(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140628
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230928BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20230928BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230928BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20230928BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20230928BHJP
B28D 5/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/78 C
H01L21/78 F
H01L21/78 B
B24B27/06 M
B24B41/06 L
B24B49/12
B23K26/364
B28D5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046557
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 芳昌
(72)【発明者】
【氏名】久保 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
【テーマコード(参考)】
3C034
3C069
3C158
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
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5F063FF42
5F063FF43
(57)【要約】
【課題】被加工物の両面において一致させる必要のある中心線同士の位置が所定平面内でずれた場合には、両者を一致させる様に加工位置を修正した上で、加工を進める。
【解決手段】第1の加工溝を第1の加工ユニットを用いて形成する第1の加工溝形成工程と、第1の撮像ユニットで第1の加工溝を撮像すると共に、保持テーブルに対して第1の撮像ユニットとは反対側に設けられた第2の撮像ユニットで、被加工物の厚さ方向で該第1の加工溝に対応する位置にある所定ラインを撮像する撮像工程と、第1の加工溝の第1の中心線の位置と所定ラインの第2の中心線の位置とが所定の平面内で一致しているか否かを検出する検出工程と、検出工程において第1の中心線の位置と第2の中心線の位置とが一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する修正工程と、を備える被加工物の加工方法を提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の加工方法であって、
該被加工物の表面側を保持して該表面とは反対側に位置する該被加工物の裏面側を露出させた状態で、該表面側には到達しない深さを有する第1の加工溝を第1の加工ユニットを用いて形成する第1の加工溝形成工程と、
該第1の加工溝形成工程の後、透明な材料で形成された領域を有する保持テーブルで該被加工物を保持した状態で第1の撮像ユニットで該第1の加工溝を撮像すると共に、該保持テーブルに対して該第1の撮像ユニットとは反対側に設けられた第2の撮像ユニットで、該表面に設けられ且つ該被加工物の厚さ方向で該第1の加工溝に対応する位置にある所定ラインを撮像する撮像工程と、
該撮像工程の後、該第1の撮像ユニットで撮像した該第1の加工溝の第1の中心線の位置と、該第2の撮像ユニットで撮像した該所定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致しているか否かを検出する検出工程と、
該検出工程において、該第1の中心線の位置と、該第2の中心線の位置と、が一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する修正工程と、
を備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
該撮像工程の前に、該保持テーブルで該裏面側を保持して該表面側を露出させた状態で、該被加工物の厚さ方向で該第1の加工溝の反対側に位置し、且つ、該第1の加工溝に到達しない深さを有する第2の加工溝を、第2の加工ユニットを用いて形成する第2の加工溝形成工程を更に備え、
該所定ラインは、該表面に位置する該第2の加工溝の開口であり、
該検出工程では、該第1の撮像ユニットで撮像した該第1の加工溝の該第1の中心線の位置と、該第2の撮像ユニットで撮像した該第2の加工溝の該第2の中心線の位置とが、所定の平面内で一致しているか否かを検出し、
該修正工程では、該第2の加工ユニットの加工位置を修正することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該第1の加工ユニット及び該第2の加工ユニットの少なくとも一方は、断面視での外周端部がV字形状を有する切削ブレードを有し、
該第1の加工溝及び該第2の加工溝の少なくとも一方は、該切削ブレードの外周端部の形状に応じて、断面視でV字形状を有することを特徴とする請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該第1の加工ユニット及び該第2の加工ユニットの少なくとも一方は、該被加工物に吸収される波長を有するパルス状のレーザービームを照射可能なレーザー照射ユニットであることを特徴とする請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項5】
該被加工物の厚さ方向で対応する位置にある該第1の加工溝及び該第2の加工溝が接続する様に、第3の加工ユニットで該被加工物を分割する分割工程を更に備えることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の被加工物の加工方法。
【請求項6】
該所定ラインは、該表面に設定された分割予定ラインであり、
該撮像工程では、該分割予定ラインを該第2の撮像ユニットで撮像し、
該修正工程では、該第1の加工ユニットの加工位置を修正することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項7】
被加工物の加工方法であって、
該被加工物の表面側を保持して該表面とは反対側に位置する該被加工物の裏面側を露出させた状態で、該表面に到達する深さを有する第1の加工溝を第1の加工ユニットを用いて形成する第1の加工溝形成工程と、
該第1の加工溝形成工程の後、透明な材料で形成された領域を有する保持テーブルで該被加工物の該表面側を吸引保持した状態で該保持テーブルの上方に位置する上側撮像ユニットで該裏面に露出する該第1の加工溝を撮像すると共に、該保持テーブルの下方に位置する下側撮像ユニットで、該表面側に設けられているアライメントマークを撮像する撮像工程と、
該撮像工程の後、該上側撮像ユニットで撮像した該第1の加工溝の第1の中心線の位置と、該下側撮像ユニットで撮像した該アライメントマークを基にして特定される分割予定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致しているか否かを検出する検出工程と、
該検出工程において、該第1の中心線の位置と、該第2の中心線の位置と、が一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する修正工程と、
を備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項8】
被加工物の加工方法であって、
該被加工物の裏面側を保持して該裏面とは反対側に位置する該被加工物の表面側を露出させた状態で、該裏面に到達する深さを有する第1の加工溝を第1の加工ユニットを用いて形成する第1の加工溝形成工程と、
該第1の加工溝形成工程の後、透明な材料で形成された領域を有する保持テーブルで該被加工物の該裏面側を吸引保持した状態で該保持テーブルの下方に位置する下側撮像ユニットで該裏面に露出する該第1の加工溝を撮像すると共に、該保持テーブルの上方に位置する上側撮像ユニットで、該表面側に設けられているアライメントマークを撮像する撮像工程と、
該撮像工程の後、該下側撮像ユニットで撮像した該第1の加工溝の第1の中心線の位置と、該上側撮像ユニットで撮像した該アライメントマークを基にして特定される分割予定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致しているか否かを検出する検出工程と、
該検出工程において、該第1の中心線の位置と、該第2の中心線の位置と、が一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する修正工程と、
を備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な材料で形成された領域を有する保持テーブルで保持された被加工物を加工する被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ等の電子機器には、デバイスチップが搭載されている。デバイスチップは、通常、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが表面側に複数個形成されたシリコンウェーハ等の被加工物を分割して製造される。
【0003】
被加工物を分割するためには、例えば、切削装置が用いられる。切削装置は、被加工物を吸引保持するための保持面を有するチャックテーブルを備える。チャックテーブルの上方には、切削ブレードが装着されたスピンドルを有する切削ユニットが設けられている。
【0004】
被加工物を分割する際には、通常、まず、被加工物の裏面側を保持面で吸引保持すると共に、被加工物の表面側を上方に露出させる。次に、被加工物の表面に格子状に設定された複数の分割予定ラインに沿って、切削ブレードを順次切り込んで被加工物を切削し、被加工物を個々のデバイスチップに分割する。
【0005】
被加工物を分割する際には、切削加工時にクラックやチッピングの発生を抑制するために、表面及び裏面の各々に切削溝を形成した後、切削溝同士を接続する様に、被加工物を切断する加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載の加工方法では、被加工物の表面及び裏面において、被加工物の厚さ方向で互いに対応する位置となる様に断面視でV字形状を有するV字形状溝をそれぞれ形成し、その後、表面及び裏面のV字形状溝同士を接続する様に被加工物を切断する。
【0007】
そのために、特許文献1に記載の加工方法では、まず、複数の分割予定ラインが設定されている被加工物の表面側をチャックテーブルで吸引保持し、被加工物の裏面を上方に露出させる。次いで、チャックテーブルの複数箇所に形成されているアライメント用窓及び覗き窓を介して、表面側のアライメントマーク(ターゲットマーク)を撮像する。
【0008】
アライメントを行った後、被加工物の裏面側に、分割予定ラインに沿ってV字形状溝を形成する。そして、被加工物の表裏を反転して、表面側にもV字形状溝を形成する。その後、被加工物の厚さ方向で対応する位置にある各V字形状溝を接続する様に、V字形状溝の幅よりも小さい刃厚を有する切削ブレードで被加工物を切断する。
【0009】
しかし、上述の切削装置を用いて被加工物の裏面側を切削する場合、例えば、表面側のアライメントマークの形状に歪みがあると、切削ブレードの位置合わせずれに起因して、表面側のV字形状溝の中心線(即ち、V字形状溝の長手方向と直交するV字形状溝の幅方向におけるV字形状溝の幅の中心位置を通り、且つ、当該長手方向と平行である中心線)の位置と、裏面側のV字形状溝の中心線の位置とが、所定の平面内でずれることがある。
