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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141360
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離・変換装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/50 20170101AFI20230928BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20230928BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20230928BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C01B32/50
B01D53/22
B01D71/70 500
B01D53/14 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047646
(22)【出願日】2022-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscatal.1c05339 2022年2月8日公開
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ムーンショット型研究開発事業/地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】藤川 茂紀
(72)【発明者】
【氏名】セリャンチン ロマン
(72)【発明者】
【氏名】清水 研一
【テーマコード(参考)】
4D006
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA41
4D006JA03A
4D006JA53Z
4D006JA54Z
4D006JA58Z
4D006KA67
4D006KA72
4D006KB12
4D006KB30
4D006MA03
4D006MA07
4D006MA31
4D006MB04
4D006MC03
4D006MC05
4D006MC54
4D006MC58
4D006MC65
4D006PA02
4D006PB17
4D006PB64
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA02
4D020BB01
4D020BC04
4D020CA05
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC11
4G146JC12
(57)【要約】
【課題】分離膜モジュールの拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換可能な、二酸化炭素分離・変換装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素分離・変換装置は、二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離し二酸化炭素濃縮気体を得る、1以上の分離部10と、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収および変換する触媒を備え、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を触媒に吸収させ、触媒に吸収させた二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、反応部30と、反応部30に水素を送る水素送出部40と、を備え、分離部10は、
二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離する分離膜を備える、1以上の分離膜モジュールと、各分離膜モジュールと接続され、二酸化炭素濃縮気体が排出される二酸化炭素送出口と、を備える分離膜モジュール接続部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有する気体から前記二酸化炭素を分離し二酸化炭素濃縮気体を得る、1以上の分離部と、
前記二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収および変換する触媒を備え、前記二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を前記触媒に吸収させ、前記触媒に吸収させた前記二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、反応部と、
前記反応部に前記水素を送る水素送出部と、
を備え、
前記分離部は、
前記二酸化炭素を含有する気体から前記二酸化炭素を分離する分離膜を備える、1以上の分離膜モジュールと、
前記各分離膜モジュールと接続され、前記二酸化炭素濃縮気体が排出される二酸化炭素送出口と、を備える分離膜モジュール接続部と、
前記各分離膜モジュールおよび前記分離膜モジュール接続部の外側と前記各分離膜モジュールおよび前記分離膜モジュール接続部の内側との間に圧力差を形成する圧力差形成部と、
を備え、
前記分離膜モジュールは、
開口部と、前記分離膜モジュール接続部に前記二酸化炭素濃縮気体を排出する排出口とを備える容器と、
前記開口部を覆い、かつ、前記開口部の周囲に沿って固定され、前記二酸化炭素を含有する気体から前記二酸化炭素を分離する分離膜と、
を備え、
前記反応部は、
前記触媒を有する、1以上の反応器と、
前記各反応器において、前記二酸化炭素濃縮気体中の前記二酸化炭素を前記触媒に吸収させた後の気体である吸収後気体を排出する吸収後気体排出口と、
前記変換後気体を送出する変換後気体送出口と、
前記水素送出部、前記各反応器、および前記二酸化炭素送出口と直接または間接的に接続される第1ガス切換部と、
前記吸収後気体排出口、前記各反応器、および前記変換後気体送出口と直接または間接的に接続される第2ガス切換部と、
を備え、
前記触媒に前記二酸化炭素を吸収させるときは、前記第1ガス切換部は、前記各反応器の少なくとも1つと前記二酸化炭素送出口と接続し、前記第2ガス切換部は、前記二酸化炭素送出口と接続された前記反応器と前記吸収後気体排出口と接続し、
前記触媒に吸収させた前記二酸化炭素と前記水素とを反応させるときは、前記第1ガス切換部は、前記各反応器の少なくとも1つと前記水素送出部とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記水素送出部と接続された前記反応器と前記変換後気体送出口とを接続する、二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項2】
前記反応部が第1反応器と第2反応器とを備え、
前記第1ガス切換部が前記第1反応器と前記二酸化炭素送出口とを接続したときは、前記第1ガス切換部は、前記第2反応器と前記二酸化炭素送出口とに接続されていない状態で前記第2反応器と前記水素送出部とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記第1反応器と前記吸収後気体排出口とを接続するとともに、前記第2反応器と前記吸収後気体排出口とに接続されていない状態で前記第2反応器と前記変換後気体送出口とを接続し、
前記第1ガス切換部が前記第2反応器と前記二酸化炭素送出口とを接続したときは、前記第1ガス切換部は、前記第1反応器と前記二酸化炭素送出口とに接続されていない状態で前記第1反応器と前記水素送出部とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記第2反応器と前記吸収後気体排出口とを接続するとともに、前記第1反応器と前記吸収後気体排出口とに接続されていない状態で前記第1反応器と前記変換後気体送出口とを接続する、請求項1に記載の二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項3】
前記反応部が第1反応器を備え、
前記触媒に前記二酸化炭素を吸収させるときは、前記第1ガス切換部は、前記水素送出部に接続されていない状態で前記第1反応器と前記二酸化炭素送出口とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記変換後気体送出口に接続されていない状態で前記第1反応器と前記吸収後気体排出口とを接続し、
前記触媒に吸収させた前記二酸化炭素と前記水素とを反応させるときは、前記第1ガス切換部は、前記二酸化炭素送出口に接続されていない状態で前記第1反応器と前記水素送出部とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記吸収後気体排出口に接続されていない状態で前記第1反応器と前記変換後気体送出口とを接続する、請求項1に記載の二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項4】
前記各分離部のうち第1分離部から排出された前記二酸化炭素濃縮気体を、前記各分離部のうち第2分離部に、投入する、請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項5】
前記分離膜がポリジメチルシロキサン系材料を主成分とする分離膜である、請求項1~4のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項6】
前記各分離膜モジュールに前記二酸化炭素を含有する気体を送る送風部を
さらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素濃縮気体中の水分を除去する水分除去部をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項8】
前記変換後気体を再度、前記各分離膜モジュールに投入する再投入部をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項9】
前記変換生成物が一酸化炭素である、請求項1~8のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離・変換装置。
【請求項10】
前記変換生成物がメタンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離・変換装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離・変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電などから排出される二酸化炭素(CO)は、地球温暖化の原因となることから、二酸化炭素の削減が求められている。従来、二酸化炭素排出問題に対応するために、様々な技術が開発されている。その中で、大気中の二酸化炭素を直接回収するダイレクトエアキャプチャー(DAC)技術が注目されている。
【0003】
DAC技術として、特許文献1には、分離膜を有し、取り込んだ混合気体における二酸化炭素濃度を高めて二酸化炭素濃縮混合気体を生成する二酸化炭素濃縮混合気体生成装置と、二酸化炭素濃縮混合気体生成装置から受け取った濃縮混合気体中の二酸化炭素を化学的に安定な化合物に変換する二酸化炭素変換装置と、吸収材を備え、吸収材が二酸化炭素を吸収することにより該二酸化炭素を他の気体成分から分離する最終処理装置と、周囲環境に含まれる空気を取り込み、二酸化炭素捕捉処理システムの最終処理装置又はそれより上流側に供給する二酸化炭素直接捕捉装置とからなる二酸化炭素捕捉処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/230045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように分離膜を用いて二酸化炭素を濃縮すると、酸素(O)が混入する。酸素と二酸化炭素とを含んだ気体と水素(H)とを原料にして、触媒を用いてメタン(CH)および一酸化炭素(CO)を生成する場合、酸素が二酸化炭素よりも優先的に水素と反応するため、二酸化炭素と水素とを反応させることは技術的に困難であった。
【0006】
また、一般に、分離膜を使用した分離システムでは、中空糸を束ねた中空糸型分離膜モジュール、または長尺分離膜を円筒状にしたスパイラル型分離膜モジュールが用いられている。しかし、中空糸型分離膜モジュールの場合は、中空糸の形状で製造しなければならず、製造上の制約が多い。また、スパイラル型分離膜モジュールの場合は、一度に大面積の分離膜を用いるため、大面積で膜の無欠陥を維持しなければならない。そのため、従来の分離膜を用いたシステムでは、分離膜モジュールの拡張がしにくいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みなされた発明であり、分離膜モジュールの拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換可能な、二酸化炭素分離・変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の一態様に係る二酸化炭素分離・変換装置は、
二酸化炭素を含有する気体から前記二酸化炭素を分離し二酸化炭素濃縮気体を得る、1以上の分離部と、
前記二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収および変換する触媒を備え、前記二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を前記触媒に吸収させ、前記触媒に吸収させた前記二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、反応部と、
前記反応部に前記水素を送る水素送出部と、
を備え、
前記分離部は、
前記二酸化炭素を含有する気体から前記二酸化炭素を分離する分離膜を備える、1以上の分離膜モジュールと、
前記各分離膜モジュールと接続され、前記二酸化炭素濃縮気体が排出される二酸化炭素送出口と、を備える分離膜モジュール接続部と、
前記各分離膜モジュールおよび前記分離膜モジュール接続部の外側と前記各分離膜モジュールおよび前記分離膜モジュール接続部の内側との間に圧力差を形成する圧力差形成部と、
を備え、
前記分離膜モジュールは、
開口部と、前記分離膜モジュール接続部に前記二酸化炭素濃縮気体を排出する排出口とを備える容器と、
前記開口部を覆い、かつ、前記開口部の周囲に沿って固定され、前記二酸化炭素を含有する気体から前記二酸化炭素を分離する分離膜と、
を備え、
前記反応部は、
前記触媒を有する、1以上の反応器と、
前記各反応器において、前記二酸化炭素濃縮気体中の前記二酸化炭素を前記触媒に吸収させた後の気体である吸収後気体を排出する吸収後気体排出口と、
前記変換後気体を送出する変換後気体送出口と、
前記水素送出部、前記各反応器、および前記二酸化炭素送出口と直接または間接的に接続される第1ガス切換部と、
前記吸収後気体排出口、前記各反応器、および前記変換後気体送出口と直接または間接的に接続される第2ガス切換部と、
を備え、
前記触媒に前記二酸化炭素を吸収させるときは、前記第1ガス切換部は、前記各反応器の少なくとも1つと前記二酸化炭素送出口と接続し、前記第2ガス切換部は、前記二酸化炭素送出口と接続された前記反応器と前記吸収後気体排出口と接続し、
前記触媒に吸収させた前記二酸化炭素と前記水素とを反応させるときは、前記第1ガス切換部は、前記各反応器の少なくとも1つと前記水素送出部とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記水素送出部と接続された前記反応器と前記変換後気体送出口とを接続する。
(2)上記(1)に記載の二酸化炭素分離・変換装置は、
前記反応部が第1反応器と第2反応器とを備え、
前記第1ガス切換部が前記第1反応器と前記二酸化炭素送出口とを接続したときは、前記第1ガス切換部は、前記第2反応器と前記二酸化炭素送出口とに接続されていない状態で前記第2反応器と前記水素送出部とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記第1反応器と前記吸収後気体排出口とを接続するとともに、前記第2反応器と前記吸収後気体排出口とに接続されていない状態で前記第2反応器と前記変換後気体送出口とを接続し、
前記第1ガス切換部が前記第2反応器と前記二酸化炭素送出口とを接続したときは、前記第1ガス切換部は、前記第1反応器と前記二酸化炭素送出口とに接続されていない状態で前記第1反応器と前記水素送出部とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記第2反応器と前記吸収後気体排出口とを接続するとともに、前記第1反応器と前記吸収後気体排出口とに接続されていない状態で前記第1反応器と前記変換後気体送出口とを接続してもよい。
(3)上記(1)に記載の二酸化炭素分離・変換装置は、
前記反応部が第1反応器を備え、
前記触媒に前記二酸化炭素を吸収させるときは、前記第1ガス切換部は、前記水素送出部に接続されていない状態で前記第1反応器と前記二酸化炭素送出口とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記変換後気体送出口に接続されていない状態で前記第1反応器と前記吸収後気体排出口とを接続し、
前記触媒に吸収させた前記二酸化炭素と前記水素とを反応させるときは、前記第1ガス切換部は、前記二酸化炭素送出口に接続されていない状態で前記第1反応器と前記水素送出部とを接続し、前記第2ガス切換部は、前記吸収後気体排出口に接続されていない状態で前記第1反応器と前記変換後気体送出口とを接続してもよい。
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の二酸化炭素分離・変換装置は、
前記各分離部のうち第1分離部から排出された前記二酸化炭素濃縮気体を、前記各分離部のうち第2分離部に、投入してもよい。
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の二酸化炭素分離・変換装置は、前記分離膜がポリジメチルシロキサン系材料を主成分とする分離膜であってもよい。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の二酸化炭素分離・変換装置は、前記各分離膜モジュールに前記二酸化炭素を含有する気体を送る送風部をさらに備えてもよい。
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の二酸化炭素分離・変換装置は、前記二酸化炭素濃縮気体中の水分を除去する水分除去部をさらに備えてもよい。
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の二酸化炭素分離・変換装置は、前記変換後気体を再度、前記各分離膜モジュールに投入する再投入部をさらに備えてもよい。
(9)上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の二酸化炭素分離・変換装置は、前記変換生成物が一酸化炭素であってもよい。
