(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140561
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】磁石挿抜具および磁石挿抜方法
(51)【国際特許分類】
B03C 1/28 20060101AFI20230928BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B03C1/28 105
B03C1/00 A
B03C1/28 103
B03C1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046456
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】河野 弘明
(57)【要約】
【課題】複数の磁石を互いに吸着させることなく、磁性体捕集装置に対して挿抜することのできる磁石挿抜具を提供する。
【解決手段】隣り合う捕集用磁石12の間隔を保持した状態で複数の捕集用磁石12の上部側に係合する上部側係合部110と、隣り合う捕集用磁石12の間隔を保持した状態で複数の捕集用磁石12の下部側に係合する下部側係合部120と、互いに回動自在に連結された第1リンク部131および第2リンク部132を有し、第1リンク部131が上部側係合部110を支持し、第2リンク部132が下部側係合部120を支持する本体部130と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に含まれる磁性体を捕集する磁性体捕集装置に用いられ、それぞれ上下方向に延在するとともに、間隔をおいて配置された複数の捕集用磁石を、装置本体に対して上下方向に移動させて挿抜する際に使用される磁石挿抜具であって、
隣り合う前記捕集用磁石の間隔を保持した状態で複数の前記捕集用磁石の上部側に係合する上部側係合部と、
隣り合う前記捕集用磁石の間隔を保持した状態で複数の前記捕集用磁石の下部側に係合する下部側係合部と、
互いに回動自在に連結された第1リンク部および第2リンク部を有し、前記第1リンク部が前記上部側係合部を支持し、前記第2リンク部が前記下部側係合部を支持する本体部と、を備え、
前記上部側係合部は、前記第2リンク部の下方に前記第1リンク部が位置する姿勢で複数の前記捕集用磁石の上部側に前記上部側係合部が係合可能であり、
前記下部側係合部は、複数の前記捕集用磁石の上部側に前記上部側係合部が係合した状態で前記第1リンク部に対して前記第2リンク部を回動させることで、複数の前記捕集用磁石の下部側に係合可能である
磁石挿抜具。
【請求項2】
前記第2リンク部は、複数の前記捕集用磁石に前記上部側係合部および前記下部側係合部が係合した状態で、複数の前記捕集用磁石の側方側の一部を覆う板状に形成され、
前記本体部は、
前記第2リンク部に直接的または間接的に回動自在に連結され、複数の前記捕集用磁石に前記上部側係合部および前記下部側係合部が係合した状態で、複数の前記捕集用磁石の側方側のその他の部分および下方側を覆う配置が可能な板状の第3リンク部、第4リンク部、第5リンク部および第6リンク部と、
前記上部側係合部および前記下部側係合部が係合した状態の複数の前記捕集用磁石の側方側および下方側を覆う前記第2リンク部、前記第3リンク部、前記第4リンク部、前記第5リンク部および前記第6リンク部によって形成された箱形状を保持する保持機構と、を有している
請求項1に記載の磁石挿抜具。
【請求項3】
箱形状に保持された前記本体部の外側面に位置する部分には、把持部が形成されている
請求項2に記載の磁石挿抜具。
【請求項4】
請求項1に記載の磁石挿抜具を用いて、前記磁性体捕集装置の前記装置本体に対して複数の前記捕集用磁石を上下方向に移動させることによって挿抜する磁石挿抜方法であって、
前記装置本体に取り付けられた複数の前記捕集用磁石をそれぞれ上方に移動させることによって、複数の前記捕集用磁石の上部側を露出させ、
露出した複数の前記捕集用磁石の上部側に、前記第2リンク部の下方に前記第1リンク部が位置する姿勢で前記上部側係合部を係合させ、
前記磁石挿抜具を上方に移動させて複数の前記捕集用磁石を上方に持ち上げることによって、複数の前記捕集用磁石の下部側を露出させ、
前記第1リンク部に対して前記第2リンク部を回動させることによって、前記下部側係合部を前記上部側係合部の下方に位置させ、露出した複数の前記捕集用磁石の下部側に前記下部側係合部を係合させ、
前記磁石挿抜具を上方に移動させることによって複数の前記捕集用磁石を前記装置本体から抜き出し、
前記磁石挿抜具の前記上部側係合部および前記下部側係合部に係合した状態の複数の前記捕集用磁石の下端部を、前記装置本体に挿入し、
