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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141144
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】制御装置、散布装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/10 20060101AFI20230928BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G05D1/10
A01M7/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047307
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 典宏
【テーマコード(参考)】
2B121
5H301
【Fターム(参考)】
2B121CB37
2B121EA26
2B121FA20
5H301AA06
5H301BB10
5H301BB14
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】無人飛行体を適切に制御することが可能な制御方法を提供する。
【解決手段】主制御部56(制御装置)は、無人飛行体10の操作者により為される操作に関する操作情報を取得する取得部561と、取得した操作情報と、予め記憶部59に記憶されている無人飛行体10の基本操作に関する複数の基本操作情報とを比較し、操作情報が基本操作情報の何れかと一致するか否かを判定する判定部563と、判定部563で、一致すると判定したときは、操作情報に対応する動作をするように、無人飛行体10の動作を制御する動作制御部563とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
客体の操作を制御する制御装置であって、
前記客体の操作者により為される操作に関する操作情報を取得する取得部と、
取得した前記操作情報と、予め記憶部に記憶されている前記客体の基本操作に関する複数の基本操作情報とを比較し、前記操作情報が前記基本操作情報の何れかと一致するか否かを判定する判定部と、
前記判定部で、一致すると判定したときは、前記操作情報に対応する動作をするように、前記客体の動作を制御する動作制御部と、を備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記操作者により為される前記客体の前記基本操作を収集し、前記記憶部に記録する記録部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記判定部が一致しないと判定したときは、一致しないことを報知する報知部を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記客体が、無人飛行体である
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
被散布物の散布部を備えた無人飛行体により、所定の散布対象に前記被散布物を散布するための散布装置であって、
前記無人飛行体の操作者により操作される操作部と、
前記操作部に対して為される操作に関する操作情報が入力される、請求項1~4の何れか一項に記載の制御装置と、
前記操作者に装着又は携帯される動力式の散布器本体と、を備え、
前記散布器本体は、電源部と、前記被散布物の収容部及び動力ポンプを有する供給部と、を備え、
前記無人飛行体と前記電源部とは、給電線によって接続され、
前記散布部と前記供給部とは、供給チューブによって接続されている
ことを特徴とする散布装置。
【請求項6】
前記操作部が、剛体からなり、
前記剛体の一端が接続される固定部と、
前記固定部及び前記剛体の接続部分に設けられて前記剛体の変位を検知し、検知結果を前記制御装置に出力する検知部と、を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の散布装置。
【請求項7】
請求項1~4の何れか一項に記載の制御装置によって実行される制御方法であって、
前記客体の操作者によりなされた操作に関する操作情報を取得する取得ステップと、
取得した前記操作情報と、予め記憶部に記録されている前記客体の基本操作に関する複数の基本操作情報とを比較し、前記操作情報が前記基本操作情報の何れかと一致するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで、一致すると判定したときは、前記操作情報に対応する動作をするように、前記客体の動作を制御する動作制御ステップと、を有する
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人飛行体等の客体の操作を制御する制御装置、この制御装置を備える散布装置、及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン(無人飛行体)の技術の進展により、様々な産業や分野で多大な恩恵をもたらしている。農業分野でもセンシング、運搬、散布作業などへのドローン技術の適用が試みられ、精密農業や省力化を達成してきている。ドローン技術は、引き続きスマート農業を担う主要な技術の一つとなっていくと考えられる。
【0003】
ドローン等の客体を操縦する際には、操作レバー等を前後左右に所定の角度や速度で倒すことで、ドローンの移動方向や移動速度を決定することができる。このとき、操作者が、不測に操作レバーを大きく倒したりすると、ドローンが急旋回したり、急降下したり、操作者が意図しない動きをさせてしまう場合がある。このため、操作者が意図しない操作を行ったときに、適切な対応が可能な技術の開発が望まれている。
【0004】
ところで、ドローンの飛行状態を監視し、異常があったときは緊急動作指令をドローンに送信し、ドローンに着陸や空中停止等の退避行動をとらせる技術、緊急動作指令を受信できなかったときに、ドローン自体が退避行動をとる技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、これらの従来技術は、操作者の意図しない操作に対応してドローンを制御する技術ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6729962号
【特許文献2】特許第6777355号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、客体の操作を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の制御装置は、客体の操作を制御する制御装置であって、前記客体の操作者により為される操作に関する操作情報を取得する取得部と、取得した前記操作情報と、予め記憶部に記憶されている前記客体の基本操作に関する複数の基本操作情報とを比較し、前記操作情報が前記基本操作情報の何れかと一致するか否かを判定する判定部と、前記判定部で、一致すると判定したときは、前記操作情報に対応する動作をするように、前記客体の動作を制御する動作制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
このように構成することで、客体の操作を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る制御装置を備える散布装置及び散布システムの概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る制御装置を備える散布システムの全体構成例を示すブロック図である。
図3】基本操作情報を取得する様子を説明するための説明図であり、(a)は第1実施形態での基本操作情報を取得する様子を示し、(b)は第2実施形態での基本操作情報を取得する様子を示す。
図4】操作ハンドルの基本操作と無人飛行体の動きとの関係を説明するための説明図であり、(a)は操作ハンドルの基本的な操作と無人飛行体の動きとを対応付けた図であり、(b)は操作ハンドルの座標軸を示す図である。