【0010】
ところで、被加工物の表面から裏面まで被加工物を切断する場合には、被加工物の厚さ方向に対して切削ブレードが斜めに切り込まれることにより、所謂、斜め切りが生じる場合がある(例えば、特許文献2参照)。斜め切りが生じると、通常、裏面に露出する切削溝の中心線の位置と、表面に露出する切削溝の中心線の位置とが、所定の平面内でずれる。
【0011】
それゆえ、表面に露出する切削溝の中心線の位置と、表面の分割予定ラインの中心線の位置とを、所定の平面内で一致させると、今度は、裏面に露出する切削溝の中心線の位置と、表面の分割予定ラインの中心線の位置とが、所定の平面内でずれることになる。
【0012】
しかし、斜め切りが生じる場合であっても、デバイスチップの形状の仕様要求を満たすために、裏面に露出する切削溝の中心線の位置と、表面の分割予定ラインの中心線の位置とを、所定の平面内で一致させることが必要な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6-275583号公報
【特許文献2】特開2020-113635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、被加工物の両面において一致させる必要のある中心線同士の位置が所定の平面内でずれた場合には、両者を一致させる様に加工位置を修正した上で、加工を進めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、被加工物の加工方法であって、該被加工物の表面側を保持して該表面とは反対側に位置する該被加工物の裏面側を露出させた状態で、該表面側には到達しない深さを有する第1の加工溝を第1の加工ユニットを用いて形成する第1の加工溝形成工程と、該第1の加工溝形成工程の後、透明な材料で形成された領域を有する保持テーブルで該被加工物を保持した状態で第1の撮像ユニットで該第1の加工溝を撮像すると共に、該保持テーブルに対して該第1の撮像ユニットとは反対側に設けられた第2の撮像ユニットで、該表面に設けられ且つ該被加工物の厚さ方向で該第1の加工溝に対応する位置にある所定ラインを撮像する撮像工程と、該撮像工程の後、該第1の撮像ユニットで撮像した該第1の加工溝の第1の中心線の位置と、該第2の撮像ユニットで撮像した該所定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致しているか否かを検出する検出工程と、該検出工程において、該第1の中心線の位置と、該第2の中心線の位置と、が一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する修正工程と、を備える被加工物の加工方法が提供される。
【0016】
好ましくは、該撮像工程の前に、該保持テーブルで該裏面側を保持して該表面側を露出させた状態で、該被加工物の厚さ方向で該第1の加工溝の反対側に位置し、且つ、該第1の加工溝に到達しない深さを有する第2の加工溝を、第2の加工ユニットを用いて形成する第2の加工溝形成工程を更に備え、該所定ラインは、該表面に位置する該第2の加工溝の開口であり、該検出工程では、該第1の撮像ユニットで撮像した該第1の加工溝の該第1の中心線の位置と、該第2の撮像ユニットで撮像した該第2の加工溝の該第2の中心線の位置とが、所定の平面内で一致しているか否かを検出し、該修正工程では、該第2の加工ユニットの加工位置を修正する。
【0017】
また、好ましくは、該第1の加工ユニット及び該第2の加工ユニットの少なくとも一方は、断面視での外周端部がV字形状を有する切削ブレードを有し、該第1の加工溝及び該第2の加工溝の少なくとも一方は、該切削ブレードの外周端部の形状に応じて、断面視でV字形状を有する。
【0018】
また、好ましくは、該第1の加工ユニット及び該第2の加工ユニットの少なくとも一方は、該被加工物に吸収される波長を有するパルス状のレーザービームを照射可能なレーザー照射ユニットである。
【0019】
また、好ましくは、当該加工方法は、該被加工物の厚さ方向で対応する位置にある該第1の加工溝及び該第2の加工溝が接続する様に、第3の加工ユニットで該被加工物を分割する分割工程を更に備える。
【0020】
また、好ましくは、該所定ラインは、該表面に設定された分割予定ラインであり、該撮像工程では、該分割予定ラインを該第2の撮像ユニットで撮像し、該修正工程では、該第1の加工ユニットの加工位置を修正する。
【0021】
本発明の他の態様によれば、被加工物の加工方法であって、該被加工物の表面側を保持して該表面とは反対側に位置する該被加工物の裏面側を露出させた状態で、該表面に到達する深さを有する第1の加工溝を第1の加工ユニットを用いて形成する第1の加工溝形成工程と、該第1の加工溝形成工程の後、透明な材料で形成された領域を有する保持テーブルで該被加工物の該表面側を吸引保持した状態で該保持テーブルの上方に位置する上側撮像ユニットで該裏面に露出する該第1の加工溝を撮像すると共に、該保持テーブルの下方に位置する下側撮像ユニットで、該表面側に設けられているアライメントマークを撮像する撮像工程と、該撮像工程の後、該上側撮像ユニットで撮像した該第1の加工溝の第1の中心線の位置と、該下側撮像ユニットで撮像した該アライメントマークを基にして特定される分割予定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致しているか否かを検出する検出工程と、該検出工程において、該第1の中心線の位置と、該第2の中心線の位置と、が一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する修正工程と、を備える被加工物の加工方法が提供される。
【0022】
本発明の更なる他の態様によれば、被加工物の加工方法であって、該被加工物の裏面側を保持して該裏面とは反対側に位置する該被加工物の表面側を露出させた状態で、該裏面に到達する深さを有する第1の加工溝を第1の加工ユニットを用いて形成する第1の加工溝形成工程と、該第1の加工溝形成工程の後、透明な材料で形成された領域を有する保持テーブルで該被加工物の該裏面側を吸引保持した状態で該保持テーブルの下方に位置する下側撮像ユニットで該裏面に露出する該第1の加工溝を撮像すると共に、該保持テーブルの上方に位置する上側撮像ユニットで、該表面側に設けられているアライメントマークを撮像する撮像工程と、該撮像工程の後、該下側撮像ユニットで撮像した該第1の加工溝の第1の中心線の位置と、該上側撮像ユニットで撮像した該アライメントマークを基にして特定される分割予定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致しているか否かを検出する検出工程と、該検出工程において、該第1の中心線の位置と、該第2の中心線の位置と、が一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する修正工程と、を備える被加工物の加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係る加工方法では、被加工物の裏面側に形成された第1の加工溝を第1の撮像ユニットで撮像すると共に、被加工物の表面に設けられ、且つ、被加工物の厚さ方向で第1の加工溝に対応する位置にある所定ラインを第2の撮像ユニットで撮像する(撮像工程)。
【0024】
撮像工程の後、第1の撮像ユニットで撮像した第1の加工溝の第1の中心線の位置と、第2の撮像ユニットで撮像した所定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致しているか否かを検出する(検出工程)。そして、第1の中心線の位置と、第2の中心線の位置と、が一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する(修正工程)。
【0025】
この様に、被加工物の表面及び裏面を直接的に観察することにより第1の中心線の位置と第2の中心線の位置とのずれを検出するので、仮に中心線同士の位置ずれが生じた場合でも、中心線同士の位置が一致する様に修正したうえで、被加工物を加工できる。それゆえ、被加工物の加工精度を向上できる。
【0026】
本発明の他の態様に係る加工方法では、上側撮像ユニットで撮像した第1の加工溝の第1の中心線の位置と、下側撮像ユニットで撮像したアライメントマークを基にして特定される分割予定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する。
【0027】
本発明の更なる他の態様に係る加工方法では、下側撮像ユニットで撮像した第1の加工溝の第1の中心線の位置と、上側撮像ユニットで撮像したアライメントマークを基にして特定される分割予定ラインの第2の中心線の位置と、が所定の平面内で一致していない場合には、一致する様に加工位置を修正する。
【0028】
それゆえ、斜め切りが生じる場合であっても、第1の中心線の位置と、第2の中心線の位置と、を一致させることができる。この様に、被加工物の両面において一致させる必要のある中心線同士を一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図12】
図12(A)は上側撮像ユニットで取得した画像の一例であり、
図12(B)は下側撮像ユニットで取得した画像の一例である。
【
図13】
図13(A)は加工溝の中心線同士の位置が一致している場合の断面図であり、
図13(B)は加工溝の中心線同士の位置がずれている場合の断面図である。
【
図14】追加の第2の加工溝形成工程を示す図である。
【
図16】第2の実施形態に係る第1の加工溝形成工程を示す図である。
【
図17】第2の実施形態に係る第2の加工溝形成工程を示す図である。
【
図18】第2の実施形態に係る撮像工程を示す図である。
【
図19】第2の実施形態に係る追加の第2の加工溝形成工程を示す図である。
【
図20】第2の実施形態に係る分割工程を示す図で合ある。
【
図21】第3の実施形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。
【
図22】第3の実施形態に係る第1の加工溝形成工程を示す図である。
【
図23】第3の実施形態に係る第2の加工溝形成工程を示す図である。
【
図24】第3の実施形態に係る撮像工程を示す図である。
【
図25】第3の実施形態に係る追加の第2の加工溝形成工程を示す図である。
【
図26】第3の実施形態に係る分割工程を示す図である。
【
図27】
図27(A)は拡張装置等の一部断面側面図であり、
図27(B)は第4の実施形態に係る分割工程を示す図である。
【
図28】第5の実施形態に係る加工方法のフロー図である。
【
図29】第5の実施形態に係る第1の加工溝形成工程を示す図である。
【
図30】第5の実施形態に係る撮像工程を示す図である。
【
図31】
図31(A)は第5の実施形態において中心線同士の位置が一致している場合の断面図であり、
図31(B)は第5の実施形態において中心線同士の位置が一致していない場合の断面図である。
【
図32】第6の実施形態に係る第1の加工溝形成工程を示す図である。
【
図33】第6の実施形態に係る撮像工程を示す図である。
【
図34】第7の実施形態に係る撮像工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る切削装置2の斜視図である。なお、
図1では、構成要素の一部を機能ブロックで示す。
【0031】
図1に示すX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(鉛直方向)は、互いに直交する。X軸方向は、+X及び-X方向と平行である。同様に、Y軸方向は、+Y及び-Y方向と平行であり、Z軸方向は、+Z及び-Z方向と平行である。