複数の前記捕集用磁石の下端部を、前記装置本体に挿入した状態で、前記第1リンク部に対して前記第2リンク部を回動させて複数の前記捕集用磁石に対する前記下部側係合部の係合を解除し、
前記上部側係合部によって上部側が支持された複数の前記捕集用磁石を、上部側を除いて挿入し、
複数の前記捕集用磁石に対する前記上部側係合部の係合を解除し、
複数の前記捕集用磁石を前記装置本体に挿入する
磁石挿抜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中に含まれる磁性体を捕集する磁性体捕集装置を構成する、それぞれ間隔をおいて配置される複数の捕集用磁石を、磁性体捕集装置の装置本体に対して挿抜する際に使用される磁石挿抜具および磁石挿抜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体中に含まれる磁性体を捕集する磁性体捕集装置としては、水槽内の液体に含まれる磁性フロックを、液面付近に配置された磁場発生手段が内蔵された回転体の表面に吸着させ、回転体の表面に吸着させた磁性フロックを掻き取り板によって剥離させ、剥離させた磁性フロックを回収槽に回収するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の磁性体捕集装置は、構造が複雑であり、小型化を図ることが困難である。このため、簡易的な磁性体捕集装置として、磁性体を捕集する対象の液体が流通する管路等の液体流路に接続可能なものが求められている。そこで、簡易的な磁性体捕集装置として、液体流路に接続される装置本体と、装置本体の外側から液体流路側に張り出す筒状凹部に挿入される棒状に形成された複数の捕集用磁石と、を備えるものが考えられている。この磁性体捕集装置は、液体流路を流通する液体中に含まれる磁性体を、捕集用磁石の磁力によって筒状凹部の外面に吸着させるようになっている。この磁性体捕集装置は、筒状凹部の外面に吸着された磁性体を除去するために、捕集用磁石を取り外した状態で、装置本体に洗浄液を流通させることによって、洗浄液によって磁性体を洗い流すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体の流路に接続される磁性体捕集装置では、磁性体を除去するために、装置本体に対して複数の捕集用磁石を取り外す作業が発生することになる。装置本体から複数の捕集用磁石を同時に取り外す場合には、複数の捕集用磁石同士が互いに引き寄せ合う力が作用するため、捕集用磁石を取り外す作業を行う作業者が、複数の捕集用磁石に手、指、腕等の身体の一部が挟まれる可能性があり、また、複数の捕集用磁石が互いに吸着した場合に、吸着した捕集用磁石を引き離す作業が発生するため、安全性および作業性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的とするところは、複数の磁石を互いに吸着させることなく、磁性体捕集装置に対して挿抜することのできる磁石挿抜具および磁石挿抜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の磁石挿抜具は、流体中に含まれる磁性体を捕集する磁性体捕集装置に用いられ、それぞれ上下方向に延在するとともに、間隔をおいて配置された複数の捕集用磁石を、装置本体に対して上下方向に移動させて挿抜する際に使用される磁石挿抜具であって、隣り合う前記捕集用磁石の間隔を保持した状態で複数の前記捕集用磁石の上部側に係合する上部側係合部と、隣り合う前記捕集用磁石の間隔を保持した状態で複数の前記捕集用磁石の下部側に係合する下部側係合部と、互いに回動自在に連結された第1リンク部および第2リンク部を有し、前記第1リンク部が前記上部側係合部を支持し、前記第2リンク部が前記下部側係合部を支持する本体部と、を備え、前記上部側係合部は、前記第2リンク部の下方に前記第1リンク部が位置する姿勢で複数の前記捕集用磁石の上部側に前記上部側係合部が係合可能であり、前記下部側係合部は、複数の前記捕集用磁石の上部側に前記上部側係合部が係合した状態で前記第1リンク部に対して前記第2リンク部を回動させることで、複数の前記捕集用磁石の下部側に係合可能である。
【0008】
本発明の磁石挿抜具は、前記第2リンク部が、複数の前記捕集用磁石に前記上部側係合部および前記下部側係合部が係合した状態で、複数の前記捕集用磁石の側方側の一部を覆う板状に形成され、前記本体部が、前記第2リンク部に直接的または間接的に回動自在に連結され、複数の前記捕集用磁石に前記上部側係合部および前記下部側係合部が係合した状態で、複数の前記捕集用磁石の側方側のその他の部分および下方側を覆う配置が可能な板状の第3リンク部、第4リンク部、第5リンク部および第6リンク部と、前記上部側係合部および前記下部側係合部が係合した状態の複数の前記捕集用磁石の側方側および下方側を覆う前記第2リンク部、前記第3リンク部、前記第4リンク部、前記第5リンク部および前記第6リンク部によって形成された箱形状を保持する保持機構と、を有している。
