(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141156
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】包装フィルム用積層体及びその分解方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230928BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20230928BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20230928BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20230928BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B29B17/00 ZAB
B29B17/02
C08J7/00 304
C08J7/00 CFD
C08J7/00 CFF
B32B27/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047326
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】菅原 峻
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
【テーマコード(参考)】
4F073
4F100
4F401
【Fターム(参考)】
4F073AA32
4F073BA24
4F073BA28
4F073BB01
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4F100AH06A
4F100AK01A
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4F401AD01
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA02
4F401CA04
(57)【要約】
【課題】フィルム同士を接着させる接着剤層に易解体性を付与する添加剤を加えることなく、2層のフィルム及び接着剤層を含む積層体を容易に分解することができる、開裂構造を有する易剥離層を含む包装フィルム用積層体、及び該積層体の分解方法を提供する。
【解決手段】 外部刺激に応答して化学結合が開裂する開裂構造を有する易剥離層を含む包装フィルム用積層体。
前記包装フィルム用積層体における前記開裂構造を有する易剥離層に外部刺激を付与する工程、及び前記第1フィルムと前記第2フィルムとを分離させる分離工程を含む、包装フィルム用積層体の分解方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部刺激に応答して化学結合が開裂する開裂構造を有する易剥離層を含む包装フィルム用積層体。
【請求項2】
前記外部刺激が活性エネルギー線である、請求項1に記載の包装フィルム用積層体。
【請求項3】
前記開裂構造を有する易剥離層がプライマー層である、請求項1又は2に記載の包装フィルム用積層体。
【請求項4】
第1フィルムと、
第2フィルムと、
前記第1フィルム及び前記第2フィルムの間に存在する前記易剥離層と、
前記第1フィルム及び前記第2フィルムの間に存在し、前記易剥離層に接する接着剤層と、
を含む、請求項1~3のいずれかに記載の包装フィルム用積層体。
【請求項5】
前記第1フィルム及び前記第2フィルムの少なくとも一方はポリエステルフィルム、及びポリオレフィンフィルムのいずれかである、請求項4に記載の包装フィルム用積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の包装フィルム用積層体における前記開裂構造を有する易剥離層に外部刺激を付与する工程、及び
前記第1フィルムと前記第2フィルムとを分離させる分離工程、
を含む、包装フィルム用積層体の分解方法。
【請求項7】
前記分離工程は、前記第1フィルムと前記第2フィルムとを物理的に分離する工程である、請求項6に記載の包装フィルム用積層体の分解方法。
【請求項8】
前記分離工程は、前記包装フィルム用積層体を液体に浸漬し前記開裂構造を有する易剥離層を除去する工程である、請求項6に記載の包装フィルム用積層体の分解方法。
【請求項9】
前記分離工程の後、前記第1フィルム及び前記第2フィルムの少なくとも一方を洗浄する洗浄工程を含む、請求項6~8のいずれかに記載の包装フィルム用積層体の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装フィルム用積層体、及び包装フィルム用積層体の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装フィルム等の物品の再利用が求められている。
物品の再利用では、接着剤層を介して接着された2つの被着体を分離することで、それぞれの被着体に分けることが行われる場合がある。分離されたそれぞれの被着体は、そのまま再使用(Reuse)されたり、更に原材料に分解されて原材料として再利用(マテリアルリサイクル)されたりする。
【0003】
