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特開2023-142358パターニング方法及びパターニング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142358
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】パターニング方法及びパターニング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230928BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049226
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 一希
(72)【発明者】
【氏名】都築 伶子
(72)【発明者】
【氏名】山地 智仁
【テーマコード(参考)】
2H197
5F004
【Fターム(参考)】
2H197CA08
2H197CA10
2H197GA01
2H197JA13
2H197JA14
2H197JA15
5F004AA04
5F004DA00
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB26
5F004EA04
(57)【要約】
【課題】フォトレジスト膜に露光したパターンをドライプロセスにより現像を可能にすること。
【解決手段】パターニング方法は、浸潤工程と、エッチング工程とを含む。浸潤工程は、露光により露光部分と未露光部分が形成されたフォトレジスト膜が表面に設けられた基板のフォトレジスト膜に露光部分と未露光部分の選択比を拡大する材料を浸潤させる。エッチング工程は、浸潤工程を行ったフォトレジスト膜をドライエッチングする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により露光部分と未露光部分が形成されたフォトレジスト膜が表面に設けられた基板の前記フォトレジスト膜に前記露光部分と前記未露光部分の選択比を拡大する材料を浸潤させる浸潤工程と、
前記浸潤工程を行った前記フォトレジスト膜をドライエッチングするエッチング工程と、
を含む、パターニング方法。
【請求項2】
前記浸潤工程は、前記基板に前記材料を含有するガスを暴露する
請求項1に記載のパターニング方法。
【請求項3】
前記浸潤工程は、前記露光部分よりも前記未露光部分に深く前記材料を浸潤させる
請求項1又は2に記載のパターニング方法。
【請求項4】
前記材料は、金属又は半金属の元素である
請求項1~3の何れか1つに記載のパターニング方法。
【請求項5】
前記金属は、アルミニウム、チタン、ゲルマニウムの何れかである
請求項4に記載のパターニング方法。
【請求項6】
前記半金属は、シリコンである
請求項4に記載のパターニング方法。
【請求項7】
前記フォトレジスト膜への前記金属又は前記半金属の浸潤量は、4atomic%~20atomic%の範囲である
請求項4~6の何れか1つに記載のパターニング方法。
【請求項8】
前記エッチング工程は、前記未露光部分よりも前記露光部分を深くエッチングを行う
請求項1~7の何れか1つに記載のパターニング方法。
【請求項9】
前記エッチング工程は、前記露光部分に前記材料が浸潤した深さよりも深く、前記未露光部分に前記材料が浸潤した深さよりも浅い深さまで、前記材料が浸潤した前記フォトレジスト膜をエッチング可能な第1ガスを用いて第1エッチングを行った後、前記材料が浸潤した前記フォトレジスト膜よりも前記材料が浸潤していない前記フォトレジスト膜を多くエッチング可能な第2ガスを用いて第2エッチングを行う
請求項1~7の何れか1つに記載のパターニング方法。
【請求項10】
前記第1ガスは、水素含有ガスであり、
前記第2ガスは、酸素含有ガスである
請求項9に記載のパターニング方法。
【請求項11】
前記第1ガスは、Hガスであり、
前記第2ガスは、Oガスである
請求項9又は10に記載のパターニング方法。
【請求項12】
露光により露光部分と未露光部分が形成されたフォトレジスト膜が表面に設けられた基板の前記フォトレジスト膜に前記露光部分と前記未露光部分の選択比を拡大する材料を浸潤させる浸潤処理部と、
前記浸潤処理部により材料の浸潤を行った前記フォトレジスト膜をドライエッチングするエッチング処理部と、
