁面である振動板31を形成し、振動板31には圧電素子40が一体に設けられている。また、振動板部材30には、個別供給流路22に通じる供給側開口32と、個別回収流路23に通じる回収側開口33とが形成されている。
【0030】
圧電素子40は、振動板31を変形させて圧力室21内の液体を加圧する圧力発生手段である。
【0031】
なお、個別流路部材20と振動板部材30とは、部材として別部材であることに限定されるものではない。例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を使用して個別流路部材20および振動板部材30を同一部材で一体に形成することも可能である。つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を個別流路部材20とし、シリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜とで振動板31を形成することができる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は個別流路部材20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0032】
共通流路部材50は、2以上の個別供給流路22に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の個別回収流路23に通じる複数の共通回収流路支流53とを、媒体送り方向と直交方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材50には、個別供給流路22の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、個別回収流路23の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。また、共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1または複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1または複数の共通回収流路本流57を形成している。
【0033】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面(対向)する供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面(対向)する回収側ダンパ63を有している。ここで、共通供給流路支流52および共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62または回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜または無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
【0034】
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面には、流路中を流れる液体に対して内壁面を保護するための保護膜(接液膜とも言う)が形成されている。例えば、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面はSi基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0035】
フレーム部材80は、その上部に供給ポート81と排出ポート82を備える。供給ポート81は、共通供給流路本流56に液体を供給し、排出ポート82は、共通回収流路本流57より排出される液体を排出する。
【0036】
<比較例>
次に、
図6および
図7を用いて比較例の構成について説明する。
図6は、比較例のヘッドを示す説明図、
図7は、比較例のヘッドを複数並べた状態を示す説明図である。
【0037】
比較例として示されたヘッド1Rは、ノズル板短手方向に対して角度θ傾斜した外形(稜線)を有し、ヘッド1Rの液体吐出部101Rおよびノズル板10Rもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、液体吐出部101Rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板10Rを有し、ノズル板10Rには複数のノズル11Rが規則的に二次元状に配列されている。ノズル11Rの配列は、例えば、N個のノズル11Rによって1列のノズル列11Nが構成され、このノズル列11Nを、上述の稜線と平行に、且つノズル板短手方向と直交するノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
【0038】
上記構成のヘッド1Rは、
