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特開2023-142083清掃支援システムおよび清掃支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142083
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】清掃支援システムおよび清掃支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230928BHJP
   A47L 13/20 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G06Q50/10
A47L13/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048772
(22)【出願日】2022-03-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000133445
【氏名又は名称】株式会社ダスキン
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 悠
(72)【発明者】
【氏名】荻野 文敏
(72)【発明者】
【氏名】馬場 史
【テーマコード(参考)】
3B074
5L049
【Fターム(参考)】
3B074EE02
5L049AA22
(57)【要約】
【課題】ユーザに対して清掃行動についてのフィードバックを返すことができる清掃支援システム及び清掃支援方法を提供する。
【解決手段】清掃支援システム1は、清掃行動に関する要求である清掃要求が保存された記憶部32と、清掃に使用されているフロアモップ2の動作を取得する清掃動作取得部10と、フロアモップ2の動作とこれに対応するユーザの清掃行動とを含む教師データに基いて清掃動作取得部10によって取得されたフロアモップ2の動作からユーザの清掃行動を推定するための機械学習を行った学習済みの学習器35と、学習器35を利用して清掃動作取得部10により取得されたフロアモップ2の動作に基づいてユーザの清掃行動を推定する清掃行動推定部31bと、推定されたユーザの清掃行動を清掃要求に照らしてユーザにフィードバックを返すフィードバック部31dとを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃行動に関する要求である清掃要求が保存された、清掃要求保存部と、
清掃に使用されている清掃用具の動作を取得する、清掃動作取得部と、
清掃用具の動作とこれに対応するユーザの清掃行動とを含む教師データに基いて、前記清掃動作取得部によって取得された前記清掃用具の動作から前記ユーザの清掃行動を推定するための機械学習を行った学習済みの、学習器と、
前記学習器を利用して、前記清掃動作取得部により取得された前記清掃用具の動作に基づいて前記ユーザの清掃行動を推定する、清掃行動推定部と、
推定された前記ユーザの清掃行動を、前記清掃要求に照らして、前記ユーザにフィードバックを返す、フィードバック部と、を備えた清掃支援システム。
【請求項2】
前記清掃用具の位置を取得する、清掃位置取得部と、
前記清掃位置取得部によって取得された前記清掃用具の位置に基づいて前記ユーザによる清掃位置を推定する、清掃位置推定部と
をさらに備え、
前記清掃要求には、清掃領域に関する要求がさらに含まれており、
前記フィードバック部は、前記清掃領域についてのフィードバックをさらに返す、
請求項1に記載の清掃支援システム。
【請求項3】
前記清掃要求には、1つ又は複数の清掃行動と、前記清掃行動ごとの清掃時間とが、少なくとも含まれており、
前記清掃行動推定部は、前記清掃行動ごとの清掃時間を推定し、
前記フィードバック部は、前記清掃行動ごとの清掃時間に関するフィードバックをさらに返す、
請求項1又は2に記載の清掃支援システム。
【請求項4】
前記清掃要求には、1つ又は複数の清掃用具と、前記清掃用具ごとの清掃時間とが、少なくとも含まれており、
前記清掃行動推定部は、前記清掃用具を用いた清掃時間を推定し、
前記フィードバック部は、前記清掃用具を用いた清掃時間に関するフィードバックをさらに返す、
請求項1~3のいずれか1つに記載の清掃支援システム。
【請求項5】
前記清掃要求には、1つ又は複数の前記清掃行動と、前記清掃行動ごとの清掃の品質とが、少なくとも含まれており、
前記清掃行動推定部は、前記清掃行動ごとの清掃の品質を推定し、
前記フィードバック部は、前記清掃の品質に関するフィードバックをさらに返す、
請求項1~3のいずれか1つに記載の清掃支援システム。
【請求項6】
前記清掃動作取得部は、加速度センサ及び/又はジャイロセンサを含んでいる、
請求項1~5のいずれか1つに記載の清掃支援システム。
【請求項7】
前記清掃動作取得部は、前記清掃用具に取り付けられている、
請求項1~6のいずれか1つに記載の清掃支援システム。
【請求項8】
前記清掃動作取得部は、前記清掃用具の重心位置に取り付けられている、
請求項7に記載の清掃支援システム。
【請求項9】
前記清掃動作取得部は、画像撮像部を含んでいる、
請求項1~8のいずれか1つに記載の清掃支援システム。
【請求項10】
前記フィードバック部は、前記フィードバックを音、画像表示、及び/又は振動により返す、
請求項1~9のいずれか1つに記載の清掃支援システム。
【請求項11】
清掃した場所に色彩及び/又は画像を投影するプロジェクタを含む、
請求項2~10のいずれか1つに記載の清掃支援システム。
【請求項12】
清掃行動に関する要求である清掃要求を保存し、
清掃に使用されている清掃用具の動作を取得し、
清掃用具の動作とこれに対応するユーザの清掃行動とを含む教師データに基いて、取得された前記清掃用具の動作から前記ユーザの清掃行動を推定するための機械学習を行った学習済みの、学習器を利用して、取得された前記清掃用具の動作に基づいて前記ユーザの清掃行動を推定し、