図5】無人飛行体の動き、第2実施形態の操縦器のスティック操作、及び第1実施形態に係る操縦器による操作と変位の関係を説明するための説明図である。
図6】制御方法の一例を示すフローチャートであり、(a)は基本操作情報の取得処理の一例を示すフローチャート(b)は被散布物の散布処理の一例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る制御装置を備える無人飛行体システムの概略構成を示す図である。
図8】第2実施形態に係る制御装置を備える無人飛行体システムの全体構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態に係る制御装置を備える散布装置60及び散布システム100について、図面を参照しながら説明する。散布装置60及び散布システム100は、被散布物を散布対象である圃場又は圃場に生育する農産物に散布する装置及びシステムである。圃場は、米、野菜、果物、牧草等の農産物を育てる場所であり、田、畑、果樹園、牧草地等が挙げられる。第1実施形態に係る散布装置60及び散布システム100は、比較的中規模、又は小規模な農場等での使用に好適である。第1実施形態における被散布物は、除草剤、殺虫剤等の液体状の農薬、肥料、活力剤等である。
【0011】
なお、本開示の被散布物の形態は、液体に限定されることはなく、粒体、粉体等であってもよい。また、被散布物は、上記農薬、肥料、活力剤に限定されず、種、水等、圃場に散布され得るものであればよい。また、被散布物の散布対象が、圃場や、圃場に生育する農産物に限定されることはなく、公園、庭園、庭、山林、道路端、空き地等であってもよいし、これらで生育する植物体等であってもよい。
【0012】
図1図2に示すように、散布システム100は、無人飛行体10と、散布装置60とを備えるシステムであり、操縦器50による無人飛行体10の飛行及び被散布物の散布を可能とする。散布システム100は、無人飛行体10を用いた無人飛行体システムの一例である。また、本実施形態では、操縦器50が、本開示の制御装置(より詳細には、後述する主制御部56)を備えている。
【0013】
無人飛行体10は、無人航空機、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)等とも呼ばれ、人が搭乗しない(無人の)飛行体である。無人飛行体10は、例えば、ドローン、無人ヘリコプター、ラジオコントロール(ラジコン)等が挙げられるが、無人で飛行するものであればよく、これらに限定されない。第1実施形態の無人飛行体10は、図1に示すように、複数(4つ)の回転翼12を有する無人回転翼機としている。
【0014】
無人飛行体10は、図2に示すように、散布部11と、回転翼12と、モータ13と、撮像部14と、各種センサ15と、通信部16と、制御部17と、記憶部18と、を備える。モータ13、撮像部14、センサ15、通信部16、制御部17及び記憶部18は、後述の電源部21から供給される電力によって作動する電気機器である。
【0015】
散布部11は、被散布物を散布対象に散布する器具であり、第1実施形態では、噴射ノズルから構成される。散布部11は、無人飛行体10のボディ10a又は脚部10bに、その散布口を下方又は水平に向けた状態で固定されている。散布部11は、被散布物を狭い範囲に(ピンポイントで)散布する場合等は、所定の方向に向けて1つ設けられていてもよいし、広い範囲に散布する場合は、複数方向に向けて複数設けられていてもよい。また、散布部11は、被散布物を噴射するための動力ポンプ等が設けられていてもよい。
【0016】
回転翼12は、ロータとも呼ばれ、無人飛行体10を飛行させるための機器であり、飛行の安定性等を考慮して、複数(4つ)設けられている。各回転翼12は、ボディ10aから延びるアーム10cに取り付けられている。モータ13は、回転翼12に各々設けられ、制御部17によって回転駆動され、回転翼12を回転させることで、無人飛行体10を飛行させる。
【0017】
撮像部14は、無人飛行体10の周囲の画像を取得する機器である。撮像部14は、例えば、静止画像や動画像を撮像するデジタルカメラ等から構成される。撮像部14は、撮影した画像を制御部17に出力する。
【0018】
センサ15は、各種情報を検出する機器であり、例えば、高度計、ジャイロセンサ、加速度センサ、超音波センサ、磁気方位センサ、GPS(Global Positioning System)等が挙げられる。センサ15は、取得した情報を制御部17に送信する。これらの情報は、無人飛行体10の位置や姿勢、散布対象との距離、被散布物の散布量、飛行条件等を把握すること等に用いられる。
【0019】
通信部16は、信号やデータを送受信するべく、無人飛行体10を遠隔操作する操縦器50との間で無線通信を行う機器である。通信部16は、無線機、アンテナ等を有して構成される。なお、通信部16と操縦器50との通信は、無線によるものに限定されず、有線によって通信するものでもよい。
【0020】
制御部17は、いわゆるフライトコントローラであり、無人飛行体10全体の動作を制御する。制御部17は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサから構成され、記憶部18に記憶されたプログラムを実行することによって、無人飛行体10を制御する制御装置として機能する。制御部17は、操縦器50から通信部16を通じて受信した入力情報、各種センサ15から入力される検知結果等に基づいて、モータ13の回転数を制御することで、無人飛行体10の飛行を制御する。また、制御部17は、撮像部14から入力される画像を、記憶部18に記憶したり、通信部16を通じて操縦器50に送信したりする。
【0021】
制御部17は、予め設定された手順に従って、自律飛行を行なうように無人飛行体10を制御するとともに、操縦器50からの制御信号に従って、遠隔操作(マニュアル操作)による飛行を行うように無人飛行体10を制御する。
【0022】
記憶部18は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶媒体等から構成される記憶装置である。記憶部18は、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラムが格納されるとともに、無人飛行体10を制御するためのパラメータ、撮像部14で撮影された画像、センサ15での検知結果等、各種情報が格納される。
【0023】
散布装置60は、散布器本体20と、給電線30と、供給チューブ40と、操縦器50とを備える。散布器本体20と操縦器50の本体部51とは、後述の装着体53の取付部53bに一体的に取り付けられ、装着体53によって操作者Pの背中に装着される(図1参照)。
【0024】
散布器本体20は、操作者Pに装着又は携帯される動力式の散布器である。第1実施形態の散布器本体20は、エンジンを動力とし、操作者Pが背中に背負って持ち運ぶ(携帯する)ことが可能な背負い式のエンジン動力散布器である(図1参照)。
【0025】
図2に示すように、散布器本体20は、電源部21と、供給部22とを備える。電源部21は、給電線30経由で無人飛行体10の電気機器に電力を供給するための電力源である。本実施形態の電源部21は、動力ポンプ24の動力源25であるガソリンを用いて発電する発電機から構成される。なお、電源部21は、発電機に限定されることはなく、バッテリや電池パック等であってもよい。また、動力源25が電気等であれば、動力源25そのものを電源部21とすることもできる。
【0026】
供給部22は、収容部23と、動力ポンプ24と、動力源25とを備える。収容部23は、被散布物である薬液を収容する薬剤タンクから構成される。収容部23は、ポリエチレン等の樹脂から形成され、軽量で耐液性、耐薬剤性に優れる。動力ポンプ24は、収容部23に収容された被散布物を、供給チューブ40経由で無人飛行体10の散布部(噴射ノズル)11から圧力によって噴射させるものである。動力ポンプ24は、主制御部56の制御の下、操作ハンドル52の操作ボタン52eの操作によって駆動される。第2実施形態の動力ポンプ24は、動力源25によって駆動するエンジン式の動力ポンプから構成されるが、これに限定されず、散布部11まで薬液を供給して散布部11から噴射させるものであればよい。動力ポンプ24は、動力源25をガソリンとするガソリンエンジン式の動力ポンプであるが、これに限定されず、ディーゼルエンジン式、LPG(Liquefied Petroleum Gas)エンジン式、CNG(Compressed Natural Gas)エンジン式の動力ポンプでもよい。また、動力源25が、ガソリンに限定されず、電気等であってもよい。