を有するパターニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、パターニング方法及びパターニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、成膜後のレジストに金属を含有する金属含有ガスを曝露することによりレジストに金属を浸潤させることで、レジストの形成後におけるエッチング耐性を向上させる技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-38929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、フォトレジスト膜に露光したパターンをドライプロセスにより現像することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるパターニング方法は、浸潤工程と、エッチング工程とを含む。浸潤工程は、露光により露光部分と未露光部分が形成されたフォトレジスト膜が表面に設けられた基板のフォトレジスト膜に露光部分と未露光部分の選択比を拡大する材料を浸潤させる。エッチング工程は、浸潤工程を行ったフォトレジスト膜をドライエッチングする。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、フォトレジスト膜に露光したパターンをドライプロセスにより現像できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る基板処理の全体的な流れの一例を概略的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係るパターニング装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るパターニング方法の処理の流れの一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る基板の一例を概念的に示す図である。
図5図5は、実施形態に係るフォトレジスト膜に含有されるシリコンのプロファイルの一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係るフォトレジスト膜のドライエッチングのプロファイルの一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る基板をエッチングした結果の一例を概念的に示す図である。
図8図8は、実施形態に係る基板をエッチングした結果の他の一例を概念的に示す図である。
図9図9は、従来のリソグラフィ工程を含む基板処理の全体的な流れの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示するパターニング方法及びパターニング装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示するパターニング方法及びパターニング装置が限定されるものではない。
【0009】
近年、半導体集積回路(LSI)の高集積化及び高性能化に伴って、基板の表面に形成されるパターンが微細化されている。基板には、リソグラフィ工程によりパターンが形成される。図9は、従来のリソグラフィ工程を含む基板処理の全体的な流れの一例を概略的に示す図である。図9に示す基板処理では、(1)~(8)の処理を基板Wに実施する。基板Wは、例えば、シリコンウエハなどのシリコン基板である。基板W上には、パターンを形成する対象膜が形成されている。(1)表面処理で、基板Wの洗浄など所定の前処理を行う。(2)スピンコートでは、基板Wにフォトレジスト液を塗布して基板Wを回転させて、基板Wにフォトレジスト膜PRを形成する。(3)プリベークでは、基板Wを加熱し、フォトレジスト膜PRに含まれる溶媒を蒸発させる。(4)露光では、パターンが形成されたフォトマスクPMを介して紫外光などの光を照射し、露光された露光部分EPと露光されていない未露光部分UPからなるパターンの潜像をフォトレジスト膜PRに形成する。ここで、フォトレジスト膜PRには、現像で露光部分EPが残るネガ型と、現像で未露光部分UPが残るポジ型がある。ネガ型の場合は、フォトレジスト膜PRに残す部分を透過としたフォトマスクPMで露光を行う。ポジ型の場合は、フォトレジスト膜PRに残す部分を非透過としたフォトマスクPMで露光を行う。(5)PEB(Post Exposure Bake)では、加熱により反応を促進する。(6)現像+リンスでは、現像液などの溶媒でフォトレジスト膜PRの潜像を現像し、現像で使用した溶媒を洗い流す。図9では、ポジ型の現像を行った場合を示しており、未露光部分UPが残り、露光部分EPが溶けて無くなっている。この(1)~(6)の処理がリソグラフィ工程に対応する。リソグラフィ工程により、フォトレジスト膜PRにパターンが現像される。(7)エッチングでは、フォトレジスト膜PRをマスクとしてエッチングを行い、基板Wを加工する。(8)レジスト剥離では、フォトレジスト膜PRを剥離させて除去する。これにより、基板Wにパターンが形成される。
