(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141521
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】チルド麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/113 20160101AFI20230928BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20230928BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20230928BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20230928BHJP
【FI】
A23L7/113
A23L7/109 A
A23L7/109 C
A23L7/109 E
A23L35/00
A23L29/281
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047880
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】酒井 裕之
【テーマコード(参考)】
4B036
4B041
4B046
【Fターム(参考)】
4B036LC04
4B036LE05
4B036LF03
4B036LF19
4B036LH15
4B036LP12
4B036LP17
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LE08
4B041LH13
4B041LK17
4B041LP09
4B046LA06
4B046LB04
4B046LB09
4B046LC01
4B046LC11
4B046LE19
4B046LG11
4B046LG20
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP56
4B046LP71
(57)【要約】
【課題】電子レンジで再加熱することにより、茹でたてのような食感を有し、茹で立てのようなみずみずしい外観を有し、更にソースの絡みが良好な麺類を得ることができる容器入りチルド麺類を提供する。
【解決手段】下記工程(1)~(3)
工程(1):水分とゲル化剤とを含み、室温下で流動性を有さない非流動状水分を準備する工程、
工程(2):半α化麺類を準備し、これに油脂を付着させる工程、
工程(3):前記油脂を付着させた半α化麺類を容器に収容し、前記半α化麺類の上に前記非流動状水分を載置する工程であって、前記非流動状水分由来の水分量が、半α化麺100質量部に対して6質量部以上である工程、
を含む、容器入りチルド麺類の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)~(3)
工程(1):水分とゲル化剤とを含み、室温下で流動性を有さない非流動状水分を準備する工程、
工程(2):半α化麺類を準備し、これに油脂を付着させる工程、
工程(3):前記油脂を付着させた半α化麺類を容器に収容し、前記半α化麺類の上に前記非流動状水分を載置する工程であって、前記非流動状水分由来の水分量が、前記半α化麺類100質量部に対して6質量部以上である工程、
を含む、容器入りチルド麺類の製造方法。
【請求項2】
工程(2)において、半α化麺類に付着させた油脂の量が、半α化麺類100質量部に対して0.5~6質量部である、請求項1記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
【請求項3】
工程(2)の半α化麺類を準備する工程が、工程(2’):未α化麺類を準備し、これを加熱調理して半α化麺類を得る工程であって、前記半α化麺類の水分値が、当該麺類の喫食至適水分値の70~97%である工程、
を更に含む、請求項1または2記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
【請求項4】
工程(3)における前記非流動状水分による半α化麺類の麺塊の被覆率が、前記半α化麺類の麺塊の上面面積に対して20%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
【請求項5】
工程(3)において、非流動状水分を、容器本体に収容された半α化麺類の麺塊の上面視略中心を基点に載置する、請求項1~4のいずれか1項に記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
【請求項6】
工程(4):ソースを収容するための中皿を容器本体に載置する工程、
を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法で製造された容器入りチルド麺類を電子レンジ加熱する工程を含む、容器入りチルド麺類の調理方法。
【請求項8】
