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特開2023-142296新規化合物、質量分析用誘導体化用組成物、および質量分析用誘導体化用キット
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  • 特開-新規化合物、質量分析用誘導体化用組成物、および質量分析用誘導体化用キット 図1
  • 特開-新規化合物、質量分析用誘導体化用組成物、および質量分析用誘導体化用キット 図2
  • 特開-新規化合物、質量分析用誘導体化用組成物、および質量分析用誘導体化用キット 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142296
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】新規化合物、質量分析用誘導体化用組成物、および質量分析用誘導体化用キット
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/20 20060101AFI20230928BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
C07D213/20
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049128
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】花澤 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】菊池 重俊
(72)【発明者】
【氏名】松重 操
(72)【発明者】
【氏名】福沢 世傑
(72)【発明者】
【氏名】滝脇 正貴
【テーマコード(参考)】
2G041
4C055
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041GA09
4C055AA04
4C055AA13
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA01
4C055DA06
4C055FA09
(57)【要約】
【課題】質量分析用誘導体化試薬として有用である新規化合物の提供。
【解決手段】本発明の新規化合物は、下記式(1)で示される化合物またはそのハロゲン化水素塩である。
【化1】

式中、Arは置換されていてもよい2価のアリール基を表し、R~Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、Xはハロゲンイオンを表し、mは1または2である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物またはそのハロゲン化水素塩。
【化1】

式中、Arは置換されていてもよい2価のアリール基を表し、R~Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、Xはハロゲンイオンを表し、mは1または2である。
【請求項2】
Arが置換されていてもよい2価のフェニル基である、請求項1に記載の化合物またはそのハロゲン化水素塩。
【請求項3】
、R、RおよびRがいずれも水素原子である、請求項1または2に記載の化合物またはそのハロゲン化水素塩。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物またはそのハロゲン化水素塩を含む、質量分析用誘導体化用組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物またはそのハロゲン化水素塩を含む、質量分析用誘導体化用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物ならびに当該新規化合物を含む質量分析用誘導体化用組成物および質量分析用誘導体化用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査において、生体成分の分析は疾患の診断または病態の解析を行う上で重要である。生体成分の分析方法の1つとして質量分析法(MS)が知られている。質量分析法は分析試料に含まれる微量成分を高感度に検出可能であるため、生体成分の分析に有用であることが知られている。また、液体クロマトグラフィー(LC)で分析試料を分離し、分離された成分をMSでイオン化して分析する液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS)が生体成分の分析ツールとして使用されている。
【0003】
LC-MSにおいて、分析試料のイオン化効率を高めて感度を向上させる点、または、構造解析を容易にする点等で、誘導体化試薬による分析試料の前処理が行われている。例えば、特許文献1および2ならびに非特許文献1および2には、ステロイドホルモンの誘導体化試薬としてジラール試薬が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0233953号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2893355号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rapid Commun. Mass Spectrom., 2003, 17, 924-935