図7に示すように複数のヘッド1Ra,1Rbをノズル板長手方向に1列に並べることができる。しかしながら、比較例ではノズル列11Nを一律N個のノズル11Rで構成している。そのため、ノズル列11N同士の左右方向(ノズル板長手方向)の間隔が等しくなるようにヘッド1R同士を並べる際に、ヘッド1Raとヘッド1Rbとのつなぎ部分に十分な間隔を取ることが難しい。
【0039】
つまり、ヘッド1Raの右端に位置するノズル列と、ヘッド1Rbの左端に位置するノズル列との間隔は、ノズル板長手方向における記録解像度の点で、他のノズル列同士がなす間隔と同じでなければならない。そのため、ヘッドのつなぎ部分から最も近い位置に設けられるノズル列は、ヘッドの縁から僅かな距離に位置することとなる。その結果、ノズル板長手方向の端部のノズル列からノズル板10Rの稜線(縁)までの距離が小さくならざるを得ず、外部からの衝撃でノズルや、ノズルにつながる圧力室や流路の破損をまねきやすいという堅牢性の課題がある。
【0040】
ここで、ノズル板短手方向は「第1の方向」の一例であり、ノズル板長手方向は「第2の方向」の一例である。なお、ノズル板短手方向とは、平行四辺形をしたノズル板10Rの短辺の方向を指すものではなく、ノズル板を長方形と仮定し、その場合の長方形の短辺の方向をノズル板短手方向と定義する。同様に、ノズル板長手方向とは、平行四辺形をしたノズル板10Rの長辺の方向を指すものではなく、ノズル板を長方形と仮定し、その場合の長方形の長辺の方向をノズル板長手方向と定義する。なお、この定義は、以降に説明する本発明の各実施形態においても同様とする。
【0041】
<その他の課題>
図8は、上述の堅牢性とは別の課題(吐出滴の曲がり)を説明する説明図である。
【0042】
図8は、3つのヘッドをノズル板長手方向に隣接させて並べた場合のノズル配置を示しており、四角(◇)部分は第1ヘッドのノズル、黒丸(●)部分は第2ヘッドのノズル、横線(-)部分は第3ヘッドのノズルとする。上記のノズル配置を用いてノズルから液体を吐出させた際、吐出された液体(吐出滴)の中でも特に風上側や端部に位置するノズルからの吐出滴が曲がりやすくなり、吐出滴を狙いの位置に着弾させることができない場合がある。例えば、
図8に示すようなヘッドつなぎ部分の風上側に位置した領域A1,A2からの吐出滴は、曲がりやすくなる。なお、ここでの風(気流)は、ノズルからの液体吐出動作に伴い発生する気流、あるいはヘッドの下方を用紙などの媒体が通過することにより発生する気流などが影響して生成されると考えられる。
【0043】
なお、本実施形態においては、
図1に示した印刷装置500の場合、媒体(用紙)送り方向の上流側が風上となる。また、別方式として、例えば、間欠送りされる用紙に対してインクジェット記録部(ヘッド)を用紙送り方向と直交する方向へ移動(ヘッド走査)させ、用紙に画像形成を行う、いわゆるシリアル方式がある。シリアル方式の場合は、インクジェット記録部の移動方向下流側が風を受ける(風の当たりが強くなる)。
【0044】
そこで、本発明は、風下側に位置するノズルが吐出する液体の方が、風上側に位置するノズルが吐出する液体よりも曲がりにくいことに着目し、領域A1,A2のノズルを、隣接するヘッドの風下側となる領域A1´,A2´に配置する。これにより、吐出滴に対する気流の影響が低減され、吐出滴の曲がりに起因する画質の悪化を低減する。以下、具体的な実施形態について説明する。
【0045】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、
図9乃至
図12を用いて説明する。
図9は、本発明の第1の実施形態に係るヘッドの説明図、
図10は、同実施形態におけるノズル板長手方向のノズル列内のノズル数の推移を示す説明図である。また、
図11は、同実施形態においてヘッドを複数並べた状態を示す説明図、
図12は、同実施形態のヘッドつなぎ部分を示す説明図である。なお、ヘッド1の基本構成は、
図2で説明したとおりであるため、同一要素には同一符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0046】
図9において、ヘッド1は、ノズル板短手方向(第1の方向)に対して角度θ1傾斜した2本の平行な稜線と、ノズル板長手方向(第2の方向)と平行な2本の稜線とからなる平行四辺形状の外形をしている。ヘッド1に設けられるノズル板10も、ノズル板短手方向に対して角度θ1傾斜した2本の平行な稜線(ノズル板短辺e1)と、ノズル板長手方向と平行な2本の稜線(ノズル板長辺f1)とからなる平行四辺形状の外形をしている。
【0047】
ノズル板10は、液体を吐出する複数のノズル11が配置されたノズル面12を有する。複数のノズル11は、ノズル板短手方向に対して角度θ2傾斜した方向(直線L1上)に配置した複数のノズル11によりノズル列11Nを形成する。このノズル列11Nを、ノズル板長手方向(第2の方向)に複数並べることにより、ノズル板10には、複数のノズル11を規則的に二次元状に配置したノズル面12が形成される。
【0048】
また、ノズル面12を形成する複数のノズル列11Nにおいて、それぞれの先頭のノズル同士を結ぶ直線を仮想直線Laとする。つまり、仮想直線Laは、複数のノズル列11Nのうちノズル数が同一(本例では8個のノズルで列をなしているノズル列)の、隣接する複数のノズル列11Nの一端部を結ぶ。なお、仮想直線Laは、図示のようにノズル板長手方向に対し角度θ3傾斜した直線である。