【0010】
ところで、パターンが微細化されると、フォトレジスト膜PRに露光したパターンを(6)現像+リンスのようにウェットプロセスにより現像した場合、フォトレジスト膜PRの膨張によるラフネス悪化や、表面張力によるパターン倒れなどのパターン不良の発生が懸念される。一方、ドライプロセスによる現像であれば上記問題は発生しない。しかし、ドライプロセスによる現像では、露光部分EPと未露光部分UPのエッチングレートの差が小さく、フォトレジスト膜PRに露光したパターンの現像が困難であった。そこで、フォトレジスト膜PRに露光したパターンをドライプロセスにより現像することを可能にする技術が期待されている。
【0011】
(実施形態)
実施形態に係るパターニング方法について説明する。最初に、実施形態に係るリソグラフィ工程を含む基板処理の全体的な流れの一例を説明する。図1は、実施形態に係る基板処理の全体的な流れの一例を概略的に示す図である。図1には、実施形態に係るパターニング方法の処理を含んだ基板処理が示されている。実施形態に係る基板処理は、図9に示した従来の基板処理の(6)現像+リンスの工程が、(6)浸潤と(7)エッチングの工程に変更されている。図1に示す基板処理では、(1)~(9)の処理を実施する。図1の(1)~(5)、(8)、(9)の処理は、図9の(1)~(5)、(7)、(8)の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0012】
基板Wのフォトレジスト膜PRには、(4)露光により、露光された露光部分EPと露光されていない未露光部分UPからなるパターンの潜像が形成されている。フォトレジスト膜PRは、例えば、感光性樹脂を主成分とする有機膜等である。このようなフォトレジスト膜PRとしては、例えば、KrFフォトレジストやEUVフォトレジストが挙げられる。
【0013】
(6)浸潤では、基板Wのフォトレジスト膜PRに露光部分EPと未露光部分UPの選択比を拡大する材料を浸潤させる。浸潤深度の差、すなわちフォトレジスト膜PRの変性度合いの差によってエッチングレート差が生じる。例えば、(6)浸潤では、露光部分EPと未露光部分UPの選択比を拡大する材料を含有するガスを基板Wに暴露し、フォトレジスト膜PRに材料を浸潤させる。露光部分EPと未露光部分UPでは浸潤深度が異なるため、浸潤深度の差が生じる箇所からエッチングレートに差が生じ、パターンの現像が可能である。また、露光部分EPと未露光部分UPで浸潤量が異なる場合でもパターンが現像可能である。これはいずれかの部分にしか材料が反応しないことを含める。浸潤量が異なると、エッチング開始時点からエッチングートに差が生じ、パターンを形成する。
【0014】
このようにフォトレジスト膜PRの露光部分EPと未露光部分UPの選択比を拡大する材料としては、金属、半金属の元素が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)が挙げられる。半金属としては、シリコン(Si)が挙げられる。例えば、フォトレジストにシリコンを浸潤させる場合、浸潤に用いる材料としては、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)や、ビス(トリメチルシリル)アミン(HMDS)、ヘキサクロロシラン(HCD)などが有力な候補として挙げられる。また、フォトレジストにアルミニウムを浸潤させる場合、浸潤に用いる材料としては、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)などが挙げられる。また、フォトレジストにチタンを浸潤させる場合、浸潤に用いる材料としては、TDMATやTiClなどが挙げられる。浸潤させる材料は、気化、バブリング、もしくはスキミングで蒸気としてフォトレジスト膜PRに暴露することで、フォトレジスト膜PR内に浸潤していく。
【0015】
(7)エッチング工程では、材料が浸潤したフォトレジスト膜PRをドライエッチングする。フォトレジスト膜PRは、(6)浸潤を行ったことにより、露光部分EPと未露光部分UPの選択比が拡大しており、エッチングを行った場合に露光部分EPが未露光部分UPよりも深くエッチングされる。(7)エッチング工程では、エッチング時間を適切に制御することにより、フォトレジスト膜PRの露光部分EPをエッチングで除去し、未露光部分UPを残すことができる。但し、フォトレジスト膜PRや浸潤に用いる材料の組み合わせによっては、露光部分EPと未露光部分UPにおいて除去される部分と残す部分が逆の場合もあり得る。
【0016】
