(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142175
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20230928BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20230928BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F25B39/04 J
F25B49/02 570Z
F25B1/00 396A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048921
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(71)【出願人】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂口 学
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 史
(72)【発明者】
【氏名】相馬 啓
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】福岡 美則
(57)【要約】
【課題】第1冷媒を第2冷媒との熱交換により凝縮させる凝縮器をコンパクト化させ、サーモサイフォン効果を利用して第2冷媒を循環させるための動力を低減した冷凍機を提供する。
【解決手段】冷凍機は、第1冷媒を第2冷媒との熱交換により凝縮させるための凝縮器を含む冷凍サイクルと、凝縮器よりも上方に設けられると共に凝縮器にて気化した第2冷媒を冷却させるための冷却器を含む循環サイクルとを備え、凝縮器は、第1冷媒が流れるための流路を含む流路形成体と、流路形成体の少なくとも一部が浸かる第2冷媒の液溜まりを収容するシェルとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷媒を第2冷媒との熱交換により凝縮させるための凝縮器を含む冷凍サイクルと、
前記凝縮器よりも上方に設けられると共に前記凝縮器にて気化した前記第2冷媒を冷却させるための冷却器を含む循環サイクルと
を備え、
前記凝縮器は、
前記第1冷媒が流れるための流路を含む流路形成体と、
前記流路形成体の少なくとも一部が浸かる前記第2冷媒の液溜まりを収容するシェルと
を含む冷凍機。
【請求項2】
前記第1冷媒を圧縮ガスとして前記凝縮器に送るための圧縮機と、
コントローラと
をさらに備え、
前記循環サイクルは、前記冷却器から流出する前記第2冷媒を前記凝縮器に送るためのポンプをさらに含み、
前記コントローラは、前記圧縮機の吐出圧を示す信号に基づいて、前記ポンプを制御するように構成される
をさらに備える請求項1に記載の冷凍機。
【請求項3】
前記コントローラは、前記シェル内の前記第2冷媒の液面が規定高さに達した場合、前記吐出圧を示す信号に関わらず、前記凝縮器への前記第2冷媒の流入流量が増加しないよう前記ポンプを制御するように構成される
請求項2に記載の冷凍機。
【請求項4】
前記コントローラは、前記シェル内の前記第2冷媒の液面が規定高さに達した場合、冷凍機の稼働中に警報を発出する制御を実行するように構成される
請求項2または3に記載の冷凍機。
【請求項5】
前記シェル内の前記第2冷媒の液面が下限高さよりも低い場合、前記冷凍機の稼働を停止させる制御を実行するように構成されるコントローラをさらに備える
請求項1乃至4の何れか1項に記載の冷凍機。
【請求項6】
前記第1冷媒を圧縮ガスとして前記凝縮器に送るための圧縮機と、
コントローラと
をさらに備え、
前記冷却器は、前記第2冷媒が流れる伝熱管と、前記伝熱管に送風するためのファンと、前記伝熱管から流れる液相の前記第2冷媒を貯留するためのバッファタンクとを含むラジエータであり、
前記コントローラは、前記圧縮機の吐出圧が閾値以下である場合、送風量が下がるよう前記ファンを制御するように構成される
請求項1乃至5の何れか1項に記載の冷凍機。
【請求項7】
前記第2冷媒は、HFO冷媒である
請求項1乃至6の何れか1項に記載の冷凍機。
【請求項8】
前記循環サイクルは、前記冷却器から流出する前記第2冷媒を前記凝縮器に送るためのポンプをさらに含み、
前記冷凍機は、
前記第1冷媒を圧縮ガスとして前記凝縮器に送るための圧縮機と、
前記圧縮機の吐出圧を示す信号に基づいて、前記ポンプを制御するように構成されるコントローラと
