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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140746
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】情報取得装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230928BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20230928BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20230928BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20230928BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/78 F
H01L21/78 B
B24B49/12
B24B27/06 M
B23Q17/22 A
B23K26/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046743
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大森 崇史
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C158
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
3C029AA01
3C029AA04
3C029AA40
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA13
3C034CA22
3C034CB01
3C034CB14
3C034DD20
3C158AA03
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158AC02
3C158BA07
3C158BB02
3C158BB06
3C158BB08
3C158BB09
3C158BC01
3C158BC02
3C158CB01
3C158CB03
3C158DA17
4E168AD02
4E168CA06
4E168CA13
4E168CA15
4E168CB07
4E168CB22
4E168CB23
5F063AA29
5F063DE06
5F063DE33
(57)【要約】
【課題】オペレータがワークの加工に必要な情報を取得して、入力する手間を省き、入力ミスによって分割予定ライン以外の領域が加工されてデバイスが損傷するという問題を解消できる情報取得装置を提供する。
【解決手段】本発明の情報取得装置の制御手段は、撮像手段9を作動して保持手段7に保持されたワークを撮像して結像点Pをワークの上面に位置付けてワークの上面高さHを計測して記憶する上面高さ記憶部110と、X軸移動手段及びY軸移動手段を作動して撮像手段9でワークの輪郭を検出して、該ワークの形状を記憶する形状記憶部120と、該X軸移動手段及び該Y軸移動手段を作動して撮像手段9でワークに形成された分割予定ラインWeの交差点を検出すると共に、隣接する交差点を検出して分割予定ラインWeの間隔を計測して記憶する間隔記憶部130と、を少なくとも備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたワークを加工するための情報を取得する情報取得装置であって、
ワークを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたワークを撮像する撮像手段と、該保持手段に保持されたワークを照明する照明手段と、該保持手段と該撮像手段とをX軸方向に相対的に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該撮像手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に移動するY軸移動手段と、制御手段と、を少なくとも備え、
該制御手段は、該撮像手段を作動して該保持手段に保持されたワークを撮像して結像点をワークの上面に位置付けてワークの上面高さを計測して記憶する上面高さ記憶部と、
該X軸移動手段及び該Y軸移動手段を作動して該撮像手段でワークの輪郭を検出して、該ワークの形状を記憶する形状記憶部と、
該X軸移動手段及び該Y軸移動手段を作動して該撮像手段でワークに形成された分割予定ラインの交差点を検出すると共に、隣接する交差点を検出して分割予定ラインの間隔を計測して記憶する間隔記憶部と、
を少なくとも備える情報取得装置。
