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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142239
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230928BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230928BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230928BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230928BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101C
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H05H1/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049030
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】樫村 龍成
(72)【発明者】
【氏名】坂井 隼人
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB02
2G084BB11
2G084BB21
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD03
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084DD63
2G084FF15
2G084FF31
2G084FF32
2G084FF34
2G084FF39
2G084HH07
2G084HH12
2G084HH20
2G084HH35
2G084HH36
2G084HH45
5F004AA16
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004CA03
5F004CA06
5F045AA08
5F045DP03
5F045DP05
5F045EF05
5F045EH11
5F045EH13
5F045EH20
5F045EJ01
5F045EJ09
5F045EM05
5F131AA02
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA02
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】伝熱流体を安定して供給し、温度制御の精度を向上させる。
【解決手段】プラズマ処理空間を有するプラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理空間よりも上方に設けられ、伝熱流体を貯留可能に構成される貯留容器と、前記プラズマ処理空間と前記貯留容器の間、または前記貯留容器内に設けられ、前記伝熱流体により冷却される冷却対象部品と、を備える、プラズマ処理装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理空間を有するプラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理空間よりも上方に設けられ、伝熱流体を貯留可能に構成される貯留容器と、
前記プラズマ処理空間と前記貯留容器の間、または前記貯留容器内に設けられ、前記伝熱流体により冷却される冷却対象部品と、
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記冷却対象部品は、前記プラズマ処理チャンバの前記プラズマ処理空間よりも上側において基板を保持する静電チャックである、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記貯留容器には、前記伝熱流体を供給する供給管と、前記伝熱流体を排気する排気管と、が接続され、
前記供給管から前記貯留容器内に供給される前記伝熱流体は液体であり、
前記貯留容器から前記排気管に排気される前記伝熱流体は気体である、
前記静電チャックは、前記貯留容器の底壁に接している、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記静電チャックの前記貯留容器の底壁に接する面と反対面に前記基板が保持される、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記プラズマ処理装置の各部を制御する制御部と、
前記排気管内の圧力を測定する圧力計と、
前記供給管及び/又は前記排気管に設けられた調整弁と、
前記排気管に接続された排気装置と、を備え、
前記制御部は、
前記圧力計が測定した圧力に基づき、蒸気圧曲線に従い、前記静電チャックの温度を目標温度に近づけるように、前記供給管に設けられた調整弁の開度、前記排気管に設けられた調整弁の開度、及び前記排気装置の出力の少なくともいずれかを制御する、
請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記貯留容器は、上部電極としても機能し、
前記プラズマ処理チャンバの底部に設けられ、処理ガスを供給し、前記上部電極に対向する下部電極としても機能するガスシャワーヘッドと、
前記ガスシャワーヘッド及び/又は前記貯留容器にRF信号を供給するRF電源と、を備える、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記貯留容器は、誘電体窓であり、
前記冷却対象部品は、前記誘電体窓内に設けられるコイル部材であり、
前記コイル部材は、超伝導材料により形成されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記誘電体窓には、前記伝熱流体を供給する供給管と、前記伝熱流体を排気する排気管と、が接続され、
前記供給管から前記誘電体窓に供給される前記伝熱流体は液体であり、
前記誘電体窓から前記排気管に排気される前記伝熱流体は気体であり、
前記コイル部材は、前記伝熱流体の液体内に浸されている、
請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記プラズマ処理装置の各部を制御する制御部と、
前記排気管内の圧力を測定する圧力計と、