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記圧縮機の吐出圧が許容上限値に達した場合、前記冷凍機の冷凍動作を停止させる制御を実行するように構成される請求項1乃至7の何れか1項に記載の冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーモサイフォン効果を利用して冷媒を循環させる冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される冷凍機では、1次冷媒が循環するための1次回路においてサーモサイフォン効果が利用される。同文献に開示の冷凍機は、2次冷媒が循環する2次回路と、2次冷媒が1次冷媒との熱交換により凝縮するための熱交換器(即ち第1凝縮器)とを備える。第1凝縮器にて気化した1次冷媒は1次回路を循環する過程で、熱交換器よりも上方にある第2凝縮器にて液化する。液化した1次冷媒は自重によって第1凝縮器に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーモサイフォン効果を利用して1次冷媒を循環させるための動力は少ない方が好ましい。また、2次冷媒との熱交換により1次冷媒が気化する第1凝縮器は、コンパクト化が図れることが好ましい。しかしながら、特許文献1には具体的構成の開示はない。
【0005】
本開示の目的は、第1冷媒を第2冷媒との熱交換により凝縮させる凝縮器をコンパクト化させ、サーモサイフォン効果を利用して第2冷媒を循環させるための動力を低減した冷凍機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る冷凍機は、
第1冷媒を第2冷媒との熱交換により凝縮させるための凝縮器を含む冷凍サイクルと、
前記凝縮器よりも上方に設けられると共に前記凝縮器にて気化した前記第2冷媒を冷却させるための冷却器を含む循環サイクルと
を備え、
前記凝縮器は、
前記第1冷媒が流れるための流路を含む流路形成体と、
前記流路形成体の少なくとも一部が浸かる前記第2冷媒の液溜まりを収容するシェルと
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、第1冷媒を第2冷媒との熱交換により凝縮させるための凝縮器をコンパクト化させ、サーモサイフォン効果を利用して第2冷媒を循環させるための動力を低減した冷凍機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る冷凍機を示す概念図である。
【
図2】一実施形態に係る凝縮器を示す概念図である。
【
図3】一実施形態に係る冷凍機を示す別の概念図である。
【
図4】一実施形態に係る凝縮器としてのラジエータを示す概念図である。
【
図5】一実施形態に係る冷凍機制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0010】
<1.冷凍機1の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係る冷凍機1を示す概念図である。冷凍機1による冷凍は、第1冷媒F1が循環する過程で熱媒体Hから熱を抽出することで実現される。熱媒体Hは、図示されていない循環路を流れるブラインなどの冷媒であってもよく、この場合、固形物(例えば土)または流体(例えば空気)などであってもよい冷却対象が熱媒体Hにより冷却される。なお他の実施形態では、熱媒体Hが、冷凍機1の冷却対象となる空気などの流体であってもよい。
【0011】
冷凍機1は、第1冷媒F1が循環するための冷凍サイクル10と、第2冷媒F2が循環するための循環サイクル20とを備える。冷凍サイクル10は、第1冷媒F1を熱媒体Hとの熱交換により蒸発させるための蒸発器11、蒸発器11から流出する第1冷媒F1を圧縮するための圧縮機15、圧縮機15から送られる圧縮ガスとしての第1冷媒F1を第2冷媒F2との熱交換により凝縮させるための凝縮器50、及び、凝縮器50から流出する第1冷媒F1を膨張させるための膨張弁12を含む。
【0012】
本例の循環サイクル20は、サーモサイフォン効果を利用して第2冷媒F2が循環するように構成される。具体的には、循環サイクル20の構成要素でもある凝縮器50は、第2冷媒F2が第1冷媒F1との熱交換により気化するように構成される。そして、循環サイクル20は、凝縮器50にて気化した第2冷媒F2を冷却するための冷却器21をさらに含む。冷却器21は凝縮器50よりも上方に設けられる。本構成により、凝縮器50から流出する気相の第2冷媒F2は上昇して冷却器21に到達し、冷却器21による冷却によって凝縮すると自重により凝縮器50まで戻る。