推定された前記ユーザの清掃行動を、前記清掃要求に照らして、前記ユーザにフィードバックを返す、清掃支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃支援システムおよび清掃支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、清掃具に設けられた動き検出部によって検出された、清掃具の動きに基づいて、清掃具を用いて行われた掃除の実績を示す実績画面を生成する、情報処理システムが開示されている。この情報処理システムでは、清掃の実績として、清掃距離、清掃時間及び清掃頻度が集計されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-192167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の情報処理システムでは、ユーザ(清掃者)に対して、清掃の実績を提供するにすぎず、清掃が十分であるのかそれとも不足しているのかについて何らの示唆を与えるものではない。一方で近年の社会的背景として、例えば感染症の広がりを抑制するべく、適切な清掃によって住環境(例えば、住宅、オフィス、店舗)を清潔に維持することへの要請が高まっている。すなわち、ユーザに対して、清掃行動についてのフィードバックを返すことによって、ユーザに適切な清掃行動についての示唆を提供する点で改良する余地がある。
【0005】
本発明は、ユーザに対して清掃行動についてのフィードバックを返すことができる清掃支援システム及び清掃支援方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、清掃行動に関する要求である清掃要求が保存された、清掃要求保存部と、
清掃に使用されている清掃用具の動作を取得する、清掃動作取得部と、
清掃用具の動作とこれに対応するユーザの清掃行動とを含む教師データに基いて、前記清掃動作取得部によって取得された前記清掃用具の動作から前記ユーザの清掃行動を推定するための機械学習を行った学習済みの、学習器と、
前記学習器を利用して、前記清掃動作取得部により取得された前記清掃用具の動作に基づいて前記ユーザの清掃行動を推定する、清掃行動推定部と、
推定された前記ユーザの清掃行動を、前記清掃要求に照らして、前記ユーザにフィードバックを返す、フィードバック部と、を備えた清掃支援システムを提供する。
【0007】
本発明の他の態様は、清掃行動に関する要求である清掃要求を保存し、
清掃に使用されている清掃用具の動作を取得し、
清掃用具の動作とこれに対応するユーザの清掃行動とを含む教師データに基いて、取得された前記清掃用具の動作から前記ユーザの清掃行動を推定するための機械学習を行った学習済みの、学習器を利用して、取得された前記清掃用具の動作に基づいて前記ユーザの清掃行動を推定し、
推定された前記ユーザの清掃行動を、前記清掃要求に照らして、前記ユーザにフィードバックを返す、清掃支援方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザに対して清掃行動に対するフィードバックが返されるので、適切な清掃行動についての示唆をユーザに与えることができる。その結果、ユーザによる適切な清掃行動がサポートされるので、住環境を清潔に維持しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る清掃支援システムの概略構成を示す図。
図2図1の清掃支援システムによる清掃支援の流れを示すフローチャート。
図3】例示的な清掃対象の部屋の平面図。
図4】本発明の第2実施形態に係る清掃支援システムの概略構成を示す図。
図5図4の清掃支援システムによる清掃支援の流れを示すフローチャート。
図6】他の例に係る清掃対象の部屋の平面図。
図7】本発明の第3実施形態に係る清掃支援システムの概略構成を示す図。
図8図7の清掃支援システムによる清掃支援の流れを示すフローチャート。
図9図6の清掃対象の部屋に対して、さらに清掃実績が表示された平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る清掃支援システムおよび清掃支援方法を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る清掃支援システム1の概略構成を示している。清掃支援システム1は、清掃対象の部屋100について、ユーザ(清掃者)90の清掃行動に対するフィードバックをユーザ90に返すように構成されている。本実施形態では、ユーザ90が、清掃対象の部屋100の床面101をフロアモップ(清掃用具)2を用いて払拭掃除する場合を例にとって説明する。フロアモップ2は、ユーザ90により把持される長尺棒状の柄部2aと、柄部2aの下端に取り付けられた横長の払拭部2bとを有している。
【0012】
清掃支援システム1は、ユーザ90の清掃動作を取得する清掃動作取得部10と、取得された清掃動作を評価してフィードバックを生成するサーバ30と、ユーザ90にフィードバックを報知するスピーカ3とを備えている。
【0013】
清掃動作取得部10はフロアモップ2の柄部2aに取り付けられている。具体的には、清掃動作取得部10はフロアモップ2の重心に位置している。清掃動作取得部10は、加速度センサ11と、データ送信部12と、開始スイッチ13と、終了スイッチ14とを有している。
【0014】
本実施形態では、加速度センサ11は、フロアモップ2が特定の姿勢(例えば柄部2aが鉛直方向に平行に延びている)であるときの、柄部2aの長手方向に沿った第1方向と、第1方向に直交しており払拭部2bの長手方向に沿った第2方向と、第1方向及び第2方向に直交しており払拭部2bの短手方向に沿った第3方向との、それぞれにおける加速度を計測可能な3軸加速度センサである。なお、加速度センサ11として、1軸方向または2軸方向の加速度を計測可能な加速度センサを使用してもよいが、清掃動作を精度よく取得するには3軸加速度センサが好ましい。
【0015】
データ送信部12は、加速度センサ11により取得された加速度データをサーバ30に送信する。データ送信部12とサーバ30との間の通信は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信手段、又はインターネットを介して実施される。このほか、データ送信部12とサーバ30との間の通信を有線により実施してもよく、種々の通信接続手段を用いることができる。
【0016】
開始スイッチ13は、加速度センサ11による計測を開始するときにユーザ90により操作される。終了スイッチ14は、加速度センサ11による計測を終了するときにユーザ90により操作される。
【0017】
サーバ30は、演算処理部31(CPU)、記憶部32、メモリ、データ受信部33及びデータ送信部34を備えた、周知のコンピュータである。サーバ30には、学習器35と入力部36とが接続されている。なお、サーバ30に、学習器35及び/又は入力部36を一体化してもよい。