【非特許文献2】Journal of Chromatography B, 1092, 2018. 106-113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分析対象試料の数に応じて、誘導体化試薬のアイソトポログを準備し、各分析対象試料の分析を同時に行うことがある。当該分析によりハイスループットである分析が可能となる。一方、特許文献1および2ならびに非特許文献1および2に開示されている誘導体化試薬のアイソトポログによりそれぞれ分析対象成分を誘導体化すると、得られたそれぞれの誘導体の分子構造が同一となり、LCによる分離が困難となる。また、得られたそれぞれ誘導体の分子量も類似していることにより、MSによる分析も困難となる。さらに、得られたそれぞれの誘導体のフラグメントイオンが同一となることによって、MS/MSによる分析(タンデム質量分析)も困難である。
【0007】
また、特許文献1および2ならびに非特許文献1および2に開示されている誘導体化試薬のアイソトポログの合成にコストがかかる。さらに、当該アイソトポログのバリエーションが限定的である。したがって、LC-MSまたはLC-MS/MS分析に有用である質量分析用誘導体化試薬のさらなる開発が望まれている。
【0008】
本発明の一態様は、質量分析用誘導体化試薬として有用である新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る新規化合物は、下記式(1)で示される化合物またはそのハロゲン化水素塩である。
【化1】

式中、Arは置換されていてもよい2価のアリール基を表し、R~Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基またはアルコキシ基を表し、Xはハロゲンイオンを表し、mは1または2である。
【0010】
本発明の一態様に係る新規化合物は、Arが置換されていてもよい2価のフェニル基であってもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る新規化合物は、R、R、RおよびRがいずれも水素原子であってもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る質量分析用誘導体化用組成物は、上記式(1)で示される化合物またはそのハロゲン化水素塩を含む。
【0013】
本発明の一態様に係る質量分析用誘導体化用キットは、上記式(1)で示される化合物またはそのハロゲン化水素塩を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、質量分析用誘導体化試薬として有用である新規化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】誘導体化されたテストステロン標品の検量線を示すグラフである。
図2】実施例および対照の組成物によって誘導体化されたテストステロンのSRMクロマトグラムである。
図3】実施例および対照の組成物によって誘導体化されたテストステロンのMSクロマトグラムにおける面積値の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態および実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書において「A~B」とは、特に指定しない限りA以上B以下であることを示している。
【0017】
本明細書において、「誘導体化」とは、分析対象成分に誘導体化試薬である化合物を付加することによって誘導体を形成させることを意味する。また、本明細書において、「誘導体」とは、分析対象成分に誘導体化試薬が付加されて形成する化合物を意味する。
【0018】
また、本明細書において、「アイソトポログ」とは、同位体組成のみ異なる複数の分子種を意味する。すなわち、同一化学組成を有するが、同位体の量が異なることにより分子量の異なる複数の分子種を意味する。
【0019】
〔新規化合物〕
本発明の一態様に係る新規化合物は、下記式(1)で示される化合物またはそのハロゲン化水素塩である。式(1)で示される化合物のハロゲン化水素塩の例として、当該化合物の塩化水素塩、臭化水素塩またはヨウ化水素塩等が挙げられる。
【化2】
【0020】
式(1)中、Arは置換されていてもよい2価のアリール基を表す。当該置換されていてもよい2価のアリール基における置換基としては、炭素数1~6の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数1~6の直鎖状、分岐状または環状のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。これら置換基は複数あってもよい。
【0021】