【0013】
<2.凝縮器50の構成の例示>
図2は、本開示の一実施形態に係る凝縮器50を示す概念図である。凝縮器50は、シェル51と、シェル51によって収容される流路形成体52とを有する。シェル51の内部空間は、循環サイクル20における第2冷媒F2の流路の一部を構成しており、第2冷媒F2の液溜まりLを収容する。第2冷媒F2の液溜まりLに少なくとも一部が浸かる流路形成体52は、第1冷媒F1が流れるための流路55を含む。流路55は、シェル51の内部空間とは非連通となっている。
【0014】
本開示の一実施形態に係る凝縮器50はシェルアンドプレート式の熱交換器である。即ち、流路形成体52は、積層された複数枚のプレート57を有するプレート積層体53である。プレート積層体53には、第1冷媒F1の流路55と、シェル51の内部空間と連通する連通空間(即ち第2冷媒F2が進入可能な空間)とが形成されている。プレート積層体53の具体的構成の一例は、特開2012-057900号公報または特開2015-121396号公報などに開示される。また、同図で例示されるシェル51には、凝縮器50に流入する液相の第2冷媒F2をシェル51の内部空間に噴射するための吐出管59が設けられており、吐出管59のノズルから吐出される第2冷媒F2は、プレート積層体53に吹きかかる。プレート積層体53の流路55を流れる気相の第1冷媒F1は、第2冷媒F2と熱交換することにより液化して凝縮器50から流出する。他方で、熱交換により第2冷媒F2は気化して凝縮器50から流出する。
【0015】
上記構成によれば、冷却器21が凝縮器50よりも上方に設けられるので、循環サイクル20ではサーモサイフォン効果を利用することができ、第2冷媒F2を循環させるための動力を低減できる。また、サーモサイフォン効果を利用するにあたって凝縮器50では第2冷媒F2が気化する必要があるところ、第2冷媒F2がシェル51によって規定される流路を流れるため、気化する第2冷媒F2の膨張に起因した圧力損失の影響を低減できる(第2冷媒F2の気化膨張による凝縮器50での圧力上昇幅の低下を抑制できる)。これにより、第2冷媒F2を循環させるための動力低減の効果は更に高まる。さらに、シェル51に収容される都合により比較的スペース確保が困難な流路形成体52の流路55を第2冷媒F2が流れないので、気化に伴い膨張した第2冷媒F2が滞りなく流れることができるよう流路形成体52を大型化する必要もない。従って、凝縮器50のコンパクト化が図られる。以上より、第1冷媒F1を第2冷媒F2との熱交換により凝縮させる凝縮器50をコンパクト化させ、サーモサイフォン効果を利用して第2冷媒F2を循環させるための動力を低減した冷凍機1が実現される。
なお他の実施形態では、凝縮器50はシェルアンドチューブ式の熱交換器であってもよい。この場合、流路形成体52は、プレート積層体53である代わりに、複数のチューブ(伝熱管)によって構成され、チューブの内側に第1冷媒F1の流路が形成される。この場合、吐出管59は設けられなくてもよい。当該実施形態においても上記利点は得られる。
【0016】
図1で例示される蒸発器11は、凝縮器50と同様のシェルアンドプレート式の熱交換器であってもよい。この場合、蒸発器11を構成するシェルは、第1冷媒F1の液溜まりを収容し、蒸発器11を構成するプレート積層体の内部流路を熱媒体Hが流れる。上記構成によれば、冷凍サイクル10を構成する複数の熱交換器が同タイプになるため、冷凍機1の簡素化を図ることができる。なお、凝縮器50と蒸発器11の双方がシェルアンドチューブ式の熱交換器であっても、上記利点は得られる。
【0017】
図1、
図2で例示される実施形態では、第2冷媒F2はHFO冷媒である。上記構成によれば、低いGWPを有するHFOが第2冷媒F2として採用されることで、環境負荷を低減できる。また、第2冷媒F2がHFO冷媒であることで、循環サイクル20における第2冷媒F2の圧力を例えば0.2MPa以下に抑えることができ、冷凍機1の安全性を向上できる。さらには、液体から気体への変化における体積膨張率が比較的大きなHFO冷媒が、流路形成体52ではなくシェル51内の流路55を流れるので、第2冷媒F2の気化時の膨張に起因した圧力損失の影響を低減する効果を高めることができる。なお、本例の第1冷媒F1はアンモニアであり、凝縮器50の入口におけるアンモニアの温度は約20℃から30℃である。ただし、第1冷媒F1としてプロパンまたはブタンなどのアンモニアとは別の冷媒が採用される実施形態においても、上記利点は得られる。
