(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140533
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230928BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/16 401
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046418
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】荒木 理美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇裕
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA07
2C056HA22
2C057AF34
2C057AG14
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】小型化が可能な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】
第1の方向と第2の方向とがなす平面上に複数のノズルを形成したノズル板と、前記ノズル板を保持するノズル板保持部材と、を備える液体吐出ヘッドであって、第2の方向を、前記複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、前記複数のノズルによって構成される複数のノズル列は、第2の方向に対して傾斜をなして前記ノズル板に形成され、前記ノズル板は、第2の方向に対して傾斜をなすノズル板短辺と、前記ノズル板短辺と交わるノズル板長辺を有し、ノズル板短辺とノズル板長辺とがなす鋭角を角度θ1とし、前記角度θ1に隣接し、前記ノズル板保持部材のノズル板長辺に沿うノズル板保持部材長辺と、ノズル板保持部材長辺と交わるノズル板保持部材短辺とがなす内角を角度θ2としたとき、角度θ1と角度θ2の和が180度未満となる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向とがなす平面上に複数のノズルを形成したノズル板と、
前記ノズル板の前記第1の方向に位置し、前記ノズル板を保持するノズル板保持部材と、
を備える液体吐出ヘッドであって、
前記第2の方向を、前記複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、
前記複数のノズルによって構成される複数のノズル列は、前記第2の方向に対して傾斜をなして前記ノズル板に形成され、
前記ノズル板は、前記第2の方向に対して傾斜をなすノズル板短辺と、前記ノズル板短辺と交わるノズル板長辺を有し、
前記ノズル板短辺と前記ノズル板長辺とがなす鋭角を角度θ1とし、
前記角度θ1に隣接し、前記ノズル板保持部材の前記ノズル板長辺に沿うノズル板保持部材長辺と、前記ノズル板保持部材長辺と交わるノズル板保持部材短辺とがなす内角を角度θ2としたとき、前記角度θ1と前記角度θ2の和が180度未満となる
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記ノズル列は、前記第1の方向に対して傾斜をなして前記ノズル板に形成される液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ノズル板には、
前記第2の方向において前記ノズル板の中央寄りの領域に、N個のノズルからなるノズル列が配置され、
前記第2の方向において前記中央寄りの領域よりも第1の端部側である前記ノズル板の第1の端部に、前記N個よりも少ないM個のノズルからなるノズル列が配置され、
前記第2の方向において前記中央寄りの領域よりも前記第1の端部側とは反対側の第2の端部側である前記ノズル板の第2の端部に、(N-M)個のノズルからなるノズル列が配置される、
液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記ノズル板の表面は、液体吐出方向において前記ノズル板保持部材の表面よりも内側に位置する液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記ノズル板は外形形状が平行四辺形であり、前記角度θ1は、前記平行四辺形が対角で有する2つの鋭角のうち、少なくとも一方の鋭角である液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記ノズル板短辺と前記ノズル板長辺とがなす鈍角を角度θ6とし、前記角度θ6を形成する前記ノズル板短辺の仮想延長直線と、前記仮想延長直線と交わる前記ノズル板保持部材短辺とがなす角度を角度θ3としたとき、前記角度θ1、前記角度θ2および前記角度θ3の和が180度となる液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記ノズル板短辺と前記ノズル板長辺とがなす鈍角を角度θ6とし、前記角度θ6と隣接し前記ノズル板保持部材短辺と前記ノズル板保持部材長辺とがなす角を角度θ7としたとき、角度θ6と角度θ7の和が180度となる液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを、前記第2の方向に複数隣接させてなる液体吐出ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド、または請求項8に記載の液体吐出ユニットを備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液体を吐出する複数のノズルを配置したヘッドモジュールを複数つなぎあわせて構成した液滴吐出ヘッドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、複数のヘッドモジュールのつなぎ部分におけるノズル密度を確保するために、ノズル板が平行四辺形状に形成されている。