前記供給管及び/又は前記排気管に設けられた調整弁と、
前記排気管に接続された排気装置と、を備え、
前記制御部は、
前記圧力計が測定した圧力に基づき、蒸気圧曲線に従い、前記コイル部材の温度を臨界温度以下にするように、前記供給管に設けられた調整弁の開度、前記排気管に設けられた調整弁の開度、及び前記排気装置の出力の少なくともいずれかを制御する、
請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
スイッチを介して前記コイル部材に接続され、前記コイル部材にRF信号を供給する電源を備え、
前記制御部は、
前記スイッチのオン・オフにより超伝導状態の前記コイル部材の永久回路を形成する、
請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記伝熱流体の温度を臨界温度以下に制御した後、前記スイッチをオフし、前記コイル部材の永久回路を形成する、
請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記コイル部材に加熱部が接続され、
前記制御部は、
前記加熱部により前記コイル部材を加熱し、前記コイル部材の一部を臨界温度を超える温度に制御し、前記永久回路の形成を停止する、
請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
プラズマ処理空間を有するプラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理空間よりも上方に設けられ、伝熱流体を貯留可能に構成される貯留容器と、
前記プラズマ処理空間と前記貯留容器の間に設けられ、前記伝熱流体により冷却される静電チャックと、を備えるプラズマ処理装置にて実行する温度制御方法であって、
前記貯留容器には、前記伝熱流体を供給する供給管と、前記伝熱流体を排気する排気管と、が接続され、
前記排気管内の圧力を測定し、
測定した前記圧力に基づき、蒸気圧曲線に従い、前記静電チャックの温度を目標温度に近づけるように、前記供給管に設けられた調整弁の開度、前記排気管に設けられた調整弁の開度、及び前記排気管に接続された排気装置の出力の少なくともいずれかを制御する、温度制御方法。
【請求項14】
プラズマ処理空間を有するプラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理空間よりも上方に設けられ、伝熱流体を貯留可能に構成される貯留容器の誘電体窓と、
前記誘電体窓内に設けられ、前記伝熱流体により冷却されるコイル部材と、を備えるプラズマ処理装置にて実行する温度制御方法であって、
前記誘電体窓には、前記伝熱流体を供給する供給管と、前記伝熱流体を排気する排気管と、が接続され、
前記排気管内の圧力を測定し、
測定した前記圧力に基づき、蒸気圧曲線に従い、前記伝熱流体の温度を臨界温度以下にするように、前記供給管に設けられた調整弁の開度、前記排気管に設けられた調整弁の開度、及び前記排気管に接続された排気装置の出力の少なくともいずれかを制御する、温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、スパッタリング装置において、マグネトロンを冷却水槽中で回転させ、マグネトロンと冷却水槽の間の流体力学的力により、マグネトロンをピボット軸の周りにピボット運動させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-240964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、伝熱流体を安定して供給し、温度制御の精度を向上できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、プラズマ処理空間を有するプラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理空間よりも上方に設けられ、伝熱流体を貯留可能に構成される貯留容器と、前記プラズマ処理空間と前記貯留容器の間、または前記貯留容器内に設けられ、前記伝熱流体により冷却される冷却対象部品と、を備える、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、伝熱流体を安定して供給し、温度制御の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例を示す図。
図2】第1実施形態に係る温度制御方法の一例を示すフローチャート。
図3】窒素ガスの蒸気圧曲線を示す図。
図4】第2実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例を示す図。
図5】第2実施形態の温度制御方法(永久回路オン)の一例を示すフローチャート。
図6】第2実施形態の温度制御方法(永久回路オフ)の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書において平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直、円、一致には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直、略円、略一致が含まれてもよい。
【0010】
[プラズマ処理装置]
第1実施形態及び第2実施形態のプラズマ処理装置は、内部がプラズマ処理空間となるプラズマ処理チャンバを有する。プラズマ処理チャンバでは、液体窒素等の伝熱流体を貯留可能に構成される貯留容器がプラズマ処理空間よりも上方に配置されている。また、プラズマ処理空間と貯留容器の間、または貯留容器内に伝熱流体により冷却される冷却対象部品が設けられている。
【0011】
冷却対象部品の一例としては、プラズマ処理空間よりも上側の、プラズマ処理空間と貯留容器の間において伝熱流体により冷却され、基板を保持する静電チャックがある。冷却対象部品の他の例としては、貯留容器内に設けられ、伝熱流体により冷却されるコイル部材がある。
【0012】
第1実施形態では、静電チャックを冷却対象部品としたときのプラズマ処理システムの構成例と、第1実施形態にかかるプラズマ処理装置が実行する温度制御方法について説明する。第2実施形態では、コイル部材を冷却対象部品としたときのプラズマ処理システムの構成例と、第2実施形態にかかるプラズマ処理装置が実行する温度制御方法について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
[プラズマ処理システム]