【0018】
<2.冷凍機1Aの具体的構成の例示>
図3は、本開示の一実施形態に係る冷凍機1A(1)を示す概念図である。一実施形態に係る冷凍機1A(1)は、上述した構成に加えて、コントローラ90をさらに備える。また、循環サイクル20は、冷却器21から流出する第2冷媒F2を凝縮器50に送るためのポンプ25をさらに含む。循環サイクル20において、第2冷媒F2を循環させるために設けられる駆動源はポンプ25のみである。ポンプ25の個数は1個が好ましいが、複数のポンプ25が設けられてもよい。
【0019】
本例のコントローラ90は、圧縮機15の吐出圧を示す信号(以下、吐出圧信号ともいう)に基づいてポンプ25を制御するように構成される。本例の吐出圧信号は、圧縮機15の吐出圧を計測するための圧力センサ89からコントローラ90に入力される信号である。他の例として、吐出圧信号は、第1冷媒F1の流量を計測するための流量センサから出力される信号であってもよい。
【0020】
コントローラ90によるポンプ25の制御概要は、一例として以下の通りである。コントローラ90は、吐出圧信号によって示される吐出圧が閾値以下であるかに応じてポンプ25の制御を切り替えるように構成される。例えば、冷凍機1Aに加わる熱負荷が比較的低い場合、コントローラ90から圧縮機15に入力される回転数指令が示す回転数は低い。圧縮機15の回転数が下がるので、吐出圧信号によって示される吐出圧も閾値以下となる。この場合、コントローラ90は、凝縮器50に流入する第2冷媒F2が少なくなるようポンプ25を制御する。より具体的には、第2冷媒F2の送液量が規定量以下になるようポンプ25は制御される。これにより、凝縮器50に流入する第1冷媒F1の流量が少ないときには、凝縮器50に流入する第2冷媒F2の流量も少なくなる。結果、シェル51内の液溜まりLの液面は低下し、流路形成体52の伝熱面積は低下する。他方で、冷凍機1Aに加わる熱負荷が比較的高い場合、回転数指令によって示される回転数は多く、吐出圧信号によって示される吐出圧は閾値を上回る。この場合、コントローラ90は、凝縮器50に流入する第2冷媒F2が多くなるようポンプ25を制御する。
【0021】
上記構成によれば、冷凍機1Aの熱負荷に応じて変化する吐出圧信号に基づいてポンプ25が制御され、シェル51内の第2冷媒F2の液面高さが調整される。液面高さに応じて流路形成体52の伝熱面積(つまり凝縮器50における熱交換量)が変化する。よって、熱負荷に応じて凝縮器50の熱交換量を制御する冷凍機1Aが実現される。
なお、本開示では上述したように、第2冷媒F2がシェル51によって規定される流路を流れるため、気化する第2冷媒F2の膨張に起因した圧力損失の影響を低減できる。従って、循環サイクル20にポンプ25が設けられる実施形態においては、第2冷媒F2を循環させるための動力を低減できる結果、ポンプ25に要求される駆動力も低減でき、冷凍機1の省電力化が図られる。
【0022】
なお、
図3で例示される実施形態のように、循環サイクル20は、ポンプ25と並列に設けられる圧力調整弁26をさらに備えてもよい。この場合、コントローラ90は、吐出圧が閾値以下であるかに応じて、ポンプ25と共に圧力調整弁26を制御してもよい。例えば、ポンプ25の送液量を規定量以下にするときには、ポンプ25の出口側の圧力が低下するよう、コントローラ90は圧力調整弁26を制御してもよい。
【0023】
一実施形態に係るコントローラ90は、シェル51内の第2冷媒F2の液面が規定高さに達した場合、吐出圧信号に関わらず、凝縮器50への第2冷媒F2の流入流量が増加しないようポンプ25を制御するように構成される。例えば、ポンプ25の送液量が増大したことにより液面が規定高さに到達した時点において、吐出圧信号によって示される吐出圧が閾値を上回っていても、コントローラ90は凝縮器50への第2冷媒F2の流入流量が規定量以下になるようポンプ25を制御する。なお本例では、液面が規定高さに達したかを、シェル51に設けられる液面センサ88の検出結果に基づきコントローラ90が判定する。液面センサ88は、例えばレベルスイッチなどの接触型液面センサ、または、超音波センサなどの非接触型液面センサのいずれであってもよい。また、上記の規定高さは、流路形成体52の上端よりも高い数値で予め設定される。