【0032】
切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の前方(+Y方向)の角部には、開口4aが形成されており、開口4a内には、カセットエレベータ(不図示)が設けられている。カセットエレベータの上面には、複数の被加工物11(
図2参照)を収容するためのカセット6が載せられる。
【0033】
被加工物11は、例えば、シリコン(Si)、炭化珪素(SiC)等の半導体材料で形成された円板状の単結晶基板(ウェーハ)を含む。但し、被加工物11の形状、構造、大きさ等に制限はない。被加工物11は、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料で形成された基板を有してもよい。
【0034】
図2に示す様に、被加工物11の表面11a側には、格子状に複数の分割予定ライン13が設定されている。複数の分割予定ライン13によって区画された各領域には、IC等のデバイス15、アライメントマーク(不図示)等が形成されている。
【0035】
表面11a側には、被加工物11の径よりも大径のテープ(ダイシングテープ)17が貼り付けられている。テープ17は、基材層と、粘着層(糊層)との積層構造を有し、可視光、赤外光等の所定の波長帯域の光が透過可能な透明な材料で形成されている。
【0036】
基材層は、例えば、ポリオレフィン(PO)等で形成されている。粘着層は、例えば、紫外線(UV)硬化型のアクリル樹脂等の粘着性樹脂で形成されている。このテープ17の粘着層の中央部には、被加工物11の表面11aが貼り付けられている。
【0037】
テープ17の外周部分には、金属で形成された環状のフレーム19の一面が貼り付けられ、被加工物11がテープ17を介してフレーム19で支持された被加工物ユニット21が、形成されている。
【0038】
図2は、被加工物ユニット21の斜視図である。被加工物ユニット21は、表面11aとは反対側に位置する被加工物11の裏面11bが露出した状態で、カセット6に収容されている。
【0039】
図1に示す様に、開口4aの後方(-Y方向)には、矩形の開口4bが形成されている。開口4bには、円板状のチャックテーブル(保持テーブル)10が配置されている。チャックテーブル10の外周部には、円周方向に沿って複数の吸引口が形成された円環状のフレーム吸引板(不図示)が設けられる。
【0040】
ここで、
図3から
図6を参照して、チャックテーブル10等について更に詳しく説明する。
図3は、チャックテーブル10の斜視図であり、
図4は、チャックテーブル10の一部断面側面図である。但し、
図4では、便宜上、ハッチングを省略している。
【0041】
図5は、
図4の領域Aの拡大図である。
図5では、構成要素の一部を機能ブロックで示す。チャックテーブル10は、円板状の保持部材12を有する。保持部材12は、略平坦な一面12aと、当該一面12aとは反対側に位置する略平坦な他面12bと、を含む。
【0042】
保持部材12は、可視光、赤外光(例えば、近赤外光)が透過する透明な材料で形成されている。保持部材12は、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、又は、ソーダガラスで形成されるが、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、又は、フッ化マグネシウムで形成されてもよい。
【0043】
保持部材12の内部には、保持部材12を上面視した場合に円板の中心軸を横切る様に、直線状の第1吸引路12c1が形成されている。また、一面12aに略平行な平面において第1吸引路12c1と直交する態様で、直線状の第2吸引路12c2が形成されている。
【0044】
第1吸引路12c1及び第2吸引路12c2は、円板の中心軸に位置する中心点12c3で互いに接続している。一面12aの外周部には、複数の開口部12dが形成されている。各開口部12dは、一面12aから他面12bに達しない所定の深さまで形成されている。
【0045】
第1吸引路12c1の両端部と、第2吸引路12c2の両端部とには、それぞれ開口部12dが形成されている。各開口部12dは、保持部材12の外周部の所定の深さに形成されている外周吸引路12eにより接続されている。
【0046】
開口部12dの外周側には径方向に沿って延びる吸引路12fが形成されており、吸引路12fには、エジェクタ等の吸引源14が接続されている(
図5参照)。吸引源14を動作させて負圧を発生させると、開口部12dには負圧が発生する。それゆえ、一面12aは、被加工物ユニット21(被加工物11)を吸引して保持する保持面として機能する。
【0047】
第1吸引路12c1、第2吸引路12c2、開口部12d、外周吸引路12e、吸引路12f等の流路では、入射した光の一部が散乱又は反射される。それゆえ、保持部材12の流路は、一面12a又は他面12bから見た場合に、完全に透明ではなく、透光性を有する場合や不透明である場合がある。
【0048】
しかし、これらの流路を除く保持部材12の所定の領域は、一面12aから他面12bまで透明である。例えば、第1吸引路12c1及び第2吸引路12c2により4分割され、且つ、保持部材12の径方向において外周吸引路12eよりも内側に位置する領域は、一面12aから他面12bまで透明である。
【0049】
保持部材12の外周には、ステンレス等の金属材料で形成された円筒状の枠体16が設けられている。枠体16の上部には開口部16aが形成されており(
図5参照)、保持部材12は、この開口部16aを塞ぐ様に配置されている。
【0050】
枠体16は、
図3及び
図4に示す様に、X軸方向移動テーブル18に支持されている。X軸方向移動テーブル18は、長方形の底板18aを含む。底板18aの前方(+Y方向)の端部には、長方形の側板18bの下端部が接続されている。
【0051】
側板18bの上端部には、底板18aと同じ長方形の天板18cの前方の端部が接続されている。底板18a及び天板18cは、Z軸方向で重なる様に配置されており、底板18a、側板18b及び天板18cにより、後方(-Y方向)側及びX軸方向の両側が開放された空間18dが形成されている。
【0052】
底板18aの下方(-Z方向)側は、静止基台(不図示)の上面に固定された一対のX軸ガイドレール20にスライド可能に取り付けられている。X軸ガイドレール20の近傍には、X軸リニアスケール20aが設けられている。
【0053】
X軸方向移動テーブル18の下面側には、読み取りヘッド(不図示)が設けられている。X軸リニアスケール20aの目盛りを読み取りヘッドを利用して検出することにより、X軸方向移動テーブル18のX軸方向の位置(座標)や、X軸方向の移動量が算出される。
【0054】
底板18aの下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸方向に略平行に配置されたねじ軸22が、ボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。ねじ軸22の一端部には、モーター24が連結されている。
【0055】
モーター24を動作させると、ねじ軸22が回転し、X軸方向移動テーブル18は、X軸方向に沿って移動する。X軸方向移動テーブル18、一対のX軸ガイドレール20、ねじ軸22、モーター24等は、X軸方向移動機構26を構成する。
【0056】
天板18cの上面側には、枠体16が、Z軸方向に略平行な回転軸の周りに回転可能に支持されている。天板18cよりも上方に位置する枠体16の側面は、プーリー部16bとして機能する。
【0057】
側板18bの外側側面には、モーター等の回転駆動源30が設けられている。回転駆動源30の回転軸には、プーリー30aが設けられている。プーリー30a及びプーリー部16bには、ベルト28がかけられている。
【0058】
回転駆動源30を動作させると、枠体16は、Z軸方向に略平行な回転軸の周りに回転する。プーリー30aの回転を制御することで、回転軸の周りで任意の角度だけチャックテーブル10は回転する。
【0059】
X軸方向移動機構26のX軸方向の延長線上には、下側撮像ユニット54(第1の撮像ユニット)をY軸方向に移動させるY軸方向移動機構32が設けられている。Y軸方向移動機構32は、Y軸方向に略平行な一対のY軸ガイドレール34を備える。一対のY軸ガイドレール34は、静止基台(不図示)の上面に固定されている。
【0060】
Y軸ガイドレール34上には、Y軸方向移動テーブル36がスライド可能に取り付けられている。Y軸方向移動テーブル36の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸方向に略平行に配置されたねじ軸38がボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。
【0061】
ねじ軸38の一端部には、モーター40が連結されている。モーター40でねじ軸38を回転させれば、Y軸方向移動テーブル36は、Y軸方向に沿って移動する。Y軸ガイドレール34の近傍には、Y軸リニアスケール(不図示)が設けられている。
【0062】
また、Y軸方向移動テーブル36の下面側には、読み取りヘッド(不図示)が設けられている。Y軸リニアスケールの目盛りを読み取りヘッドで検出することにより、Y軸方向移動テーブル36のY軸方向の位置(座標)や、Y軸方向の移動量が算出される。
【0063】
Y軸方向移動テーブル36の上面には、Z軸方向移動機構42が設けられている。Z軸方向移動機構42は、Y軸方向移動テーブル36の上面に固定された支持構造42aを有する。
図6に示す様に、支持構造42aの一面には、Z軸方向に略平行に配置された一対のZ軸ガイドレール44が固定されている。
【0064】
Z軸ガイドレール44には、Z軸移動プレート46がスライド可能に取り付けられている。Z軸移動プレート46の支持構造42a側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸方向に略平行に配置されたねじ軸48がボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。
【0065】
ねじ軸48の上端部には、モーター50が連結されている。モーター50でねじ軸48を回転させれば、Z軸移動プレート46は、Z軸方向に沿って移動する。Z軸ガイドレール44の近傍には、Z軸リニアスケール(不図示)が設けられている。
【0066】
Z軸移動プレート46には、読み取りヘッド(不図示)が設けられている。Z軸リニアスケールの目盛りを読み取りヘッドで検出することにより、Z軸移動プレート46のZ軸方向の位置(座標)等が算出される。
【0067】
Z軸移動プレート46には、長手部がX軸方向に沿って配置された支持アーム52を介して、下側撮像ユニット54が固定されている。
図6は、下側撮像ユニット54の拡大斜視図である。下側撮像ユニット54は、低倍率カメラ56と、高倍率カメラ58とを含む、所謂、顕微鏡カメラユニットである。
【0068】
低倍率カメラ56及び高倍率カメラ58の各々は、集光レンズ等の所定の光学系と、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子と、を有する(いずれも不図示)。
【0069】
本例では、可視光を光電変換可能な撮像素子を用いる。下側撮像ユニット54は、チャックテーブル10よりも下方(即ち、チャックテーブル10に対して上側撮像ユニット86a、86bとは反対側)に設けられている。また、各集光レンズの光軸は、保持部材12の他面12bに略垂直に配置されている。
【0070】
低倍率カメラ56の側方には、上方に配置される被加工物11等に対して可視光を照射する照明装置56aが設けられている。同様に、高倍率カメラ58の側方にも、照明装置58aが設けられている。
