(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142410
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230928BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049319
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】本田 能之
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA24
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB21
4C092AC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】極端紫外光生成装置を提供する。
【解決手段】極端紫外光生成装置は、プラズマ生成領域25を含むチャンバと、プラズマ生成領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、プラズマ生成領域にパルスレーザ光を集光するレーザ光集光ミラーと、プラズマ生成領域から放射されるEUV光を反射する反射面を有するEUV集光ミラー23であって、プラズマ生成領域から拡散するイオンのプラズマ生成領域から所定距離の位置におけるイオンエネルギーの空間的分布のうち、イオンエネルギーの平均値未満となる角度範囲に反射面が収まるように配置されたEUV集光ミラーと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成領域を含むチャンバと、
前記プラズマ生成領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、
前記プラズマ生成領域にパルスレーザ光を集光するレーザ光集光ミラーと、
前記プラズマ生成領域から放射されるEUV光を反射する反射面を有するEUV集光ミラーであって、前記プラズマ生成領域から拡散するイオンの前記プラズマ生成領域から所定距離の位置におけるイオンエネルギーの空間的分布のうち、前記イオンエネルギーの平均値未満となる角度範囲に前記反射面が収まるように配置された、前記EUV集光ミラーと、
を備える、極端紫外光生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記ターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置と、
前記プリパルスレーザ光が照射された前記ターゲットに照射される前記パルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ装置と、
をさらに備え、
前記レーザ光集光ミラーは、前記プラズマ生成領域に前記プリパルスレーザ光及び前記パルスレーザ光の両方を集光する、
極端紫外光生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プリパルスレーザ光のフルーエンスは、0.1J/cm2以上100J/cm2以下であり、
前記プリパルスレーザ光のパルス幅は、1ps以上100ns以下であり、
前記パルスレーザ光のフルーエンスは、10J/cm2以上3000J/cm2以下であり、
前記パルスレーザ光のパルス幅は、1ns以上100ns以下である、
極端紫外光生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プリパルスレーザ光のフルーエンスは、1J/cm2以上20J/cm2以下であり、
前記プリパルスレーザ光のパルス幅は、1ps以上100ns以下であり、
前記パルスレーザ光のフルーエンスは、100J/cm2以上2000J/cm2以下であり、
前記パルスレーザ光のパルス幅は、4ns以上20ns以下である、
極端紫外光生成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記平均値は、前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する0°から180°までの間の複数の角度の各々について計測された前記イオンエネルギーの平均である、
極端紫外光生成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記レーザ光集光ミラーは、前記パルスレーザ光が前記EUV集光ミラーの外側を通過して前記プラズマ生成領域に集光されるように配置された、
極端紫外光生成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記ターゲットはスズを含み、
前記パルスレーザ光のパルス幅は3.6ns以上4.4ns以下の範囲内であり、
前記角度範囲は、前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が90°より大きく180°以下となる範囲である、
極端紫外光生成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記EUV集光ミラーは、前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が95°となる位置から150°となる位置まで前記反射面が及ぶように配置された、
極端紫外光生成装置。
【請求項9】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記EUV集光ミラーは、前記平均値の90%未満となる角度範囲に前記反射面が収まるように配置された、
極端紫外光生成装置。
【請求項10】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記ターゲットはスズを含み、
前記パルスレーザ光のパルス幅は3.6ns以上4.4ns以下の範囲内であり、
前記角度範囲は、前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が125°より大きく180°以下となる範囲である、