【0018】
演算処理部31には、実装されたプログラムにより種々の機能が構成されている。具体的には、演算処理部31は、清掃要求生成部31aと、清掃行動推定部31bと、清掃行動評価部31cと、フィードバック部31dとを有している。
【0019】
清掃要求生成部31aは、入力部36を介して入力された部屋100の清掃に関する情報に基づいて、部屋100を適切に掃除するための指標となる清掃要求を生成する。清掃要求には、清掃用具ごとに要求される、清掃方法およびその清掃時間を含む清掃行動が含まれている。例えば、清掃要求生成部31aは、清掃用具としてフロアモップ2を使用する場合に、部屋100の床面101のうち什器を除く領域に対して真っ直ぐ押して拭く第1清掃行動を割り当て、什器の隙間及び下部の領域に対して差し入れて拭く第2清掃行動を割り当て、什器の周囲等の他の領域に対して箒のように掃く第3清掃行動を割り当てる。生成された清掃要求は記憶部32に記憶される。
【0020】
清掃行動推定部31bは、データ受信部33によって受信した加速度データに基づいて、学習器35を用いて、ユーザ90による清掃行動を推定する。具体的には、学習器35は、ユーザ90による清掃行動を第1~第3清掃行動のいずれか1つに分類する。推定されたユーザ90による清掃行動は記憶部32に記憶される。
【0021】
清掃行動評価部31cは、記憶部32から清掃行動を評価して、第1清掃行動による第1清掃実績時間と、第2清掃行動による第2清掃実績時間と、第3清掃行動による第3清掃実績時間と、第1~第3清掃実績時間を合計した総合計清掃実績時間を含む、清掃実績を生成する。生成された清掃実績は記憶部32に記憶される。
【0022】
フィードバック部31dは、記憶部32から清掃要求と清掃実績とを読み出して、清掃要求に照らして清掃実績を評価してフィードバックを生成する。具体的には、清掃実績が、清掃要求を満たしているか否か、及び/又は清掃要求をどの程度満たしているかを評価する。例えば、清掃要求において第1清掃行動が5分以上と要求されているときに推定された第1清掃実績時間が4分である場合、フィードバック部31dは、清掃要求を満たしていないと評価すると共に、清掃要求の満足度が80%であると評価した、フィードバックを生成する。
【0023】
次いで、フィードバック部31dは、フィードバックをデータ送信部34を介してスピーカ3に送信する。フィードバックはスピーカ3を介してユーザに報知される。
【0024】
上述したように、記憶部32は、清掃要求生成部31aによって生成された清掃要求を記憶する。したがって、記憶部32は本発明に係る清掃要求保存部を構成している。さらに、記憶部32は、清掃行動推定部31bによって推定されたユーザ90による清掃行動と、清掃行動評価部31cによって評価された清掃実績とを記憶する。
【0025】
データ受信部33は、清掃動作取得部10のデータ送信部12により送信された加速度データを受信する。受信した加速度データは、記憶部32に記憶される。データ送信部34は記憶部32に保存された評価結果をスピーカ3に送信する。
【0026】
学習器35は、大量の入力データが入力されると、例えば、教師あり学習、教師なし学習、又は、強化学習等の機械学習により、入力データの関係を学習させ、その関係をパラメータで表す学習済みのモデルを生成する。換言すると、学習器35は、入力データに含まれる特徴を学習し、新たな入力から結果を推定するモデルを生成する。具体的には、学習器35は、ニューラルネットワーク、SVM(サポートベクターマシン)、決定木、又はこれらの組み合わせ等である。
【0027】
本実施形態では、学習器35は、清掃動作取得部10により取得されたユーザ90による清掃動作に基づいて清掃行動を推定する。具体的には、学習器5は、清掃動作取得部10によって予め取得された加速度データとこれに対応するユーザ90の清掃行動とを含む教師データに基いて、清掃動作取得部10によって取得された加速度データからユーザの清掃行動を推定するための機械学習アルゴリズムにより生成された学習済みモデル(清掃AIともいう)である。
【0028】
学習器35は、フロアモップ2による清掃行動を推定するものであり、取得した清掃動作を、加速度データに基づいて、真っ直ぐ押して拭く「第1清掃行動」と、隙間に差し入れて拭く「第2清掃行動」と、箒のように掃く「第3清掃行動」とのいずれかに分類する。したがって、学習器35を機械学習させるための教師データには、第1~第3清掃行動と、それぞれに対応する加速度データが含まれている。
【0029】
入力部36は、清掃対象の部屋100の清掃に関する情報を入力する入力装置である。入力される情報としては、例えば、部屋100の形状及び大きさと、部屋100に配置された各什器の、種類、形状、大きさ、配置、周囲の隙間有無、及び下部の隙間有無と、部屋100の清掃場所(床面、壁面等)と、清掃に使用する清掃用具のうち、1つ以上が含まれている。入力部36としては、キーボードおよびタブレット等の手入力により入力する装置を使用できる。
【0030】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、図3に示す例示的な清掃対象の部屋100を清掃する場合の、清掃支援システム1による清掃支援の流れを説明する。まず、部屋100について説明するが、説明の便宜上、図3における、左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、より具体的には右側をX1、左側をX2、上側をY1、および下側をY2とそれぞれ称する。
【0031】
図3を参照して、清掃対象の部屋100は、床面101がフローリングであり、周囲を壁面102で囲まれたX方向に横長である長方形状の部屋である。部屋100のX2側の壁面102のうちY2側の端部にドア103が設けられている。部屋100の大きさは16畳である。部屋100は、X1側に位置するリビングルーム40と、X2側に位置するキッチンルーム60と、リビングルーム40とキッチンルーム60との間に位置するダイニングルーム50とを含む、いわゆるLDKルームである。
【0032】