(10)上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の二酸化炭素分離・変換装置は、前記変換生成物がメタンであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、分離膜モジュールの拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換可能な、二酸化炭素分離・変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置の概略図である。
図2図1に示す二酸化炭素分離・変換装置の分離部の概略図である。
図3】分離膜モジュールの平面図である。
図4図3の分離膜モジュールのA-A線に沿った断面図である。
図5図1に示す二酸化炭素分離・変換装置の反応部の概略図である。
図6】第1実施形態の二酸化炭素変換方法のフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置の概略図である。
図8図7に示す二酸化炭素分離・変換装置の反応部の概略図である。
図9】第2実施形態の二酸化炭素変換方法のフローチャートである。
図10】第3実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置の概略図である。
図11】第4実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置の概略図である。
図12】第5実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置の概略図である。
図13】二酸化炭素濃縮性試験における二酸化炭素の濃度、相対湿度および温度と時間との関係を示す図である。
図14】水分除去を行った二酸化炭素濃縮性試験における二酸化炭素の濃度、相対湿度および温度と時間との関係を示す図である。
図15】分離膜に送風した二酸化炭素濃縮性試験における二酸化炭素の濃度、相対湿度および温度と時間との関係を示す図である。
図16】二酸化炭素の変換反応によって生成したメタンと時間との関係を示す図である。
図17】二酸化炭素の変換反応によって生成した一酸化炭素と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、第1実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置について説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法などは一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100の概略図である。二酸化炭素分離・変換装置100は、二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素濃縮気体を得る、1以上の分離部10と、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収および変換(還元)する触媒を備え、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を触媒に吸収させ、触媒に吸収させた二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、反応部30と、反応部30に水素を送る水素送出部40と、を備える。第1実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100は、必要に応じてさらに二酸化炭素濃縮気体から水分を除去する水分除去部20を備えることができる。水分除去部20を接続する場合は、分離部10と水分除去部20とは流路L2を介し、接続される。水分除去部20と反応部30とは流路L3を介し、接続される。水分除去部20を用いない場合は、分離部10と反応部30とが流路L2を介して接続される。反応部30と水素送出部40とは、流路L5を介し接続される。反応部30で生成された変換後気体は、流路L6を通り図示しない回収部に送られる。吸収後気体は、流路L4を通り排出される。以下、各部について説明する。
【0013】
(分離部10)
図2は、分離部10の概略図である。分離部10は二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離する分離膜を備える、1以上の分離膜モジュール11と、各分離膜モジュール11と接続され、二酸化炭素濃縮気体が排出される二酸化炭素送出口16と、を備える分離膜モジュール接続部13と、各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の外側と各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の内側との間に圧力差を形成する圧力差形成部14と、を備える。第1実施形態では、二酸化炭素送出口16は、流路L7を介し、圧力差形成部14と接続され、圧力差形成部14は流路L2と接続されている。分離膜モジュール11から入ってきた二酸化炭素濃縮気体は、二酸化炭素送出口16、流路L7、圧力差形成部14を通り、反応部30に送られる。本発明は、分離膜モジュール11を用い、大気から二酸化炭素を分離し、反応部30に二酸化炭素濃縮気体を送ることができれば、この構成に限定されない。
【0014】
「分離膜モジュール11」
図3は、分離膜モジュール11の平面図である。図4は、図3の分離膜モジュール11のA-A線に沿った断面図である。図3および4において、X方向およびY方向は、容器1の表面1cに沿う方向である。Y方向は、X方向と直交する方向である。Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向である。分離膜モジュール11は、開口部1aと、分離膜モジュール接続部13に二酸化炭素濃縮気体を排出する排出口1bとを備える容器1を備える。また、分離膜モジュール11は、開口部1aを覆い、かつ、開口部1aの周囲に沿って固定され、二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離する分離膜2を備える。二酸化炭素分離・変換装置100は、分離膜モジュール11の数を増やすことで、容易に分離膜を拡張することができる。分離膜モジュール11の数は2以上が好ましい。分離膜モジュール11は、図示しない圧力センサなどを備えて、リークの有無を監視してもよい。
【0015】
容器1は、開口部1aと、空洞部3と、排出口1bと、を備える。分離膜2および開口部1aを通った二酸化炭素は、容器1の空洞部3を通り、排出口1bから分離膜モジュール接続部13に送られる。なお開口部1aは分離膜2を支持するために、メッシュ等の多孔性支持材があってもよい。
【0016】
開口部1aの大きさは、特に限定されない。
【0017】
容器1の形状は、二酸化炭素が分離膜2を透過し、排出口1bから二酸化炭素送出口16を通ることができれば、特に限定されない。容器1の形状は、並列に設置できる分離膜モジュール11の数を増やすことができるので、平板状であることが好ましい。
【0018】
容器1のX方向の長さX1およびY方向の長さX2は、特に限定されない。容器1の長さX1および長さX2が長いほうが、開口部1aを大きくすることができる。
【0019】
容器1の厚さX3は、特に限定されない。容器1の厚さが薄いほうが多数の分離膜モジュール11を並列して分離膜モジュール接続部13に接続することができるので、容器1の厚さX3は、薄いほうが好ましい。容器1の厚さは、例えば、0.1mm~10mmである。
【0020】
分離膜2は、大気中の二酸化炭素を優先して透過させる機能を有する。分離膜2は、大気中の二酸化炭素を優先して透過するので、分離膜2を通った気体は、大気中よりも二酸化炭素の濃度が高くなる。この分離膜2を通り、二酸化炭素の濃度が上がった気体が二酸化炭素濃縮気体である。
分離膜2の材質としては、大気中の二酸化炭素を優先して透過し、大気中の二酸化炭素以外の成分の透過を抑制できれば、特に限定されない。分離膜2の材質としては、例えば、ゼオライト、アモルファスシリカ、金属をドープしたシリカ、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)、カーボン、ポリイミド、ポリアミド、ポリジメチルシロキサン系材料などが挙げられる。特に好ましくは、分離膜2としては、ポリジメチルシロキサン系材料を主成分とする分離膜が好ましい。なお、「ポリジメチルシロキサン系材料を主成分とする」とは、分離膜2の全質量中、ポリジメチルシロキサン系材料の含有量が60質量%以上であることをいう。
【0021】
分離膜2は、容器1の開口部1aを覆い、かつ、開口部1aの周囲に沿って固定される。固定方法は、圧力差を形成した際に大気が分離膜2を通らず、直接容器1に入らないようにできれば、特に限定されない。例えば、分離膜2を粘着テープで容器1に固定してもよいし、接着剤を用いて分離膜2を容器1に固定してもよい。
【0022】
分離膜2の厚さは、特に限定されない。分離膜2の厚さが薄いほどガス透過性が高くなるので、分離膜2は薄いことが好ましい。分離膜2の厚さとしては、例えば、10nm~1μmである。
【0023】
「分離膜モジュール接続部13」
分離膜モジュール接続部13は、分離膜モジュール11と接続される接続部15と二酸化炭素送出口16とを備える。分離膜モジュール接続部13は、1以上の分離膜モジュール11と接続される。第1実施形態では、分離膜モジュール接続部13は、接続部15を介し分離膜モジュール11と接続される。また、分離膜モジュール接続部13の二酸化炭素送出口16は流路L7と接続される。分離膜モジュール接続部13は図示しない流路を内部に備える。二酸化炭素濃縮気体は、排出口1bおよび接続部15を通り、二酸化炭素送出口16から排出される。
