(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142486
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】磁気マーカ及び磁気マーカの施工方法
(51)【国際特許分類】
E01C 1/00 20060101AFI20230928BHJP
E01C 19/00 20060101ALI20230928BHJP
E01F 11/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E01C1/00 Z
E01C19/00
E01F11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049429
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【テーマコード(参考)】
2D051
2D052
2D064
【Fターム(参考)】
2D051AA07
2D051AC01
2D051AF01
2D051AG01
2D051AH01
2D052AA11
2D052AB01
2D064AA02
2D064BA01
2D064EA15
2D064EA17
2D064JA02
(57)【要約】
【課題】道路のメンテナンスコストの抑制に有効な磁気マーカを提供すること。
【解決手段】車線に沿って車両を走行させる自動操舵制御や、車線からの逸脱を警報する車線逸脱警報など、車両の運転支援に利用するために路面に埋設される磁気マーカ1は、磁気発生源をなすマーカ本体1Bと、軟磁性材料よりなる柱状のヨーク1Aと、の分割構造を有しており、ヨーク1Aは、上下方向に隣り合わせてマーカ本体1Bに対して上方に配置される磁性部品である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転支援に利用するために路面に埋設される磁気マーカであって、
該磁気マーカは、磁気発生源をなすマーカ本体と、軟磁性材料よりなる柱状のヨークと、の分割構造を有しており、
前記ヨークは、上下方向に隣り合わせて前記マーカ本体に対して上方に配置される部材である磁気マーカ。
【請求項2】
請求項1において、前記マーカ本体の水平方向の断面形状は、前記ヨークの水平方向の断面形状よりも大きく、かつ、該ヨークの水平方向の断面形状を包含する形状である磁気マーカ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ヨークは、色により、路面の舗装材料と区別可能に構成されている磁気マーカ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、前記ヨークは、軟磁性材料よりなる粉末が分散している舗装材料の成形品である磁気マーカ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、前記ヨークは、外部から作用する力に応じた応力の均一性が損なわれて応力が集中する箇所が生じる形状を呈する柱状の磁性部品である磁気マーカ。
【請求項6】
請求項5において、前記応力が集中する箇所は、前記柱状のヨークの外表面にスリット状の溝を穿設することにより設けられる磁気マーカ。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項において、前記ヨークは、複数の磁性部品の集合体であって、当該複数の磁性部品が柱状をなすように連結されたものである磁気マーカ。
【請求項8】
請求項7において、前記複数の磁性部品のうちの隣り合う磁性部品の間隙に所在する材料は、前記複数の磁性部品のうちの隣り合う磁性部品を連結する連結材料であって、当該連結材料が、前記複数の磁性部品を構成する各磁性部品よりも低脆性の材料である磁気マーカ。
【請求項9】
請求項7または8において、前記ヨークは、所定の方向に延在するガイド部材により、前記複数の磁性部品が柱状をなす状態で保持されたものである磁気マーカ。
【請求項10】
請求項8において、前記連結材料は、所定の解体操作によって解体因子を活性化させることで接合力が低下する解体性接着材料あるいは解体性粘着材料である磁気マーカ。
【請求項11】
請求項8において、前記連結材料は、生分解性材料よりなる接着材料あるいは粘着材料である磁気マーカ。
【請求項12】
路面をなす表層が基層に積層された舗装道路に、車両の運転支援を実現するための磁気マーカを埋設するための施工方法であって、
前記磁気マーカは、磁気発生源をなすマーカ本体と、磁性材料よりなる柱状のヨークと、の分割構造を有し、
磁性材料を含むヨークを前記表層に埋設し、