リビングルーム40は6畳の広さを有するY方向に長い長方形状である。リビングルーム40には、Y1側の端部にテレビ43が載置されたテレビ台41が配置されており、Y2側の端部に3人掛けのソファ42が配置されている。テレビ台41及びソファ42は、リビングルーム40にわたってX方向に横長に延びており、Y方向側の背面41a,42aが部屋の壁面102に対して当接しており、若しくは掃除する必要がないほどの僅かな隙間を介して離間している一方で、X1側の端部41b,42bが壁面102との間に隙間を有するように配置されている。ソファ42は、複数の脚部(不図示)を介して床面101に載置されており、床面101との間に空間が存在する。
【0033】
したがって、リビングルーム40には、清掃領域として、テレビ台41とソファ42との間に画定されたX方向及びY方向に拡がる矩形状の第1清掃領域R1と、テレビ台41のX1側に壁面102との間に画定されたX方向に延びる第2清掃領域R2と、ソファ42のX1側に壁面102との間に画定されたX方向に延びる第3清掃領域R3と、ソファ42の下側に画定された第4清掃領域R4とが含まれている。
【0034】
ダイニングルーム50は6畳の広さを有するY方向に長い長方形状である。ダイニングルーム50には、Y1側の端部に棚51が配置されており、中央にテーブル52が配置されており、テーブル52の四隅に4脚の椅子53がそれぞれ配置されている。棚51は、背面51aが壁面102に略当接している一方で、テレビ台41との間に隙間を有するように配置されている。テーブル52及び椅子53は脚部(不図示)を介して床面101に載置されており、床面101との間に空間が存在する。
【0035】
したがって、ダイニングルーム50には、清掃領域として、棚51のX1側にテレビ台41との間に画定された第5清掃領域R5と、テーブル52の下側に画定された第6清掃領域R6と、各椅子53の下側に画定された第7清掃領域R7と、テーブル52のY2側に位置しており、ソファ42からキッチンルーム60にかけてX方向に延びる第8清掃領域R8と、第8清掃領域R8のY1側に位置しており、棚51、テーブル52及び椅子53が配置された領域を除く第9清掃領域R9とが含まれている。
【0036】
キッチンルーム60は4畳の広さを有するY方向に長い長方形状である。キッチンルーム60には、X1側の端部にキッチンカウンタ61が配置されており、X2側の端部に冷蔵庫62および食器棚63が配置されている。キッチンカウンタ61はY1側の壁面102からY2側に延びており、第8清掃領域R8のY1側端部に至っている。冷蔵庫62は、X2側の背面62a及びY1側の端部62bが、壁面102に略当接するように配置されている。食器棚63は、冷蔵庫62のY2側に隙間を有する一方で、X2側の背面63aが壁面102に対して当接しており、若しくは掃除する必要がないほどの僅かな隙間を介して離間するように配置されている。
【0037】
したがって、キッチンルーム60には、清掃領域として、キッチンカウンタ61と冷蔵庫62及び食器棚63との間に、Y方向に延びる第10清掃領域R10と、冷蔵庫62と食器棚63との間に画定されたX方向に延びる第11清掃領域R11とが含まれている。上述したように、キッチンルーム60のY2側には、ダイニングルーム50から延びる第8清掃領域R8が位置している。
【0038】
次に図2を参照して、清掃支援システム1による清掃支援の流れについて説明する。まず最初に、入力部36を介して、清掃対象の部屋100の清掃に関する情報である清掃場所情報をサーバ30に入力する(ステップS101)。例えば、清掃場所情報には、部屋100の形状及び大きさと、部屋100に配置された各什器の、種類、形状、大きさ、配置、周囲の隙間有無、及び下部の隙間有無と、部屋100の清掃場所(床面、壁面等)と、清掃に使用する清掃用具のうち、1つ以上が含まれている。この情報入力は、清掃のたびに入力するように構成してもよく、若しくは初期設定時に入力された情報を記憶部32から読み出すように構成してもよい。
【0039】
次いで、サーバ30の清掃要求生成部31aは、清掃場所情報に基づいて清掃要求を生成する(ステップS102)。本実施形態では、清掃要求生成部31aは、清掃場所情報に基づいて、部屋100を第1~第11清掃領域R1~R11の領域に分けて、第1~第11清掃領域R1~R11それぞれに対して、それぞれの領域の大きさ及び形状を考慮して、それぞれの清掃領域に適した清掃行動をそれぞれの領域の広さに応じた時間で割り当てる。
【0040】
具体的には、清掃要求生成部31aは、所定の幅(例えばフロアモップ2の払拭部2bの長手方向の幅)で直線状に拡がる部分を有する、第1清掃領域R1、第8清掃領域R8および第10清掃領域R10に対して、第1清掃行動をそれぞれの領域の広さに応じた時間だけ割り当てる。清掃要求生成部31aは、各什器の下側の領域及び各什器の周囲の隙間領域である、第2~第7清掃領域R2~R7および第11清掃領域にR11対して、第2清掃行動をそれぞれの領域の広さに応じた時間だけ割り当てる。清掃要求生成部31aは、その他の領域(什器の周囲等)である第9清掃領域R9に対して、第3清掃行動を該領域の広さに応じた時間だけ割り当てる。
【0041】
以下の表1には、部屋100について、各清掃領域に割り当てられた清掃行動とその清掃時間とが例示されている。
【0042】
【表1】
【0043】
最終的に、清掃要求生成部31aは、第1清掃行動による清掃時間を合計した第1清掃要求時間と、第2清掃行動による清掃時間を合計した第2清掃要求時間と、第3清掃行動による清掃時間を合計した第3清掃要求時間と、これらを合計した総合計清掃要求時間とを算出し、これらを清掃要求として生成する。記憶部32は、生成された清掃要求を記憶する(ステップS103)。
【0044】
以下の表2には、部屋100について、清掃要求が例示されている。
【0045】
【表2】
【0046】
次に、ユーザ90は、清掃動作取得部10の開始スイッチ13を操作して、清掃を開始する(ステップS104)。清掃が開始されると、加速度センサ11による加速度の計測が開始され(ステップS105)、計測された加速度データはデータ送信部12を介して、サーバ30に送信される(ステップS106)。
【0047】
次いで、サーバ30は、送信された加速度データをデータ受信部33により受信する(ステップS107)。受信した加速度データは、サーバ30によって処理される。具体的には、清掃行動推定部31bが、学習器35を用いて受信した加速度データに基づいてユーザ90による清掃行動を第1~第3清掃行動のいずれに該当するか推定する(ステップS108)。記憶部32は、推定された清掃行動を記憶する(ステップS109)。
【0048】