容器内に、油脂が付着した半α化麺類が収容されており、油脂が付着した前記半α化麺類の上に、水分とゲル化剤とを含み、室温下で流動性を有さない非流動状水分が載置されており、前記非流動状水分由来の水分量が、半α化麺類100質量部に対して6質量部以上である、容器入りチルド麺類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルド麺類の製造方法、特に、加熱調理可能な容器に麺類がセットされている容器入りチルド麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器入りチルド麺類とは、未加熱の生麺や乾燥麺あるいは半乾燥麺を加熱調理してα化し、冷水または冷風などにより冷却し、得られたα化麺類をソースや具材などと共に容器に収容し、冷蔵状態で保管するもののことである。このような容器入りチルド麺は、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどのチルドコーナーに陳列され、家庭等に持ち帰ってレンジ加熱のみで喫食可能な状態にできることから、人気のある簡便食品の一つである。
一般に、茹で立ての麺類は、麺外部が柔らかく、麺内部が弾力のある内外に食感差のあることが良いとされている。しかしながら、このような食感は、時間の経過と共に麺類全体に水分が行き渡り、麺類内外の水分勾配が失われ、茹で伸び状態になってしまう。また特にチルド麺類においては、チルド輸送やチルド陳列といったチルド温度帯に暴露されると、麺類に含まれている澱粉の老化が引き起こされ、ボソついた食感になりがちである。更には、チルド温度帯における保管と電子レンジ加熱により麺表面から水分が飛散するため、麺類の外見におけるみずみずしさが失われ、調理の際ソースとの一体感が損なわれ易いという問題がある。特に、ソースを別梱包としてソースを予め絡めずに提供されるチルド麺類では、消費者においてチルド麺類を加熱調理する際にソースが絡みやすいことは重要である。
このような問題を解決するために従来から種々検討されている。
特許文献1には、加熱調理した麺類の冷却方法として、40℃以上の溶液を付着させること、該溶液が付着した麺類を、気流により品温0~20℃まで冷却すること、および該冷却した麺類を冷蔵または冷凍することを含む方法により、冷蔵または冷凍保存後に再加熱しても、茹でたての麺のような外観と食感を有する調理済麺類を得られることが記載されている。
特許文献2には、乾燥パスタ又は乾麺を湿熱又は乾熱加熱して表層部をα化し、湿熱加熱の場合パスタ又は麺線表面を乾燥させた後、パスタ又は麺を水と共に密封容器に充填してシールし、次いで再度加熱する各工程から成る簡易調理パスタ又は麺の製造方法が開示されており、電子レンジ加熱により簡易的に調理でき、アルデンテ状態の茹でたてに近い麺が製造できることが記載されている。
特許文献3には、水分含量40~60%の半生パスタ又は半生麺をマイクロ波加熱して、茹で上げパスタ又は麺を調理する方法において加熱時に水(食用固化剤により固形化されていてもよい)を共存させる調理方法が開示されており、乾燥パスタを直接茹で上げたと同様の優れた食感をもつ調理済みパスタを製造できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-163545号公報
【特許文献2】特開平11-000124号公報
【特許文献3】特開平10-295302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来法によっても、チルド輸送やチルド陳列といったチルド温度帯に暴露されたときの、澱粉の老化に起因するボソついた食感の問題や、チルド温度帯における保管と電子レンジの加熱により麺類表面から水分が飛散して麺類の外観におけるみずみずしさが失われる問題、更にチルド麺類をソースと併せて加熱調理する際にソースとの一体感が損なわれるというチルド麺類特有の問題は、依然として解決されていない。
よって、本発明の課題は、電子レンジで再加熱することにより、茹でたてのような食感を有し、茹で立てのようなみずみずしい外観を有し、更にソースの絡みが良好な麺類を得ることができる容器入りチルド麺類を提供することである。特に、ソースを別梱包とするなどソースを予め絡めずに提供されるチルド麺類においても、消費者においてチルド麺類を電子レンジで加熱調理する際にソースが絡みやすいという利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、チルド麺類について種々検討した結果、半α化麺類に油脂類を付着させ、更に、前記油脂付着半α化麺類の上にゲル化剤により非流動化した所定量の水分を載置した、容器入りチルド麺類により、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下を提供する。
〔1〕下記工程(1)~(3)
工程(1):水分とゲル化剤とを含み、室温下で流動性を有さない非流動状水分を準備する工程、
工程(2):半α化麺類を準備し、これに油脂を付着させる工程、
工程(3):前記油脂を付着させた半α化麺類を容器に収容し、前記半α化麺類の上に前記非流動状水分を載置する工程であって、前記非流動状水分由来の水分量が、前記半α化麺類100質量部に対して6質量部以上である工程、
を含む、容器入りチルド麺類の製造方法。
〔2〕工程(2)において、半α化麺類に付着させた油脂の量が、半α化麺類100質量部に対して0.5~6質量部である、前記〔1〕記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
〔3〕工程(2)の半α化麺類を準備する工程が、工程(2’):未α化麺類を準備し、これを加熱調理して半α化麺類を得る工程であって、前記半α化麺類の水分値が、当該麺類の喫食至適水分値の70~97%である工程、