該ヨークと磁気的に結合される状態で、前記表層における当該ヨークよりも深い位置、あるいは前記基層に前記マーカ本体を埋設する磁気マーカの施工方法。
【請求項13】
請求項12において、前記マーカ本体の水平方向の断面形状は、前記ヨークの水平方向の断面形状よりも大きく、かつ、該ヨークの水平方向の断面形状を包含する形状であり、
前記マーカ本体の鉛直方向の射影領域に、前記ヨークの鉛直方向の射影領域が包含されるように当該ヨークを配置する磁気マーカの施工方法。
【請求項14】
請求項12または13において、前記表層は、加熱アスファルト混合物よりなる層であり、前記基層は、粒状材料よりなる路盤の層であり、前記マーカ本体は、前記路盤に埋設されているか、あるいは前記路盤と前記表層との境界に沿うように埋設されている磁気マーカの施工方法。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項において、前記マーカ本体に要求される位置的な精度が、前記ヨークに要求される位置的な精度よりも低精度である磁気マーカの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援するために道路に配設される磁気マーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に配設された磁気マーカを利用する車両用のシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなシステムは、磁気センサが取り付けられた車両を対象とするシステムである。このシステムによれば、車線に沿って配設された磁気マーカを車両が検出することにより、自動操舵制御や車線逸脱警報等、各種の運転支援を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気マーカによって道路の保守に要するコストの上昇が誘発されるおそれがある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、道路のメンテナンスコストの抑制に有効な磁気マーカを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の運転支援に利用するために路面に埋設される磁気マーカであって、
該磁気マーカは、磁気発生源をなすマーカ本体と、軟磁性材料よりなる柱状のヨークと、の分割構造を有しており、
前記ヨークは、上下方向に隣り合わせて前記マーカ本体に対して上方に配置される部材である磁気マーカにある。
【0007】
本発明の磁気マーカでは、道路の保守作業の際、磁気発生源をなすマーカ本体に関する作業を実施することなく、上側のヨークに関する作業のみで済ませることができる場合がある。ヨークに関する作業のみで済めば、磁気マーカが配設された道路の保守作業に要するコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施例1における、道路に配設された磁気マーカを示す説明図。
【
図3】実施例1における、マーカ本体の他の配置その1の説明図。
【
図4】実施例1における、マーカ本体の他の配置その2の説明図。
【
図5】実施例1における、マーカ本体の他の配置その3の説明図。
【
図6】実施例1における、マーカ本体の他の配置その4の説明図。
【
図7】実施例2における、無線タグを備えるヨークの斜視図。
【
図8】実施例2における、2次アンテナの展開形状の正面図。
【
図9】実施例3における、第1のヨークを示す斜視図。
【
図10】実施例3における、第1のヨークの断面構造を示す断面図。
【
図11】実施例3における、他の第1のヨークの構成部品を示す図。
【
図12】実施例3における、第2のヨークを示す斜視図。
【
図13】実施例3における、第2のヨークの断面構造を示す断面図。
【
図14】実施例3における、他の第2のヨークを示す斜視図。
【
図15】実施例3における、第3のヨークを示す斜視図。
【
図16】実施例3における、第3のヨークの構造の説明図。
【
図17】実施例3における、第3のヨークの構成部品を示す図。
【
図18】実施例3における、シート片の接着方法の説明図。
【
図19】実施例3における、第4のヨークの斜視図。
【
図20】実施例3における、他の第4のヨークの斜視図。
【
図21】実施例3における、第5のヨークの断面構造を示す断面図。
【
図22】実施例3における、第6のヨークの斜視図。
【
図23】実施例3における、他の第6のヨークの斜視図。
【
図24】実施例3における、第7のヨークの構造の説明図。
【
図25】実施例3における、第8のヨークの構造の説明図。
【
図26】実施例3における、第8のヨークを構成する磁性粒の断面図。
【