その結果、複数のヘッドモジュールの並び方向の長さは長くなり、液体吐出ヘッドの実装において大きな設置スペースが必要になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向とがなす平面上に複数のノズルを形成したノズル板と、前記ノズル板の前記第1の方向に位置し、前記ノズル板を保持するノズル板保持部材と、を備える液体吐出ヘッドであって、前記第2の方向を、前記複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、前記複数のノズルによって構成される複数のノズル列は、前記第2の方向に対して傾斜をなして前記ノズル板に形成され、前記ノズル板は、前記第2の方向に対して傾斜をなすノズル板短辺と、前記ノズル板短辺と交わるノズル板長辺を有し、前記ノズル板短辺と前記ノズル板長辺とがなす鋭角を角度θ1とし、前記角度θ1に隣接し、前記ノズル板保持部材の前記ノズル板長辺に沿うノズル板保持部材長辺と、前記ノズル板保持部材長辺と交わるノズル板保持部材短辺とがなす内角を角度θ2としたとき、前記角度θ1と前記角度θ2の和が180度未満となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、小型化が可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るヘッドの説明図。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係るヘッドユニットの説明図。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係るヘッドユニットの説明図。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るヘッドユニットの説明図。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係るヘッドユニットの説明図。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係るヘッドユニットの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<液体吐出装置の概略>
はじめに、
図1を用いて液体吐出装置の概略を説明する。
図1は、液体吐出装置の一例を示す概略構成図である。例示した液体吐出装置は、インクジェット方式により用紙にインクを吐出し、用紙に画像を形成する印刷装置である。
【0010】
印刷装置500は、給紙部501、搬送部503、印刷部505、乾燥部507および排紙部509を備える。給紙部501は、ロール状に巻かれた用紙510を保持する保持ローラ511を備え、長尺に連続した用紙510を印刷部505側へ供給する。搬送部503は、給紙部501から供給された用紙510に対して、例えば、張力制御や蛇行補正を行い、用紙510の張力や搬送位置の状態を整えて、用紙510を印刷部505へ搬送する。
【0011】
印刷部505は、ヘッドユニット555を搭載したインクジェット記録部550と、インクジェット記録部550に対向する搬送ガイド部材559とを備える。印刷部505は、搬送ガイド部材559上を移動する用紙510に対してヘッドユニット555からインクを吐出させることにより、用紙510に画像を形成する。
【0012】
なお、インクジェット記録部550に搭載するヘッドユニット555の数は、印刷装置500で用いるインクの色の種類や数に応じて適宜増減してよい。また、ヘッドユニット555で用いる液体は、インクに限らず、用紙510の表面を改質するための処理液、または用紙510に形成した画像を保護するためのコート剤などを含む構成でもよい。
【0013】
乾燥部507は、画像を載せた用紙510を加熱し、用紙510および用紙510に形成された画像を乾かす。排紙部509は、用紙510を巻き取る巻取ローラ591を備え、乾燥部507から送り出された用紙510を巻き取る。
【0014】
以降、上述の印刷装置500の構成に基づいて説明するが、本発明に係る液体吐出装置は印刷装置に限られるものではない。例えば、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)に適用することも可能である。また、電子回路のレジストパターンを形成するために、レジストパターン形成用液を吐出させる電子素子生産装置などへの適用も可能である。
【0015】
また、媒体は、用紙510に限られるものではない。紙以外に、例えば、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど種々材質に適用することが可能である。媒体の形態についても、長尺物に限られるものではなく、所定サイズに裁断された媒体でもよい。
【0016】
また、印刷装置500は、定位置のインクジェット記録部550に対して用紙510を移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるライン型の装置構成を例示したが、ライン型に限られるものではない。インクジェット記録部550と用紙510とは相対的に移動する構成であればよい。したがって、例えば、間欠送りされる用紙に対してインクジェット記録部を用紙送り方向と直交する方向へ移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるシリアル型の装置構成でもよい。あるいは、用紙載置テーブルに保持された用紙に対してインクジェット記録部をXY方向へ移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるフラットベッド型の装置構成でもよい。