原料の入手の容易さや合成の容易さの点で、当該アリール基としては、無置換あるいは炭素数1~6のアルコキシ基またはハロゲン原子で置換されていることが好ましく、無置換あるいは炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていることがより好ましく、無置換であるのが最も好ましい。また、アルキル基やアルコキシ基である場合には、直鎖状または分枝状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
また、原料の入手の容易さの点で、当該2価のアリール基は2価のフェニル基であることが好ましい。
【0022】
特に好ましいArは、無置換あるいは炭素数1~6の直鎖状または分枝状のアルコキシ基で置換されたフェニル基であり、さらに好ましくは無置換あるいは炭素数1~6の直鎖状のアルコキシ基で置換されたフェニル基であり、最も好ましくは無置換のフェニル基である。
【0023】
Arの種類および置換基は、LCの分離性、MSでの選択性、および、MS/MSで分析するフラグメントイオンの構造に寄与する。よって、Arの置換基(種類または数)が異なる複数の新規化合物を後述する質量分析用誘導体化試薬として使用することによって、複数のそれぞれの分析対象試料で形成される誘導体の分子構造および物性が異なる。したがって、液体クロマトグラフィー(LC)による各誘導体の分離が可能になる。また、各誘導体の分子量が異なることによって、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS)による各誘導体の分析が可能になる。さらに、各誘導体のフラグメントイオンも異なることによって、MS/MSによる各誘導体の分析も可能となる。
【0024】
式(1)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基またはアルコキシ基を表す。当該アルキル基またはアルコキシ基は鎖状、分枝状、環状のいずれでもよい。R~Rの例としてアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等の直鎖状アルキル基、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基等の分岐状アルキル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基およびn-ヘキシルオキシ基等の直鎖状アルキル基、1-メチルエトキシ基、1-メチルプロピルオキシ基等の分岐状アルキル基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の環状アルキル基が挙げられる。
【0025】
合成の容易さの点で、R~Rがアルキル基またはアルコキシ基である場合には、直鎖状のものであることが好ましい。また、同じ理由で、R、R、RおよびRはいずれも水素原子であることが好ましい。さらにその際、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましい。
【0026】
~Rは、LCの分離性およびMSでの選択性に寄与する。R~Rの少なくとも1つの置換基が異なる複数の新規化合物を後述する質量分析用誘導体化試薬として使用することによって、複数のそれぞれの分析対象試料で形成される誘導体の分子構造および物性が異なる。したがって、液体クロマトグラフィー(LC)による各誘導体の分離が可能になる。また、各誘導体の分子量が異なることによって、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS)による各誘導体の分析が可能になる。
【0027】
式(1)中、Xはハロゲンイオンを表す。Xの例として、Cl、Br、I等が挙げられ、2種以上が併存していてもよい。
【0028】
式(1)中、mは1または2である。原料の入手の容易さ、およびコストの点で、mは1であることが好ましい。
【0029】
本発明の一態様に係る新規化合物は同位体によって標識されている化合物であってもよい。当該同位体の例として、H(重水素、D)、13C、15Nおよび18O等の安定同位体が挙げられる。
【0030】
本発明の一態様に係る新規化合物の例として、以下の化合物が挙げられる。以下の式(P-1)~(P-4)中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピレン基を表す。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】
【0031】
本発明の一態様に係る新規化合物の構造を特定する方法として、質量分析法、核磁気共鳴法(NMR)等による分析による特定が挙げられる。
【0032】
〔新規化合物の製造方法〕
例えば、以下のスキームによって、本発明の一態様に係る新規化合物を製造することができる。スキーム中、Lvは脱離基(例えば、ハロゲン原子、メシル基、トシル基、等)を示す。
【化7】
【0033】
次に、スキームの各工程について説明する。特に断り書きがない限り、各工程で使用される溶媒は1種であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
<第一工程>
第一工程では、化合物Iと塩化チオニルまたは塩化オキサリル等の塩素化剤とを反応させることにより化合物IIを得る。