以下に、図1を参照しながら、第1実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例を示す図である。
【0014】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の下方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の底部の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11と、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0015】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a下に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a下の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b下に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0016】
一実施形態において、本体部111は、貯留容器1112及び静電チャック1111を含む。貯留容器1112は、導電性部材を含む。貯留容器1112の導電性部材は、プラズマ処理チャンバ10の天壁から下に吊り下げられ、上部電極として機能し得る。静電チャック1111は、貯留容器1112の下に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の下に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の下に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が上部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、貯留容器1112の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の上部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが上部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの上部電極を含む。
【0017】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0018】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路又はこれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、貯留容器1112内の空間11sが冷却空間として形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0019】
本開示の第1実施形態では、貯留容器1112は、伝熱流体の一例として液体窒素を貯留可能に構成される。静電チャック1111は、貯留容器1112の底壁に接する。静電チャック1111の貯留容器1112の底壁に接する面と反対面に基板Wを保持する。
【0020】
基板Wの保持方法の一例としては、伝熱ガス供給部が、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に供給する伝熱ガスを減圧に制御することでこの間隙を負圧にすることにより基板Wを上部に吸い上げる。その後にプラズマ処理チャンバ10内に供給したガスからプラズマを生成し、静電電極1111bに直流電圧を印加して基板Wを静電チャック1111に吸着させる方法がある。なお、静電電極1111bが双極にすることで基板Wを吸着してもよい。また、基板Wの周囲から基板Wを静電チャック1111又は貯留容器1112に保持するクランプ構造を用いてもよい。リングアセンブリ112についても同様の保持方法で貯留容器1112に保持できる。
【0021】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の底部に設けられ、少なくとも1つの下部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0022】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0023】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0024】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0025】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの上部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの上部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0026】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。
【0027】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの上部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの下部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0028】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0029】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、記憶媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。記憶媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0030】
[貯留容器]