【0017】
また、液体を吐出する装置で用いられる吐出物は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。また、液体は金属粉などの微粉末を含むものでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0018】
<ヘッドユニットの構成>
次に、
図2を用いてヘッドユニットの構成を説明する。
図2は、ヘッドユニットの一例を示す説明図であり、
図1のインクジェット記録部550に図示された8つのヘッドユニット555のうちの1つを、搬送ガイド部材559側から見た図である。
【0019】
ヘッドユニット555は、媒体送り方向と直交する方向に隣接して並ぶ複数のヘッド1a,1b,1c,1dを備える。以降、これらヘッド1a~1dを総称する場合は「ヘッド1」と称する。なお、本実施形態において「媒体送り方向と直交する方向」は、後述の「第2の方向」(複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向)とおおよそ一致する。また、「媒体送り方向」は、後述の「第1の方向」(第2の方向に直交する方向)とおおよそ一致する。
【0020】
ヘッド1a~1dは、液体吐出部101a~101d、ノズル板保持部材102a~102dおよびマウント部材103a~103dを備える。以降、液体吐出部101a~101dを総称する場合は「液体吐出部101」、ノズル板保持部材102a~102dを総称する場合は「ノズル板保持部材102」、マウント部材103a~103dを総称する場合は「マウント部材103」と称する。
【0021】
ヘッド1の液体吐出部101は、外形形状が概略平行四辺形をしたノズル板10を備え、ノズル板10は、液体を吐出するノズル11が形成されるノズル面12を有する。なお、
図2ではノズル11の図示を一部省略しているが、実際はノズル面12の空白部分にもノズル11が形成される。ノズル板10は、ノズル板保持部材102によって保持される。ノズル板保持部材102は、その一部にマウント部材103を備え、マウント部材103をインクジェット記録部550に設けた支持部材550aに取り付けることで、ヘッドユニット555はインクジェット記録部550に固定される。
【0022】
<ヘッドの構成>
次に、
図3乃至
図5を用いてヘッドの構成を説明する。
図3は、ヘッドの一例を示す概略分解図であり、
図2のヘッド1を構成する液体吐出部101のみを表した図である。
図4は、ヘッドの流路部分の一例を示す説明図、
図5は、ヘッドの流路部分の一例を示す断面斜視図である。なお、ノズル板10は、
図2に示したように概略平行四辺形の外形形状を成すが、ここでは長方形に簡略化した図を用いて説明する。
【0023】
ヘッド1の液体吐出部101は、ノズル板10、流路板(個別流路部材)20、振動板部材30、共通流路部材50、ダンパ部材60、フレーム部材80および駆動回路104を実装した基板(フレキシブル配線基板)105などを備える。
【0024】
ノズル板10は、液体(本実施形態ではインク)を吐出する複数のノズル11を備え、複数のノズル11は、ノズル板10の短手方向(ノズル板短手方向)およびこれと直交するノズル板長手方向に二次元状に並んで配置されている。
【0025】
個別流路部材20は、複数のノズル11に各々連通する複数の圧力室(個別液室)21と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別供給流路22と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別回収流路23とを形成している。なお、1つの圧力室21およびこれに通じる個別供給流路22と個別回収流路23を併せて個別流路25と称する。
【0026】
振動板部材30は、圧力室21の変形が可能な壁面である振動板31を形成し、振動板31には圧電素子40が一体に設けられている。また、振動板部材30には、個別供給流路22に通じる供給側開口32と、個別回収流路23に通じる回収側開口33とが形成されている。
【0027】
圧電素子40は、振動板31を変形させて圧力室21内の液体を加圧する圧力発生手段である。
【0028】
なお、個別流路部材20と振動板部材30とは、部材として別部材であることに限定されるものではない。例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を使用して個別流路部材20および振動板部材30を同一部材で一体に形成することも可能である。つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を個別流路部材20とし、シリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜とで振動板31を形成することができる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は個別流路部材20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0029】
共通流路部材50は、2以上の個別供給流路22に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の個別回収流路23に通じる複数の共通回収流路支流53とを、ノズル板長手方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材50には、個別供給流路22の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、個別回収流路23の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。また、共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1または複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1または複数の共通回収流路本流57を形成している。