【0035】
第一工程で使用する溶媒の例として、ハロゲン系溶媒、芳香族系溶媒およびテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられるが、通常はこのような反応で汎用されるジクロロメタンまたはトルエンを使用すればよい。また、反応を加速させるために触媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を使用することが好ましい。
【0036】
第一工程における反応系において、塩素化剤の量は1.0~20当量であってもよい。触媒の量は、0.1~10mol%であってもよい。
【0037】
第一工程における反応系の温度は、化合物の安定性および塩素化剤の揮発の抑制の点で、0~40℃程度であることが好ましい。
【0038】
<第二工程>
第二工程では、化合物IIとtert-ブチルカルバゼート(BocNHNH)との縮合反応によって化合物IIIを得る。
【0039】
第二工程の縮合反応は塩基存在下で行ってもよい。塩基の例として、トリエチルアミン(EtN)、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピリジン、KCOおよびNaHCO等が挙げられる。塩基は1種であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
第二工程で使用する溶媒の例として、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アセトニトリルおよび水等が挙げられる。化合物の溶解性および安定性の点で、ジクロロメタンまたはTHFを溶媒として使用することが好ましい。
【0041】
第二工程における反応系において、BocNHNHの量は1.0~3.0当量であってもよい。塩基の量は1.0~5.0当量であってもよい。
【0042】
第二工程における反応系の温度は、反応性の向上および副反応の抑制の点で、0~40℃程度であることが好ましい。
【0043】
<第三工程>
第三工程では、化合物IIIとピリジン化合物との求核置換反応により化合物IVを得る。
【0044】
ピリジン化合物におけるR~Rはそれぞれ、最終生成物(すなわち、前記式(I)で示される化合物)におけるR~Rとなる。したがって、製造を目的とする化合物の構造に従って、使用するピリジン化合物の種類を選択する。
【0045】
第三工程における反応系において、ピリジン化合物の量は、1.0~100当量であってもよい。第三工程における反応系において、溶媒を使用してもよいし、使用しなくてもよい。第三工程で使用してもよい溶媒の例として、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アセトニトリル、DMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。反応性および操作性の点で、溶媒はアセトニトリルであること、または、溶媒を使用しないことが好ましい。
【0046】
第三工程における反応系の温度は、反応性および試薬等の沸点を考慮すると0~100℃程度であることが好ましい。
【0047】
<第四工程>
第四工程では、化合物IVをプロトン酸(HX)による脱Boc反応に供することによって、式(I)の化合物に相当する化合物Pを得る。プロトン酸の例として、塩化水素等のハロゲン化水素酸、TFA(トリフルオロ酢酸)等が挙げられる。
【0048】
第四工程の脱Boc反応で使用するプロトン酸を含む溶液の例として、入手の容易さの点で、塩化水素/酢酸エチル溶液(HCl/AcOEt)、塩化水素/ジオキサン溶液(HCl/ジオキサン)、または、塩化水素/メタノール溶液(HCl/MeOH)が好ましい。第四工程で使用する溶媒の例として、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒および酢酸エチル等が挙げられ、化合物の溶解性の高さの点で、メタノール、エタノールまたは酢酸エチルが好ましい。
【0049】
第四工程における反応系において、プロトン酸の濃度は適宜設定できる。反応性の点で、例えばプロトン酸として塩化水素を用いる場合、その濃度は1M以上であることが好ましい。反応系の温度は0~50℃であってもよく、反応性および操作性の点で、室温(例えば、20~30℃)であることが好ましい。
【0050】
〔質量分析用誘導体化用組成物〕
本発明の一態様に係る質量分析用誘導体化用組成物(以下、「本誘導体化用組成物」と略記する場合がある)は、上記新規化合物を含む。本誘導体化用組成物によって生体試料を誘導体化することによって、例えば、LC-MSまたはLC-MS/MSによる、高感度および高選択性な定量分析が可能となる。
【0051】
本誘導体化用組成物は、上記新規化合物を含んでいればよく、その形態は特に限定されない。上記新規化合物は固体、液体または溶液であり得、本誘導体化用組成物は固体であってもよいし、液体であってもよい。
【0052】
