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特開2023-142148リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池及びリチウム二次電池用正極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142148
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池及びリチウム二次電池用正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230928BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230928BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048876
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】戸井 信二
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050FA02
5H050FA05
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】充放電を繰り返し行ってもリチウム二次電池用正極活物質にひび割れが生じ難く、サイクル維持率及び放電レート特性を向上することができるリチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法の提供。
【解決手段】細孔を有し、Liと元素Mを含むリチウム金属複合酸化物の粒子と、前記細孔内に位置し、Siを含む化合物と、を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、前記元素MとSiの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が、0mol%より大きく、5.0mol%以下であり、圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度A50に対する35MPaでの圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度B50の比率であるB50/A50が0.92-1.00である、リチウム二次電池用正極活物質。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を有し、Liと元素Mを含むリチウム金属複合酸化物の粒子と、
前記細孔内に位置し、Siを含む化合物と、を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記元素MとSiの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が、0mol%より大きく、5.0mol%以下であり、
圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度A50に対する35MPaでの圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度B50の比率であるB50/A50が0.92-1.00である、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の10%累積体積粒度A10に対する前記圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の10%累積体積粒度B10の比率であるB10/A10が0.92-1.00である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の90%累積体積粒度A90に対する前記圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の90%累積体積粒度B90の比率であるB90/A90が0.94-1.00である、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム金属複合酸化物は、前記元素MとしてNi及び元素Xを含み、
前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、B、S及びPからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、
前記リチウム二次電池用正極活物質に含まれるLiと、前記Niと、前記元素Xの物質量比は、下記式(I)を満たす請求項1~3の何れか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[Li]:[Ni]:[X]=b:(1-a):a (I)
(ただし、0.9≦b≦1.2及び0<a≦0.2)
【請求項5】
前記リチウム二次電池用正極活物質のBET比表面積が2.0m/g以下である、請求項1~4の何れか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含有するリチウム二次電池用正極。
【請求項7】
請求項6に記載のリチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池。
【請求項8】
元素Mを含む金属複合化合物とSiを含む溶液とを混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を乾燥させてSi含有金属複合化合物を得る工程と、
前記Si含有金属複合化合物とリチウム化合物を混合して焼成する工程と、を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記混合物を得る工程において、前記元素MとSiの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が、0mol%より大きく、5.0mol%以下となるよう前記金属複合化合物と前記Siを含む溶液とを混合する、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、Liと、前記元素MとしてNi及び元素Xを含むリチウム金属複合酸化物を含み、
前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、B、S及びPからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、
前記リチウム二次電池用正極活物質に含まれるLiと、前記Niと、前記元素Xの物質量比は、下記式(I)を満たす請求項8又は9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[Li]:[Ni]:[X]=b:(1-a):a (I)
(ただし、0.9≦b≦1.2及び0<a≦0.2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池及びリチウム二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池用正極活物質として、リチウム金属複合酸化物が用いられている。リチウム二次電池の充放電を行うと、リチウム二次電池用正極活物質からのリチウムイオンの脱離及びリチウム二次電池用正極活物質へのリチウムイオンの挿入が起こる。リチウム二次電池の充放電を繰り返し行うと、リチウム二次電池用正極活物質が膨張及び収縮を繰り返し、リチウム二次電池用正極活物質にひび割れが生じることがある。このひび割れによりリチウム二次電池のサイクル維持率が低下するため、リチウム二次電池用正極活物質の強度を制御する試みがなされている。
【0003】
特許文献1は、Co、Ni及びMnの群から選ばれる1種の元素と、Liとを主成分とする単分散の一次粒子からなるリチウム複合酸化物を開示している。特許文献1に記載のリチウム複合酸化物は、特定の平均粒子径、比表面積及び嵩密度を有し、粒界がない。そのため、正極成型時の正極活物質のプレスや、リチウム二次電池の充放電時正極活物質が膨張及び収縮することで生じる正極活物質のひび割れが起りにくいという特性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP-A-2004-355824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、単分散の一次粒子からなるリチウム複合酸化物は、ひび割れや破壊が生じにくいが、リチウム二次電池の放電レート特性とサイクル維持率の双方を向上させる観点から、更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、リチウム二次電池の充放電を繰り返し行ってもリチウム二次電池用正極活物質にひび割れが生じ難く、二次電池のサイクル維持率及び放電レート特性を向上することができるリチウム二次電池用正極活物質、これを用いたリチウム二次電池用正極、これを用いたリチウム二次電池及びリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]細孔を有し、Liと元素Mを含むリチウム金属複合酸化物の粒子と、前記細孔内に位置し、Siを含む化合物と、を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、前記元素MとSiの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が、0mol%より大きく、5.0mol%以下であり、圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度A50に対する35MPaでの圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度B50の比率であるB50/A50が0.92-1.00である、リチウム二次電池用正極活物質。