接着剤層を介して接着された2つの被着体を容易に分離することができるようにするために、接着剤層用の接着剤として、特定の重合体を含有する光易解体性接着剤が提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-172619号公報
【特許文献2】特開2020-172598号公報
【特許文献3】特開2020-056010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤層には、被着体及び接着剤層を含む積層体の用途、被着体の種類等に応じて、接着強度、熱的特性、耐久性など種々の特性が求められる。しかし、接着剤層に易解体性の機能を持たせようと特殊な添加剤を添加すると、接着剤層の他の特性が制限される可能性がある。
【0006】
被着体がフィルムである場合、2層のフィルム及び接着剤層を含む積層体から2層のフィルムを分離し、分離されたそれぞれのフィルムをそのまま再使用(Reuse)することは、種々の課題から実用化されているとは言えないのが現状である。
【0007】
本発明は、フィルム同士を接着させる接着剤層に易解体性を付与する添加剤を加えることなく、2層のフィルム及び接着剤層を含む積層体を容易に分解することができる、開裂構造を有する易剥離層を含む包装フィルム用積層体、及び該積層体の分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決出来ることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 外部刺激に応答して化学結合が開裂する開裂構造を有する易剥離層を含む包装フィルム用積層体。
[2] 前記外部刺激が活性エネルギー線である、[1]に記載の包装フィルム用積層体。
[3] 前記開裂構造を有する易剥離層がプライマー層である、[1]又は[2]に記載の包装フィルム用積層体。
[4] 第1フィルムと、
第2フィルムと、
前記第1フィルム及び前記第2フィルムの間に存在する前記易剥離層と、
前記第1フィルム及び前記第2フィルムの間に存在し、前記易剥離層に接する接着剤層と、
を含む、[3]に記載の包装フィルム用積層体。
[5] 前記第1フィルム及び前記第2フィルムの少なくとも一方はポリエステルフィルム、及びポリオレフィンフィルムのいずれかである、[4]に記載の包装フィルム用積層体。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の包装フィルム用積層体における前記開裂構造を有する易剥離層に外部刺激を付与する工程、及び
前記第1フィルムと前記第2フィルムとを分離させる分離工程、
を含む、包装フィルム用積層体の分解方法。
[7] 前記分離工程は、前記第1フィルムと前記第2フィルムとを物理的に分離する工程である、[6]に記載の包装フィルム用積層体の分解方法。
[8] 前記分離工程は、前記包装フィルム用積層体を液体に浸漬し前記開裂構造を有する易剥離層を除去する工程である、[6]に記載の包装フィルム用積層体の分解方法。
[9] 前記分離工程の後、前記第1フィルム及び前記第2フィルムの少なくとも一方を洗浄する洗浄工程を含む、[6]~[8]のいずれかに記載の包装フィルム用積層体の分解方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルム同士を接着させる接着剤層に易解体性を付与する添加剤を加えることなく、2層のフィルム及び接着剤層を含む積層体を容易に分解することができる、開裂構造を有する易剥離層を含む包装フィルム用積層体、及び該積層体の分解方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(包装フィルム用積層体)
本発明の包装フィルム用積層体は、外部刺激(外部からの刺激)に応答して化学結合が開裂する開裂構造を有する易剥離層を含む。易剥離層は、2層のフィルム及び接着剤層を含む包装フィルム用積層体を容易に分解する目的で形成する層である。
【0011】
易剥離層が開裂構造を有することで、易剥離層に活性エネルギー線を照射すると開裂構造の開裂によって易剥離層と接着剤層との間の接着性が低下する。その結果、2層のフィルムを容易に分離することができる。開裂構造としては、外部刺激に応答して化学結合が開裂する構造であれば、特に制限されない。
【0012】
開裂構造を有する易剥離層は、プライマー層であることが好ましい。プライマー層とは、下塗り層とも称されることがあり、フィルムとの接着性を高める目的で、フィルムと接着剤層との間に形成する場合がある。易剥離層がプライマー層であることで、密着性に優れる包装フィルム用積層体を形成することができる。
【0013】
開裂構造としては、可逆的に開裂する開裂構造、不可逆的に開裂する開裂構造が挙げられるが、これらの中でも、不可逆的に開裂する開裂構造が好ましい。不可逆的な開裂とは、不可逆的な化学反応による開裂を指す。開裂が可逆的であると、化学結合を開裂させた後に、意図せずに化学結合が再結合する恐れがあり、その結果、包装フィルム用積層体の易分解性が低下する場合がある。その点において、開裂構造は不可逆的に開裂する開裂構造であることが好ましい。
【0014】
外部刺激としては、開裂構造を開裂できる外部からの刺激であれば、特に制限されず、例えば、活性エネルギー線、熱、電気、磁気、及びそれらの2つ又は3つの組合せなどが挙げられる。
【0015】
