(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141719
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】負圧防止チャンバー
(51)【国際特許分類】
E04H 7/22 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
E04H7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048186
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179729
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 一美
(72)【発明者】
【氏名】大賀 雄介
(57)【要約】
【課題】サイロの内部が負圧になることを確実かつ安定的に防止できる負圧防止チャンバ
ーを提供する。
【解決手段】負圧防止チャンバー1は、屋外に設置されるサイロに設けられる排気口と連
通するとともに、環境中へ開口する開口部2dを備える中空の本体2と、一端が排気口に
接続されるとともに、他端3bが本体2に接続されて、本体2をサイロと連通させる連通
部3と、本体2の内部に設けられる阻害構造4を備え、阻害構造4は、本体2の内部にお
ける気体の流れを遮るように、連通部3と、開口部2dとの間に配置される仕切板4Aで
ある。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置されるサイロに設けられるバグフィルターの排気口と連通するとともに、環
境中へ開口する開口部を備える中空の本体と、
一端が前記排気口に接続されるとともに、他端が前記本体に接続されて、前記本体を前
記サイロと連通させる連通部と、
前記本体の内部に設けられる阻害構造を備え、
前記阻害構造は、前記本体の前記内部における気体の流れを遮るように、前記連通部と
、前記開口部との間に配置されることを特徴とする負圧防止チャンバー。
【請求項2】
前記阻害構造は、少なくとも仕切板を備え、
前記仕切板は、前記本体の底面から前記本体の上面に向かう高さ方向に沿って立設され
るとともに、前記仕切板の上端と前記上面との間に、隙間を形成可能な高さを有すること
を特徴とする請求項1に記載の負圧防止チャンバー。
【請求項3】
前記開口部と連通する第1の開口端と、第2の開口端を有し、中空構造をなす中空体を
備え、
前記第2の開口端以外での前記中空体の断面積は、前記第2の開口端の開口面積よりも
大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の負圧防止チャンバー。
【請求項4】
前記本体の容積Vは、前記サイロが前記排気口を介して吸入する外気の吸入量(V
2-
V
1)から前記容積Vを減算した減算値(V
2-V
1-V)が、前記サイロの内部におけ
る気体の圧力が負圧となるに応じて、0から正の数に変化するときにおける前記吸入量(
V
2-V
1)であり、
前記吸入量(V
2-V
1)は、以下の(1)式で与えられることを特徴とする請求項1
乃至請求項3のいずれか1項に記載の負圧防止チャンバー。
【数1】
ここで、
V
1:サイロの内部に負圧が発生していない場合の気体の体積(m
3)
V
2:サイロの内部に負圧が発生した場合の気体の体積(m
3)
P
1:サイロの内部に負圧が発生していない場合の気体の圧力(Pa abs)
P
2:サイロの内部に負圧が発生した場合の気体の圧力(Pa abs)
【請求項5】
前記サイロに貯留される製品は、副生成物として塩化水素を含有することを特徴とする
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の負圧防止チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイロに貯留された製品に対する吸湿防止手段に係り、特に、サイロの内部
が負圧となることを防止して、水分を含む外気がサイロの内部に侵入することを阻害する
負圧防止チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、完成した製品等を貯留するサイロは、例えばその上面に設置されたバグフィルタ
ーの排気口を介して、サイロの内部の気体を排気可能な構造となっている。