[2]前記圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の10%累積体積粒度A10に対する前記圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の10%累積体積粒度B10の比率であるB10/A10が0.92-1.00である、[1]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[3]前記圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の90%累積体積粒度A90に対する前記圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の90%累積体積粒度B90の比率であるB90/A90が0.94-1.00である、[1]又は[2]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[4]前記リチウム金属複合酸化物は、前記元素MとしてNi及び元素Xを含み、前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、B、S及びPからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記リチウム二次電池用正極活物質に含まれるLiと、前記Niと、前記元素Xの物質量比は、下記式(I)を満たす[1]から[3]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[Li]:[Ni]:[X]=b:(1-a):a (I)
(ただし、0.9≦b≦1.2及び0<a≦0.2)
[5]前記リチウム二次電池用正極活物質のBET比表面積が2.0m/g以下である、[1]~[4]の何れか1つに記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用正極活物質を含有するリチウム二次電池用正極。
[7][6]に記載のリチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池。
[8]元素Mを含む金属複合化合物とSiを含む溶液とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物を乾燥させてSi含有金属複合化合物を得る工程と、前記Si含有金属複合化合物とリチウム化合物を混合して焼成する工程と、を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[9]前記混合物を得る工程において、前記元素MとSiの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が、0mol%より大きく、5.0mol%以下となるよう前記金属複合化合物と前記Siを含む溶液とを混合する、[8]に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[10]前記リチウム二次電池用正極活物質は、Liと、前記元素MとしてNi及び元素Xを含むリチウム金属複合酸化物を含み、前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、B、S及びPからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記リチウム二次電池用正極活物質に含まれるLiと、前記Niと、前記元素Xの物質量比は、下記式(I)を満たす[8]又は[9]に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[Li]:[Ni]:[X]=b:(1-a):a (I)
(ただし、0.9≦b≦1.2及び0<a≦0.2)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リチウム二次電池の充放電を繰り返し行ってもリチウム二次電池用正極活物質にひび割れが生じ難く、二次電池のサイクル維持率及び放電レート特性を向上することができるリチウム二次電池用正極活物質、これを用いたリチウム二次電池用正極、これを用いたリチウム二次電池及びリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の一態様におけるリチウム二次電池用正極活物質のSEM断面画像である。
図2】本実施形態の一態様におけるリチウム二次電池用正極活物質のSEM断面画像にSi元素のマッピング画像を重ねた画像である。
図3】本実施形態の一態様における圧粉処理装置の概略断面図である。
図4】本実施形態の一態様におけるリチウム二次電池の一例を示す概略構成図である。
図5】本実施形態の一態様における全固体リチウム二次電池の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一態様におけるリチウム二次電池用正極活物質について説明する。以下の複数の実施形態では、好ましい例や条件を共有してもよい。また、本明細書において、各用語を以下に定義する。
【0011】
本願明細書において、金属複合化合物(Metal Composite Compound)を以下「MCC」と称し、リチウム金属複合酸化物(Lithium Metal composite Oxide)を以下「LiMO」と称し、リチウム二次電池用正極活物質(Cathode Active Material for lithium secondary batteries)を以下「CAM」と称す。
【0012】
「Ni」とは、ニッケル金属ではなく、ニッケル原子を指す。「Co」及び「Li」等も同様に、それぞれコバルト原子及びリチウム原子等を指す。
【0013】
数値範囲を例えば「1-10μm」又は「1~10μm」と記載した場合、1μmから10μmまでの範囲を意味し、下限値である1μmと上限値である10μmを含む数値範囲を意味する。
【0014】
[BET比表面積]
BET比表面積は、BET(Brunauer,Emmett,Teller)法によって測定される値である。BET比表面積の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。例えば、測定対象粉末1gを窒素雰囲気中、150℃で30分間乾燥させた後、BET比表面積計(例えば、マウンテック社製、Macsorb(登録商標))を用いて測定することができる(単位:m/g)。
【0015】
[累積体積粒度]
累積体積粒度は、レーザー回折散乱法によって測定される値である。具体的には、測定対象、例えばCAMの粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、前記粉末を分散させた分散液を得る。次に、得られた分散液についてレーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。得られた累積粒度分布曲線において、微小粒子側から10%累積時の粒子径の値が10%累積体積粒度(μm)、微小粒子側から50%累積時の粒子径の値が50%累積体積粒度、微小粒子側から90%累積時の粒子径の値が90%累積体積粒度である。
【0016】
[組成分析]
CAMの組成は、測定元素に応じて各粉末を酸又はアルカリに溶解させる処理により溶解した後、ICP発光分光分析装置を用いて測定する。ICP発光分光分析装置としては、例えばOptima7300(株式会社パーキンエルマー製)を使用できる。
【0017】
「サイクル維持率」とは、特定の条件下でリチウム二次電池の充放電を所定の回数繰り返すサイクル試験を行った後の、リチウム二次電池の初期放電容量に対する、充放電を繰り返した後のリチウム二次電池の放電容量の割合を意味する。
本明細書においては、「サイクル維持率」を以下に示す条件で測定する。
【0018】
[サイクル試験]
上述の初回充放電試験の後、以下の条件で充放電を行うことを一回のサイクルとし、このサイクルを50回繰り返す試験を行う。
試験温度:25℃
充電最大電圧4.3V、充電電流0.5CA、定電流定電圧充電、0.05CA電流値にて終了
放電最小電圧2.5V、放電電流1CA、定電流放電
【0019】
50サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で割った値を算出し、この値をサイクル維持率(%)とする。
【0020】
「放電レート特性」とは、0.2CAでの放電容量を100%とした場合の3CAでの放電容量の比率をいう。この比率が高ければ高いほど電池は高出力を示し、電池性能として好ましい。本明細書では、以下の条件で放電レート試験を行って得られた値を放電レート特性の指標とする。
【0021】
[放電レート試験]
試験温度:25℃
充電最大電圧4.3V、充電電流0.2CA、定電流定電圧充電
放電最小電圧2.5V、放電電流0.2CAまたは3CA、定電流放電
【0022】
0.2CAで定電流放電させたときの放電容量と3CAで定電流放電させたときの放電容量とを用い、以下の式で求められる3CA/0.2CA放電容量比率を求め、放電レート特性の指標とする。
(3CA/0.2CA放電容量比率)
3CA/0.2CA放電容量比率(%)
=3CAにおける放電容量/0.2CAにおける放電容量×100
【0023】
<リチウム二次電池用正極活物質>
本実施形態のCAMは、細孔を有し、Liと元素Mを含むリチウム金属複合酸化物の粒子と、前記細孔内に位置し、Siを含む化合物と、を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、前記元素MとSiの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が、0mol%より大きく、5.0mol%以下であり、圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度A50に対する35MPaでの圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度B50の比率であるB50/A50が0.92-1.00である。
【0024】
本実施形態におけるCAMは、複数の粒子の集合体である。言い換えれば、本実施形態におけるCAMは、粉末状である。本実施形態において、複数の粒子の集合体は、二次粒子のみを含んでいてもよく、一次粒子と二次粒子の混合物であってもよい。
【0025】