【0024】
上記構成によれば、吐出圧信号に基づいたポンプ25の制御を通じて、シェル51内の液面高さの過度な上昇を抑制できる。これにより、シェル51における第2冷媒F2の液溜まりLの量が過剰になるのを抑制できる。従って、液相の第2冷媒F2のガス化が阻害されることに起因した凝縮器50での熱交換量の低下(言い換えると凝縮器50が発揮する性能の低下)を抑制できる。
【0025】
一実施形態に係るコントローラ90は、シェル51内の第2冷媒F2の液面が上記の規定高さに達した場合、冷凍機1の稼働中(即ち、本例では圧縮機15とポンプ25の駆動中)に軽警報(プレアラーム)を発出する制御を実行するように構成される。例えば、コントローラ90は、冷凍機1に設けられるモニタまたはスピーカの少なくとも一方が軽警報を発出するよう制御する。モニタは液面が規定高さに達したことを示すメッセージを表示すればよいし、スピーカは規定の音を発すればよい。
【0026】
上記構成によれば、シェル51における第2冷媒F2の液面高さが、規定高さよりも高い許容上限高さに近づいていることをオペレータは認識でき、オペレータは冷凍機1を稼働させながら処置を施すことができる。より具体的には、オペレータは、冷凍機1Aによって冷却される冷却対象の目標温度を上げる設定などを行うことができる。なお、上記の許容上限高さは、冷凍機1が定格稼働する場合に許容される液面の上限高さであり、シミュレーションまたは実験の少なくとも一方により特定される。
【0027】
一実施形態に係るコントローラ90は、シェル51内の第2冷媒F2の液面が下限高さよりも低い場合、冷凍機1の稼働を停止させる制御を実行するように構成される。第2冷媒F2の液面が下限高さよりも低いかは、シェル51に設けられる液面センサ87の検出結果に基づきコントローラ90が判定する。そして、液面が下限高さよりも低いと判定された場合、コントローラ90は、冷凍機1Aの駆動源である圧縮機15及びポンプ25を停止させる。なお、熱媒体Hの循環路に別の駆動源が設けられている実施形態では、該駆動源もあわせて停止する。下限高さは、冷凍機1が定格稼働する場合に許容される液面の上限高さであり、シミュレーションまたは実験の少なくとも一方により特定される。一例として下限高さは、流路形成体52の上下寸法の2分の1だけ、流路形成体52の下端から上に離れた位置に相当する。当該位置よりも下限高さは低く設定されてもよい。より具体的な一例として下限高さは、流路形成体52の下端よりも低くてもよい。なお、液面センサ87は液面センサ88と同様のセンサであるが、両センサが、例えば単一の超音波センサによって実現されてもよい。
【0028】
上記構成によれば、第2冷媒F2の液面が下限高さよりも低く、凝縮器50が第1冷媒F1の凝縮機能を著しく失っているときには、冷凍機1Aの稼働は停止する。これにより、凝縮器50が凝縮能力を失ったまま冷凍機1Aが稼働を継続するのを抑制できる。
【0029】
一実施形態に係るコントローラ90は、圧縮機15の吐出圧が許容上限値に到達した場合、冷却器21の稼働を停止させる制御を実行するように構成される。例えば、吐出圧信号によって示される吐出圧が許容上限値以上である場合、吐出圧は許容上限値に到達したと判定され、コントローラ90は、冷凍機1の稼働を停止させる。このとき、コントローラ90は、重警報(コールアラーム)を発出する制御を実行するように構成される。例えば、コントローラ90は、モニタまたはスピーカの少なくとも一方が重警報を発出するよう制御する。上記構成によれば、吐出圧が許容上限値に到達した場合には、冷凍機1の稼働が停止する。流路形成体52の流路55の圧力が過剰になるのを抑制できるので、冷凍機1は流路形成体52の故障を抑制できる。
【0030】
<3.冷却器21の具体的構成の例示>
図4は、本開示の一実施形態に係る冷却器21を示す概念図である。同図で例示される冷却器21は、凝縮器50から流出した第2冷媒F2が流れる伝熱管23と、伝熱管23に送風するためのファン24と、伝熱管23から流出する液相の第2冷媒F2を貯留するためのバッファタンク29とを含むラジエータ28である。同図で例示されるバッファタンク29は、第2冷媒F2が流れる配管を介してポンプ25に接続されている。
凝縮器50から流出する気相の第2冷媒F2は、伝熱管23を流れる過程で空気と熱交換して液化する。液相の第2冷媒F2は伝熱管23から流出し、バッファタンク29に貯留される。貯留されるバッファタンク29は、ポンプ25の駆動によって凝縮器50に戻る。