を更に含む、前記〔1〕または〔2〕記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
〔4〕工程(3)における前記非流動状水分による半α化麺類の麺塊の被覆率が、前記半α化麺類の麺塊の上面面積に対して20%以上である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
〔5〕工程(3)において、非流動状水分を、容器本体に収容された半α化麺類の麺塊の上面視略中心を基点に載置する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1に記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
〔6〕工程(4):ソースを収容するための中皿を容器本体に載置する工程、
を更に含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1に記載の容器入りチルド麺類の製造方法。
〔7〕前記〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の方法で製造された容器入りチルド麺類を電子レンジ加熱する工程を含む、容器入りチルド麺類の調理方法。
〔8〕容器内に、油脂が付着した半α化麺類が収容されており、油脂が付着した前記半α化麺類の上に、水分とゲル化剤とを含み、室温下で流動性を有さない非流動状水分が載置されており、前記非流動状水分由来の水分量が、半α化麺類100質量部に対して6質量部以上である、容器入りチルド麺類。
【発明の効果】
【0006】
本発明の容器入りチルド麺類の製造方法によれば、電子レンジで再加熱することにより、茹で立てのような食感を有し、茹で立てのようなみずみずしい外観を有し、更に、ソース絡みが良好な麺類を得ることができる容器入りチルド麺類を提供することができる。
また、本発明の容器入りチルド麺類により、消費者が、電子レンジ加熱する前に水などを別途加える必要がなく、簡便に茹で立てのような食感や外観を有し、ソースの絡みが良好な麺類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<<容器入りチルド麺類を製造する方法>>
本発明の第一の態様は、下記工程(1)~(3)
工程(1):水分とゲル化剤とを含み、室温下で流動性を有さない非流動状水分を準備する工程
工程(2):半α化麺類を準備し、これに油脂を付着させる工程
工程(3):前記油脂を付着させた半α化麺類を容器に収容し、前記半α化麺類の上に前記非流動状水分を載置する工程であって、前記非流動状水分由来の水分量が、前記半α化麺類100質量部に対して6質量部以上である工程、
を含む、容器入りチルド麺類の製造方法、である。
【0008】
本発明における「チルド麺類」とは、チルド温度帯(-5~10℃)で保存する必要がある麺類全般を指す。冷凍麺や常温帯(15~25℃)で保存できる麺類は含まれない。後述するとおり、本発明におけるチルド麺類は、半α化された麺類である。
本発明における「容器入りチルド麺類」の「容器」とは、本体に半α化麺類と非流動状の水分とを収容できる容器を意味する。好ましくは蓋付き容器であり、更に好ましくはソース等を収容する中皿を具備する。
本発明において容器の材質についても特に制限はなく、電子レンジ加熱調理可能な材質であればよく、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリスチレン、ポリサルホン等の樹脂素材であると軽量かつ再利用性が高いため好ましい。発泡ポリプロピレンや発泡ポリエチレンであれば遮熱性が高いため、電子レンジ加熱直後の容器を安全に取り出すことができる。
容器本体の形状は特に制限がなく、カップ状、どんぶり状、皿状、深皿状など、容器本体に収容する麺類の種別やソースの種別あるいは消費者のニーズに合わせて適宜選択すればよい。任意に含まれていてもよい中皿の形状は、容器本体の開口部上縁へ内嵌合ないしは外嵌合により載置できる構成となっていれば特に制限はないが、容器本体に収容した麺類となるだけ接触しないように浅底タイプの中皿であることが好ましい。また、中皿に収容されたソースを容器本体に収容された麺塊に掛ける操作が容易になるように、中皿の外縁に取っ手状の把持部が付属されていることが好ましい。更には、電子レンジ加熱調理する観点から、麺類と非流動状水分とが収容された容器本体内で発生した蒸気を逃すために、中皿に蒸気抜穴が設けられていてもよい。任意に含まれていてもよい蓋の形状は特に制限されるものではないが、輸送時の振動や転倒した際にソースや麺類が漏れ出ないようにするために、内嵌合ないしは外嵌合により容器本体と中皿とが一体となるような形状であればよい。また、電子レンジ加熱調理する観点から、容器内で発生した蒸気を逃すために、蓋に蒸気抜穴が設けられていてもよい。そのような容器としては、株式会社エフピコ製のDLV麺、DLV麺丼MFP、MFPドリスカップ、リスパック株式会社のHD丼170B RBS、HD丼185BZ、丸カップ等が挙げられる。
【0009】
<工程(1)>
本発明の容器入りチルド麺類の製造方法は、「水分とゲル化剤とを含み、室温下で流動性を有さない非流動状水分を準備する工程」(工程(1))を含む。
非流動状水分とは、流動性を有さない水分であり、「非流動状」であるか否かは、室温(1~30℃)においてゲルであるか否かを目視で確認することにより判断する。なお、ゲルとは、液体分散媒のコロイドに分類される分散系のうち固体状のものを指し、本発明における非流動状水分は分散媒が水、分散質がゲル化剤の物理ゲルである。