【0027】
給電線30は、散布器本体20の電源部21と無人飛行体10の電気機器とを接続するものであり、電源部21からの電力を電気機器に供給する。給電線30の長さとしては、特に限定されないが、樹木等の散布対象に液剤を散布可能な高さまで無人飛行体10が上昇したり、移動したりするのを妨げないような長さとすることが好ましい。
【0028】
供給チューブ40は、散布器本体20の動力ポンプ24及び収容部23と無人飛行体10の散布部11とを接続するものであり、動力ポンプ24により収容部23から噴射される薬液を、散布部11に供給する。供給チューブ40は、例えば、ゴム製チューブ、ポリ塩化ビニルチューブ等の樹脂製チューブ(ホース、管、パイプ等も含む。)が挙げられる。供給チューブ40の長さは、給電線30と同等の長さとすることが好ましい。
【0029】
次に、第1実施形態に係る操縦器50について詳細に説明する。操縦器50は、操作者Pからなされる操作に応じて、無人飛行体10に飛行方向、高度、速度等の飛行に関する制御信号を送信し、無人飛行体10の動作を制御する機器である。
【0030】
図1に示すように、操縦器50は、本体部51と、剛体である操作ハンドル52と、装着体53とを備える。本体部51は、装着体53によって操作者Pに背負われる機器である。本体部51は、図2に示すように、固定部54と、検知部55と、主制御部56と、電源部57と、通信部58と、記憶部59とを備える。これらは、樹脂製又は金属製の筐体51a(図1参照)内に収容されている。
【0031】
固定部54は、本体部51の側面であって筐体51aや図示しないベースに固定される。固定部54は、金属製筐体等の変形しにくい硬質材料から構成される。なお、筐体51aやベースそのものを固定部54とすることもできる。固定部54には、剛体である操作ハンドル52の一端(より詳細には、副軸53cの一端)が接続される。
【0032】
検知部55は、固定部54と操作ハンドル52との接続部分に設けられる。検知部55は、固定部54に対する操作ハンドル52の変位を検知する。検知部55は、例えば、ひずみゲージが好適に用いられるが、これに限定されず、固定部54に対する操作ハンドル52の伸びや捻じれ等の変位を出力するものであればよく、圧電素子、レーザ変位計等であってもよい。検知部55は、1つであってもよいが、操作ハンドル52の様々な方向への変位を検知すべく、接続部分に所定間隔で複数(少なくとも2つ、好ましくは4つ、より好ましくは5つ以上)設けられている。
【0033】
電源部57は、本体部51の電気機器(検知部55、主制御部56、通信部58、記憶部59、操作ボタン52e等)に電力を供給する機器であり、バッテリ、電池パック等から構成される。
【0034】
通信部58は、信号やデータを送受信するべく、無人飛行体10の通信部16と無線通信を行う機器である。通信部58は、無線機、アンテナ等を有して構成される。
【0035】
記憶部59は、ROM及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶媒体等から構成される記憶装置である。記憶部59は、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラムが格納されるとともに、操作部である操作ハンドル52の基本操作情報、操作ハンドル52の操作(操作情報)に対応する無人飛行体10の動作情報、パラメータ等、各種情報が格納される。
【0036】
「基本操作情報」は、後述する基本操作情報の取得処理で取得される情報であり、基準となる複数の操作情報からなる。「操作情報」は、操作者Pの操作によって取得される操作ハンドル52の動きに関する情報である。操作情報は、具体的には、操作ハンドル52の伸び量、縮み量、回転量、操作時間等である。「動作情報」は、無人飛行体10の動きを示す情報であり、例えば、前進、後退、右旋回、左旋回、上昇、下降、右移動、左移動、移動距離、移動速度、回転角度、高度等である。
【0037】
主制御部(制御部)56は、操縦器50全体の動作を制御する。主制御部56は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサから構成され、記憶部59に記憶されたプログラムを実行することによって、操縦器50を制御する制御装置として機能する。
【0038】
主制御部56は、検知部55で検知した操作ハンドル52の変位に基づいて、無人飛行体10の動きを制御する。また、主制御部56は、無人飛行体10から、センサ15で検知した検知結果等の各種情報を、通信部58を通じて受信する。主制御部56は、検知部55での検知結果、さらにはセンサ15での検知結果等に基づいて、無人飛行体10の動きを制御する制御信号を生成し、通信部58を通じて無人飛行体10に送信する。
【0039】
また、主制御部56は、操縦器50による無人飛行体10の操作を制御する制御方法が実行される制御装置として機能する。すなわち、主制御部56は、記憶部59に記憶されたプログラムを実行することで、取得部561と、記録部562と、判定部563と、動作制御部564と、報知部565を有する本開示の制御装置として機能する。
【0040】
取得部561は、操作者Pにより操作ハンドル52に対して為された操作情報を取得する。より詳細には、取得部561は、操作ハンドル52の操作によって検知部55が検知した変位の検知結果に基づき、変位情報(後述する操作ハンドル52の伸び量、縮み量、回転量等)を取得し、この変位情報を解析して、操作情報を取得する。
【0041】
記録部562は、基本操作情報の取得時に、操作者Pにより操作ハンドル52に対して為され、取得部561が取得した様々な操作情報を、基本操作情報として収集し、記憶部59に記録(記憶)する。「基本操作情報」は、無人飛行体10の動きを制御して所望の飛行をさせるための操作ハンドル52の基準となる操作情報である。基本操作情報の取得は、ヘッドマウントディスプレイ70により表示される仮想現実の画像を視認しながら、操作者Pが操縦器50を操作することで、取得部561によって取得され、記録部562によって記憶部59に記録される。
【0042】
判定部563は、実際に無人飛行体10を飛行させるときに、操作者Pにより操作ハンドル52に対して為され、取得部561が取得した操作情報と、記憶部59に記録された複数の基本操作情報とを比較し、操作情報が基本操作情報の何れかと一致するか否かを判定する。この判定は、厳密な一致性で行われてもよいし、所定の閾値の範囲内の差異を許容し、この範囲内であれば一致すると判定するものでもよい。
【0043】
動作制御部564は、判定部563で、操作情報が基本操作情報の何れかと一致すると判定したときは、この操作情報に対応する動作をするように、前記客体の動作を制御する。すなわち、記憶部59から操作情報に対応する動作情報(無人飛行体10の移動方向、移動量、回転量等)を取得し、その制御信号を生成して通信部58を通じて無人飛行体10に送信する。
【0044】
一方、判定部563で、操作情報が基本操作情報の何れかとも一致しない(不一致)と判定したときは、動作制御部564は、その操作情報を破棄して、無人飛行体10に当該操作情報に対応する動作を行わせないようにする(操作をスキップする)。
【0045】
第1実施形態では、基本操作情報を「正」(通常の操作又は正しい操作)とし、基本操作情報と一致する操作を「正常操作」(操作者Pが意図して行う適切な操作)とし、基本操作情報と不一致の操作を「エラー操作」(意図しない操作又は誤操作)とする。動作制御部564は、エラー操作に対応する動作を無人飛行体10に実行させないように制御するものである。
【0046】
また、第1実施形態では、無人飛行体10の散布部11へ被散布物を供給する散布器本体20に対する操作、具体的には、動力ポンプ24を駆動するための操作ボタン52eに対する操作も操作情報として取得部561が取得する。そして、判定部563が予め記録されている操作ボタン52eの基本操作情報と比較して、適否を判定する。