以降、ユーザ90が清掃動作取得部10の終了スイッチ14を操作して清掃を終了するまで、ステップS105からステップS109の各ステップが繰り返し実施される。したがって、記憶部32には、推定された清掃行動の連続データ、すなわち清掃開始から清掃終了までの各時間における清掃行動が記憶される。
【0049】
次いで、ユーザ90が終了スイッチ14を操作して、清掃を終了すると(ステップS111)、サーバ30の清掃行動評価部31cは、記憶部32から読み出した清掃行動を評価して、推定された清掃行動の連続データから、第1清掃行動が実施された時間を合計した第1清掃実績時間と、第2清掃行動が実施された時間を合計した第2清掃実績時間と、第3清掃行動が実施された時間を合計した第3清掃実績時間と、第1~第3清掃実績時間を合計した総合計清掃実績時間とを含む、清掃実績を算出する(ステップS112)。算出された清掃実績は、記憶部32に記憶される。
【0050】
次いで、フィードバック部31dは、記憶部32から清掃要求と清掃実績とを読み出して、清掃要求における第1~第3清掃要求時間及び総合計清掃要求時間と、清掃実績における第1~第3清掃実績時間及び総合計清掃実績時間とを比較して、ユーザ90による清掃行動を評価する(ステップS113)。
【0051】
例えば、以下の表3に示されるように、フィードバック部31dは、各清掃要求時間および各清掃実績時間に基づいて達成率を評価した評価結果を生成する。このほか各項目を重み付け関数によって1つの指標で表してもよい。
【0052】
【表3】
【0053】
次いで、フィードバック部31dは、評価結果に基づいてユーザ90に返すフィードバックを音声データとして生成して、データ送信部34を介してスピーカ3に出力する(ステップS113)。例えば、上記表3の評価結果に基づいて、すべての項目の達成率をフィードバックとして生成したり、達成率が100%を下回る項目についてのみフィードバックとして生成してもよい。
【0054】
スピーカ3は、フィードバックを音声によりユーザに報知する(ステップS114)。その結果、ユーザ90は、スピーカ3から報知されたフィードバックに基づいて、清掃行動を見直し、例えば達成率が100%に到達していない清掃行動を追加で実施する等、清掃行動がサポートされるので、住環境を清潔に維持しやすい。
【0055】
上記実施形態に係る清掃支援システム1によれば、次の効果が発揮される。
【0056】
(1)清掃支援システム1は、清掃行動に関する要求である清掃要求が保存された記憶部32と、清掃に使用されているフロアモップ2の動作を取得する清掃動作取得部10と、フロアモップ2の動作とこれに対応するユーザ90の清掃行動とを含む教師データに基いて清掃動作取得部10によって取得されたフロアモップ2の動作からユーザの清掃行動を推定するための機械学習を行った学習済みの学習器35と、学習器35を利用して清掃動作取得部10により取得されたフロアモップ2の動作に基づいてユーザ90の清掃行動を推定する清掃行動推定部31bと、推定されたユーザ90の清掃行動を清掃要求に照らしてユーザ90にフィードバックを返すフィードバック部31dと、を有する。
その結果、ユーザ90に対して清掃行動に対するフィードバックが返されるので、適切な清掃行動についての示唆をユーザ90に与えることができる。その結果、ユーザ90の清掃がサポートされるので、住環境を清潔に維持しやすい。
【0057】
(2)清掃要求には、1つ又は複数の清掃行動と、清掃行動ごとの清掃時間とが、少なくとも含まれており、清掃行動推定部31bは、清掃行動ごとの清掃時間を推定し、フィードバック部31dは、清掃行動ごとの清掃時間に関するフィードバックをさらに返す。
その結果、ユーザ90に対して清掃行動ごとの清掃時間に対するフィードバックが返されるので、清掃行動に対するより細かな示唆をユーザ90に与えることができる。
【0058】
(3)清掃動作取得部10は、フロアモップ2に取り付けられている。
その結果、フロアモップ2の動作がフロアモップ2から直接に取得されるので、例えばユーザ90に装着する場合に比して、フロアモップ2の動作が精度よく取得される。よって、清掃行動推定部31bによる清掃行動の推定精度が向上する。
【0059】
(4)清掃動作取得部10は、フロアモップ2の重心位置に取り付けられている。
その結果、フロアモップ2に清掃動作取得部10が取り付けられた場合でも、フロアモップ2の重心の位置が変化を抑制できる。よって、清掃動作取得部10をフロアモップ2に取り付けたことによる、ユーザ90のフロアモップ2の取り扱い易さ等の清掃行動への影響が抑制される。
【0060】
[第2実施形態]
図4は第2実施形態に係る清掃支援システム200の概略構成を示している。清掃支援システム200は、第1実施形態に係る清掃支援システム1に対して、ユーザ90に対して清掃領域ごとにフィードバックをさらに返すように構成した点で異なっている。
【0061】
具体的には、清掃支援システム200は、第1実施形態に係る清掃支援システム1に対して、清掃位置取得部210とビーコン発信機220とを追加で備えると共に、演算処理部31に清掃位置推定部31eを追加で有している点で異なっている。さらに、清掃要求生成部31aが清掃領域ごとに清掃要求を生成し、清掃行動評価部31cが清掃領域ごとに清掃行動を評価する点でも清掃支援システム1に対して異なっている。以下の説明では、第1実施形態と共通する構成要素については同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
清掃位置取得部210は、フロアモップ2の柄部2aに取り付けられている。好ましくは、清掃位置取得部210は、フロアモップ2の重心位置が変化しないように、清掃動作取得部10と共にその取付位置が調整されている。清掃位置取得部210は、ビーコン受信機211と、データ送信部212とを有している。清掃対象の部屋には複数のビーコン発信機220が設けられており、ビーコン受信機211は、各ビーコン発信機220が発するビーコン信号をそれぞれ受信し、データ送信部212を介してサーバ30にビーコン信号の受信結果を送信する。
【0063】
なお、フロアモップ2にビーコン発信機を取り付ける一方で、複数のビーコン受信機とデータ送信部とを部屋側に設け、複数のビーコン受信機それぞれで受信したビーコン信号をそれぞれのデータ送信部を介してサーバ30に送信するように構成してもよい。
【0064】