図1に示す基板処理では、(6)浸潤、及び(7)エッチング工程により、フォトレジスト膜PRのパターニングを行う。(6)浸潤、及び(7)エッチング工程は、本開示のパターニング方法の処理に対応する。
【0017】
[パターニング装置の構成]
次に、(6)浸潤、及び(7)エッチング工程の処理を実施するパターニング装置の一例を説明する。図2は、実施形態に係るパターニング装置1の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係るパターニング装置1は、浸潤処理部11と、エッチング処理部12とを有する。
【0018】
浸潤処理部11は、(6)浸潤の処理を実現するユニットである。浸潤処理部11は、フォトレジスト膜PRに露光部分EPと未露光部分UPが形成された基板Wが載置される反応室、基板Wを加熱する加熱装置、反応室内に金属含有ガス等の気体を供給する供給装置、反応室内を排気する排気装置等を利用して構成され得る。
【0019】
エッチング処理部12は、(7)エッチング工程の処理を実現するユニットである。エッチング処理部12は、例えば、ドライエッチング装置等を利用して構成され得る。例えば、エッチング処理部12は、エッチングガスを用いた反応性イオンエッチングを行う。エッチングガスとしては、水素含有ガスが挙げられる。例えば、水素(H)ガスが挙げられる。
【0020】
なお、パターニング装置1は、浸潤処理部11及びエッチング処理部12が1つのユニットとして構成されていなくてもよい。
【0021】
[パターニング方法]
次に、実施形態に係るパターニング方法の処理の流れを説明する。以下では、フォトレジスト膜PRの露光部分EPと未露光部分UPの選択比を拡大する材料として、アルミニウム、チタン、ゲルマニウムなどの金属又はシリコンなどの半金属を浸潤させる場合を例に説明する。図3は、実施形態に係るパターニング方法の処理の流れの一例を示す図である。図3には、(6)浸潤、及び(7)エッチング工程の処理の詳細が示されている。パターニング方法の処理を実施する前に、例えば、図1の(1)~(5)の処理が行われた基板Wが、浸潤処理部11に搬送され、反応室内に載置される。実施形態に係るパターニング装置1は、図3に示した処理を実施する。
【0022】
浸潤処理部11は、反応室内の減圧を行って反応室内を減圧状態とする(ステップS10)。また、浸潤処理部11は、反応室内に載置された基板Wを加熱し、基板Wの温度を浸潤に適した所定温度まで昇温する(ステップS11)。
【0023】
浸潤処理部11は、露光部分EPと未露光部分UPの選択比を拡大する材料を含有するガスを所定条件下でフォトレジスト膜PRに曝露する。例えば、浸潤処理部11は、金属又は半金属を含有するガスを所定条件下でフォトレジスト膜PRに曝露する(ステップS12)。以下では、金属又は半金属を含有するガスを「金属含有ガス」と称する。
【0024】
その後、浸潤処理部11は、N等の不活性ガスを用いて反応室内から金属含有ガスをパージする(ステップS13)。その後、浸潤処理部11は、所定条件下で水蒸気をフォトレジスト膜PRに曝露する(S14)。その後、浸潤処理部11は、N等の不活性ガスを用いて反応室内から水蒸気をパージする(ステップS15)。上記のステップS12~ステップS15の処理は、複数回繰り返し実施してもよい。
【0025】
パターニング装置1は、浸潤処理部11から基板Wを取り出し、エッチング処理部12に搬送する(ステップS16)。なお、浸潤処理部11及びエッチング処理部12が1つのユニットとして構成されている場合、ステップS16は、不要となる。
【0026】
エッチング処理部12は、基板Wのフォトレジスト膜PRをエッチングする(ステップS17)。例えば、エッチング処理部12は、Hガスによる反応性イオンエッチングにより、フォトレジスト膜PRをドライエッチングする。エッチング時間を適切に制御することにより、フォトレジスト膜PRの露光部分EPを除去し、未露光部分UPを残すことができる。
【0027】
「基板Wの温度」とは、フォトレジスト膜PRを含む基板Wの少なくとも一部の温度であり、フォトレジスト膜PRの表面温度であってもよい。「所定温度」は、室温~200℃の範囲内にあることが好ましい。「室温」とは、外部から加熱及び冷却されていない自然状態における温度であり、例えば、1℃~40℃の範囲から選択される温度(例えば25℃)である。基板Wの温度が室温より低い場合には、フォトレジスト膜PRに金属を浸潤させるための(例えば、求核置換反応を起こさせるための)活性化障壁を超える十分なエネルギーを得ることができない場合が多い。基板Wの温度の上限として例示した200℃は、フォトレジスト膜PRの転移温度より十分に高い温度である。
【0028】