その例として、特許文献1には、フライアッシュを回収するために屋外に設置されるフ
ライアッシュサイロと、このフライアッシュサイロの上面であり、かつ灰を搬送する搬送
母管の下流に設置されるバグフィルターと、このバグフィルターの排気口に上端が連通す
る排気管と、この排気管の下端に設けられる真空ブロワを備えた構成が開示されている。
なお、搬送母管の上流には、大気を吸入可能な吸入弁が設けられる。
このような構成においては、真空ブロワの稼働によって、バグフィルターと、搬送母管
が負圧になり吸入弁から大気が吸入されることから、搬送母管からバグフィルターに向か
う気流が形成される。そのため、サイロの内部に外気が流入することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フライアッシュや製品を貯留するサイロは、屋外に設置されるため、強
風の影響を受けることがある。特に真空ブロワが設置されていない場合において、バグフ
ィルターの排気口の周囲に強風が吹くと、この強風に伴って発生するエジェクター効果に
よって、サイロの内部の気体が吸い出されるという現象が起きる。すると、サイロの内部
が負圧になって外気が流入してくることから、貯留された製品が外気中の水分を吸収し、
その結果製品の品質が劣化してしまうという課題があった。
また、製品の製造工程においては、その途中で副生成物が発生することがある。そのた
め、この副生成物を除去する除去工程を経た後においても、完成した製品中に副生成物が
微量に残存する場合がある。
そして、この副生成物が、例えば気体の塩化水素である場合、製品が吸収した水分と反
応して液体の塩酸が生成されるため、この塩酸によってサイロが腐食してしまうという課
題もあった。
そこで、サイロの内部が負圧になることを防ぎ、外気中の水分が製品に吸収されること
を防止し得る構造が付加されることが必要である。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、屋外に設置されたサ
イロの内部が負圧になることを防止できる負圧防止チャンバーを提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明は、屋外に設置されるサイロに設けられるバグフ
ィルターの排気口と連通するとともに、環境中へ開口する開口部を備える中空の本体と、
一端が排気口に接続されるとともに、他端が本体に接続されて、本体をサイロと連通させ
る連通部と、本体の内部に設けられる阻害構造を備え、阻害構造は、本体の内部における
気体の流れを遮るように、連通部と、開口部との間に配置されることを特徴とする。
このような構成の発明において、本体の形状は、例えば、円柱形、立方形といったもの
が考えられる。また、連通部と、開口部は、一直線上に配置されていてもよいし、いなく
てもよい。
さらに、阻害構造は、連通部と、本体の開口部との間に配置されることによって、連通
部を通過する気体が開口部へ直接流入したり、逆に開口部を通過する気体が連通部へ直接
流入したりすることを阻害可能である。すなわち、「本体の内部における気体の流れを遮
る」とは、連通部を通過する気体を、その流れ方向を変化させた後に開口部へ流入させた
り、開口部を通過する気体を、その流れ方向を変化させた後に連通部へ流入させたりする
ことをいう。
加えて、阻害構造は、サイロの排気口を通過する気体と、本体の開口部を通過する気体
との流通を完全に遮断するものでない限り、どのような形状であってもよい。よって、阻
害構造として、例えば、迷路構造や、仕切板が考えられる。
【0007】
上記構成の発明においては、本体が設けられることで、サイロの排気口の周辺に強風が
吹いた場合に、サイロの排気口から気体が環境中へ吸い出されることが防止される。さら
に、阻害構造が、連通部と、開口部との間での気体の流れを遮るから、本体内の気体が開
口部を通過して環境中へ吸い出されることが阻害される。よって、サイロの内部の気体が
、本体の開口部を通過して環境中へ吸い出されることが強く防止されることになる。した
がって、サイロの内部が負圧になることが防止される。
【0008】
次に、第2の発明は、第1の発明において、阻害構造は、少なくとも仕切板を備え、仕
切板は、本体の底面から本体の上面に向かう高さ方向に沿って立設されるとともに、仕切
板の上端と上面との間に、隙間を形成可能な高さを有することを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、仕切板によって、本体