外部刺激が活性エネルギー線である場合、開裂構造は、活性エネルギー線を吸収して化学結合が不可逆的に開裂する開裂構造である。開裂構造が吸収する活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、X線などが挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の波長としては、例えば、300~380nmが挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、例えば、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV-LEDなどが挙げられる。活性エネルギー線としては、レーザー光を用いてもよいが、被着体に損傷を与える可能性がある点でレーザー光ではないことが好ましい。
【0016】
開裂構造において開裂する化学結合は、通常、共有結合である。開裂する共有結合としては、例えば、2つのヘテロ原子間の共有結合、ヘテロ原子と炭素原子との間の共有結合などが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子などが挙げられる。
【0017】
開裂構造としては、オキシムエステル構造、オキシムエーテル構造、o-ニトロベンジル構造、アセトフェノン構造、アルキルフェノン構造、ピレニルメチル構造、クマリニルメチル構造、アミノアルキルフェノン構造、及びベンジルケタール構造の少なくともいずれかを含むことが好ましく、オキシムエステル構造、オキシムエーテル構造、o-ニトロベンジル構造、及びアセトフェノン構造の少なくともいずれかを含むことがより好ましい。これらの開裂構造は、低エネルギーの外部刺激(例えば、活性エネルギー線)により不可逆的な開裂をするため、低エネルギーで包装フィルム用積層体の分解を行うことができる。
【0018】
ここで、開裂構造の開裂の一例を以下に示す。
以下は、オキシムエステル構造の開裂の一例である。
【化1】
【0019】
以下は、o-ニトロベンジル構造の開裂の一例である。
【化2】
【0020】
以下は、アセトフェノン構造の開裂の一例である。
【化3】
【0021】
以下は、ピレニルメチル構造の開裂の一例である。
【化4】
【0022】
以下は、クマリニルメチル構造の開裂の一例である。
【化5】
【0023】
本発明の包装フィルム用積層体は、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルム及び前記第2フィルムの間に存在する易剥離層と、前記第1フィルム及び前記第2フィルムの間に存在し、前記易剥離層に接する接着剤層とを含む。
【0024】
<フィルム>
第1フィルム及び第2フィルムとしては、第1フィルム及び第2フィルムの少なくともいずれかが外部刺激を遮断せず外部刺激を易剥離層に与えることができるものであれば、特に制限されない。
例えば、外部刺激が活性エネルギー線の場合、第1フィルム及び第2フィルムの少なくともいずれかは、活性エネルギー線に対して透過性を有する。
第1フィルム及び第2フィルムにおける活性エネルギー線に対する透過性としては、例えば、波長365nmの光の透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0025】
第1フィルム及び第2フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムなどのポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルムなどのナイロンフィルム、及びポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0026】
第1フィルム及び第2フィルムは、各々に加工が施されていてもよいし、それら自体が2層以上からなる積層フィルムであってもよい。加工としては、アルミ蒸着やバリアコート剤などの機能性コーティングなどが挙げられる。
【0027】
<易剥離層>
易剥離層は、易剥離層形成用組成物から形成され、例えば、第1フィルム又は第2フィルムの表面に易剥離層形成用組成物を塗布し、加熱することで得られる。易剥離層は、第1フィルム及び第2フィルム双方の表面に形成されていてもよい。
【0028】
易剥離層形成用組成物は、膜形成成分と溶剤とを含有する。
易剥離層形成用組成物は、開裂構造を有する易剥離層を形成するための組成物である。開裂構造は、外部刺激(外部からの刺激)に応答して化学結合が開裂する構造である。
易剥離層形成用組成物は、下記条件(A)及び(B)の少なくともいずれかを満たす。
条件(A):膜形成成分は、開裂構造を有する。
条件(B):膜形成成分は、互いに反応して開裂構造を形成できる2種の部分構造を有する。
【0029】
膜形成成分とは、易剥離層形成用組成物から易剥離層を形成した際に、易剥離層を構成する成分である。膜形成成分の一例は、そのままの状態で易剥離層中に存在する成分、他の成分との反応生成物として易剥離層中に存在する成分、他の成分の反応を助ける助剤(例えば、硬化触媒)として使用される成分などである。
膜形成成分は、言い換えれば、易剥離層形成用組成物の全成分のうち、溶剤以外の成分の総称である。
【0030】
膜形成成分としては、例えば、ポリマー、架橋剤などが挙げられる。
【0031】
条件(A)を満たす場合、膜形成成分は、ポリマーを含有していてもよい。その際、例えば、ポリマーが開裂構造を有する。その場合、例えば、膜形成成分が2種以上のポリマーを含有し、2種以上のポリマーの少なくとも1種が開裂構造を有していてもよい。