【0009】
本発明の磁石挿抜具は、箱形状に保持された前記本体部の外側面に位置する部分に、把持部が形成されている。
【0010】
本発明の磁石挿抜方法は、前記磁石挿抜具を用いて、前記磁性体捕集装置の前記装置本体に対して複数の前記捕集用磁石を上下方向に移動させることによって挿抜する磁石挿抜方法であって、前記装置本体に取り付けられた複数の前記捕集用磁石をそれぞれ上方に移動させることによって、複数の前記捕集用磁石の上部側を露出させ、露出した複数の前記捕集用磁石の上部側に、前記第2リンク部の下方に前記第1リンク部が位置する姿勢で前記上部側係合部を係合させ、前記磁石挿抜具を上方に移動させて複数の前記捕集用磁石を上方に持ち上げることによって、複数の前記捕集用磁石の下部側を露出させ、前記第1リンク部に対して前記第2リンク部を回動させることによって、前記下部側係合部を前記上部側係合部の下方に位置させ、露出した複数の前記捕集用磁石の下部側に前記下部側係合部を係合させ、前記磁石挿抜具を上方に移動させることによって複数の前記捕集用磁石を前記装置本体から抜き出し、前記磁石挿抜具の前記上部側係合部および前記下部側係合部に係合した状態の複数の前記捕集用磁石の下端部を、前記装置本体に挿入し、複数の前記捕集用磁石の下端部を、前記装置本体に挿入した状態で、前記第1リンク部に対して前記第2リンク部を回動させて複数の前記捕集用磁石に対する前記下部側係合部の係合を解除し、前記上部側係合部によって上部側が支持された複数の前記捕集用磁石を、上部側を除いて挿入し、複数の前記捕集用磁石に対する前記上部側係合部の係合を解除し、複数の前記捕集用磁石を前記装置本体に挿入する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、隣り合う捕集用磁石の間隔を保持した状態で複数の捕集用磁石を装置本体に対して着脱することが可能となるので、磁石を取り外す作業を行う作業者は、複数の捕集用磁石に手、指、腕等の身体の一部が挟まれることなく、互いに吸着した捕集用磁石を引き離す作業が不要となるので、安全性および作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る磁性体捕集装置の使用状態を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る磁性体捕集装置の洗浄状態を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る捕集用磁石の全体斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態を係る磁石挿抜具の全体斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る磁石挿抜具の使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図5は、本発明の一実施形態を示すものであり、
図1は磁性体捕集装置の使用状態を示す概略図であり、
図2は磁性体捕集装置の洗浄状態を示す概略図であり、
図3は捕集用磁石の全体斜視図であり、
図4は磁石挿抜具の全体斜視図であり、
図5は磁石挿抜具の使用方法を説明する図である。
【0014】
本発明の磁石挿抜具100は、例えば、金属化合物の製造工程において使用される流体としての液体に含まれる磁性体Mを捕集する磁性体捕集装置10を構成する後述する複数の捕集用磁石の挿抜に用いられるものである。
【0015】
磁性体捕集装置10は、
図1および
図2に示すように、磁性体Mを捕集する対象の液体が水平方向に流通する液体流路1上に配置されている。液体流路1における磁性体捕集装置10の上流側には、捕集した磁性体Mを除去するための洗浄液を磁性体捕集装置10に流入させる洗浄液流入路2が接続され、液体流路1における磁性体捕集装置10の下流側には、除去された磁性体Mを含む洗浄液を流出させる洗浄液流出路3が接続されている。液体流路1には、図示しないバルブ等の流路切替手段を操作することによって、磁性体Mを捕集する対象の液体、または、洗浄液を切り替えて流通させることが可能である。
【0016】
磁性体捕集装置10は、液体流路1に接続される装置本体11と、装置本体11に対して挿抜可能な複数の捕集用磁石12と、を備えている。
【0017】