【0030】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面(対向)する供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面(対向)する回収側ダンパ63を有している。ここで、共通供給流路支流52および共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62または回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜または無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
【0031】
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面には、流路中を流れる液体に対して内壁面を保護するための保護膜(接液膜とも言う)が形成されている。例えば、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面はSi基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0032】
フレーム部材80は、その上部に供給ポート81と排出ポート82を備える。供給ポート81は、共通供給流路本流56に液体を供給し、排出ポート82は、共通回収流路本流57より排出される液体を排出する。
【0033】
<比較例>
次に、
図6を用いて比較例の構成について説明する。
図6は、比較例のヘッドユニットを示す説明図である。
【0034】
図6(a)に示されたヘッドユニット555Y、および
図6(b)に示されたヘッドユニット555Zは、いずれも複数のヘッド1Ya~1Yc,1Za~1Zcを隣接させることによりアレイ状に構成されている。
図6(a)のヘッドユニット555Yにおいて、各ヘッド1Ya~1Ycは、ノズル板短手方向に対して角度θY傾斜した外形(稜線)を有し、液体吐出部101Yおよびノズル板10Yもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、ヘッド1Yは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板10Yを有し、ノズル板10Yのノズル面12Y(ノズル領域)には、上述のように複数のノズルが規則的に二次元状に配列される。また、ノズル板10Yは、ノズル板保持部材102Yに保持される。なお、
図6ではノズルの図示は省略している。ヘッドユニット555Yの構成の場合、ノズルはノズル面12Yの縁(ノズル板長手方向の両端部)の近くまで配列されている。
【0035】
図6(b)のヘッドユニット555Zでは、ヘッド1Za~1Zcの外形の傾きを、ヘッドユニット555Yよりも大きい角度θZとし、ヘッド1Za,1Zb,1Zcのつなぎ部分にスペースSを設けるようにしている。スペースSを設けることで、ヘッド1Za~1Zcのノズル面12Zの両端部をノズル板10Zの縁から離して位置させることが可能になる。そのため、外部からの衝撃がノズル、圧力室および流路等に伝わりにくくなり、ヘッドの破損を低減できる。
【0036】
しかしながら、
図6に示されるようにノズル板10Y,10Zを平行四辺形状の構成とした場合は、ノズル板保持部材102Y,102Zの両端が外方に飛び出す。その結果、ノズル板長手方向の長さが長くなり、ヘッドサイズないしはヘッドユニットサイズが大型化してしまうという課題が発生する。
【0037】
ここで、ノズル板短手方向は「第1の方向」の一例であり、ノズル板長手方向は「第2の方向」の一例である。なお、ノズル板短手方向とは、平行四辺形をしたノズル板10(10Y,10Z)の短辺の方向を指すものではなく、ノズル板を長方形と仮定し、その場合の長方形の短辺の方向をノズル板短手方向と定義する。同様に、ノズル板長手方向とは、平行四辺形をしたノズル板10(10Y,10Z)の長辺の方向を指すものではなく、ノズル板を長方形と仮定し、その場合の長方形の長辺の方向をノズル板長手方向と定義する。
【0038】
<第1の実施形態>
以下、
図7および
図8を用いて本発明の第1の実施形態の構成について説明する。
図7は、第1の実施形態に係るヘッドの説明図、
図8は、第1の実施形態に係るヘッドユニットの説明図であり、
図8(a)は、ヘッドユニットの概略構成図、
図8(b)は、
図8(a)のC-C線断面矢視拡大図である。
【0039】
図7において、ヘッド1Aは、液体吐出部101Aと、ノズル板保持部材102Aを備える。なお、
図2に示したマウント部材103の図示は省略している。このうちの液体吐出部101Aは、さらにノズル板10Aを備える。ノズル板10Aは、第1の方向となるノズル板短手方向と、このノズル板短手方向に直交する、第2の方向となるノズル板長手方向とがなす平面(ノズル面12A)上に複数のノズル11を備える。
【0040】
また、ノズル板保持部材102Aは、ノズル板10Aのノズル板短手方向に位置し、ノズル板保持部材102Aはノズル板10Aを保持する。第2の方向は、ノズル板長手方向であると共に、