【0032】
条件(A)を満たす場合、膜形成成分は、架橋剤を含有していてもよい。その際、例えば、架橋剤が開裂構造を有する。その場合、膜形成成分が2種以上の架橋剤を含有し、2種以上の架橋剤の少なくとも1種が開裂構造を有していてもよい。
【0033】
条件(A)を満たす場合、膜形成成分は、ポリマーと架橋剤とを含有していてもよい。その際、例えば、ポリマー及び架橋剤の少なくともいずれかが開裂構造を有する。
膜形成成分中のポリマーと架橋剤との組み合わせにおいて、ポリマーのみが開裂構造を有していてもよいし、架橋剤のみが開裂構造を有していてもよいし、ポリマー及び架橋剤の両方が開裂構造を有していてもよい。その場合、膜形成成分が2種以上のポリマーを含有し、2種以上のポリマーの少なくとも1種が開裂構造を有していてもよい。また、その場合、膜形成成分が2種以上の架橋剤を含有し、2種以上の架橋剤の少なくとも1種が開裂構造を有していてもよい。
【0034】
条件(B)を満たす場合、膜形成成分は、ポリマーと架橋剤とを含有していてもよい。その際、例えば、ポリマーが、互いに反応して開裂構造を形成できる2種の部分構造の一方を有し、架橋剤が、2種の部分構造の他方を有する。その場合、膜形成成分が2種以上のポリマーを含有し、2種以上のポリマーの少なくとも1種が2種の部分構造の一方を有していてもよい。また、その場合、膜形成成分が2種以上の架橋剤を含有し、2種以上の架橋剤の少なくとも1種が2種の部分構造の他方を有していてもよい。
【0035】
条件(B)を満たす場合、膜形成成分は、2種以上のポリマーを含有していてもよい。その際、例えば、2種以上のポリマーの少なくとも1種が、互いに反応して開裂構造を形成できる2種の部分構造の一方を有し、残りのポリマーの少なくとも1種が、2種の部分構造の他方を有する。
【0036】
条件(B)を満たす場合、膜形成成分は、2種以上の架橋剤を含有していてもよい。その際、例えば、2種以上の架橋剤の少なくとも1種が、互いに反応して開裂構造を形成できる2種の部分構造の一方を有し、残りの架橋剤の少なくとも1種が、2種の部分構造の他方を有する。
【0037】
ポリマーが開裂構造を有する場合、開裂構造は、ポリマーの主鎖に位置していてもよいし、ポリマーの側鎖に位置していてもよい。これらの中でも、主鎖に開裂構造を有するポリマーの方が、開裂構造を多くポリマーに導入できる点で、好ましい。これらポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド酸などの縮合ポリマー、ポリウレタン、ビニル重合体などが挙げられる。
【0038】
ポリマーが開裂構造を有しない場合、ポリマーとしては特に制限されず、公知のポリマーを用いることができる。公知のポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド酸などの縮合ポリマー、ポリウレタン、ビニル重合体などが挙げられる。
【0039】
ポリマーは、架橋剤と反応可能な反応性基を有することが好ましい。
例えば、架橋剤がエポキシ基を有する場合、当該反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシ基、フェノール性水酸基などが挙げられる。
例えば、架橋剤がアルコキシメチル基、メチロール基を有する場合、当該反応性基としては、アルコキシメチル基、メチロール基などが挙げられる。
例えば、架橋剤がイソシアネート基を有する場合、当該反応性基としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
【0040】
ポリマー(開裂構造を有するポリマー、開裂構造を有しないポリマー)の分子量としては、特に制限されないが、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による重量平均分子量が、2,000~100,000であることが好ましく、2,500~50,000であることがより好ましい。
【0041】
易剥離層形成用組成物におけるポリマーの含有量としては、特に限定されないが、膜形成成分に対して、10質量%~99.5質量%が好ましく、30質量%~95質量%がより好ましく、50質量%~90質量%が特に好ましい。これらの含有量は、開裂構造を有するポリマーのみの含有量であってもよいし、開裂構造を有しないポリマーのみの含有量であってもよいし、開裂構造を有するポリマー及び開裂構造を有しないポリマーの合計の含有量であってもよい。
【0042】
架橋剤が開裂構造を有する場合、架橋剤に含まれる開裂構造の数は、1つであってよいし、2以上であってもよい。
架橋剤が、互いに反応して開裂構造を形成できる2種の部分構造の一方又は他方を有する場合、架橋剤に含まれる当該部分構造の数は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
【0043】
架橋剤としては、例えば、エポキシ化合物、メチロール化合物、イソシアネート化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物は、エポキシ基を2以上有する化合物である。
メチロール化合物は、メチロール基及びアルコキシメチル基の少なくともいずれかを有し、メチロール基及びアルコキシメチル基の合計が2以上である化合物である。