0℃以下、好ましくは-30℃以下に基板Wの温度を調整し、基板Wをエッチングするプロセス(以下、極低温プロセスともいう。)において、プラズマ処理チャンバ10の下部に基板支持部を設け、その内部に形成した流路に冷却したドレイン等の伝熱流体を循環させ、基板Wを冷却する構成のプラズマ処理装置がある。係る構造では、プロセス中のプラズマからの入熱により基板W及び基板支持部の温度が上昇し、基板支持部内の流路を流れる伝熱流体が熱により気化する。これにより、重力により流路の下側には液体、上側には気体の伝熱流体の層ができてしまう。これにより、基板支持部の抜熱性能が悪くなり、基板Wの温度管理が容易でなくなる。よって、伝熱流体を安定して供給し、基板Wの温度管理を容易にし、基板W温度の面内均一性の向上を実現できるプラズマ処理装置の構造が望まれている。
【0031】
そこで、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1では、基板支持部11をプラズマ処理チャンバ10の上部に配置し、基板支持部11の本体部111に、貯留容器1112と、貯留容器1112に接触させた静電チャック1111とを配置する。静電チャック1111の上部に貯留容器1112が配置されるため、伝熱流体の層が気層と液層に分かれたときにも静電チャック1111は、気層の影響を受けずに液層の伝熱流体により冷却することができ、基板Wの温度管理を容易にできる。
【0032】
貯留容器1112は、有底の円筒形状であり、バスタブ状の内部に伝熱流体の一例として液体窒素(N)が供給される。貯留容器1112には、液体窒素(伝熱流体の液層:N-liq.)を供給する供給管15と、液体から気化した窒素ガス(伝熱流体の気層:N-gas)を排気する排気管17とが接続されている。供給管15及び排気管17は、プラズマ処理チャンバ10の天壁を貫通する。
【0033】
供給管15には液体窒素タンク9が接続され、液体窒素タンク9から供給管15を介して貯留容器1112内に液体窒素が供給される。供給管15から貯留容器1112に供給される伝熱流体は液体である。
【0034】
プロセス中にプラズマからの入熱により、貯留容器1112内の液体窒素の一部は気化する。この結果、重力により貯留容器1112の底部側に液体窒素、上部側に窒素ガスが形成される。
【0035】
排気管17には、排気装置の一例である真空ポンプ16が接続されている。真空ポンプ16は、ドライポンプ、ターボ分子ポンプ等から構成され、密閉空間である貯留容器1112内の空間11sを排気する。すなわち、真空ポンプ16の駆動により貯留容器1112内で気化された窒素ガス(N-gas)は、排気管17を介して排気される。なお、貯留容器1112から排気される窒素ガスは冷却を必要とするユニットに供給し、有効利用することが可能である。
【0036】
真空ポンプ16による排気によって貯留容器1112内の圧力は大気圧よりも十分に小さく、負圧に維持される。このため、貯留容器1112の内圧と大気圧との差圧により液体窒素タンク9から貯留容器1112内に液体窒素が自動で補充される。これにより、プロセス時に生じるプラズマからの入熱により、貯留容器1112の液体窒素が気化しても、貯留容器1112内の液体窒素の枯渇を防止できる。
【0037】
係る構成では、貯留容器1112の下に静電チャック1111が接触して設けられているため、貯留容器1112内の気化した窒素ガスによる影響を受けない。このため、冷却性能を低下させずに、液体窒素により静電チャック1111を充分に冷却できる。また、真空ポンプ16による貯留容器1112内の排気に応じて液体窒素タンク9から貯留容器1112に自動で液体窒素が供給されるため、貯留容器1112内の液体窒素は枯渇しない。これにより、静電チャック1111は常に液体窒素に接触することができ、液体窒素の安定供給により、静電チャック1111の冷却効率を高め、基板W温度の面内均一性を図ることができる。
【0038】
更に、係る構成では、ガス供給部20からガス供給口13aにガスを供給するガスライン及びガス排出口10eから排気システム40にガスを排出する排気ラインをプラズマ処理装置1の底壁へ配置する。これによれば、顧客側のガスライン及び排気ラインと本装置のガスライン及び排気ラインとは、顧客の工場の階下から接続されるため、本装置のガスラインと顧客側のガスライン、及び本装置の排気ラインと顧客側の排気ラインの接続を容易にすることができる。
【0039】
[温度制御方法]
液体窒素タンク9から貯留容器1112内に液体窒素を供給する際、液体窒素は、大気圧では-196℃で蒸発する。貯留容器1112内を減圧し、貯留容器1112内を大気圧よりも低い圧力に減圧すると(負圧の状態)、減圧した分、貯留容器1112内において液体窒素の沸点が下がる。貯留容器1112内の圧力の変動から、Nの蒸気圧曲線に従い貯留容器1112内の温度変化を測定できる。つまり、貯留容器1112内の空間11sの圧力を制御することにより、貯留容器1112内の温度を管理できる。
【0040】
貯留容器1112内の空間11sの圧力は、排気ガス経路である排気管17内の圧力であり、窒素(N)の蒸気圧である。そこで、真空ポンプ16よりも貯留容器1112側の排気管17に圧力計18を取り付け、静電チャック1111及び基板Wの温度制御のために圧力計18によって排気管17内の圧力を測定する。制御部2は、排気管17内の圧力の管理、すなわち窒素の蒸気圧の管理を行い、蒸気圧の管理からボイルシャルルの法則(PV=nRT)に基づき静電チャック1111及び基板Wの温度管理を行う。
【0041】
第1実施形態の温度制御方法では、圧力計18による排気する窒素の圧力の測定結果に基づき液体窒素タンク9から貯留容器1112内に供給する液体窒素の流量を調整する。これにより、貯留容器1112内の温度制御が可能になり、静電チャック1111及び基板Wの温度を精度良く制御できる。貯留容器1112内に供給する液体窒素の流量の制御は、供給管15に取り付けられた調整弁19により行う。すなわち、制御部2は、調整弁19の弁体の開度を制御することで、供給管15から貯留容器1112内に供給する液体窒素の流量を調整する。
【0042】
以下、第1実施形態に係る温度制御方法について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係る温度制御方法の一例を示すフローチャートである。図3は、窒素ガスの蒸気圧曲線を示す図である。図2に示す温度制御方法は、制御部2により制御され、プラズマ処理装置1にて実行される。貯留容器1112内の空間11sの体積をVとすると、空間11sは密閉されており体積Vは一定である。
【0043】
図2に示す温度制御方法は、プラズマ処理の一例として基板Wを0℃以下にしてエッチング処理を行う極低温プロセスの前に開始され、基板Wを目標温度にする又は目標温度に近づけるように調整し、極低温プロセス中も引き続き同様な温度制御が実行される。
【0044】