【0024】
接続部15は、分離膜モジュール11を着脱可能であることが好ましい。接続部15が分離膜モジュール11を着脱可能であることで、分離膜2に穴が開くなどによって、二酸化炭素変換中に分離膜モジュール11が破損した場合に、破損した分離膜モジュール11のみを交換すればよい。そのため、着脱可能な接続部15を有することでメンテナンス性を向上できる。
【0025】
「圧力差形成部14」
圧力差形成部14は、各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の外側と各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の内側との間に圧力差を形成する。各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の外側と各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の内側との間に圧力差があることで、大気中の二酸化炭素が分離膜2を通り、各分離膜モジュール11内部に入る。各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の外側の圧力を増圧してもよいし、各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の内側の圧力を減圧してもよい。
【0026】
圧力差形成部14は、各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の外側と各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の内側との間に圧力差を形成することができれば、特に限定されない。圧力差形成部14は、例えばダイアフラムポンプ、ドライポンプ、コンプレッサーなどである。
【0027】
(反応部)
図5に反応部30の概略図を示す。反応部30は、触媒32を有する、1以上の反応器31と、触媒32に吸収させた後の気体である吸収後気体を排出する吸収後気体排出口33と、変換後気体を送出する変換後気体送出口35と、水素送出部40、各反応器31、および二酸化炭素送出口16と直接または間接的に接続される第1ガス切換部37と、吸収後気体排出口33、各反応器31、および変換後気体送出口35と直接または間接的に接続される第2ガス切換部39と、を備える。
【0028】
触媒32に二酸化炭素を吸収させるときは、第1ガス切換部37は、各反応器31の少なくとも1つと二酸化炭素送出口16と接続し、第2ガス切換部39は、二酸化炭素送出口16と接続された反応器31と吸収後気体排出口33と接続する。第1実施形態では、触媒32に二酸化炭素を吸収させるときは、第1ガス切換部37は、水素送出部40に接続されていない状態で、第1反応器31Aと二酸化炭素送出口16とを接続し、第2ガス切換部39は、変換後気体送出口35に接続されていない状態で、第1反応器31Aと吸収後気体排出口33とを接続する。このように反応器31等を接続し、二酸化炭素濃縮気体を反応器31内に流すことで、二酸化炭素を触媒32に吸収させることができる。二酸化炭素を吸収させた後の吸収後気体は、吸収後気体排出口33を通り、流路L4から排出される。吸収後気体には、酸素などが含まれている。このように吸収後気体を排出することで、二酸化炭素以外の成分(例えば、酸素)を除くことができる。
【0029】
触媒32に吸収させた二酸化炭素と水素とを反応させるときは、第1ガス切換部37は、各反応器31の少なくとも1つと水素送出部40とを接続し、第2ガス切換部39は、水素送出部40と接続された反応器31と変換後気体送出口35とを接続する。
第1実施形態では、触媒32に吸収させた二酸化炭素と水素とを反応させるときは、第1ガス切換部37は、二酸化炭素送出口16に接続されていない状態で第1反応器31Aと水素送出部40とを接続し、第2ガス切換部39は、吸収後気体排出口33に接続されていない状態で第1反応器31Aと変換後気体送出口35とを接続する。このように反応器31等を接続し、二酸化炭素を触媒32に吸収させた反応器31内に水素を流すことで、二酸化炭素を変換し、変換生成物を得ることができる。二酸化炭素の変換で得られた変換生成物を含有する変換後気体は、変換後気体送出口35を通り、流路L6から送出される。送出された変換後気体は、図示しない回収部に送られる。
【0030】
「反応器」
反応器31は、収納容器34と収納容器34内に触媒32を備える。第1実施形態では、反応器31の数は1つである。即ち、第1実施形態において、反応器31は第1反応器31Aのみであるが、本発明はこれに限定されない。本発明では、複数の反応器31を用いてもよい。第1反応器31Aは、流路L8を介し第1ガス切換部37と接続される。第1反応器31Aは、流路L9を介し、第2ガス切換部39と接続される。第1ガス切換部37から流れてきた二酸化炭素濃縮気体は、第1反応器31Aを通る際、触媒32に接触して、二酸化炭素が吸収される。二酸化炭素が触媒32に吸収された後、水素送出部40から送られた水素を用いて、二酸化炭素を変換して変換生成物を生成する。
【0031】
触媒32は、二酸化炭素を吸収および変換することができれば特に限定されない。触媒32は、目的とする変換生成物に応じて選択することができる。触媒32は、例えば、担体と担体上に担持される塩基性物質および遷移金属とを備える。
【0032】
触媒32の担体は、塩基性物質および遷移金属を担持できれば特に限定されない。より具体的には、二酸化炭素吸収、および変換反応には関与しない材質であることが好ましく、担体として必要とされる耐久性を有する材質であることが好ましい。形状としては反応の効果を高めるべく、多孔質であることが好ましい。担体の材質としては、金属酸化物であることが好ましく、より具体的には、例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、セリア(CeO)などである。これらのうち、触媒としての特性を考慮すると、担体としては、特にアルミナが好ましい。
【0033】
塩基性物質は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属である。塩基性物質は、二酸化炭素の吸収と、変換生成物の生成に寄与する。塩基性物質としては、ナトリウム(Na),カリウム(K)、カルシウム(Ca)である。塩基性物質は二酸化炭素と反応し、炭酸塩を形成する。すなわち、触媒32は、二酸化炭素との反応物を形成することで、二酸化炭素を吸収する。塩基性物質は、目的とする変換生成物および担体に担持される遷移金属によって適宜選択される。二酸化炭素からメタンを生成する場合は、塩基性物質として、カルシウムが好ましい。二酸化炭素から一酸化炭素を生成する場合は、塩基性物質として、ナトリウムが好ましい。
【0034】
遷移金属は、変換生成物の生成に寄与する。遷移金属としては、例えば、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)などである。二酸化炭素からメタンを生成する場合は、遷移金属として、Niが好ましい。二酸化炭素から一酸化炭素を生成する場合は、遷移金属として、Ptが好ましい。
【0035】
例えば、二酸化炭素を変換し、メタンを生成する場合は、触媒32は、アルミナにNiナノ粒子とカルシウムとを担持させた触媒が好ましい。二酸化炭素を変換し、一酸化炭素を生成する場合は、触媒32は、アルミナにPtナノ粒子とナトリウムとを担持させた触媒が好ましい。
【0036】
遷移金属は粒子状に存在することが好ましい。また、遷移金属からなる粒子の粒径は、例えば、1~30nmである。粒子の粒径は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)の観察で得られた観察像から確認することができる。
【0037】
「第1ガス切換部37」
第1実施形態に係る第1ガス切換部37は、流路L3を介し、二酸化炭素送出口16と接続される。第1ガス切換部37は、流路L5を介し、水素送出部40と接続される。第1ガス切換部37は、流路L8を介し、第1反応器31Aと接続される。第1ガス切換部37は、例えば、三方弁である。
【0038】
「第2ガス切換部39」
第1実施形態に係る第2ガス切換部39は、流路L9を介し第1反応器31Aと接続される。第2ガス切換部39は、吸収後気体排出口33および変換後気体送出口35を備える。吸収後気体排出口33は流路L4と接続される。変換後気体送出口35は、流路L6と接続される。第2ガス切換部39は、例えば、三方弁である。
【0039】
(水分除去部)
水分除去部20は、分離部10で得られた二酸化炭素濃縮気体中の水分を除去する。水分除去部20は、流路L2を介し、分離部10と接続される。また、水分除去部20は、流路L3を介し、反応部30と接続される。第1実施形態では、反応部30で用いられる二酸化炭素濃縮気体は、水分を除去したものとなる。水分の除去方法は、公知の方法を用いることができる。水分除去部20としては、例えば、冷却式水トラップ、モレキュラーシーブを備えたモレキュラーシーブユニットなどが挙げられる。水分除去部20は、例えば、冷却式水トラップおよびモレキュラーシーブなど複数の水分除去部20を備えていてもよい。
【0040】
(水素送出部)
水素送出部40は、反応部30に水素を送る。具体的には、流路L5、第1ガス切換部37を介し、第1反応器31Aに送られる。水素送出部40は、反応部30に水素を送ることができれば、特に限定されない。水素送出部40は、例えば、水素を貯蔵する水素ボンベである。
