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特開2023-141300抑草資材固化物、抑草資材固化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141300
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】抑草資材固化物、抑草資材固化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01P 21/00 20060101AFI20230928BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20230928BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20230928BHJP
   A01N 59/06 20060101ALI20230928BHJP
   A01N 59/14 20060101ALI20230928BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20230928BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20230928BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20230928BHJP
   C09K 17/08 20060101ALI20230928BHJP
   C05G 3/60 20200101ALI20230928BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A01P21/00
A01P13/00
A01N59/00 C
A01N59/06 Z
A01N59/14
A01N25/00 102
A01N25/34 Z
C09K17/02 H
C09K17/08 H
C05G3/60
A01M21/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047539
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺添 斉
(72)【発明者】
【氏名】橋田 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】小林 卓也
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
4H026
4H061
【Fターム(参考)】
2B121CC05
4H011AB01
4H011AB03
4H011BA06
4H011BB18
4H011BC20
4H011DA11
4H011DC05
4H011DC08
4H011DD04
4H011DE17
4H011DF03
4H026AA01
4H026AA02
4H026AA05
4H026AB04
4H061CC08
4H061DD08
4H061DD14
4H061EE06
4H061EE12
4H061EE13
4H061EE15
4H061EE16
4H061FF06
(57)【要約】
【課題】所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を長期にわたり調節し、植物の形態を継続して維持する(制御する)。
【解決手段】植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材、及び、抑草部材に対して所定の割合で混合された固化部材からなる混合物を作製し、混合物に珪砂6を混合して混錬し、抑制部材が所望状態で溶出されるように水の流路12が形成されるように固めて混錬物7(抑草資材固化物11)を作製する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材、及び、前記抑制部材に対して所定の割合で混合された固化部材からなる混合物を、基材の表面に配し、前記混合物が配された多数の前記基材を結合して混錬物とし、前記混錬物の前記基材の間に流路を確保して前記抑制部材が所望期間にわたり溶出されるようにした
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項2】
請求項1に記載の抑草資材固化物において、
前記抑制部材の成分元素は、
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)のうち、少なくとも一種類を含む
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の抑草資材固化物において、
前記固化部材は、少なくとも固化剤である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記抑制部材は、石炭灰である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記固化部材は、貝殻粉末を含む
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記固化部材は、少なくとも、ペーパースラッジ灰、もしくは、高炉スラグ粉末の一方を含む
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記混合物の前記抑制部材の含有量が、容量比で30%から70%である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項8】
請求項7に記載の抑草資材固化物において、