本実施形態において、「一次粒子」とは、走査型電子顕微鏡などを用いて5000倍以上30000倍以下の視野にて観察した際に、外観上に粒界が存在しない粒子を意味する。
【0026】
本実施形態において、「二次粒子」とは、前記一次粒子が凝集している粒子である。即ち、二次粒子は一次粒子の凝集体である。二次粒子は、複数の細孔を有する。
【0027】
CAMは、細孔を有するLiMOの粒子と、細孔内に位置しSiを含む化合物と、を含む。Siを含む化合物が細孔内に存在すると、Siを含む化合物が細孔表面間のLiMOの結晶の結合を強化する。その結果、リチウム二次電池の充放電を繰り返してもひび割れが生じ難く、サイクル維持率を向上することができる。また、一次粒子間及び前記細孔内にSiを含む化合物が存在することで、充放電の過程で導電性を有するLi含有Si化合物が形成されやすくなり、リチウム二次電池の放電レート特性を向上することができる。
【0028】
図1は、CAMのSEM断面画像であり、図2は、CAMのSEM断面画像にSi元素のマッピング画像を重ねた画像である。図2では、Si元素の存在する部分が明瞭となるよう、マッピング画像においてSi元素が確認された部分をハッチングで示している。図2からわかるように、Siを含む化合物が細孔内に存在する。
【0029】
Siを含む化合物は、SiO、SiO、HSiO、HSi、HSiO、HSi、LiSi11、LiSiO、LiSiOの少なくとも1つを含んでいてもよい。Li含有Si化合物は、リチウムイオン伝導性を有するため、リチウム二次電池の放電レート特性が向上する。
【0030】
SiとLiMOに含まれる元素Mの物質量の総和に対するSiの物質量の割合は、0mol%より大きく、5.0mol%以下であり、0.1-3.0mol%以下であることが好ましく、0.1-2.0mol%以下であることがより好ましい。Siと元素Mの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が0mol%より大きいと、LiMOの結晶の結合を強化することができる。Siと元素Mの物質量の総和に対するSi物質量の割合が5mol%以下であると、Li拡散性に優れるため高い容量を得やすい。Siと元素Mの物質量の総和に対するSi物質量の割合が5mol%を超えると、Li拡散性が低下するため、容量低下を招きやすくなる。
【0031】
本実施形態において、CAMの粒子強度は、圧粉処理前と圧粉処理後の50%累積体積粒度の比率で表される。具体的には、CAMの粒子強度は、圧粉処理前のCAMの50%累積体積粒度A50に対する35MPaでの圧粉処理後のCAMの50%累積体積粒度B50の比率であるB50/A50で表される。
【0032】
50/A50は、0.92-1.00である。B50/A50は、0.93以上が好ましく、0.94以上がより好ましい。B50/A50の上限値は、1.00であることが好ましいが、0.99であってもよく、0.98であってもよい。B50/A50の上限と下限値は、任意に組み合わせることができ、例えば0.93-0.99であってもよく、0.94-0.98であってもよい。B50/A50が0.92-1.00であると、リチウム二次電池の充放電を繰り返してもひび割れが生じ難く、サイクル維持率を向上することができる。
【0033】
圧粉処理前のCAMの10%累積体積粒度A10に対する35MPaでの圧粉処理後のCAMの10%累積体積粒度B10の比率であるB10/A10は、0.93以上であることが好ましく、0.94以上であることがより好ましい。B10/A10の上限値は、1.00であることが好ましいが、0.99であってもよく、0.98であってもよい。B10/A10の上限値と下限値は、任意に組み合わせることができ、例えば0.93-0.99であってもよく、0.94-0.98であってもよい。B10/A10が0.93-1.00であると、リチウム二次電池の充放電を繰り返してもひび割れが生じ難く、サイクル維持率を向上することができる。
【0034】
圧粉処理前のCAMの90%累積体積粒度A90に対する35MPaでの圧粉処理後のCAMの90%累積体積粒度B90の比率であるB90/A90は、0.94以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましい。B90/A90の上限値は、1.00であることが好ましいが、0.99であってもよく、0.98であってもよい。B90/A90の上限値と下限値は、任意に組み合わせることができ、例えば0.94-0.99であってもよく、0.95-0.98であってもよい。B90/A90が0.94-1.00以下であると、リチウム二次電池の充放電を繰り返してもひび割れが生じ難く、サイクル維持率を向上することができる。
【0035】
[圧粉処理]
本実施形態における圧粉処理を、図3を参照して説明する。図3に示す圧粉処理装置40は、治具41、42及び43を有する。
【0036】
治具41は、円筒状の形状を有する。治具41の内部空間41aは円柱状である。内部空間41aの内径LDは、15mmである。
【0037】
治具42は、円柱状の栓部421と、栓部421に接続されたフランジ部422とを有する。栓部421とフランジ部422は、フランジ部422の平面視中央で接続している。栓部421の直径は、治具41の内径LDと等しく、治具41の内部空間41aに隙間なく嵌合する大きさである。
【0038】
治具43は、治具42と同様の形状を有し、円柱状の栓部431と、栓部431に接続されたフランジ部432とを有する。栓部431の直径は、治具41の内径LDと等しく、治具41の内部空間41aに隙間なく嵌合する大きさである。
【0039】
圧粉処理装置40は、治具41の一端側の開口部に治具42の栓部421を挿入させ、治具41の他端側の開口部に治具43の栓部431を挿入させて用いる。
【0040】
圧粉処理装置40を用いて圧粉処理を行うには、まず、治具41に治具42を嵌合させ、治具41にフランジ部422が接触した状態で、内部空間41aに測定対象の粉末XつまりCAMを3g充填する。次いで、治具41に治具43を嵌合させ、栓部431の先端をCAMに接触させる。
【0041】
次いで、プレス機を用いて治具43に荷重Fを加え、治具43を介して内部空間41aのCAMに35MPaとなるよう1分間荷重Fをかける。
【0042】
荷重を停止し解放した後、圧粉処理装置40からCAMを取出し、上述の[累積体積粒度]に記載の方法で累積体積粒度、つまりB10、50、及びB90を測定する。なお、CAMにかける35MPaとは、電極を作製する際に、電極密度が3.00g/ccとなるよう考慮した場合に必要となる圧力に対応している。
【0043】
CAMのBET比表面積は、2.0m/g以下であることが好ましく、0.1-2.0m/gであることがより好ましく、0.2-2.0m/gであることがさらに好ましい。CAMのBET比表面積が0.1m/g以上であると、電解液と接触しやすく電池容量が向上する。CAMのBET比表面積が2m/g以下であると、一次粒子間及び二次粒子の細孔にSiを含む化合物が存在するため導電しやすく、放電容量を大きくできる。
【0044】
LiMOは、元素MとしてNi及び元素Xを含んでもよい。元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、B、S及びPからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。CAMに含まれるLiと、Niと元素Xとの物質量比は、下記式(I)を満たすことが好ましい。ここで、CAMに含まれるLiとは、LiMOの粒子に含まれるLi及びSiを含む化合物がLiを含む場合に含まれるLiを意味する。
[Li]:[Ni]:[X]=b:(1-a):a (I)
(ただし、0.9≦b≦1.2及び0<a≦0.2)
【0045】
充放電サイクルを繰り返した後の電池の抵抗増加を抑制する観点から、前記式(I)におけるaは、0より大きく、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。また、初期容量が高いリチウム二次電池を得る観点から前記式(I)におけるaは、0.2以下であり、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0046】
サイクル維持率が高いリチウム二次電池を得る観点から、元素Xは、Co、Mn、Ti、Mg、Al、W、B、及びZrからなる群より選択される1種以上の金属であることが好ましく、Co、Mn、Al、W及びBからなる群より選択される1種以上の金属であることがより好ましい。
【0047】
サイクル維持率が高いリチウム二次電池を得る観点から、元素Mの物質量に対するLiの物質量の割合は、0.98以上が好ましく、1.04以上がより好ましく、1.05以上が特に好ましい。また、初回クーロン効率がより高いリチウム二次電池を得る観点から、元素Mの物質量に対するLiの物質量の割合は、1.20以下が好ましく、1.10以下がより好ましい。
【0048】
元素Mの物質量に対するLiの物質量の割合の上限値と下限値は、任意に組み合わせることができる。組み合わせとしては、例えば、元素Mの物質量に対するLiの物質量の割合は、0.98以上1.20以下、1.04以上1.10以下、1.05以上1.10以下等であることが挙げられる。
【0049】
LiMOの結晶構造は、層状岩塩型構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
【0050】
六方晶型の結晶構造は、P3、P3、P3、R3、P-3、R-3、P312、P321、P312、P321、P312、P321、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P-31m、P-31c、P-3m1、P-3c1、R-3m、R-3c、P6、P6、P6、P6、P6、P6、P-6、P6/m、P6/m、P622、P622、P622、P622、P622、P622、P6mm、P6cc、P6cm、P6mc、P-6m2、P-6c2、P-62m、P-62c、P6/mmm、P6/mcc、P6/mcm、及びP6/mmcからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
【0051】