非流動状水分を準備するために使用する水分は特に制限されるものではなく、飲食に適する水分であれば何れも適用することができる。そのような水分としては、ミネラルウォーター、水道水等の飲用水;昆布出汁、鰹出汁、椎茸出汁、豆乳等の煮汁;オレンジジュース、リンゴジュース等の搾り汁;塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩の水溶液;クエン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、イノシン酸等の有機酸及びその塩の水溶液;ショ糖、果糖、麦芽糖等の糖類の水溶液などが挙げられる。前記無機塩類の水溶液を用いる場合、マイクロ波の吸収がより良くなるため、速やかに温度上昇が起こって水蒸気の発生が促進され、効率的に半α化麺類を加熱することができる。また、塩化ナトリウムの水溶液や糖類の水溶液、有機酸の水溶液あるいは煮汁や搾り汁を用いる場合、半α化麺類を調味することができる。これらのような観点から、上記水分を組合わせて用いてもよい。なお、煮汁や搾り汁を用いる場合には、遠心分離や濾過などの固液分離方法により水不溶性成分を除去することが好ましい。麺類及びソースが有している食味をそのまま活かす観点から、飲用水を用いてもよい。
【0010】
非流動状水分を準備するために使用するゲル化剤は特に制限されるものではなく、前記水分を非流動化する作用(液体をゼリー状に固める作用)を有する範囲において、通常飲食品の製造に用いられ、加熱により溶解し、冷却によりゲル化するゲル化剤であれば何れも好適に使用することができる。そのようなゲル化剤としてはゼラチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガムとローカストビーンガムとの組合せ、ジェランガム、カードラン等が挙げられる。好ましくはゼラチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガムとローカストビーンガムとの組合せであり、より好ましくはゼラチンである。なお、ゲル化剤は、その種別によってゲル化能が異なるため、室温又はチルド帯での流通ないしは陳列条件下において水分をゲル化(非流動化)できるようにゲル化剤の種別によってその使用量を適宜調節すればよい。ゼラチンであれば、非流動状水分を得るために使用する水分100質量部に対して0.5~4質量部であることが好ましく、寒天であれば0.1~1.5質量部であることが好ましく、カラギーナンであれば0.2~1.5質量部であることが好ましい。なお、容器入りチルド麺類の製造における作業者の作業環境並びに容器入りチルド麺類のチルド温度帯での保存を勘案すると、25℃以下でゲル化できるようにゲル化剤の種別に応じてその使用量を調節することが好ましく、20℃以下でゲル化できるように調節することがより好ましく、15℃以下でゲル化できるように調節することが更に好ましく、10℃以下でゲル化できるように調節することがより更に好ましい。
【0011】
<工程(2)>
本発明の容器入りチルド麺類の製造方法は、「半α化麺類を準備し、これに油脂を付着させる工程」(工程(2))を含む。
本明細書において半α化麺類とは、未α化麺類(乾麺、半乾麺ないしは生麺)を茹で処理や蒸し処理等の公知の方法により加熱調理し、麺類に含まれる澱粉の一部がα化されたものである。なお、前記半α化麺類の加熱調理の程度は、当該半α化麺類の水分値あるいは当該半α化麺類に含まれる澱粉質のα化度で評価することができるが、本発明においては水分値で評価する。すなわち、半α化麺類か否かは加熱調理(茹で調理)して水切りをした直後の水分値で評価する。
本発明において、前記半α化麺類の上記水分値(質量%)は、当該麺類の喫食至適水分値(質量%)の70~97%であることが好ましい。より好ましくは74~95%であり、更に好ましくは78~93%であり、更により好ましくは85~91%である。
ここで、麺類の「喫食至適水分値」とは、当該未α化の麺類を茹で処理や蒸し処理等の加熱処理(α化処理)することにより、当該麺類がα化されて弾力やつるみ等の食感が喫食に適するようになった状態における当該α化された麺類の水分含量(質量%)のことである。例えば、未α化乾燥スパゲッティーをα化処理した際の喫食至適水分値は、麺類の質量に対して60~64質量%であり、未α化乾燥ペンネであれば61~65質量%であり、未α化生中華麺であれば59~63質量%であり、未α化生うどんであれば68~72質量%であり、未α化乾燥きし麺であれば68~72質量%である。本発明において、喫食至適水分値はそれらの中央値を取り、未α化乾燥スパゲッティーでは62質量%、未α化乾燥ペンネでは63質量%、未α化生中華麺では61質量%であり、未α化生うどんでは70質量%、未α化乾燥きし麺では70質量%とする。
工程(2)の「半α化麺類を準備」する工程は、「未α化麺類を準備し、これを加熱調理して半α化麺類を得る工程であって、前記半α化麺類の水分値が、当該麺類の喫食至適水分値の70~97質量%である工程」(工程(2’))を更に含むものであってもよい。
【0012】