図27】実施例3における、他の第8のヨークの説明図。
【
図28】実施例3における、第9のヨークの説明図。
【
図29】実施例3における、第10のヨークの説明図。
【
図30】実施例3における、他の第10のヨークの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、磁気マーカを構成するマーカ本体とヨークとは、上下方向に隣り合わせて配設されていれば良く、隣接していることは必須ではない。マーカ本体とヨークとは接する状態であっても良く、離間していても良い。マーカ本体から生じる磁気をヨークが集磁できるような位置関係にあれば良い。
【0010】
磁気発生源としてのマーカ本体は、永久磁石を含むものであっても良い。永久磁石としては、ネオジウムなどの希土類磁石のほか、フェライト磁石などを採用できる。腐食に弱い希土類磁石の場合、金属製のケースや樹脂製のケース等に収容すると良い。磁性材料として酸化鉄を利用するフェライト磁石であれば、腐食に強いため、ケーシングすることなく埋設することも可能である。
【0011】
(実施例1)
本例は、車両に取り付けられた磁気センサ(図示略)で検出できるように道路3に配設された磁気マーカ1に関する例である。この磁気マーカ1は、運転者による車両の運転操作の支援、あるいは運転者の操作に依らない自動運転を実現するために利用される。この内容について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0012】
本例の磁気マーカ1の説明に先立って、道路の舗装構造について説明する。アスファルト等で舗装された道路3の断面構造は、
図1のごとく、大まかに、土を押し固めた路床3C、砕石やクラッシャランなどの粒状材料による路盤(基層の一例。)3B、加熱アスファルト混合物よりなる表層3A、という三層構造を有する。加熱アスファルト混合物は、粗骨材331、細骨材332、フィラーおよびアスファルトが加熱状態で混合されたアスファルト混合物である。表層3Aの層厚は、例えば10cm程度である。
【0013】
粗骨材331は、例えば、粒径2.5~5mmの砕石である。細骨材332は、例えば、2.36mmのふるいを通過し、0.075mmのふるいに留まる骨材である。細骨材332は、例えば、0.075~2.36mmの粒径の砂である。図示を省略するフィラーは、0.075mmのふるいを通過する鉱物質粉末である。フィラーは、例えば、石灰岩を粉末にした石粉である。
【0014】
なお、道路の舗装は、経年に応じて、ポットホールなどの傷みが不可避である。ポットホールは、加熱アスファルト混合物からなる表層3Aの一部が路面から剥離して起こる穴である。ポットホールは、例えば、表層3Aをなす加熱アスファルト混合物中の粗骨材331同士の連結構造が損なわれて生じる。
【0015】
磁気マーカ1は、
図2のごとく、磁気発生源をなすマーカ本体1Bと、軟磁性材料(磁性材料の一例。)よりなるヨーク1Aと、よりなる分割構造を有する。マーカ本体1Bは、直径100mmの永久磁石の円盤であって、一方の表面がN極で、他方の表面がS極である磁石である。ヨーク1Aは、直径30mm高さ20mmの円柱状の軟磁性材料よりなる磁性部品である。マーカ本体1Bとヨーク1Aとは上下方向に隣り合わせて配設されている。ヨーク1Aは、マーカ本体1Bからの磁気を誘導する集磁ヨークとして機能する。
【0016】
マーカ本体1Bの水平方向の断面形状は、ヨーク1Aの水平方向(軸方向に直交する方向)の断面形状よりも大きく、かつ、ヨーク1Aの水平方向の断面形状を包含する形状でとなっている。マーカ本体1Bの断面形状が、ヨーク1Aの断面形状を包含する形状であれば、マーカ本体1Bに対してヨーク1Aの位置を調整したときにヨーク1Aから発する磁力の変化を抑制でき、マーカ本体1Bを埋設した後でのヨーク1Aの位置調整が容易になる。なお、より好ましくは、鉛直方向におけるヨーク1Aの射影領域が、マーカ本体1Bの表面領域に包含されるように、磁気マーカ1を敷設すると良い。
【0017】
マーカ本体1Bが路盤3Bの表面に配置された状態で埋設されている。一方、ヨーク1Aは、路面3Sに近く埋設されている。表層3Aの厚さが約10cmであることから、マーカ本体1Bの埋設深さは、約10cmとなっている。なお、例えば表層3Aが薄い場合などでは、マーカ本体1Bの表面にヨーク1Aが接する状態で磁気マーカ1を敷設することも良い。
【0018】
本例の構成では、永久磁石であるマーカ本体1Bの磁気がヨーク1Aに誘導される。この構成では、車両側に作用する磁気のうち、ヨーク1Aを経由して作用する磁気が占める割合が、マーカ本体1から直接、作用する磁気が占める割合よりも大きくなる。それ故、車両側では、永久磁石であるマーカ本体1Bではなく、ヨーク1Aを磁気発生源として検出可能である。