【0047】
「エラー操作」は、より具体的には次のような操作が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、歩行しながら無人飛行体10を操縦中に何らかの原因で操作者Pがつまずき、不意に操作ハンドル52を動かす場合。例えば、無人飛行体10を散布対象の樹木等に衝突するまで接近させるような操作。例えば、散布部11から樹木等の散布対象以外に薬剤を長時間散布し続ける操作。
【0048】
報知部565は、エラー操作であることを操作者Pに報知する。具体的には、報知部565は、操縦器50に備えられた図示しないブザー、振動体、LED(Light Emitting Diode)等の発光部を制御して、ブザーから音を出力したり、振動体を振動させたり、発光部を光らせたりして、操作者Pにエラー操作が行われたことを知らしめる。なお、操縦器50が表示部を有している場合は、報知部565は、表示部にメッセージや画像を表示して報知してもよい。
【0049】
なお、エラー操作の際の処理が、操作情報の破棄や報知に限定されず、他の異なる実施形態として、動作制御部564は、エラー操作を検知したときに、無人飛行体10にエラーを回避する動作(例えば、速度を落とす、着陸する、ホバリングする等)を行わせるための制御信号を送信してもよい。また、操縦器50にAI(Artificial Intelligence)を搭載し、動作制御部564は、エラー操作を蓄積して学習し、適切な動作をさせるための制御信号を生成して無人飛行体10に送信するものとすれば、無人飛行体10の急旋回や急降下等の意図しない動作を抑制して、より適切な飛行が可能となる。
【0050】
次に、操作ハンドル52について、詳細に説明する。操作ハンドル52は、操作者Pが把持して無人飛行体10を操縦するための操作がなされる部材である。操作ハンドル52は、剛体であれば特に限定されることはなく、直線的な棒材であってもよいし、L字状、クランク状等に屈曲された棒材であってもよい。操作者Pの上腕長等の対格差や、操作のし易さ、本体部51が背中に配置されること等を考慮して、操作ハンドル52は、L字状、クランク状であることがより好ましい。
【0051】
第1実施形態の操縦器50では、操作ハンドル52は、本体部51の左側面に設けられている。この構成により、操作者Pは左手で操作ハンドル52を操作可能となり、右手で他の作業を行うことができる。操作ハンドル52は、本体部51を背負った操作者Pに対して前後方向に延在する第一アーム部52a(主軸)と、この第一アーム部52aの一端(後端)から第一アーム部52aと交差する左右方向に延在する第二アーム部52b(副軸)とを有する。すなわち、第一アーム部52aと第二アーム部52bは、操作者Pに対して、左後方から前方に向かって平面視L字状に延在している。第二アーム部52bの一端は、本体部51の左側面から筐体51a内に挿入され、筐体51a内の固定部54に接続されている。
【0052】
さらに、第1実施形態の操作ハンドル52は、第一アーム部52aの他端(先端)から、第一アーム部52a及び第二アーム部52bと交差する上下方向に延在する第三の軸であるグリップ部52cを有している。グリップ部52cは、操作者Pが把持する部分であり、操作者Pが把持及び操作がし易いように、外周にカバー部材52dが装着されている。このように、第一アーム部52a、第二アーム部52b及びグリップ部52cを有することで、操作ハンドル52は、クランク状を呈している。
【0053】
また、第1実施形態の操作ハンドル52は、グリップ部52cの天面に、親指で押し操作が可能な操作ボタン52eを有している。この操作ボタン52eは、無線通信又は有線通信により、主制御部56(取得部561)にオン(押された)又はオフ(解除された)信号を送信する。主制御部56(動作制御部564)は、例えば、オン信号を受信したときは、散布器本体20の動力ポンプ24を駆動させ、収容部23から供給チューブ40を経由して無人飛行体10の散布部11に液剤を供給し、散布部11による液剤の散布を開始するとともに、オン信号が継続している間は散布を続行する。一方、主制御部56は、オフ信号を受信したときは、散布器本体20の動力ポンプ24を停止させることで、散布部11への液剤の供給を停止する。
【0054】
また、主制御部56は、操作ボタン52eの押し下げ量に応じて、動力ポンプ24の駆動力を制御し、散布部11からの液剤の散布量を調整可能としている。すなわち、操作者Pは、操作ボタン52eの押し下げ量を少なくすることで、散布部11からの液剤の散布量を少なくしたり幅広く散布したりすることができ、押し下げ量を多くすることで、散布部11からの液剤の散布量を多くしたり集中的に散布したりすることができる。
【0055】
次に、操作ハンドル52の操作方法及び操作ハンドル52の操作と無人飛行体10の動きとの関係を、図4図5を参照して説明する。なお、図4では、操作ボタン52eを省略している。ところで左右2つの操作スティックを有する一般的な操縦器の操作モードには、モード1とモード2のような複数のモードがある。以下では、第1実施形態の操縦器50は、モード1で操作されるものとして説明するが、モード2で操作されるものでもよい。
【0056】
第1実施形態の操縦器50は、操作ハンドル52(グリップ部52c)を水平移動又は傾ける動きで、後述の第2実施形態の操縦器50Aの2つの操作スティックの動きを代替することが可能である。図4(a)は操作ハンドル52の基本的な操作と無人飛行体10の動きとを対応付けた図である。この図4(a)に示すように、無人飛行体10を前後左右に水平移動させるときは、操作者Pは、直線矢印で示すように、操作ハンドル52全体を、前後左右方向に水平移動させる。無人飛行体10を上昇又は下降させるとき、若しくは左旋回又は右旋回させるときは、操作者Pは、曲線矢印で示すように、操作ハンドル52を前後方向又は左右方向に傾ける。これらの操作を行うときは、操作者Pは、操作ハンドル52を押し出す動き、傾ける動き等を行うが、実際に操作ハンドル52が延長したり、傾斜したりするだけではなく、剛体として伸びや捻じれの変化量を出力させるための動きである。
【0057】
図4(b)は操作ハンドル52の座標軸を示す図である。図4(b)中の「x、y、z」は第一アーム部52aの座標軸(x軸、y軸、z軸)を示す。x軸は第一アーム部52aの延在方向(前後方向)に平行な軸であり、y軸は水平方向(左右方向)に平行な軸、z軸は上下方向(鉛直方向)に平行な軸である。図4(b)中の「x’、y’、z’」は、第二アーム部52bの座標軸(x’軸、y’軸、z’軸)を示す。x’軸、y’軸、z’軸は、それぞれx軸、y軸、z軸と平行な軸である。
【0058】
また、図4(b)の「u」はx軸を中心(回転軸)とした第一アーム部52aの可動範囲を示し、「v」はy軸を中心(回転軸)とした第一アーム部52aの可動範囲を示し、「w」はz軸を中心(回転軸)とした第一アーム部52aの可動範囲を示す。また、変化量の正負を図中に「+」と「-」示した。なお、図4(b)に図示はしていないが、以下、x’軸を中心(回転軸)とした第二アーム部52bの可動範囲を「u’」とし、y’軸を中心(回転軸)とした第二アーム部52bの可動範囲を「v’」とし、z’軸を中心(回転軸)とした第二アーム部52bの可動範囲を「w’」として説明する。
【0059】
図5は、無人飛行体10の動き、一般的な操縦器でもある第2実施形態の操縦器50Aのスティック操作、及び第1実施形態に係る操縦器50による操作と変位との関係を説明するための説明図である。この図4中の「X、Y、Z」は、無人飛行体10が動く座標であり、X軸正方向は前進方向、X軸負方向は後退方向、Y軸正方向は右移動、Y軸負方向は左移動、Z軸正方向は上昇方向、Z軸負方向は下降方向である。また、「第2実施形態の操縦器のスティック操作」の欄に記載の「L」は左用の操作スティックを示し、「R」は右用の操作スティックを示し、黒矢印は各操作における操作スティックの操作(傾ける)方向を示す。「第1実施形態の操縦器による操作と変位」の欄には、操縦器50の操作と第一アーム部52a及び第二アーム部52bの動きを示している。
【0060】