前記混合物の前記固化部材の含有量が、容量比で80%から10%である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記基材は、粒径が0.8mmから3.3mmの珪砂である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項10】
請求項9に記載の抑草資材固化物において、
前記混合物の前記固化部材は、固化剤、及び、固化促進剤であり、
前記混錬物における前記珪砂の割合が70%から90%である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項11】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材、及び、前記抑制部材に対して所定の割合で混合された固化部材からなる混合物が、内部に流路が確保されるようにして前記抑制部材が所望期間にわたり溶出されるように固められた
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項12】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材に対し、固化部材を所定の割合で混合して混合物を作製し、前記混合物の中に粒状の多数の基材を投入して混錬し、混錬物を容器に充填して所定期間の間静置することで、前記基材の間に流路を確保して前記抑制部材が所望期間にわたり溶出されるようにした固化物としたことを特徴とする抑草資材固化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長を調節(抑制)する抑制成分を含んだ抑草資材固化物、及び、抑草資材固化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線の敷地、河川堤防、道路法面、中央分離帯、空港着陸帯等では、浸食防止、安全確保、景観確保、基盤浸食防止、飛び砂防止等のために、植物を植えて緑化が図られることがある。緑化のための植物は、成長しすぎると、防犯上、見栄え上、機能上、悪影響を及ぼす虞があるため、定期的に草刈等のメンテナンスが必要になっている。しかし、このような緑化の場所は、人が入りにくい場所であるため、メンテナンスには多大な労職と時間、費用がかかるのが現状であった。
【0003】
このため、従来から、定期的な草刈作業に代えて、除草剤等を用いて植物を枯らせることで植物が成長しないようにし、植物の必要以上の成長による悪影響を無くしている(例えば、特許文献1)。特許文献1に示された技術は、除草剤に成長を抑制する剤を混ぜて、除草の負担を軽減する技術となっている。
【0004】
緑化を行う地域は、植物の量が減少しても存在し続けることが、環境イメージの点等において重要であるが、特許文献1の技術を用いた場合、除草を行う技術であるため、除草を行った後は、緑化の地域に植物が生えていない状態になってしまう。緑化の地域で除草を行い、植物を無くした状態にすると、見栄えや安全性に対する印象を含めた景観を損なうことになり、緑化の地域では除草を実施することは得策ではないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-540775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)抑草資材固化物を製造することができる抑草資材固化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の抑草資材固化物は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材、及び、前記抑制部材に対して所定の割合で混合された固化部材からなる混合物を、基材の表面に配し、前記混合物が配された多数の前記基材を結合して混錬物とし、前記混錬物の前記基材の間に流路を確保して前記抑制部材が所望期間にわたり溶出されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、抑制部材が固化部材(固化剤、固化促進剤)により固められて基材の表面に配され、多数の前記基材が結合されて基材の間に流路が確保される。流路に雨水などが染み込み、流通し、混錬物の内部の抑制部材が溶出され続け、抑制部材が所望期間にわたり溶出される。
【0010】
このため、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物となる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1に記載の抑草資材固化物において、前記抑制部材の成分元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)のうち、少なくとも一種類を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調整することができる。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1もしくは請求項2に記載の抑草資材固化物において、前記固化部材は、少なくとも固化剤であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、抑制部材が固化剤により混合されて混合物(例えば、ペースト状)が作製される。固化剤としては、カルシウムを含む剤、例えば、水酸化カルシウムの剤、高炉スラグ粉末、貝殻粉末(未焼成貝殻粉末・焼成貝殻粉末)等を用いることができる。また、固化を促進する固化促進剤を混合することも可能である。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記抑制部材は、石炭灰であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、廃棄物となる石炭灰(フライアッシュ、クリンカアッシュ)を抑制部材として有効に利用することが可能になる。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記固化部材は、貝殻粉末を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、廃棄物となり処理に多くの問題を残した貝殻粉末(未焼成貝殻粉末・焼成貝殻粉末)を固化剤として有効に利用し、所望の強度を持つ混合物を有する抑草資材固化物とすることが可能になる。