【請求項2】
制御手段は、該照明手段を作動して照度を変化させると共に、該撮像手段を作動して該保持手段に保持されたワークを撮像して濃淡の微分値が最大となる照度を適切な照度として設定する照度設定部を含む請求項1に記載の情報取得装置。
【請求項3】
該制御手段は、該撮像手段を作動して該保持手段に保持されたワークのデバイスを撮像してアライメントパターンとしての適性値を算定する適正値算定部を含む請求項1又は2に記載の情報取得装置。
【請求項4】
切削手段、レーザー照射手段のいずれかを含む加工手段を備えた加工装置に装着される請求項1~3のいずれかに記載の情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたワークを加工するための情報を取得する情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハの切削領域を検出する撮像手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とをX軸方向、Y軸方向に加工送りする送り手段と、制御手段と、を含み構成されていて、ウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、レーザー加工装置は、ダイシング装置と略同様の構成を備え、切削手段に替えてレーザー光線照射手段を備えたものであり、ウエーハの分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射して分割の起点を形成して、ウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6274926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したダイシング装置、レーザー加工装置によってウエーハを高精度に加工するためには、ウエーハの形状、分割予定ラインの間隔、ウエーハの上面の高さ等の加工に必要な情報をオペレータが把握し、該情報を制御手段に入力しなければならず、煩に堪えないという問題がある。また、加工に必要な情報に関する入力ミスがあると、分割予定ライン以外の領域を誤って加工してデバイスを損傷させるといった問題が起こり得る。上記した問題は、上記のウエーハに限らず、他のワーク、例えば、所謂チップサイズパッケージ(CSP)等を加工する場合にも生じ得る。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、オペレータがワークの加工に必要な情報を取得して、入力する手間を省き、入力ミスによって分割予定ライン以外の領域が加工されてデバイスが損傷するという問題を解消できる情報取得装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたワークを加工するための情報を取得する情報取得装置であって、ワークを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたワークを撮像する撮像手段と、該保持手段に保持されたワークを照明する照明手段と、該保持手段と該撮像手段とをX軸方向に相対的に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該撮像手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に移動するY軸移動手段と、制御手段と、を少なくとも備え、該制御手段は、該撮像手段を作動して該保持手段に保持されたワークを撮像して結像点をワークの上面に位置付けてワークの上面高さを計測して記憶する上面高さ記憶部と、該X軸移動手段及び該Y軸移動手段を作動して該撮像手段でワークの輪郭を検出して、該ワークの形状を記憶する形状記憶部と、該X軸移動手段及び該Y軸移動手段を作動して該撮像手段でワークに形成された分割予定ラインの交差点を検出すると共に、隣接する交差点を検出して分割予定ラインの間隔を計測して記憶する間隔記憶部と、を少なくとも備える情報取得装置が提供される。
【0009】
制御手段は、該照明手段を作動して照度を変化させると共に、該撮像手段を作動して該保持手段に保持されたワークを撮像して濃淡の微分値が最大となる照度を適切な照度として設定する照度設定部を含むことが好ましい。また、該制御手段は、該撮像手段を作動して該保持手段に保持されたワークのデバイスを撮像してアライメントパターンとしての適性値を算定する適正値算定部を含むことが好ましい。