金属含有ガスを曝露する際の「所定条件」には、基板Wの温度、ガス流量、曝露時間、及び圧力が含まれる。フォトレジスト膜PRへの金属、半金属の浸潤量は、基板Wの温度が高いほど増加し、基板Wの温度が低いほど低下する。また、浸潤量は、金属含有ガスのガス流量が多いほど増加し、ガス流量が少ないほど低下する。また、浸潤量は、金属含有ガスのフォトレジスト膜PRへの曝露時間が長いほど増加し、曝露時間が短いほど低下する。また、浸潤量は、反応室内の圧力が高いほど増加し、圧力が低いほど低下する。
【0029】
ステップS14、ステップS15の処理は、必須ではない。しかし、金属含有ガスの曝露後に水蒸気を曝露することにより、浸潤を促進させることができる。水蒸気を曝露する際の「所定条件」には、基板Wの温度、ガス流量、曝露時間、及び圧力が含まれる。水蒸気による浸潤促進効果は、基板Wの温度が高いほど増加し、基板Wの温度が低いほど低下する。また、浸潤促進効果は、水蒸気のガス流量が多いほど増加し、ガス流量が少ないほど低下する。また、浸潤促進効果は、水蒸気のフォトレジスト膜PRへの曝露時間が長いほど増加し、曝露時間が短いほど低下する。また、浸潤促進効果は、反応室内の圧力が高いほど増加し、圧力が低いほど低下する。
【0030】
水蒸気の曝露時における条件(基板Wの温度、ガス流量、曝露時間、圧力等)は、金属含有ガスの曝露時における条件と同一であってもよいし、金属含有ガスの曝露時における条件とは異なるように設定されてもよい。
【0031】
フォトレジスト膜PRへの金属又は半金属の浸潤量は、4atomic%~20atomic%の範囲内にあることが好ましい。浸潤量が4atomic%より低いと、フォトレジスト膜PRのエッチング耐性を増加させる効果が実質的に認められない場合が多い。浸潤量が20atomic%より高いと、フォトレジスト膜PRが本来有する有機特性(例えば、アルカリ性溶液に対する溶解性等)が損なわれ、フォトレジスト膜PRの剥離性が低下し、(9)レジスト剥離の処理においてフォトレジスト膜PRをエッチングの対象膜から剥離することが困難となる。
【0032】
浸潤量の制御は、金属含有ガスの曝露時における条件、水蒸気の曝露時における条件、及びステップS12~ステップS15の処理を繰り返す回数を調整することにより実現することができる。例えば、金属含有ガスの曝露時における圧力は、0.05Torr~760Torrの範囲内にあることが好ましい。圧力が0.05Torrより低いと、浸潤量が4atomic%に満たない可能性があり、圧力が760Torrより高いと、浸潤量が20atomic%を超える可能性がある。
【0033】
図4は、実施形態に係る基板Wの一例を概念的に示す図である。図4には、TMSDMAを暴露してフォトレジスト膜PRにシリコンを浸潤させた基板Wが示されている。基板Wは、フォトレジスト膜PRが形成されている。フォトレジスト膜PRには、露光部分EPと未露光部分UPが交互に設けられている。図4には、フォトレジスト膜PRのシリコンが浸潤した深さを線L1で概略的に示している。線L1に示すように、シリコンは、露光部分EPよりも未露光部分UPに深く浸潤している。
【0034】
図5は、実施形態に係るフォトレジスト膜PRに含有されるシリコンのプロファイルの一例を示す図である。図5には、露光部分EPと未露光部分UP別に、フォトレジスト膜PRの表面からの深さに対するシリコンの含有割合が示されている。例えば、深さ0~150nm付近では、露光部分EPよりも未露光部分UPの方がシリコンの含有割合が若干多くなっている。また、深さ150~250nm付近では、露光部分EPよりも未露光部分UPの方がシリコンの含有割合が明らかに多くなっている。このことから、露光部分EPよりも未露光部分UPの方が、シリコンが深く浸潤している。このように、未露光部分UPと露光部分EPでは、シリコンの浸潤深度が異なる。
【0035】
図6は、実施形態に係るフォトレジスト膜PRのドライエッチングのプロファイルの一例を示す図である。図6には、フォトレジスト膜PRをドライエッチングした場合のエッチング時間に対するフォトレジスト膜PRの残り膜厚がプロファイルとして示されている。図6には、シリコンが浸潤したフォトレジスト膜PRの露光部分EPのプロファイルが線L11に示され、未露光部分UPのプロファイルが線L12に示されている。また、図6には、比較例として、シリコンが浸潤していない状態のフォトレジスト膜PRの露光部分EPのプロファイルが線L13に示され、未露光部分UPのプロファイルが線L14に示されている。
【0036】
線L13、L14に示すように、シリコンが浸潤していないフォトレジスト膜PRは、線L11、L12に示したシリコンが浸潤したフォトレジスト膜PRに比べて、短いエッチング時間で深くエッチングされており、エッチングレートが高い。