【0071】
下側撮像ユニット54で被加工物11を撮像する場合には、X軸方向移動テーブル18を移動させて、空間18dに下側撮像ユニット54を配置する。そして、保持部材12を介して被加工物11を下方から撮像すれば、表面11a側の画像を取得できる。
【0072】
ここで、
図1に戻り、切削装置2の他の構成要素について説明する。天板18cのX軸方向の両側には、伸縮自在な蛇腹状カバーが、開口4bを覆う態様で取り付けられている。また、開口4bの上方には、Y軸方向において開口4bを跨ぐ様に、門型の支持構造4cが設けられている。
【0073】
支持構造4cの-X方向の一側面には、2つの加工ユニット移動機構(割り出し送りユニット、切り込み送りユニット)60が設けられている。各加工ユニット移動機構60は、支持構造4cの一側面に固定された一対のY軸ガイドレール62を共有している。
【0074】
一対のY軸ガイドレール62は、Y軸方向に略平行に配置されている。一対のY軸ガイドレール62には、2つのY軸移動プレート64が互いに独立にスライド可能な態様で取り付けられている。
【0075】
Y軸移動プレート64の一面には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸方向に略平行に配置されたねじ軸66がボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。各Y軸移動プレート64のナット部は、異なるねじ軸66に連結されている。
【0076】
各ねじ軸66の一端部には、モーター68が連結されている。モーター68でねじ軸66を回転させれば、Y軸移動プレート64は、Y軸方向に沿って移動する。
【0077】
後方(-Y方向)側に位置するY軸移動プレート64の他面に設けられた一対のZ軸ガイドレール72には、Z軸移動プレート70aの一面側がスライド可能に取り付けられている。
【0078】
同様に、前方(+Y方向)側に位置するY軸移動プレート64の他面に設けられた一対のZ軸ガイドレール72には、Z軸移動プレート70bの一面側がスライド可能に取り付けられている。
【0079】
Z軸移動プレート70a及びZ軸移動プレート70bの各一面には、それぞれナット部(不図示)が設けられており、ナット部には、ねじ軸74がボール(不図示)を介して回転可能に連結されている。各ねじ軸74は、Z軸方向に略平行に配置されている。
【0080】
ねじ軸74の上端部には、モーター76が連結されている。モーター76でねじ軸74を回転させれば、Z軸移動プレート70a及びZ軸移動プレート70bは、それぞれZ軸方向に沿って移動する。
【0081】
後方(-Y方向)側に配置されたZ軸移動プレート70aの下部には、第1の切削ユニット(第1の加工ユニット、第2の加工ユニット)78aが設けられている。第1の切削ユニット78aは、筒状のスピンドルハウジング80aを備える。
【0082】
スピンドルハウジング80a内には、円柱状のスピンドル82a(
図8参照)の一部が回転可能に収容されている。スピンドル82aの一端部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が設けられている。
【0083】
スピンドル82aの他端部には、円環状の切り刃を有する第1の切削ブレード84aが装着されている。本例の第1の切削ブレード84aは、ワッシャー型(ハブレス型)であるが、ハブ型であってもよい。
【0084】
Z軸移動プレート70aの下部には、上側撮像ユニット(第2の撮像ユニット)86aが固定されている。つまり、上側撮像ユニット86aの位置は、第1の切削ユニット78aに対して固定されている。
【0085】
上側撮像ユニット86aは、チャックテーブル10よりも上方に配置されている。上側撮像ユニット86aは、所謂、顕微鏡カメラユニットである。上側撮像ユニット86aは、光軸は、保持部材12の一面12aに略垂直に配置された集光レンズ等を含む所定の光学系と、可視光等を光電変換可能な撮像素子と、を有する(いずれも不図示)。
【0086】
同様に、前方(+Y方向)側に配置されたZ軸移動プレート70bの下部には、第3の切削ユニット(第3の加工ユニット)78bが設けられている。第3の切削ユニット78bも、スピンドルハウジング80bを備え、スピンドルハウジング80b内には、円柱状のスピンドル82b(
図15参照)の一部が回転可能に収容されている。
【0087】
スピンドル82bの一端部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が設けられており、スピンドル82bの他端部には、第3の切削ブレード84bが装着されている(
図15参照)。本例の第3の切削ブレード84bは、ワッシャー型(ハブレス型)であるが、ハブ型であってもよい。
【0088】
但し、第3の切削ブレード84bの刃厚84b
1(
図15参照)は、第1の切削ブレード84aの刃厚84a
1(
図8参照)に比べて薄い。それゆえ、第3の切削ブレード84bで被加工物11を切削した際に形成される加工溝(切削溝)の幅は、第1の切削ブレード84aで形成される第1の加工溝(切削溝)13aの幅13a
1に比べて小さくなる(
図15参照)。
【0089】
Z軸移動プレート70bの下部には、第3の切削ユニット78bに対する位置が固定された上側撮像ユニット86bが設けられている。上側撮像ユニット86bの構造等は、上側撮像ユニット86aと略同じである。
【0090】
図1に示す様に、開口4bの後方(-Y方向)には、円形の開口4dが設けられている。開口4d内には、切削後の被加工物11等を純水等の洗浄水で洗浄するための洗浄ユニット90が設けられている。
【0091】
基台4上には、筐体(不図示)が設けられており、筐体の前方(+Y方向)の側面には、作業者が指示を入力するための入力部(即ち、入力インターフェース)と、作業者に情報を表示するための表示部とを兼ねるタッチパネル92が設けられている。
【0092】
タッチパネル92には、例えば、上側撮像ユニット86a、86b及び下側撮像ユニット54で撮像した画像が表示される。タッチパネル92には、上側撮像ユニット86aで撮像した画像88aと共に、画像処理により上側撮像ユニット86aの基準線92aが表示される(
図12(A)参照)。
【0093】
基準線92aは、上側撮像ユニット86aの撮像領域の中心を横断しX軸方向に略平行な直線である。上側撮像ユニット86aは、被加工物11を直接的に観察するための目として機能する。
【0094】
同様に、タッチパネル92には、下側撮像ユニット54で撮像した画像88bと共に、画像処理により基準線92bが表示される(
図12(B)参照)。基準線92bも、基準線92aと同様に、下側撮像ユニット54の撮像領域の中心を横断しX軸方向に略平行な直線である。
【0095】
下側撮像ユニット54も、上側撮像ユニット86aと同様に、被加工物11を直接的に観察するための目として機能する。なお、上側撮像ユニット86a及び下側撮像ユニット54の原点位置は、一致する様に予め設定されているので、基準線92a及び基準線92bは、X‐Y平面で互いに一致する様に予め設定されており、ずれることはない。
【0096】
タッチパネル92には、下側撮像ユニット54と上側撮像ユニット86a、86bとで撮像された画像に加えて、加工条件、GUI(Graphical User Interface)等が表示される。切削装置2は、タッチパネル92等を制御する制御部94を備える。
【0097】
制御部94は、吸引源14、X軸方向移動機構26、回転駆動源30、Y軸方向移動機構32、Z軸方向移動機構42、下側撮像ユニット54、加工ユニット移動機構60、第1の切削ユニット78a、第3の切削ユニット78b、上側撮像ユニット86a、86b等も制御する。
【0098】
制御部94は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、記憶装置96と、を含むコンピュータによって構成されている。記憶装置96は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置とを、有する。
【0099】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御部94の機能が実現される。次に、切削装置2を用いて被加工物11を切削する切削方法(加工方法)について説明する。
【0100】
図7は、第1の実施形態に係る切削方法のフロー図である。被加工物11を切削するためには、まず、裏面11b側を上方に露出させた状態で、チャックテーブル10でテープ17を介して表面11a側を吸引保持する(保持工程S10)。
【0101】
保持工程S10の後、第1の切削ユニット78aを用いて裏面11b側に第1の加工溝13aを形成する(第1の加工溝形成工程S20)。
図8は、第1の加工溝形成工程S20を示す図である。
【0102】
第1の加工溝形成工程S20では、まず、下側撮像ユニット54で表面11a側を撮像して、アライメントを行う。次いで、回転駆動源30を動作させて第1の方向に沿う分割予定ライン13をX軸方向と略平行にする(所謂、θ合わせを行う)。
【0103】
次いで、1つの分割予定ライン13の延長線上に第1の切削ブレード84aを配置すると共に、高速(例えば、30,000rpm)で回転する第1の切削ブレード84aの下端を、裏面11bから表面11aには到達しない所定の深さ23aに位置付ける。
【0104】
この状態で、第1の切削ブレード84aに純水等の切削水を供給しながら、X軸方向移動テーブル18を加工送りする(即ち、X軸方向に沿って移動させる)ことにより、所定の深さ23aを有する1つの第1の加工溝13a(所謂、ハーフカット溝)を形成する。加工送り速度は、例えば、30mm/sとする。
【0105】
但し、深さ23aは、被加工物11の厚さ11cの半分でなくてもよい。本実施形態の深さ23aは、被加工物11の厚さ11cの半分よりも小さい。例えば、被加工物11の厚さ11cが100μmである場合、深さ23aは25μmに設定される。但し、深さ23aは、表面11aに到達しない程度に、適宜調節してよい。
【0106】
1つの第1の加工溝13aを形成した後、所定の割り出し送り量だけ第1の切削ユニット78aを割り出し送りし、第1の方向に沿う他の分割予定ライン13に沿って裏面11b側を切削する。
【0107】
同様にして、第1の方向に沿う残りの全ての分割予定ライン13に沿って裏面11b側を切削した後、チャックテーブル10を90度回転させて、第1の方向に直交する第2の方向に沿う全ての分割予定ライン13をX軸方向と略平行にする。
【0108】
そして、第2の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って裏面11b側を同様に切削し、第1の加工溝13aを形成する。裏面11b側の全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削した後、洗浄ユニット90で被加工物11を洗浄する。その後、被加工物ユニット21を切削装置2から取り出す。
【0109】
その後、
図9に示す様に、裏面11b及びフレーム19の他面に別のテープ(ダイシングテープ)27を貼り付けて、裏面11b側にテープ27が貼り付けられ且つ表面11aが露出した被加工物ユニット31を形成する(反転工程S30)。
【0110】
図9は、反転工程S30後の被加工物11の断面図である。なお、切削装置2がテープ貼り替え装置を有する場合には、切削装置2から被加工物ユニット21を取り出すことなく、切削装置2内で反転工程S30を行なってもよい。
【0111】
テープ27は、テープ17と同様に、基材層と、粘着層(糊層)との積層構造を有し、可視光等の所定の波長帯域の光が透過可能な透明な材料で形成されている。反転工程S30の後、チャックテーブル10で被加工物11の裏面11b側を吸引保持し、表面11a側を上方に露出させる。