【0019】
また、請求項6に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記固化部材は、少なくとも、ペーパースラッジ灰、もしくは、高炉スラグ粉末の一方を含むことを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る本発明では、固化部材(固化剤、固化促進剤)として、廃棄物となるペーパースラッジ灰、もしくは、高炉スラグ粉末を有効に利用することが可能になる。
【0021】
また、請求項7に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記混合物の前記抑制部材の含有量が、容量比で30%から70%であることを特徴とする。
【0022】
請求項7に係る本発明では、抑制部材の含有量を適切に特定することができる。
【0023】
また、請求項8に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項7に記載の抑草資材固化物において、前記混合物の前記固化部材の含有量が、容量比で80%から10%であることを特徴とする。
【0024】
請求項8に係る本発明では、抑制部材に対して固化部材(固化剤+固化促進剤)の含有量を適切に特定することができる。
【0025】
また、請求項9に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記基材は、粒径が0.8mmから3.3mmの珪砂であることを特徴とする。
【0026】
請求項9に係る本発明では、基材の種類及び大きさを適切に特定することができる。尚、基材としては、珪砂(砂利)の他に、樹脂やゴム、その他の硬質・粒状のものを用いることが可能である。
【0027】
また、請求項10に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項9に記載の抑草資材固化物において、前記混合物の前記固化部材は、固化剤、及び、固化促進剤であり、前記混錬物における前記珪砂の割合が70%から90%であることを特徴とする。
【0028】
請求項10に係る本発明では、基材、及び、固化部材を適切に特定して、所望の抑草資材固化物を得ることができる。
【0029】
上記目的を達成するための請求項11に係る本発明の抑草資材固化物は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材、及び、前記抑制部材に対して所定の割合で混合された固化部材からなる混合物が、内部に流路が確保されるようにして前記抑制部材が所望期間にわたり溶出されるように固められたことを特徴とする。
【0030】
請求項11に係る本発明では、内部に流路が確保されるようにして抑制部材が固化部材(固化剤、固化促進剤)により固められて、抑制部材が所望期間にわたり溶出されるようにされる。流路に雨水などが染み込み、流通し、混錬物の内部の抑制部材が溶出され続け、抑制部材が所望期間にわたり溶出される。
【0031】
このため、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物となる。
【0032】
上記目的を達成するための請求項12に係る本発明の抑草資材固化物の製造方法は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材に対し、固化部材を所定の割合で混合して混合物を作製し、前記混合物の中に粒状の多数の基材を投入して混錬し、混錬物を容器に充填して所定期間の間静置することで(振動を加えた後に静置)、前記基材の間に流路を確保して前記抑制部材が所望期間にわたり溶出されるようにした固化物としたことを特徴とする。
【0033】
請求項12に係る本発明では、抑制部材が固化部材(固化剤、固化促進剤)により混合された混合物とされ、多数の基材と混合物を混錬して混錬物とし、多数の基材が結合されることで、基材の間に流路が確保されて抑制部材が所望期間にわたり溶出されるようにした抑草資材固化物とされる。
【0034】
このため、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)抑草資材固化物を製造することができる抑草資材固化物の製造方法となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の抑草資材固化物は、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)ことが可能になる。
【0036】
また、本発明の抑草資材固化物の製造方法は、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)抑草資材固化物を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施例に係る抑草資材固化物を製造する工程の概略図である。
図2】本発明の一実施例に係る抑草資材固化物を製造する工程の概略図である。
図3】抑草資材固化物の外観図である。
図4】本発明の抑草資材固化物の成分の基本仕様を説明する表図である。
図5】溶出した流体の電気伝導度の経時変化を表すグラフである。