本発明の情報取得装置は、切削手段、レーザー照射手段のいずれかを含む加工手段を備えた加工装置に装着されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の情報取得装置は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたワークを加工するための情報を取得する情報取得装置であって、ワークを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたワークを撮像する撮像手段と、該保持手段に保持されたワークを照明する照明手段と、該保持手段と該撮像手段とをX軸方向に相対的に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該撮像手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に移動するY軸移動手段と、制御手段と、を少なくとも備え、該制御手段は、該撮像手段を作動して該保持手段に保持されたワークを撮像して結像点をワークの上面に位置付けてワークの上面高さを計測して記憶する上面高さ記憶部と、該X軸移動手段及び該Y軸移動手段を作動して該撮像手段でワークの輪郭を検出して、該ワークの形状を記憶する形状記憶部と、該X軸移動手段及び該Y軸移動手段を作動して該撮像手段でワークに形成された分割予定ラインの交差点を検出すると共に、隣接する交差点を検出して分割予定ラインの間隔を計測して記憶する間隔記憶部と、を少なくとも備えていることから、オペレータの手を煩わせることなく、加工に必要なワークの情報を自動的に取得して、該ワークに対して加工を実施する際に、該情報に基づき、加工を実施する手段が正確に制御されて、オペレータによる入力ミスにより、誤って分割予定ライン以外の領域を加工してデバイスを損傷する等の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の情報取得装置が装着された切削装置の全体斜視図である。
図2】ワークとしてのウエーハ及び図1に示す切削装置に装着された撮像手段の一部を拡大して示す斜視図である。
図3】(a)上面高さを計測する態様を概念的に示す側面図、(b)上面高さ記憶部を示すブロック図である。
図4】(a)ワークの輪郭を検出する態様を示す概念図、(b)形状記憶部を示すブロック図である。
図5】撮像手段でワークに形成された分割予定ラインの交差点を検出する態様を示す平面図、(b)間隔記憶部を示すブロック図である。
図6】(a)ワークを撮像して濃淡の微分値が最大となる照度を適切な照度として設定する態様を概念的に示す側面図、(b)照度設定部を示すブロック図である。
図7】適性値算出部を示すブロック図である。
図8図1に示す切削装置により実施される切削加工の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成される情報取得装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態の情報取得装置が装着されたダイシング装置1の全体斜視図が示されている。本実施形態のダイシング装置1によって加工されるワークは、図示のような半導体のウエーハWであり、環状のフレームFに粘着テープTを介して支持されている。
【0014】
ダイシング装置1は、略直方体形状のハウジング2を備え、ハウジング2のカセットテーブル4aに載置されるカセット4と、カセット4からフレームFに支持された未加工のウエーハWを仮置きテーブル5に搬出し、仮置きテーブル5に置かれた加工済みのウエーハWをカセット4に搬入する搬出入手段3と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハWを保持手段7に搬送する旋回アームを有する搬送手段6と、保持手段7に保持されたウエーハWに切削加工を施す切削手段8と、上記した保持手段7上に保持されたウエーハWを撮像する撮像手段9と、保持手段7に保持されたウエーハWを照明する照明手段10と、図1において保持手段7が位置付けられた搬出入位置から加工済みのウエーハWを洗浄装置12(詳細については省略されている)に搬送する洗浄搬出手段14と、制御手段100と、を備えている。
【0015】
ダイシング装置1は、保持手段7と撮像手段9とを、X軸方向に相対的に移動するX軸移動手段と、保持手段7と撮像手段9とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に移動するY軸移動手段と、を備えている。本実施形態におけるX軸移動手段は、保持手段7をX軸方向に移動させる手段であり、Y軸移動手段は、切削手段8をY軸方向に移動させる手段であって、切削手段8のスピンドルハウジング83と一体で形成された撮像手段9をY軸方向に移動させる手段である。さらに、本実施形態では、切削手段8と共に撮像手段9をZ軸方向(上下方向)に移動させるZ軸移動手段も配設されている。上記したX軸移動手段、Y軸移動手段、及びZ軸移動手段は、いずれもハウジング2の内部に形成されており、図示は省略されている。