図7に示された「複数のノズルが記録解像度に対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向」でもある。ノズル面12Aに設けられたノズル11は、1つ以上のノズル11によってノズル列11N(11M,11L)を構成し、各ノズル列11N(11M,11L)は、ノズル板長手方向(第2の方向)に対して傾斜をなして配置される。つまり、各ノズル列11N(11M,11L)は、ノズル板長手方向に対して角度θ4傾斜した直線L1と平行にノズル板10Aに配置される。
【0041】
ノズル板10Aにおけるノズル11の配列は、ノズル板長手方向において中央寄りには一列にN個のノズル11を有したノズル列11Nが配置される。これに対し、ノズル板10Aの一方の端部(
図7では左側端部)には一列にM(<N)個のノズル11を有したノズル列11Mが配置され、他方の端部(
図7では右側端部)には一列にN-M個のノズル11を有したノズル列11Lが配置される。
【0042】
また、ノズル板10Aの中央領域から一方の端部(
図7では左側端部)へ向かうに従い、1つのノズル列に含まれるノズル11の数は順次減少していく。ノズル板10Aの他方の端部(
図7では右側端部)においても、ノズル板10Aの中央領域から他方の端部へ向かうに従い、1つのノズル列に含まれるノズル11の数は順次減少していく。ここで、ノズル板10Aの一方の端部(
図7では左側端部)は「第1の端部」の一例であり、ノズル板10Aの他方の端部(
図7では右側端部)は「第2の端部」の一例である。
【0043】
ノズル板10Aは、ノズル板長手方向に対して傾斜をなすノズル板短辺e1と、このノズル板短辺e1と交わるノズル板長辺f1を有する平行四辺形の形状をしている。ノズル板10Aを保持するノズル板保持部材102Aは、ノズル板長辺f1に沿うように形成されたノズル板保持部材長辺f2と、このノズル板保持部材長辺f2と交わるノズル板保持部材短辺e2を有する。
【0044】
そして、ノズル板10Aの短辺e1と長辺f1とがなす鋭角θ1と、この鋭角θ1に隣接し、ノズル板保持部材102Aの長辺f2と短辺e2とがなす内角θ2との和(θ1+θ2)が180度未満となるように、両者の外形形状が構成される。
【0045】
上記構成のヘッド1は、
図8に示すように複数のヘッド1A(1Aa,1Ab,1Ac)をノズル板長手方向に一列に並べてヘッドユニット555Aとすることができる。この場合、
図7に示したM個のノズル11からなるノズル列11Mは、隣に位置するヘッドのN-M個のノズル11からなるノズル列11Lと上下方向(ノズル板短手方向)に間隔を空けて整列する。その結果、ノズル列11Nと同等の、N個のノズル11からなるノズル列が形成される。
【0046】
上記の構成により、第1の実施形態では、
図6(b)に示した領域Aの突出がなくなり、ヘッド1A(1Aa,1Ab,1Ac)ないしはヘッドユニット555Aのノズル板長手方向の長さを短くすることができる。また、第1の実施形態では、
図6(b)の領域A´の部位が、
図8(a)に示すように隣のヘッドにおいて領域A´となって残るため、ヘッドユニット555Aのノズル板長手方向の強度は比較例と同等の強度を確保できる。
【0047】
また、ヘッド1Aa~1Acのつなぎ部分にはスペースSを設け、ノズル板10Aの縁(ノズル板短辺)e1からノズル面12Aを離して配置することが可能になる。その結果、例えばノズル板10Aの縁e1の部分に外部から衝撃が加わったとしても、その衝撃がノズルまたはノズルにつながる圧力室や流路には伝わりにくくなり、ヘッドの破損も低減できる。
【0048】
また、ノズル11をヘッド1A(ノズル板10A)の端部ぎりぎりまで配置せず、ヘッド全体を他のヘッドに対して上下方向(ノズル板短手方向)に大きくオフセットさせなくても、複数のヘッド1Aに含まれるノズル11が記録解像度(d)に対応する所定のピッチで並ぶようにヘッド1A同士を接続することができる。これにより、ヘッド1Aをノズル板長手方向に一列に並べて、任意の長さでライン状のヘッドユニットを製作することが可能になる。
【0049】
なお、本実施形態は、ノズル列11N(11M,11L)を、ノズル板長手方向(第2の方向)に対して角度θ4傾斜した直線L1と平行に配列する構成に基づいて説明したが、ノズル列の傾きはこれに限るものではない。例えば、ノズル板長手方向(第2の方向)には直交し、ノズル板短手方向(第1の方向)に対して傾斜させる構成としてもよい。
【0050】
上述のように、本実施形態は、ノズル板短手方向とこれに直交するノズル板長手方向とがなすノズル面12A上に複数のノズル11を形成したノズル板10Aと、ノズル板10Aのノズル板短手方向に位置し、ノズル板10Aを保持するノズル板保持部材103Aと、を備えるヘッド1Aであって、ノズル板長手方向を、複数のノズル11が記録解像度dに対応する所定のピッチで等間隔に並ぶ方向と定義したとき、複数のノズル11によって構成される複数のノズル列11N(11M,11L)は、ノズル板長手方向に対して角度θ4の傾斜をなしてノズル板10Aに形成される。さらに、ノズル板10Aは、ノズル板長手方向に対して傾斜をなすノズル板短辺e1と、ノズル板短辺e1と交わるノズル板長辺f1を有し、ノズル板短辺e1とノズル板長辺f1とがなす鋭角を角度θ1とし、この角度θ1に隣接し、ノズル板保持部材102Aのノズル板長辺f1に沿うノズル板保持部材長辺f2と、ノズル板保持部材長辺f2と交わるノズル板保持部材短辺e2とがなす内角を角度θ2としたとき、角度θ1と角度θ2の和(θ1+θ2)が180度未満となるようにする。
【0051】
また、上述のように、ノズル列11N(11M,11L)は、ノズル板短手方向(第1の方向)に対して傾斜をなしてノズル板10Aに形成される。
【0052】
また、上述のように、ノズル板10Aには、ノズル板長手方向(第2の方向)においてノズル板10Aの中央寄りの領域に、N個のノズルからなるノズル列11Nが配置され、ノズル板長手方向において中央寄りの領域よりもノズル板10Aの第1の端部に、N個よりも少ないM個のノズルからなるノズル列11Mが配置され、ノズル板長手方向において中央寄りの領域よりもノズル板10Aの第2の端部に、(N-M)個のノズルからなるノズル列11Lが配置される。