この図5に示すように、一般的な操縦器(第2実施形態の操縦器50A)では、例えば前進は左用の操作スティックを前方へ傾け、後退させるには左用の操作スティックを後方に傾ける等、操作スティックの操作と無人飛行体10の動きとが、1対1に対応している。また、操作スティックを倒す角度が大きければ、その大きさに応じて無人飛行体は素早く動く。また、例えば無人飛行体が前進しながら上昇する動きを指示するには、左右の操作スティックを前に倒す操作を行うため、両手での操作は不可欠である。
【0061】
これに対して、第1実施形態の操縦器50は、操作ハンドル52の操作と、無人飛行体10の動きとを、1対1に対応させておらず、操作ハンドル52に対する主動作と主動作を補足する補助動作によって判断する。この判断は、検知部55での検知結果等に基づいて、後述の主制御部56(取得部561等)が行う。図5に示すような主動作及び補助動作による操作ハンドル52(第一アーム部52a及び第二アーム部52b)の変位の状態及び変位量等の変位情報に基づく操作情報と、無人飛行体10の移動方向、移動量、旋回角度等の動きに関する動作情報とが対応付けられた対応情報又は計算式等が、予め記憶部59に記憶されている。主制御部56は、検知部55での検知結果等に基づいて、記憶部59から対応する無人飛行体10の動作情報(移動方向、移動量、旋回角度等)を取得し、この情報に応じた制御信号を、通信部58を通じて無人飛行体10に送信する。対応情報は、操縦器50の製造時等に予め記憶部59に記憶されていてもよいし、操作者Pが、予め操作ハンドル52を操作し、その操作に応じた操作情報と動作情報とが対応付けられて記憶部59に記憶されるものでもよい。
【0062】
図5に示すように、操縦器50では、例えば、「操作1」で無人飛行体10を前進させる場合は、操作者Pはグリップ部52cを前方へ押し出す操作を行う。この操作により、検知部55は、主動作として第一アーム部52aのx軸正の向きの伸び量(+Δx)を検知する。また、検知部55は、補助動作としてz軸及びz’軸を中心とした第一、第二アーム部52a、52bの回転量(+Δw)及び(+Δw’)を検知する。この検知結果に基づいて、主制御部56は無人飛行体10を回転量に応じた移動量で前進させるための制御信号を無人飛行体10に送信する。また、例えば、無人飛行体10に前進しながら上昇する動きを指示するには、操作者Pは、「操作1」と「操作5」の操作、つまりグリップ部52cを前方へ押し出しつつ、前方へ倒す操作を行う。すると、検知部55は、上記「操作1」での検知結果に加えて、主動作としてy軸を中心とした第一アーム部52aの前方へ傾斜の回転量(-Δv)を検知し、補助動作としてy’軸を中心とした第二アーム部52bの下方へ傾斜の回転量(-Δv’)を検知する。この検知結果に基づいて、主制御部56は無人飛行体10に制御信号を送信する。このように、第1実施形態の操縦器50は、一つの操作ハンドル52の操作だけで、無人飛行体10を、通常のドローンの動きと同様に制御することできる。
【0063】
装着体53は、本体部51の筐体51aに取り付けられており、操作者Pの背面(背中又は腰)に本体部51を配置して固定するための部材である。装着体53は、操作者Pが両腕を通して肩に配置する一対の肩紐53aを有している。なお、装着体53は、肩紐53aに限定されず、ベルトであってもよいし、肩紐53aとベルトの双方を有してもよいし、ストラップ等であってもよい。また、装着体53は、本体部51を背面に配置する構成に限定されず、本体部51を身体の前方(腹部側)や側方(脇)に配置する構成であってもよい。
【0064】
また、第1実施形態の散布システム100では、ヘッドマウントディスプレイ70を用いて、圃場の仮想現実空間を作り出し、操作者Pが操縦器50を用いて仮想現実空間で無人飛行体10を操縦して基本操作情報を取得可能としている。
【0065】
ヘッドマウントディスプレイ70は、静止画像や動画像などのコンテンツ(ここでは仮想現実空間の画像)を再生し、操作者Pの頭部に装着した状態で、操作者Pに虚像を閲覧させる機器である。第1実施形態で用いるヘッドマウントディスプレイ70は、操作者Pの頭部に装着するメガネ型ヘッドマウントディスプレイ(スマートグラス)であるが、これに限定されず、ゴーグル型やヘッドセット型のヘッドマウントディスプレイ等、適宜のものを用いることができる。また、コンテンツを再生する機器が、ヘッドマウントディスプレイ70に限定されることはなく、ディスプレイに画像を表示するパーソナルコンピュータ、スクリーンや立体スクリーン等に画像を投影するプロジェクタ等であってもよい。
【0066】
ヘッドマウントディスプレイ70は、図2に示すように、表示部71と、通信部72と、制御部73と、記憶部74とを備えるが、この他にも、投影光学系等、ヘッドマウントディスプレイが一般的に備えている構成を備えている。
【0067】
表示部71は、制御部73の制御の下で、表示面71aに仮想現実空間の画像を表示する。表示部71は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Organic Electro Luminescence)ディスプレイ等から構成される。通信部72は、操縦器50の通信部58と無線通信を行う機器である。通信部72は、無線機、アンテナ等を有して構成される。
【0068】
制御部73は、ヘッドマウントディスプレイ70全体の動作を制御する。制御部73は、CPU等のプロセッサから構成され、記憶部74に記憶されたプログラムを実行することによって、ヘッドマウントディスプレイ70を制御する。また、制御部73は、記憶部74に予め記憶されたコンテンツを表示部71に表示させて、仮想現実空間を生成して操作者Pに提示する。また、制御部73は、操縦器50から入力される制御信号に応じて、表示部71に表示される仮想現実空間で無人飛行体を飛行させ、仮想的に薬液を散布させる。
【0069】
記憶部74は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶媒体等から構成される記憶装置である。記憶部59は、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラムが格納されるとともに、果樹園O等の液剤の散布対象の二次元画像又は三次元画像等の画像が格納されている。この画像の種類は、実際に撮影した画像を編集した実画像であってもよいし、グラフィック技術によって生成したグラフィック画像でもよい。また、この画像は、標準的な(一般的な)散布対象の実画像又グラフィック画像であってもよいし、実際の散布対象の実画像又はグラフィック画像であってもよい。また、画像は、複数パターンを用意することで、散布システム100は、様々な散布対象における様々な基本操作情報を取得することができる。
【0070】
上述のような構成の第1実施形態の散布システム100における無人飛行体10の操作の制御方法及びこの制御方法によって制御される被散布物の散布方法を、図6のフローチャートに沿って、図1図3(a)を参照しながら説明する。図6(a)は、基本操作情報の取得処理の一例を示すフローチャートであり、図6(b)は、被散布物の散布処理の一例を示すフローチャートである。
【0071】
基本操作情報の取得処理と、被散布物の散布処理とは、時間をおいて別々に、または連続して実行することができる。また、例えば、操作者Pが、操縦器50のモードを基本操作情報取得モードと、散布モードとに切り替えることによって、主制御部56は、モードに対応して、基本操作情報の取得処理又は被散布物の散布処理を実行する。
【0072】
まず、基本操作情報の取得処理について説明する。この取得処理は、実際に被散布物の散布を行う前に実行される。この取得処理を実行するに際して、操作者Pは、図3(a)に示すように、頭部にヘッドマウントディスプレイ70を装着し、背中に散布装置60を背負い、操作ハンドル52を把持する。次いで、操作者Pは、ヘッドマウントディスプレイ70を操作して、仮想現実空間の画像の再生を開始させる。そして、操作者Pは、ヘッドマウントディスプレイ70の表示部71の表示面71aに表示された仮想現実空間の画像を視認しながら、仮想現実空間内で無人飛行体を飛行させるべく操作ハンドル52を操作して、散布対象に液剤を仮想的に散布させるべく操作ボタン52eを操作する。
【0073】