【0019】
マーカ本体1Bは、直径100mm、厚さ10mmの永久磁石である。マーカ本体1Bをなす磁石は、硬磁性材料である酸化鉄(ハードフェライト)の磁粉を基材である高分子材料中に分散させた等方性フェライトラバーマグネットである。この磁石は、最大エネルギー積(BHmax)=12kJ/立方mという磁気的な特性を備えている。なお、磁石をなす高分子材料としては、例えば、アスファルト、ゴム、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、ナイロン66、ナイロン12等を例示できる。
【0020】
等方性フェライトラバーマグネットは、磁性材料が酸化鉄であるため腐食に強く、ケースに収容する必要がない。それ故、本例のマーカ本体1Bは、磁石そのものであっても良い。必要に応じて磁石の外周面に適宜、コーティング層を設けても良い。マーカ本体1Bは、地中に直接、埋設可能である。
【0021】
ヨーク1Aは、軟磁性材料である酸化鉄(ソフトフェライト)の磁粉を基材である高分子材料中に分散させた磁性部品である。ヨーク1Aは、直径30mm、高さ20mmの円柱状をなすように成形された磁性部品である。
【0022】
ヨーク1Aの基材をなす高分子材料について、白色や赤色や緑色や青色などに着色することも良い。あるいは、ヨーク1Aの外周に有色のコーティング層を設けることも良い。有色であって周囲の舗装材料との区別が容易なヨーク1Aであれば、より深く埋設されたマーカ本体1Bの目印となり、その後のマーカ本体1Bのメンテナンス作業が容易となる。
【0023】
ヨーク1Aは、路面3Sに設けられた深さ30mmの収容孔30に収容された状態で配設(埋設)される。収容孔30の深さ30mmに対して、ヨーク1Aの高さが20mmであるので、収容孔30に配置されたヨーク1Aの上面は、路面から10mmほど奥まった位置となる。収容孔30には、ヨーク1Aを収容した後、アスファルトや樹脂材料等の高分子材料が充填される。これにより、ヨーク1Aの上面側には、アスファルトや樹脂材料等によりなる蓋31が形成される。
【0024】
本例の構成では、ヨーク1Aの表面の磁束密度が45mT(ミリテスラ)であって、高さ250mmに到達する磁束密度が8μT程度となるよう、マーカ本体1Bの磁力が調整されている。なお、高さ250mmは、車両における磁気センサの取付高さの想定範囲のうちの上限に当たる高さの一例である。上記のごとく、マーカ本体1Bの磁力は、厚さの設定により適宜、調節できる。
【0025】
以上の通り、本例の磁気マーカ1は、永久磁石であるマーカ本体1Bと、軟磁性材料よりなるヨーク1Aと、の分割構造を有している。マーカ本体1Bが路面3Sからの深さ約10cmに埋設されている。舗装の耐用年数が経過した際、表層3Aの表面を削り取って再舗装を実施する場合であれば、路盤3Bの表面のマーカ本体1Bをそのまま利用でき、ヨーク1Aのみを再施工すれば良い。ヨーク1Aは、同じ大きさの永久磁石よりも低コストである。それ故、本例の分割構造の磁気マーカ1を採用すれば、磁気マーカを配設したことによる道路のメンテナンスコストの上昇を抑制できる。
【0026】
なお、本例では、マーカ本体1Bが路盤3Bの表面に配置されている。
図3のごとくマーカ本体1Bの上面が路盤3Bの表面に沿うように配置しても良く、
図4のごとく路盤3Bと表層3Aとの境界にマーカ本体1Bを配置しても良い。また、
図5のごとくマーカ本体1Bを表層3Aの下部に配置しても良く、
図6のごとく路盤3Bの中にマーカ本体1Bを埋設しても良い。さらに、本例では、マーカ本体1Bとヨーク1Aとが離間して配置されているが、マーカ本体1Bの表面にヨーク1Aが接する配設状態であっても良い。
【0027】
磁気マーカ1を施工するに当たって、マーカ本体1Bの位置はおおよその位置であっても良い。マーカ本体1Bは100mmと大径であるため、マーカ本体1Bの中心からのヨーク1Aのズレの影響は少なく、マーカ本体1Bの磁気がヨーク1Aに誘導され得る。それ故、必ずしもマーカ本体1Bの中心と、ヨーク1Aの中心と、が一致している必要はないからである。
【0028】
このように磁気マーカ1を施工する際に要求される位置的な精度については、マーカ本体1Bとヨーク1Aとで差がある。マーカ本体1Bに要求される位置的な精度は、ヨーク1Aに要求される位置的な精度よりも低精度である。マーカ本体1Bの位置的な誤差に関わらず、ヨーク1Aの位置的な精度を確保すれば、車両側で検出される磁気マーカ1の位置の精度を確保できるからである。本例の磁気マーカ1では、マーカ本体1Bに対する位置的な要求精度が低く効率良く施工できる。マーカ本体1Bは、ヨーク1Aよりも深い位置に埋設されるので、効率的な施工によるコスト低減効果が顕著である。