【0053】
これらにより、ヘッド1A(1Aa,1Ab,1Ac)ないしはヘッドユニット555Aを小型にすることができる。
【0054】
また、
図8(b)に示すように、ノズル板10Aは、液体吐出方向においてその表面がノズル板保持部材102Aの表面よりも内側に位置するように、ノズル板保持部材102Aに保持される。つまり、ノズル板10Aの表面を、ノズル板保持部材102Aの表面よりも厚さD2だけ液体吐出方向と反対側へ凹ませる。これにより、ヘッド1Aならびにノズル板10Aの端部を外部から保護することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態に係るヘッドユニットの説明図である。
【0056】
第1の実施形態においては、ノズル板保持部材102Aのノズル板長手方向の直線とノズル板保持部材102Aの短辺e2とが直角になる形状とした。これに対し、第2の実施形態は、ノズル板保持部材102Bの長辺f2と短辺e2とがなす内角θ2を90度より小さい角度とし、ノズル板長手方向の直線に対してノズル板保持部材102Bの短辺e2が角度θ5傾斜する点が異なる。
【0057】
第2の実施形態では、ヘッド1Ba,1Bb,1Bcをノズル板長手方向に隣接させて並べた際に、各ヘッド1Ba~1Bcのつなぎ部分(境界)がぴったり合うように各ヘッド1Ba~1Bcのノズル板短手方向の形状は構成される。
【0058】
具体的には、各ヘッド1Ba~1Bcのつなぎ部分において、ノズル板短辺e1とノズル板長辺f1とがなす鈍角を角度θ6とし、この角度θ6を形成するノズル板短辺e1を延長した仮想延長直線L2を引く。そして、仮想延長直線L2と、この仮想延長直線L2と交わるノズル板保持部材短辺e2とがなす角度を角度θ3と定義する。その場合、角度θ1(ノズル板短辺e1と長辺f1とがなす鋭角)と、角度θ2(ノズル板保持部材短辺e2と長辺f2がなす内角)と、角度θ3との和が180度となるように、ヘッドのノズル板短手方向の形状は構成される。
【0059】
上記構成により、第2の実施形態の場合にも、
図6(b)に示された領域Aの突出がなくなり、ヘッド1B(1Ba,1Bb,1Bc)ないしはヘッドユニット555Bのノズル板長手方向の長さを低減できる。
【0060】
また、角度θ1,θ2,θ3を上記の関係とすることで、ヘッド同士をぴったり隣接させて並べることができ、ヘッドユニット555Bのノズル板長手方向の強度(堅牢性)を担保できる。また、ヘッド同士がぴったり隣接して並ぶため、ヘッドを印刷装置500に実装した際、用紙などの媒体、またはノズル面12Bを清掃するワイパー等の清掃部材がヘッド1Bのつなぎ部分で引っ掛かるという不具合を防止できる。
【0061】
また、第2の実施形態は、
図6(b)の比較例に対して領域Aの位置は変わるものの、ノズル板保持部材102Bの大きさ(面積)は、比較例と同等の大きさを確保できる。そのため、例えば、ノズル板保持部材102Bの内部や裏面に制御基板や配線等の電装部品を備える場合でも、従来の部品配置を大きく変更することなくヘッドを構成することができる。
【0062】
さらに、第2の実施形態においても、ヘッド1Ba~1Bcのつなぎ部分にはスペースSが設けられているため、第1の実施形態と同様の効果も奏する。その結果、例えばノズル板10Bの縁(短辺e1)の部分に外部から衝撃が加わったとしても、その衝撃がノズルまたはノズルにつながる圧力室や流路には伝わりにくくなり、ヘッドモジュールの破損も低減できる。
【0063】
上述のように、本実施形態は、ノズル板短辺e1とノズル板長辺f1とがなす鈍角を角度θ6とし、角度θ6を形成するノズル板短辺e1の仮想延長直線L2と、仮想延長直線L2と交わるノズル板保持部材短辺e2とがなす角度を角度θ3としたとき、角度θ1、角度θ2および角度θ3の和が180度となる。
【0064】
これにより、ヘッド同士をぴったり隣接させて並べることができ、ヘッドユニットのノズル板長手方向の強度(堅牢性)を担保できる。
【0065】
<第3の実施形態>
図10は、本発明の第3の実施形態に係るヘッドユニットの説明図である。
【0066】
第3の実施形態として示したヘッド1C(1Ca,1Cb,1Cc)は、
図8(a)のヘッドユニット555Aにおいて領域A´で示された部分を削除している。
【0067】
つまり、ノズル板短辺e1およびノズル板長辺f1がなす角が鈍角となる側からノズル板短辺e1を延長した仮想延長直線L2に沿ってノズル板保持部材短辺e2が形成されている。換言すると、ノズル板短辺e1とノズル板長辺f1とがなす鈍角を角度θ6とし、角度θ6と隣接しノズル板保持部材短辺e2とノズル板保持部材長辺f2とがなす角度をθ7としたとき、角度θ6と角度θ7の和が180度となる。なお、角度θ1および角度θ2の関係については第1および第2の実施形態と同様である。
【0068】
第3の実施形態においては、ヘッド1Cないしはヘッドユニット555Cのノズル板長手方向の長さを短くできるだけでなく、ヘッド1Cを、ノズル板10Cの短辺e1と平行な方向(矢印F1方向)から着脱することが可能になる。これにより、ヘッドユニット555Cの組立時やヘッド1Cの交換時のアクセス性をよくすることができる。
【0069】
<第4の実施形態>
図11は、本発明の第4の実施形態に係るヘッドユニットの説明図である。
【0070】
第1の実施形態においては、
図8(a)に示したように、ノズル板保持部材102Aのノズル板長手方向の直線とノズル板保持部材102Aの短辺e2とが直角になる部分を、2箇所に設けた。つまり、第1の実施形態の場合、上記直角の部分は、外形形状が平行四辺形をしたノズル板10Aにおいて、平行四辺形が対角で有する2つの鋭角に隣接させて設けられている。
【0071】