【0041】
以上、第1実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100を説明した。第1実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100によれば、分離膜モジュール11の拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換することができる。
【0042】
第1実施形態では、二酸化炭素分離・変換装置100は、水分除去部20を備えていたが、水分除去部20は無くてもよい。
【0043】
<二酸化炭素変換方法>
次に本実施形態に係る二酸化炭素変換方法について説明する。本実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100を用いた例を説明するが、本実施形態に係る二酸化炭素変換方法は、下記の方法に限定されない。図6は、第1実施形態に係る二酸化炭素変換方法のフローチャートである。第1実施形態の二酸化炭素変換方法は、大気中から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素の濃度を上げることで、二酸化炭素濃縮気体を得る分離工程S1と、二酸化炭素濃縮気体から水分を除去する水分除去工程S2と、触媒32に二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収させる二酸化炭素吸収工程S3、触媒32に吸収した二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る二酸化炭素変換工程S4を有する。
【0044】
(分離工程)
分離工程S1では、大気中から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素の濃度を上げることで、二酸化炭素濃縮気体を得る。具体的には、分離膜モジュール11の分離膜2を用い、大気中の二酸化炭素を分離し、濃縮する。分離膜2を透過した二酸化炭素濃縮気体は、分離膜モジュール11と分離膜モジュール接続部13の内部を通り、二酸化炭素送出口16から水分除去部20に送出される。
【0045】
大気中の二酸化炭素が分離膜2を透過できるようにするために、圧力差形成部14は、各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の外側と各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部14の内側との間に圧力差を形成する。
【0046】
例えば、ダイアフラムポンプで、各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の内部を10kPa以下まで減圧することで、分離膜2から各分離膜モジュール11および分離膜モジュール接続部13の内部に二酸化炭素を透過させてもよい。
【0047】
(水分除去工程)
水分除去工程S2では、二酸化炭素濃縮気体から水分を除去する。具体的には、流路L2を通り、水分除去部20に入った二酸化炭素濃縮気体から水分を除去し、水分を除去した後の二酸化炭素濃縮気体を、流路L3を介して、反応部30に送る。水分除去工程S2では、例えば、冷却式水トラップおよびモレキュラーシーブを用いて二酸化炭素濃縮気体中の水分を除去してもよい。
【0048】
(二酸化炭素吸収工程)
二酸化炭素吸収工程S3では、触媒32に二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収させる。具体的には、水分除去部20で水分が除去された後の二酸化炭素濃縮気体を第1反応器31Aに流す。これによって、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素が触媒32と接触し、触媒32に吸収される。触媒32に二酸化炭素が吸収された後の吸収後気体は、第1反応器31Aから流路L9を通り、吸収後気体排出口33から排出される。吸収後気体には、酸素などの不要な成分が含まれている。この吸収後気体を排出することで、酸素などの二酸化炭素以外の成分を除去する。吸収後気体排出口33から排出された後の吸収後気体は、流路L4を通り、例えば、大気中に排出される。
【0049】
二酸化炭素吸収工程S3において、第1ガス切換部37は、各反応器31の少なくとも1つと二酸化炭素送出口16と接続し、第2ガス切換部39は、二酸化炭素送出口16と接続された反応器31と吸収後気体排出口33と接続する。第1実施形態の二酸化炭素吸収工程S3では、第1ガス切換部37は、水素送出部40に接続されていない状態で、第1反応器31Aと二酸化炭素送出口16とを接続し、第2ガス切換部39は、変換後気体送出口35に接続されていない状態で、第1反応器31Aと吸収後気体排出口33とを接続する。
【0050】
二酸化炭素吸収工程S3では、第1反応器31Aを加熱することが好ましい。加熱することで、その後の二酸化炭素の変換反応を速やかに行うことができる。用いる触媒の種類、変換生成物の種類に応じて、第1反応器31Aの温度は適宜設定することができる。第1反応器31Aの温度を300℃~450℃に保持することが好ましい。
【0051】
(二酸化炭素変換工程)
二酸化炭素変換工程S4では、触媒32に吸収した二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る。具体的には、二酸化炭素吸収工程S3が終了した後の第1反応器31Aに水素送出部40から送られた水素を流す。第1反応器31A中の触媒32上において、吸着した二酸化炭素と、水素とから二酸化炭素が変換(還元)され、変換生成物が生成される。変換生成物は例えば、メタン、一酸化炭素などである。変換反応後の変換生成物を含有する変換後気体は、流路L9を通り、第2ガス切換部39の変換後気体送出口35から送出される。変換後気体は、例えば、図示しない回収部に運ばれるが、変換後気体をそのまま別のシステムに投入してもよい。
【0052】
二酸化炭素変換工程S4において、第1ガス切換部37は、各反応器31の少なくとも1つと、水素送出部40とを接続し、第2ガス切換部39は、水素送出部40と接続された反応器31と、変換後気体送出口35とを接続する。第1実施形態の二酸化炭素変換工程S4では、触媒32に吸収させた二酸化炭素と、水素とを反応させるときは、第1ガス切換部37は、二酸化炭素送出口16に接続されていない状態で、第1反応器31Aと、水素送出部40とを接続し、第2ガス切換部39は、吸収後気体排出口33に接続されていない状態で、第1反応器31Aと変換後気体送出口35とを接続する。このように反応器31等を接続し、二酸化炭素を触媒32に吸収させた反応器31内に水素を流すことで、二酸化炭素を変換し、変換生成物を得ることができる。
【0053】
触媒32は、上記に記載したものを用いることができる。例えば、二酸化炭素を変換し、メタンを生成する場合は、触媒32は、アルミナにNiナノ粒子とカルシウムとを担持させた触媒が好ましい。二酸化炭素を変換し、一酸化炭素を生成する場合は、触媒32は、アルミナにPtナノ粒子とナトリウムとを担持させた触媒が好ましい。
【0054】
二酸化炭素変換工程S4では、第1反応器31Aを加熱することが好ましい。加熱することで、二酸化炭素の変換反応を促進することができる。用いる触媒の種類、変換生成物の種類に応じて、第1反応器31Aの温度は適宜設定することができる。第1反応器31Aの温度を300℃~450℃に保持することが好ましい。
【0055】
以上、第1実施形態に係る二酸化炭素変換方法を説明した。第1実施形態に係る二酸化炭素変換方法によれば、分離膜モジュール11の拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換することができる。
【0056】
(触媒の製造方法)
触媒は、公知の方法で製造することができる。触媒の製造方法は、例えば、湿式含侵法である。塩基性物質からなる化合物の水溶液を担体(例えば、アルミナ)に含侵させて、乾燥し、焼成する。次に、この焼成後の固形物に遷移金属の化合物の水溶液を含侵させ、乾燥および焼成する。これによって、触媒32が得られる。
【0057】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る第2実施形態の二酸化炭素分離・変換装置100Bを、図7を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0058】
図7は、第2実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Bの概略図である。二酸化炭素分離・変換装置100Bは、二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素濃縮気体を得る、1以上の分離部10と、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収および変換する触媒を備え、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を触媒に吸収させ、触媒に吸収させた二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、反応部30Bと、反応部30Bに水素を送る水素送出部40と、を備える。第2実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Bは、さらに二酸化炭素濃縮気体から水分を除去する水分除去部20を備える。分離部10と水分除去部20とは流路L2を介し、接続される。水分除去部20と反応部30Bとは流路L3を介し、接続される。反応部30Bと水素送出部40とは、流路L5を介し接続される。反応部30Bで生成された変換後気体は、流路L6を通り図示しない回収部に送られる。吸収後気体は、流路L4を通り排出される。以下、各部について説明する。