【0016】
保持手段7は、カバーテーブル71と、カバーテーブル71の中央から上方に突出したチャックテーブル72と、チャックテーブル72の保持面を構成する吸着チャック73と、チャックテーブル72の外周に均等な間隔で複数配設されてウエーハWを支持するフレームFを把持するクランプ74とを備えている。吸着チャック73は、通気性を有する部材により構成され、図示を省略する吸引源が接続されている。該吸引源を作動することで、吸着チャック7cの保持面に負圧が生成される。
【0017】
本実施形態の撮像手段9は、図2にその一部を拡大して示すように、制御手段100に接続されるカメラ部91と、鏡筒部92とを備えている。また、撮像手段9の鏡筒部92の下部に、上記の照明手段10が配設されており、保持手段7に保持されるウエーハWを照明する。図2の右方側に撮像手段9及び照明手段10を下方から見た斜視図を示す。図から理解されるように、照明手段10の下面10aには、鏡筒部92の下端に配設された結像レンズ93を囲むように、下方に向けて光を照射する複数の照明10bが環状に配設されている。該照明10bの照度は、制御手段100によって適宜調整可能である。
【0018】
上記した制御手段100は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(いずれも詳細についての図示は省略する)。制御手段100には、ダイシング装置1の各作動部が接続されて、各作動部を制御すると共に、撮像手段9、照明手段10、及びハウジング2の上面に配設された表示手段16が接続されて、該撮像手段9により撮像された画像は、制御手段100に記憶されると共に、表示手段16に表示される。
【0019】
本実施形態の制御手段100は、撮像手段9を作動して保持手段7に保持されたウエーハWを撮像して結像点PをウエーハWの上面に位置付けてウエーハWの上面高さHを計測して記憶する上面高さ記憶部110と、上記のX軸移動手段及びY軸移動手段を作動して撮像手段9によりウエーハWの輪郭を検出してウエーハWの形状を記憶する形状記憶部120と、該X軸移動手段及び該Y軸移動手段を作動して撮像手段9によりウエーハWに形成された分割予定ラインの交差点を検出すると共に隣接する交差点を検出して分割予定ラインの間隔を計測して記憶する間隔記憶部130と、を少なくとも備える。
【0020】
また、制御手段100は、照明手段10を作動してウエーハWを照明する照度を変化させると共に、撮像手段9を作動して保持手段7に保持されたウエーハWを撮像して濃淡の微分値が最大となる照度を適切な照度として設定する照度設定部140を備えている。さらに、制御手段100は、撮像手段9を作動して保持手段7に保持されたウエーハWのデバイスを撮像してアライメントパターンとしての適性値を算定する適正値算定部150を備えている。
【0021】
上記した上面高さ記憶部110、形状記憶部120、間隔記憶部130、照度設定部140、及び適性値算定部150のそれぞれの機能、作用について、より具体的に説明する。なお、上面高さ記憶部110、形状記憶部120、間隔記憶部130、照度設定部140、及び適性値算定部150のそれぞれは、制御手段100に記憶された制御プログラムによって自動的に実行される。また、本実施形態のウエーハWは、図2に示すように、複数の矩形状のデバイスWdが分割予定ラインWeによって区画され表面Waに形成されたものである。
【0022】
上面高さ記憶部110を実行して、チャックテーブル71の保持面を基準とするウエーハWの上面高さHを計測するに際しては、まず、上記した搬出入手段3を作動して、カセット4に収容されたウエーハWを仮置きテーブル5に引き出して位置合わせを行う。次いで、搬送手段6を作動して、仮置きテーブル5のウエーハWを図1に示す搬出入位置に位置付けられた保持手段7のチャックテーブル72に向けて搬送し載置する。図示を省略する吸引源を作動して、吸着チャック73上に負圧を生成してウエーハWを吸引保持すると共にフレームFをクランプ74によって固定したならば、上記のX軸移動手段を作動して、図2に示すように、ウエーハWを撮像手段9の直下に移動する。なお、図2における矢印D1で示す方向は、ウエーハWの表面Waに形成された一方の分割予定ラインWeに沿った方向として規定される第一の方向を示し、矢印D2で示す方向は、上記一方の分割予定ラインWeと直交する他方の分割予定ラインWeに沿った第二の方向であって、該第一の方向D1と直交する方向を示す。次いで、図3(a)に示すように、照明手段10の照明10bを作動し、予め設定された所定の照度でウエーハWを照明し、ウエーハWの表面Waの所定の位置(例えば、分割予定ラインWe、デバイスWd等)を撮像すると共に、上記のZ軸移動手段を作動して、撮像手段9を矢印Zで示す方向で昇降し、撮像手段9で撮像した画像の濃淡の微分値が最大となる結像点PをウエーハWの上面に位置付ける。そして、そのときの撮像手段9のZ軸方向の高さ位置Z1と、チャックテーブル72の表面から結像レンズ93までの高さ位置Z2に基づいて、ウエーハWの上面高さH(Z2-Z1)が演算される。このようにして演算された上面高さHを、図3(b)に示すように、上記した制御手段100の上面高さ記憶部110に記憶する。なお、上面高さ記憶部110に記憶される上面高さHの情報は、ウエーハWの表面Waにおける所定の一点の上面高さ情報に限定されず、ウエーハWの表面Wa上においてXY座標で特定される複数の点の上面高さの情報を記憶するものであってもよい。