【0031】
本実施形態では、ファン24の駆動はコントローラ90によって制御される。より具体的な一例として、コントローラ90は、圧縮機15(
図1参照)の吐出圧が閾値以下である場合、送風量が下がるようファン24を制御する。つまり、ポンプ25によって凝縮器50に送られる第2冷媒F2の流量が低く、凝縮器50における第1冷媒F1と第2冷媒F2との熱交換量が低い場合、送風量を下げる制御が実行される。具体的な制御としては、吐出圧信号によって示される吐出圧が閾値以下である場合、コントローラ90は、ファン24の回転数の低下させる制御、または、複数設けられるファン24の少なくとも1つを停止させる制御などを実行する。送風量が下がることにより、ラジエータ28における第2冷媒F2と空気との熱交換量も低下し、循環サイクル20における第2冷媒F2の放熱量と受熱量との均衡は保たれ、余分な第2冷媒F2はバッファタンク29に貯留される。
【0032】
上記構成によれば、冷凍機1によって発揮される冷凍能力が少なくて済むタイミングでは、圧縮機15の吐出圧が閾値以下であり、凝縮器50における熱交換量は少ない。この場合、コントローラ90は、送風量が下がるようファン24を制御するので、第2冷媒F2が伝熱管23の上流部で液化して滞留するのを抑制する。これにより、伝熱管23で液化した第2冷媒F2をバッファタンク29でより確実に貯留することができる。よって、凝縮器50における熱交換量をより低くでき、より低い熱負荷にも対応した冷凍機1が実現される。
【0033】
なお、他の実施形態では、冷却器21はバッファタンク29を備えなくてもよく、液化した第2冷媒F2が伝熱管23の下流側部において貯留される構成が採用されてもよい。この場合、ファン24による送風量が一定であっても、吐出圧に応じてコントローラ90がポンプ25を制御することで、伝熱管23には液相の第2冷媒F2が貯留される。
【0034】
以上説明したコントローラ90はプロセッサとメモリとを含む。プロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、これら以外の各種演算装置、又はこれらの組み合わせである。プロセッサは、PLD、ASIC、FPGA、及びMCU等の集積回路により実現されてもよい。メモリは、プロセッサによって処理されるデータを一時的または非一時的に記憶するように構成される。メモリは、ROM、RAM、およびフラッシュメモリを含む。プロセッサは、ROMに記憶される冷凍機制御プログラムをRAMにロードし、ロードした冷凍機制御プログラムに含まれる命令を順に実行する。以下、冷凍機制御プログラムによって実行される処理の詳細を例示する。
【0035】
<4.冷凍機制御処理>
図5は、本開示の一実施形態に係る冷凍機制御処理を示すフローチャートである。冷凍機1が例えば定常運転する間、該制御処理は、コントローラ90のプロセッサ(以下、単にプロセッサともいう)によって実行される。以下の説明では、ステップを「S」と略記する場合がある。
【0036】
はじめに、プロセッサは、例えば土などの固形物であってもよい冷却対象との熱交換を済ませた熱媒体Hの目標温度と、計測により求まる熱媒体Hの実温度との偏差である温度偏差を取得する(S11)。温度偏差は、冷却対象の目標温度と冷却対象の実温度との偏差であってもよい。プロセッサは、S11で取得される温度偏差に基づき圧縮機15を制御する(S13)。S13では、プロセッサが圧縮機15に回転数指令を入力することで、圧縮機15の回転数が制御される。また、S13の実行時、プロセッサは吐出圧信号を取得することで圧縮機15の吐出圧を特定する。
【0037】
次いで、プロセッサはポンプ25を制御する(S15)。例えば、S13で特定された吐出圧が閾値以下である場合には、ポンプ25の駆動回転数が一定回転数以下になるようプロセッサはポンプ25に指令を送る。これにより、ポンプ25によって送液させる第2冷媒F2の流量が規定量以下になる。他方で、吐出圧が閾値を上回る場合には、ポンプ25の駆動回転数が一定回転数を上回るようプロセッサはポンプ25に指令を送る。上記制御により、凝縮器50における第2冷媒F2の液溜まりLの液面は上下に推移する。
【0038】