【0059】
(反応部)
図8に反応部30Bの概略図を示す。反応部30Bは、触媒32を有する、1以上の反応器31と、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を触媒32に吸収させた後の気体である吸収後気体を排出する吸収後気体排出口33Bと、変換後気体を送出する変換後気体送出口35Bと、水素送出部40、各反応器31、および二酸化炭素送出口16と直接または間接的に接続される第1ガス切換部37Bと、吸収後気体排出口33B、各反応器31、および変換後気体送出口35Bと直接または間接的に接続される第2ガス切換部39Bと、を備える。第2実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Bの反応部30Bは、第1反応器31Aと第2反応器31Bとを備える。
【0060】
第1ガス切換部37Bが第1反応器31Aと二酸化炭素送出口16とを接続したときは、第1ガス切換部37Bは、第2反応器31Bと二酸化炭素送出口16とに接続されていない状態で第2反応器31Bと水素送出部40とを接続し、第2ガス切換部39Bは、第1反応器31Aと吸収後気体排出口33Bとを接続するとともに、第2反応器31Bと吸収後気体排出口33Bとに接続されていない状態で第2反応器31Bと変換後気体送出口35Bとを接続する。このように接続し、第1反応器31Aに二酸化炭素濃縮気体を流し、第2反応器31Bに水素を流すことで、第1反応器31Aでは触媒32に二酸化炭素の吸収を行い、同時に第2反応器31Bでは二酸化炭素の変換反応を行うことができる。第1反応器31Aにおいて二酸化炭素を吸収させた後の吸収後気体は、吸収後気体排出口33Bを通り、流路L4から排出される。吸収後気体には、酸素などが含まれている。このように吸収後気体を排出することで、二酸化炭素以外の成分(例えば、酸素)を除くことができる。第2反応器31Bにおいて二酸化炭素の変換で得られた変換生成物を含有する変換後気体は、変換後気体送出口35Bを通り、流路L6から送出される。送出された変換後気体は、図示しない回収部に送られる。
【0061】
第1ガス切換部37Bが第2反応器31Bと二酸化炭素送出口16とを接続したときは、第1ガス切換部37Bは、第1反応器31Aと二酸化炭素送出口16とに接続されていない状態で第1反応器31Aと水素送出部40とを接続し、第2ガス切換部39Bは、第2反応器31Bと吸収後気体排出口33Bとを接続するとともに、第1反応器31Aと吸収後気体排出口33Bとに接続されていない状態で第1反応器31Aと変換後気体送出口35Bとを接続する。第1反応器31Aでは二酸化炭素の変換反応を行い、同時に第2反応器31Bでは二酸化炭素の触媒32への吸収を行うことができる。第2反応器31Bにおいて二酸化炭素を吸収させた後の吸収後気体は、吸収後気体排出口33Bを通り、流路L4から排出される。吸収後気体には、酸素などが含まれている。このように吸収後気体を排出することで、二酸化炭素以外の成分(例えば、酸素)を除くことができる。第1反応器31Aにおいて二酸化炭素の変換で得られた変換生成物を含有する変換後気体は、変換後気体送出口35Bを通り、流路L6から送出される。送出された変換後気体は、図示しない回収部に送られる。
【0062】
「反応器」
反応器31は、収納容器34と収納容器34内に触媒32を備える。第2実施形態では、反応器31の数は2つである。即ち、第2実施形態において、反応器31は第1反応器31Aおよび第2反応器31Bの2つとなるが、本発明はこれに限定されない。本発明では、2以上の反応器31を用いてもよい。第1反応器31Aは、流路L8Aを介し第1ガス切換部37Bと接続される。第1反応器31Aは、流路L9Aを介し、第2ガス切換部39と接続される。第2反応器31Bは、流路L8Bを介し第1ガス切換部37Bと接続される。第2反応器31Bは、流路L9Bを介し、第2ガス切換部39Bと接続される。第1ガス切換部37Bから流れてきた二酸化炭素濃縮気体は、第1反応器31Aまたは第2反応器31Bを通る際、触媒32に接触して、二酸化炭素が吸収される。二酸化炭素が触媒32に吸収された後、水素送出部40から送られた水素を用いて、二酸化炭素を変換して変換生成物を生成する。変換反応は、例えば、還元反応である。
【0063】
「第1ガス切換部」
第2実施形態に係る第1ガス切換部37Bは、流路L3を介し、二酸化炭素送出口16と接続される。第1ガス切換部37Bは、流路L5を介し、水素送出部40と接続される。第1ガス切換部37Bは、流路L8Aを介し、第1反応器31Aと接続される。第1ガス切換部37Bは、流路L8Bを介し、第2反応器31Bと接続される。第1ガス切換部37Bは、例えば、四方弁である。
【0064】
「第2ガス切換部」
第2実施形態に係る第2ガス切換部39Bは、流路L9Aを介し第1反応器31Aと接続される。第2ガス切換部39Bは、流路L9Bを介し第2反応器31Bと接続される。第2ガス切換部39Bは、吸収後気体排出口33Bおよび変換後気体送出口35Bを備える。吸収後気体排出口33Bは流路L4と接続される。変換後気体送出口35Bは、流路L6と接続される。第2ガス切換部39Bは、例えば、四方弁である。
【0065】
以上、第2実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Bを説明した。第2実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Bによれば、分離膜モジュール11の拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換することができる。また、二酸化炭素の吸収と変換反応とを同時に行うことができる。
【0066】
第2実施形態では、二酸化炭素分離・変換装置100は、水分除去部20を備えていたが、水分除去部20は無くてもよい。
【0067】
<二酸化炭素変換方法>
次に第2実施形態に係る二酸化炭素変換方法について説明する。第2実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Bを用いた例を説明するが、本実施形態に係る二酸化炭素変換方法は、下記の方法に限定されない。図9は、第2実施形態に係る二酸化炭素変換方法のフローチャートである。第2実施形態の二酸化炭素変換方法は、大気中から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素の濃度を上げることで、二酸化炭素濃縮気体を得る分離工程S1と、二酸化炭素濃縮気体から水分を除去する水分除去工程S2と、1つの反応器31中で触媒32に二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収し、同時に、別の反応器31中で、二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、二酸化炭素連続変換工程S3Bを有する。
【0068】
(二酸化炭素連続変換工程)
二酸化炭素連続変換工程S3Bでは、1つの反応器31(例えば、第1反応器31A)の触媒32に二酸化炭素を吸収させると同時に、別の反応器31(例えば、第2反応器31B)の触媒32上で、二酸化炭素と水素とから変換生成物を生成する。以下、第1反応器31Aと第2反応器31Bの例で説明する。第1反応器31Aの触媒32への二酸化炭素の吸収は、第1ガス切換部37Bが第1反応器31Aと二酸化炭素送出口16とを接続して二酸化炭素濃縮気体を流す。同時に第1ガス切換部37Bは、二酸化炭素濃縮気体が流れないように、二酸化炭素送出口16と第2反応器31Bとを接続しない状態で水素送出部40と第2反応器31Bとを接続し、水素を流す。これによって、第1反応器31Aでは、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素が触媒32と接触し、触媒32に吸収される。同時に第2反応器31Bでは、二酸化炭素と水素とから変換生成物が生成される。1つの水素の流路L5と1つの二酸化炭素濃縮気体の流路L3において、第1ガス切換部37Bおよび第2ガス切換部39Bで各流路の接続先の反応器31を変えることで、連続的に二酸化炭素の変換を行うことができる。なお、第1反応器31Aの触媒32に二酸化炭素が吸収された後の吸収後気体は、第1反応器31Aから流路L9Aを通り、吸収後気体排出口33Bから排出される。吸収後気体には、酸素などの不要な成分が含まれている。この吸収後気体を排出することで、酸素などの二酸化炭素以外の成分を除去する。吸収後気体排出口33Bから排出された後の吸収後気体は、流路L4を通り、例えば、大気中に排出される。変換生成物を含有する変換後気体は、第2反応器31Bから流路L9B、流路L6を通り、回収部に送られる。
【0069】
触媒32は、上記に記載したものを用いることができる。第1反応器31Aおよび第2反応器31Bの触媒32は同じであることが好ましい。例えば、二酸化炭素を変換し、メタンを生成する場合は、第1反応器31Aおよび第2反応器31Bの触媒32は、アルミナにNiナノ粒子とカルシウムとを担持させた触媒が好ましい。二酸化炭素を変換し、一酸化炭素を生成する場合は、第1反応器31Aおよび第2反応器31Bの触媒32は、アルミナにPtナノ粒子とナトリウムとを担持させた触媒が好ましい。
【0070】