【0037】
フォトレジスト膜PRは、シリコンが浸潤することでエッチング耐性が増加する。このため、線L11、L12に示したように、シリコンが浸潤したフォトレジスト膜PRの露光部分EP及び未露光部分UPは、線L13、L14と比較してエッチングレートが低くなっている。また、露光部分EPは、線L11に示すように、途中でエッチングレートが増加する。これは、露光部分EPは、図4の線L1及び図5に示したように、シリコンが浸潤した浸潤範囲が未露光部分UPよりも浅く、浸潤範囲ではエッチングレートが低くなっているが、浸潤範囲よりも深くなると、線L13、L14と同程度のエッチングレートに変化するためである。一方、未露光部分UPでは、線L12に示すように、シリコンの浸潤している浸潤範囲が深いため、エッチングレートが低いままである。
【0038】
この結果、シリコンが浸潤したフォトレジスト膜PRでは、露光部分EPと未露光部分UPでの浸潤範囲の違いにより、露光部分EPが未露光部分UPよりも深くエッチングされる。
【0039】
図7は、実施形態に係る基板Wをエッチングした結果の一例を概念的に示す図である。図7(A)~(C)には、TMSDMAを暴露してフォトレジスト膜PRにシリコンを浸潤させた基板Wをエッチングした際のフォトレジスト膜PRの変化が示されている。図7(A)は、エッチング前のフォトレジスト膜PRを示している。フォトレジスト膜PRには、露光部分EPと未露光部分UPが交互に設けられている。図7(A)~(C)には、フォトレジスト膜PRのシリコンが浸潤した深さを線L1で概略的に示している。図7(B)は、Hガスを含んだエッチングガスを用いてフォトレジスト膜PRを7.5分間エッチングした状態を示している。未露光部分UPについては、シリコンが浸潤している浸潤範囲がエッチングされている。一方、露光部分EPについては、浸潤範囲を超えたことでエッチングレートが速くなり、未露光部分UPよりも深くエッチングされている。図7(C)は、Hガスを含んだエッチングガスを用いてフォトレジスト膜PRを9.5分間エッチングした状態を示している。未露光部分UPでは、浸潤範囲程度までエッチングされている。一方、露光部分EPでは、未露光部分UPよりも十分に深くエッチングされている。エッチング時間を適切に制御することにより、フォトレジスト膜PRの露光部分EPを除去し、未露光部分UPを残すことができる。これにより、露光部分EPと未露光部分UPからなる潜像のパターンをドライプロセスにより現像できる。フォトレジスト膜PRは、下層との界面にフォトレジストの残滓であるスカムが残る場合がある。スカムは、Oガスによる反応性イオンエッチングによって除去できる。
【0040】
なお、上記実施形態では、フォトレジスト膜PRにシリコンを浸潤させた基板WをHガスによる1段階のエッチングで現像する場合を例に説明した。しかしこれに限定されるものではない。例えば、基板Wを2段階のエッチングで現像してもよい。例えば、基板Wに対して第1エッチングと第2エッチングを実施する。第1エッチングでは、材料が浸潤したフォトレジスト膜PRをエッチング可能な第1ガスを用いて、露光部分EPに材料が浸潤した深さよりも深く、未露光部分UPに材料が浸潤した深さよりも浅い深さまで、エッチングを行う。例えば、シリコンが浸潤したフォトレジスト膜PRの場合、水素含有ガス(例えば、Hガス)を含んだエッチングガスを用いて、露光部分EPに材料が浸潤した深さよりも深く、未露光部分UPに材料が浸潤した深さよりも浅い深さまで、エッチングを行う。第2エッチングでは、第1エッチングの後、材料が浸潤したフォトレジスト膜PRよりも材料が浸潤していないフォトレジスト膜PRを多くエッチング可能な第2ガスを用いて、エッチングを行う。例えば、シリコンが浸潤したフォトレジスト膜PRの場合、酸素含有ガス(例えば、Oガス)を含んだエッチングガスを用いて、エッチングを行う。
【0041】
図8は、実施形態に係る基板Wをエッチングした結果の他の一例を概念的に示す図である。図8(A)~(C)には、TMSDMAを暴露してフォトレジスト膜PRにシリコンを浸潤させた基板Wを2段階でエッチングした際のフォトレジスト膜PRの変化が示されている。図8(A)は、エッチング前のフォトレジスト膜PRを示している。フォトレジスト膜PRには、露光部分EPと未露光部分UPが交互に設けられている。図8(A)~(C)には、フォトレジスト膜PRのシリコンが浸潤した深さを線L1で概略的に示している。図8(B)は、Hガスを含んだエッチングガスを用いてフォトレジスト膜PRを7.5分間エッチングした状態を示している。露光部分EP、未露光部分UPは、共にエッチングされる。未露光部分UPについては、シリコンが浸潤している浸潤範囲がエッチングされている。