また、単斜晶型の結晶構造は、P2、P2、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P2/m、C2/m、P2/c、P2/c、及びC2/cからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
【0052】
これらのうち、放電容量が高いリチウム二次電池を得るため、結晶構造は、空間群R-3mに帰属される六方晶型の結晶構造、又はC2/mに帰属される単斜晶型の結晶構造であることが特に好ましい。
【0053】
以上の通り説明したCAMは、粒子強度が高く、リチウム二次電池の充放電を繰り返し行ってもCAMにひび割れが生じ難い。その結果、リチウム二次電池のサイクル維持率を向上することができる。また、一次粒子間及び前記細孔内にSiを含む化合物が存在することで、充放電の過程で導電性を有するLi含有Si化合物が形成されやすくなり、リチウム二次電池の放電レート特性を向上することができる。
【0054】
<CAMの製造方法>
本実施形態のCAMの製造方法は、MCCとSiを含む溶液とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物を乾燥させてSi含有MCCを得る工程と、前記Si含有MCCとリチウム化合物を混合して焼成する工程と、を含む。
【0055】
CAMの製造方法は、さらにMCCの製造工程を含んでいてもよい。
【0056】
本実施形態のCAMの製造法について、MCCの製造工程も含め、以下に説明する。
【0057】
(1)MCCの製造
MCCは、元素Mを含む金属複合水酸化物、元素Mを含む金属複合酸化物、及びこれらの混合物のいずれであってもよい。金属複合水酸化物及び金属複合酸化物は、一例として下記式(I’)で表されるモル比率で、元素MであるNi及び元素Xを含む。
Ni:X=(1-a):a (I’)
(式(I’)中、Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、B、S及びPからなる群から選択される1種以上の元素を表し、0<a≦0.2を満たす。)
【0058】
以下、元素XとしてCo及びMnを含むMCCの製造方法を一例として説明する。まず、Ni、Co及びMnを含む金属複合水酸化物を調製する。金属複合水酸化物は、通常公知のバッチ式共沈殿法又は連続式共沈殿法により製造することが可能である。
【0059】
具体的には、JP-A-2002-201028に記載された連続式共沈殿法により、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、マンガン塩溶液及び錯化剤を反応させ、Ni(1-a)CoMn(OH)(z+w=aとする)で表される金属複合水酸化物を製造する。
【0060】
ニッケル塩溶液の溶質であるニッケル塩としては、特に限定されないが、例えば硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの少なくとも1種を使用することができる。
【0061】
コバルト塩溶液の溶質であるコバルト塩としては、例えば硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト及び酢酸コバルトのうちの少なくとも1種を使用することができる。
【0062】
マンガン塩溶液の溶質であるマンガン塩としては、例えば硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガンム及び酢酸マンガンのうちの少なくとも1種を使用することができる。
【0063】
以上の金属塩は、上記Ni(1-a)CoMn(OH)の組成比に対応する割合で用いられる。すなわち、上記金属塩を含む混合溶液中におけるNi、Co及びMnのモル比が、(1-a):z:wと対応するように各金属塩の量を規定する。また、溶媒として水が使用される。
【0064】
錯化剤としては、水溶液中で、ニッケルイオン、コバルトイオン及びマンガンイオンと錯体を形成可能なものであり、例えばアンモニウムイオン供給体(水酸化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、又は弗化アンモニウム等)、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸及びウラシル二酢酸及びグリシンが挙げられる。
【0065】
金属複合水酸化物の製造工程において、錯化剤は、用いられてもよく、用いられなくてもよい。錯化剤が用いられる場合、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、マンガン塩溶液及び錯化剤を含む混合液に含まれる錯化剤の量は、例えば金属塩(ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩)のモル数の合計に対するモル比が0より大きく2.0以下である。
【0066】
共沈殿法に際しては、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、マンガン塩溶液、及び錯化剤を含む混合液のpH値を調整するため、混合液のpHがアルカリ性から中性になる前に、混合液にアルカリ金属水酸化物を添加する。アルカリ金属水酸化物とは、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
【0067】
なお、本明細書におけるpHの値は、混合液の温度が40℃の時に測定された値であると定義する。混合液のpHは、反応槽からサンプリングした混合液の温度が、40℃になったときに測定する。サンプリングした混合液が40℃未満である場合には、混合液を40℃まで加温してpHを測定する。サンプリングした混合液が40℃を超える場合には、混合液を40℃まで冷却してpHを測定する。
【0068】
上記ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、及びマンガン塩溶液のほか、錯化剤を反応槽に連続して供給すると、Ni、Co及びMnが反応し、Ni(1-a)CoMn(OH)が生成する。
【0069】
反応に際しては、反応槽の温度を、例えば20-80℃、好ましくは30-70℃の範囲内で制御する。
【0070】
また、反応に際しては、反応槽内のpH値を、例えばpH9-13の範囲内で制御する。
【0071】
反応槽内で形成された反応沈殿物を攪拌しながら中和する。反応沈殿物の中和の時間は、例えば1-20時間である。
【0072】
連続式共沈殿法で用いる反応槽は、形成された反応沈殿物を分離するためオーバーフローさせるタイプの反応槽を用いることができる。
【0073】
バッチ式共沈殿法により金属複合水酸化物を製造する場合、反応槽としては、オーバーフローパイプを備えない反応槽、及びオーバーフローパイプに連結された濃縮槽を備え、オーバーフローした反応沈殿物を濃縮槽で濃縮し、再び反応槽へ循環させる機構を有する装置等が挙げられる。
【0074】
各種気体、例えば、窒素、アルゴン又は二酸化炭素等の不活性ガス、空気又は酸素等の酸化性ガス、又はそれらの混合ガスを反応槽内に供給してもよい。
【0075】
以上の反応後、中和された反応沈殿物を単離する。単離には、例えば反応沈殿物を含むスラリー(つまり、共沈物スラリー)を遠心分離や吸引ろ過などで脱水する方法が用いられる。
【0076】
単離された反応沈殿物を洗浄、脱水、乾燥及び篩別し、Ni、Co及びMnを含む金属複合水酸化物が得られる。
【0077】
反応沈殿物の洗浄は、水又はアルカリ性洗浄液で行うことが好ましい。本実施形態においては、アルカリ性洗浄液で洗浄することが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄することがより好ましい。また、硫黄元素を含有する洗浄液を用いて洗浄してもよい。硫黄元素を含有する洗浄液としては、カリウムやナトリウムの硫酸塩水溶液等が挙げられる。
【0078】
MCCが金属複合酸化物である場合、金属複合水酸化物を加熱して金属複合酸化物を製造する。具体的には、金属複合水酸化物を400-700℃で加熱する。必要ならば複数の加熱工程を実施してもよい。本明細書における加熱温度とは、加熱装置の設定温度を意味する。複数の加熱工程を有する場合、各加熱工程のうち、最高保持温度で加熱した際の温度を意味する。
【0079】
加熱温度は、400-700℃であることが好ましく、450-680℃であることがより好ましい。加熱温度が400-700℃であると、金属複合水酸化物が十分に酸化され、かつ適切な範囲のBET比表面積を有する金属複合酸化物が得られる。加熱温度が400℃未満であると、金属複合水酸化物が十分に酸化されないおそれがある。加熱温度が700℃を超えると、金属複合水酸化物が過剰に酸化され、金属複合酸化物のBET比表面積が小さくなり過ぎるおそれがある。
【0080】
前記加熱温度で保持する時間は、0.1-20時間が挙げられ、0.5-10時間が好ましい。前記加熱温度までの昇温速度は、例えば、50-400℃/時間である。また、加熱雰囲気としては、大気、酸素、窒素、アルゴン又はこれらの混合ガスを用いることができる。
【0081】
加熱装置内は、適度な酸素含有雰囲気であってもよい。酸素含有雰囲気は、不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス雰囲気であってもよく、不活性ガス雰囲気下で酸化剤を存在させた状態であってもよい。加熱装置内が適度な酸素含有雰囲気であることにより、金属複合水酸化物に含まれる遷移金属が適度に酸化され、金属複合酸化物の形態を制御しやすくなる。
【0082】
酸素含有雰囲気中の酸素や酸化剤は、遷移金属を酸化させるために十分な酸素原子が存在すればよい。
【0083】
酸素含有雰囲気が不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス雰囲気である場合、加熱装置内の雰囲気の制御は、加熱装置内に酸化性ガスを通気させる又は混合液に酸化性ガスをバブリングするなどの方法で行うことができる。
【0084】
酸化剤として、過酸化水素などの過酸化物、過マンガン酸塩などの過酸化物塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、硝酸、ハロゲン又はオゾンなどを使用できる。
【0085】
以上の工程により、MCCを製造することができる。
【0086】
(2)MCCとSiを含む溶液との混合及び乾燥