極端紫外光生成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記EUV集光ミラーは、前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が130°となる位置から165°となる位置まで前記反射面が及ぶように配置された、
極端紫外光生成装置。
【請求項12】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記ターゲットはスズを含み、
前記パルスレーザ光のパルス幅は18ns以上22ns以下の範囲内であり、
前記角度範囲は、前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が21°より大きく127°より小さい範囲である、
極端紫外光生成装置。
【請求項13】
請求項12に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記EUV集光ミラーは、前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が40°となる位置から80°となる位置まで前記反射面が及ぶように配置された、
極端紫外光生成装置。
【請求項14】
請求項12に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記EUV集光ミラーは、前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が35°となる位置から100°となる位置まで前記反射面が及ぶように配置された、
極端紫外光生成装置。
【請求項15】
請求項12に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記EUV集光ミラーは、
前記パルスレーザ光が通過する貫通孔を有し、
前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が21°より大きくなる位置に前記貫通孔の外縁が配置された、
極端紫外光生成装置。
【請求項16】
請求項12に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記EUV集光ミラーは、
前記パルスレーザ光が通過する貫通孔を有し、
前記プラズマ生成領域に入射する前記パルスレーザ光の進行方向と逆の方向に対する角度が25°となる位置から80°となる位置まで前記反射面が及ぶように配置された、
極端紫外光生成装置。
【請求項17】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記イオンエネルギーは、前記所定距離の位置における最大イオンエネルギーである、
極端紫外光生成装置。
【請求項18】
請求項17に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記最大イオンエネルギーは、前記所定距離の位置において検出された検出イオンエネルギーと検出イオン個数との関係から、単位面積当たりのイオン個数が1個である場合に対応するイオンエネルギーとしてカーブフィッティングにより算出されたエネルギーである、
極端紫外光生成装置。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
プラズマ生成領域を含むチャンバと、
前記プラズマ生成領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、
前記プラズマ生成領域にパルスレーザ光を集光するレーザ光集光ミラーと、
前記プラズマ生成領域から放射されるEUV光を反射する反射面を有するEUV集光ミラーであって、前記プラズマ生成領域から拡散するイオンの前記プラズマ生成領域から所定距離の位置におけるイオンエネルギーの空間的分布のうち、前記イオンエネルギーの平均値未満となる角度範囲に前記反射面が収まるように配置された、前記EUV集光ミラーと、
を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、
前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
プラズマ生成領域を含むチャンバと、
前記プラズマ生成領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、
前記プラズマ生成領域にパルスレーザ光を集光するレーザ光集光ミラーと、
前記プラズマ生成領域から放射されるEUV光を反射する反射面を有するEUV集光ミラーであって、前記プラズマ生成領域から拡散するイオンの前記プラズマ生成領域から所定距離の位置におけるイオンエネルギーの空間的分布のうち、前記イオンエネルギーの平均値未満となる角度範囲に前記反射面が収まるように配置された、前記EUV集光ミラーと、
を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するEUV光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflection optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にパルスレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/078579号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成装置は、プラズマ生成領域を含むチャンバと、プラズマ生成領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、プラズマ生成領域にパルスレーザ光を集光するレーザ光集光ミラーと、プラズマ生成領域から放射されるEUV光を反射する反射面を有するEUV集光ミラーであって、プラズマ生成領域から拡散するイオンのプラズマ生成領域から所定距離の位置におけるイオンエネルギーの空間的分布のうち、イオンエネルギーの平均値未満となる角度範囲に反射面が収まるように配置されたEUV集光ミラーと、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、プラズマ生成領域を含むチャンバと、プラズマ生成領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、プラズマ生成領域にパルスレーザ光を集光するレーザ光集光ミラーと、プラズマ生成領域から放射されるEUV光を反射する反射面を有するEUV集光ミラーであって、プラズマ生成領域から拡散するイオンのプラズマ生成領域から所定距離の位置におけるイオンエネルギーの空間的分布のうち、イオンエネルギーの平均値未満となる角度範囲に反射面が収まるように配置されたEUV集光ミラーと、を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、プラズマ生成領域を含むチャンバと、プラズマ生成領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、プラズマ生成領域にパルスレーザ光を集光するレーザ光集光ミラーと、プラズマ生成領域から放射されるEUV光を反射する反射面を有するEUV集光ミラーであって、プラズマ生成領域から拡散するイオンのプラズマ生成領域から所定距離の位置におけるイオンエネルギーの空間的分布のうち、イオンエネルギーの平均値未満となる角度範囲に反射面が収まるように配置されたEUV集光ミラーと、を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、比較例に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図2】
図2は、比較例におけるEUV集光ミラーの配置を示す。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるEUV集光ミラーの配置を示す。
【
図4】
図4は、パルスレーザ光のパルス幅を4nsとした場合のイオンエネルギーの空間的分布を示すグラフである。
【
図5】
図5は、プリパルスレーザ光がターゲットに照射される様子を示す。
【
図6】
図6は、パルスレーザ光が二次ターゲットに照射される様子を示す。
【
図7】
図7は、パルスレーザ光が照射された二次ターゲットからターゲット物質のイオンが拡散する様子を示す。
【
図8】
図8は、第2の実施形態におけるEUV集光ミラーの配置を示す。
【
図9】
図9は、第3の実施形態におけるEUV集光ミラーの配置を示す。
【
図10】
図10は、パルスレーザ光のパルス幅を20nsとした場合のイオンエネルギーの空間的分布を示すグラフである。
【
図11】
図11は、プリパルスレーザ光がターゲットに照射される様子を示す。
【
図15】
図15は、第4の実施形態におけるEUV集光ミラーの配置を示す。
【
図16】
図16は、イオンエネルギーを検出するために配置されるイオン検出器の第1の例を示す。
【
図17】
図17は、イオンエネルギーを検出するために配置されるイオン検出器の第2の例を示す。
【
図19】
図19は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
【
図20】
図20は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.比較例
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例の課題
3.90°~180°の角度範囲に配置されたEUV集光ミラー23
3.1 EUV集光ミラー23の配置
3.2 イオンエネルギーの空間的分布
3.3 イオンエネルギーの空間的分布が発生する原因
3.4 作用
4.125°~180°の角度範囲に配置されたEUV集光ミラー23
4.1 EUV集光ミラー23の配置
4.2 イオンエネルギーの空間的分布
4.3 作用
5.21°~127°の角度範囲に配置されたEUV集光ミラー23
5.1 EUV集光ミラー23の配置
5.2 イオンエネルギーの空間的分布
5.3 イオンエネルギーの空間的分布が発生する原因
5.4 作用
6.21°の角度範囲を取り囲む貫通孔24を有するEUV集光ミラー23
6.1 EUV集光ミラー23の配置
6.2 作用
7.その他
7.1 イオンエネルギーの計測
7.1.1 イオン検出器の配置
7.1.2 イオンエネルギーの計算方法
7.1.3 作用
7.2 EUV光利用装置6の例
7.3 補足
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.比較例
1.1 構成
図1に、比較例に係るEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザシステム3とともに用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザシステム3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。
【0012】
レーザシステム3は、パルスレーザ光31を出力するメインパルスレーザ装置MPLの他に、図示しないプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置PPLを含む。パルスレーザ光31をメインパルスレーザ光ともいう。
【0013】
EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給部26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給部26は、ターゲット物質を含むターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0014】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザシステム3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置される。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