この操作ハンドル52の操作を検知部55が検知し、主制御部56へ検知結果を送信する。この検知結果の入力を受けて、図6(a)のステップS1で、取得部561は、検知結果に基づいて、操作者Pによりなされた操作情報(操作ハンドル52の伸び量、縮み量、回転量等)を取得する。また、取得部561は、操作ボタン52eから入力される信号に基づいて、散布量、散布時間等の情報を、操作情報の一つとして取得する。この取得部561による操作情報の取得は、操作者Pによって、様々な操作が実行される度に行われる。
【0074】
次のステップS2で、動作制御部564は、仮想現実空間での無人飛行体の動作制御を行う。具体的には、動作制御部564は、ステップS1で取得した操作情報に対応する無人飛行体10の動作情報を取得し、この動作情報に対応する制御信号をヘッドマウントディスプレイ70に送信する。この制御信号を受けたヘッドマウントディスプレイ70は、表示部71を制御して、仮想現実空間で無人飛行体が移動する画像や、散布部から被散布物が散布される画像を表示させる。この画像を視認することで、操作者Pは、あたかも実際に無人飛行体を飛行させ、被散布物を散布しているように、仮想現実空間の無人飛行体を操縦することができる。
【0075】
次のステップS3で、記録部562は、取得部561で取得した各操作情報を、基本操作情報として収集し、記憶部59に記録する。以上により、基本操作情報の取得処理が終了する。
【0076】
なお、基本操作情報の取得処理は、散布システム100のユーザが行うものとすれば、ユーザの意図や圃場の状態に応じた無人飛行体10の操作情報や散布の操作情報を取得することができる。また、基本操作情報の取得処理は、散布システム100の製造元や販売元等が行うものとすれば、ユーザが基本操作情報を取得する手間を省き、無人飛行体10の操作をより手軽に制御することが可能となる。
【0077】
次に、被散布物の散布処理について説明する。この散布処理は、仮想現実空間で基本操作情報の取得処理を実行して、基本操作情報を記録した後、果樹園O等の現実の圃場で無人飛行体10と散布装置60を用いて被散布物の散布を行うときに実行される。
【0078】
まず、図1に示すように、操作者Pは、果樹園O等において、背中に散布装置60を背負い、操作ハンドル52を把持する。次いで、操作者Pは、果樹園Oで無人飛行体10を飛行させるべく操作ハンドル52を操作し、散布対象に液剤を散布するべく操作ボタン52eを操作する。
【0079】
この操作ハンドル52の操作を検知部55が検知し、主制御部56へ検知結果を送信する。この検知結果の入力を受けて、図6(b)のステップS11で、取得部561は、検知結果に基づいて、操作者Pによりなされた操作情報を取得する。また、取得部561は、操作ボタン52eから入力される信号に基づいて、散布量、散布時間等の情報を、操作情報の一つとして取得する。
【0080】
次のステップS12で、判定部563は、取得部561で取得した操作情報と、記憶部59に記録された基本操作情報とを比較し、ステップS13で、操作情報が基本操作情報の何れかと一致するか否かを判定する。
【0081】
一致すると判定したら(ステップS13の判定がYES)、ステップS14へと進み、動作制御部564は、ステップS11で取得した操作情報に対応する無人飛行体10の動作情報を取得し、この動作情報に基づく制御信号を無人飛行体10に送信する。また、操作ボタン52eに対する操作情報であれば、散布器本体20の動作情報を取得し、この動作情報に基づいて、散布器本体20の動力ポンプ24を駆動制御する。
【0082】
この制御信号を受けた無人飛行体10の制御部17は、モータ13の回転数を制御することで、無人飛行体10の飛行を制御する。これにより、無人飛行体10は、操作者Pの操作に応じた動きで飛行するものとなる。また、動力ポンプ24が駆動することで、供給部22から供給チューブ40経由で液剤が散布部11に供給され、散布部11から樹木T等の散布対象に噴射される。これにより、散布器本体20は、操作者Pの操作に応じた液剤の散布を行うことができる。その後、プログラムは、ステップS16へと進む。
【0083】
これに対して、不一致と判定したら(ステップS13の判定がNO)、ステップS14をスキップして、プログラムはステップS15へと進む。つまり、不一致ということは、操作者Pが行った操作は、意図しない操作(例えば、急回旋、急降下、急上昇、散布過多、散布過少等)であるため、実行しないほうが好ましい。このため、不一致のときは、主制御部56は、ステップS14をスキップすることで、無人飛行体10や動力ポンプ24を、意図しない操作に対応する動きをさせないように制御することができる。
【0084】
そして、ステップS15で、報知部565は、エラー操作(意図しない操作)があったことを、音、振動、光等によって操作者Pに報知する。この結果、操作者Pは、適切ではない操作をしてしまったこと、この操作が回避されたことを認識することができる。よって、意図しない操作等の実行を適切に抑制できるとともに、操作者Pは、適切な操作をやり直すことができる。その後、プログラムはステップS16へと進む。
【0085】
ステップS16では、主制御部56は、すべての操作が終了したか判定し、終了していないと判定したときは(ステップS16の判定がYES)、ステップS11に戻って、次の操作に対する処理を実行する。つまり、操作が継続して行われている間は、ステップS11~S15の処理を繰り返す。
【0086】
以上説明したように、第1実施形態によれば、操作者Pにより操作ハンドル52に為された操作に関する操作情報が、基本操作情報と一致するか否かを判定し、一致しない場合は、意図しない操作であるとして、この操作を無人飛行体10や散布装置60に行わせないように制御することができる。このため、客体(無人飛行体10や散布装置60)の客体の操作を適切に制御することができる制御方法及び制御装置(主制御部56)を提供することができる。
【0087】
また、第1実施形態では、記録部562は、無人飛行体10の操作者によりなされた基本操作に関する基本操作情報を収集し、記憶部59に記録している。これにより、制御装置は、様々な条件下での様々な操作情報を蓄積できるとともに、様々なタイプの操縦器の操作情報を蓄積することができ、無人飛行体10の操作をより適切に制御することができる。
【0088】
したがって、無人飛行体10は、散布部11によって樹木T等に適切に液剤を散布することができる。また、散布部11の散布口が下方又は水平に向いていることから、液剤は、散布部11を介して樹木T等の散布対象に上から又は横から的確に噴射される。そして、操作者Pは、操作ハンドル52を操作して、無人飛行体10を上下左右の所望の方向へ移動させることで、1本の樹木T、さらには所定範囲の複数本の樹木Tや果実に満遍なく適切に液剤を散布することができる。
【0089】
また、第1実施形態では、操作情報と基本操作情報とが一致しないと判定したときは、報知部565が、一致しないことを報知する。これにより、操作者Pは、意図しない(又は適切でない)操作をしたことを知ることができ、適切な操作をやり直すことができる。また、操作者Pが意図した操作であっても、基本操作情報の標準的な操作とは違う操作をしたことがわかり、標準的な操作となるように努めることもでき、操作のトレーニングツールとしての使用も可能となる。
【0090】
また、第1実施形態において、操縦器50は、本体部51と、操作者Pが操作する剛体(操作ハンドル52)と、本体部51を操作者Pの身体に装着する装着体53と、を備える。本体部51は、剛体の一端が接続される固定部54と、固定部54と剛体との接続部分に設けられて剛体の変位を検知する検知部55と、検知部55で検知した剛体の変位に基づいて、客体の動きを制御する制御部(主制御部56)とを備える。
【0091】
このような構成の操縦器50では、操作者Pは、操作ハンドル52を片手で操作することで、無人飛行体10を操縦し、右手で他の作業(例えば、給電線30や供給チューブ40の動きを整える、荷物を持つ等)を行うことができ、作業性が向上する。
【0092】