次に、演算処理部31について説明すると、清掃要求生成部31aは清掃領域ごとに清掃行動及び清掃時間を含む清掃要求を生成する。すなわち、第1実施形態において説明した表1に示すように各清掃領域ごとに清掃要求を生成する。
【0065】
清掃位置推定部31eは、清掃位置取得部210から受信したビーコン信号に基づいてフロアモップ2の位置を検出し、各清掃行動を清掃領域に分類する。この結果、清掃行動評価部31cによって評価された清掃実績は、清掃領域が関連付けられて記憶部32に記憶される。
【0066】
清掃行動評価部31cは、記憶部32から読み出した清掃行動を評価して、第1清掃行動による第1清掃実績時間と、第2清掃行動による第2清掃実績時間と、第3清掃行動による第3清掃実績時間と、第1~第3清掃実績時間を合計した総合計清掃実績時間を含む、清掃実績を清掃領域ごとに生成する。生成された清掃実績は記憶部32に記憶される。
【0067】
フィードバック部31dは、記憶部32から清掃要求と清掃実績とを読み出して、清掃領域ごとに清掃要求に照らして清掃実績を評価してフィードバックを生成する。具体的には、清掃領域ごとに、清掃実績が、清掃要求を満たしているか否か、及び/又は清掃要求をどの程度満たしているかを評価する。例えば、ある清掃領域において、清掃要求において第1清掃行動が5分以上と要求されているときに推定された第1清掃実績時間が4分である場合、フィードバック部31dは、清掃要求を満たしていないと評価すると共に、清掃要求の満足度が80%であると評価した、フィードバックを生成する。
【0068】
次いで、フィードバック部31dは、フィードバックをデータ送信部34を介してスピーカ3に送信する。フィードバックはスピーカ3を介してユーザに報知される。
【0069】
次に、図5に示すフローチャートを参照して、図6に示す例示的な清掃対象の部屋230を清掃する場合の、清掃支援システム200による清掃支援の流れを説明する。まず、部屋230について説明するが、説明の便宜上、図6における、左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、より具体的には右側をX1、左側をX2、上側をY1、および下側をY2とそれぞれ称する。
【0070】
図6を参照して、清掃対象の部屋230は、床面231がフローリングであり、周囲を壁面232で囲まれた略正方形状の部屋である。部屋230のX2側の壁面のうちY1側の端部にドア233が設けられている。部屋230の大きさは8畳である。部屋230は寝室である。
【0071】
部屋230には、Y1側に机235及び椅子236が配置されており、Y2側にベッド237が配置されている。机235は、X1側及びY1側の壁面232に略当接するように配置されており、Y方向に横長に延びている。椅子236は、机235のX2側に配置されている。ベッド237は、机235に対してX方向に隙間を有するようにX1側およびY2側の壁面232に略当接するように配置されており、X方向に横長に延びている。一方、ベッド237はX2側の壁面232から離間している。机235、椅子236及びベッド237は、複数の脚部(不図示)を介して床面231に載置されており、床面231との間に空間が存在する。
【0072】
したがって、部屋230には、清掃領域として、机235及び椅子236よりもX2側であってベッド237よりもY1側に画定された略矩形状に拡がる第1清掃領域S1と、机235とベッド237との間に画定されたY方向に延びる第2清掃領域S2と、ベッド237とX2側の壁面232との間に画定された略矩形状の第3清掃領域S3と、机235の下側に画定された第4清掃領域S4と、椅子236の下側に画定された第5清掃領域S5と、ベッド237の下側に画定された第6清掃領域S6とが含まれている。
【0073】
次に図5を参照して、清掃支援システム200による清掃支援の流れについて説明する。まず最初に、入力部36を介して、清掃対象の部屋230の清掃に関する情報である清掃場所情報をサーバ30に入力する(S201)。例えば、清掃場所情報には、部屋230の形状及び大きさと、部屋230に配置された各什器の、種類、形状、大きさ、配置、周囲の隙間有無、及び下部の隙間有無と、部屋230の清掃場所(床面、壁面等)と、清掃に使用する清掃用具のうち、1つ以上が含まれている。
【0074】
次いで、サーバ30の清掃要求生成部31aは、清掃場所情報に基づいて清掃要求を生成する(ステップS202)。本実施形態では、清掃要求生成部31aは、清掃場所情報に基づいて、部屋230を第1~第6清掃領域S1~S6の領域に分けて、第1~第6清掃領域S1~S6それぞれに対して、清掃行動をそれぞれの領域の広さに応じた時間で割り当てる。
【0075】
具体的には、清掃要求生成部31aは、所定の幅(例えばフロアモップ2の払拭部2bの長手方向の幅)で直線状に拡がる部分を有する第1清掃領域S1に対して、第1清掃行動を該領域の広さに応じた時間だけ割り当てる。清掃要求生成部31aは、机235、椅子236及びベッド237の下側の領域である第4~第6清掃領域S4~S6に対して第2清掃行動をそれぞれの領域の広さに応じた時間だけ割り当てる。清掃要求生成部31aは、各各什器の周辺の領域である第2及び第3清掃領域S2,S3に対して第3清掃行動をそれぞれの領域の広さに応じた時間だけ割り当てる。
【0076】
以下の表4には、部屋230について、清掃要求生成部31aが生成した清掃要求、すなわち各清掃領域ごとの清掃行動とその清掃時間と、各清掃時間を合計した総合計清掃要求時間とが例示されている。記憶部32は、生成された清掃要求を記憶する(ステップS203)。
【0077】
【表4】
【0078】
次に、ユーザ90は、清掃動作取得部10の開始スイッチ13を操作して、清掃を開始する(ステップS204)。清掃が開始される、加速度センサ11による加速度の計測と、ビーコン受信機211によるビーコン信号(位置計測用信号)の受信とが開始され(ステップS205)、計測された加速度およびビーコン信号の信号受信結果はそれぞれ、データ送信部12、212を介して、サーバ30に送信される(ステップS206)。
【0079】
次いで、サーバ30は、送信された加速度データ及び信号受信結果をデータ受信部33により受信する(ステップS207)。受信した加速度データ及び信号受信結果は、サーバ30によって処理される。具体的には、清掃行動推定部31bが、学習器35を用いて受信した加速度データに基づいてユーザ90による清掃行動を第1~第3清掃行動のいずれに該当するか推定する。さらに、清掃位置推定部31eは、受信信号結果に基づいて第1~第6領域のいずれの領域が清掃されているか推定する(ステップS208)。記憶部32は、推定された清掃行動及び清掃領域を記憶する(ステップS209)。