装置本体11は、液体流路1に接続され、液体流路1の内径よりも大きな内部空間を有する中空の部材であり、内部空間を水平方向に液体が流通する。また、装置本体11には、上面の外側から内部空間を下方に延びるように形成され、捕集用磁石12が挿入される磁性体からなる筒状凹部11aが形成されている。
【0018】
複数の捕集用磁石12は、
図3に示すように、それぞれ、筒状凹部11aから挿入される複数の棒状部12aと、複数の棒状部12aの上端部を一体に連結する板状の連結部12bと、連結部12bの上面側に設けられ、作業者が手で把持する取っ手12cと、を有している。本実施形態の磁性体捕集装置10は、
図1および
図2に示すように、液体の流通方向に配置される3つの捕集用磁石12を有している。3つの捕集用磁石12は、
図3に示すように、液体の流通方向の上流側および下流側に位置する捕集用磁石12が2つの棒状部12aを有し、液体の流通方向の中央部に位置する捕集用磁石12が3つの棒状部12aを有している。
【0019】
上述の磁性体捕集装置10は、筒状凹部11aに複数の捕集用磁石12を挿入した状態で、液体流路1に磁性体Mを捕集する対象の液体を流通させると、液体に含まれる磁性体Mが、捕集用磁石12の磁性体Mを引き寄せる力によって筒状凹部11aの外周面側に付着する。
【0020】
また、筒状凹部11aの外周面側に付着した磁性体Mを除去する場合には、複数の捕集用磁石12を装置本体11から取り外した状態で、洗浄液流入路2から液体流路1に洗浄液を流入させ、液体流路1に流入した洗浄液を、洗浄液流出路3を介して液体流路1から流出させる。これにより、筒状凹部11aの外周面に付着した磁性体Mは、洗浄液と共に洗浄液流出路3を介して液体流路1から流出する。
【0021】
磁石挿抜具100は、
図4に示すように、隣り合う捕集用磁石12の間隔を保持した状態で複数の捕集用磁石12の上部側に係合する上部側係合部110と、隣り合う捕集用磁石12の間隔を保持した状態で複数の捕集用磁石12の下部側に係合する下部側係合部120と、上部側係合部110および下部側係合部120が連結され、磁性体捕集装置10から取り外された複数の捕集用磁石12を収容する箱体とすることが可能な本体部130と、を備えている。
【0022】
上部側係合部110は、例えば、樹脂等の非磁性の部材からなる。上部側係合部110は、複数の捕集用磁石12のそれぞれに対応して設けられ、本体部130側の基端部から互いに間隔をおいて一方向に延びる対をなす移動規制板111を有している。
図4における上部側係合部110は、3対の移動規制板111を有している。対をなす移動規制板111の先端側は、互いの間隔が大きくなるようにそれぞれ湾曲している。上部側係合部110は、それぞれの対を成す移動規制板111の間に捕集用磁石12の棒状部12aの上部側が位置するように係合させることで、捕集用磁石12の上部側を支持するとともに、隣接する捕集用磁石12側への移動を規制する。
【0023】
下部側係合部120は、上部側係合部110と同様の材料から形成されると共に同様の構造を有し、複数の捕集用磁石12のそれぞれに対応して設けられた対を成す移動規制板121を有している。下部側係合部120は、それぞれの対を成す移動規制板121の間に捕集用磁石12の棒状部12aの下部側が位置するように係合させることで、捕集用磁石12の下部側の隣接する捕集用磁石12側への移動を規制する。
【0024】
本体部130は、例えば、ステンレス鋼や樹脂等の非磁性の部材からなる。本体部130は、複数の板状部材を、蝶番を介して連結することによって一体に形成するか、一枚の板状部材の所定部分に折り曲げ可能な部分を形成することによって形成される。
【0025】
本体部130は、
図4に示すように、上部側係合部110を支持する第1リンク部131と、第1リンク部131の上端部に回動自在に連結され、下部側係合部120を支持する第2リンク部132と、第2リンク部132の上端部に回動自在に連結された第3リンク部133と、第3リンク部133上端部に回動自在に連結された第4リンク部134と、第4リンク部134の幅方向両端部のそれぞれに回動自在に連結された第5リンク部135および第6リンク部136と、を有している。
【0026】
ここで、第1リンク部131には、上部側係合部110の基端部が回動自在に支持されており、上部側係合部110の延在方向が、第1リンク部131の延在方向に沿う姿勢と、第1リンク部131の延在方向に対して直交する姿勢と、が切り替え可能である。また、第2リンク部132には、下部側係合部120の基端部が回動自在に支持されており、下部側係合部120の延在方向が第2リンク部132の延在方向に沿う姿勢と、第2リンク部132の延在方向に対して直交する姿勢と、が切り替え可能である。
【0027】