二酸化炭素連続変換工程S3Bでは、第1反応器31Aおよび第2反応器31Bを加熱することが好ましい。加熱することで、二酸化炭素の吸着および変換反応を促進することができる。用いる触媒の種類、変換生成物の種類に応じて、第1反応器31Aおよび第2反応器31Bの温度は適宜設定することができる。第1反応器31Aおよび第2反応器31Bの温度を同じであることが好ましい。第1反応器31Aおよび第2反応器31Bの温度は、例えば、300℃~450℃に保持することが好ましい。
【0071】
以上、第2実施形態に係る二酸化炭素変換方法を説明した。第2実施形態に係る二酸化炭素変換方法によれば、分離膜モジュール11の拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換することができる。また、第2実施形態に係る二酸化炭素変換方法によれば、連続的に二酸化炭素の変換を行うことができる。
【0072】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る第3実施形態の二酸化炭素分離・変換装置100Cを、図10を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態および第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0073】
図10は、第3実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Cの概略図である。二酸化炭素分離・変換装置100Cは、二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素濃縮気体を得る、第1分離部10Aおよび第2分離部10Bと、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収および変換する触媒を備え、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を触媒に吸収させ、触媒に吸収させた二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、反応部30Bと、反応部30Bに水素を送る水素送出部40と、を備える。第3実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Cは、さらに二酸化炭素濃縮気体から水分を除去する水分除去部20を備える。第1分離部10Aと第2分離部10Bとは、流路L1を介し接続される。第2分離部10Bと水分除去部20とは流路L2を介し、接続される。水分除去部20と反応部30Bとは流路L3を介し、接続される。反応部30Bと水素送出部40とは、流路L5を介し接続される。反応部30Bで生成された変換後気体は、流路L6を通り図示しない回収部に送られる。吸収後気体は、流路L4を通り排出される。以下、各部について説明する。
【0074】
二酸化炭素分離・変換装置100Cにおいて、第1分離部10Aと第2分離部10Bとは、直列に接続される。ここで「直列に接続される」とは、一方の分離部10(例えば、第1分離部10A)から排出された二酸化炭素濃縮気体をもう1つの分離部10(例えば第2分離部10B)の分離膜モジュール11に投入できるように接続することをいう。第1分離部10Aと第2分離部10Bとを直列に接続することで、一度濃縮した二酸化炭素濃縮気体から二酸化炭素を分離するのでより二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素濃度を上げることができる。
【0075】
以上、第3実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Cを説明した。第3実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Cによれば、分離膜モジュール11の拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換することができる。また、二酸化炭素の吸収と変換反応とを同時に行うことができる。加えて、第1分離部10Aと第2分離部10Bとが直列で接続されているので、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素濃度をより高くすることができる。
【0076】
第3実施形態では、二酸化炭素分離・変換装置100Cは、第1分離部10Aと第2分離部10Bとが直列で接続されていたが、第1分離部10Aと第2分離部10Bとは並列で接続されていてもよい。ここで、「並列で接続される」とは、第1分離部10Aおよび第2分離部10Bにおいて、二酸化炭素分離前の気体が同じであり、かつ、第1分離部10Aと第2分離部10Bそれぞれにおいて分離した後二酸化炭素濃縮気体が1つに合流するように接続することを言う。並列に接続することで、1度に分離処理できる気体の量を増やすことができる。
【0077】
<第4実施形態>
次に、本発明に係る第4実施形態の二酸化炭素分離・変換装置100Dを、図11を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0078】
図11は、第4実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Dの概略図である。二酸化炭素分離・変換装置100Dは、二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素濃縮気体を得る、1以上の分離部10と、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収および変換する触媒を備え、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を触媒に吸収させ、触媒に吸収させた二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、反応部30Bと、反応部30Bに水素を送る水素送出部40と、を備える。第4実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Dは、さらに二酸化炭素濃縮気体から水分を除去する水分除去部20と、各分離膜モジュール11に二酸化炭素を含有する気体を送る送風部50を備える。分離部10と水分除去部20とは流路L2を介し、接続される。水分除去部20と反応部30Bとは流路L3を介し、接続される。反応部30Bと水素送出部40とは、流路L5を介し接続される。反応部30Bで生成された変換後気体は、流路L6を通り図示しない回収部に送られる。吸収後気体は、流路L4を通り排出される。以下、各部について説明する。
【0079】
分離部10で二酸化炭素を含有する気体(例えば大気)から二酸化炭素を分離すると、分離膜2周辺の二酸化炭素を含有する気体中の二酸化炭素の濃度が低下する。そのため、分離部10で二酸化炭素を含有する気体(例えば大気)から二酸化炭素を分離し続けた場合、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素の濃度の増加が抑制される。送風部50は、分離膜モジュール11に、二酸化炭素を含有する気体(例えば大気)を送ることで、分離膜2周辺の二酸化炭素の濃度を一定に保つことができる。これによって、分離部10で二酸化炭素を分離して得られた二酸化炭素濃縮気体の濃度をさらに高めることができる。
【0080】
以上、第4実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Dを説明した。第4実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Dによれば、分離膜モジュール11の拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換することができる。また、二酸化炭素の吸収と変換反応とを同時に行うことができる。加えて、送風部50によって、二酸化炭素を含有する気体(例えば大気)を送ることで、分離膜2周辺の二酸化炭素の濃度を一定に保つことができる。これによって、分離部10で二酸化炭素を分離して得られた二酸化炭素濃縮気体の濃度をさらに高めることができる。
【0081】
<第5実施形態>
次に、本発明に係る第5実施形態の二酸化炭素分離・変換装置100Eを、図12を参照して説明する。なお、この第5実施形態においては、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態および第4実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0082】
図12は、第5実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Eの概略図である。二酸化炭素分離・変換装置100Eは、二酸化炭素を含有する気体から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素濃縮気体を得る、1以上の分離部10と、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を吸収および変換する触媒を備え、二酸化炭素濃縮気体中の二酸化炭素を触媒に吸収させ、触媒に吸収させた二酸化炭素と水素とから変換生成物を含有する変換後気体を得る、反応部30Bと、反応部30Bに水素を送る水素送出部40と、を備える。第5実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Eは、さらに二酸化炭素濃縮気体から水分を除去する水分除去部20と、変換後気体を再度、各分離部10に投入する再投入部60を備える。分離部10と水分除去部20とは流路L2を介し、接続される。水分除去部20と反応部30Bとは流路L3を介し、接続される。反応部30Bと水素送出部40とは、流路L5を介し接続される。反応部30Bで生成された変換後気体は、流路L6Eを通り再投入部60に送られる。再投入部60は、流路L10を介し、変換後気体を分離部10の分離膜モジュール11に再度投入する。吸収後気体は、流路L4を通り排出される。以下、各部について説明する。