これに対し、第4の実施形態は、ノズル板保持部材102Dのノズル板長手方向の直線とノズル板保持部材102Dの短辺e2とが直角になる部分を1箇所(
図11では各ヘッド1Dの左上部分)に設けた点が異なる。すなわち本実施形態は、ノズル板10Dの短辺e1と長辺f1とがなす鋭角θ1と、ノズル板保持部材102Dの長辺f2と短辺e2とがなす内角θ2との和θ1+θ2が180度未満をなす部位を、上記の1箇所のみに設けている。
【0072】
第4の実施形態の場合、図示のように各ヘッド1Dの右下部分には、
図6(b)に示した領域Aと同様の部位が存在するため、上述の第1~第3の実施形態に比べてヘッド1Dのノズル板長手方向の長さを長くなる。しかし、ヘッド1Dの左上部分の領域Aがなくなる分、比較例よりはヘッド1Dの外形サイズは小さくなる。
【0073】
また、第4の実施形態においても、ヘッド1Dを、ノズル板10Dの短辺e1と平行な方向(矢印F2方向)から着脱することが可能になる。これにより、ヘッドユニット555Dの組立時やヘッド1Dの交換時のアクセス性をよくすることができる。
【0074】
なお、第3および第4の実施形態については、ノズル板保持部材102C,102Dのノズル板長手方向の直線とノズル板保持部材102C,Dの短辺e2とが直角の場合を例示したが、直角に限るものではない。例えば、短辺e2を90度より小さい角度で傾斜させ、第2の実施形態のような形状としてもよい。
【0075】
<第5の実施形態>
図12は、本発明の第5の実施形態に係るヘッドユニットの説明図である。
【0076】
第5の実施形態として示したヘッド1E(1Ea,1Eb,1Ec)は、
図6(a)(比較例)のヘッドユニット555Yに対して領域Aで示された部分を削除している。
【0077】
第5の実施形態においては、ヘッドを複数並べたヘッドユニットとした場合に隣接するヘッド間でノズル板が直接接触するために、物理的な衝撃などに対してヘッドのノズル板に関して堅牢性の点では劣るものの、ヘッド1Eないしはヘッドユニット555Eのノズル板長手方向の長さを短くできるという点では第1~第4の実施形態と同等の効果を奏する。なお、角度θ1および角度θ2の関係については第1~第3の実施形態と同様である。
【0078】
<適用例>
<<適用例1>>
本発明の液体吐出ヘッドは、立体造形物を形成するために用いられる液体も吐出可能である。立体造形物を形成するために用いられる液体として例えば、治療の手技トレーニングに用いられる三次元立体構造体を形成するための、ハイドロゲル形成材料が挙げられる。ハイドロゲル形成材料は、水および重合性モノマーを含有し、鉱物、有機溶媒を含有することが好ましく、さらに必要に応じて、重合開始剤、その他の成分を含有する。重合性モノマーは、不飽和炭素-炭素結合を1つ以上有する化合物であり、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合する重合性モノマーが好ましい。
【0079】
重合性モノマーとしては、例えば、単官能モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。多官能モノマーとしては、例えば、2官能モノマー、3官能モノマー、4官能以上のモノマーなどが挙げられる。
【0080】
鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハイドロゲルが水を主成分とすることから、粘土鉱物が好ましく、さらに、水中で一次結晶のレベルで均一に分散可能な層状粘土鉱物が好ましく、水膨潤性層状粘土鉱物がより好ましい。
【0081】
有機溶媒としては、例えば、水溶性有機溶媒などが挙げられる。水溶性有機溶媒の水溶性とは、有機溶媒が水に対して30質量%以上溶解可能であることを意味する。水溶性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の炭素数1以上4以下のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルコールエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0082】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保湿性の点から、多価アルコール、グリセリン、プロピレングリコールが好ましく、グリセリン、プロピレングリコールがより好ましい。
【0083】
重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。光重合開始剤としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることができる。なお、ハイドロゲル形成材料を用いて立体造形する場合には、UV(Ultra Violet)照射機構を設け、吐出したハイドロゲル形成材料にUV照射することで硬化して形成する。
【0084】
(ハイドロゲル形成材料具体例)
減圧脱気を30分間実施したイオン交換水120.0質量部を撹拌させながら、層状粘土鉱物として[Mg5.34Li0.66Si8O20(OH)4]Na-0.66の組成を有する合成ヘクトライト(ラポナイトXLG、RockWood社製)12.0質量部を少しずつ添加して撹拌した。さらに、エチドロン酸(東京化成工業株式会社製)0.6質量部を加えて撹拌して分散液を作製した。得られた分散液に、重合性モノマーとして、活性アルミナのカラムを通過させ重合禁止剤を除去したアクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製)44.0質量部、メチレンビスアクリルアミド(東京化成工業株式会社製)0.4質量部を添加した。さらに、グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)20.0質量、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)0.8質量部混合し、ハイドロゲル形成用材料を得た。