図2の温度制御方法が開始されると、ステップS1において、制御部2は液体窒素タンク9から貯留容器1112へ液体窒素(N-liq.)を供給する。次に、ステップS2において、制御部2は、真空ポンプ16の出力を制御し、貯留容器1112の空間11s内から気化した液体窒素(窒素ガス:N-gas)を排気する。排気した窒素ガス(N-gas)は冷却を必要とするユニットに供給してもよい。また、ステップS3において、圧力計18は、排気管17内の圧力を測定する。
【0045】
次に、ステップS4において、制御部2は、蒸気圧曲線に基づき、測定した圧力値から温度を算出する。例えば、図3の窒素(N)の蒸気圧曲線を参照すると、測定した圧力値が1.0(MPa)の場合、制御部2は、貯留容器1112内の温度が約-170℃であると算出する。
【0046】
次に、ステップS5において、制御部2は、静電チャック1111の温度(基板Wの温度)がプロセス条件に定められた目標温度になるように貯留容器1112へ流入する液体窒素を制御する。制御部2は、目標温度が算出した現在の温度よりも低い場合、蒸気圧曲線に従い貯留容器1112へ流入する液体窒素を増加させるように調整弁19の開度を大きくする。真空ポンプ16の出力が一定に制御されている状態で液体窒素の供給側の調整弁19の開度を広げると、貯留容器1112内の圧力(蒸気圧)が下がり、圧力差で液体窒素の供給量が増える。貯留容器1112内を減圧することにより、液体窒素の気化が促進され、気化熱で液体窒素が冷却され、液体窒素の蒸気圧と貯留容器1112内の圧力が吊り合うまで進行することで貯留容器1112内の温度を下げることができる。制御部2は、目標温度が算出した現在の温度よりも高い場合、蒸気圧曲線に従い貯留容器1112へ流入する液体窒素を減少させるように調整弁19の開度を小さくする。真空ポンプ16の出力が一定に制御されている状態で液体窒素の供給側の調整弁19の開度を狭めると、貯留容器1112内の圧力(蒸気圧)が上がり、圧力差で液体窒素の供給量が減る。これにより、液体窒素の気化が抑制され、液体窒素の蒸気圧と貯留容器1112内の圧力が吊り合うまで進行することで貯留容器1112内の温度を上げることができる。増加又は減少させる液体窒素の流量は、蒸気圧曲線に従い目標温度と現在の温度との差分により定まる。
【0047】
ただし、静電チャック1111の温度を目標温度にする(近づける)ために制御部2が行う制御は、調整弁19の開度の制御に限らない。制御部2は、圧力計18が測定した圧力に基づき、蒸気圧曲線に従い、静電チャック1111の温度を予め設定された目標温度にするように、供給管15に設けられた調整弁19の開度、排気管17に設けられた図示しない調整弁の開度、及び排気管17に接続された真空ポンプ16の出力の少なくともいずれかを制御してもよい。
【0048】
例えば、図3の窒素(N)の蒸気圧曲線を参照して説明する。算出された現在の温度が-170℃、目標温度が-180℃の場合、貯留容器1112内の空間11sの圧力、つまり、排気管17内の圧力(すなわち、空間11sの圧力)を約1.0(MPa)から約0.5(MPa)に下げ、空間11sの圧力をより負圧にする。また、調整弁19の開度を調整する。これにより、液体窒素タンク9から空間11sへ流入する液体窒素の流量を増加させ、温度を目標温度まで低下させることができる。排気管17内の圧力を制御するためには、排気管17に設けられた調整弁の開度を制御する方法及び/又は真空ポンプ16の出力を制御してもよい。このようにして排気管17内の圧力、つまり貯留容器1112内の空間11sの圧力の変化から貯留容器1112内の温度を制御することで静電チャック1111の温度を管理できる。
【0049】
次に、図2のステップS6において基板Wを搬入し、ステップS7において基板Wにプラズマ処理を施し、ステップS8において基板Wを搬出して、本処理を終了する。なお、ステップS1~S5の温度制御処理は、ステップS7のプラズマ処理中も継続して行われる。ステップS6の基板Wの搬入は、図2の処理の最初に行ってもよい。
【0050】
<第2実施形態>
ICP(誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)は下部電極の対向電極にコイル部材(誘電コイル)を有し、電磁誘導によって電界を変化させてプラズマを生成している。誘導結合プラズマの特徴としてラジカルの供給量が多く(高密度)、イオン衝撃の精密制御ができ、Fin形成などの微細なシリコン(Si)エッチングプロセスの主流となっている。このコイル部材は効率の観点から低電気抵抗率が望まれている。また、低圧条件下のプロセスなどで発熱の低減が望まれている。
【0051】
そこで、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1では、コイル部材に超伝導材料を用いる。そして、バスタブ状の内部を有する貯留容器の誘電体窓101に臨界温度以下に冷却された伝熱流体の一例である液体窒素を充填させ、誘電体窓101内にコイル部材を配置し、コイル部材を液体窒素に浸す。
【0052】
臨界温度は、超伝導において超伝導と常伝導の境目の温度である。コイル部材を臨界温度以下の液体窒素に浸して臨界温度以下に冷却し、超伝導状態にする。超伝導は一度起きると、超伝導材料を用いたコイル部材の抵抗は0(ゼロ)になり、コイル部材に永久的に電流が流れる永久回路が形成され、コイル部材における電力ロスがゼロになり、電力の高効率化が実現できる。
【0053】
また、超伝導状態のコイル部材では抵抗が0であるため、永久回路の発熱が0に抑えられる。後述するようにプラズマ電子密度及びエッチングレートはコイル部材の電力に依存するので、超伝導材料を用いたコイル部材により電子密度、イオンエネルギー及びエッチングレートの向上を図ることができる。
【0054】
[プラズマ処理システム]
以下、図4を参照しながら、第2実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例について説明する。図4は、第2実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例を示す図である。
【0055】