第1の焦点から第2の焦点へ向かう方向をZ方向とする。Z方向に垂直なターゲット27の進行方向をY方向とする。Y方向とZ方向との両方に垂直な方向をX方向とする。
【0015】
EUV光生成装置1は、プロセッサ5、ターゲットセンサ4等を含む。プロセッサ5は、制御プログラムが記憶されたメモリ501と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)502と、を含む処理装置である。プロセッサ5は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。
【0016】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部とEUV光利用装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。EUV光利用装置6の例については、
図19及び
図20を参照しながら後述する。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0017】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、レーザ光の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。
【0018】
1.2 動作
図1を参照して、EUV光生成システム11の動作を説明する。レーザシステム3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、レーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてターゲット27に照射される。プリパルスレーザ光は、レーザ光伝送装置34によってパルスレーザ光32と光路を共通化され、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33より前にターゲット27に照射される。あるいは、プリパルスレーザ光は、パルスレーザ光33とは別の光路を通ってターゲット27に照射されてもよい。
【0019】
パルスレーザ光33及びプリパルスレーザ光の波長は、YAG(yttrium aluminum garnet)レーザによる1.06μmが適するが、YAGレーザの第3高調波による355nm、YAGレーザの第2高調波による532nm、YLF(yttrium lithium fluoride)レーザによる1.3μm、あるいはCO2レーザによる10.6μmでもよい。
【0020】
プリパルスレーザ光のフルーエンスはターゲット27への照射位置において0.1J/cm2以上100J/cm2以下であり、パルス幅は1ps以上100ns以下である。パルスレーザ光33のフルーエンスはターゲット27への照射位置において10J/cm2以上3000J/cm2以下であり、パルス幅は1ns以上100ns以下である。
【0021】
プリパルスレーザ光のフルーエンスは、1J/cm2以上20J/cm2以下であることがより望ましい。パルスレーザ光33のフルーエンスは、100J/cm2以上2000J/cm2以下であることがより望ましい。パルスレーザ光33のパルス幅は、4ns以上20ns以下であることがより望ましい。
【0022】
ターゲット供給部26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光は、EUV集光ミラー23によって他の波長域の光に比べて高い反射率で反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、EUV光利用装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0023】
プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、プロセッサ5は、レーザシステム3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0024】
2.比較例の課題
図2は、比較例におけるEUV集光ミラー23の配置を示す。プラズマ生成領域25へ向かうパルスレーザ光33の進行方向と反対の方向を0°とする。0°の方向に対する角度が15、30、45、・・・、180の各数値で示されている。
EUV集光ミラー23は、その貫通孔24が0°の方向に位置するように配置される。反射面23aの第1の焦点はプラズマ生成領域25に位置し、第2の焦点である反射光252の中間集光点292は180°の方向に位置する。
【0025】
図2は、さらに、比較例におけるイオンエネルギーの空間的分布についての極座標グラフを重ねて示す。プラズマ生成領域25を原点とし、原点から各方向の太い破線までの距離が、プラズマ生成領域25から所定距離の位置におけるターゲット物質のイオンエネルギーの高さに対応する。イオンエネルギーの高さはプラズマ生成領域25を中心とした細い破線の同心円に付された2、4、6、・・・、14の各数値で示され、単位はkeVである。イオンエネルギーの計測方法については
図16~
図18を参照しながら後述する。
【0026】
イオンエネルギーの空間的分布はパルスレーザ光33の光路軸に対してほぼ軸対称である。この空間的分布のうち、0°から90°までの角度範囲では、90°から180°までの角度範囲よりもイオンエネルギーが高い。比較例においてはEUV集光ミラー23の反射面23aが0°から90°までのイオンエネルギーが高い角度範囲に位置している。EUV集光ミラー23は、高いイオンエネルギーを有するターゲット物質のイオンによって汚染され、あるいは劣化し、あるいは短寿命化する可能性がある。
【0027】
3.90°~180°の角度範囲に配置されたEUV集光ミラー23
3.1 EUV集光ミラー23の配置
図3は、第1の実施形態におけるEUV集光ミラー23の配置を示す。