の連通部と開口部との間における気体の流れが遮られる。また、一方で、サイロの排気口
から排気される気体は、仕切板の上端と本体の上面との間に形成される隙間を介して、本
体の開口部に到達可能である。
そして、仕切板は剛性を有するものが望ましい。これは、強風が本体の開口部の周囲に
吹き付けたとしても、仕切板が破損し難いためである。また、阻害構造は、仕切板のほか
、例えば、本体の内壁から、本体の中心縦軸方向に向かって突出する横板が備えられても
よい。なお、この横板は、本体の径方向に沿って突出するほか、この径方向に対して傾斜
して突出してもよい。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、開口部と連通する第1の開口端と、第2
の開口端を有し、中空構造をなす中空体を備え、第2の開口端以外での中空体の断面積は
、第2の開口端の開口面積よりも大きいことを特徴とする。
このような構成の発明において、中空体は、第2の開口端以外での中空体の断面積が第
2の開口端の開口面積よりも大きい限り、どのような形状や長さを有していてもよい。
上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、中空体の断面積が第
2の開口端の開口面積よりも大きいため、強風が第2の開口端の周囲に吹き付けた際に、
本体内の気体が第2の開口端から吸い出され難くなる。
【0010】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、本体の容積Vは、サイロが排
気口を介して吸入する外気の吸入量(V
2-V
1)から容積Vを減算した減算値(V
2-
V
1-V)が、サイロの内部における気体の圧力が負圧となるに応じて、0から正の数に
変化するときにおける吸入量(V
2-V
1)であり、吸入量(V
2-V
1)は、以下の(
1)式で与えられることを特徴とする。
【数1】
ここで、
V
1:サイロの内部に負圧が発生していない場合の気体の体積(m
3)
V
2:サイロの内部に負圧が発生した場合の気体の体積(m
3)
P
1:サイロの内部に負圧が発生していない場合の気体の圧力(Pa abs)
P
2:サイロの内部に負圧が発生した場合の気体の圧力(Pa abs)
である。
【0011】
このような構成の発明において、体積V2は、サイロの内部に負圧が発生した場合に、
この内部に流入した外気の体積と、体積V1とを合算した体積とも解される。よって、外
気の吸入量(V2-V1)は、負圧チャンバーが設けられない場合において、エジェクタ
ー効果によってサイロの内部から気体が吸い出され、内部が負圧となった後に、この内部
に吸い込まれた外気の体積である。
そのため、(1)式中の(P1-P2)が大となっても、減算値(V2-V1-V)が
0となるような容積Vを有する本体が望ましい。ただし、本体は一定の容積Vを有するた
め、(P1-P2)が大になると、本体が設けられていてもサイロの内部は徐々に負圧と
なる。すなわち、体積V2が大となるため、減算値(V2-V1-V)は、0から正の数
となり、徐々に大きくなる傾向にある。
したがって、減算値(V2-V1-V)が0から正の数に変化するときの容積Vが、サ
イロの内部が負圧となることを可能な限り防止するため、本体の容積Vとして最適である
といえる。この最適な容積Vは、減算値(V2-V1-V)が0から正の数に変化すると
きの吸入量(V2-V1)として求められる。なお、本願において、「負圧」とは大気圧
を下回ったゲージ圧をいい、「負圧が低下する」とは、負圧の絶対値が増大することをい
う。
【0012】
上記構成の発明においては、第1乃至第3のいずれかの発明の作用に加えて、サイロが
負圧となることを可能な限り防止するために、最適な容積Vを有する本体が決定される。
【0013】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、サイロに貯留される製品は、
副生成物として塩化水素を含有することを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1乃至第4のいずれかの発明の作用に加えて、負
圧防止チャンバーが設置されることで、外気が本体を介してサイロの内部に流入すること
が防止されるから、サイロの内部で外気の水分が副生成物の気体状の塩化水素と反応して