【0023】
次いで、形状記憶部120を実行してウエーハWの形状を記憶するに際しては、上記の如く、結像点PをウエーハWの上面に位置付けた後、すなわち、ウエーハWの表面Waにピントが合った状態で、ウエーハWの輪郭を検出する。より具体的には、まず、撮像手段9により撮像する領域を、図4(a)に示すY軸方向(図中下方側)に移動し、結像点PがウエーハWの表面Waから外れて濃淡の微分値が急激に下がる位置(本実施形態では領域R1)を検出する。次いで、上記のX軸移動手段及びY軸移動手段を適宜作動しながら、撮像手段9によって撮像する画像の結像点Pの濃淡の微分値が急激に変化する位置座標をウエーハWの輪郭として捉え、撮像する領域を、矢印Aで示す如く領域R1から領域Rnを経由して領域R1に至るまで移動させる。このようにして撮像された画像情報に基づき、ウエーハW全体の形状を規定する複数の点が、XY座標((X1,Y1)~(Xn,Yn))で精密に検出されて、図4(b)に示すように、制御手段100の形状記憶部120に記憶される。なお、形状を規定する複数の点の数は特に限定されず、例えば、ウエーハWの形状が円形状であることが予め判明している場合は、少なくとも外縁の3点を検出することで輪郭の形状が特定される。
【0024】
さらに、間隔記憶部130を実行して、ウエーハW上の分割予定ラインWeの間隔を計測して記憶するに際しては、撮像手段9によってウエーハWの表面Waに形成された任意のデバイスWdを捉え、図5(a)に示すように、デバイスWdを区画する分割予定ラインWe1の方向(第1の方向D1)をX軸方向に整合させる。次いで、撮像手段9と、上記のX軸移動手段及びY軸移動手段を作動して、デバイスWdを区画している分割予定ラインWe1と、分割予定ラインWe1と直交する第二の方向D2に沿う分割予定ラインWe2との交差点C1を撮像する。次いで、上記のX軸移動手段を作動して、撮像領域を分割予定ラインWe1に沿って移動させ、第一の方向D1(X軸方向)において隣接する分割予定ラインWe1と分割予定ラインWe2との交差点C2を撮像する。そして、交差点C1から交差点C2まで移動させた場合のX軸方向の移動距離を演算し、第一の方向D1で隣接する分割予定ラインWe2、We2の間隔W1として特定する(本実施形態では6mm)。さらに、上記したように、交差点C2を撮像した状態から、Y軸移動手段を作動して、第二の方向D2(Y軸方向)で隣接する分割予定ラインWe1と分割予定ラインWe2との交差点C3を撮像するまで移動させる。そして、交差点C2から交差点C3まで移動させた場合のY軸方向の移動距離を演算し、第二の方向D2で隣接する分割予定ラインWe1、We1の間隔W2(例えば5mm)として特定する。上記のように、第一の方向D1で隣接する分割予定ラインWe2、We2の間隔W1、及び第二の方向D2で隣接する分割予定ラインWe1、We1の間隔W2が特定されたならば、図5(b)に示すように、間隔記憶部130に記憶する。
【0025】
上記したように、本実施形態では、制御手段100に上面高さ記憶部110と、形状記憶部120と、間隔記憶部130とを備えていることにより、オペレータの手を煩わせることなく、加工に必要なワーク(本実施形態では半導体のウエーハW)の情報を自動的に取得して、ウエーハWに対して切削加工を実施する際の切込み送り量、切削加工の加工開始・終了位置、及びデバイスを切削するときの割り出し送り量が正確に制御されて、オペレータによる入力ミスにより、誤って分割予定ライン以外の領域を加工してデバイスを損傷する等の問題が解消する。
【0026】