図2においてはパルスレーザ光33がEUV集光ミラー23の貫通孔24を通過してプラズマ生成領域25に集光されるのに対し、
図3においてはパルスレーザ光33がEUV集光ミラー23の外側を通過してプラズマ生成領域25に集光される。中間集光点292から見た反射面23aの外縁はほぼ円形である。イオンエネルギーの空間的分布については
図2と同様である。
【0028】
EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が90°より大きく180°以下となる角度範囲に反射面23aの全体が収まるように配置される。すなわち、0°以上90°以下の角度範囲には反射面23aの全部又は一部が配置されないことが望ましい。
また、プラズマ生成領域25を通過したパルスレーザ光33が通過する180°の位置にはEUV集光ミラー23を配置しないことが望ましい。プラズマ生成領域25を通過したパルスレーザ光33は、EUV集光ミラー23の外側を通過して図示しないレーザダンパに入射する。
【0029】
但し、反射面23aが位置する角度範囲が狭すぎると中間集光点292に到達するEUV光の光量が不十分となり得る。EUV集光ミラー23は、上記角度が95°となる位置から150°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置されることが望ましい。EUV集光ミラー23は、90°より大きく180°以下となる角度範囲内であれば、95°以上150°以下の角度範囲外に及んでもよい。
【0030】
3.2 イオンエネルギーの空間的分布
図4は、パルスレーザ光33のパルス幅を4nsとした場合のイオンエネルギーの空間的分布を示すグラフである。
図4における白抜きの円はいくつかの方向における計測結果を示し、太い破線は計測結果から導かれた近似直線を示す。
図2及び
図3に示されるイオンエネルギーの空間的分布は、
図4を極座標グラフに書き換えたものに相当する。
【0031】
図4において、角度0°から180°までの間の複数の角度の各々について計測されたターゲット物質のイオンエネルギーの平均値をEavgとする。ターゲット物質は例えばスズである。90°より大きく180°以下となる角度範囲において、イオンエネルギーは平均値Eavg未満となる。平均値Eavg未満となる角度範囲に反射面23aが収まるようにEUV集光ミラー23を配置することで、ターゲット物質のイオンによる反射面23aの汚染を抑制し得る。パルスレーザ光33のパルス幅は4nsに限らず、3.6ns以上4.4ns以下の範囲内であれば同様の結果となる。
【0032】
3.3 イオンエネルギーの空間的分布が発生する原因
図5は、プリパルスレーザ光33aがターゲット27に照射される様子を示す。ターゲット27はプリパルスレーザ光33aのエネルギーによって拡散又は膨張し、
図6に示される二次ターゲット27aとなる。
【0033】
図6は、パルスレーザ光33が二次ターゲット27aに照射される様子を示す。パルスレーザ光33のパルス幅を4nsとする。
【0034】
図7は、パルスレーザ光33が照射された二次ターゲット27aからターゲット物質のイオンIONが拡散する様子を示す。第1の実施形態におけるパルスレーザ光33はパルス幅が4nsと短く、光強度が高いため二次ターゲット27aの一部を急激に加熱する。その結果、二次ターゲット27aの一部に、高エネルギーの粒子を含み密度の低い領域27bが生成される。領域27bからはターゲット物質のイオンIONが放射される。密度の低い領域27bがパルスレーザ光33の上流側、すなわち
図7の-Z側に偏っている場合、イオンIONは-Z方向に多く放射される。
図2~
図4に示されるイオンエネルギーの空間的分布が発生する原因は以上の通りであると推定される。
【0035】
3.4 作用
(1)第1の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、プラズマ生成領域25を含むチャンバ2と、ターゲット供給部26と、レーザ光集光ミラー22と、EUV集光ミラー23と、を備える。ターゲット供給部26は、プラズマ生成領域25にターゲット27を供給する。レーザ光集光ミラー22は、プラズマ生成領域25にパルスレーザ光33を集光する。EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25から放射されるEUV光を反射する反射面23aを有し、プラズマ生成領域25から拡散するイオンのプラズマ生成領域25から所定距離の位置におけるイオンエネルギーの空間的分布のうち、イオンエネルギーの平均値Eavg未満となる角度範囲に反射面23aが収まるように配置される。
これによれば、イオンエネルギーが低い領域内に反射面23aが収まっているので、反射面23aの汚染を抑制し得る。
【0036】
(2)第1の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、ターゲット27に照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置PPLと、プリパルスレーザ光が照射されたターゲット27に照射されるパルスレーザ光33を出力するメインパルスレーザ装置MPLと、をさらに備える。レーザ光集光ミラー22は、プラズマ生成領域25にプリパルスレーザ光及びパルスレーザ光33の両方を集光する。
これによれば、プリパルスレーザ光とパルスレーザ光33とを同じ方向からターゲット27に照射するので、二次ターゲット27aの形状の回転対称軸とパルスレーザ光33の光路軸とが一致し、イオンの拡散方向を安定化し得る。また、プリパルスレーザ光の光路軸とパルスレーザ光33の光路軸とを一致させ、これらの光をターゲット27に照射するためのレーザ光集光ミラー22を含む光学系を共通化することで、これらの光のポインティング精度が向上し、イオンの拡散方向を安定化し得る。
【0037】
(3)第1の実施形態によれば、プリパルスレーザ光のフルーエンスは0.1J/cm2以上100J/cm2以下であり、パルス幅は1ps以上100ns以下である。パルスレーザ光33のフルーエンスは10J/cm2以上3000J/cm2以下であり、パルス幅は1ns以上100ns以下である。