【0049】
上述のように仮想直線Laを引いたとき、ノズル板長手方向の一方の端部(
図9では左側の端部)には、ノズル列11Nの先頭位置が仮想直線Laから離れたノズル列の他端部側に配置される部位C1が設けられる。つまり、部位C1付近では、中央から端部へ向かうに従いノズル列11Nをなすノズル11の数は、8個→6個→5個→3個→2個→1個と減少するように配置される。
【0050】
また、ノズル面12を形成する複数のノズル列11Nにおいて、それぞれの後尾のノズル同士を結ぶ直線を仮想直線Lbとする。つまり、仮想直線Lbは、複数のノズル列11Nのうちノズル数が同一(本例では8個のノズルで列をなしているノズル列)の、隣接する複数のノズル列11Nの他端部を結ぶ。なお、仮想直線Lbは、仮想直線Laと平行な直線であり、仮想直線Laと同じくノズル板長手方向に対し角度θ3傾斜した直線である。
【0051】
上述のように仮想直線Lbを引いたとき、ノズル板長手方向の他方の端部(
図9では右側の端部)には、ノズル列11Nの後尾位置が仮想直線Lbを越えて外側に配置される部位C2が設けられる。つまり、部位C2付近では、中央から端部へ向かうに従いノズル列11Nをなすノズル11の数は、8個→9個→9個→8個→7個→6個→4個→3個→1個と推移し、一度9個に増加してから減少するように配置される。上述のノズル列内のノズル数の推移をグラフで表したものが
図10である。
【0052】
ここで、仮想直線Laは「第1の仮想直線」の一例であり、仮想直線Lbは「第2の仮想直線」の一例である。また、部位C1は「第1の部位」の一例であり、部位C2は「第2の部位」の一例である。
【0053】
上述のように、第1の実施形態は、ノズル板短手方向(第1の方向)とこれに直交するノズル板長手方向(第2の方向)とがなす平面上に複数のノズル11を形成したノズル板10を備えるヘッド1であって、ノズル板長手方向を、複数のノズル11が記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、複数のノズル11によって構成される複数のノズル列11Nは、ノズル板短手方向に対して傾斜をなしてノズル板10に形成される。さらに、複数のノズル列11Nにおいて、ノズル数が同一である、隣接する複数のノズル列の一端部を結ぶ仮想直線を仮想直線Laと定義したとき、ノズル板10のノズル板長手方向の一方の端部において、ノズル列11Nの先頭位置が仮想直線Laから離れたノズル列の他端部側に配置される部位C1を有する。
【0054】
また、上述のように、複数のノズル列11Nにおいて、ノズル数が同一である、隣接する複数のノズル列の他端部を結ぶ仮想直線を仮想直線Lbと定義したとき、ノズル板10のノズル板長手方向の他方の端部において、ノズル列11Nの後尾位置が仮想直線Lbを越えて外側に配置される部位C2を有する。
【0055】
これにより、気流の影響を受けやすい部位にノズル11を配置しないため、吐出滴が気流によって曲がることに起因する画質の悪化を低減することができる。
【0056】
上記構成のヘッド1は、
図11に示すように複数のヘッドをノズル板長手方向に隣接させて並べ、任意の長さでアレイ状に構成することも可能である。なお、
図11においては、ヘッド1を構成する部材のうち、ノズル板保持部材102およびマウント部材103の図示は省略している。この場合のヘッド同士のつなぎ部分(破線部C3)について、
図12を用いて説明する。
【0057】
図12は、一例としてヘッド1aとヘッド1bとのつなぎ部分を示している。ヘッド1aの一端部では、ノズル列11Nをなすノズル11の数は、ノズル列11N-47では8個、ノズル列11N-48,11N-49では9個、ノズル列11N-50では8個、ノズル列11N-51では7個、ノズル列11N-52では6個、ノズル列11N-53では4個、ノズル列11N-54では3個、ノズル列11N-55では1個であり、中央側に位置するノズル列11N-47から端部のノズル列11N-55へ向かった場合、一度9個に増加してから減少する。
【0058】
一方、ヘッド1bの他端部では、ノズル列11Nをなすノズル11の数は、ノズル列11N-7,11N-6では8個、ノズル列11N-5では6個、ノズル列11N-4では5個、ノズル列11N-3では3個、ノズル列11N-2では2個、ノズル列11N-1では1個であり、中央側に位置するノズル列11N-7から端部のノズル列11N-1へ向かうに従い減少する。
【0059】
本実施形態において、ノズル11の配列は、ヘッド1aとヘッド1bとをノズル板長手方向に並べた際に、ヘッド1aの最端のノズル列11N-55が、ヘッド1bのノズル列11N-4とノズル列11N-5の延長上の間に位置するように設定している。
【0060】