【0029】
本例では、断面円形状の柱状のヨークを例示している。断面形状は、円形状に限定されない。三角形状、四角形状、五角形状等の断面形状を有する柱状のヨークであっても良い。
【0030】
なお、本例ではソフトフェライトの磁粉を基材中に分散させたヨーク1Aを例示したが、軟磁性ステンレス鋼や、表面を耐食コーティングした軟鉄など、バルクの金属材料よりなるヨークを採用することも良い。ヨークをなすバルクの金属材料は、当然強磁性を持っていて、かつ耐食性が良い材料であることが望ましい。
【0031】
(実施例2)
本例は、実施例1のヨークに基づき、無線タグ18を追加した例である。この内容について、
図7及び
図8を参照して説明する。
本例のヨーク1A(
図7)では、実施例1のヨークに基づき、端面に無線タグ18が取り付けられたものである。ヨーク1Aの直径30mmの端面に対して、無線タグ18は、断面形状が約10mm×2mm、長さ約25mmである。
【0032】
無線タグ18は、ICチップや無線通信用のアンテナ等が、樹脂材料等によるケースに収容された電子部品である。無線タグ18は、無線電波による外部給電により動作し、予め記憶している情報を無線出力する。無線タグ18が出力する情報は、例えば、位置情報や道路種別などの情報である。
【0033】
本例のヨーク1Aの外周面及び端面には、無線タグ18が送受信する電波を増幅する2次アンテナ19が設けられている。2次アンテナ19は、導電性を有するインクをヨーク1Aの外表面に印刷して形成されている。2次アンテナ19は、平面に展開して示す
図8のごとく、直角に折れ曲がるかぎ状部194を両端に有している。両端のかぎ状部194は、中間の直線部191に対して逆側に折り曲げられている。直線部191は、無線タグ18の取付面である端面において径方向に延設されてヨーク1Aの外周面に達し、外周面において軸方向に沿って延設されている。かぎ状部194は、ヨーク1Aの外周面において、周方向に沿うように設けられる。
【0034】
図7のヨーク1Aでは、2次アンテナ19の直線部191に接する状態で無線タグ18が取り付けられている。無線タグ18が内蔵する通信用のアンテナと、2次アンテナ19と、の電磁気的な結合により、無線タグ18が送受信する電波が増幅される。2次アンテナ19は、導電性を有するインクによるプリントアンテナに代えて、銅箔やアルミ箔等によるアンテナであっても良い。金属箔のアンテナである場合には、十分に薄いものを採用することで、小片に分離可能というヨーク1Aの特徴を阻害しないものを採用するか、あるいはヨーク1Aの外周面から容易に剥がれるように構成すると良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0035】
(実施例3)
本例は、実施例1の磁気マーカに基づき、ヨーク1Aの構成を変更した例である。この内容について、
図9~
図30を参照して説明する。
本例のヨーク1Aは、複数の小片に分離可能な構造を有している点に特徴を有する。仮に、ヨーク1Aが路面3Sに転がり出たときに一体のままであると、ポットホール等の発生に応じてヨーク1Aが一体的に道路から脱落すれば、磁気マーカ1の磁気的な機能が一気に失われることになる。複数の小片に分離可能な構造を備える本例のヨーク1Aであれば、ポットホール等の拡大に応じて一部を分離でき、残りの一部が道路側に残存できる可能性がある。このヨーク1Aを含む磁気マーカ1は、ヨーク1Aの一部が道路側に残存することで、その磁気的な機能をある程度、維持できる可能性が高い。
【0036】
このように本例のヨーク1Aによれば、周囲に磁気を作用するという磁気マーカの機能が一気に失われるおそれを低減できる。本実施例では、このような効果を有するヨーク1Aを複数種類、例示する。
【0037】
(第1のヨーク)
第1のヨーク1Aは、
図9及び
図10に示すヨークである。
図9は、ヨーク1Aの外観を示す斜視図である。
図10は、柱状の中心軸を含む断面の構造を示す断面図である。同図の断面は、
図9中のA-A線の断面である。第1のヨーク1Aは、軟磁性材料である酸化鉄(ソフトフェライト)の磁粉を基材である高分子材料中に分散させ、柱状に成形した中間加工品(図示略)を作製した後、その外周面にスリット加工を施した磁性部品である。
【0038】
このスリット加工では、例えばレーザー加工によって、柱状の軸方向に直交する円環状のスリット101が複数、一定の間隔を空けて設けられる。スリット状の溝の一例をなすスリット101の幅は、例えば0.1~0.2mmという微細なものである。円環状のスリット101の内径は例えば5mmである。
【0039】
ヨーク1Aは、