前記未α化麺類は特に限定されるものではなく、製麺原料を混捏した生地を麺線に成形し、そのままないしは乾燥処理した未加熱(未α化)の麺類であれば何れも適用することができる。そのような麺類としては、スパゲッティー等のロングパスタ、ペンネ等のショートパスタ、中華麺、うどん、きし麺、冷や麦、素麺などの生麺、それら生麺を半乾燥ないしは乾燥させた半乾燥麺類ないしは乾燥麺類等の公知の未α化麺類等が挙げられる。未α化麺類として好ましくは乾燥パスタ、生中華麺、生うどんであり、より好ましくは乾燥パスタであり、更に好ましくは乾燥ロングパスタである。
【0013】
本発明において、半α化麺に付着させる油脂は特に制限されるものではなく、食用に供される油脂であれば何れも適用することができ、常温固体油脂、常温液体油脂、加工油脂、油脂加工食品等が挙げられる。
【0014】
常温固体油脂とは、油糧原料から分離精製された常温で固体である油脂をいい、具体的には、20℃で24時間静置した際に固体である油脂(流動性を有さない油脂)をいう。常温固体油脂は、一般に不飽和脂肪酸よりも飽和脂肪酸のグリセリンエステルを多く含有する。常温固体油脂の具体例としては例えば、牛脂、豚脂等の動物脂、パーム油、パーム核油等の植物脂が挙げられる。
【0015】
常温液体油脂とは、油糧原料から分離精製された常温で液体である油脂をいい、具体的には、20℃で24時間静置した際に液体である油脂(流動性を有する油脂)をいう。常温液体油脂は、一般に飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸のグリセリンエステルないしは長鎖よりも短鎖脂肪酸のグリセリンエステルを多く含有する。常温液体油脂の具体例としては例えば、大豆油、菜種油、コーン油、サラダ油等の植物油、魚油、肝油等の動物油が挙げられる。
【0016】
加工油脂とは、動物性油脂、植物性油脂又はこれらの混合油脂に水素添加、分別又はエステル交換を行って融点を調整し、又は酸化安定性を付与した油脂であって、かつ任意に食用に適するように精製(脱酸、脱色、脱臭等)した油脂をいう。具体的には例えば、大豆油、パーム油、菜種油、綿実油、米糠油、サフラワー油、ピーナッツ油、ごま油、アマニ油、オリーブ油、コーン油等の植物性油脂や牛脂、豚脂、魚油等の動物性油脂を水素添加によって融点を上昇させ安定化させた硬化油、原料油脂を高融点油脂と低融点油脂に分別して得られる分別油脂、油脂の脂肪酸基を分子内又は分子間で交換し改質させたエステル交換油等が挙げられる。
【0017】
油脂加工食品とは、コーン油、大豆油、パーム油、菜種油、綿実油、牛脂、魚油、それらの加工油脂等の食用油脂に水、食塩、乳成分、ビタミン、乳化剤等を加えて混合乳化し練り合わせたものである。油脂加工食品としては、バター、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド等が挙げられる。半α化麺類に付着させる油脂として使用する観点から、油脂加工食品は、油脂含有量が80質量%以上であることが好ましい。なお、油脂加工食品を用いる場合、半α化麺類に付着させる油脂の量としては、油脂以外の成分を除いた油脂の質量とする。
【0018】
半α化麺類に油脂を付着させる方法は特に制限されるものではなく、公知の方法であれば何れも適用することができる。そのような方法としては、半α化麺類塊に油脂を滴下しながらトングや菜箸等を用いてまぶす方法、半α化麺類に油脂を吹き付ける方法、油脂を入れた容器に半α化麺類を投入してトングや菜箸等を用いて混合する方法、半α化麺類と油脂とを容器に投入し、容器を回転させて混合する方法などが挙げられる。この際、半α化麺類の表面が満遍なく油脂で被覆されるようにすることが好ましい。
【0019】
本発明において、半α化麺類に付着させる油脂の量は、半α化麺類の一部又は全体を油脂で被覆できる量であれば特に制限はない。好ましくは半α化麺類の全体を被覆できる量の油脂を用いるのが良い。そのような油脂の量としては、半α化麺類100質量部に対して0.5~6質量部であり、好ましくは0.7~5.5質量部であり、より好ましくは1.5~4.5質量部であり、更に好ましくは2~4質量部である。この範囲内であれば、本発明の容器入りチルド麺類を電子レンジ再加熱した際に、非流動状水分と共に作用して、茹で立てのような食感と外観を有し、ソース絡みが良好な麺類を得ることができる。よって、ソースを別梱包とするなどソースを予め絡めずに提供するチルド麺類においても、チルド麺類を加熱調理する際にソースが絡みやすく、簡便に美味しい麺類を提供することができる。なお、半α化麺類に油脂を付着させるに当たり、常温液体油脂はそのまま用いることができ、常温固体油脂は加温して液状にして用いることができる。
【0020】
<工程(3)>
本発明の容器入りチルド麺類の製造方法は、「前記油脂を付着させた半α化麺類を容器に収容し、その上に前記非流動状水分を載置する工程であって、前記非流動状水分由来の水分量が、半α化麺類100質量部に対して6質量部以上である工程」(工程(3))を含む。
上記油脂を付着させた半α化麺類を容器本体に収容する。
油脂を付着させた半α化麺類を容器本体に収容する方法は特に制限されるものではなく、公知の方法であれば何れも適用することができる。計量容器用いて半α化麺類を計量した後に容器本体へ投入する方法、シュートを用いて容器本体に投入する方法、トングなどを用いて計量しながら盛付ける方法などが挙げられる。
【0021】
前記非流動状水分を容器本体に収容された半α化麺類の上に載置する。