これによれば、プリパルスレーザ光によりターゲット27を拡散又は膨張させて好ましい密度となった二次ターゲット27aにパルスレーザ光33を照射することで、効率的にEUV光を生成し得る。
【0038】
(4)プリパルスレーザ光のフルーエンスは1J/cm2以上20J/cm2以下であることがより望ましく、パルス幅は1ps以上100ns以下であることがより望ましい。パルスレーザ光33のフルーエンスは100J/cm2以上2000J/cm2以下であることがより望ましく、パルス幅は4ns以上20ns以下であることがより望ましい。
これによれば、さらに効率的にEUV光を生成し得る。
【0039】
(5)第1の実施形態において、平均値Eavgは、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する0°から180°までの間の複数の角度の各々について計測されたイオンエネルギーの平均である。
これによれば、イオンエネルギーの空間的分布がパルスレーザ光33の光路軸周りに軸対称であるとみなすことで、EUV光生成装置1の設計を単純化することができる。
【0040】
(6)第1の実施形態によれば、レーザ光集光ミラー22は、パルスレーザ光33がEUV集光ミラー23の外側を通過してプラズマ生成領域25に集光されるように配置される。
これによれば、EUV集光ミラー23にパルスレーザ光33が通過するための貫通孔24を形成する必要がないので、集光効率を向上し、EUV集光ミラー23を小型化し得る。
【0041】
(7)第1の実施形態によれば、ターゲット27はスズを含み、パルスレーザ光33のパルス幅は3.6ns以上4.4ns以下の範囲内である。反射面23aが収まるべき角度範囲は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が90°より大きく180°以下となる範囲である。
これによれば、イオンエネルギーが低い領域内に反射面23aを収めることができ、反射面23aの汚染を抑制し得る。
【0042】
(8)第1の実施形態によれば、EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が95°となる位置から150°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置される。
これによれば、イオンエネルギーが低い角度範囲を広く使うことで、高いEUV集光効率を得ることができる。
その他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0043】
4.125°~180°の角度範囲に配置されたEUV集光ミラー23
4.1 EUV集光ミラー23の配置
図8は、第2の実施形態におけるEUV集光ミラー23の配置を示す。中間集光点292から見た反射面23aの外縁はほぼ円形である。イオンエネルギーの空間的分布については
図2及び
図3と同様である。
【0044】
EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が125°より大きく180°以下となる角度範囲に反射面23aの全体が収まるように配置される。すなわち、0°以上125°以下の角度範囲には反射面23aの全部又は一部が配置されないことが望ましい。
【0045】
但し、反射面23aが位置する角度範囲が狭すぎると中間集光点292に到達するEUV光の光量が不十分となり得る。EUV集光ミラー23は、上記角度が130°となる位置から165°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置されることが望ましい。EUV集光ミラー23は、125°より大きく180°以下となる角度範囲内であれば、130°以上165°以下の角度範囲外に及んでもよい。
【0046】
4.2 イオンエネルギーの空間的分布
図4を再び参照し、125°より大きく180°以下となる角度範囲においてイオンエネルギーは平均値Eavgの90%未満となる。平均値Eavgの90%未満となる角度範囲に反射面23aが収まるようにEUV集光ミラー23を配置することで、ターゲット物質のイオンによる反射面23aの汚染をさらに抑制し得る。
【0047】
4.3 作用
(9)第2の実施形態によれば、EUV集光ミラー23は、平均値Eavgの90%未満となる角度範囲に反射面23aが収まるように配置される。
これによれば、第1の実施形態における角度範囲よりもイオンエネルギーが低い角度範囲に限定してEUV集光ミラー23を配置することで、反射面23aの汚染をさらに抑制し得る。
【0048】
(10)第2の実施形態によれば、ターゲット27はスズを含み、パルスレーザ光33のパルス幅は3.6ns以上4.4ns以下の範囲内である。反射面23aが収まるべき角度範囲は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が125°より大きく180°以下となる範囲である。
これによれば、イオンエネルギーが低い領域内に反射面23aを収めることができ、反射面23aの汚染を抑制し得る。
【0049】
(11)第2の実施形態によれば、EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が130°となる位置から165°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置される。
これによれば、イオンエネルギーが低い角度範囲を広く使うことで、高いEUV集光効率を得ることができる。
その他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0050】
5.21°~127°の角度範囲に配置されたEUV集光ミラー23
5.1 EUV集光ミラー23の配置
図9は、第3の実施形態におけるEUV集光ミラー23の配置を示す。第3の実施形態において、EUV集光ミラー23によって反射された反射光252がプラズマ生成領域25を通過しないように、EUV集光ミラー23が傾けて配置されている。中間集光点292から見た反射面23aの外縁はほぼ円形である。