【0112】
この状態で、第1の切削ユニット78aを用いて第2の加工溝形成工程S40を行う。
図10は、第2の加工溝形成工程S40を示す図である。第2の加工溝形成工程S40でも、第1の加工溝形成工程S20と同様に、まず、上側撮像ユニット86aでアライメント及びθ合わせを行う。
【0113】
次いで、1つの分割予定ライン13の延長線上に第1の切削ブレード84aを位置付けると共に、高速で回転する第1の切削ブレード84aの下端を、表面11aから第1の加工溝13aに達しない所定の深さ23bに位置付ける。
【0114】
そして、同様に切削水を供給しながらX軸方向移動テーブル18を加工送りすることにより、被加工物11の厚さ方向11dで第1の加工溝13aの反対側に位置し、且つ、第1の加工溝13aに到達しない所定の深さ23bを有する第2の加工溝13bを1本だけ形成する。
【0115】
なお、表面11a側の切削時にも、第1の切削ブレード84aの回転数を、例えば、30,000rpmとし、加工送り速度を、例えば、30mm/sとする。
【0116】
第2の加工溝13bも、第1の加工溝13aと同様に、所謂、ハーフカット溝である。但し、深さ23bは、被加工物11の厚さ11cの半分でなくてもよい。本実施形態の深さ23bは、被加工物11の厚さ11cの半分よりも小さい。
【0117】
例えば、被加工物11の厚さ11cが100μmである場合、深さ23bは25μmに設定される。但し、深さ23bは、第1の加工溝13aに到達しない限り、適宜調節してよい。
【0118】
第2の加工溝形成工程S40の後、上側撮像ユニット86aで表面11a側の第2の加工溝13bを撮像すると共に、下側撮像ユニット54(例えば、高倍率カメラ58及び照明装置58a)で裏面11b側の第1の加工溝13aを撮像する(撮像工程S50)。
【0119】
図11は、撮像工程S50を示す図である。上側撮像ユニット86aは、上方に露出している表面11aに焦点を合わせて、表面11aに位置する第2の加工溝13bの細長い開口(即ち、所定ライン)13b
3を撮像する。
【0120】
開口13b3は、表面11aに位置しており、且つ、厚さ方向11dで第1の加工溝13aに対応する位置にある。撮像工程S50では、同様に、下側撮像ユニット54は、テープ27を介して裏面11bに焦点を合わせて、第1の加工溝13aの細長い開口13a3を撮像する。
【0121】
図12(A)は、上側撮像ユニット86aで取得した表面11a側の画像88aの一例である。なお、
図12(A)に示す画像88aでは、第2の加工溝13bの第2の中心線13b
2と、基準線92aと、が一致している。
【0122】
第2の中心線13b
2は、第2の加工溝13bにおける開口13b
3の幅方向の中心に位置し、且つ、第2の加工溝13bの当該幅方向と直交する長手方向と略平行である。第2の中心線13b
2は、切削時における第1の切削ブレード84aの切り刃の厚さ方向の中心84a
2(
図10参照)に略対応する。
【0123】
図12(B)は、下側撮像ユニット54で取得した裏面11b側の画像88bの一例である。
図12(B)に示す画像88bでは、第1の加工溝13aの第1の中心線13a
2と、基準線92bと、が一致している。
【0124】
同様に、第1の中心線13a
2は、第1の加工溝13aにおける開口13a
3の幅方向の中心に位置し、且つ、第1の加工溝13aの当該幅方向と直交する長手方向と略平行である。第1の中心線13a
2は、切削時における第1の切削ブレード84aの切り刃の厚さ方向の中心84a
2(
図8参照)に略対応する。
【0125】
なお、上述の様に、基準線92a及び基準線92bはX‐Y平面で互いに一致しており、X‐Y平面内の同じ領域をZ軸方向の異なる向きで撮像することで、画像88a、88bが得られている。
【0126】
撮像工程S50の後、制御部94は、画像88a及び画像88bに基づいて、第1の加工溝13aと、第2の加工溝13bと、のずれを検出する(検出工程S60)。
【0127】
具体的には、検出工程S60では、制御部94が画像88a、88bに対して所定の画像処理を行うことで、第1の加工溝13aの第1の中心線13a2の位置と、第2の加工溝13bの第2の中心線13b2の位置とが、X‐Y平面(所定の平面)内で一致しているか否かを検出する。
【0128】
例えば、まず、画像処理により、第1の加工溝13aの第1の中心線13a2と、第2の加工溝13bの第2の中心線13b2と、の各位置(例えば、中心点12c3を原点とする座標)を特定する。次いで、第1の中心線13a2及び第2の中心線13b2間のずれに対応する長さが算出される。
【0129】
画像88a及び画像88b中の1画素に相当する長さは、カメラの倍率等に応じて予め設定されているので、第1の中心線13a2及び第2の中心線13b2間の画素数に基づいて、ずれ量が算出される。なお、画像処理や、ずれ量を算出するプログラムは、記憶装置96の補助記憶装置に予め記憶されている。
【0130】
図13(A)は、第1の加工溝13aの第1の中心線13a
2の位置と、第2の加工溝13bの第2の中心線13b
2の位置とが、X‐Y平面内で一致している場合の被加工物11の一部の拡大断面図である。一致している場合(S62でYES)、追加の第2の加工溝形成工程S80へ進む。
【0131】
図13(B)は、第1の加工溝13aの第1の中心線13a
2の位置と、第2の加工溝13bの第2の中心線13b
2の位置とが、X‐Y平面内でずれている場合の被加工物11の一部の拡大断面図である。
【0132】
中心線同士の位置のずれは、種々の原因により生じ得る。例えば、表面11a側に形成されているアライメントマークの形状に歪みがある場合には、第1の切削ブレード84aを切り込むべき位置と、実際に被加工物11が切削された位置とが、ずれることがある。
【0133】
しかし、本実施形態では、上側撮像ユニット86aで表面11a側を撮像し、下側撮像ユニット54で裏面11b側を撮像することにより、第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bを直接的に観察するので、このずれを検出できる。
【0134】
図13(B)では、Y軸方向における第2の中心線13b
2の基準線92bからのずれ量及びずれ方向をベクトルB
1で示す。検出工程S60において、第1の中心線13a
2の位置と第2の中心線13b
2の位置とがX‐Y平面内で一致していない場合、制御部94は、アラームにより、作業者に、切削位置の修正を促す。
【0135】
本明細書において、第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とがX‐Y平面内で一致していない(即ち、ずれる)とは、X‐Y平面内での第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とのY軸方向のずれ量が、第1の閾値(例えば、5μm)よりも大きいことを意味する。
【0136】
ずれ量が第1の閾値よりも大きい場合、制御部94は、作業者に切削位置の修正を促す。作業者は、画像88aを見ながら、タッチパネル92を操作して、基準線92a(即ち、上側撮像ユニット86a)を移動させて、基準線92aを第2の中心線13b2に一致させる(修正工程S70)。
【0137】
修正工程S70における基準線92aの移動方向及び移動距離に基づいて、制御部94は、切削位置のずれ量及びずれ方向(
図13(B)に示すベクトルB
1)を検出し、これを記憶装置96に記憶する。
【0138】
修正工程S70後の切削時には、制御部94が、このずれ量及びずれ方向を打ち消す様に加工ユニット移動機構60を制御することで、第1の切削ブレード84aの中心84a2の位置(即ち、第1の切削ユニット78aの加工位置)を修正する。具体的には、所定の割り出し送り量に、ずれ量及びずれ方向を加算することで、割り出し送り量が調整される。
【0139】
これにより、以降の切削(即ち、追加の第2の加工溝形成工程S80)では、第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とをX‐Y平面内で一致させることができる。
【0140】
修正工程S70を経た場合に、第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とがX‐Y平面内で一致するとは、X‐Y平面内での第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とのY軸方向のずれ量が、第1の閾値よりも小さい第2の閾値(例えば、1μm)以下となることを意味する。
【0141】
なお、
図13(B)では、説明を簡単にするために、基準線92bと、第1の加工溝13aの第1の中心線13a
2とを、一致させているが、基準線92bと、第1の中心線13a
2とは、ずれていてもよい。
【0142】
基準線92bと第1の中心線13a2とがずれており、且つ、基準線92aと第2の中心線13b2とがずれている場合、第1の中心線13a2の基準線92aからのずれ量及びずれ方向と、第2の中心線13b2の基準線92bからのずれ量及びずれ方向と、の両方が、加工位置の修正に利用される。
【0143】
いずれにしても、第1の中心線13a2の位置に対する第2の中心線13b2の位置のずれ量及びずれ方向を検出工程S60において検出し、このずれ量及びずれ方向を修正工程S70で修正する。
【0144】
図14は、追加の第2の加工溝形成工程S80を示す図である。追加の第2の加工溝形成工程S80では、第2の加工溝形成工程S40で形成された第2の加工溝13bの位置から第1の切削ユニット78aをY軸方向に順に割り出し送りして、4本の第2の加工溝13bを追加的に形成する。
【0145】
この様にして、合計5本の第2の加工溝13bが形成されたら、厚さ方向11dで対応する位置にある第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bが接続する様に被加工物11を分割する分割工程S90を開始する。
図15は、分割工程S90を示す図である。
【0146】
分割工程S90では、刃厚84b1の中心84b2を、幅13a1、13b1内に位置付けると共に、高速で回転する第3の切削ブレード84bの下端を、所定の深さ23aよりも表面11a側に位置付ける。
【0147】
この状態で切削水を供給しながらチャックテーブル10を加工送りすることで、被加工物11を分割する。分割工程S90では、例えば、第3の切削ブレード84bの回転数を、例えば、30,000rpmとし、加工送り速度を、例えば、30mm/sとする。
【0148】
本実施形態では、1本目の第2の加工溝13bに沿って被加工物11を第3の切削ユニット78bで切削する際に、6本目の第2の加工溝13bを第1の切削ユニット78aで形成する。つまり、追加の第2の加工溝形成工程S80と、分割工程S90とは、並行して行われる時間帯がある。
【0149】
第1の方向に沿う残りの全ての分割予定ライン13に沿って第2の加工溝13bを形成し、更に、第1の方向に沿う第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bが接続する様に被加工物11を分割した後、チャックテーブル10を90度回転させる。
【0150】
その後、第2の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って、同様に、第2の加工溝13bを形成し、更に、第2の方向に沿う第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bが接続する様に被加工物11を分割する。
【0151】
本実施形態では、第3の切削ユニット78bが第1の切削ユニット78aをY軸方向に沿って追いかける様に、被加工物11の加工を進めるが、追加の第2の加工溝形成工程S80が完了した後に、分割工程S90を開始してもよい。