また、第1実施形態では、操作者Pは、散布装置60を背負って容易に移動することができる。そして、操作者Pは、移動先で操作ハンドル52を操作することで、制御装置による操作の適切な制御の下で、別の範囲の樹木Tへ液剤を適切に散布することができる。さらには、操作者Pは、移動しながら散布作業を続けることもでき、散布作業をより効率的に行うことができる。このとき、操作者Pは、操作ハンドル52を操作していない他方の手で、給電線30や供給チューブ40の動きを整えることができ、給電線30や供給チューブ40によって歩行が妨げられることがなく、身体的負担も低減され、より円滑な移動が可能となり、作業性も向上する。
【0093】
また、第1実施形態では、散布装置60は、無人飛行体10に、給電線30から電力を常時供給し、供給部22から常時液剤を供給することができる。このため、無人飛行体10は、電力の容量や液剤の容量等の制約を受けることなく、長時間にわたる散布作業が可能となる。また、操作者Pは、散布装置60を背負って片手で操作ハンドル52を操作できることで、長時間の散布作業でも、身体的負担が軽減される。
【0094】
また、第1実施形態の散布システム100は、無人飛行体10によって、散布部11であるノズルを散布対象により近づけることができ、散布対象に対して適切に散布部11を向けることができる。これにより、不要な方向への液剤の散布を抑制することができ、農薬散布時に発生する目的外の作物への飛散を軽減させることができる。また、狙った位置への散布精度を向上できることは、狙った位置への散布を行わないことも可能とすることになり、散布の選択性が向上する。また、散布のための操作が適切に制御されるため、散布システム100は、液剤の散布を適切な量で効率的に行うことができる。
【0095】
また、第1実施形態の散布システム100では、被散布物、除草剤、殺虫剤等の農薬、肥料、活力剤、種、水等であり、これらを圃場、公園、庭園、庭、山林、道路端、空き地等の散布対象に散布するものとしているが、被散布物及び散布システムがこのようなものに限定されることはない。他の異なる例として、被散布物が塗料であり、散布装置が、塗料を建物等の散布対象に散布(塗布)するシステムであってもよい。また、被散布物が洗剤であり、散布装置が、被洗浄物等の散布対象に洗浄のために散布する装置であってもよい。また、被散布物が殺菌剤や抗菌剤等の薬剤であり、散布対象の消毒や抗菌のために散布する装置であってもよい。このような散布システムでも、制御装置が無人飛行体10を適切に制御して、被散布物の適切な散布が可能となる。
【0096】
また、他の異なる実施形態として、操縦器50は、液晶ディスプレイ等の表示部を備え、無人飛行体10から受信した撮像部14で撮影した画像を表示部に表示する構成とすることができる。この表示部に表示された画像を視認することで、操作者Pは無人飛行体10の飛行状態をより明確に把握することができ、操縦器50で無人飛行体10を、より適切に操縦することができる。また、操作者Pは、表示部に表示された画像を視認することで、被散布物の散布状態をより明確に把握することができ、被散布物の散布を、より適切に行うことができる。
【0097】
また、第1実施形態では、剛体は、主軸(第一アーム部52a)と副軸(第二アーム部52b)からなる二軸構成でL字型に屈曲した操作ハンドル52としているが、剛体はこれに限定されない。例えば、剛体は、本体部51から前方又は側方に突出する直線的な一本の棒(一軸)から構成されていてもよく、剛体をより簡素化できるとともに、その変位によって、客体の動きを適切に制御する情報を出力することができる。また、第1実施形態では、操作ハンドル52は、本体部51の左側面に設けられているが、この構成に限定されず、操作者Pが右手で操作可能なように右側面に設けられてもよい。また、操作ハンドル52は、右手及び左手の何れでも操作可能なように、本体部51の左側面と右側面とで付け替え自在なものであってもよいし、両側面に設けられていてもよい。
【0098】
また、第1実施形態の散布装置60は、背負い式の散布器本体20に設けられた電源部57から給電線30経由で無人飛行体10に電力を供給し、供給部22から供給チューブ40経由で散布部11に被散布物を供給している。しかし、本開示の散布装置が、この構成に限定されず、例えば、散布装置は、地上に設置された電源部から、給電線経由で無人飛行体10に電力を供給したり、地上に設置された供給部から、供給チューブ経由で散布部に被散布物を供給したりする構成であってもよい。このような構成の散布装置でも、制御装置が無人飛行体10を適切に制御して、被散布物の適切な散布が可能となる。
【0099】
(第2実施形態)
以下、本開示の第2実施形態に係る制御装置を備える無人飛行体システム200について、図面を参照しながら説明する。無人飛行体システム200は、図7及び図8に示すように、無人飛行体10と、制御装置を有する操縦器50とを備えるシステムであり、制御装置によって無人飛行体10の操作を制御して、飛行を可能とするシステムである。
【0100】
無人飛行体10は、回転翼12と、モータ13と、撮像部14と、各種センサ15と、通信部16と、制御部17と、記憶部18と、電源部19とを備える。回転翼12と、モータ13と、撮像部14と、各種センサ15と、通信部16と、制御部17と、記憶部18とは、第1実施形態の無人飛行体10のこれらと同様の構成及び機能を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0101】
電源部19は、モータ13、撮像部14、センサ15、通信部16、制御部17及び記憶部18等の電気機器に、電力を供給するものであり、バッテリ、電池パック等から構成される。
【0102】
なお、第2実施形態の無人飛行体10は、樹木Tや果実の生育状況等を確認するための画像を撮像部14で撮影するものであってもよいし、農薬等の被散布物を樹木T等の散布対象に散布するものであってもよい。被散布物の散布を行う場合には、無人飛行体10は、例えば、噴射ノズルと、被散布物を収納する収納タンク及び動力ポンプとからなる供給部を有する散布器を備えていてもよい。このような無人飛行体10でも、制御装置は、飛行のための操作及び散布のための操作を適切に制御することができ、被散布物の散布を適切に行わせることができる。
【0103】
操縦器50は、2つのスティックを操作する一般的な操縦器であり、本体部51と、操作部である左用操作スティック52L及び右用操作スティック52Rと、表示部501とを備える。
【0104】
本体部51は、左用検知部55L及び右用検知部55Rと、主制御部56と、電源部57と、通信部58と、記憶部59とを有している。これらは筐体51a(図7参照)内に収容されている。主制御部56と、電源部57と、記憶部59の構成及び機能は、第1実施形態のこれらと同様の構成及び機能を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0105】
左用操作スティック52Lは、操作者Pが左手で操作して操作指示を入力する操作部であり、右用操作スティック52Rは、操作者Pが右手で操作して操作指示を入力するための操作部である。操作者Pは、左用操作スティック52L及び右用操作スティック52Rを、前後左右方向に傾けることで、様々な操作指示を入力することができる。左用操作スティック52L及び右用操作スティック52Rの操作と、無人飛行体10の動きとの対応は、図4の表に示した通りである。
【0106】
左用検知部55L及び右用検知部55Rは、左用操作スティック52L及び右用操作スティック52Rの動き(x軸、y軸方向の位置座標、傾き角度、速度等)を各々検知し、検知結果を主制御部56(取得部561)に出力する。左用検知部55L及び右用検知部55Rは、例えば、ポテンショメーター、圧電素子、レーザ変位計等から構成される。
【0107】
主制御部56は、第1実施形態と同様に、記憶部59に記憶されたプログラムを実行することで、取得部561と、記録部562と、判定部563と、動作制御部564と、報知部565を有する本開示の制御装置として機能する。また、記憶部59は、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、基本操作情報、動作情報等の各種情報が記憶される。
【0108】
第2実施形態においても、操縦器50Aとヘッドマウントディスプレイ70を用いて、基本操作情報の収集を行うことができる。ヘッドマウントディスプレイ70は、第1実施形態と同様のものを用いることができ、同様の構成及び機能を備えているため、詳細な説明は省略する。なお、第2実施形態では、図3(b)に示すように操縦器50Aとヘッドマウントディスプレイ70は、USB(Universal Serial Bus)コード等のコード75で通信可能に接続されているが、無線によって通信可能な構成としてもよい。