図6】溶出した流体のpHの経時変化を表すグラフである。
図7】ホウ素の溶出量の経時変化を表すグラフである。
図8】アルミニウムの溶出量の経時変化を表すグラフである。
図9】リチウムの溶出量の経時変化を表すグラフである。
図10】ナトリウムの溶出量の経時変化を表すグラフである。
図11】本発明の一実施例に係る抑草資材固化物の使用例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の抑草資材固化物は、植物を所定の状態で生育維持させるための混錬物であり、抑草資材固化物に流体(雨水)の通路を形成し、雨水の染み込み、内部への流通を促進して雨水の接触面積を増やし、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材の溶出を長期間継続して維持するもので、植物の形態を継続的に維持できる(制御できる)ようにしたものである。
【0039】
図1図2には本発明の一実施例に係る抑草資材固化物を製造する工程を概略的に示した状況、図3には抑草資材固化物の外観の状況、図4には本発明の抑草資材固化物の成分の基本仕様を示してある。
【0040】
図1(a)に示すように、主材料として抑制部材の成分(金属・非金属)を含む石炭灰(フライアッシュ:FA、クリンカアッシュも可)1と、副材料として固化促進剤(固化部材)であるペーパースラッジ灰(PSA)2、副材料として固化剤(固化部材)である高炉スラグ粉末(SL)3、副材料として固化剤(固化部材)である貝殻粉末(SP)4(未焼成貝殻粉末・焼成貝殻粉末)が容器10に投入される。容器10の中で材料を混合し(例えば、3分)、ペースト状の混合物5を作製する。
【0041】
図1(b)に示すように、混合物5の中に粒状の多数の基材である珪砂6を投入して混錬し(例えば、3分)、多数の珪砂6の表面に混合物5をコーティングする(混合物5を珪砂6の表面に配する)。表面に混合物5がコーティングされた多数の珪砂6により、珪砂6が接合されて(混合物5同士が接合されて)混錬物7が形成される。珪砂6は、例えば、粒径が0.8mmから3.3mmの範囲のものが適用される。
【0042】
尚、基材としては、硬質ゴムや樹脂など、珪砂以外の粒状の基材を用いることが可能である。また、抑草資材固化物の大きさにより、粒径が0.8mmから3.3mmの珪砂6以外の基材を用いることができる。
【0043】
図2(a)に示すように、珪砂6が接合された(混合物5同士が接合された)混錬物7を型枠(容器)8に充填し、型枠8を上下に振動させて混錬物7を締め固める。図2(b)に示すように、底面に水が張られたケース9に型枠8を載せ、所定期間(例えば、2週間)の間静置する。この時、型枠8の中の混錬物7が乾燥しないように、型枠8を封止することが好ましい。
【0044】
所定期間が経過した混錬物7を型枠8から外すことで、図3に示すように、珪砂6(表面に混合物5がコーティングされた多数の珪砂6)の間に水(流体)の流路12が確保された抑草資材固化物11とされる。流路12に雨水などが染み込み、流路12を流通し、抑草資材固化物11の表面から内部までの抑制部材が溶出され続け、抑制部材が所望期間にわたり溶出される。
【0045】
このため、主材料として、廃棄物となる石炭灰1を抑制部材として有効に利用することが可能になる。そして、固化部材(固化剤、固化促進剤)として、廃棄物となるペーパースラッジ灰2、及び(もしくは)、高炉スラグ粉末3を有効に利用することが可能になる。また、廃棄物となり処理に多くの問題を残した貝殻粉末(未焼成貝殻粉末・焼成貝殻粉末)4を固化剤として有効に利用し、所望の強度を持つ抑草資材固化物11とすることが可能になる。
【0046】
したがって、抑草資材固化物11を所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)ことができる。
【0047】
図4に示すように、石炭灰1の役割は、抑草成分として、主に、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、リチウム(Li)を供給する。抑草成分としては、前記の他に、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)が適用される。珪砂6の割合は、70%から90%(例えば、84%)とされている。石炭灰1の混合割合は、珪砂6を除いたものの(珪砂6が84%の場合の残りの16%のうちの)、容量比で30%から70%、好ましくは、40%から60%とされる。つまり、全体の9%とされている。尚、珪砂6の割合は、70%から90%に限定されない。
【0048】
ペーパースラッジ灰2の役割は、固化促進を図ると共に(固化促進剤)、抑草成分として、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)を供給する。ペーパースラッジ灰2の混合割合は、珪砂6を除いたものの(珪砂6が84%の場合の残りの16%のうちの)、容量比で10%から80%(30%から80%、好ましくは、40%から60%)とされる。つまり、全体の3%とされている。
【0049】
高炉スラグ粉末3の役割は、固化・強度増加を図ると共に(固化剤)、抑草成分の溶出を抑制する。高炉スラグ粉末3の混合割合は、珪砂6を除いたものの(珪砂6が84%の場合の残りの16%のうちの)容量比で10%から25%とされる。つまり、全体の2%とされている。
【0050】
貝殻粉末4の役割は、固化・多孔質化を図ると共に(固化剤)、抑草成分の溶出を抑制する。貝殻粉末4の混合割合は、珪砂6を除いたものの(珪砂6が84%の場合の残りの16%のうちの)、容量比で10%から25%とされる。つまり、全体の2%とされている。
【0051】
そして、水が粉体(抑草成分、固化促進剤)に対して0.044とされる。
【0052】