上記構成において、ノズル11を8個単位で駆動して、液体吐出動作が行われる場合、例えば、ノズル列11N-47までは1列に並んだ8個のノズル11を用いて液体吐出が行われる。次のノズル列11N-48では、9個のノズル11のうち、図において上側8個のノズル11を用いて液体吐出が行われる。ノズル列11N-48の9個目のノズル11は、次のノズル列11N-49の上側7個のノズル11とともに動作する。
【0061】
上記の要領で、8個単位でノズル11を順に送って行く。つまり、順送りは、ノズル板長手方向の水平な線に対して各ノズル11の中心から垂線を下げたとき、2つの線の交点が前に位置するノズルから順に行われる。そして、ノズル列11N-50の7個目および8個目(図において下2つ)のノズル11は、隣のヘッド1bのノズル列11N-1をなす1個のノズル11、およびヘッド1aのノズル列11N-51をなす5個のノズル11とともに動作する。
【0062】
その後も上記の要領で、ヘッド1bのノズル列11N-5までノズル11を順送りして行き、足りない分を次のノズル列のノズルで補完する。ヘッド1bのノズル列11N-6以降は、1列に並んだ8個のノズル11を用いて液体吐出が行われ、ヘッド1bの端部(ノズル列11N-48)では、再び上記の順送りが行われる。
【0063】
なお、本実施形態では、8個単位で液体吐出動作が実施される構成に基づき説明したが、駆動単位はこれに限るものではなく、8個未満でもよいし、9個以上でもよい。また、ノズル板長手方向におけるノズル列内のノズル数の推移についても、説明に用いた数値は一例であり、これに限るものではなく、例えば、記録解像度等の仕様に応じて適宜変更されてよい。また、本実施形態では、ヘッド1aのノズル列11N-55が、ヘッド1bのノズル列11N-4とノズル列11N-5の延長上の間に位置するように配置した構成としたが、ノズル11の配列はこれに限るものではない。このように、ヘッドを複数つなげてヘッドユニットとしてモジュール化することで、気流の影響を防ぎつつ、記録解像度も所望の数値を担保できる。
【0064】
なお、第1の実施形態は、ライン型インクジェット装置のようにヘッド走査がなく搬送方向が変化しない(気流の方向が変化しない)装置の場合に特に有効であり、部位C1が搬送方向上流側に位置するようにヘッドを搭載すると効果的である。
【0065】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、
図13乃至
図15を用いて説明する。
図13は、本発明の第2の実施形態に係るヘッドの説明図、
図14は、同実施形態におけるノズル板長手方向のノズル列内のノズル数の推移を示す説明図、
図15は、同実施形態においてヘッドを複数並べた状態を示す説明図である。ヘッド1の基本構成は、第1の実施形態と同じであるため、同一要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0066】
第2の実施形態は、ノズル板10のノズル板長手方向の端部におけるノズル数の推移が第1の実施形態と異なる。つまり、第2の実施形態において、ノズル板長手方向の一方の端部(
図13では右側の端部)では、中央から端部へ向かうに従いノズル列11Nをなすノズル11の数は、8個→9個→8個→7個→5個→4個→2個→1個と推移し、一度9個に増加してから減少するように配置される。
【0067】
さらに、ノズル板長手方向のもう一方の端部(
図13では左側の端部)でも同様に、中央から端部へ向かうに従いノズル列11Nをなすノズル11の数は、8個→9個→8個→7個→5個→4個→2個→1個と推移し、一度9個に増加してから減少するように配置される。上述のノズル列内のノズル数の推移をグラフで表したものが
図14である。
【0068】
図14に示されるように、ノズル板長手方向の一方の端部と他方の端部とで、ノズル数が左右対称に推移する場合は、ノズルの数が一度増加してから減少する部分(増減部)を、ノズル板10の対角に配置してもよい。つまり、
図13に示すようにノズル数の増減部を、概ねノズル板10の対角線L2上に配置する。なお、この場合、上記増減部はノズル板10の角から離して配置するなど、気流の影響を受けにくい位置に配置する。
【0069】
また、ノズル数の増減部をノズル板10の対角に配置する場合は、複数のノズル11を回転対称に配列してもよい。
図13においては、180度回転させたときにノズル11の位置が重なる、いわゆる2回対称が成立するようにノズル11を配列した構成を例示している。
【0070】
上述のように、本実施形態は、第1の実施形態において部位C2に相当する部位を、ノズル板10の対角(概ね対角線L2上)に設ける。
【0071】
また、上述のように、複数のノズル11は、2回対称が成立する配列によってノズル板10に形成される。
【0072】
これにより、例えば、双方向印刷のようにヘッドと媒体とを相対的に往復移動させながら液体吐出動作が実施される場合にも、往路と復路との液体吐出品質の差を低減することができる。
【0073】
第2の実施形態のヘッド1においても、
図15に示すように複数のヘッドをノズル板長手方向に隣接させて並べ、任意の長さでアレイ状に構成することが可能である。なお、