イソシアネート化合物は、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基の少なくともいずれかを有し、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基の合計が2以上である化合物である。
【0044】
架橋剤(開裂構造を有する架橋剤、開裂構造を有しない架橋剤)の分子量としては、特に制限されないが、2,000以下が好ましく、1,500以下がより好ましい。
【0045】
易剥離層形成用組成物における架橋剤の含有量としては、特に制限されないが、ポリマーに対して、1質量%~100質量%が好ましく、3質量%~80質量%がより好ましく、5質量%~50質量%が特に好ましい。これらの含有量は、開裂構造を有する架橋剤のみの含有量であってもよいし、開裂構造を有しない架橋剤のみの含有量であってもよいし、開裂構造を有する架橋剤及び開裂構造を有しない架橋剤の合計の含有量であってもよい。
【0046】
易剥離層形成用組成物は、膜形成成分として、ポリマー及び架橋剤以外の、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、硬化触媒、界面活性剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0047】
硬化触媒は、易剥離層形成用組成物を用いた易剥離層の形成において熱硬化反応の促進に有効となる。
硬化触媒としては、例えば、酸、熱酸発生剤などが挙げられる。
熱酸発生剤としては、温度80℃~250℃で熱分解して酸を発生する化合物が好ましい。
【0048】
易剥離層形成用組成物における酸又は熱酸発生剤の含有量としては、ポリマーに対して、0.01質量%~15質量%が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましい。
【0049】
易剥離層形成用組成物に界面活性剤を添加することで、易剥離層形成用組成物の塗布性を向上させることができる。
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の公知の界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
易剥離層形成用組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、ポリマーに対して、0.0001質量%~1質量%が好ましく、0.001質量%~0.5質量%がより好ましい。
【0051】
易剥離層形成用組成物にシランカップリング剤を添加することで、易剥離層形成用組成物の被塗物への密着性を向上させることができる。
【0052】
易剥離層形成用組成物がシランカップリング剤を含む場合、その含有量は、ポリマーに対して、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.3質量%~3質量%がより好ましい。
【0053】
易剥離層形成用組成物に含まれる溶剤としては、例えば、炭素数3~20のグリコールエーテル系溶剤、炭素数3~20のエステル系溶剤、炭素数3~20のケトン系溶剤、炭素数3~20の環状化合物系溶剤などが挙げられる。
【0054】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロシキイソ酪酸メチル、2-ヒドロシキイソ酪酸エチルなどが挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ベンゾフェノンなどが挙げられる。
環状化合物系溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
易剥離層形成用組成物における溶剤の含有量としては、易剥離層形成用組成物の膜形成成分の濃度が、0.1質量%~40質量%となる量が好ましく、0.5質量%~20質量%となる量がより好ましく、0.5質量%~10質量%となる量が特に好ましい。
【0056】
易剥離層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されず、各成分を均一に混合できる公知の方法を用いることができる。
【0057】
塗布の方法としては、特に限定されず、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)などが挙げられる。
【0058】
加熱の温度としては、易剥離層形成用組成物が架橋剤を含有しない場合には、易剥離層形成用組成物に含有される溶剤を蒸発させることができる温度であれば、特に制限されず、例えば、40℃~100℃などが挙げられる。
易剥離層形成用組成物が架橋剤を含有する場合には、加熱の温度としては、架橋剤を反応させることができる温度であれば、特に制限されず、例えば、60℃~200℃などが挙げられる。
加熱の時間としては、特に制限されず、例えば、1分間~1時間が挙げられる。
加熱に用いる器具としては、例えば、ホットプレート、オーブンなどが挙げられる。
加熱雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
【0059】
易剥離層の厚みとしては、特に制限されないが、0.01μm~10μmが好ましく、0.03μm~5μmがより好ましく、0.05μm~1μmが特に好ましい。
【0060】
易剥離層の厚みは、通常、接着剤層の厚みより薄い。
易剥離層の厚みは、接着剤層の厚みの1/1000倍~1/10倍であることが好ましく、1/750倍~1/50倍であることがより好ましい。