液体の塩酸が生成されることが防止される。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、本体と、阻害構造が設けられることによって、サイロの内部が負
圧になることが防止されるため、外気が本体を介してサイロの内部に流入することを防止
できる。よって、サイロに貯留された製品が外気中の水分を吸湿したり、この水分が製品
の副生成物と反応して有害な化合物が生成されたりすることを防止できる。
また、負圧防止チャンバーは、サイロの内部を改造することなく設置可能であるから、
容易な後付けが可能となる。
【0015】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、仕切板によって、連通部と、開口部
との間における気体の流れが遮られる一方で、バグフィルターの排気口を通過する気体が
本体の開口部を通過可能となるから、サイロからの排気が確保されつつ、サイロの内部が
負圧になることを防止可能である。
また、仕切板は、十分な強度を有している場合には、サイロの内部が負圧になることを
確実かつ安定的に防止できる。
【0016】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、強風が吹いた際に、本体の
内部の気体が第2の開口端から吸い出され難くなるため、サイロの内部が負圧になること
を一層防止することができる。
【0017】
第4の発明によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果に加えて、サイロが負圧と
なることを可能な限り防止するために、最適な容積Vを有する本体が決定されるため、サ
イロへの外気流入防止を確実に実現することができる。
【0018】
第5の発明によれば、第1乃至第4のいずれかの発明の効果に加えて、負圧防止チャン
バーが設置されることで、サイロの内部で液体の塩酸が生成されることが防止されるため
、この塩酸によるサイロの腐食を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例に係る負圧防止チャンバーの設置状況を示す外観図である。
【
図2】実施例に係る負圧防止チャンバーの設置状況を示す拡大図である。
【
図3】実施例に係る負圧防止チャンバーの外観を示す斜視図である。
【
図4】実施例に係る負圧防止チャンバーの作用を説明するための透視図である。
【
図5】実施例に係る負圧防止チャンバーの作用を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0020】
本発明の実施の形態に係る負圧防止チャンバーについて、
図1乃至
図5を用いて詳細に
説明する。
図1は、実施例に係る負圧防止チャンバーの設置状況を示す外観図である。図
2は、実施例に係る負圧防止チャンバーの設置状況を示す拡大図である。
図1及び
図2に示すように、実施例に係る負圧防止チャンバー1は、屋外に設置される
金属製のサイロ50の上面52に設置される。
まず、サイロ50について説明すると、このサイロ50は、例えば、粉体の製品を貯留
する目的で設置されたものである。また、サイロ50上部は、地上から30mの高さにあ
るため、サイロ50は常態的に強風に見舞われている。
そして、サイロ50に貯留される製品は、その製造工程において副生成物が発生するこ
とがある。そのため、この副生成物を除去する除去工程を経た後においても、完成した製
品中に副生成物が微量に残存する場合がある。なお、貯留される製品として、副生成物と
して例えば気体状の塩化水素を含有するものがある。
したがって、気体状の副生成物を排気するために、サイロ50の上面52にはバグフィ
ルター51が設けられている。また、バグフィルター51は、排気口51aが開口すると
ともに、濾過体51bを備える。
よって、負圧防止チャンバー1が設けられない場合では、強風が排気口51aの周囲に
吹き付けることに伴い、排気口51aから気体が吸い出されて、サイロ50の内部が負圧
になるという現象が起こる。そして、この負圧に伴い、水分を含んだ外気が排気口51a
からサイロ50内に流入するという事態になる。
【0021】
次に、実施例に係る負圧防止チャンバーの構成について、
図3を用いて詳細に説明する
。
図3は、実施例に係る負圧防止チャンバーの外観を示す斜視図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略
する。
図3に示すように、負圧防止チャンバー1は、中空の本体2と、この本体2をサイロ5