本体部130は、第1乃至第6リンク部131,132,133,134,135,136のそれぞれを回動させることによって、上面が開放された箱形状とすることが可能である。本体部130は、箱形状とした場合に、第3リンク部133が底面を構成し、第2リンク部132、第4リンク部134、第5リンク部135および第6リンク部136が側面を構成する。
【0028】
また、本体部130は、箱形状とした状態を保持する保持機構137を有している。
【0029】
保持機構137は、第2リンク部132と第5リンク部135とを着脱自在に連結するとともに、第2リンク部132と第6リンク部136とを着脱自在に連結するバックルである。
【0030】
また、箱形状の本体部130における側面に位置する第2リンク部132および第4リンク部134の外面には、作業者が手で把持する把持部138が形成されている。
【0031】
以上のように構成された磁石挿抜具100は、未使用時において、上部側係合部110および下部側係合部120の延在方向を、それぞれ第1リンク部131および第2リンク部132の延在方向に沿う姿勢とし、平板状とした状態で保管される。
【0032】
以下、磁石挿抜具100を用いて磁性体捕集装置10の装置本体11から複数の捕集用磁石12を抜き出す方法について説明する。
【0033】
第1工程では、
図5(a)に示すように、下端部に第1リンク部131が位置する姿勢で、上部側係合部110および下部側係合部120を回動させ、本体部130に対して上部側係合部110および下部側係合部120の先端部が張り出す姿勢とする。
【0034】
第2工程では、
図5(b)に示すように、装置本体11に取り付けられた状態の複数の捕集用磁石12のそれぞれを、棒状部12aの上部が外側に露出する位置まで上方に持ち上げる。
【0035】
第3工程では、
図5(c)に示すように、露出した複数の捕集用磁石12の上部側に、上部側係合部110を係合させる。
【0036】
第4工程では、
図5(d)に示すように、本体部130を上方に移動させて、複数の捕集用磁石12のそれぞれを、棒状部12aの下部側が外側に露出するまで上方に持ち上げるとともに、第1リンク部131に対して第2リンク部132を回動させる。
【0037】
第5工程では、
図5(e)に示すように、下部側係合部120を上部側係合部110の下方に位置させて、露出した複数の捕集用磁石12の下部側に、下部側係合部120を係合させる。
【0038】
第6工程では、
図5(f)に示すように、本体部130を上方に移動させて複数の捕集用磁石12を装置本体11から完全に抜き取る。
【0039】
第7工程では、
図5(g)に示すように、第2リンク部132に対して第3リンク部133を回動させて、第3リンク部133を複数の捕集用磁石12の下方に向けて移動させる。
【0040】
第8工程では、
図5(h)に示すように、第3リンク部133に対して第4リンク部134を回動させて、第4リンク部134を複数の捕集用磁石12の側方に向けて移動させる。
【0041】
第9工程では、
図5(i)に示すように、第4リンク部134を複数の捕集用磁石12の側方に配置した後、第4リンク部134に対して第5リンク部135および第6リンク部136を複数の捕集用磁石12の側方に回動させて箱形状とし、保持機構137によって箱形状を保持する。
【0042】
これにより、装置本体11から複数の捕集用磁石12が完全に抜き出される際に作業者が直接的に複数の捕集用磁石12に触れることなく、複数の捕集用磁石12が抜き出される。また、装置本体11から抜き出された複数の捕集用磁石12は、箱形状に形成された本体部130に収容された状態となり、磁性体捕集装置10の近傍に仮置きされる。
【0043】
次に、磁性体捕集装置10の装置本体11に対して複数の捕集用磁石12を挿入する場合には、前述の複数の捕集用磁石12を抜き出す工程を逆に進めることによって、抜き出された状態の複数の捕集用磁石12を作業者が直接的に手で触れることなく、装置本体11に対して複数の捕集用磁石12を挿入される。
【0044】
このように、本実施形態の磁石挿抜具100によれば、流体中に含まれる磁性体Mを捕集する磁性体捕集装置10に用いられ、それぞれ上下方向に延在するとともに、間隔をおいて配置された複数の捕集用磁石12を、装置本体11に対して上下方向に移動させて挿抜する際に使用される磁石挿抜具100であって、隣り合う捕集用磁石12の間隔を保持した状態で複数の捕集用磁石12の上部側に係合する上部側係合部110と、隣り合う捕集用磁石12の間隔を保持した状態で複数の捕集用磁石12の下部側に係合する下部側係合部120と、互いに回動自在に連結された第1リンク部131および第2リンク部132を有し、第1リンク部131が上部側係合部110を支持し、第2リンク部132が下部側係合部120を支持する本体部130と、を備え、上部側係合部110は、第2リンク部132の下方に第1リンク部131が位置する姿勢で複数の捕集用磁石12の上部側に上部側係合部110が係合可能であり、下部側係合部120は、複数の捕集用磁石12の上部側に上部側係合部110が係合した状態で第1リンク部131に対して第2リンク部132を回動させることで、複数の捕集用磁石12の下部側に係合可能である。