プラズマ処理システムは、超伝導材料を用いたコイル部材(以下、ICPコイルという。)を有する誘導結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。誘導結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101を含む。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101、プラズマ処理チャンバ10の側壁102及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。誘電体窓101は、プラズマ処理空間10sよりも上方に設けられ、伝熱流体を貯留可能に構成される貯留容器として機能する。本開示の第2実施形態では、誘電体窓101は、伝熱流体の一例として液体窒素を貯留可能に構成される。ICPコイルは、誘電体窓101内に設けられ、伝熱流体により冷却される冷却対象部品の一例である。
【0056】
また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11、ガス導入部及びアンテナを含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。アンテナは、プラズマ処理チャンバ10上又はその上方(すなわち誘電体窓101内)に配置されるICPコイル14を含む。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。
【0057】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0058】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材はバイアス電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極がバイアス電極として機能する。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数のバイアス電極として機能してもよい。また、静電電極1111bがバイアス電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つのバイアス電極を含む。
【0059】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0060】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0061】
ガス導入部は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。一実施形態において、ガス導入部は、中央ガス注入部(CGI:Center Gas Injector)13を含む。中央ガス注入部13は、基板支持部11の上方に配置され、誘電体窓101に形成された中央開口部に取り付けられる。中央ガス注入部13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス流路13b1、及び少なくとも1つのガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス流路13b1を通過してガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。なお、ガス導入部は、中央ガス注入部13に加えて又はその代わりに、側壁102に形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0062】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してガス導入部に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0063】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つのバイアス電極及びアンテナに供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つのバイアス電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオンを基板Wに引き込むことができる。
【0064】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、ICPコイル14に結合され、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、ICPコイル14に供給される。
【0065】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つのバイアス電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つのバイアス電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0066】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、バイアスDC生成部32a1を含む。一実施形態において、バイアスDC生成部32a1は、少なくとも1つのバイアス電極に接続され、バイアスDC信号を生成するように構成される。生成されたバイアスDC信号は、少なくとも1つのバイアス電極に印加される。
【0067】
種々の実施形態において、バイアスDC信号は、パルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つのバイアス電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部がバイアスDC生成部32a1と少なくとも1つのバイアス電極との間に接続される。従って、バイアスDC生成部32a1及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、バイアスDC生成部32a1は、RF電源31に加えて設けられてもよく、第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0068】
アンテナは、1又は複数のICPコイル14を含む。一実施形態において、アンテナは、同軸上に配置された外側コイル及び内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電源31は、外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイル及び内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、同一のRF生成部が外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイル及び内側コイルに別々に接続されてもよい。