【0080】
以降、ユーザ90が清掃動作取得部10の終了スイッチ14を操作して清掃を終了するまで、ステップS205からステップS209の各ステップが繰り返し実施される。したがって、記憶部32には、推定された清掃行動及び清掃領域の連続データ、すなわち清掃開始から清掃終了までの各時間における清掃行動及び清掃領域が記憶される。
【0081】
次いで、ユーザ90が終了スイッチ14を操作して、清掃を終了すると(ステップS211)、サーバ30の清掃行動評価部31cは、記憶部32から清掃行動及び清掃領域を読み出して、推定された清掃行動及び清掃領域の連続データから、第1清掃行動が実施された時間を合計した第1清掃実績時間と、第2清掃行動が実施された時間を合計した第2清掃実績時間と、第3清掃行動が実施された時間を合計した第3清掃実績時間とを、清掃領域ごとに算出すると共に、第1~第3清掃実績時間を合計した総合計清掃実績時間とを含む、清掃実績を清掃領域ごとに算出する(ステップS212)。算出された清掃実績は、記憶部32に記憶される。
【0082】
次いで、フィードバック部31dは、記憶部32から清掃要求と清掃実績とを読み出して、清掃領域ごとに、清掃要求と清掃実績とを比較して、ユーザ90による清掃行動を評価した評価結果を生成する(ステップS212)。
【0083】
例えば、以下の表5に示されるように、フィードバック部31dは、第1清掃領域S1について、清掃要求及び清掃実績に基づいて達成率を評価する。説明は省略するが、フィードバック部31dは他の清掃領域についても同様に評価する。
【0084】
【表5】
【0085】
次いで、フィードバック部31dは、評価結果に基づいてユーザ90に返すフィードバックを生成して、データ送信部34を介してスピーカ3に出力する(ステップS213)。例えば、フィードバックは、清掃領域ごとに生成されてもよく、部屋230で1つに纏纏めて生成されてもよい。スピーカ3は、フィードバックを音声によりユーザに報知する(ステップS214)。
【0086】
上記実施形態では、ビーコン信号を用いてフロアモップ2の位置を検出するようにしたが、このほかGPSを用いてもよい。また、図4に2点鎖線で示されるカメラ4等の撮像手段によって撮影された静止画及び/又は動画に基づいて、フロアモップ2の位置を検出するように構成してもよい。この他、LiDAR(Light Detection And Ranging)光による検知と測距を利用してもよい。例えば、部屋230に設けたLiDARよりフロアモップ2に対して光を照射してフロアモップ2からの反射光をLiDARで観測することにより、フロアモップ2の位置を検出するようにしてもよい。また、Wi-Fi(登録商標)の電波強度(RSSI及び/又はCSI)による検知と測距を利用してもよい。例えば、部屋230にWi-Fiの送信機と受信機とを設け、これらの間にフロアモップ2で清掃を行うときの、フロアモップ2の位置と受信機による受信波形とに基づいて機械学習されたAIを用いて、受信機による受信波形に基づいてフロアモップ2の位置を検出するようにしてもよい。また、例えば部屋230にWi-Fiの送信機を設け、フロアモップ2にWi-Fiの受信機を設けて、フロアモップ2におけるWi-Fi信号の受信強度に基づいて、部屋230におけるフロアモップ2の位置を検出するようにしてもよい。
【0087】
本実施形態に係る清掃支援システム200は、フロアモップ2の位置を取得する清掃位置取得部210と、清掃位置取得部210によって取得されたフロアモップ2の位置に基づいてユーザ90による清掃位置を推定する清掃位置推定部31eとをさらに備え、清掃要求には、清掃領域に関する要求がさらに含まれており、フィードバック部31dは、清掃領域についてのフィードバックをさらに返す。
その結果、ユーザ90に対して清掃領域に関するフィードバックも返されるので、清掃領域についての示唆をユーザ90に与えることができるので、清掃漏れ領域の発生が抑制される。
[第3実施形態]
【0088】
図7は第3実施形態に係る清掃支援システム300の概略構成を示している。清掃支援システム300は、第2実施形態に係る清掃支援システム200に対して、清掃済場所に画像を投影する点で異なっている。
【0089】
具体的には、清掃支援システム300は、第2実施形態に係る清掃支援システム200に対して、プロジェクタ310を追加で備えると共に、演算処理部31に清掃済場所に画像を投影するようにプロジェクタ310に信号を出力する清掃済場所表示部31fを追加で有している点で異なっている。清掃済場所表示部31fは、記憶部32から読み出した清掃済場所に対してプロジェクタ310に色彩を表示するように出力する。
【0090】
図8に示すフローチャートを参照して、清掃支援システム300による清掃支援の流れを説明すると、ステップS301~S309及びS311~S314は、清掃支援システム200におけるステップS201~S209及びS211~S214と同じであるため、その説明を省略する。ステップS310において、清掃済場所表示部31fは、記憶部32からフロアモップ2により払拭された場所を読み出し、該場所に対して順次に色彩を投影するようにプロジェクタ310に出力する。
【0091】
図9は、ユーザ90がフロアモップ2を用いて払拭した場所に、プロジェクタ310から色彩が投影された状態を概念的に示している。図9では、ハッチングを付して示すように、第1清掃領域S1に対して、ユーザ90によるフロアモップ2の払拭にしたがって順次(リアルタイム)に画像が投影されている。例えば、プロジェクタ310から投影する色彩を、1回目に払拭されたときに赤色を投影し、2回目に払拭されたときに黄色を投影し、3回目に払拭されたときに青色を投影するように、払拭の回数によって変化させてもよい。また、プロジェクタ310から投影する色彩に換えて、模様を含む画像を投影するようにしてもよい。
【0092】
本実施形態に係る清掃支援システム300は、清掃した場所に色彩及び/又は画像を投影するプロジェクタを含んでいる。
その結果、フィードバックとして清掃済場所がユーザ90に与えられるので、未清掃の場所が視覚的に判りやすい。よって、ユーザ90に、まだ清掃がされておらず清掃が必要な場所の示唆を与えることができ、未清掃の場所の発生がより一層抑制される。また、払拭の回数によって投影する色彩を変化させることによって、複数回の払拭が必要な場所においても、複数の払拭を確実に行いやすく、ユーザ90による清掃行動が支援される。