本誘導体化用組成物は、必要に応じて、上記新規化合物を溶解または分散する液体(溶媒または分散媒)、安定化剤等の添加剤等を含んでいてもよい。本誘導体化用組成物は、好ましくは溶液(液体組成物)である。溶液とする場合に使用できる溶媒は、誘導体化試薬等が溶解し、誘導体化反応を阻害しない溶媒であれば制限はない。具体的には、メタノールやエタノールのようなアルコール類、酢酸、アセトニトリル、テトラヒドロフランのようなエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、酢酸エチル、トルエン、水が例示され、メタノール、酢酸、アセトニトリルが好ましい。溶媒は2種以上が使用されていてもよい。本誘導体化用組成物は、必要に応じて、容器に格納されていてもよい。また、本誘導体化用組成物は、使用手順等が記載された使用説明書とともに提供されてもよい。
【0053】
本誘導体化用組成物は、新規化合物がヒドラジン構造を有することによって、カルボニル基を有する生体成分の誘導体化に適している。カルボニル基を有する生体成分の例として、テストステロン、ジヒドロテストステロン、アンドロステンジオン、コルチゾール、プロゲステロン、アルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)等のステロイドホルモン;等が挙げられる。
【0054】
本誘導体化用組成物による誘導体化は、例えば、生体試料等の分析対象試料を被験者から採取および前処理を行った後に行えばよい。生体試料の例として、血漿および血清等の血液;尿;唾液;髄液;等が挙げられる。前処理は、例えば、分析対象試料に内部標準物質を添加および混合後、遠心分離し、上清を留去することにより行えばよい。必要に応じて、メタノール等の有機溶媒を用いた除タンパク、固相抽出、液液抽出、または、サポート型液体抽出法(SLE;supported liquid extraction)を行うことが好ましい。
【0055】
例えば、分析対象試料および本誘導体化用組成物を混合後、例えば、10~100℃において、5分~120分反応させることによって、誘導体を形成させることができる。誘導体を形成させるときの温度は、使用する溶媒の沸点を考慮し、適宜決定すればよいが、例えば、アセトニトリルまたはメタノールを使用する場合は、20℃~70℃が好ましい。誘導体化中は、生体試料と本誘導体化用組成物との混合物を静置してもよいし、攪拌してもよい。
【0056】
本誘導体化用組成物によって誘導体が形成された生体試料は、LC-MSまたはLC-MS/MS等に供することによって、定量分析等の分析を行うことができる。LC-MS等で行うイオン化法は、分析対象成分に応じて、適宜選択すればよい。イオン化法の例として、エレクトロスプレーイオン化法(ESI法)および大気圧化学イオン化法(APCI法)等が挙げられる。
【0057】
本誘導体化用組成物に含まれる上記新規化合物は同位体によって標識されていてもよい。当該同位体の例として、H(重水素、D)、13C、15Nおよび18O等の安定同位体が挙げられる。同位体で標識された新規化合物を使用して誘導体化することによって、MSによって分析する際の選択性を向上させることができる。
【0058】
また、分析対象試料の数に応じた上記新規化合物のアイソトポログを使用することによって、一度の測定で複数の分析対象試料をLC-MS/MSによって同時に分析することが可能である。
【0059】
また、上記新規化合物による誘導体化によって形成された誘導体のフラグメントイオンとは異なるフラグメントイオンが生成させる誘導体化試薬と、当該新規化合物を組み合わせて、複数種類の分析対象試料の測定を行ってもよい。
【0060】
さらに、本発明の一態様に係る新規化合物の製造方法は、上述の通り、簡便であり、安価に新規化合物を製造することができる。したがって、分子構造、物性または分子量が異なる複数種類の新規化合物を簡便かつ安価に合成することができる。また、上記新規化合物のアイソトポログも簡便かつ安価に合成することができる。したがって、本発明の一態様に係る新規化合物によって分析対象試料を誘導体化することによって、ハイスループットである分析(特に、ハイスループットである定量分析)が可能となる。
【0061】
〔質量分析用誘導体化用キット〕
本発明の一態様に係る質量分析用誘導体化用キット(以下、「本誘導体化用キット」と略記する場合がある)は、上記新規化合物1を含む。その効果等は本質量分析用誘導体化用組成物について説明した通りであるのでここでは繰り返さない。
【0062】
本明細書において、「キット」とは、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、チューブ、バイアル等)を備えた包装物が意図される。本誘導体化用キットは、そこに含まれる各々の材料が独立して存在している形態であってもよく、複数の材料が混在している形態(例えば、組成物の形態)であってもよい。本誘導体化用キットは、各材料を使用するための指示書を備えていることが好ましい。
【0063】
本誘導体化用キットにおいて、上記新規化合物は固体、液体または溶液として含まれ得る。新規化合物が固体または液体として含まれる場合、前記溶媒に溶解し、溶液(液体組成物)としてから使用することが好ましい。また、本誘導体化用キットは、上記新規化合物1の他に、被験者から採取した生体試料等の被検体試料を前処理するための材料(例えば、試薬、カラム、等)、新規化合物を調製するための溶媒等をさらに備えていてもよい。