非流動状水分を載置する方法は特に制限されるものではなく、ディスペンサーを用いて所定量を容器本体に収容された麺塊上に載置ないしは投入する方法、計量機能を備えるカップ容器やレードル(お玉杓子)等を用いて容器本体に収容された麺塊上ないしは麺塊が収容されていない容器本体に載置ないしは投入する方法などが挙げられる。収容された非流動状水分はそのままの状態でもよいが、ヘラ等を用いて略水平になるように均してもよく、トングや菜箸等を用いて麺塊中に分散させてもよい。
本発明において、容器本体に収容する非流動状水分の量は、半α化麺類100質量部に対し水分として6質量部以上(非流動状水分からゲル化剤、塩類や糖類等の水溶性成分の質量を除いた質量)であり、好ましくは8質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上であり、更に好ましくは20質量部以上であり、より更に好ましくは23質量部以上である。容器本体に収容する非流動状水分の量の上限は特にないが、電子レンジ加熱調理した後に蒸発せずに残存する流動化した非流動状水分により麺塊が浸漬しないようにする観点から、好ましくは45質量部以下であり、より好ましくは35質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下である。ただし、ソースの調味付けの濃さや粘度または可塑性の程度を調節することにより、そのソースを残存する流動化した非流動状水分で希釈するように設計することもできるため、容器本体の容量と麺類及びソースの種別に応じて適宜調節すればよい。例えば、ラーメンスープやうどんつゆであれば、濃縮タイプのスープ又はつゆを中皿に収容し、電子レンジ加熱されて流動化した非流動状水分と濃縮タイプのスープ又はつゆとの合計が容器本体の容量の50~70容積%程度になるように調節すればよい。希釈を前提としないソース(例えばパスタソースや餡掛けソース等)であれば、ソースが水っぽくなって麺との絡みが悪くならないように前記上限以下になるように調節することが好ましい。
【0022】
本発明において、非流動状水分を半α化麺類の上に載置する工程は、容器本体に収容された半α化麺類の麺塊の上面視略中心を基点に載置する工程であってもよい。
容器本体に収容された半α化麺類に非流動状水分を載置する方法は、容器本体に収容された半α化麺類の麺塊の上面に載置すること、好ましくは上面視略中心を基点に載置することができる方法であれば特に制限はなく、公知の方法によればよい。そのような方法としては、ディスペンサーを用いて半α化麺塊上に吐出して載置する方法、計量機能を備えるカップ容器やレードル(お玉杓子)等を用いて半α化麺塊上に投入して載置する方法などが挙げられる。半α化麺塊上に載置した非流動状水分は、そのままの状態でもよいが、ヘラやレードル(の凸側)等を用いて略水平になるように均すことが好ましい。
非流動状水分を半α化麺類に載置する際、非流動状水分による半α化麺塊の上面の被覆率(半α化麺塊の上面の全面積に対して、非流動状水分で覆われた半α化麺塊の上面の面積の割合)は特に制限されるものではないが、20%以上であり、好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上であり、更に好ましくは60%以上であり、より更に好ましくは85%以上である。半α化麺塊の上面の全面積、及び非流動状水分で覆われた半α化麺塊の上面の面積は、例えば、上面から撮像し、画像解析により求めることができる。この範囲内であれば、容器入りチルド麺類を電子レンジ再加熱することにより、茹で立てのような食感を有し、ソース絡みが良好な麺類を得ることができる。
【0023】
本発明の容器入りチルド麺類の製造方法は、「ソースを収容するための中皿を容器本体に載置する工程」(工程(4))を更に含んでいてもよい。
前記ソースは特に制限されるものではなく、チルド麺類に用いる麺類の種別に応じ、一般に適用されるソースであれば何れも用いることができる。半α化麺類としてロングパスタを採用した場合であれば、ミートソース、カルボナーラソース、ペスカトーレソース、ボロネーゼソース、ポモドーロソース、フォルマッジョソース、トマトクリームソース等が好ましく、半α化麺類としてショートパスタを採用した場合であれば、ボンゴレソース、アラビアータソース、ラグーノソース等が好ましい。半α化麺類として中華麺、きし麺、うどんを採用した場合であれば、中華餡掛けソース、五目餡掛けソース、海鮮餡掛けソース、肉味噌餡掛けソース、酸辣湯ソース、カレーソース、濃縮タイプ中華スープ、濃縮タイプのうどんつゆ等が挙げられる。
中皿は容器本体に載置した後にソースを収容してもよく、中皿にソースを収容してから容器本体に載置してもよい。中皿を容器本体に載置する方法は特に制限はなく、公知の方法であれば何れも適用することができる。そのような方法として、人手により載置する方法、ロボットハンドを用いて載置する方法、シュートから滑り落して載置する方法などが挙げられる。等が挙げられる。
【0024】
<<容器入りチルド麺類の調理方法>>
本発明の容器入りチルド麺類の調理方法は、前記方法で製造された容器入りチルド麺類を電子レンジ加熱する工程を含む。
電子レンジ加熱条件は、容器本体に収容された半α化麺類の種別や太さ、肉厚等、並びに、中皿に収容されたソースの種別やソースに含まれる具材の大きさや量によるが、通常500~800Wで2~7分間であればよい。電子レンジ加熱の終了後、蓋を外し、中皿のソースを麺塊に掛け、好みに応じて混合して喫食することができる。任意に付属された薬味などを振り掛けてもよい。