【0061】
<接着剤層>
接着剤層は、接着剤組成物から得られる。
接着剤組成物としては、特に限定されず、例えば、ポリシロキサン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリイミド系接着剤、フェノール樹脂系接着剤などが挙げられる。
接着剤組成物は、溶剤を含有していてもよいし、溶剤を含有していなくてもよい。
接着剤組成物は、熱硬化型の接着剤組成物であってもよいし、非熱硬化型の接着剤組成物であってもよい。熱硬化型の接着剤組成物は、一般的に、一度接着させると被着体の分離が困難となる。そのため、本発明の効果をより得るためには、熱硬化型の接着剤組成物が好ましい。
【0062】
接着剤層は、例えば、接着剤組成物を塗布して、加熱することで得られる。
【0063】
塗布の方法としては、特に限定されず、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)などが挙げられる。
【0064】
加熱の温度としては、特に限定されず、例えば、80℃~200℃などが挙げられる。
加熱の時間としては、特に限定されず、例えば、1分間~2時間などが挙げられる。
【0065】
接着剤層の厚みとしては、特に制限されないが、0.5μm~500μmが好ましく、1μm~200μmがより好ましく、2μm~100μmが特に好ましい。
【0066】
包装フィルム用積層体の製造方法としては、特に限定されない。
第1フィルムと易剥離層と接着剤層と第2フィルムとがこの順で配された包装フィルム用積層体の製造方法の一例を説明する。
第1フィルムの上に易剥離層を形成する。易剥離層の形成は、第1フィルムの表面にプライマー層又は易剥離層形成用組成物を塗布し、加熱することで行われる。易剥離層形成用組成物が架橋剤を含有する場合、ここでの加熱は、架橋剤が反応する温度であることが好ましい。
次に、易剥離層の上に接着剤組成物を塗布する。塗布された接着剤組成物の上に第2フィルムを載置する。その後、加熱する。ここでの加熱は、接着剤組成物が熱硬化型の接着剤組成物の場合、接着剤組成物が熱硬化する温度であることが好ましい。
【0067】
(包装フィルム用積層体の分解方法)
本発明の包装フィルム用積層体の分解方法は、外部刺激を付与する工程及び分離工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含んでもよい。
【0068】
<外部刺激を付与する工程>
本工程は、本発明の包装フィルム用積層体における開裂構造を有する易剥離層に外部刺激を付与する工程であれば、特に限定されない。
【0069】
外部刺激が活性エネルギー線であって、包装フィルム用積層体の第1フィルムが、活性エネルギー線の照射源に面している場合、第1フィルムは、活性エネルギー線に対して透過性を有する。
外部刺激が活性エネルギー線であって、包装フィルム用積層体の第2フィルムが、活性エネルギー線の照射源に面している場合、第2フィルムは、活性エネルギー線に対して透過性を有する。
【0070】
活性エネルギー線(開裂構造が吸収する活性エネルギー線)としては、例えば、紫外線、電子線、X線などが挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の波長としては、例えば、300~380nmが挙げられる。
紫外線照射に用いる光源としては、例えば、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV-LEDなどが挙げられる。
【0071】
活性エネルギー線の照射量としては、分離工程を行うことができる照射量であれば、特に限定されないが、例えば、100mJ/cm2~10,000mJ/cm2が挙げられる。
【0072】
開裂構造を有する易剥離層に外部刺激を与える(例えば、開裂構造を有する易剥離層に向けて活性エネルギー線を照射する)と、開裂構造が当該外部刺激に応答して(例えば、活性エネルギー線を吸収して)、開裂構造の化学結合が開裂する。当該開裂に伴って開裂構造を有する易剥離層と接着剤層との間の接着性が低下し、第1フィルムと第2フィルムとを容易に分離できるようになる。
【0073】
<分離工程>
本工程は、例えば、第1フィルムと第2フィルムとを物理的に分離する工程、又は包装フィルム用積層体を液体に浸漬し開裂構造を有する易剥離層を除去する工程である。物理的に分離するとは、包装フィルム用積層体から第1フィルム又は第2フィルムを引き剥がすことである。また、包装フィルム用積層体を浸漬する液体は、開裂構造を有する易剥離層を除去可能な液体であれば、特に限定されず、例えば、水、酸性水溶液、塩基性水溶液(アルカリ水溶液)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0074】
<洗浄工程>
分離工程の後、必要に応じて、第1フィルム及び第2フィルムの一方又は両方を洗浄する洗浄工程を含んでもよい。本工程で使用する洗浄剤としては、各フィルムに付着している開裂構造を有する易剥離層の残渣を除去可能であり、分離工程において包装フィルム用積層体を液体に浸漬する場合、該液体を除去可能であり、且つ各フィルムを溶解する溶剤を除き、特に限定されない。洗浄剤としては、例えば、水、酸性水溶液、塩基性水溶液(アルカリ水溶液)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0075】