本実施形態では、さらに、制御手段100に配設された照度設定部140が実行される。より具体的には、図6(a)に示すように、ウエーハWの表面Wa上に結像点Pを位置付けた状態で、撮像手段9の下端に配設された照明手段10の照明10bからウエーハWを照明する際の照度を複数の段階(本実施形態では、照度が低い(暗い)照度1から照度の高い(明るい)照度10までの10段階)で変化させる。そして、照明10bからの照明の照度を変化させる毎に、所定の領域(例えば図5(a)に示す領域)を撮像手段9により撮像する。この時に撮像される各画像の所定の箇所に基づき、画像上の濃い部分と淡い部分の境界における濃淡の微分値を演算し、図6(b)に示すように、照度と関連付けた該微分値を、照度設定部140の微分値記憶部142に記憶する。そして、微分値記憶部142に記憶された濃淡の微分値が最大となる照度(本実施形態では、照度5である)を選択して、撮像手段9を作動する際の照度として、設定照度部144に記憶する。該濃淡の微分値が大きい程、濃淡の変化が急峻で画像のコントラストが強いことを示し、該微分値が小さい程、濃淡の変化が緩やかになり画像のコントラストが弱いことを示している。撮像手段9により撮像される画像のコントラストが強い程、ウエーハWを撮像して実施される画像処理、例えば、上記の上面高さ記憶部110、形状記憶部120、間隔記憶部130や、切削加工の際に実行されるアライメント工程が適切に実際されることから、照度設定部140により適切な照度が設定されることで、上記の撮像手段9を使用して撮像される画像に基づく制御プログラムが適切に実施される。
【0027】
本実施形態では、さらに、制御手段100に配設された適性値算定部150が実行される。適性値算定部150は、撮像手段9により撮像された画像を処理することにより、画面上に表出しているパターン毎に、アライメントを実行する際のアライメントパターンとしての適性値を算定する手段であり、該適性値に基づき、アライメントパターンを選定するものである。
【0028】
より具体的に説明すると、例えば、撮像手段9によって撮像された領域が、図5(a)に示すように表示手段16に表示されたならば、アライメントに使用されるのに相応しい特徴的なアライメントパターンとしての適性値を算出する。該適性値の演算は、種々の方法が考えられ特に限定されるものではないが、例えば、以下のように演算される最大類似度を適性値として算出することができる。上記の最大類似度は、任意のパターンと、他のパターンとを、パターンマッチングによってどの程度類似しているかを評価した類似度に基づき算出されるものであり、例えば0から100の間で評価され、類似度が100である場合は、完全に形状、寸法、及び方向が一致していることを意味する。
【0029】
図5(a)に示す表示手段16に表示された全領域には、複数のパターンが捉えられている。仮に、図5(a)に示されたパターンのうち、パターンk1を任意のパターンとして特定したならば、撮像手段9によって撮像された領域に表出するパターンk1以外の他の全てのパターンとの類似度をパターン毎に算出し、算出された複数の類似度のうちの最も大きな値を最大類似度とする。
最大類似度=他の全てのパターンとの類似度の最大値・・・(1)
【0030】
上記の式(1)によれば、パターンk1が他のパターンと類似しているほど、該最大類似度は大きくなり、他のパターンと類似してないほど、すなわち、パターンk1が特徴的なパターンであるほど、該最大類似度が小さくなる。よって、該最大類似度が小さい程、アライメントで使用されるアライメントパターンとしての適性が高いことが理解される。本実施形態の図5(a)に示す表示手段16に表示された領域においては、図7に示すような複数のパターンが抽出され、上記の式(1)に基づき、各パターンの最大類似度が算出されて、類似度記憶部152に各パターンの適正値として記憶される(本実施形態におけるパターンk1の最大類似度は45である。)。該類似度記憶部152に全てのパターンの適性値が記憶されたならば、最大類似度(適性値)が最も小さいパターン(本実施形態では図5(a)中のパターンk2)がアライメントパターンとして最も適していると判定され、適性パターン記憶部154に、最も推奨されるパターンとしてパターンk2が記憶される。なお、図5(a)及び図7に示すパターンは、説明の都合上、模式的に示したものであり、各パターンの形状に対応する適性値(最大類似度)は実際に演算されるものとは異なる。
【0031】
上記した実施形態によれば、上記したような上面高さ記憶部110と、形状記憶部120と、間隔記憶部130とを備えている情報取得装置において、アライメントパターンとして適切なパターンをオペレータの手を煩わせることなく選択することができ、ウエーハWに対する加工を実施する際のアライメントが適切に実行される。
【0032】
本実施形態の情報取得装置は、上記したように切削手段8を備えた切削装置1に装着されたものであり、該切削手段8によってウエーハWを個々のデバイスチップに分割する切削加工が実施される。図1に加え、図8を参照しながら、該切削加工について説明する。
【0033】
図8に示すように、切削手段8は、図中矢印Yで示すY軸方向に配設されたスピンドルハウジング83と、スピンドルハウジング83に回転自在に保持され図示を省略するモータにより駆動されるスピンドル84と、スピンドル84の先端に保持された環状の切削ブレード86と、スピンドル84と切削ブレード86とを覆うブレードカバー85と、切削ブレード86により切削される切削部に切削水を供給する切削水ノズル87とを備えている。