【実施例0064】
以下の実施例中、特に記載がない限り、%は体積%を表す。
【0065】
下記実施例で合成した化合物の分析条件を以下に示す。
<NMR>
下記装置および条件で、合成した化合物の分析を行った。
・装置:フーリエ変換核磁気共鳴装置(JNM-ECA400 II:JEOL RESONANCE社製)
・磁場:9.39T
Hの共鳴周波数:399.78 MHz
・DMSO-d
【0066】
〔実施例1〕化合物P-1の合成
以下のスキーム(合成例1-1~1-3)に従って、化合物P-1を合成した。なお各スキームに記載の%は収率である。
【化8】
【0067】
(合成例1-1)化合物2および3の合成
化合物1(3.4g)、ジクロロメタン(20mL)およびジメチルホルムアミド(7.7μL)の混合物に、氷冷下、塩化チオニル(7.3mL)を加え、室温で3時間攪拌後、40℃で5時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、減圧下、溶媒を留去し、化合物2を粗生成物として得た。得られた化合物2の粗生成物とジクロロメタン(20mL)との混合物に、氷冷下、DIPEA(4.3mL)およびtert-ブチルカルバゼート(3.3g)を加え、室温で終夜攪拌した。反応混合物に水を加え、クロロホルムで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去後、減圧下、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム-メタノール)により精製し、化合物3を含む粗生成物を得た。得られた化合物3を含む粗生成物をメタノール(25mL)に溶解し、水(130mL)に滴下後、室温で30分間攪拌した。生じた固体をろ取し、得られた水を含有する固体をクロロホルムに溶解した。有機相を分離後、水相をクロロホルムで複数回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去後、減圧下、溶媒を留去し、化合物3(3.8g)を淡黄色固体として得た。
【0068】
(合成例1-2)化合物4の合成
化合物3(300mg)とピリジン(3.0mL)とを混合し、60℃で終夜加熱攪拌した。室温まで放冷後、ヘキサンで希釈し、固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(5.0mL)を加え、室温で2時間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥し、化合物4(310mg)を白色固体として得た。
【0069】
(合成例1-3)化合物P-1の合成
化合物4(200mg)と酢酸エチル(2.3mL)との混合物に4M塩化水素/酢酸エチル(2.3mL)を加え、室温で5時間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(5.0mL)を加え、室温で15時間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥し、化合物P-1(160mg)を白色固体として得た。
【0070】
化合物P-1の分析結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO-d6, 399.78 MHz): δ 5.97 (s, 2H) 7.65 (d, 2H, J=8.2 Hz) 8.00 (d, 2H, J=8.2 Hz) 8.20 (dd, 2H J=6.6, 7.6 Hz) 8.65 (t, 2H J=7.6 Hz) 9.08 (d, 2H, J=6.6 Hz) 9.40-11.40 (brs, 2H) 11.64-11.84 (brs, 1H)
【0071】
〔実施例2〕化合物P-2の合成
以下のスキーム(合成例2-1~2-2)に従って、化合物P-2を合成した。
【化9】
【0072】
(合成例2-1)化合物5の合成
合成例1-1で得られた化合物3(300mg)と4-メチルピリジン(2.9g)とを混合し、60℃で6時間加熱攪拌した。トルエン(20mL)を加えた後、室温で2時間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(20mL)を加え、室温で6時間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(20mL)/エタノール(0.2mL)を加え、室温で6時間攪拌した。得られた固体に酢酸エチル(20mL)/エタノール(1mL)を加え、室温で6時間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥し、化合物5(280mg)を薄いピンク色固体として得た。
【0073】
(合成例2-2)化合物P-2の合成
化合物5(280mg)と酢酸エチル(3.5mL)との混合物に4M塩酸/酢酸エチル(5.0mL)を加え、室温で2日間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(10mL)を加え、室温で終夜攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥し、化合物P-2(200mg)を白色固体として得た。