【0025】
<<容器入りチルド麺類>>
本発明の他の態様は、容器内に、油脂が付着した半α化麺類が収容されており、油脂が付着した前記半α化麺類の上に、水分とゲル化剤とを含み、室温下で流動性を有さない非流動状水分が載置されており、前記非流動状水分由来の水分量が、半α化麺類100質量部に対して6質量部以上である、容器入りチルド麺類である。
容器、油脂、半α化麺類、非流動状水分、チルド麺類などは、本発明の容器入りチルド麺類の製造方法に関して上で述べたとおりである。
【実施例0026】
<製造例1 非流動状水分の製造>
ヒーター付きミキサーに100質量部の水と2質量部のゼラチン(株式会社ニッピ社のゼラチンMAX―IH)とを投入し、ゼラチンが十分に水和するまで混合撹拌した。ゼラチン水和水が40℃になるよう加熱し、ゼラチンが溶解するまで混合撹拌した。得られたゼラチン溶液を金属製の浅型バットに投入して樹脂製フィルムで密封し、庫内温度4℃の冷蔵庫に投入し、6時間冷却して非流動状のゼラチン水を得た。得られた非流動状ゼラチン水を室温(15℃)で24時間保存したところ、非流動状態(固体状のゲルの状態)を維持していた。
【0027】
<製造例2 容器入りチルドパスタの製造>
(1)乾燥パスタ(オーマイ スパゲッティ1.7mm)100質量部を沸騰した湯中に投入し、4分間茹で上げ、冷水で冷却し、水切りして茹でパスタ(半α化パスタ)を得た。この茹でパスタ(半α化パスタ)の水分量を、5gの茹でパスタを採取して直径11cmのアルミ製秤量缶に載置し、庫内温度135℃の乾熱乾燥機に投入して2時間乾燥処理し、乾燥前後の質量の差分を測定することにより求めたところ、茹でパスタ(半α化パスタ)の水分量は55質量%であった。なお、8分間茹で上げた喫食至適なアルデンテ状パスタ(α化パスタ)の水分量は62質量%(喫食至適水分値)である。
(2)(1)で製造した茹でパスタ100質量部に対してサラダ油3質量部を添加し、全体になじむようにまぶした。
(3)樹脂製どんぶり容器(エフピコ社のDLV麺丼 MFP)の容器本体に(2)でサラダ油をまぶした茹でパスタ160gを投入し、茹でパスタ上面が略水平になるよう均し、パスタ上面の全面を覆うように40.8gの非流動状ゼラチン水(水分量として40g)上掛けして略水平になるように均した。なお、樹脂製どんぶり容器を上面から撮像し、画像解析により求めたパスタ上面部の面積は150cm2であった。
(4)ミートソース(オーマイ ミートソース)100gを収容した中皿を容器本体に載置し、上蓋を嵌合し、帯シュリンクにより包装して容器入りチルドパスタを得た。
【0028】
<評価例1 容器入りチルドパスタの官能評価>
製造例2で得られた容器入りチルドパスタを庫内温度4℃の冷蔵庫に投入して24時間保存した。保存後、帯シュリンクを取り除き、上蓋をしたまま電子レンジに投入し、500Wで3分間加熱した。上蓋を取り外し、中皿を取り外してミートソースをパスタにかけて十分に和えた。10名の熟練パネラーにより下記官能評価表に従って評価し、平均点と標準偏差(SD)を求めた。
なお、湯切りした茹で立てパスタ160gに湯煎加熱したミートソース100gを和えた作り立てミートソースパスタの食感、外観、ソース絡みを5点とした。
「食感」とは、ミートソースを和えたパスタを喫食したときの食感のことである。
「外観」とは、ミートソースをかける前のパスタの外観のことである。
「絡み」とは、ミートソースをパスタにかけて和えている際のミートソースとパスタの絡み具合のことである。
【0029】
【0030】
<試験例1 非流動状水分量の検討>
表1記載の質量部の非流動状ゼラチン水を用いた以外は、製造例1~2に従って容器入りチルドパスタを製造し、評価例1に従って評価した。結果を表1に示す。なお、参考例1は、製造例2において、8分間茹でたアルデンテ状の茹でパスタにサラダ油をまぶすことなく、パスタ上面に非流動状ゼラチン水を収容することなく製造した従来の容器入りチルドパスタである。
従来の容器入りチルドパスタである参考例1では、電子レンジ再加熱後におけるパスタの外観に乾きがあり、茹でパスタとソースの絡みも悪く、茹で立てのような食感もなかった。試験番号1(比較例)では、電子レンジ再加熱後の茹でパスタの外観はやや乾きがあり、芯のあるやや硬い食感であり、パスタが硬く乾き気味であるためにソースとの絡みもやや悪かった。試験番号2~6では、電子レンジ再加熱した茹でパスタはみずみずしく、パスタ内外の食感差も良好であった。ただし、試験番号5では非流動状水分(ゼラチンでゲル化した水分)の量が多かったためか、試験番号3及び4よりもシャバついた状態になったため幾分ソースとの絡みが悪かったが、合格レベルであった。試験番号6では、非流動状水分(ゼラチンでゲル化した水分)の量が多すぎたために、ミートソースが希釈されて薄くなって茹でパスタからややソースが垂れ気味になり、茹でパスタ塊の下部において茹でパスタ表面が若干軟らかめになって相対的に試験番号4や5よりも食感がやや劣った。
比較例1~3では、非流動状水分の上掛けに替えて流動状水分(ゼラチンでゲル化していないゾル状の水分)を投入して得た容器入りチルドパスタである。何れも流動状水分は容器の底部に溜まり、チルド温度帯での保管中に容器底部付近のパスタ塊が流動状水分と接触して吸水したためか、柔らかいパスタと硬いパスタとが混在したムラのある食感であった。パスタの外観についても、乾きのある部分とふやけのある部分が混在しており、ソースの絡みにもムラがあった。
【0031】