図9は、さらに、第3の実施形態におけるイオンエネルギーの空間的分布についての極座標グラフを重ねて示す。この空間的分布のうち、0°から21°まで及び127°から180°までの角度範囲では、21°から127°までの角度範囲よりもイオンエネルギーが高い。
【0051】
EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が21°より大きく127°より小さい角度範囲に反射面23aの全体が収まるように配置される。すなわち、0°以上21°以下、又は127°以上180°以下の角度範囲には反射面23aの全部又は一部が配置されないことが望ましい。
【0052】
但し、反射面23aが位置する角度範囲が狭すぎると中間集光点292に到達するEUV光の光量が不十分となり得る。EUV集光ミラー23は、上記角度が40°となる位置から80°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置されることが望ましく、上記角度が35°となる位置から100°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置されることがさらに望ましい。EUV集光ミラー23は、21°より大きく127°より小さい角度範囲内であれば、35°以上100°以下の角度範囲外に及んでもよい。
【0053】
5.2 イオンエネルギーの空間的分布
図10は、パルスレーザ光33のパルス幅を20nsとした場合のイオンエネルギーの空間的分布を示すグラフである。
図10における白抜きの円はいくつかの方向における計測結果を示し、太い破線は計測結果から導かれた近似曲線を示す。
図9に示されるイオンエネルギーの空間的分布は、
図10を極座標グラフに書き換えたものに相当する。
【0054】
図10において、角度0°から180°までの間の複数の角度の各々について計測されたターゲット物質のイオンエネルギーの平均値をEavgとする。ターゲット物質は例えばスズである。21°より大きく127°より小さい角度範囲において、イオンエネルギーは平均値Eavg未満となる。平均値Eavg未満となる角度範囲に反射面23aが収まるようにEUV集光ミラー23を配置することで、ターゲット物質のイオンによる反射面23aの汚染を抑制し得る。パルスレーザ光33のパルス幅は20nsに限らず、18ns以上22ns以下の範囲内であれば同様の結果となる。
【0055】
5.3 イオンエネルギーの空間的分布が発生する原因
図11は、プリパルスレーザ光33aがターゲット27に照射される様子を示す。
図11は
図5と同様である。
【0056】
図12~
図14は、パルスレーザ光33が二次ターゲット27aに照射される様子を時系列で示す。パルスレーザ光33のパルス幅を20nsとする。
第3の実施形態におけるパルスレーザ光33はパルス幅が20nsと長く、同じフルーエンスでパルス幅を4nsと短くした場合よりも光強度が低いため二次ターゲット27aを緩やかに加熱する。その結果、
図14に示されるように、高エネルギーの粒子を含み密度の低い領域27bが二次ターゲット27aを貫通するように生成される。領域27bからはターゲット物質のイオンIONが放射される。密度の低い領域27bがパルスレーザ光33の上流側から下流側に貫通している場合、イオンIONは+Z方向と-Z方向との両方に放射される。
図9及び
図10に示されるイオンエネルギーの空間的分布が発生する原因は以上の通りであると推定される。
【0057】
5.4 作用
(12)第3の実施形態によれば、ターゲット27はスズを含み、パルスレーザ光33のパルス幅は18ns以上22ns以下の範囲内である。反射面23aが収まるべき角度範囲は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が21°より大きく127°より小さい範囲である。
これによれば、イオンエネルギーが低い領域内に反射面23aを収めることができ、反射面23aの汚染を抑制し得る。
【0058】
(13)第3の実施形態によれば、EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が40°となる位置から80°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置される。
これによれば、イオンエネルギーが低い角度範囲を広く使うことで、高いEUV集光効率を得ることができる。
【0059】
(14)第3の実施形態によれば、EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が35°となる位置から100°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置される。
これによれば、イオンエネルギーが低い角度範囲をさらに広く使うことで、高いEUV集光効率を得ることができる。
その他の点については、第3の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0060】
6.21°の角度範囲を取り囲む貫通孔24を有するEUV集光ミラー23
6.1 EUV集光ミラー23の配置
図15は、第4の実施形態におけるEUV集光ミラー23の配置を示す。中間集光点292から見た反射面23aの外縁はほぼ円形である。イオンエネルギーの空間的分布については
図9及び
図10と同様である。
【0061】
第4の実施形態におけるEUV集光ミラー23は、その貫通孔24が0°の方向に位置するように配置される点で比較例と同様である。貫通孔24は比較例におけるものよりも大きく、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が21°より大きくなる位置に、貫通孔24の外縁が配置される。これにより、EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が21°より大きく127°より小さい角度範囲に反射面23aの全体が収まる。
【0062】