分離された第1フィルム又は第2フィルムは、例えば、洗浄が行われた後にそのまま再利用される。また、分離された第1フィルム又は第2フィルムは、例えば、更に原材料などに分解されて原材料として再利用される。
【実施例0076】
以下、合成例、調製例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0077】
下記合成例、調製例及び実施例で使用した化合物は、以下のとおりである。
[溶剤]
CPN:シクロペンタノン
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
[架橋剤]
PL:1,3,4,6-テトラキス(メトキシエチル)グリコールウリル(オルネクス社、商品名:POWDERLINK 1174)
[硬化触媒]
PPTS:p-トルエンスルホン酸ピリジニウム
[シランカップリング剤]
TGS:トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン
【0078】
また、ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定は、合成例1及び3については、(株)島津製作所製GPC装置(カラム:Shodex(登録商標)KF803L及びKF804L(昭和電工(株)製)、溶離液:THF、流量:1.0mL/分、カラム温度:40℃、Mw:標準ポリスチレン換算値)を用い、合成例2については、日本分光(株)製GPC装置(カラム:Shodex(登録商標)カラムKF803LおよびKF805L(昭和電工(株)製)、溶離液:DMF、流量:1.0mL/分、カラム温度:50℃、Mw:標準ポリスチレン換算値)を用いて行った。
【0079】
また、1H-NMRの測定は、Bruker社製 AVANCE III HD、測定周波数:500MHz、測定溶媒:関東化学(株)製 重水素化DMSO(DMSO-d6)、内部標準:テトラメチルシラン(δ=0.00ppm)を用いて行った。
【0080】
[1]ポリマーの合成
[合成例1]
2-ニトロ-p-キシリレングリコール(東京化成工業(株)) 2.40g(13.10mmol)、トリレン-2,4-ジイソシアナート 2.24g(112.84mmol)、及び重合触媒としてジラウリン酸ジブチルすず 0.01gをTHF 41.8gに溶解し、加熱還流下20時間反応させることでポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を、メタノール 300gに徐々に滴下して固体を析出させた。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで、開裂構造としてo-ニトロベンジル構造を含むポリマー(PA-1)を得た。ポリマー(PA-1)のMwは19,000であった。
【化6】
【0081】
[合成例2]
1,3-ジアセチルベンゼン 5.02gとヒドロキシルアミン塩酸塩 5.44gにDMF 40mLを加えて80℃3時間反応させた。反応終了後、水100mLを加えて固体を濾取、水で3回洗浄後乾燥してオキシム基(>C=N-OH)を2つ有する化合物 5.29gを得た。1H-NMRの結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz、DMSO-d6):δ 7.93(dd,2H,J=2.0Hz,2.0Hz),7.64(dd,4H,J=7.5Hz,2.0Hz),7.40(dd,2H,J=7.5Hz,7.5Hz),2.16(s,6H)
【0082】
得られた化合物 1.70g(8.84mmol)、4,4’-ジイソシアン酸メチレンジフェニル 2.17g(8.67mmol)、及び重合触媒としてジラウリン酸ジブチルすず 0.01gをNMP 34.9gに溶解し、60℃で20時間反応させることでポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を、メタノール 300gに徐々に滴下して固体を析出させた。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで、開裂構造としてオキシムエステル構造を含むポリマー(PA-2)を得た。ポリマー(PA-2)のMwは6,800であった。
【化7】
【0083】
[合成例3]
p-キシリレングリコール 4.00g(28.97mmol)、トリレン-2,4-ジイソシアナート 4.54g(26.08mmol)、及び重合触媒としてジラウリン酸ジブチルすず 0.02gをTHF 34.2gに溶解し、加熱還流下20時間反応させることでポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を、メタノール 300gに徐々に滴下して固体を析出させた。析出した固体を濾別し、減圧乾燥することで開裂構造を含まないポリマー(PA-3)を得た。ポリマー(PA-3)のMwは21,000であった。
【化8】
【0084】
[2]接着剤組成物の調製
[調製例1]
液状ビスフェノール型エポキシ樹脂jER-828(三菱ケミカル(株))29.7g、及び(4-アセトキシフェニル)メチル(2-メチルベンジル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(三新化学工業(株)、商品名:SI-B2A)0.3gに溶剤としてPGME 70gを加え、固形分濃度が30.0質量%の接着剤組成物(Ad-1)を調製した。