本工程は、MCCとSiを含む溶液とを混合して混合物を得る工程である。Siを含む溶液として、例えば、LiSi11水溶液等を用いることができる。
【0087】
MCCに対してSiを含む溶液を添加してスラリーを形成する。このとき、スラリーにおけるNi、Co、Mn及びSiの総物質量に対するSiの物質量の割合は、0mol%より大きく、5.0mol%以下であり、0.1-3.0mol%であることが好ましく、0.1-2.0mol%であることがより好ましい。
【0088】
スラリーの総質量に対するSiを含む溶液の質量の割合は、特に限定されないが、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。スラリーの総質量に対するSiを含む溶液の質量の割合が20質量%以上であると、MCCとSiを含む溶液が十分に接触する。スラリーの総質量に対するSiを含む溶液の質量の割合が30質量%以上であると、得られるSi添加MCCに含まれるSiの割合を制御しやすい。
【0089】
スラリーは、撹拌されることが好ましい。撹拌時間は、Siを含む溶液をMCCと十分に接触させることを考慮し、1-30分間であることが好ましく、5-10分間であることがより好ましい。スラリーを攪拌後ろ過し、溶液を分離することが好ましい。
【0090】
(3)混合物の乾燥
本工程は、混合物を乾燥させてSi含有MCCを得る工程である。乾燥は、大気雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気などで実施することができるが、真空乾燥により行うことが好ましい。乾燥温度は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。乾燥温度が100℃以上であると、MCCに含有している水分を除去しやすい。乾燥後、Si添加MCCが得られる。Si添加MCCの乾燥後に、適宜分級を行ってもよい。
【0091】
(4)Si添加MCCとリチウム化合物との混合
本工程は、Si添加MCCとリチウム化合物とを混合して焼成する工程である。
【0092】
本実施形態に用いるリチウム化合物は、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、塩化リチウム及びフッ化リチウムの少なくとも何れか一つを使用することができる。これらの中では、水酸化リチウム及び炭酸リチウムのいずれか一方又はその混合物が好ましい。また、水酸化リチウムが炭酸リチウムを含む場合には、水酸化リチウム中の炭酸リチウムの含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
【0093】
リチウム化合物とSi添加MCCとを、最終目的物の組成比を勘案して混合する。具体的には、Si添加MCCに含まれるNi、Co及びMnの合計量1に対するリチウム原子の量(モル比)は、0.98以上が好ましく、1.04以上がより好ましく、1.05以上が特に好ましい。リチウム化合物とSi添加MCCの混合物を、後に説明するように焼成することによって、焼成物が得られる。MCCに含まれるNi、Co及びMnの合計量1に対するリチウム原子の量(モル比)の上限値としては、1.20以下が好ましく、1.10以下がより好ましい。
【0094】
焼成温度は、特に制限はないが、例えば650-900℃であることが好ましく、680-850℃であることがより好ましく、700℃-820℃であることが特に好ましい。焼成温度が600℃以上であると、強固な結晶構造を有するCAMを得ることができる。また、焼成温度が900℃以下であると、CAMの粒子表面のリチウムの揮発を低減できる。
【0095】
本明細書における焼成温度とは、焼成炉内雰囲気の温度を意味し、かつ本焼成工程での保持温度の最高温度(以下、最高保持温度と呼ぶことがある)であり、複数の加熱工程を有する本焼成工程の場合、各加熱工程のうち、最高保持温度で加熱した際の温度を意味する。焼成温度の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0096】
焼成における保持時間は、3-50時間が好ましく、4-20時間がより好ましい。焼成における保持時間が50時間を超えると、リチウムの揮発によって実質的に電池性能が悪くなる傾向となる。焼成における保持時間が3時間より少ないと、結晶の発達が悪く、電池性能が悪くなる傾向となる。
【0097】
本実施形態において、最高保持温度に達する加熱工程の昇温速度は80℃/時間以上が好ましく、100℃/時間以上がより好ましく、150℃/時間以上が特に好ましい。最高保持温度に達する加熱工程の昇温速度は、焼成装置において、昇温を開始した時間から保持温度に到達するまでの時間から算出される。
【0098】
焼成工程は、焼成温度が異なる複数の焼成段階を有することが好ましい。例えば、第1の焼成段階と、第1の焼成段階よりも高温で焼成する第2の焼成段階を有することが好ましい。さらに焼成温度及び焼成時間が異なる焼成段階を有していてもよい。
【0099】
焼成雰囲気として、所望の組成に応じて大気、酸素、窒素、アルゴン又はこれらの混合ガス等が用いられ、必要ならば複数の焼成工程が実施される。
【0100】
Si添加MCCとリチウム化合物との混合物は、不活性溶融剤の存在下で焼成されてもよい。不活性溶融剤は、CAMを使用した電池の初期容量が損なわれない程度に添加され、焼成物に残留してもよい。不活性溶融剤としては、例えばWO2019/177032A1に記載のものを使用することができる。
【0101】
なお、Si添加MCCとリチウム化合物との混合物は、焼成工程を行う前に仮焼成されてもよい。本実施形態において仮焼成とは、焼成工程における焼成温度よりも低い温度で焼成することである。仮焼成時の焼成温度は、例えば400℃以上700℃未満の範囲が挙げられる。仮焼成は、複数回行ってもよい。
【0102】
焼成時に用いる焼成装置は、特に限定されず、例えば、連続焼成炉又は流動式焼成炉の何れを用いて行ってもよい。連続焼成炉としては、トンネル炉又はローラーハースキルンが挙げられる。流動式焼成炉としては、ロータリーキルンを用いてもよい。
【0103】
以上のようにSi含有MCCとリチウム化合物との混合物を焼成することによりCAMが得られる。
【0104】
<リチウム二次電池>
次いで、本実施形態のCAMを用いる場合の好適なリチウム二次電池の構成を説明する。
さらに、本実施形態のCAMを用いる場合に好適なリチウム二次電池用正極(以下、正極と称することがある。)について説明する。
さらに、正極の用途として好適なリチウム二次電池について説明する。
【0105】
本実施形態のCAMを用いる場合の好適なリチウム二次電池の一例は、正極及び負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
【0106】
リチウム二次電池の一例は、正極及び負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
【0107】
図4は、リチウム二次電池の一例を示す模式図である。本実施形態の円筒型のリチウム二次電池10は、次のようにして製造する。
【0108】
まず、図4に示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1、一端に正極リード21を有する帯状の正極2、及び一端に負極リード31を有する帯状の負極3を、セパレータ1、正極2、セパレータ1、負極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
【0109】
次いで、電池缶5に電極群4及び不図示のインシュレーターを収容した後、缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7及び封口体8で封止することで、リチウム二次電池10を製造することができる。
【0110】
電極群4の形状としては、例えば、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、円、楕円、長方形又は角を丸めた長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
【0111】
また、このような電極群4を有するリチウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた電池に対する規格であるIEC60086、又はJIS C 8500で定められる形状を採用することができる。例えば、円筒型又は角型などの形状を挙げることができる。
【0112】
さらに、リチウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、セパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のリチウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、又はペーパー型(又はシート型)電池を例示することができる。
【0113】
以下、各構成について順に説明する。
(正極)
本実施形態の正極は、まずCAM、導電材及びバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
【0114】
(導電材)
本実施形態の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。
【0115】
正極合剤中の導電材の割合は、CAM100質量部に対して5質量部以上20質量部以下であると好ましい。
【0116】
(バインダー)
本実施形態の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂;ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、WO2019/098384A1またはUS2020/0274158A1に記載の樹脂を挙げることができる。
【0117】
(正極集電体)
本実施形態の正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。
【0118】