【0109】
上述のような構成の第2実施形態の無人飛行体システム200における無人飛行体10の操作の制御方法及びこの制御方法を、図6のフローチャートに沿って、図3(a)、図7を参照しながら説明する。
【0110】
まず、基本操作情報の取得処理では、操作者Pは、図3(b)に示すように、ヘッドマウントディスプレイ70と操縦器50Aとをコード75で接続し、頭部にヘッドマウントディスプレイ70を装着し、両手で操縦器50Aを把持して左用操作スティック52L及び右用操作スティック52Rに左右の親指を載置する。
【0111】
次いで、操作者Pは、ヘッドマウントディスプレイ70を操作して、仮想現実空間の画像の再生を開始させ、この仮想現実空間を視認しながら、仮想現実空間内で無人飛行体を飛行させるべく、左用操作スティック52L及び右用操作スティック52Rを操作する。
【0112】
この操作を左用検知部55L及び右用検知部55Rが検知し、主制御部56へ検知結果を送信する。この検知結果の入力を受けて、図6(a)のステップS1で、取得部561は、検知結果に基づいて、操作者Pにより為された操作の操作情報を取得する。
【0113】
次のステップS2で、動作制御部564は、取得した操作情報に対応する動作情報を取得し、この動作情報に対応する制御信号を生成してヘッドマウントディスプレイ70に送信する。この制御信号を受けたヘッドマウントディスプレイ70は、表示部71を制御して、仮想現実空間で無人飛行体を飛行させる。
【0114】
次のステップS3で、記録部562は、取得部561で取得した各操作情報を、基本操作情報として収集し、記憶部59に記録する。
【0115】
次に、果樹園O等の実際の場所で無人飛行体10を飛行させる場合には、図7に示すように、操作者Pは、操縦器50Aを両手で把持して左用操作スティック52L及び右用操作スティック52Rを左右の親指で操作する。
【0116】
この操作を左用検知部55L及び右用検知部55Rが検知し、主制御部56へ検知結果を送信する。この検知結果の入力を受けて、図6(b)のステップS11で、取得部561は、操作情報を取得する。次のステップS12で、判定部563は、取得部561で取得した操作情報と、記憶部59に記録された基本操作情報とを比較し、ステップS13で、操作情報が基本操作情報の何れかと一致するか否かを判定する。
【0117】
一致すると判定されると、プログラムはステップS14へと進み、動作制御部564は、取得した操作情報に基づいて無人飛行体10の動作情報を取得し、この動作情報に対応する制御信号を無人飛行体10に送信する。この制御信号を受けた無人飛行体10の制御部17は、モータ13の回転数を制御することで、無人飛行体10の飛行を制御する。これにより、無人飛行体10は、操作者Pの操作に応じた動きで飛行するものとなる。その後、プログラムはステップS16へと進む。
【0118】
これに対して、不一致と判定されると、プログラムはステップS14をスキップすることで、操作者Pが意図しない操作(例えば、急回旋、急降下、急上昇等)が実行されるのを回避することができる。その後、プログラムはステップS15へと進み、報知部565は、エラー操作(意図しない操作)があったことを、音、振動、光等によって操作者Pに報知する。その後、プログラムはステップS16へと進む。
【0119】
ステップS16では、主制御部56は、すべての操作が終了したか判定し、終了していないと判定したときは、ステップS11に戻って、次の操作に対する処理を実行する。つまり、操作が継続して行われている間は、ステップS11~S15の処理を繰り返す。
【0120】
以上説明したように、第2実施形態の無人飛行体システム200においても、制御装置(主制御部56)の制御により、操作者Pが意図しない操作や、誤操作を回避することができ、無人飛行体10の操作を適切に制御することができる。
【0121】
以上、図面を参照して、本開示の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施形態に限らず、本開示の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本開示に含まれる。
【0122】
例えば、上記各実施形態では、操縦器50、50Aが、取得部561、記録部562、判定部563、動作制御部564及び報知部565からなる制御装置(主制御部56)を備え、基本操作情報を、操縦器50、50Aの記憶部59に記憶している。しかし、制御装置全体又は一部が、操縦器50、50A以外の機器に設けられてもよいし、基本操作情報が操縦器50、50Aの記憶部59以外の記憶部に記憶されていてもよい。
【0123】
具体的には、例えば取得部561及び記録部562が操縦器50、50Aに備えられ、判定部563、動作制御部564及び報知部565が無人飛行体10(制御部17)に備えられてもよい。そして、操縦器50、50Aとヘッドマウントディスプレイ70を用いて、基本操作情報を収集して、記憶部59に記憶し、この記憶部59から無人飛行体10に転送して、記憶部18に記憶させてもよい。そして、実際の無人飛行体10の動作を制御するときは、無人飛行体10の制御部17の判定部563が、操縦器50、50Aから入力される信号に基づく操作情報と、記憶部18に記憶されている基本操作情報を比較して、一致するか否かを判定し、一致する操作情報に対応する動作を行うように、動作制御部564が無人飛行体10を制御するものとしてもよい。そして、不一致のときは、報知部565が、操縦器50、50Aに対して不一致であることを報知し、この報知に基づいて、操縦器50、50A側で操作者Pに音等により報知するものであってもよい。
【0124】
また、上記各実施形態では、不一致となった操作(意図しない操作)を行わないようにしているが、これに限定されることはなく、実行してもよい。そして、意図しない操作であることを操作者Pに報知し、さらには、正しい操作を示唆(提案)するようにすれば、操作者Pは適切な操作を学習することができ、反復して行うことで、適切な操作(基準の操作)に近づけていくことができる。このため、本開示の制御装置及び制御方法は、操作者Pが適切な操作を行うためのトレーニングツールとして、より好適なものとなる。また、制御装置は、AI(Artificial Intelligence)技術により、不一致となった操作を解析して学習し、適切な操作を導き出し、導き出した操作に基づいて、自動で無人飛行体10の動きを制御してもよい。
【0125】
また、上記各実施形態では、ヘッドマウントディスプレイ70を用いて仮想現実空間で操縦器50、50Aを操作して基本操作情報を取得しているが、これに限定されない。例えば、実際の圃場等で操縦器50、50Aを操作して、実際に無人飛行体10を飛行させたり被散布物を散布させたりしてもよく、記録部562は、このときの操作情報を収集して、基本操作情報として記憶部59に記憶してもよい。
【0126】
また、上記各実施形態では、客体が無人飛行体10や動力ポンプ24であり、制御装置は無人飛行体10や動力ポンプ24の操作を制御するものとしているが、客体がこれらに限定されない。例えば、客体は、有人飛行体、ゲーム機、コンピュータプログラム内のオブジェクト、自動車、農業機械、ロボット等であってもよい。このような、客体であっても、本開示の制御装置及び制御方法は、客体の操作をより適切に制御することができる。
【符号の説明】
【0127】
10 :無人飛行体(客体) 11 :散布部
20 :散布器本体 21 :電源部
22 :供給部 23 :収容部
24 :動力ポンプ 30 :給電線
40 :供給チューブ 52 :操作ハンドル(操作部)
52L :左用操作スティック(操作部) 52R :右用操作スティック(操作部)
56 :主制御部(制御装置) 59 :記憶部
60 :散布装置 561 :取得部
562 :記録部 563 :判定部
564 :動作制御部 565 :報知部
P :操作者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8