0と連通させる連通部3と、本体2の内部に設けられる阻害構造4と、本体2と連通する
中空体を備える。なお、本実施例においては、中空体として、箱体5が採用されている。
また、本体2、連通部3、阻害構造4及び箱体5は、いずれもステンレス製板材が成形さ
れてなる。
このうち、本体2は、厚みが5mmの周壁2aと、上面2bと、底面2cで囲まれる円
柱形状の外形を有し、サイロ50に設けられるバグフィルター51の排気口51a(
図1
,2参照)と連通部3を介して連通している。さらに、本体2は、その周壁2aに、箱体
5を介して環境中へ開口する開口部2dを備える。なお、本体2の内部のサイズは、直径
0.5m、高さ1.1mである。よって、本体2の容積は約0.22m
3(=220L)
となる。
また、連通部3は、一端3aと、他端3bを備える屈曲した配管であり、一端3aがバ
グフィルター51の排気口51aに接続される(
図2参照)とともに、他端3bが周壁2
aの底面2c付近の高さ位置において接続されている。
さらに、阻害構造4は、連通部3の他端3bと、開口部2dとの中間に配置される。こ
の阻害構造4は、本体2の底面2cから本体2の上面2bに向かうZ方向に沿って立設さ
れる剛性を有する仕切板4Aである。また、仕切板4Aの厚みは5mmである。
【0022】
また、負圧防止チャンバー1において、連通部3の他端3bの軸中心A1と、本体2の
開口部2dの軸中心A2は、互いに平行である。
また、仕切板4Aは、上端4a、下端4b及び両側端4c,4cを有する長方形状のス
テンレス製平板材であり、軸中心A1,A2と直交する方向に沿って配置されている。
さらに、仕切板4Aは、下端4bが本体2の底面2cに固定される。また、仕切板4A
は、その上端4aと本体2の上面2bとの間に、隙間Sを形成可能な高さHを有している
。具体的には、Z方向に沿った、下端4bから上端4aまでの高さHは1.0mである。
よって、Z方向に沿った隙間Sの高さ及び面積は、それぞれ0.1m及び0.05m2と
なる。
また、仕切板4Aの両側端4c,4cは、いずれも本体2の周壁2aの内面に固定され
ている。
【0023】
次に、箱体5は、本体2の開口部2dと連通する第1の開口端5aと、第2の開口端5
bを有する。
詳細には、箱体5は、本体2の底面2c寄りの高さ位置において、周壁2aの外側に取
り付けられる中空構造をなす。この箱体5を形成するステンレス製平板材の厚みは、2m
mである。
さらに、箱体5は、周壁2aに接する面に第1の開口端5aを備え、この第1の開口端
5aと直交する面に第2の開口端5bを備える。なお、周壁2aに接する面と、この面に
平行な面のサイズは、いずれもZ方向に沿った高さhが約0.5m、Z方向に直交するX
方向の奥行dが約0.2mである。そして、第2の開口端5bが開口する面と、この面に
平行な面は、いずれもZ方向に沿った高さhが約0.5m、X方向及びZ方向にいずれも
直交するY方向の幅wが約0.2mである。また、第2の開口端5bは、略正方形状をな
し、その一辺のサイズは約0.2mである。
よって、第2の開口端5b以外での箱体5のY-Z面に沿った断面積S1は、第2の開
口端5bの開口面積S2よりも大きい。そのため、本体2の内部の気体が第2の開口端5
bから吸い出され難くなる。
【0024】
続いて、実施例に係る負圧防止チャンバーの作用について、
図4及び
図5を用いて説明
する。
図4は、実施例に係る負圧防止チャンバーの作用を説明するための透視図である。
なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4においても同一の符号を付して、
その説明を省略する。
図4に示すように、バグフィルター51の排気口51a(
図1参照)から排気された気
体A
irは、連通部3を他端3bに向かって下降し、本体2の内部に流入する。しかし、
仕切板4Aが、本体2の連通部3と、本体2の開口部2dとの間に、他端3bの軸中心A
1と直交して配置されていることから、気体A
irは仕切板4Aの下端4b寄りの面に衝
突し、その流れ方向を本体2の上面2b方向へと変化させる。
よって、仕切板4Aが連通部3の他端3bと、本体2の開口部2dとの間に配置される
ことによって、他端3bを通過する気体が、向きを変えることなく開口部2dへ向かうこ
とを阻害可能である。
そして、気体A
irは、隙間Sを通過するとき、その流れ方向を下端4b方向へ変化さ
せ、本体2の開口部2d(すなわち、箱体5の第1の開口端5a)、箱体5の第2の開口