抑制部材の成分元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)のうち、少なくとも一種類を含むことが好ましい。このため、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調整することができる。
【0053】
図5から図10に基づいて相対降水量(流した水の量:月を基準に示してある)に対する溶出の状況を説明する。即ち、降雨を模擬した水の滴下を継続した相対降水量(月相当)に対する溶出の状況を説明する。
【0054】
図5には溶出した流体の電気伝導度(EC:mS/m)の経時変化、図6には溶出した流体のpHの経時変化、図7にはホウ素の溶出量の経時変化、図8にはアルミニウムの溶出量の経時変化、図9にはリチウムの溶出量の経時変化、図10にはナトリウムの溶出量の経時変化を示してある。
【0055】
抑草資材固化物11に対し、降雨を模擬した水の滴下を40箇月継続して行い、月相当の相対降水量に対する溶出の状況を検証した。
【0056】
図5に示すように、電気伝導度(EC:mS/m)は継続して所定の値が維持され、水の中にイオンが多く存在し、多種の成分の溶出が長期にわたり維持されていることが確認された。図6に示すように、溶出した流体のpHは7から9の範囲が維持され、長期にわたり中性の近傍で変動が少ない状態が維持されていることが確認された。
【0057】
図7から図10に示すように、ホウ素、アルミニウム、リチウム、ナトリウムが継続して溶出され続け、長期にわたり(40箇月相当)所定の溶出濃度(mg/L)が維持されていることが確認された。特に、ホウ素、アルミニウムの溶出量(溶出濃度)が高い状態で持続されていることが確認された。
【0058】
珪砂6(表面に混合物5がコーティングされた多数の珪砂6)の間に水(流体)の流路12が確保された抑草資材固化物11とすることにより、抑草資材固化物11の表面から内部までの抑制部材が溶出され続け、抑制部材が所望期間にわたり溶出されていることが確認された。
【0059】
図11に基づいて抑草資材固化物11の使用の一例を説明する。図11には本発明の一実施例に係る抑草資材固化物11を送電線の敷地に適用した状況を示してある。
【0060】
送電線は人が入りにくい場所であることが多いので、送電線の敷地は景観の観点から緑化が図られる。緑化のための植物は、成長しすぎると、防犯上、見栄え上、機能上、悪影響を及ぼす虞がある。
【0061】
図に示すように、送電線21の敷地の鉄塔22の基礎部分の周囲には、複数の抑草資材固化物11が敷き詰められている。鉄塔22の基礎ブロック22aの周囲の所望の範囲には、複数の抑草資材固化物11が敷き詰められている。また、鉄塔22へのアクセス路23には、複数の抑草資材固化物11が経路に沿って敷き詰められている。
【0062】
抑草資材固化物11には植物24の成育を阻害して成長を調節する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材が存在し、成分元素が継続して溶出する。このため、鉄塔22の基礎ブロック22aの周囲、及び、鉄塔22へのアクセス路23は、植物24の形態である、葉、根、茎、の大きさや色、開花時期等が任意に調節され、成長の状態が長期にわたり継続して所望の状態に制御され、所望の大きさや色等の状態がメンテナンスフリーで維持される。
【0063】
抑草資材固化物11を敷き詰めるだけの簡単な施工で、鉄塔22の基礎ブロック22aの周囲、及び、鉄塔22へのアクセス路23における植物24の形態が調節されて成長の状態が制御され、所望の大きさや色等の状態が、長期にわたり継続して維持される。これにより、植物24の形態(大きさや色、開花時期等)を所定の範囲で維持する(制御する)ことが可能になり、鉄塔22の基礎ブロック22aの周囲、及び、鉄塔22に対して、必要以上に植物が成長することを長期間にわたり抑制することができる。
【0064】
つまり、立ち入りが困難な場所である鉄塔22の基礎ブロック22aの周囲(鉄塔22の足元)の植物を長期間にわたり低草で継続して維持することができ、景観や設備保護に対して有利となる。また、山間部の鉄塔22へのアクセス路23に抑草資材固化物11を施工し、植物24を長期間にわたり低草で維持するように制御する(調整する)ことで、特別なメンテナンスを要することなく、アクセス路23を長期間にわたり継続して確保することができる。
【0065】
尚、鉄塔22の周囲に抑草資材固化物11を施工する例を挙げて説明したが、例えば、交叉点の歩道の角部等の縁石部の周縁に、所定形状に加工した抑草資材固化物を敷き詰めることで、縁石部の周囲に成長する植物の成長を長期にわたり継続して抑制することができる。縁石部には、砂や土、落ち葉等が溜まりやすく、堆肥に植物(雑草)成長する虞がある。抑草資材固化物を敷き詰めることで、堆積物が堆積しても縁石部の周囲の植物(雑草)の成長が長期にわたり継続して抑制される。
【0066】
本発明の抑草資材固化物は、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を長期にわたり調節し、植物の形態を継続して維持する(制御する)ことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、抑草資材固化物、抑草資材固化物の製造方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 石炭灰
2 ペーパースラッジ灰
3 高炉スラグ粉末
4 貝殻粉末
5 混合物
6 珪砂
8 型枠
9 ケース
10 容器
11 抑草資材固化物
12 流路
21 送電線
22 鉄塔
23 アクセス路
24 植物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11