【0034】
切削加工を実施するに際し、まず、ウエーハWの表面Waを上方に向けて上記のチャックテーブル72に載置して吸引保持し、ウエーハWを、撮像手段9の直下に位置付ける。次いで、上記したように、上面高さ記憶部110、形状記憶部120、間隔記憶部130、照度設定部140、及び適性値算定部150を実行して、ウエーハWの上面高さH、ウエーハWの輪郭の形状、分割予定ラインの第一の方向、第二の方向における間隔、適切な照度、適切なアライメントパターン等の切削加工が必要な情報の取得がなされる。
【0035】
上記したように、ウエーハWを切削加工するのに必要な情報が取得されたならば、照明手段10が適切な照度5でウエーハWを照明し、所定の第一の方向の分割予定ラインWeをX軸方向に整合させ、上記の適性値算定部により選定されたアライメントパターン(パターンk2)に基づいてアライメント工程が実施され、加工すべき分割予定ラインWeの位置を検出する。次いで、切削ブレード86と分割予定ラインWeとの位置合わせを実施し、X軸方向に整合させた所定の分割予定ラインWeに高速回転させた切削ブレード86を位置付けて、上記した上面高さHに基づく切込み送り量で、表面Wa側から切り込ませると共に、チャックテーブル(図示は省略されている)をX軸方向に加工送りして切削溝Lを形成する。さらに、切削溝Lを形成した分割予定ラインWeにY軸方向で隣接し、切削溝Lが形成されていない分割予定ラインWe上に、上記した分割予定ラインの間隔(W1=6mm、W2=5mm)の情報に基づき、切削手段8の切削ブレード86を割り出し送りして、上記と同様にして切削溝Lを形成する切削加工を実施する。X軸方向における切削加工の開始位置、終了位置は、上記の形状記憶部120に記憶されたウエーハWの形状に関する情報に基づき設定される。これらを繰り返すことにより、X軸方向に沿うすべての分割予定ラインWeに沿って切削溝Lを形成する。次いで、上記のチャックテーブルを90度回転し、先に切削溝Lを形成した方向と直交する方向をX軸方向に整合させ、上記した切削加工を、新たにX軸方向に整合させたすべての分割予定ラインWeに対して実施し、ウエーハWに形成されたすべての分割予定ラインWeに沿って切削溝Lを形成する。このようにして切削加工を実施して分割予定ラインWeに沿ってウエーハWをデバイスWdごとに分割する。
【0036】
本実施形態によれば、ウエーハWを含む加工に必要なワークの情報を自動的に取得でき、オペレータがワークの情報を制御手段100に入力する必要がなく、煩に堪えないという問題が解消する。さらに、入力ミスによって、分割予定ラインWe以外の領域を加工してしまい、デバイスWdが損傷するという問題も解消される。
【0037】
なお、上記した実施形態では、本発明の情報取得装置を、切削手段8を備えた切削装置1に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されない、例えば、本発明に基づき構成される情報取得装置を、レーザー照射手段を備えたレーザー加工装置に適用してもよい。また、本発明に基づき構成される情報取得装置は、必ずしも切削装置やレーザー加工装置等の加工装置に配設される必要はなく、上記した切削装置1における加工手段(切削手段8)を備えず、上面高さ記憶部110、形状記憶部120、間隔記憶部130、照度設定部140、及び適性値算定部150を実行し、ウエーハWに関し、専ら加工に必要な情報を取得するものであって、該取得した情報を、別途用意される加工装置に対し、搬送されるウエーハWと共に引き継ぐものであってもよい。その場合は、例えば、個々のウエーハWに対して個別のID番号等を付与し、該ID番号に紐づけて該加工に必要な情報を記憶し、加工装置に伝達することが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
1:ダイシング装置
2:ハウジング
3:搬出入手段
4:カセット
5:仮置きテーブル
6:搬送手段
7:保持手段
71:カバーテーブル
72:チャックテーブル
73:吸着チャック
8:切削手段
83:スピンドルハウジング
84:スピンドル
85:ブレードカバー
86:切削ブレード
87:切削水ノズル
9:撮像手段
91:カメラ部
92:鏡筒部
10:照明手段
10a:下面
10b:照明
12:洗浄装置
14:洗浄搬出手段
16:表示手段
100:制御手段
110:上面高さ記憶部
120:形状記憶部
130:間隔記憶部
140:照度設定部
150:適性値算定部
D1:第一の方向
D2:第二の方向
F:フレーム
T:粘着テープ
W:ウエーハ
Wa:表面
Wd:デバイス
We:分割予定ライン
P:結像点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8