一方、露光部分EPについては、浸潤範囲を超えたことでエッチングレートが速くなり、未露光部分UPよりも深くエッチングされている。この図8(B)の段階で、次に、Oガスを含んだエッチングガスを用いてフォトレジスト膜PRのエッチングを行う。図8(C)は、Oガスを含んだエッチングガスを用いてフォトレジスト膜PRを50秒間エッチングした状態を示している。シリコンの浸潤量の多い未露光部分UPでは、シリコン酸化膜が表層に形成され、エッチストップ層として機能する。露光部分EPは、シリコンの浸潤量が少なく(もしくは、シリコンが浸潤しておらず)シリコン酸化膜を形成できないので、エッチングされる。この結果、露光部分EPと未露光部分UPで高い選択比が生じる。エッチング時間を適切に制御することにより、フォトレジスト膜PRの露光部分EPを除去し、未露光部分UPを残すことができる。これにより、露光部分EPと未露光部分UPからなる潜像のパターンをドライプロセスにより現像できる。
【0042】
このように、実施形態に係るパターニング方法は、露光部分EPと未露光部分UPのエッチング選択比を拡大できるため、フォトレジスト膜PRに露光したパターンをドライプロセスにより現像できる。これにより、実施形態に係るパターニング方法は、パターンが微細化した場合でも、現像したフォトレジスト膜PRのパターンにラフネス悪化やパターン倒れなどのパターン不良が発生することを抑制できる。
【0043】
[効果]
このように、実施形態に係るパターニング方法は、浸潤工程(ステップS12~S15)と、エッチング工程(ステップS17)とを含む。浸潤工程は、露光により露光部分EPと未露光部分UPが形成されたフォトレジスト膜PRが表面に設けられた基板Wのフォトレジスト膜PRに露光部分EPと未露光部分UPの選択比を拡大する材料を浸潤させる。エッチング工程は、浸潤工程を行ったフォトレジスト膜PRをドライエッチングする。これにより、パターニング方法は、フォトレジスト膜PRに露光したパターンをドライプロセスにより現像できる。
【0044】
また、浸潤工程は、基板Wに材料を含有するガスを暴露する。これにより、パターニング方法は、フォトレジスト膜PRに材料を浸潤させることができる。
【0045】
また、材料は、金属又は半金属の元素とする。金属は、アルミニウム、チタン、ゲルマニウムの何れかとする。半金属は、シリコンとする。浸潤工程は、露光部分EPよりも未露光部分UPに深く材料を浸潤させる。これにより、パターニング方法は、露光部分EPと未露光部分UPの選択比を拡大させることができる。
【0046】
また、フォトレジスト膜PRへの金属又は半金属の浸潤量は、4atomic%~20atomic%の範囲とする。これにより、パターニング方法は、フォトレジスト膜PRのエッチング耐性を増加させつつ、フォトレジスト膜PRの剥離性の低下を抑制できる。
【0047】
また、エッチング工程は、未露光部分UPよりも露光部分EPを深くエッチングを行う。これにより、パターニング方法は、フォトレジスト膜PRに露光したパターンをドライプロセスにより現像できる。
【0048】
また、エッチング工程は、露光部分EPに材料が浸潤した深さよりも深く、未露光部分UPに材料が浸潤した深さよりも浅い深さまで、材料が浸潤したフォトレジスト膜PRをエッチング可能な第1ガスを用いて第1エッチングを行った後、材料が浸潤したフォトレジスト膜PRよりも材料が浸潤していないフォトレジスト膜PRを多くエッチング可能な第2ガスを用いて第2エッチングを行う。第1ガスは、水素含有ガス(例えば、Hガス)とする。第2ガスは、酸素含有ガス(例えば、Oガス)とする。これにより、パターニング方法は、露光部分EPと未露光部分UPの選択比をより高くしてエッチングすることができる。
【0049】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0050】
例えば、上記の実施形態では、基板Wをシリコン基板とする場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。基板Wは、例えば、シリコン基板;ガラス基板;ITOなどの透明電極;金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、チタン、アルミニウム、タングステン等の金属基板;プラスチック基板;及びこれらの複合材料からなる基板が挙げられる。
【符号の説明】
【0051】
1 パターニング装置
11 浸潤処理部
12 エッチング処理部
EP 露光部分
PM フォトマスク
PR フォトレジスト膜
UP 未露光部分
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9