【0069】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0070】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0071】
[誘電体窓]
誘電体窓101はプラズマ処理チャンバ10の上部に設けられ、有底の円筒形状であり、バスタブ状の内部に伝熱流体の一例として液体窒素(伝熱流体の液層:N-liq.)を供給する。誘電体窓101には、液体窒素を供給する供給管15と、液体から気化した液体窒素(伝熱流体の気層(窒素ガス):N-gas)を排気する排気管17とが接続されている。供給管15及び排気管17は、誘電体窓101の上壁を貫通する。
【0072】
供給管15には液体窒素タンク9が接続され、液体窒素タンク9から供給管15を介して誘電体窓101内に液体窒素が供給される。供給管15から誘電体窓101に供給される伝熱流体は液体である。
【0073】
プロセス中にプラズマからの入熱により、誘電体窓101内の液体窒素の一部は気化する。この結果、重力により誘電体窓101の底部側に液体窒素の液層、上部側に窒素ガスの気層が形成される。
【0074】
排気管17には、排気装置の一例である真空ポンプ16が接続されている。真空ポンプ16は、ドライポンプ、ターボ分子ポンプ等から構成され、密閉空間である誘電体窓101内の空間11sを排気する。すなわち、真空ポンプ16の駆動により誘電体窓101内の気化された液体窒素である窒素ガスは、排気管17を介して排気される。なお、誘電体窓101から排気される窒素ガスは冷却を必要とするユニットに供給し、有効利用することが可能である。
【0075】
真空ポンプ16による排気によって誘電体窓101内の圧力は大気圧よりも十分に小さく、負圧に維持されるため、誘電体窓101の内圧と大気圧との差圧に応じて液体窒素タンク9から液体窒素が自動で補充される。これにより、プロセス時に生じるプラズマからの入熱により、誘電体窓101の液体窒素が気化しても、誘電体窓101内の液体窒素の枯渇を防止できる。これにより、ICPコイル14は、液体窒素の液層内に浸されている状態を保持できる。ただし、本実施形態では、制御部2は、ICPコイル14(及び配線56)の温度が臨界温度以下になるように供給管15に取り付けられた調整弁19を制御し、誘電体窓101へ流入する液体窒素を制御する例を挙げて説明する。
【0076】
ICPコイル14には、超伝導材料が用いられる。液体窒素内で使用可能な超伝導材料の一例としてはイットリウム又はイットリウム系材料が挙げられるが、これに限らない。ICPコイル14を液体窒素に浸した状態でICPコイル14を超伝導材料として使用する。
【0077】
第1のRF生成部31aは、RF供給ライン55、57を介してICPコイル14に接続されている。RF供給ライン55には、スイッチ54が設けられている。スイッチ54をオンすると、第1のRF生成部31aからソースRF信号(ソースRF電力)がICPコイル14に供給され、RF供給ライン55、57からICPコイル14に高周波電流iが流れる。スイッチ54をオフすると、ICPコイル14への高周波電流iの供給が停止される。
【0078】
配線56はRF供給ライン55、57を介してICPコイル14に並列に接続されている。配線56の一部にはヒータ53aが巻きつけられている。ヒータ53aにはヒータ電源53が接続されている。ヒータ53aは、ICPコイル14を加熱する加熱部の一例である。
【0079】
制御部2によるスイッチ54のオン・オフの制御によりICPコイル14と配線56とを繋ぐ閉回路Cに永久回路が形成される。配線56及びヒータ53aはICPコイル14と同様に誘電体窓101内に供給された液体窒素の液層に浸っている。
【0080】
永久回路を形成する際、まず、制御部2は、誘電体窓101内の液体窒素の温度を臨界温度以下に制御し、ICPコイル14を超伝導材料に相転移させた状態でスイッチ54をオン状態にする。これにより、第1のRF生成部31aからソースRF信号が供給され、超伝導材料に相転移したICPコイル14に電流iが流れ、高磁場が発生する。この状態で、スイッチ54をオフに制御すると、超伝導材料では抵抗が0であるためにICPコイル14に永久電流が流れ、閉回路Cは永久回路となり、ICPコイル14に電流が流れ続けることで高磁場を発生し続ける。この結果、電界が誘電体窓101を透過し、プラズマ処理空間10sに供給され、電界によってガス導入口13cから供給された処理ガスからプラズマが生成される。係る構成により、電力の高効率化が実現し、プラズマ処理空間10sに生成されたプラズマの電子密度及び基板Wにエッチング処理を施したときのエッチングレートの向上を図ることができる。また、ICPコイル14の抵抗が0であるためにICPコイル14から発熱も生じないため、高パワーのソースRF信号をICPコイル14に供給することができ、プロセスウィンドウを広げることができる。
【0081】
ICPコイル14及び配線56の温度を臨界温度以下に温度制御するために、真空ポンプ16よりも誘電体窓101側の排気管17に圧力計18を取り付け、圧力計18によって排気管17内の圧力を測定する。制御部2は、排気管17の圧力を測定し、その圧力の管理を行うことで窒素の蒸気圧の管理を行い、蒸気圧の管理からボイルシャルルの法則に基づき誘電体窓101内の温度管理を行う。
【0082】
以下の温度制御方法では、排気する窒素の圧力を圧力計18により測定し、測定結果に基づき液体窒素タンク9から誘電体窓101内に供給する液体窒素の流量を調整する。これにより、誘電体窓101内の温度制御が可能になる。誘電体窓101内に供給する液体窒素の流量の制御は、供給管15に取り付けられた調整弁19により行ってもよい。本実施形態では、制御部2は、調整弁19の弁体の開度を制御することで、供給管15から誘電体窓101内に供給する液体窒素の流量を調整する。ただし、これに限らず、制御部2は、圧力計18が測定した圧力に基づき、蒸気圧曲線に従い、ICPコイル14及び配線56の温度を臨界温度以下に制御するように、供給管15に設けられた調整弁19の開度、排気管17に設けられた図示しない調整弁の開度、及び排気管17に接続された真空ポンプ16の出力の少なくともいずれかを制御してもよい。
【0083】
[永久回路をオンするときの温度制御方法]
以下、永久回路をオンするときの第2実施形態に係る温度制御方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態の温度制御方法(永久回路オン)の一例を示すフローチャートである。