【0152】
例えば、シリコンで形成された単結晶基板に比べて脆いガラス等の脆性材料で形成された基板を被加工物11が有する場合、追加の第2の加工溝形成工程S80が完了した後に、分割工程S90を開始する方が、チッピング、クラッキング等の発生を低減できる。
【0153】
これまで説明した様に、第1の実施形態では、第1の中心線13a2の位置と、第2の中心線13b2の位置とが、ずれた場合でも、次の分割予定ライン13の切削時から第1の中心線13a2及び第2の中心線13b2の位置が一致する様に修正したうえで、被加工物11を切削できる。
【0154】
加えて、当該加工方法によれば、第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bを直接的に観察することにより、仮に、アライメントマークの形状に歪みがあったとしても、アライメントマークの形状の歪みの影響を緩和できる。
【0155】
この様に、第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bを直接的に観察しない場合に比べて、被加工物11の加工精度を向上できる。即ち、第1の加工溝13aの第1の中心線13a2と、第2の加工溝13bの第2の中心線13b2とを、より高い精度で一致させることができる。
【0156】
(第1の変形例)第1の実施形態では、撮像工程S50及び検出工程S60を1回だけ行ったが、複数回行ってもよい。具体的には、所定数(例えば5本)の第2の加工溝13bを形成する毎に、撮像工程S50及び検出工程S60を行ってもよい。
【0157】
検出工程S60の結果、もし、中心線同士の位置がずれている場合には修正工程S70を行う。これにより、加工時間は長くなるが、更に、高い精度での加工を保証できる。
【0158】
(第2の変形例)ところで、第1の実施形態の第1の加工溝形成工程S20では、第1及び第2の加工ユニットとして、第1の切削ユニット78aを使用した。しかし、切削装置2と同様の他の切削装置を用いて第1の加工溝形成工程S20を行ってもよい。
【0159】
他の切削装置を用いて第1の加工溝形成工程S20を行う場合、他の切削装置に設けられるチャックテーブルは、上述のチャックテーブル10であってもよく、金属製の枠体の円板状の凹部に多孔質セラミックスで形成された多孔質板が固定されたチャックテーブルであってもよい。
【0160】
多孔質セラミックスで形成された多孔質板をチャックテーブルとして用いる場合、裏面11側から表面11a側を撮像するために、上側撮像ユニットとして、所定の光学系と、赤外線を光電変換可能な撮像素子と、を有する赤外線カメラユニットが用いられる。
【0161】
他の切削装置を用いた第1の加工溝形成工程S20の後、第2の加工溝形成工程S40及び追加の第2の加工溝形成工程S80では、第2の加工ユニットとして第1の切削ユニット78aが用いられ、分割工程S90では、第3の加工ユニットとして第3の切削ユニット78bが用いられる。
【0162】
この様に、第1の加工溝形成工程S20と第2の加工溝形成工程S40とで使用する切削ユニットが異なる場合、スピンドルに対する切削ブレードの装着が、一方の切削ユニットでは正常であるが、他の方の切削ユニットでは異常である(即ち、切削ブレードの側面がスピンドルに対して斜めになる様に切削ブレードがスピンドルに装着されている)ことがある。
【0163】
その結果、第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とがX‐Y平面内でずれることがある。しかし、第1の実施形態で説明したように、修正工程S70を経ることによって、このずれを修正できる。
【0164】
(第2の実施形態)次に、
図16から
図20を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態でも、上述の切削装置2を使用し、
図7のフローに従って、被加工物11を加工する。それゆえ、第1の実施形態と重複する説明を省略する。
【0165】
第2の実施形態では、第1の切削ユニット(第1の加工ユニット、第2の加工ユニット)78aに装着されている切削ブレード98a(
図16参照)が、切削ブレード98aの径方向の中心を通る断面での断面視で外周端部がV字形状を有する。係る点が、第1の実施形態と異なる。
【0166】
即ち、切削ブレード98aは、刃厚98a1の中心98a2が径方向で最も突出しており、刃厚98a1の中心98a2から切削ブレード98aの円環状の両面に向かって傾斜面が形成されている。第2の実施形態の加工方法でも、保持工程S10の後、第1の加工溝形成工程S20を行う。
【0167】
図16は、第2の実施形態に係る第1の加工溝形成工程S20を示す図である。第1の加工溝形成工程S20で形成される第1の加工溝13aの底部は、切削ブレード98aの外周端部の形状に応じて、第1の加工溝13aの長手方向に直交する断面での断面視でV字形状を有する。
【0168】
第1の加工溝形成工程S20で、全ての分割予定ライン13に沿って第1の加工溝13aを形成した後、反転工程S30(
図9参照)を経て、第2の加工溝形成工程S40を行う。
図17は、第2の実施形態に係る第2の加工溝形成工程S40を示す図である。
【0169】
第2の加工溝13bの底部も、断面視でV字形状を有する。第2の加工溝形成工程S40で1本の第2の加工溝13bを形成した後、撮像工程S50を行う。
図18は、第2の実施形態に係る撮像工程S50を示す図である。
【0170】
撮像工程S50の後、検出工程S60を行う。検出工程S60では、第1の加工溝13aの第1の中心線13a2の位置と、第2の加工溝13bの第2の中心線13b2の位置とが、X‐Y平面(所定の平面)内で一致しているか否かを検出する。
【0171】
そして、第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とがX‐Y平面内で一致している場合、追加の第2の加工溝形成工程S80へ進む。これに対して、第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とがX‐Y平面内で一致していない場合、修正工程S70を経て、追加の第2の加工溝形成工程S80へ進む。
【0172】
図19は、第2の実施形態に係る追加の第2の加工溝形成工程S80を示す図である。修正工程S70を経ているので、追加の第2の加工溝形成工程S80では、第1の中心線13a
2の位置と第2の中心線13b
2の位置とをX‐Y平面内で一致させることができる。
【0173】
第2の実施形態でも、5本の第2の加工溝13bが形成されたら、分割工程S90を開始する。
図20は、第2の実施形態の分割工程S90を示す図である。但し、上述の様に、追加の第2の加工溝形成工程S80の完了後に、分割工程S90を開始してもよい。
【0174】
第2の実施形態においても、第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bを直接的に観察しない場合に比べて、被加工物11の加工精度を向上できる。加えて、各加工溝のV字形状に応じて、最終的に製造されるデバイスチップ(不図示)の表面11a側及び裏面11b側の外周部に、面取り部を形成できる。
【0175】
面取り部を形成することで、面取り部を形成しない場合に比べて、表面11a側及び裏面11b側の外周部におけるクラックやチッピングの発生を抑制できる。なお、第2の実施形態でも、第1及び第2の変形例を適用してもよい。
【0176】
(第3の変形例)第1の加工溝形成工程S20を行う切削ユニット(第1の加工ユニット)に装着される切削ブレード(不図示)と、第1の切削ユニット(第2の加工ユニット)78aに装着される切削ブレードとの、少なくとも一方が、断面視で外周端部がV字形状を有してもよい。
【0177】
この場合、断面視で外周端部がV字形状を有する切削ブレードで形成された加工溝、即ち、第1の加工溝13aと、第2の加工溝13bと、の少なくとも一方が、断面視でV字形状を有する様に加工される。
【0178】
(第3の実施形態)次に、
図21から
図26を用いて第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、レーザービームL(
図21参照)を照射して被加工物11をアブレーション加工することにより、第1の加工溝13a(
図22参照)及び第2の加工溝13b(
図23参照)を形成する。
【0179】
図21は、第3の実施形態に係るレーザー加工装置102の斜視図である。なお、切削装置2と同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0180】
レーザー加工装置102では、静止基台104に下側撮像ユニット54が固定されている。但し、下側撮像ユニット54は、X軸方向又はY軸方向に移動可能な態様で設けられてもよい。
【0181】
静止基台104の上方には、X軸方向移動テーブル18が設けられている。X軸方向移動テーブル18は、X軸方向移動テーブル18の側板18bとは反対側に位置する領域から下側撮像ユニット54が空間18d内に進入できるように、配置されている。
【0182】
X軸方向移動テーブル18は、X軸方向移動機構26によりX軸方向に沿って移動可能である。1対のX軸ガイドレール20は、Y軸移動テーブル106上に固定されている。Y軸移動テーブル106は、静止基台104の上面に固定された一対のY軸ガイドレール108上に、スライド可能に取り付けられている。
【0183】
Y軸ガイドレール108の近傍には、Y軸移動テーブル106のY軸方向の位置を検出する際に利用されるY軸リニアスケール108aが設けられている。Y軸移動テーブル106の下面側には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0184】
ナット部には、Y軸ガイドレール108に略平行に配置されたねじ軸110がボール(不図示)を介して回転可能な態様で連結されている。ねじ軸110の一端部には、モーター112が連結されている。Y軸ガイドレール108、ねじ軸110、モーター112等は、Y軸方向移動機構114を構成する。
【0185】
下側撮像ユニット54に対して+Y方向に隣接する位置には、静止基台104の上面から上方に突出する態様でコラム116が設けられている。コラム116には、X軸方向に略平行な長手部を有するケーシング118が設けられている。
【0186】
ケーシング118には、レーザー照射ユニット120の少なくとも一部が設けられている。レーザー照射ユニット(第1の加工ユニット、第2の加工ユニット)120は、被加工物11に吸収される波長(例えば、355nm)を有するパルス状のレーザービームLを照射可能である。
【0187】
レーザー照射ユニット120は、レーザー発振器120a等を有する。レーザー照射ユニット120のX軸方向の先端部には、集光レンズ122aを含むヘッド部122が設けられている。
【0188】
レーザー発振器120aから出射されたレーザービームは、集光レンズ122aにより集光され、ヘッド部122から下方に照射される。
図21では、ヘッド部122から下方に照射されるレーザービームLを破線矢印で示す。ケーシング118の先端部において、ヘッド部122に隣接する位置には、上側撮像ユニット86aが設けられている。
【0189】
図21にそれぞれ示す、上側撮像ユニット86aと、下側撮像ユニット54(例えば、高倍率カメラ58及び照明装置58a)とは、Y軸方向の位置は一致しているが、X軸方向の位置はずれている。
【0190】
それゆえ、チャックテーブル10で吸引保持された被加工物11において、厚さ方向11dで対応する位置を同時には観察できない。しかし、チャックテーブル10に対して、上側撮像ユニット86a及び下側撮像ユニット54の位置関係は予め定められている。
【0191】