*水分値:茹でパスタ100質量部における水分の含有率(質量%)である。
*油脂:茹でパスタ100質量部にまぶした油脂の量(質量部)である。
*非流動状水分/流動状水分:茹でパスタ100質量部の上面に載置した非流動状水分(ゼラチンでゲル化した水分)または流動状水分に含まれる水分の量(質量部)である。
*被覆率:容器に収容した「茹でパスタ上面の全面積」に対する「非流動状水分で覆われている茹でパスタ上面の面積」の割合(%)である。
【0032】
<試験例2 油脂量の検討>
表2記載の質量部の油脂、非流動状水分を用いた以外は、製造例1~2に従って容器入りチルドパスタを製造し、評価例1に従って評価した。
非流動状水分を25質量部用いた場合、試験番号8~10において、電子レンジ再加熱した茹でパスタの外観は油脂をまぶすことにより大きな差はなかった。しかしながら、試験番号8~9にかけて、茹でパスタにまぶす油脂の量の増加に伴って麺内外の食感差がより良好になり、茹で立てのパスタの食感に近づいた。試験番号8~9におけるパスタとソースの絡みは良好であった。試験番号7では食感と外観は比較的良好であったが、パスタとソースの馴染みが悪いためソース絡みが悪かった。試験番号10では、食感と外観は良好であったものの、油脂が多すぎたために油浮きが生じ、茹でパスタからミートソースが垂れて絡みが悪かった。
非流動状水分を10質量部ないしは40質量部用いた試験番号11~14において、その食感、外観及び絡みの傾向は、非流動状水分を25質量部用いた試験番号8~9と同様であった。
【0033】
*水分値:茹でパスタ100質量部における水分の含有率(質量%)である。
*油脂:茹でパスタ100質量部にまぶした油脂の量(質量部)である。
*非流動状水分/流動状水分:茹でパスタ100質量部の上面に載置した非流動状水分(ゼラチンでゲル化した水分)または流動状水分に含まれる水分の量(質量部)である。
*被覆率:容器に収容した「茹でパスタ上面の全面積」に対する「非流動状水分で覆われている茹でパスタ上面の面積」の割合(%)である。
【0034】
<試験例3 茹でパスタの水分値の検討>
表3記載の水分値になるように乾燥パスタを茹でた以外は製造例1~2に従って容器入りチルドパスタを製造し、評価例1に従って評価した。結果を表1に示す。
試験番号15では、電子レンジ再加熱後におけるパスタの外観とパスタとソースとの絡みが良好であったものの、茹でパスタの水分値が低いために(茹でが不十分であったために)全体的に硬めのパスタであった。試験番号16~20及び4では、電子レンジ再加熱後の茹でパスタの外観がみずみずしく、茹でパスタとソースとの絡みも良好であり、茹で立てのような内外の食感差のあるパスタであり、とりわけ水分値が55質量%になるように茹でたパスタにおいても最も評価が高かった。アルデンテ状になるまで茹でた試験番号19では、電子レンジ再加熱後の茹でパスタとソースとの絡みはやや良かったが、茹でパスタの外観はややふやけ気味になり、茹でパスタ内外の食感差がさほど感じられなかった。試験番号20では、茹でパスタとソースとの絡みは悪くなかったものの、パスタをやや茹ですぎたために電子レンジ再加熱したパスタの外観がふやけ気味になり、全体的に柔らかい食感であった。
【0035】
*水分値:茹でパスタ100質量部における水分の含有率(質量%)である。
*油脂:茹でパスタ100質量部にまぶした油脂の量(質量部)である。
*非流動状水分/流動状水分:茹でパスタ100質量部の上面に載置した非流動状水分(ゼラチンでゲル化した水分)または流動状水分に含まれる水分の量(質量部)である。
*被覆率:容器に収容した「茹でパスタ上面の全面積」に対する「非流動状水分で覆われている茹でパスタ上面の面積」の割合(%)である。
【0036】
<試験例4 非流動状水分の配置の検討>
非流動状水分(ゼラチンでゲル化した水分)の配置を表4記載の配置にした以外は製造例1~2に従って容器入りチルドパスタを製造し、評価例1に従って評価した。試験番号21では、非流動状水分を容器本体に載置して均し、その上に茹でパスタを載置した。
パスタの下に非流動状水分を配置した試験番号21では、電子レンジ再加熱することにより非流動状水分と近接する茹でパスタが茹で伸び気味になり、非流動状水分と離れた部分にある茹でパスタの上部では茹でパスタ表面が乾き気味になり、更には茹でパスタに硬い部分と柔らかい部分があるために調和のない食感になる傾向であったが、全体としては合格レベルであった。
【0037】
【0038】
<試験例5 非流動状水分の配置の検討>
非流動状ゼラチン水が茹でパスタの上面を覆う面積の割合(被覆率)を表5記載の割合にした以外は実施例3に従って容器入りチルドパスタを製造し、評価例1に従って評価した。
試験番号23及び24では、被覆率の低下に伴ってやや食感、外観及び絡みが試験番号4よりも幾分低い評価になったが、十分に良好であった。被覆率25%の試験番号22では、非流動状水分(ゼラチンでゲル化した水分)が覆っている部分と覆っていない部分において、柔らかい食感の部分と硬い食感の部分とが、ややふやけのある部分とやや乾燥気味の部分とが発生し、そのためにソースとの絡みもやや悪くなったが、容器入りチルドパスタとして合格レベルであった。また、被覆率25%にすると斜角が大きな山状になるため、輸送中の振動等で非流動状水分が崩れてしまう恐れがあり、また、非流動状水分の盛付に作業が注意を要するものになるため、被覆率は50%以上にすることが望ましい。
【0039】