プロセッサは、液溜まりLの液面が下限高さよりも低いかを、例えば液面センサ87の検出結果に基づき判定する(S17)。液面が下限高さよりも低いと判定された場合(S17:YES)、プロセッサは冷凍機1の稼働を停止し(S27)、処理を終了する。液面が下限高さ以上であると判定された場合(S17:NO)、プロセッサは、液溜まりLの液面が規定高さに達したかを判定する(S19)。例えば、液面センサ88の検出結果に基づき液面が規定高さ以上であると判定された場合(S19:YES)プロセッサは軽警報を発出する(S21)。軽警報を発出する処理の具体的内容は既述の通りであり、このとき冷凍機1は稼働を継続する。
【0039】
液面が規定高さに達していないと判定された場合(S19:NO)、プロセッサは、吐出圧が許容上限値に到達したかを、例えば圧力センサ89の検出結果に基づき判定する(S23)。吐出圧が許容上限値以上であると判定された場合(S23:YES)、プロセッサは、重警報を発出する制御を実行して(S25)、冷凍機1の稼働を停止する(S27)。重警報を発出する処理の具体的内容は既述の通りである。
【0040】
プロセッサは、S13で取得した吐出圧に基づきファン24を制御する。具体的には、吐出圧が閾値以下である場合、送風量が下がるようプロセッサはファン24を制御する。他方で、吐出圧が閾値を上回る場合、プロセッサは、送風量が増加するようプロセッサはファン24を制御し、処理を終了する。
【0041】
<5.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0042】
1)本開示の一実施形態に係る冷凍機(1)は、
第1冷媒(F1)を第2冷媒(F2)との熱交換により凝縮させるための凝縮器(50)を含む冷凍サイクル(10)と、
前記凝縮器よりも上方に設けられると共に前記凝縮器にて気化した前記第2冷媒を冷却させるための冷却器(1)を含む循環サイクル(20)と
を備え、
前記凝縮器は、
前記第1冷媒が流れるための流路(55)を含む流路形成体(52)と、
前記流路形成体の少なくとも一部が浸かる前記第2冷媒の液溜まり(L)を収容するシェル(51)と
を含む。
【0043】
上記1)の構成によれば、冷却器が凝縮器よりも上方に設けられるので、循環サイクルではサーモサイフォン効果を利用することができ、第2冷媒を循環させるための動力を低減できる。また、サーモサイフォン効果を利用するにあたって凝縮器にて気化する必要のある第2冷媒が、シェルによって規定される流路を流れるため、第2冷媒の膨張に起因した圧力損失の影響を低減でき、第2冷媒を循環させるための動力低減の効果は更に高まる。さらに、比較的スペースの確保が困難な流路形成体の流路を第2冷媒が流れないので、気化に伴い膨張した第2冷媒が滞りなく流れることができるよう流路形成体を大型化する必要もない。従って、凝縮器のコンパクト化が図られる。以上より、第1冷媒を第2冷媒との熱交換により凝縮させる凝縮器をコンパクト化させ、サーモサイフォン効果を利用して第2冷媒を循環させるための動力を低減した冷凍機が実現される。
【0044】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の冷凍機であって、
前記第1冷媒を圧縮ガスとして前記凝縮器に送るための圧縮機(15)と、
コントローラ(90)と
をさらに備え、
前記循環サイクルは、前記冷却器から流出する前記第2冷媒を前記凝縮器に送るためのポンプ(25)をさらに含み、
前記コントローラは、前記圧縮機の吐出圧を示す信号に基づいて、前記ポンプを制御するように構成される。
【0045】
上記2)の構成によれば、冷凍機の熱負荷に応じて変化する吐出圧を示す信号に基づいてポンプが制御され、シェル内の第2冷媒の液面高さが調整される。液面高さに応じて流路形成体の伝熱面積(つまり凝縮器における熱交換量)が変化する。よって、熱負荷に応じて凝縮器の熱交換量を制御する冷凍機が実現される。
【0046】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の冷凍機であって、
前記コントローラは、前記シェル内の前記第2冷媒の液面が規定高さに達した場合、前記吐出圧を示す信号に関わらず、前記凝縮器への前記第2冷媒の流入流量が増加しないよう前記ポンプを制御するように構成される。
【0047】
上記3)の構成によれば、吐出圧を示す信号に基づいたポンプの制御を通じて、シェル内の液面高さの過度な上昇を抑制できる。これにより、シェルにおける第2冷媒の液溜まりの量が過剰になるのを抑制できる。従って、液相の第2冷媒のガス化が阻害されることに起因した凝縮器での熱交換量の低下(言い換えると凝縮器が発揮する性能の低下)を抑制できる。
【0048】