正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、有機溶媒を用いて正極合剤をペースト化し、得られる正極合剤のペーストを正極集電体の少なくとも一面側に塗布して乾燥させ、電極プレス工程を行って固着する方法が挙げられる。
【0119】
正極合剤をペースト化する場合、用いることができる有機溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPということがある。)が挙げられる。
【0120】
正極合剤のペーストを正極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法及び静電スプレー法が挙げられる。
【0121】
以上に挙げられた方法により、正極を製造することができる。
(負極)
本実施形態のリチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、及び負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
【0122】
(負極活物質)
負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属又は合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
【0123】
負極活物質として使用可能な炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、炭素繊維及び有機高分子化合物焼成体を挙げることができる。
【0124】
負極活物質として使用可能な酸化物としては、SiO、SiOなど式SiO(ここで、xは正の実数)で表されるケイ素の酸化物;SnO、SnOなど式SnO(ここで、xは正の実数)で表されるスズの酸化物;LiTi12などのリチウムとチタンとを含有する金属複合酸化物;を挙げることができる。
【0125】
また、負極活物質として使用可能な金属としては、リチウム金属、シリコン金属及びスズ金属などを挙げることができる。
負極活物質として使用可能な材料として、WO2019/098384A1またはUS2020/0274158A1に記載の材料を用いてもよい。
【0126】
これらの金属や合金は、例えば箔状に加工された後、主に単独で電極として用いられる。
【0127】
上記負極活物質の中では、充電時に未充電状態から満充電状態にかけて負極の電位がほとんど変化しない(電位平坦性がよい)、平均放電電位が低い、繰り返し充放電させたときの容量維持率が高い(サイクル特性がよい)などの理由から、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛を主成分とする炭素材料が好ましく用いられる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、又は微粉末の凝集体などのいずれでもよい。
【0128】
前記の負極合剤は、必要に応じて、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、PVdF、熱可塑性ポリイミド、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCということがある。)、スチレンブタジエンゴム(以下、SBRということがある。)ポリエチレン及びポリプロピレンを挙げることができる。
【0129】
(負極集電体)
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。
【0130】
このような負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、正極の場合と同様に、加圧成型による方法、溶媒などを用いてペースト化し負極集電体上に塗布、乾燥後プレスし圧着する方法が挙げられる。
【0131】
(セパレータ)
本実施形態のリチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。また、JP-A-2000-030686やUS20090111025A1に記載のセパレータを用いてもよい。
【0132】
(電解液)
本実施形態のリチウム二次電池が有する電解液は、電解質及び有機溶媒を含有する。
【0133】
電解液に含まれる電解質としては、LiClO、LiPF、LiBFなどのリチウム塩が挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。
【0134】
また前記電解液に含まれる有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどのカーボネート類を用いることができる。
【0135】
有機溶媒としては、これらのうちの2種以上を混合して用いることが好ましい。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒及び環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。
【0136】
また、電解液としては、得られるリチウム二次電池の安全性が高まるため、LiPFなどのフッ素を含むリチウム塩及びフッ素置換基を有する有機溶媒を含む電解液を用いることが好ましい。
電解液に含まれる電解質および有機溶媒として、WO2019/098384A1またはUS2020/0274158A1に記載の電解質および有機溶媒を用いてもよい。
【0137】
<全固体リチウム二次電池>
次いで、全固体リチウム二次電池の構成を説明しながら、本発明の一態様に係るLiMOを全固体リチウム二次電池のCAMとして用いた正極、及びこの正極を有する全固体リチウム二次電池について説明する。
【0138】
図5は、本実施形態の全固体リチウム二次電池の一例を示す模式図である。図5に示す全固体リチウム二次電池1000は、正極110と、負極120と、固体電解質層130とを有する積層体100と、積層体100を収容する外装体200と、を有する。また、全固体リチウム二次電池1000は、集電体の両側に正極活物質と負極活物質とを配置したバイポーラ構造であってもよい。バイポーラ構造の具体例として、例えば、JP-A-2004-95400に記載される構造が挙げられる。各部材を構成する材料については、後述する。
【0139】
積層体100は、正極集電体112に接続される外部端子113と、負極集電体122に接続される外部端子123と、を有していてもよい。その他、全固体リチウム二次電池1000は、正極110と負極120との間にセパレータを有していてもよい。
【0140】
全固体リチウム二次電池1000は、さらに積層体100と外装体200とを絶縁する不図示のインシュレーター及び外装体200の開口部200aを封止する不図示の封止体を有する。
【0141】
外装体200は、アルミニウム、ステンレス鋼又はニッケルメッキ鋼などの耐食性の高い金属材料を成形した容器を用いることができる。また、外装体200として、少なくとも一方の面に耐食加工を施したラミネートフィルムを袋状に加工した容器を用いることもできる。
【0142】
全固体リチウム二次電池1000の形状としては、例えば、コイン型、ボタン型、ペーパー型(またはシート型)、円筒型、角型、又はラミネート型(パウチ型)などの形状を挙げることができる。
【0143】
全固体リチウム二次電池1000は、一例として積層体100を1つ有する形態が図示されているが、本実施形態はこれに限らない。全固体リチウム二次電池1000は、積層体100を単位セルとし、外装体200の内部に複数の単位セル(積層体100)を封じた構成であってもよい。
【0144】
以下、各構成について順に説明する。
【0145】
(正極)
本実施形態の正極110は、正極活物質層111と正極集電体112とを有している。
【0146】
正極活物質層111は、上述した本発明の一態様であるCAM及び固体電解質を含む。また、正極活物質層111は、導電材及びバインダーを含んでいてもよい。
【0147】
(固体電解質)
本実施形態の正極活物質層111に含まれる固体電解質としては、リチウムイオン伝導性を有し、公知の全固体リチウム二次電池に用いられる固体電解質を採用することができる。このような固体電解質としては、無機電解質及び有機電解質を挙げることができる。無機電解質としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質及び水素化物系固体電解質を挙げることができる。有機電解質としては、ポリマー系固体電解質を挙げることができる。各電解質としては、WO2020/208872A1、US2016/0233510A1、US2012/0251871A1、US2018/0159169A1に記載の化合物が挙げられ、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0148】
(酸化物系固体電解質)
酸化物系固体電解質としては、例えば、ペロブスカイト型酸化物、NASICON型酸化物、LISICON型酸化物及びガーネット型酸化物などが挙げられる。各酸化物の具体例は、WO2020/208872A1、US2016/0233510A1、US2020/0259213A1に記載の化合物が挙げられる。
【0149】
ペロブスカイト型酸化物としては、LiLa1-aTiO(0<a<1)などのLi-La-Ti系酸化物、LiLa1-bTaO(0<b<1)などのLi-La-Ta系酸化物及びLiLa1-cNbO(0<c<1)などのLi-La-Nb系酸化物などが挙げられる。
【0150】
NASICON型酸化物としては、Li1+dAlTi2-d(PO(0≦d≦1)などが挙げられる。NASICON型酸化物とは、LiM1M2(式中、M1は、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb及びSeからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。M2は、Ti、Zr、Ge、In、Ga、Sn及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。m、n、o、p及びqは、任意の正数である。)で表される酸化物である。
【0151】