【0085】
[3]易剥離層形成用組成物の調製
[実施例1-1]
ポリマーとして(PA-1)を100質量部、架橋剤としてPLを20質量部、硬化触媒としてPPTSを1質量部、及びシランカップリング剤としてTGSを1質量部混合し、混合物を得た。得られた混合物に溶剤としてCPNを加え、固形分濃度が3.0質量%の易剥離層形成用組成物(A-1)を調製した。
【0086】
[実施例1-2]
ポリマーとして(PA-2)を100質量部、架橋剤としてPLを20質量部、硬化触媒としてPPTSを1質量部、及びシランカップリング剤としてTGSを1質量部混合し、混合物を得た。得られた混合物に溶剤としてCPNを加え、固形分濃度が3.0質量%の易剥離層形成用組成物(A-2)を調製した。
【0087】
[比較例1-1]
ポリマーとして(PA-3)を100質量部、架橋剤としてPLを20質量部、硬化触媒としてPPTSを1質量部、及びシランカップリング剤としてTGSを1質量部混合し、混合物を得た。得られた混合物に溶剤としてCPNを加え、固形分濃度が3.0質量%の剥離層形成用組成物(A-3)を調製した。
【0088】
[4]フィルム基板上への易剥離層の作製及びその評価
[実施例2-1]
バーコータを用いて、易剥離層形成用組成物(A-1)を、被着体としてのオゾン処理を施したポリエステル(PET)フィルム基板(東洋紡(株)製 コスモシャイン(登録商標)A4100、厚み50μm)の易接着層が塗布されていない面に、ウェット膜厚4μmで塗布した。得られた塗膜を、熱循環式オーブンを用いて150℃で10分間加熱し、PETフィルム基板上に厚さ約0.1μmの易剥離層を形成した。その後、バーコータを用いて、易剥離層が形成された前記PETフィルム基板の面の全面に接着剤組成物(Ad-1)をウェット膜厚10μmで塗布した。得られた塗膜を、熱循環式オーブンを用いて150℃で30分間加熱し、易剥離層上に厚さ約3μmの接着剤層を形成し、接着剤層・易剥離層付きPETフィルム基板を得た。
【0089】
[実施例2-2]
易剥離層形成用組成物(A-1)のかわりに易剥離層形成用組成物(A-2)を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、接着剤層・易剥離層付きPETフィルム基板を得た。
【0090】
[比較例2-1]
易剥離層形成用組成物(A-1)のかわりに剥離層形成用組成物(A-3)を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、接着剤層・剥離層付きPETフィルム基板を得た。
【0091】
[比較例2-2]
バーコータを用いて、接着剤組成物(Ad-1)を、被着体としてのオゾン処理を施したポリエステル(PET)フィルム基板(東洋紡(株)製 コスモシャイン(登録商標)A4100、厚み50μm)の易接着層が塗布されていない面に、ウェット膜厚10μmで塗布した。得られた塗膜を、熱循環式オーブンを用いて150℃で30分間加熱し、PETフィルム基板上に厚さ約3μmの接着剤層を形成し、接着剤層付きPETフィルム基板を得た。
【0092】
[露光前の剥離力評価]
実施例2-1及び2-2で得られた接着剤層・易剥離層付きPETフィルム基板、及び比較例2-1で得られた接着剤層・剥離層付きPETフィルム基板、並びに比較例2-2で得られた接着剤層付きPETフィルム基板を、カッターを用いて25mm×700mmの短冊状にカットした。その後、接着剤層が形成された面に、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製 CT-24)を貼ることで積層体を作製した。この積層体を、オートグラフAGS-X500N((株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で剥離し、剥離力を測定した。測定結果を表1にまとめて示す。
【0093】
[露光後の剥離力評価]
実施例2-1及び2-2で得られた接着剤層・易剥離層付きPETフィルム基板、及び比較例2-1で得られた接着剤層・剥離層付きPETフィルム基板、並びに比較例2-2で得られた接着剤層付きPETフィルム基板を、カッターを用いて25mm×700mmの短冊状にカットした。その後、接着剤層が形成された面に、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製 CT-24)を貼ることで積層体を作製した。その後、この積層体のPETフィルム基板側から、高圧水銀ランプを用いて、波長300nm以下の光を吸収するカットフィルタを介して、紫外線を2000mJ/cm2(波長365nm換算)照射した。露光後の積層体を、オートグラフAGS-X500N((株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で剥離し、剥離力を測定した。測定結果を表1にまとめて示す。
【0094】
【0095】
表1に示した結果より、実施例の接着剤層・易剥離層付きPETフィルム基板を用いて作製された積層体は、露光前は剥離力が高く剥離が困難であったのに対して、露光後は低い剥離力で容易に剥離することができた。
【0096】
一方、比較例の接着剤層・剥離層付きPETフィルム基板又は接着剤層付きPETフィルム基板を用いて作製した積層体は、露光の有無によらず剥離力が高く、積層体の剥離は困難であった。