端5bを通過して環境中へ排気される。
【0025】
また、第2の開口端5bは、サイロ50の上面52に寄せられるとともに、本体2に隣
接して配置されることから、箱体5の第2の開口端5bから強風が直接侵入し難い。仮に
、強風による外気が第2の開口端5bから侵入した場合であっても、この外気は、第1の
開口端5aを通過後に仕切板4Aへ衝突するため、その流れ方向を上面2b方向へと変化
させる。よって、仕切板4Aによって、第1の開口端5aを通過する外気が、向きを変え
ることなく連通部3の他端3bへ向かうことを阻害可能である。
なお、第2の開口端5bの高さ位置は、開口部2dの高さ位置よりも低いため、開口部
2dより下方の周壁2aが、他端3bから開口部2dへ向かう気体の流れを遮ることはな
い。しかし、第2の開口端5bから侵入した外気は、仕切板4Aの場合と同様に、開口部
2dより下方の周壁2aに沿って一旦上昇することになる。よって、第2の開口端5bか
ら侵入した外気の流れは、周壁2aによって遮られることになるから、外気が第2の開口
端5bを介して本体2の内部へ侵入することが一層強く防止される。
上記のように、仕切板4Aは、連通部3の他端3bを通過する気体が箱体5の第1の開
口端5aへ直接流入したり、逆に第1の開口端5aを通過する気体が他端3bへ直接流入
したりすることを阻害可能である。その一方で、仕切板4Aは、バグフィルター51の排
気口51a(
図1参照)を通過する気体と、箱体5の第2の開口端5bを通過する気体と
の流通を完全に遮断するものではない。
【0026】
続いて、表1は、実施例に係る負圧防止チャンバーにおいて、本体2の最適な容積Vを
決定するための計算結果を示す表である。また、この計算は、サイロ50の容積が1.5
×105(L)であり、負圧防止チャンバー1が設置されない場合について実施されたも
のである。
【0027】
【0028】
表1に示すように、左から第1欄目は、サイロ50の内部に負圧が発生した場合の、こ
の内部における気体の圧力P2(ゲージ圧、kPa)である。
次に、左から第2欄目は、サイロ50の内部に負圧が発生していない場合の、この内部
における気体の体積V1(150m3=1.5×105L)である。
【0029】
また、左から第3欄目は、サイロ50の内部に負圧が発生した場合の気体の体積V2(
m3)である。この体積V2は後述する(2)式によって算出される。
【0030】
さらに、左から第4欄目は、サイロ50の内部に負圧が発生した結果、サイロ50が排
気口51aを介して吸入する外気の吸入量(V2-V1)である。この吸入量(V2-V
1)は、以下の(1)式で与えられる。
【0031】
【0032】
ここで、
V1:サイロの内部に負圧が発生していない場合の気体の体積(m3)
V2:サイロの内部に負圧が発生した場合の気体の体積(m3)
P1:サイロの内部に負圧が発生していない場合の気体の圧力(Pa abs)
P2:サイロの内部に負圧が発生した場合の気体の圧力(Pa abs)
である。
なお、体積V2は、サイロ50の負圧発生前後での温度変化をなしとしたときのボイル
の法則に基づき、以下の(2)式によって算出される。
【0033】
【0034】
(2)式中において、圧力P1,P2は、いずれも絶対圧(Pa abs)である。た
だし、圧力P1の実測値は、ゲージ圧で、0.03(kPa)である。また、表1におけ
る圧力P2(ゲージ圧、kPa)は、サイロ50の内部が負圧になった際の外気の吸入量
(V2-V1)を試算するための任意の値である。
よって、(1)式と、(2)式においては、計算時に、ゲージ圧での圧力P1,P2(
kPa)に大気圧(kPa)を加算して圧力P1,P2の絶対圧(kPa abs)とし
た値を用いている。
【0035】
そして、最右欄は、[吸入量(V2-V1)-本体2の容積V]である。
ここで、最右欄の値が正の値になることは、負圧が発生した際に、排気口51aからサ
イロ50へ吸い込まれる外気の体積が、本体2の容積Vを超えることを意味している。よ
って、このとき、負圧防止チャンバー1が設けられたとしてもサイロ50内への外気の流
入が発生することがわかる。つまり、本体2の容積Vは、一定の容積を有するサイロ50
が吸入する外気の吸入量(V2-V1)から容積Vを減算した減算値(V2-V1-V)
が、サイロ50の内部における気体の圧力が負圧となるに応じて、0から正の数に変化す
るときにおける外気の吸入量(V2-V1)である。なお、このときの圧力P2は、-0
.15(kPa)である。