【0045】
また、磁石挿抜具100を用いて、磁性体捕集装置10の装置本体11に対して複数の捕集用磁石12を上下方向に移動させることによって挿抜する磁石挿抜方法であって、装置本体11に取り付けられた複数の捕集用磁石12をそれぞれ上方に移動させることによって、複数の捕集用磁石12の上部側を露出させ、露出した複数の捕集用磁石12の上部側に、第2リンク部132の下方に第1リンク部131が位置する姿勢で上部側係合部110を係合させ、磁石挿抜具100を上方に移動させて複数の捕集用磁石12を上方に持ち上げることによって、複数の捕集用磁石12の下部側を露出させ、第1リンク部131に対して第2リンク部132を回動させることによって、下部側係合部120を上部側係合部110の下方に位置させ、露出した複数の捕集用磁石12の下部側に下部側係合部120を係合させ、磁石挿抜具100を上方に移動させることによって複数の捕集用磁石12を装置本体11から抜き出し、磁石挿抜具100の上部側係合部110および下部側係合部120に係合した状態の複数の捕集用磁石12の下端部を、装置本体11に挿入し、複数の捕集用磁石12の下端部を、装置本体11に挿入した状態で、第1リンク部131に対して第2リンク部132を回動させて複数の捕集用磁石12に対する下部側係合部120の係合を解除し、上部側係合部110によって上部側が支持された複数の捕集用磁石12を、上部側を除いて挿入し、複数の捕集用磁石12に対する上部側係合部110の係合を解除し、複数の捕集用磁石12を装置本体11に挿入する。
【0046】
これにより、隣り合う捕集用磁石12の間隔を保持した状態で複数の捕集用磁石12を装置本体11に対して着脱することが可能となるので、捕集用磁石12を取り外す作業を行う作業者は、複数の捕集用磁石12に手、指、腕等の身体の一部が挟まれることなく、互いに吸着した捕集用磁石12を引き離す作業が不要となるので、安全性および作業性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、第2リンク部132は、複数の捕集用磁石12に上部側係合部110および下部側係合部120が係合した状態で、複数の捕集用磁石12の側方側の一部を覆う板状に形成され、本体部130は、第2リンク部132に直接的または間接的に回動自在に連結され、複数の捕集用磁石12に上部側係合部110および下部側係合部120が係合した状態で、複数の捕集用磁石12の側方側のその他の部分および下方側を覆う配置が可能な板状の第3リンク部133、第4リンク部134、第5リンク部135および第6リンク部136と、上部側係合部110および下部側係合部120が係合した状態の複数の捕集用磁石12の側方側および下方側を覆う第2リンク部132、第3リンク部133、第4リンク部134、第5リンク部135および第6リンク部136によって形成された箱形状を保持する保持機構137と、を有している。
【0048】
これにより、装置本体11に対して抜き出された複数の捕集用磁石12を本体部130によって形成された箱内に収容された状態で仮置きすることが可能となるので、仮置きされた複数の捕集用磁石12に対する仮置き場に落ちている磁性体からなる塵埃等の吸着を防止することが可能となる。
【0049】
また、箱形状に保持された本体部130の外側面に位置する部分には、把持部138が形成されている。
【0050】
これにより、装置本体11に対して抜き出された複数の捕集用磁石12を移動させる場合に、作業者が把持部138を把持することによって容易に複数の捕集用磁石12を移動させることが可能となる。
【0051】
尚、前記実施形態では、捕集用磁石12を、上下方向に延びる複数の棒状部12aの上端部を連結部12bによって連結することによって、一部品としたものを示したが、これに限られるものではない。捕集用磁石としては、上下方向に延びる1本の棒状の磁石であってもよいし、上下方向に延びる1枚または複数枚の板状の磁石であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 磁性体捕集装置
11 装置本体
12 捕集用磁石
100 磁石挿抜具
110 上部側係合部
120 下部側係合部
130 本体部
131 第1リンク部
132 第2リンク部
133 第3リンク部
134 第4リンク部
135 第5リンク部
136 第6リンク部
137 保持機構
138 把持部
M 磁性体