【0083】
再投入部60は、変換後気体を分離部10の分離膜モジュール11に再度投入する。再投入部60は、反応部30Bの変換後気体送出口35Bと流路L6Eを介し接続される。流路L6Eを介し、送られた変換後気体を再投入部60は、流路L10を介し、分離膜モジュール11に再度投入する。変換後気体中にある未反応の二酸化炭素についても二酸化炭素の変換反応に用いることができる。そのため、変換生成物の収率を上げることができる。
【0084】
以上、第5実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Eを説明した。第5実施形態に係る二酸化炭素分離・変換装置100Eによれば、分離膜モジュール11の拡張性に優れ、酸素を含有した場合であっても、二酸化炭素を変換することができる。また、二酸化炭素の吸収と変換反応とを同時に行うことができる。加えて、再投入部60によって、変換後気体を分離膜モジュール11に再度投入することで、変換生成物の収率をさらに向上することができる。
【0085】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した要素を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0086】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0087】
(触媒の製造1)
触媒は、湿式含侵法を用いて製造した。水酸化アルミニウムを900℃3時間で焼成してAlを得た。次に、適切な量の硝酸ナトリウム水溶液をAlに含侵させ懸濁液を得た。室温で懸濁液を3時間攪拌した後、減圧条件で50℃真空中で懸濁液を蒸発させ、100℃で一晩乾燥した。得られた固形物を600℃で2時間加熱し、ナトリウムを担持したNa-Alを得た。次に、硝酸ナトリウムの場合と同様の方法で(NHPt(NOをNa-Alに含侵させ、乾燥および焼成した。得られた固形物を350℃で水素処理し、白金を担持したPt/Na-Alを得た。Ptは、ナノ粒子の状態で担持され、走査型透過電子顕微鏡(STEM)で確認された粒径は1~2nmであった。触媒の全質量に対するPtの含有量は、1wt%であり、Caの含有量は10wt%であった。
【0088】
(触媒の製造2)
触媒は、湿式含侵法を用いて製造した。水酸化アルミニウムを900℃3時間で焼成してAlを得た。次に、適切な量の硝酸カルシウム水溶液をAlに含侵させ懸濁液を得た。室温で懸濁液を3時間攪拌した後、50℃真空中で懸濁液を蒸発させ、100℃で一晩乾燥した。得られた固形物を600℃で2時間加熱し、カルシウムを担持したCa-Alを得た。次に、硝酸カルシウム水溶液の場合と同様の方法でCa-AlをCa-Alに含侵させ、乾燥および焼成を行った。得られた固形物を350℃で水素処理し、Niを担持したNi/Ca-Alを得た。Niは、ナノ粒子の状態で担持され、走査型透過電子顕微鏡(STEM)で確認された粒径は1~2nmであった。触媒の全質量に対するNiの含有量は、10wt%であり、Caの含有量は30wt%であった。
【0089】
(分離膜モジュールの二酸化炭素濃縮性)
分離膜としてポリジメチルシロキサン系高分子膜(厚さ:約150nm)を用いた。平板状の容器に設けられた円状の開口部(直径約5cm)に分離膜を配置して開口部の周囲に沿って分離膜をテープで固定して、分離膜モジュールを作製した。この分離膜モジュールを10個並列に並べて分離膜モジュール接続部に接続した。分離膜モジュール接続部の二酸化炭素送出口とダイアフラムポンプ(圧力差形成部)と二酸化炭素濃度測定用の容器とを接続し、分離膜モジュールおよび分離膜モジュール接続部の内部を減圧して、ポンプ開始から測定用の容器を開けるまで二酸化炭素濃度、相対湿度および温度を測定した。二酸化炭素濃度、湿度、及び温度は、測定用の容器内に配置した。
【0090】
得られた結果を図13に示す。横軸は、時間(min)を示し、第1縦軸は二酸化炭素濃度(ppm)、第2縦軸は相対湿度(%)、第3縦軸は温度(℃)を示す。時間経過とともに、二酸化炭素濃度と相対湿度が増加することが確認された。また、相対湿度が上がると、濃縮水分による二酸化炭素の濃度の低下が確認された。
【0091】
(水分除去を行った場合の分離膜モジュールの二酸化炭素濃縮性)
次に、分離膜モジュールの二酸化炭素濃縮性を評価した装置において、測定用容器とダイアフラムポンプの出側との間に、水分トラップ(水分除去部)を接続し、同様の二酸化炭素の濃縮性評価測定を行った。得られた結果を図14に示す。横軸は、時間(min)を示し、第1縦軸は二酸化炭素濃度(ppm)、第2縦軸は相対湿度(%)、第3縦軸は温度(℃)を示す。時間経過とともに、二酸化炭素濃度が増加することが確認された。また、水分トラップがあることで相対湿度は上昇せず、二酸化炭素の濃度は安定して増加した。以上の結果より、水分トラップを設けることで、安定した二酸化炭素濃縮ができることが確認された。
【0092】
(二酸化炭素濃縮性への送風の影響)
分離部を多段で連携すれば、より多くの回収が期待されるが、分離膜のガス透過量が高い場合、分離膜モジュールへの気体の供給も重要となる。そこで、分離膜モジュールの二酸化炭素濃縮性を評価した装置において、送風システム(送風部)で分離膜モジュールに気体を送った場合の二酸化炭素濃縮性を評価した。得られた結果を図15に示す。横軸は、時間(min)を示し、第1縦軸は二酸化炭素濃度(ppm)、第2縦軸は相対湿度(%)、第3縦軸は温度(℃)を示す。送風システム作動までは、上記と同様に二酸化炭素濃度は1000ppm近傍で、濃縮後の二酸化炭素(分離膜透過後の二酸化炭素濃度)の濃度上昇が緩やかになった。送風システムを作動させると、濃縮後の二酸化炭素濃度の更なる上昇がみられ、約30%に近い濃縮効果が得られた。
【0093】
図8の反応部を用いて二酸化炭素の変換(還元)評価を行った。反応器としては、固定床流通式反応器を2つ用い、同一組成の固体(ペレット状の触媒)を用いた。二酸化炭素の触媒への吸収(炭酸塩生成)と、吸収された二酸化炭素に水素を流し、変換生成物の生成とを同一温度、同一タイプの反応器によって、交互に行った。図8のように並列させた2つの固定床流通式反応器(第1反応器および第2反応器)に同一組成の固体(ペレット状の触媒)を入れ、片方の反応器にCO/空気(二酸化炭素を含む気体)、もう片方の反応器に水素を流通させ、装置の上流と下流に設置した四方弁を周期的に切り替えることで連続的にCO吸収(O除去)と変換生成物の生成(CO吸収能の回復)が可能である。
【0094】
一酸化炭素(CO)、メタン(CH)作り分けは適切な触媒選択することで行った。ガス分析には、赤外分光装置と質量分析器を用い、図7の二酸化炭素分離・変換装置の還元性能を評価した。圧力差形成部14にダイアフラムポンプ、冷却部に冷却式水トラップとモレキュラーシーブを用いた。分離部として、上記の分離膜モジュールの二酸化炭素濃縮性で評価したものを用いた。
【0095】
(メタン製造性)
触媒にはγアルミナにNiナノ粒子(10wt%)とカルシウム(30wt%)を担持させた触媒(0.5g)を用いた(Ni/Ca-Al)。反応器の温度は450℃、濃縮CO/空気と水素のガス切り替え間隔は30秒とし、メタン製造性を評価した。二酸化炭素濃縮気体(濃縮CO/空気)(流速は約100mL/min)と水素(流速は100mL/min)とを反応部に流してメタン製造性を評価した。得られた結果を図16に示す。図16(a)は、吸収後気体(CO吸収)側のガス濃度の時間変化を示す。図16(a)の横軸は時間(h)、縦軸は濃度(ppm)を示す。図16(b)は、変換後気体(メタン生成)側の結果を示す。図16(b)の横軸は時間(h)、縦軸は濃度(ppm)を示す。図16に示すように二酸化炭素分離・変換装置連続的なCO吸収・メタン製造を達成した。
【0096】
(一酸化炭素製造性)
触媒にはγアルミナにPtナノ粒子(1wt%)とナトリウム(10wt%)を担持させた触媒(0.3g)を用いた(Pt/Na-Al)。反応器の温度は300℃、濃縮CO/空気と水素のガス切り替え間隔は60秒とした。二酸化炭素濃縮気体(濃縮CO/空気)(流速は約100mL/min)と水素(流速は100mL/min)とを反応部に流して一酸化炭素製造性を評価した。得られた結果を図17に示す。図17(a)は、吸収後気体(CO吸収)側のガス濃度の時間変化を示す。図17(a)の横軸は時間(h)、縦軸は濃度(ppm)を示す。図17(b)は、変換後気体(一酸化炭素生成)側の結果を示す。図17(b)の横軸は時間(h)、縦軸は濃度(ppm)を示す。図17に示すように二酸化炭素分離・変換装置によって、連続的なCO吸収・一酸化炭素製造を達成した。
【符号の説明】
【0097】
1 容器、2 分離膜、10 分離部、11 分離膜モジュール、13 分離膜モジュール接続部、14 圧力差形成部、16 二酸化炭素送出口、20 水分除去部、30 反応部、31 反応器、32 触媒、33 吸収後気体排出口、35 変換後気体送出口、40 水素送出部、50 送風部、60 再投入部、100 二酸化炭素分離・変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17