LISICON型酸化物としては、LiM3O-LiM4O(M3は、Si、Ge、及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。M4は、P、As及びVからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表される酸化物などが挙げられる。
【0152】
ガーネット型酸化物としては、LiLaZr12(LLZともいう)などのLi-La-Zr系酸化物などが挙げられる。
【0153】
酸化物系固体電解質は、結晶性材料であってもよく、非晶質材料であってもよい。
【0154】
(硫化物系固体電解質)
硫化物系固体電解質としては、LiS-P系化合物、LiS-SiS系化合物、LiS-GeS系化合物、LiS-B系化合物、LiI-SiS-P系化合物、LiI-LiS-P系化合物、LiI-LiPO-P系化合物及びLi10GeP12などを挙げることができる。
【0155】
なお、本明細書において、硫化物系固体電解質を指す「系化合物」という表現は、「系化合物」の前に記載した「LiS」「P」などの原料を主として含む固体電解質の総称として用いる。例えば、LiS-P系化合物には、LiSとPとを主として含み、さらに他の原料を含む固体電解質が含まれる。LiS-P系化合物に含まれるLiSの割合は、例えばLiS-P系化合物全体に対して50~90質量%である。LiS-P系化合物に含まれるPの割合は、例えばLiS-P系化合物全体に対して10~50質量%である。また、LiS-P系化合物に含まれる他の原料の割合は、例えばLiS-P系化合物全体に対して0~30質量%である。また、LiS-P系化合物には、LiSとPとの混合比を異ならせた固体電解質も含まれる。
【0156】
LiS-P系化合物としては、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI及びLiS-P-Z(m、nは正の数である。Zは、Ge、ZnまたはGaである。)などを挙げることができる。
【0157】
LiS-SiS系化合物としては、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-SiS-P-LiCl、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiSO及びLiS-SiS-LiMO(x、yは正の数である。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga又はInである。)などを挙げることができる。
【0158】
LiS-GeS系化合物としては、LiS-GeS及びLiS-GeS-Pなどを挙げることができる。
【0159】
硫化物系固体電解質は、結晶性材料であってもよく、非晶質材料であってもよい。
【0160】
(水素化物系固体電解質)
水素化物系固体電解質材料としては、LiBH、LiBH-3KI、LiBH-PI、LiBH-P、LiBH-LiNH、3LiBH-LiI、LiNH、LiAlH、Li(NHI、LiNH、LiGd(BHCl、Li(BH)(NH)、Li(NH)I及びLi(BH)(NHなどを挙げることができる。
【0161】
(ポリマー系固体電解質)
ポリマー系固体電解質として、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物及びポリオルガノシロキサン鎖及びポリオキシアルキレン鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む高分子化合物などの有機系高分子電解質を挙げることができる。また、高分子化合物に非水電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。
【0162】
固体電解質は、発明の効果を損なわない範囲において、2種以上を併用することができる。
【0163】
(導電材及びバインダー)
本実施形態の正極活物質層111が有する導電材としては、上述の(導電材)で説明した材料を用いることができる。また、正極合剤中の導電材の割合についても同様に上述の(導電材)で説明した割合を適用することができる。また、正極が有するバインダーとしては、上述の(バインダー)で説明した材料を用いることができる。
【0164】
(正極集電体)
本実施形態の正極110が有する正極集電体112としては、上述の(正極集電体)で説明した材料を用いることができる。
【0165】
正極集電体112に正極活物質層111を担持させる方法としては、正極集電体112上で正極活物質層111を加圧成型する方法が挙げられる。加圧成型には、冷間プレスや熱間プレスを用いることができる。
【0166】
また、有機溶媒を用いてCAM、固体電解質、導電材及びバインダーの混合物をペースト化して正極合剤とし、得られる正極合剤を正極集電体112の少なくとも一面上に塗布して乾燥させ、プレスし固着することで、正極集電体112に正極活物質層111を担持させてもよい。
【0167】
また、有機溶媒を用いてCAM、固体電解質及び導電材の混合物をペースト化して正極合剤とし、得られる正極合剤を正極集電体112の少なくとも一面上に塗布して乾燥させ、焼結することで、正極集電体112に正極活物質層111を担持させてもよい。
【0168】
正極合剤に用いることができる有機溶媒としては、上述の(正極集電体)で説明した正極合剤をペースト化する場合に用いることができる有機溶媒と同じものを用いることができる。
【0169】
正極合剤を正極集電体112へ塗布する方法としては、上述の(正極集電体)で説明した方法が挙げられる。
【0170】
以上に挙げられた方法により、正極110を製造することができる。正極110に用いる具体的な材料の組み合わせとしては、本実施形態に記載のCAMと表1、表2、表3に記載する組み合わせが挙げられる。
【0171】
【表1】
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】
【0174】
(負極)
負極120は、負極活物質層121と負極集電体122とを有している。負極活物質層121は、負極活物質を含む。また、負極活物質層121は、固体電解質及び導電材を含んでいてもよい。負極活物質、負極集電体、固体電解質、導電材及びバインダーは、上述したものを用いることができる。
【0175】
負極集電体122に負極活物質層121を担持させる方法としては、正極110の場合と同様に、加圧成型による方法、負極活物質を含むペースト状の負極合剤を負極集電体122上に塗布、乾燥後プレスし圧着する方法、及び負極活物質を含むペースト状の負極合剤を負極集電体122上に塗布、乾燥後、焼結する方法が挙げられる。
【0176】
(固体電解質層)
固体電解質層130は、上述の固体電解質を有している。
【0177】
固体電解質層130は、上述の正極110が有する正極活物質層111の表面に、無機物の固体電解質をスパッタリング法により堆積させることで形成することができる。
【0178】
また、固体電解質層130は、上述の正極110が有する正極活物質層111の表面に、固体電解質を含むペースト状の合剤を塗布し、乾燥させることで形成することができる。乾燥後、プレス成型し、さらに冷間等方圧加圧法(CIP)により加圧して固体電解質層130を形成してもよい。
【0179】
積層体100は、上述のように正極110上に設けられた固体電解質層130に対し、公知の方法を用いて、固体電解質層130の表面に負極活物質層121が接するように負極120を積層させることで製造することができる。
【0180】
本発明のもう一つの側面は、以下の態様を包含する。
[1]細孔を有し、Liと元素Mを含むリチウム金属複合酸化物の粒子と、前記細孔内に位置し、Siを含む化合物と、を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、前記元素MとSiの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が、0mol%より大きく、5.0mol%以下であり、圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度A50に対する35MPaでの圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の50%累積体積粒度B50の比率であるB50/A50が0.93-0.99である、リチウム二次電池用正極活物質。
[2]前記圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の10%累積体積粒度A10に対する前記圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の10%累積体積粒度B10の比率であるB10/A10が、0.94-0.98である、[1]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[3]前記圧粉処理前の前記リチウム二次電池用正極活物質の90%累積体積粒度A90に対する前記圧粉処理後の前記リチウム二次電池用正極活物質の90%累積体積粒度B90の比率であるB90/A90が0.94-0.99である、[1]又は[2]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[4]前記リチウム金属複合酸化物は、前記元素MとしてNi及び元素Xを含み、前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、B、S及びPからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記リチウム二次電池用正極活物質に含まれるLiと、前記Niと、前記元素Xの物質量比は、下記式(I)を満たす[1]から[3]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[Li]:[Ni]:[X]=b:(1-a):a (I)
(ただし、0.9≦b≦1.2及び0<a≦0.2)
[5]前記リチウム二次電池用正極活物質のBET比表面積が0.2-2.0m/gである、[1]~[4]の何れか1つに記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用正極活物質を含有するリチウム二次電池用正極。
[7][6]に記載のリチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池。