【0074】
化合物P-2の分析結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO-d6, 399.78 MHz): δ 2.60 (s, 3H) 5.88 (s, 2H) 7.62 (d, 2H, J=8.2 Hz) 8.00 (d, 2H, J=8.2 Hz) 8.02 (d, 2H J=6.6 Hz) 9.08 (d, 2H, J=6.6 Hz) 9.40-11.30 (brs, 2H) 11.70-11.92 (brs, 1H)
【0075】
〔実施例3〕化合物P-3の合成
以下のスキーム(合成例3-1~3-2)に従って、化合物P-3を合成した。
【化10】
【0076】
(合成例3-1)化合物6の合成
合成例1-1で得られた化合物3(300mg)と4-エチルピリジン(3.4g)とを混合し、60℃で6時間加熱攪拌した。トルエン(20mL)を加えた後、室温で2時間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(20mL)を加え、室温で終夜攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥し、化合物6(390mg)を白色固体として得た。
【0077】
(合成例3-2)化合物P-3の合成
化合物6(390mg)と酢酸エチル(3.5mL)との混合物に4M塩化水素/酢酸エチル(5.0mL)を加え、室温で2日間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(10mL)を加え、室温で終夜攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥し、化合物P-3(310mg)を白色固体として得た。
【0078】
化合物P-3の分析結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO-d6, 399.78 MHz): δ 1.25 (t, 3H, J=7.4 Hz) 2.91 (q, 2H, J=7.4 Hz) 5.89 (s, 2H) 7.64 (d, 2H, J=8.4 Hz) 8.00 (d, 2H, J=8.4 Hz) 8.06 (d, 2H J=7.0 Hz) 9.12 (d, 2H, J=7.0 Hz) 9.45-11.30 (brs, 2H) 11.70-11.93 (brs, 1H)
【0079】
〔実施例4〕化合物P-4の合成
以下のスキーム(合成例4-1~4-2)に従って、化合物P-4を合成した。
【化11】
【0080】
(合成例4-1)化合物7の合成
合成例1-1で得られた化合物3(300mg)と4-プロピルピリジン(3.8g)を混合し、60℃で6時間加熱攪拌した。トルエン(20mL)を加えた後、室温で2時間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(20mL)を加え、室温で終夜攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥し、化合物7(380mg)を白色固体として得た。
【0081】
(合成例4-2)化合物P-4の合成
化合物7(380mg)と酢酸エチル(3.5mL)との混合物に4M塩化水素/酢酸エチル(5.0mL)を加え、室温で2日間攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥した。得られた固体に酢酸エチル(10mL)を加え、室温で終夜攪拌した。得られた固体をろ取し、減圧下乾燥し、化合物P-4(320mg)を白色固体として得た。
【0082】
化合物P-3の分析結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO-d6, 399.78 MHz): δ 0.91 (t, 3H, J=7.6 Hz) 1.68 (sext, 2H, J=7.6 Hz) 2.85 (t, 2H, J=7.6 Hz) 5.89 (s, 2H) 7.64 (d, 2H, J=8.2 Hz) 8.01 (d, 2H, J=8.2 Hz) 8.05 (d, 2H J=6.6 Hz) 9.12 (d, 2H, J=6.6 Hz) 9.40-11.40 (brs, 2H) 11.75-11.95 (brs, 1H)
【0083】
〔試験例1〕テストステロン標準試料溶液の誘導体化およびLC-MS/MSによる分析
(1)標準試料溶液(キャリブレーター)の調製
テストステロン標品を30%アセトニトリル水溶液で下記表1に示される濃度で調製した。
【0084】
【表1】
【0085】
(2)内部標準物質溶液の調製
内部標準物質(IS)として、テストステロン-13の標品を使用した。ISの濃度が50ng/mLになるように30%アセトニトリル水溶液で調整し、IS溶液を調製した。
【0086】
(3)質量分析用誘導体化用組成物の調製