【0093】
上記各実施形態では、清掃用具としてフロアモップ2を例にとって、フロアモップ2を用いた清掃行動を、第1~第3清掃行動に分類したが、この他にもフロアモップ2による他の清掃行動を追加してもよい。例えば、フロアモップ2を用いて、S字状に拭く場合、掃き止める等の清掃行動を含めてもよい。また、清掃用具としてフロアモップ2以外の種々の清掃用具(例えば、ハンディモップ、箒、電気掃除機等)に対しても本発明を適用できる。その場合でも、清掃用具それぞれに対応した清掃行動を設定すればよい。
【0094】
また、1つの清掃領域に対して、第1清掃行動又は第2清掃行動等、複数の清掃行動を割り当てるようにしてもよい。この場合、例えば、複数の清掃行動による清掃実績を合計した総合計清掃実績時間を、清掃要求に照らして評価してもよい。
【0095】
また、上記各実施形態では、1種類の清掃用具(フロアモップ2)のみを用いる場合を例にとって説明したが、複数の清掃用具を使って清掃する場合にも本発明を適用できる。その場合、清掃用具ごとに検出された加速度データ(及び位置データ)を、各清掃用具を識別できる信号と共に、サーバ30に送信し、サーバ30が清掃用具ごとに清掃動作(及び位置)を分析して清掃行動を推定するように構成すればよい。この場合、清掃要求を清掃用具ごとに設定してもよく、清掃用具ごとに清掃行動の評価及びフィードバックをしてもよい。
【0096】
すなわち、清掃要求には、1つ又は複数の清掃用具と、清掃用具ごと清掃時間とが、少なくとも含まれており、清掃行動推定部31bは、清掃用具ごとの清掃時間を推定し、フィードバック部31dは、清掃用具ごとの清掃時間に関するフィードバックをさらに返すように構成してもよい。
その結果、ユーザ90に対して清掃用具ごとの清掃時間に対するフィードバックが返されるので、清掃行動に対するより細かな示唆をユーザ90に与えることができる。
【0097】
また、上記各実施形態では、フィードバック部31dが、各清掃行動を清掃時間の観点で評価したが、これに換えて若しくは追加で清掃の品質を評価するように構成してもよい。例えば、加速度データに基づいて、清掃が適切であるかどうかを判断してもよく、例えば加速度が所定の閾値を超えるような場合は埃が舞い上がる場合がある等好ましくない清掃であると推定でき、このほか衝撃的な加速度が検出される場合には清掃用具が什器等に衝突していると推定してもよい。この場合には、フィードバック部31dが、ユーザ90に対して、適切な速さで払拭掃除をするよう促したり、什器への衝突に気を付けるようなフィードバックを返すように構成してもよい。
【0098】
すなわち、清掃要求には、1つ又は複数の清掃行動と、清掃行動ごとの清掃の品質とが、少なくとも含まれており、清掃行動推定部31bは、清掃行動ごとの清掃の品質を推定し、フィードバック部31dは、清掃の品質に関するフィードバックをさらに返してもよい。
その結果、ユーザ90に対して清掃の品質に対するフィードバックが返されるので、より高品質な清掃行動についての示唆をユーザ90に与えることができる。
【0099】
また、上記各実施形態では、清掃動作取得部10を清掃用具に取り付けた場合を例にとって説明したがこれに限らない。例えば、ユーザ90が身に着けるスマートフォン等のスマートデバイスに実装された加速度センサ等によって代用してもよい。
【0100】
また、上記各実施形態では、清掃動作取得部10として、加速度センサ11を用いる場合を例にとって説明したが、加速度センサ11に換えて若しくは追加でジャイロセンサにより角速度を計測し、角速度に基づいて清掃行動を推定するように構成してもよい。
【0101】
さらにまた、図1図4及び図7に二点鎖線で示すように、加速度センサ11に換えて若しくは追加でカメラ4等の画像撮像部によって撮影された静止画及び/又は動画に基づいて清掃行動を推定するように構成してもよい。この場合、学習器35は、角加速度データ若しくは静止画及び/又は動画とこれに対応する清掃行動とを含む教師データから機械学習されて、角加速度データ若しくは静止画及び/又は動画に基づいて清掃行動を推定するようにモデル化すればよい。
【0102】
また、上記各実施形態では、フィードバックを、スピーカ3を介して報知するように構成したが、スピーカ3に換えて若しくは追加でユーザ90が装着するスマートデバイスの画面に画像表示させたり、清掃用具若しくはスマートデバイスから振動を生じさせることによってフィードバックを返すように構成してもよい。フィードバックを振動で返す場合、例えば清掃要求が満たされた場合に、清掃用具若しくはスマートデバイスに振動を生じさせるようにしてもよい。
その結果、ユーザ90に清掃に対するフィードバックを容易に返すことが出来る。
【0103】
また、上記各実施形態では、サーバ30を清掃動作取得部10とは別体のコンピュータとして構成したが、これらを一体化してもよい。例えば、ユーザ90が装着するスマートデバイスに清掃動作取得部10とサーバ30の上記機能を実装してもよい。また、清掃動作取得部10を清掃用具に取り付ける又はユーザ90が装着するスマートデバイスに実装する一方で、サーバ30の上記機能を清掃動作取得部10とは別体のユーザ90が装着するスマートデバイスに実装してもよい。
【0104】
上記各実施形態では、清掃要求生成部31aが、清掃対象の部屋に関して入力された情報に基づいて清掃要求を生成するように構成したが、これに限らない。ユーザ90が清掃要求を設定してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 清掃支援システム
2 清掃用具(フロアモップ)
3 スピーカ
4 カメラ
10 清掃動作取得部
11 加速度センサ
12 データ送信部
30 サーバ
31 演算処理部
31a 清掃要求生成部
31b 清掃行動推定部
31c 清掃行動評価部
31d フィードバック部
31e 清掃位置推定部
31f 清掃済場所表示部
32 記憶部
35 学習器
36 入力部
90 ユーザ(清掃者)
200 清掃支援システム
210 清掃位置取得部
211 ビーコン受信機
220 ビーコン発信機
300 清掃支援システム
310 プロジェクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9