【0036】
そして、
図5は、実施例に係る負圧防止チャンバーの作用を説明するためのグラフであ
る。
図5において、横軸はサイロ50の内部での気体の圧力(kPa)を示し、縦軸はサ
イロ50が外気を吸入する吸入量(V
2-V
1)(L)である。なお、横軸に示す圧力は
、表1に示した左から第1欄目の圧力P
2であり、外気の吸入量(V
2-V
1)は、同表
に示した最右欄の値である。
図5に示すように、サイロ50内の圧力P
2が-0.15(kPa)よりも低くなるに
つれて、外気の吸入量(V
2-V
1)は直線状に増加する。また、-0.15(kPa)
は、表1に示したように、最右欄である[吸入量(V
2-V
1)-本体2の容積V]の値
が正になるときの負圧であるから、サイロ50の容積が1.5×10
5(L)(すなわち
、気体の体積V
1が1.5×10
5(L))である場合に、本体2の容積Vを220(L
)以上とすることで、最右欄の値が正の数になり難いことがわかる。
したがって、サイロ50の容積が1.5×10
5(L)である場合に、本体2の容積V
を220(L)以上とすることで、サイロ50内の圧力P
2が-0.15(kPa)とな
っても、外気がサイロ50に流入することを防止できる。なお、本体2の容積Vの上限値
は、特にないが、費用面、実運用面を考慮して決定される。
【0037】
以上説明したように、負圧防止チャンバー1によれば、本体2と、仕切板4Aが設けら
れることによって、サイロ50内が負圧になることが防止されるため、外気が本体2を介
してサイロ50内に流入することを防止できる。よって、サイロ50に貯留された製品が
外気中の水分を吸湿したり、この水分が製品の副生成物である気体状の塩化水素と反応し
て液体の塩酸が生成されたりすることを防止できる。
また、
図4,5に示した実験結果から、負圧防止チャンバー1によって、サイロ50内
が負圧になることを防止できたことが実証されている。
【0038】
さらに、負圧防止チャンバー1は、本体2と、連通部3と、仕切板4Aと、箱体5とい
う簡易な構成であり、またポンプといった動力を要することなくサイロ50内が負圧にな
ることを防止できるので、導入コストや維持コストを抑制することが可能である。
加えて、本体2と、仕切板4Aは、いずれもステンレス製であるため、屋外に設置した
際に、強風に十分耐え得る強度と、雨や雪による腐食のおそれが低い耐食性を有している
。よって、負圧防止チャンバー1の製品寿命の長期化が期待できる。
特に、仕切板4Aは、強風に十分耐え得る強度を有していることから、従来技術のよう
に破損のおそれがなく、サイロ50内が負圧になることを確実かつ安定的に防止できる。
【0039】
また、仕切板4Aは、連通部3の他端3bを通過する気体が箱体5の第1の開口端5a
へ直接流入したり、逆に第1の開口端5aを通過する気体が他端3bへ直接流入したりす
ることを阻害可能である一方で、バグフィルター51の排気口51aを通過する気体と、
箱体5の第2の開口端5bを通過する気体との流通を完全に遮断するものではないから、
副生成物の排気という重要な課題の解決を妨げることなく、製品の劣化やサイロ50の腐
食の防止という従来解決が困難であった課題を解決できる。
【0040】
加えて、負圧防止チャンバー1は、サイロ50の内部を改造することなく、連通部3の
一端3aをバグフィルター51の排気口51aに接続することで設置可能である。
したがって、負圧防止チャンバー1によれば、屋外に設置可能な十分な強度を有するこ
とで、サイロ50内が負圧になることを確実かつ安定的に防止できるとともに、サイロ5
0自体を改造する必要がないために容易な後付けが可能となる。
【0041】
なお、本発明に係る負圧防止チャンバーは、実施例に示すものに限定されない。例えば
、本体2は、円筒形以外の形状であってもよい。また、連通部3は、屈曲した配管以外の
管体が用いられてもよい。阻害構造4は、仕切板4Aの代わりに、迷路構造であってもよ
い。さらに、仕切板4Aの高さHと隙間Sの高さの組み合わせは、それぞれ1.0mと0
.1m以外の組み合わせであってもよい。そして、箱体5の代わりに、先細形状をなす円
管が用いられてもよい。
このほか、サイロ50に貯留される製品は、副生成物として気体状の塩化水素を含有す
るものである以外に、気体状の塩化水素以外の副生成物を含有するものであってもよい。
気体状の塩化水素以外の副生成物として、例えば、窒素酸化物が挙げられる。さらに、製
品は、副生成物自体を含有しないものであってもよい。