従って、X軸方向移動テーブル18をX軸方向に沿って移動させれば、保持部材12の中心点12c
3(
図3参照)を基準とするX‐Y平面内の同じ領域を、上側撮像ユニット86a及び下側撮像ユニット54で観察できる。
【0192】
この様に、画像88aに表示される基準線92aと、画像88bに表示される基準線92bとは、画像上では一致した座標位置にあり、互いにずれることはない。
【0193】
第3の実施形態でも、
図7のフローに従って被加工物11を加工する。第3の実施形態の加工方法では、保持工程S10に先立ち、裏面11b側に水溶性樹脂で形成された第1の保護膜29a(
図22参照)を設ける。
【0194】
次いで、表面11a側をチャックテーブル10で吸引保持した後(即ち、保持工程S10の後)、第1の加工溝形成工程S20を行う。
図22は、第3の実施形態に係る第1の加工溝形成工程S20を示す図である。
【0195】
第1の加工溝形成工程S20では、レーザービームLの集光点を裏面11bに位置付けると共に、例えば、下記の加工条件でレーザー加工を行う。
【0196】
レーザービームの波長 :355nm
平均出力 :2W
パルスの繰り返し周波数:200kHz
加工送り速度 :400mm/s
パス数 :1
【0197】
第1の加工溝形成工程S20で、全ての分割予定ライン13に沿って第1の加工溝13aを形成した後、スピンナ洗浄装置(不図示)を用いて第1の保護膜29aを洗浄して除去する。
【0198】
次いで、反転工程S30において被加工物ユニット31を形成し、裏面11b側にテープ27を貼り付けると共に、表面11a側に第2の保護膜29b(
図23参照)を形成する。
【0199】
第2の保護膜29bも、第1の保護膜29aと同様に、アブレーション加工で発生したデブリ(例えば、被加工物11を構成する材料の溶融物)が被加工面に固着することを防止する機能を有する。
【0200】
第2の保護膜29b及び上述の第1の保護膜29aは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂と、光吸収剤とを含む溶液を、塗布した後、乾燥させることで形成できる。
【0201】
表面11a側に第2の保護膜29bを形成した後、第2の加工溝形成工程S40を行う。
図23は、第3の実施形態に係る第2の加工溝形成工程S40を示す図である。第2の加工溝形成工程S40では、上述の加工条件で1本の第2の加工溝13bを形成する。
【0202】
第2の加工溝形成工程S40の後、撮像工程S50を行う。
図24は、第3の実施形態に係る撮像工程S50を示す図である。撮像工程S50では、厚さ方向11dで対応する位置にある第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bを撮像する。
【0203】
撮像工程S50の後、検出工程S60を行う。検出工程S60では、第1の加工溝13aの第1の中心線13a2の位置と、第2の加工溝13bの第2の中心線13b2の位置とが、X‐Y平面(所定の平面)内で一致しているか否かを検出する。
【0204】
そして、第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とがX‐Y平面内で一致している場合、追加の第2の加工溝形成工程S80へ進む。これに対して、第1の中心線13a2の位置と第2の中心線13b2の位置とがX‐Y平面内で一致していない場合、修正工程S70を経て、追加の第2の加工溝形成工程S80へ進む。
【0205】
図25は、第3の実施形態に係る追加の第2の加工溝形成工程S80を示す図である。修正工程S70を経ることで、追加の第2の加工溝形成工程S80では、第1の中心線13a
2の位置と第2の中心線13b
2の位置とをX‐Y平面内で一致させることができる。
【0206】
全ての分割予定ライン13に沿って第2の加工溝13bを形成した後、スピンナ洗浄装置(不図示)を用いて第2の保護膜29bを洗浄して除去する。そして、被加工物ユニット31を切削装置2へ搬送する。
【0207】
切削装置2では、第3の切削ユニット78bを用いて、第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bが接続する様に被加工物11を切削する(分割工程S90)。
図26は、第3の実施形態の分割工程S90を示す図である。
【0208】
第3の実施形態においても、第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bを直接的に観察しない場合に比べて、被加工物11の加工精度を向上できる。ところで、第3の実施形態では、第1及び第2の加工ユニットとして、レーザー照射ユニット120を用いた。
【0209】
しかし、第1及び第2の加工ユニットの少なくとも一方を、レーザー照射ユニット120としてもよい。例えば、第1及び第2の加工ユニットの一方を、レーザー照射ユニット120とする場合、第1及び第2の加工ユニットの他方を、第1の切削ユニット78aとする。
【0210】
(第4の変形例)上述の実施形態及び変形例の分割工程S90では、比較的薄い刃厚84b1を有する第3の切削ユニット78bを用いて被加工物11を切削した。しかし、被加工物11に対してアブレーション加工を施すことで、分割工程S90を行ってもよい。
【0211】
(第4の実施形態)次に、
図27(A)及び
図27(B)を用いて第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、拡張装置130を用いて分割工程S90を行う。係る点が上述の実施形態及び変形例と異なる。
【0212】
図27(A)は、拡張装置130等の一部断面側面図である。拡張装置130は、被加工物11の径よりも大きい径を有する円筒状のドラム132を有する。ドラム132の上端部には、ドラム132の周方向に沿って略等間隔に複数のコロ134が設けられている。
【0213】
ドラム132の径方向においてドラム132の外側には、円環状のフレーム支持台136が設けられている。フレーム支持台136の上面側には、フレーム支持台136に載置された被加工物ユニット31のフレーム19をそれぞれ挟持する複数のクランプ138が設けられている。
【0214】
また、フレーム支持台136は、フレーム支持台136の周方向に沿って略等間隔に配置された複数の脚部140で支持されている。各脚部140は、エアシリンダ等の昇降機構により、昇降可能である。
【0215】
分割工程S90では、
図27(A)に示す様に、ドラム132の上端とフレーム支持台136の上面とを略同じ高さ位置にした上で、追加の第2の加工溝形成工程S80後の被加工物ユニット31を、ドラム132及びフレーム支持台136に載置する。
【0216】
被加工物11には、第1の加工溝13aの底部と第2の加工溝13bの底部との距離が、所定の距離以下(例えば、50μm以下)となる様に、第1の加工溝13a及び第2の加工溝13bが既に形成されている。
【0217】
被加工物ユニット31の載置後に、各昇降機を作動させ脚部140を引き下げると、フレーム支持台136がドラム132に対して引き下げられる。これにより、
図27(B)に示す様に、テープ27が径方向に拡張されると共に、厚さ方向11dにおける第1の加工溝13a及び第2の加工溝13b間の未分割領域が分割される。
【0218】
図27(B)は、第4の実施形態に係る分割工程S90を示す図である。分割工程S90では、拡張装置130を用いて、被加工物11を複数のデバイスチップ33に分割する。分割と同時にデバイスチップ33間の間隔を広げることで、後続するデバイスチップ33のピックアップ工程が容易になるというメリットがある。
【0219】
(第5の実施形態)次に、
図28から
図31(B)を用いて第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、上述の切削装置2を使用して裏面11b側に第1の加工溝13aを形成する際に、撮像工程S50、検出工程S60、修正工程S70等を行う。係る点が上述の実施形態と異なる。
【0220】
図28は、第5の実施形態に係る加工方法のフロー図である。第5の実施形態では、保持工程S10の後の第1の加工溝形成工程S22で、裏面11b側に1本だけ第1の加工溝13aを形成する(
図29参照)。
図29は、第5の実施形態に係る第1の加工溝形成工程S22を示す図である。
【0221】
第1の加工溝形成工程S22の後、
図30に示す様に、上側撮像ユニット(第1の撮像ユニット)86aで第1の加工溝13aを撮像すると共に、厚さ方向11dで第1の加工溝13aに対応する位置にある分割予定ライン(所定ライン)13を下側撮像ユニット(第2の撮像ユニット)54で撮像する(撮像工程S50)。
【0222】
図30は、第5の実施形態に係る撮像工程S50を示す図である。なお、第5の実施形態では、上側撮像ユニット86aが第1の撮像ユニットとして機能し、下側撮像ユニット54が第2の撮像ユニットとして機能する。
【0223】
撮像工程S50の後、制御部94は、上側撮像ユニット86aで得た画像88aと、下側撮像ユニット54で得た画像88bと、に基づいて、第1の加工溝13aと分割予定ライン13とのずれを検出する(検出工程S60)。
【0224】
図31(A)及び
図31(B)は、検出工程S60を示す拡大断面図である。なお、
図31(A)及び
図31(B)では、被加工物11及びチャックテーブル10を間に挟んで上側撮像ユニット86a及び下側撮像ユニット54が、X‐Y平面内の同じ位置にある。
【0225】
しかし、これは便宜上の図示に過ぎず、下側撮像ユニット54は、上側撮像ユニット86aが撮像する裏面11b側の領域とX‐Y平面内で対応する表面11a側の領域を撮像する様に設定されているということを意味している。
【0226】
検出工程S60では、第1の実施形態と同様に、制御部94が、画像処理を行うことで、第1の加工溝13aの第1の中心線13a2の位置と、分割予定ライン13の中心線13cの位置とが、X‐Y平面(所定の平面)内で一致しているか否かを検出する。
【0227】
なお、分割予定ライン13の中心線13cは、分割予定ライン13の幅方向の中心に位置し、且つ、分割予定ライン13の長手方向と略平行である仮想的な直線である。
【0228】
図31(A)は、第5の実施形態において、第1の加工溝13aの第1の中心線13a
2の位置と、分割予定ライン13の中心線13cの位置とが、X‐Y平面内で一致している場合の被加工物11の一部の拡大断面図である。一致している場合(S62でYES)、追加の第1の加工溝形成工程S72へ進む。
【0229】
図31(B)は、第5の実施形態において、第1の加工溝13aの第1の中心線13a
2の位置と、分割予定ライン13の中心線13cの位置とが、X‐Y平面内でずれている場合の被加工物11の一部の拡大断面図である。
【0230】
図31(B)では、Y軸方向における第1の中心線13a
2の基準線92aからのずれ量及びずれ方向をベクトルC
1で示す。検出工程S60において、第1の中心線13a
2の位置と中心線13cの位置とがX‐Y平面内で一致していない場合、第1の実施形態と同様に、修正工程S70へ進む。
【0231】
修正工程S70後の切削時には、制御部94が、ベクトルC1に対応するずれ量及びずれ方向を打ち消す様に、第1の切削ブレード84aの中心84a2の位置(即ち、第1の切削ユニット78aの加工位置)を修正する。
【0232】
これにより、以降の切削(即ち、追加の第1の加工溝形成工程S72)では、第1の中心線13a
2の位置と中心線13cの位置とをX‐Y平面内で一致させることができる。なお、
図31(B)では、説明を簡単にするために、基準線92bと中心線13cとを一致させているが、基準線92bと中心線13cとは、ずれていてもよい。
【0233】
いずれにしても、第1の中心線13a2の位置に対する中心線13cの位置のずれ量及びずれ方向を検出工程S60において検出し、このずれ量及びずれ方向を修正工程S70で修正する。