図15においては、ヘッド1を構成する部材のうち、ヘッド保持部材102およびマウント部材103の図示は省略している。また、ヘッド同士のつなぎ部分における液体吐出動作は、第1の実施形態(
図12)と同様の考え方に基づいて、ノズルの順送りが行われる。
【0074】
隣接させたヘッド1a,1b,1cは、一方のヘッドにおいてノズルの数が減少する部分と、他方のヘッドにおいてノズルの数が減少する部分とが、第1の方向において重なる(向かい合う)ように配置される。これにより、各ヘッドのつなぎ部分においても記録解像度を保つことができる。
【0075】
なお、第2の実施形態は、シリアル型インクジェット装置のようにヘッド走査が行われる装置の場合に、ノズル配列を対称構造とすることで、気流の方向が変化する場合であっても効果が得られる。
【0076】
<適用例>
<<適用例1>>
本発明の液体吐出ヘッドは、立体造形物を形成するために用いられる液体も吐出可能である。立体造形物を形成するために用いられる液体として例えば、治療の手技トレーニングに用いられる三次元立体構造体を形成するための、ハイドロゲル形成材料が挙げられる。ハイドロゲル形成材料は、水および重合性モノマーを含有し、鉱物、有機溶媒を含有することが好ましく、さらに必要に応じて、重合開始剤、その他の成分を含有する。重合性モノマーは、不飽和炭素-炭素結合を1つ以上有する化合物であり、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合する重合性モノマーが好ましい。
【0077】
重合性モノマーとしては、例えば、単官能モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。多官能モノマーとしては、例えば、2官能モノマー、3官能モノマー、4官能以上のモノマーなどが挙げられる。
【0078】
鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハイドロゲルが水を主成分とすることから、粘土鉱物が好ましく、さらに、水中で一次結晶のレベルで均一に分散可能な層状粘土鉱物が好ましく、水膨潤性層状粘土鉱物がより好ましい。
【0079】
有機溶媒としては、例えば、水溶性有機溶媒などが挙げられる。水溶性有機溶媒の水溶性とは、有機溶媒が水に対して30質量%以上溶解可能であることを意味する。水溶性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の炭素数1以上4以下のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルコールエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0080】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保湿性の点から、多価アルコール、グリセリン、プロピレングリコールが好ましく、グリセリン、プロピレングリコールがより好ましい。
【0081】
重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。光重合開始剤としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることができる。なお、ハイドロゲル形成材料を用いて立体造形する場合には、UV(Ultra Violet)照射機構を設け、吐出したハイドロゲル形成材料にUV照射することで硬化して形成する。
【0082】
(ハイドロゲル形成材料具体例)
減圧脱気を30分間実施したイオン交換水120.0質量部を撹拌させながら、層状粘土鉱物として[Mg5.34Li0.66Si8O20(OH)4]Na-0.66の組成を有する合成ヘクトライト(ラポナイトXLG、RockWood社製)12.0質量部を少しずつ添加して撹拌した。さらに、エチドロン酸(東京化成工業株式会社製)0.6質量部を加えて撹拌して分散液を作製した。得られた分散液に、重合性モノマーとして、活性アルミナのカラムを通過させ重合禁止剤を除去したアクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製)44.0質量部、メチレンビスアクリルアミド(東京化成工業株式会社製)0.4質量部を添加した。さらに、グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)20.0質量、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)0.8質量部混合し、ハイドロゲル形成用材料を得た。
【0083】
<<適用例2>>
本発明の液体吐出ヘッドは、細胞からなる組織体を人工的に形成するために、細胞を任意に配置するためのインクジェット法にも使用可能であり、細胞懸濁液(細胞インク)を吐出可能である。細胞懸濁液(細胞インク)は、少なくとも細胞および細胞乾燥抑制剤を含有する。さらに、細胞懸濁液(細胞インク)は、細胞を分散させる分散培を含有し、必要に応じて、分散剤、pH調整剤などのその他の添加材料を含有してもよい。
【0084】