[8]元素Mを含む金属複合化合物とSiを含む溶液とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物を乾燥させてSi含有金属複合化合物を得る工程と、前記Si含有金属複合化合物とリチウム化合物を混合して焼成する工程と、を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[9]前記混合物を得る工程において、前記元素MとSiの物質量の総和に対するSiの物質量の割合が、0.1-5.0mol%となるよう前記金属複合化合物と前記Siを含む溶液とを混合する、[8]に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[10]前記リチウム二次電池用正極活物質は、Liと、前記元素MとしてNi及び元素Xを含むリチウム金属複合酸化物を含み、前記元素Xは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、B、S及びPからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、前記リチウム二次電池用正極活物質に含まれるLiと、前記Niと、前記元素Xの物質量比は、下記式(I)を満たす[8]又は[9]に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[Li]:[Ni]:[X]=b:(1-a):a (I)
(ただし、0.9≦b≦1.1及び0<a≦0.15)
【実施例0181】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0182】
<組成分析>
後述の方法で製造されるCAMの組成分析は、上述の[組成分析]の方法により行った。
【0183】
<断面観察>
CAMにおける細孔の有無、およびSiを含む化合物が細孔内に存在することは、SEMの断面画像、およびSi元素のマッピング画像によって確認した。
【0184】
<累積体積粒度A10、B10、A50、B50、A90及びB90
累積体積粒度A10、B10、A50、B50、A90及びB90は、上述の[累積体積粒度]に記載の測定方法及び[圧粉処理]に記載の方法を行って測定した。
【0185】
<BET比表面積>
CAMのBET比表面積は、[BET比表面積]の測定方法により行った。
【0186】
<リチウム二次電池用正極の作製>
後述する製造方法で得られるCAMと導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、CAM:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N-メチル-2-ピロリドンを有機溶媒として用いた。
【0187】
得られた正極合剤を、集電体となる厚さ20μmのAl箔に塗布して150℃で8時間真空乾燥を行い、リチウム二次電池用正極を得た。このリチウム二次電池用正極の電極面積は1.65cmとした。
【0188】
<リチウム二次電池(コイン型ハーフセル)の作製>
以下の操作を、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
上述のリチウム二次電池用正極を、コイン型電池R2032用のパーツ(宝泉株式会社製)の下蓋にアルミ箔面を下に向けて置き、その上にポリエチレン製多孔質フィルムの上に耐熱多孔層を積層した積層フィルムセパレータ(厚み16μm)を置いた。ここに電解液を300μl注入した。電解液は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを30:35:35(体積比)で混合した混合液にLiPF6を1mol/lとなるように溶解した液体を用いた。
次に、負極として金属リチウムを用いて、セパレータの上側に置き、ガスケットを介して上蓋をし、かしめ機でかしめてリチウム二次電池(コイン型ハーフセルR2032。以下、「コイン型ハーフセル」と称することがある。)を作製した。
【0189】
<サイクル維持率及び放電レート特性>
上述の方法で作成したリチウム二次電池の初回放電容量、サイクル維持率及び放電レート特性は、上述の[サイクル試験]及び[放電レート試験]を行って測定及び算出した。
【0190】
(実施例1)
ニッケルとコバルトとマンガンの硫酸塩の水溶液を用いる公知の共沈殿法により、Ni0.96Co0.02Mn0.02(OH)の組成を有する金属複合水酸化物1を得た。
【0191】
金属複合水酸化物1を大気雰囲気中650℃で5時間保持して加熱し、室温まで冷却して金属複合酸化物1を得た。
【0192】
金属複合酸化物1に対して重量比率が50wt%となるようにLiSi11水溶液を添加してスラリーを形成し、5分間撹拌した。このとき、Ni、Co、Mn及びSiの総モル数に対するSiのモル比が0.5mol%となるようLiSi11水溶液に対して純水を加えてLiSi11水溶液濃度を調整した。その後スラリーを2分間ろ過し、ろ物を120℃で10時間真空加熱してSi添加金属複合酸化物1を得た。
【0193】
Si添加金属複合酸化物1に含まれるNi、Co及びMnの合計量1に対するLiの量(モル比)が1.06となるように水酸化リチウムを秤量した。Si添加金属複合酸化物1と水酸化リチウムを混合して混合物1を得た。
【0194】
次いで、得られた混合物1を、酸素雰囲気下、720℃、5時間で焼成し、細孔内に位置しSiを含む化合物を含むCAM-1を得た。CAM-1の組成比(モル比)は、[Li]:[Ni]:[X]:[Si]=1.06:0.96:0.04:0.005であった。
【0195】
(実施例2)
上述の方法で得られた金属複合水酸化物1に、Ni、Co、Mn及びSiの総モル数に対するSiのモル比が1.0mol%となるようLiSi11水溶液を添加した以外は、実施例1と同じ方法で、細孔内に位置しSiを含む化合物、を含むCAM-2を得た。CAM-2の組成比(モル比)は、[Li]:[Ni]:[X]:[Si]=1.06:0.96:0.04:0.01であった。
【0196】
(実施例3)
上述の方法で得られた金属複合水酸化物1に、Ni、Co、Mn及びSiの総モル数に対するSiのモル比が3.0mol%となるようLiSi11水溶液を添加した以外は、実施例1と同じ方法で、細孔内に位置しSiを含む化合物を含むCAM-3を得た。CAM-3の組成比(モル比)は、[Li]:[Ni]:[X]:[Si]=1.06:0.96:0.04:0.03であった。
【0197】
(実施例4)
上述の方法で得られた金属複合水酸化物1に、Ni、Co、Mn及びSiの総モル数に対するSiのモル比が5.0mol%となるようLiSi11水溶液を添加した以外は、実施例1と同じ方法で、細孔内に位置しSiを含む化合物を含むCAM-4を得た。CAM-4の組成比(モル比)は、[Li]:[Ni]:[X]:[Si]=1.06:0.96:0.04:0.05であった。
【0198】
(比較例1)
上述の方法で得られた金属複合酸化物1に含まれるNi、Co及びMnの合計量1に対するリチウム原子の量(モル比)が1.06となるように水酸化リチウムを秤量した。金属複合酸化物1と水酸化リチウムを混合して混合物2を得た。
【0199】
次いで、混合物2を、酸素雰囲気下、700℃、5時間で焼成し、CAM-C1を得た。CAM-C1の組成比(モル比)は、[Li]:[Ni]:[X]:[Si]=1.06:0.96:0.04:0であった。
【0200】
(比較例2)
上述の方法で得られた金属複合酸化物1に含まれるNi、Co及びMnの合計量1に対するLiの量(モル比)が1.06となるように水酸化リチウムを秤量した。金属複合酸化物1に含まれるNi、Co及びMnの合計量1に対するSiのモル比が0.5mol%となるように酸化ケイ素を秤量した。金属複合酸化物1、水酸化リチウム及び酸化ケイ素を混合して混合物3を得た。
【0201】
次いで、混合物3を、酸素雰囲気下、700℃、5時間で焼成し、Siを含む化合物、を含むCAM-C2を得た。CAM-C2の組成比(モル比)は、[Li]:[Ni]:[X]:[Si]=1.06:0.96:0.04:0.005であった。
【0202】
実施例1~4及び比較例1~2のCAM-1~CAM-4及びCAM-C1~CAM-C2のB50、50、50/A50、10/A10、90/A90、BET比表面積及び各CAMを使用したコイン型ハーフセルのサイクル維持率及び放電レート特性を表4に示す。
【0203】
【表4】
【0204】
CAM-1~CAM-4のB50/A50は、0.92以上であった。CAM-1~CAM-4を使用したコイン型ハーフセルのサイクル維持率は、83.7-95.7%であり、放電レート特性は、74.2-85.4%以上であった。
【0205】
一方で、Siを含んでいないCAM-C1のB50/A50は、0.89であった。CAM-C1を使用したコイン型ハーフセルのサイクル維持率は、77.9%以下であり、放電レート特性は、69.8%以下であった。
【0206】
LiMOとしてSiを含んでいるCAM-C2のB50/A50は、0.90であった。CAM-C2を使用したコイン型ハーフセルのサイクル維持率は、79.7%以下であり、放電レート特性は、78.6%以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明によれば、リチウム二次電池の充放電を繰り返し行ってもリチウム二次電池用正極活物質にひび割れが生じ難く、二次電池のサイクル維持率及び放電レート特性を向上することができるリチウム二次電池用正極活物質、これを用いたリチウム二次電池用正極、これを用いたリチウム二次電池及びリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0208】
1…セパレータ、2…正極、3…負極、4…電極群、5…電池缶、6…電解液、7…トップインシュレーター、8…封口体、10…リチウム二次電池、21…正極リード、31…負極リード、40…圧粉処理装置、41、42、43…治具、100…積層体、110…正極、111…正極活物質層、112…正極集電体、113…外部端子、120…負極、121…負極活物質層、122…負極集電体、123…外部端子、130…固体電解質層、200…外装体、200a…開口部、1000…全固体リチウム二次電池
図1
図2
図3
図4
図5