【0234】
追加の第1の加工溝形成工程S72では、第1の加工溝形成工程S22で形成された第1の加工溝13aの位置から第1の切削ユニット78aをY軸方向に順に割り出し送りして、第1の方向に沿う残り全ての分割予定ライン13に沿って、第1の加工溝13aを追加的に形成する。
【0235】
図28には示していないが、第1の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って第1の加工溝13aを形成した後、チャックテーブル10を90度回転させる。そして、第1の方向に直交する第2の方向に沿う分割予定ライン13に沿って、S22からS72を経て同様に、第1の加工溝13aを形成する。
【0236】
第5の実施形態でも、表面11a側及び裏面11b側を直接的に観察することで、第1の中心線13a2及び中心線13cのずれを検出できる。第1の中心線13a2の位置と、中心線13cの位置とが、ずれた場合には、次の分割予定ライン13の切削時から第1の中心線13a2及び中心線13cの位置が一致する様に修正したうえで、被加工物11を切削できる。
【0237】
加えて、当該加工方法によれば、被加工物11の表面11a及び裏面11bを直接的に観察することにより、仮に、アライメントマークの形状に歪みがあったとしても、アライメントマークの形状の歪みの影響を緩和できる。
【0238】
なお、第5の実施形態においても、第2の実施形態と同様に第1の加工溝13aを断面視でV字形状としてもよく、第3の実施形態と同様に第1の加工溝13aをレーザーアブレーションで形成してもよい。
【0239】
(第6の実施形態)次に、
図32及び
図33を用いて第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、上述の切削装置2を使用し
図28のフローに従って被加工物11を加工する。それゆえ、第5の実施形態と重複する説明を省略する。
【0240】
第6の実施形態では、保持工程S10の後の第1の加工溝形成工程S22において、被加工物11の裏面11bから表面11aに到達する深さを有する第1の加工溝43を形成する。係る点が、第5の実施形態と異なる。
【0241】
第1の加工溝形成工程S22では、まず、所謂フルカット溝と呼ばれる第1の加工溝43を1本だけ形成する(
図32参照)。
図32は、第6の実施形態に係る第1の加工溝形成工程S22を示す図である。しかし、
図32に示す様に、第1の加工溝43が被加工物11の厚さ方向(例えば、Z軸方向)に対して傾くことがある(所謂、斜め切り)。
【0242】
例えば、第1の切削ブレード84aがスピンドル82aに対して傾いて取り付けられている、第1の切削ブレード84aが偏摩耗している、被加工物11の切削抵抗が比較的大きい等の理由により、所謂、斜め切りが生じることがある。
【0243】
この様な斜め切りが生じた場合であっても、表面11aの分割予定ライン45aの幅45bの中心線(第1の中心線)45cを、裏面11bに露出する第1の加工溝43における開口43aの幅43bの中心線(第2の中心線)43cと、一致させる必要がある場合がある。
【0244】
なお、中心線43cは、開口43aの幅方向の中心に位置し、開口43aの幅方向と直交する長手方向と略平行である。同様に、中心線45cは、分割予定ライン45aの幅方向の中心に位置し、分割予定ライン45aの幅方向と直交する長手方向と略平行である。
【0245】
本実施形態では、第1の加工溝形成工程S22の後、
図33に示す様に、表面11a側をチャックテーブル10で吸引保持したまま、裏面11bに露出する第1の加工溝43を上側撮像ユニット86aで撮像すると共に、分割予定ライン45aの近傍を下側撮像ユニット54で撮像する(撮像工程S50)。
【0246】
図33は、第6の実施形態に係る撮像工程S50を示す図である。下側撮像ユニット54の各々の撮像視野は、表面11a側に露出する第1の加工溝43を含む分割予定ライン45aの幅45bよりも小さい場合がある。
【0247】
この場合、下側撮像ユニット54で分割予定ライン45aを撮像しても分割予定ライン45aの幅45bの中心線45cを特定できない。そこで、本実施形態の撮像工程S50では、表面11a側において分割予定ライン45aの近傍に設けられているアライメントマーク45を下側撮像ユニット54で撮像する。
【0248】
撮像工程S50の後、制御部94は、画像処理を行うことで、アライメントマーク45の位置座標に基づいて分割予定ライン45aの中心線45cの位置座標を特定する。なお、アライメントマーク45から中心線45cまでの距離は、切削装置2に予め登録されている。
【0249】
更に、制御部94は、第1の加工溝43の裏面11b側における中心線43cの座標も同様に、画像処理により特定する。その後、制御部94は、中心線43cの位置と、中心線45cの位置とが、X‐Y平面(所定の平面)内で一致しているか否かを検出する(検出工程S60)。
【0250】
図32及び
図33では、Y軸方向における中心線45cからの中心線43cのずれ量及びずれ方向をベクトルD
1で示す。中心線43cの位置と、中心線45cの位置とが、X‐Y平面内で一致している場合(S62でYES)、追加の第1の加工溝形成工程S72へ進む。
【0251】
これに対して、中心線43cの位置と、中心線45cの位置と、がX‐Y平面内で一致していない場合、修正工程S70へ進む。修正工程S70後の切削時には、制御部94が、中心線43c及び中心線45cのずれ量及びずれ方向を打ち消す様に、第1の切削ブレード84aの位置(即ち、第1の切削ユニット78aの加工位置)を修正する。
【0252】
これにより、以降の切削では、表面11aにおける分割予定ライン45aの中心線45cを裏面11bに投影した位置に、裏面11b側における開口43aの中心線43cを合せることができる。
【0253】
(第7の実施形態)次に、
図34を用いて第7の実施形態について説明する。第7の実施形態では、表面11aではなく裏面11b側にテープ17を貼り付け、保持工程S10及び第1の加工溝形成工程S22では、裏面11b側を吸引保持し、表面11a側を露出させる。
【0254】
係る点が、第6の実施形態と異なる。それゆえ、第6の実施形態と重複する説明を省略する。第7の実施形態では、第1の加工溝形成工程S22において、被加工物11の表面11aから裏面11bに到達する深さを有する第1の加工溝43を形成する。
【0255】
また、撮像工程S50では、裏面11b側を吸引保持した状態で、裏面11bに到達している第1の加工溝43を下側撮像ユニットで撮像すると共に、分割予定ライン45a近傍のアライメントマーク45を上側撮像ユニット86aで撮像する(撮像工程S50)。
【0256】
制御部94は、表面11a側における分割予定ライン45aの中心線45cの座標と、第1の加工溝43の裏面11b側における中心線43cの座標と、を特定し、中心線43cの位置と、中心線45cの位置とが、X‐Y平面(所定の平面)内で一致しているか否かを検出する(検出工程S60)。
【0257】
図34は、第7の実施形態に係る撮像工程S50を示す図である。
図34では、Y軸方向における中心線45cからの中心線43cのずれ量及びずれ方向をベクトルD
2で示す。中心線43cの位置と、中心線45cの位置とが、X‐Y平面内で一致している場合(S62でYES)、追加の第1の加工溝形成工程S72へ進む。
【0258】
これに対して、中心線43cの位置と、中心線45cの位置と、がX‐Y平面内で一致していない場合、修正工程S70へ進む。修正工程S70後の切削時には、制御部94が、中心線43c及び中心線45cのずれ量及びずれ方向を打ち消す様に、第1の切削ブレード84aの位置(即ち、第1の切削ユニット78aの加工位置)を修正する。
【0259】
これにより、以降の切削では、表面11aにおける分割予定ライン45aの中心線45cを裏面11bに投影した位置に、裏面11b側における開口43aの中心線43cを合せることができる。
【0260】
その他、上述の実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。上述の実施形態及び変形例を、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0261】
2:切削装置、4:基台、4a,4b:開口、4c:支持構造、4d:開口
6:カセット、10:チャックテーブル(保持テーブル)
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面
11c:厚さ、11d:厚さ方向
12:保持部材、12a:一面、12b:他面
12c1:第1吸引路、12c2:第2吸引路、12c3:中心点、12d:開口部
12e:外周吸引路、12f:吸引路
13:分割予定ライン(所定ライン)
13a:第1の加工溝、13a1:幅、13a2:第1の中心線
13b:第2の加工溝、13b1:幅、13b2:第2の中心線
13a3:開口、13b3:開口(所定ライン)、13c:中心線
14:吸引源、16:枠体、16a:開口部、16b:プーリー部
15:デバイス、17:テープ、19:フレーム、21:被加工物ユニット
18:X軸方向移動テーブル
18a:底板、18b:側板、18c:天板、18d:空間
20:X軸ガイドレール、20a:X軸リニアスケール、22:ねじ軸
23a、23b:深さ
24:モーター、26:X軸方向移動機構
27:テープ、29a:第1の保護膜、29b:第2の保護膜、31:被加工物ユニット
28:ベルト、30:回転駆動源、30a:プーリー
32:Y軸方向移動機構、34:Y軸ガイドレール、36:Y軸方向移動テーブル
33:デバイスチップ
38:ねじ軸、40:モーター
42:Z軸方向移動機構、42a:支持構造、44:Z軸ガイドレール
43:第1の加工溝、43a:開口、43b:幅、43c:中心線
45:アライメントマーク、45a:分割予定ライン、45b:幅、45c:中心線
46:Z軸移動プレート、48:ねじ軸、50:モーター
52:支持アーム、54:下側撮像ユニット
56:低倍率カメラ、56a:照明装置
58:高倍率カメラ、58a:照明装置
60:加工ユニット移動機構、62:Y軸ガイドレール、64:Y軸移動プレート
66:ねじ軸、68:モーター
70a,70b:Z軸移動プレート
72:Z軸ガイドレール、74:ねじ軸、76:モーター
78a:第1の切削ユニット(第1の加工ユニット、第2の加工ユニット)
78b:第3の切削ユニット(第3の加工ユニット)
80a,80b:スピンドルハウジング、82a,82b:スピンドル
84a:第1の切削ブレード、84a1:刃厚、84a2:中心
84b:第3の切削ブレード、84b1:刃厚、84b2:中心
86a:上側撮像ユニット、86b:上側撮像ユニット
88a,88b:画像
90:洗浄ユニット、92:タッチパネル、92a,92b:基準線
94:制御部、96:記憶装置
98a:切削ブレード、98a1:刃厚、98a2:中心
102:レーザー加工装置、104:静止基台
106:Y軸移動テーブル、108:Y軸ガイドレール、108a:Y軸リニアスケール
110:ねじ軸、112:モーター、114:Y軸方向移動機構
116:コラム、118:ケーシング
120:レーザー照射ユニット(第1の加工ユニット、第2の加工ユニット)
120a:レーザー発振器、122:ヘッド部、122a:集光レンズ
130:拡張装置、132:ドラム、134:コロ、136:フレーム支持台
138:クランプ、140:脚部
A:領域、B1、C1、D1、D2:ベクトル
L:レーザービーム
S10:保持工程、S20、S22:第1の加工溝形成工程、S30:反転工程
S40:第2の加工溝形成工程
S50:撮像工程、S60:検出工程、S70:修正工程
S72:追加の第1の加工溝形成工程、S80:追加の第2の加工溝形成工程
S90:分割工程