【0085】
<<適用例2>>
本発明の液体吐出ヘッドは、細胞からなる組織体を人工的に形成するために、細胞を任意に配置するためのインクジェット法にも使用可能であり、細胞懸濁液(細胞インク)を吐出可能である。細胞懸濁液(細胞インク)は、少なくとも細胞および細胞乾燥抑制剤を含有する。さらに、細胞懸濁液(細胞インク)は、細胞を分散させる分散培を含有し、必要に応じて、分散剤、pH調整剤などのその他の添加材料を含有してもよい。
【0086】
細胞は、その種類等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分類学的に、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
真核細胞としては、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、動物細胞が好ましく、細胞が細胞集合体を形成する場合は、細胞と細胞とが互いに接着し、物理化学的な処理を行わなければ単離しない程度の細胞接着性を有する接着性細胞がより好ましい。
【0088】
細胞乾燥抑制剤としては、細胞の表面を覆い、細胞の乾燥を抑制する働きを有するものであり、例えば、多価アルコール類、ゲル状多糖類、および細胞外基質から選ばれる蛋白質などが挙げられる。
【0089】
分散培としては、細胞培養用の培地や緩衝液が好ましい。培地は、細胞組織体の形成と維持に必要な成分を含み、乾燥を防ぎ浸透圧などの外部環境を整える溶液であり、培地として知られているものであれば適宜選択して使用することができる。細胞を常時培地液内に浸しておく必要がない場合には、細胞懸濁液から培地は適宜除去することができる。緩衝液は、細胞や目的に合わせpHを調整するためのものであり、公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0090】
(細胞懸濁液(細胞インク)具体例)
緑色蛍光染料(商品名:Cell Tracker Green、Life Technologies社製)を10mmol/L(mM)の濃度でジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と称す)へ溶解させ、無血清ダルベッコ変法イーグル培地(Life Technologies社製)と混合し、濃度10μmol/L(μM)の緑色蛍光染料含有無血清培地を調製した。次に、培養したNIH/3T3細胞(Clone 5611、JCRB Cell Bank)のディッシュに緑色蛍光染料含有無血清培地を5mL添加し、インキュベーター(KM-CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5体積%CO2環境))内で30分間培養した。その後、アスピレータを用いて、上澄みを除去した。ディッシュにリン酸緩衝生理食塩水(Life Technologies社製、以下、PBS(-)とも称する)を5mL加え、アスピレータでPBS(-)を吸引除去し、表面を洗浄した。PBS(-)による洗浄作業を2回繰り返した後、0.05質量%トリプシン-0.05質量%EDTA溶液(life technologies社製)をディッシュ1枚あたり2mL加えた。
【0091】
次に、インキュベーター内にて5分間加温し、ディッシュから細胞を剥離した後、10質量%ウシ胎児血清(以下、「FBS」とも称す)および1質量%抗生物質(Antibiotic-Antimycotic Mixed Stock Solution(100x)、ナカライテスク株式会社製)を含むD-MEMを4mL加えた。次に、トリプシンを失活させた細胞懸濁液を50mL遠沈管1本に移し、遠心分離(商品名:H-19FM、KOKUSAN社製、1,200rpm、5分間、5℃)を行い、アスピレータを用いて上清を除去した。
【0092】
除去後、遠沈管に10質量%FBSおよび1質量%抗生物質を含むD-MEMを2mL添加し、穏やかにピペッティングを行い、細胞を分散させ細胞懸濁液を得た。この細胞懸濁液から10μLをエッペンドルフチューブに取り出し、培地を70μL添加後、10μLを別のエッペンドルフチューブに取り出し、0.4質量%トリパンブルー染色液10μLを加えてピペッティングを行った。染色した細胞懸濁液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せた。
【0093】
商品名:Countess Automated Cell Counter(インビトロジェン社製)を用いて細胞数を計測して細胞数を求めることで、細胞数を計測した細胞懸濁液を得た。分散培としてPBS(-)を用いた。PBS(-)へ、細胞乾燥抑制剤としてグリセリン(分子生物学用グレード、和光純薬工業株式会社製)を質量比0.5質量%となるように溶解させ、NIH/3T3細胞懸濁液を6×106cell/mLとなるように分散培へ分散させて、細胞インクを得た。
【0094】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1A,1B,1C,1D,1E ヘッド
101A,101B,101C,101D,1E 液体吐出部
102A,102B,102C,102D ノズル板保持部材
103a,103b,103c,103d マウント部材
10A,10B,10C,10D,10E ノズル板
12A,12B,12C,12D,12E ノズル面
555A,555B,555C,555D,555E ヘッドユニット
11 ノズル
11N,11M,11L ノズル列
e1 ノズル板短辺
f1 ノズル板長辺
e2 ノズル板保持部材短辺
f2 ノズル板保持部材長辺