【0084】
図5に示す温度制御方法は、制御部2により制御され、プラズマ処理装置1にて実行される。誘電体窓101内の空間11sの体積をVとすると、誘電体窓101内の空間11sは密閉されており体積Vは一定である。
【0085】
図5に示す温度制御方法は、プラズマ処理の一例として基板Wにエッチング処理を行うプロセスの前に開始され、基板Wを臨界温度以下に調整する。その後、プロセス中も引き続き同様に温度制御が実行される。なお、本処理中、ヒータ電源53はオフの状態である。
【0086】
図5の温度制御方法が開始されると、ステップS1において、制御部2は液体窒素タンク9から誘電体窓101へ液体窒素(N-liq.)を供給する。誘電体窓101へ供給された液体窒素の一部は、プラズマからの入熱により気化する。次に、ステップS2において、制御部2は、真空ポンプ16の出力を制御し、誘電体窓101の空間11s内から気化した液体窒素(窒素ガス)を排気する。排気した窒素ガスは冷却を必要とするユニットに供給してもよい。また、ステップS3において、圧力計18は、排気管17内の圧力を測定する。
【0087】
次に、ステップS4において、制御部2は、蒸気圧曲線に基づき、測定した圧力値から温度を算出する。例えば、図3の窒素(N)の蒸気圧曲線を参照すると、測定した圧力値が1.0(MPa)の場合、制御部2は、誘電体窓101内の温度が-170℃であると算出する。
【0088】
次に、ステップS11において、制御部2は、ICPコイル14(及び配線56)の温度が臨界温度以下になるように供給管15に取り付けられた調整弁19を制御し、誘電体窓101へ流入する液体窒素を制御する。
【0089】
例えば、図3の窒素(N)の蒸気圧曲線を参照して説明する。算出された現在の温度が-170℃、臨界温度が-196℃の場合、誘電体窓101内の空間11sの圧力、つまり、排気管17内の圧力を約1.0(MPa)から約0.2(MPa)に下げ、空間11sの圧力をより負圧にする。
【0090】
制御部2は、ICPコイル14(及び配線56)の温度を臨界温度以下にするように供給管15に設けられた調整弁19の開度を制御する。制御部2は、供給管15に設けられた調整弁19の開度、排気管17に設けられた図示しない調整弁の開度、及び真空ポンプ16の出力の少なくともいずれかを制御してもよい。
【0091】
このようにしてICPコイル14を臨界温度以下の液体窒素に浸して臨界温度以下に冷却し、超伝導状態にする。次に、ステップS12において、制御部2は、RF電源31(第1のRF生成部31a)をオンし、ICPコイル14に電流を流す。次に、ステップS13において、制御部2は、スイッチ54をオフにし、閉回路Cの永久回路を形成する。
【0092】
次に、ステップS6において基板Wを搬入し、ステップS7において基板Wにプラズマ処理を施し、ステップS8において基板Wを搬出して、本処理を終了する。なお、ステップS6の基板Wの搬入は、図5の処理の最初に行ってもよい。
【0093】
閉回路Cの永久回路を形成すると、抵抗が0になるため、ICPコイル14に永久的に電流が流れ、RF電力の高効率化が実現できる。
【0094】
また、超伝導状態ではICPコイル14の発熱が0に抑えられる。このため、ICPコイル14に既存の定格電流以上の大電流を流せる。ICPコイル14に流す電流が大きくなるほど、エッチングレートが上がり、生産性を向上させることができる。よって、超伝導状態では電流を大きくしてICPコイル14の電界を強くすることができ、プラズマの電子密度及びエッチングレートを向上させることができる。
【0095】
永久回路の形成を停止する場合、ヒータ電源53をオンし、ヒータ53aにより永久回路の一部である配線56を加熱し、永久回路の一部を臨界温度よりも高い温度に制御する。これにより、永久回路の超伝導材料の一部を常伝導にすることで、閉回路C全体の超伝導を崩し、永久回路をオフ(永久回路の形成を停止)することができる。永久回路をオフした後、ヒータ電源53をオフにする。
【0096】
[永久回路オフ時の温度制御方法]
次に、永久回路オフ時の第2実施形態に係る温度制御方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、第2実施形態の温度制御方法(永久回路オフ)の一例を示すフローチャートである。
【0097】
図6は、図5に示す処理を実行して永久回路を形成した後、永久回路をオフにするときに実行される。図6の処理が開始されると、ステップS21において、制御部2は、永久回路をオフにするかを判定する。制御部2は、永久回路をオフしないと判定した場合、本処理を終了する。
【0098】
一方、制御部2は、永久回路をオフにすると判定した場合、ICPコイル14の温度が臨界温度よりも大きくなるようにヒータ電源53をオンに制御し、ヒータ53aを加熱する。ヒータ53aが巻かれた配線56を、臨界温度を超える温度に制御し、永久回路の超伝導材料の一部を常伝導にする。これにより永久回路をオフすることができる。永久回路をオフした後、本処理を終了する。
【0099】
以上に説明したように、第2実施形態のプラズマ処理装置及び温度制御方法によれば、超伝導状態のICPコイル14の永久回路を形成することで、プラズマの電子密度が上がり、エッチングレートを向上させることができる。
【0100】
なお、第1及び第2実施形態では、冷却対象部品を冷却する伝熱流体として、液体窒素を用いたが、これに限らず、液体ヘリウム、液体酸素を使用してもよい。また、第1及び第2実施形態では、供給管15及び/又は排気管17に調整弁が設けられるが、供給管15に設けられる調整弁は、流量調整弁、オリフィスであってもよい。また、排気管17に設けられる調整弁は、圧力調整弁、オリフィスであってもよい。
【0101】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理装置及び温度制御方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0102】
なお、図2図5及び図6の各処理は制御部2により「自動的に」行われる。
【符号の説明】
【0103】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
32 DC電源
40 排気システム
111 本体部
112 リングアセンブリ
1111 静電チャック
1112 貯留容器
101 誘電体窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6