4)幾つかの実施形態では、上記2)または3)に記載の冷凍機であって、
前記コントローラは、前記シェル内の前記第2冷媒の液面が規定高さに達した場合、冷凍機の稼働中に警報を発出する制御を実行するように構成される。
【0049】
上記4)の構成によれば、シェルにおける第2冷媒の液面高さが許容上限高さに近づいていることをオペレータは認識でき、オペレータは冷凍機を稼働させながら処置を施すことができる。
【0050】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の冷凍機であって、
前記シェル内の前記第2冷媒の液面が下限高さよりも低い場合、前記冷凍機の稼働を停止させる制御を実行するように構成されるコントローラ(90)をさらに備える。
【0051】
上記5)の構成によれば、第2冷媒の液面が下限高さよりも低く、凝縮器が第1冷媒の凝縮機能を著しく失っているときには、冷凍機の稼働は停止する。凝縮器が凝縮能力を失ったまま冷凍機が稼働を継続するのを抑制できる。
【0052】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載の冷凍機であって、
前記第1冷媒を圧縮ガスとして前記凝縮器に送るための圧縮機(15)と、
コントローラ(90)と
をさらに備え、
前記冷却器は、前記第2冷媒が流れる伝熱管(23)と、前記伝熱管に送風するためのファン(24)と、前記伝熱管から流れる液相の前記第2冷媒を貯留するためのバッファタンク(29)とを含むラジエータ(28)であり、
前記コントローラは、前記圧縮機の吐出圧が閾値以下である場合、送風量が下がるよう前記ファンを制御するように構成される。
【0053】
上記6)の構成によれば、冷凍機によって発揮される冷凍能力が少なくて済むタイミングでは、圧縮機の吐出圧が閾値以下であり、凝縮器における熱交換量は少ない。この場合、コントローラは、送風量が下がるようファンを制御するので、第2冷媒が伝熱管の上流部で液化して滞留するのを抑制する。これにより、伝熱管で液化した第2冷媒をバッファタンクでより確実に貯留することができる。よって、余分な第2冷媒をバッファタンクに貯留することにより、凝縮器における熱交換量をより低くでき、より低い熱負荷にも対応した冷凍機が実現される。
【0054】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から6)のいずれかに記載の冷凍機であって、
前記第2冷媒は、HFO冷媒である。
【0055】
上記7)の構成によれば、低いGWPを有するHFOが第2冷媒として採用されることで、環境負荷を低減できる。また、第2冷媒がHFO冷媒であることで、循環サイクルにおける第2冷媒の圧力を例えば0.2MPa以下に抑えることができ、冷凍機の安全性を向上できる。さらには、液体から気体への変化における体積膨張率が比較的大きなHFO冷媒が、流路形成体ではなくシェル内の流路を流れるので、第2冷媒の気化時の膨張に起因した圧力損失の影響を低減する効果を高めることができる。
【0056】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載の冷凍機であって、
前記循環サイクルは、前記冷却器から流出する前記第2冷媒を前記凝縮器に送るためのポンプ(25)をさらに含み、
前記冷凍機は、
前記第1冷媒を圧縮ガスとして前記凝縮器に送るための圧縮機(15)と、
前記圧縮機の吐出圧を示す信号に基づいて、前記ポンプを制御するように構成されるコントローラ(90)と
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記圧縮機の吐出圧が許容上限値に達した場合、前記冷凍機の冷凍動作を停止させる制御を実行するように構成される。
【0057】
上記8)の構成によれば、吐出圧が許容上限に達した場合には、コントローラは冷凍機の稼働を停止させる制御を実行する。これにより、流路形成体の流路圧力が過剰になるのを抑制できるので、冷凍機の故障を回避することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、1A :冷凍機
10 :冷凍サイクル
15 :圧縮機
20 :循環サイクル
21 :冷却器
23 :伝熱管
24 :ファン
25 :ポンプ
28 :ラジエータ
29 :バッファタンク
50 :凝縮器
51 :シェル
52 :流路形成体
55 :流路
90 :コントローラ
F1 :第1冷媒
F2 :第2冷媒
L :液溜まり