但し、反射面23aが位置する角度範囲が狭すぎると中間集光点292に到達するEUV光の光量が不十分となり得る。EUV集光ミラー23は、上記角度が25°となる位置から80°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置されることが望ましい。EUV集光ミラー23は、21°より大きく127°より小さい角度範囲内であれば、25°以上80°以下の角度範囲外に及んでもよい。
【0063】
6.2 作用
(15)第4の実施形態によれば、EUV集光ミラー23は、パルスレーザ光33が通過する貫通孔24を有し、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が21°より大きくなる位置に貫通孔24の外縁が配置される。
これによれば、パルスレーザ光33を通過させる貫通孔24を大きくすることで、貫通孔24付近の反射面23aの汚染を抑制し得る。
【0064】
(16)第4の実施形態によれば、EUV集光ミラー23は、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の進行方向と逆の方向に対する角度が25°となる位置から80°となる位置まで反射面23aが及ぶように配置される。
これによれば、イオンエネルギーが低い角度範囲を広く使うことで、高いEUV集光効率を得ることができる。
その他の点については、第4の実施形態は第3の実施形態と同様である。
【0065】
7.その他
7.1 イオンエネルギーの計測
7.1.1 イオン検出器の配置
図16は、イオンエネルギーを検出するために配置されるイオン検出器の第1の例を示す。イオンエネルギーを検出するために、ファラデーカップ等のイオン検出器FCが、チャンバ2の内部のプラズマ生成領域25から所定距離において移動できるようにステージSTに支持されている。所定距離は例えば125mmである。ステージSTは、プラズマ生成領域25を含むYZ面に平行な面内であって、プラズマ生成領域25からの距離が一定となる移動経路に沿ってイオン検出器FCを移動させる。イオンエネルギーを計測する際には、チャンバ2の内部にEUV集光ミラー23を配置しなくてよい。この場合のイオンエネルギーの空間的分布はパルスレーザ光33の光路軸に対してほぼ軸対称であるので、YZ面に平行な面内でイオン検出器FCを移動させながらイオンエネルギーを検出することで、各方向のイオンエネルギーを計測できる。
【0066】
図17は、イオンエネルギーを検出するために配置されるイオン検出器の第2の例を示す。第2の例においては、チャンバ2の内部に複数のイオン検出器FC1~FC10が配置される。イオン検出器FC1~FC10は、
図16に示されるステージSTによるイオン検出器FCの移動経路に対応する複数の位置に並べられる。イオン検出器FC1~FC10でそれぞれイオンエネルギーを検出することで、各方向のイオンエネルギーを計測できる。
【0067】
7.1.2 イオンエネルギーの計算方法
図18は、イオン検出器による検出結果の例を示す。チャンバ2の内部の1箇所で検出された検出イオンエネルギーと1cm
2当たりの検出イオン個数とを
図18のような両対数グラフにプロットし、カーブフィッティングにより近似曲線を求める。この近似曲線から、単位面積当たりのイオン個数が1個である場合に対応するイオンエネルギーを最大イオンエネルギーとして計算することができる。この最大イオンエネルギーを各実施形態におけるイオンエネルギーとする。
【0068】
7.1.3 作用
(17)各実施形態において、イオンエネルギーは、プラズマ生成領域25から所定距離の位置における最大イオンエネルギーである。
最大イオンエネルギーが汚染のしやすさに大きく影響するので、最大イオンエネルギーが低い領域内に反射面23aを収めることで、反射面23aの汚染を抑制し得る。
【0069】
(18)最大イオンエネルギーは、プラズマ生成領域25から所定距離の位置において検出された検出イオンエネルギーと検出イオン個数との関係から、単位面積当たりのイオン個数が1個である場合に対応するイオンエネルギーとしてカーブフィッティングにより算出されたエネルギーである。
これによれば、最大イオンエネルギーの推定値を精度良く算出できる。
【0070】
7.2 EUV光利用装置6の例
図19は、EUV光生成システム11に接続された露光装置6aの構成を概略的に示す。
図19において、EUV光利用装置6(
図1参照)としての露光装置6aは、マスク照射部608とワークピース照射部609とを含む。マスク照射部608は、EUV光生成システム11から入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部609は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0071】
図20は、EUV光生成システム11に接続された検査装置6bの構成を概略的に示す。
図20において、EUV光利用装置6(
図1参照)としての検査装置6bは、照明光学系603と検出光学系606とを含む。照明光学系603は、EUV光生成システム11から入射したEUV光を反射して、マスクステージ604に配置されたマスク605を照射する。ここでいうマスク605はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系606は、照明されたマスク605からのEUV光を反射して検出器607の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器607はマスク605の画像を取得する。検出器607は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク605の画像により、マスク605の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0072】
7.3 補足
上述の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0073】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。