細胞は、その種類等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分類学的に、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
真核細胞としては、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、動物細胞が好ましく、細胞が細胞集合体を形成する場合は、細胞と細胞とが互いに接着し、物理化学的な処理を行わなければ単離しない程度の細胞接着性を有する接着性細胞がより好ましい。
【0086】
細胞乾燥抑制剤としては、細胞の表面を覆い、細胞の乾燥を抑制する働きを有するものであり、例えば、多価アルコール類、ゲル状多糖類、および細胞外基質から選ばれる蛋白質などが挙げられる。
【0087】
分散培としては、細胞培養用の培地や緩衝液が好ましい。培地は、細胞組織体の形成と維持に必要な成分を含み、乾燥を防ぎ浸透圧などの外部環境を整える溶液であり、培地として知られているものであれば適宜選択して使用することができる。細胞を常時培地液内に浸しておく必要がない場合には、細胞懸濁液から培地は適宜除去することができる。緩衝液は、細胞や目的に合わせpHを調整するためのものであり、公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0088】
(細胞懸濁液(細胞インク)具体例)
緑色蛍光染料(商品名:Cell Tracker Green、Life Technologies社製)を10mmol/L(mM)の濃度でジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と称す)へ溶解させ、無血清ダルベッコ変法イーグル培地(Life Technologies社製)と混合し、濃度10μmol/L(μM)の緑色蛍光染料含有無血清培地を調製した。次に、培養したNIH/3T3細胞(Clone 5611、JCRB Cell Bank)のディッシュに緑色蛍光染料含有無血清培地を5mL添加し、インキュベーター(KM-CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5体積%CO2環境))内で30分間培養した。その後、アスピレータを用いて、上澄みを除去した。ディッシュにリン酸緩衝生理食塩水(Life Technologies社製、以下、PBS(-)とも称する)を5mL加え、アスピレータでPBS(-)を吸引除去し、表面を洗浄した。PBS(-)による洗浄作業を2回繰り返した後、0.05質量%トリプシン-0.05質量%EDTA溶液(life technologies社製)をディッシュ1枚あたり2mL加えた。
【0089】
次に、インキュベーター内にて5分間加温し、ディッシュから細胞を剥離した後、10質量%ウシ胎児血清(以下、「FBS」とも称す)および1質量%抗生物質(Antibiotic-Antimycotic Mixed Stock Solution(100x)、ナカライテスク株式会社製)を含むD-MEMを4mL加えた。次に、トリプシンを失活させた細胞懸濁液を50mL遠沈管1本に移し、遠心分離(商品名:H-19FM、KOKUSAN社製、1,200rpm、5分間、5℃)を行い、アスピレータを用いて上清を除去した。
【0090】
除去後、遠沈管に10質量%FBSおよび1質量%抗生物質を含むD-MEMを2mL添加し、穏やかにピペッティングを行い、細胞を分散させ細胞懸濁液を得た。この細胞懸濁液から10μLをエッペンドルフチューブに取り出し、培地を70μL添加後、10μLを別のエッペンドルフチューブに取り出し、0.4質量%トリパンブルー染色液10μLを加えてピペッティングを行った。染色した細胞懸濁液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せた。
【0091】
商品名:Countess Automated Cell Counter(インビトロジェン社製)を用いて細胞数を計測して細胞数を求めることで、細胞数を計測した細胞懸濁液を得た。分散培としてPBS(-)を用いた。PBS(-)へ、細胞乾燥抑制剤としてグリセリン(分子生物学用グレード、和光純薬工業株式会社製)を質量比0.5質量%となるように溶解させ、NIH/3T3細胞懸濁液を6×106cell/mLとなるように分散培へ分散させて、細胞インクを得た。
【0092】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1(1a,1b,1c,1d) ヘッド(液体吐出ヘッドの一例)
101(101a,101b,101c,101d) 液体吐出部
102(102a,102b,102c,102d) ヘッド保持部材
103(103a,103b,103c,103d) マウント部材
10 ノズル板
11 ノズル
11N ノズル列
12 ノズル面
555 ヘッドユニット
La 仮想直線(第1の仮想直線の一例)
Lb 仮想直線(第2の仮想直線の一例)
C1 部位(第1の部位の一例)
C2 部位(第2の部位の一例)