質量分析用誘導体化試薬として、実施例で合成した化合物P-1(以下、「誘導体化試薬14」と示す)を使用した。また、対照の質量分析用誘導体化試薬としてジラール試薬T(ベタインヒドラジド塩酸塩)を使用した。誘導体化試薬14およびジラール試薬Tそれぞれ濃度が2mg/mLおよび1mg/mLとなるようにメタノールに溶解し、質量分析用誘導体化試薬用組成物を調製した。以下、誘導体化試薬14を含む質量分析用誘導体化試薬用組成物を実施例の組成物、ジラール試薬Tを含む質量分析用誘導体化試薬用組成物を対照の組成物とそれぞれ示す場合がある。
【0087】
(4)サンプルの前処理
以下の(4-1)~(4-3)の手順でサンプルの前処理を行った。
(4-1)SLEによる前処理
所定の濃度に調整された各テストステロン標準試料溶液100μLとIS溶液100μLとを混合した。得られた混合溶液200μLをSLEカラム(型番:ISOLUTE SLE+ 400μL Sample Volume、Biotage社製)にロードした。次に、ヘキサン/酢酸エチル溶液(v/v=50/50)600μLをSLEカラムに加え、サンプルを溶出させた。これらの操作を3回繰り返した。
【0088】
(4-2)サンプルの乾固
SLEカラムから溶出されたサンプルを窒素吹付または遠心濃縮を約20分間行うことによって、サンプルの乾固を行った。
【0089】
(4-3)サンプルの誘導体化
乾固したサンプルに実施例の組成物を20μL加えた。次に、10%酢酸含有メタノール50μLを加え、60℃において60分間静置し、サンプルの誘導体化を行った。
【0090】
反応終了後、溶媒を窒素吹付または遠心濃縮によって除去し、30%メタノール水溶液100μLを加え、LC-MS/MSの分析用サンプルを調製した。
【0091】
(5)LC-MS/MSによる分析
調製したLC-MS/MSの分析用サンプルについて、LC-MS/MSによる分析を行った。LCおよびMS/MSの条件を以下に示す。
【0092】
(5-1)LCの条件
装置:Waters社 ACQUITY UPLC I-Class
分析カラム:Waters社 ACQUITY UPLC BEH C18 1.7 mmI.D ×50mm
溶出条件:流速0.4mL/分
溶媒A:0.1% 10mMギ酸アンモニウム-水
溶媒B:メタノール
溶出条件の詳細は以下の表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
(5-2)MS/MSの条件
装置:Waters社 Xevo TQ-XS 三連四重極型質量分析計
イオン化条件:ESI正イオンモード
SRMパラメーターおよび衝突エネルギー(CE)の詳細は以下の表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
(6)結果
図1は、テストステロン標品の検量線(内部標準法)を示すグラフである。図1に示すように、テストステロン標品を実施例の質量分析用誘導体化試薬用組成物で誘導体化し質量分析した結果、1.25~10ng/mLの範囲において、測定値からのIS比と標準試料濃度との相関が、r=0.9983となり、直線性があった。これらの結果から、実施例の質量分析用誘導体化試薬用組成物におけるテストステロンの定量可能領域を確認することができた。
【0097】
〔試験例2〕実施例の組成物によるプール血清の誘導体化およびLC-MS/MSによる分析
テストステロン標準試料溶液の代わりに市販のプール血清を使用する以外は、上記「(1-4)サンプルの前処理)」と同様の手順でサンプルの前処理を行った。そして、上記「(1-5)LC-MS/MSによる分析」と同様に分析を行った。
【0098】
〔試験例3〕対照の組成物によるプール血清の誘導体化およびLC-MS/MSによる分析
実施例の組成物の代わりに対照の組成物によってサンプルの誘導体化を行った以外は、試験例2と同様にサンプルの前処理を行い、LC-MS/MSによる分析を行った。
【0099】
試験例2および3の分析結果を図2および3に示す。図2は実施例の組成物(誘導体化試薬14)および対照の組成物(Girard's Reagent T)によって誘導体化されたテストステロンのSRMクロマトグラムである。図3は、実施例および対照の組成物によって誘導体化されたテストステロンのMSクロマトグラムにおける面積値の比較を示すグラフである。
【0100】
図2に示す通り、実施例の組成物によって誘導体化されたテストステロンのピークが対照の組成物と同様に、SRMクロマトグラムでも観察された。したがって、実施例の組成物の誘導体化によって血清中のテストステロンの定量が可能であることが分かった。
【0101】
図3に示す通り、実施例の組成物によって誘導体化されたテストステロンのMSクロマトグラムの面積値は、対照の組成物の結果と比較して約60%程度であるが、血清中のテストステロンを検出するためには十分な面積値が得られた。
【0102】
また、実施例の組成物および対照の組成物によって誘導体化されたテストステロンのフラグメントイオンが異なっていた。このことから、新規化合物とジラール試薬とを組み合わせて、複数の生体試料を同時分析することができることも分かった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、例えば、ステロイドホルモン等のカルボニル基を有する生体成分の定量分析に利用することができる。
図1
図2
図3