図10のごとく、円環状のスリット101により区画されたシート片が複数、積層されたような構造を有している。このヨーク1Aでは、溝の一例であるスリット101が契機となって亀裂が生じやすい。ヨーク1Aでは、軸方向に直交する断面積がスリット101のところで急激に減少しており、これにより、応力が集中する箇所が生じている。ヨーク1Aは、応力が集中する箇所から破断が生じ易い。ヨーク1Aは、スリット101で生じた亀裂、すなわち隙間の拡大により破断し、複数の小片に分離し易くなっている。このヨーク1Aは、スリット101の存在により破断し易くなっており、前記中間加工品との比較において、複数の小片に分離するために要する力が小さくなっている。
【0040】
なお、例えば、円板状をなすと共に、外周部よりも内周部が厚い
図11のシート片110を、軸方向に積層して相互に接合することで、
図9及び
図10と同様のヨーク1Aを得ることも良い。シート片は、軟磁性材料の磁粉を高分子材料中に分散させ、シート状に成形した磁性部品である。あるいは、図示は省略するが、一定の厚さの円板と小径の円板とを交互に積層して接合すれば、
図9及び
図10のヨーク1Aに似通ったヨークを得ることができる。
【0041】
なお、スリット101(
図10)の内部に、軟磁性材料の粉末等を充填することも良い。軟磁性材料としては、例えば、鉄、けい素鉄、パーマロイ等を例示できる。充填する軟磁性材料の態様は、ヨーク1Aの本体よりも強度が低く、破断し易い態様であると良い。軟磁性材料に代えて、樹脂材料などの高分子材料を充填しても良い。軟磁性材料は、透磁率が高いため、スリット101を設けたことによる磁気的性能の低下を抑制できる。なお、本例のごとく、0.1~0.2mm程度の隙間であれば、磁気的性能の低下は大きな問題とはならない。隙間がより大きくなり、磁気的性能の低下が大きくなったような場合、スリット101に充填された軟磁性材料の磁粉の有効性が顕著になる。
【0042】
スリット101が設けられた外周面に、樹脂材料によるコーティングを施すことも良い。ヨーク1Aの外周面において開口するスリット101の開口部は、覆わなくても良い。この場合には、スリット101内に浸入した水分等の氷結により、スリット101を契機とした破断を促進できる。ヨーク1Aが予め破断していれば、ポットホールの拡大に応じて直ちに一部を分離できる可能性が高い。さらに、スリット101に多孔性の材料を充填することも良い。この場合には、毛細管現象によってスリット101内に水分を吸い上げることで、水分の浸入を促進できる。
【0043】
(第2のヨーク)
第2のヨーク1Aは、
図12及び
図13に示すヨークである。
図12は、ヨーク1Aの外観を示す斜視図である。
図13は、ヨーク1Aの軸方向に直交する断面図である。同図の断面は、
図12におけるB-B線による輪切りの断面である。このヨーク1Aでは、中心軸と交差する径方向の横孔102(孔の一例。)が複数、穿設されている。このヨーク1Aは、例えば、柱状の中間加工品を作製した後、径方向に貫通する横孔102を多数、設けた磁性部品である。
【0044】
横孔102は、例えばレーザー加工による直径0.5~1.0mm程度の微細な孔である。横孔102は、ヨーク1Aの中心軸と交差し、径方向に貫通している。横孔102は、ヨーク1Aの軸方向における2mmおきの9か所の断面(以下、横孔102の形成面という。)に沿っている。両端の形成面は、それぞれ、ヨーク1Aの端面から軸方向に1mm離れて位置している。ヨーク1Aにおける各形成面では、例えば周方向、16分割の等間隔(角度22.5度の等間隔)で複数の横孔102が穿設されている。
【0045】
なお、形成面は、9か所よりも多い箇所であっても良く、少なくても良い。形成面は、不等間隔であっても良い。また、形成面における横孔102の周方向の間隔についても、16分割よりも細かくても良く、粗くても良い。横穴102の周方向の間隔は不等間隔であっても良い。
【0046】
図12及び
図13のヨーク1Aは、横孔102の形成面のところで断面積が急激に減少し、応力が集中する箇所が生じている。ヨーク1Aは、応力集中により、この箇所に過大な応力が作用する可能性が高く、破断し易くなっている。このように、ヨーク1Aは、隙間の一例をなす横孔102の形成面において亀裂が生じ易く、複数の小片に分離可能な構造を有する。このヨーク1Aは、横孔102の形成面を介してシート片が積層されたごとき磁気マーカである。このヨーク1Aでは、横孔102の形成面の存在により強度が低下している。ヨーク1Aは、隙間である横孔102の拡大により形成面を介して隣り合う小片が分離する。このヨーク1Aは、横孔102が設けられた形成面の存在により、上記の中間加工品よりも破断し易く小片に分離し易くなっている。
【0047】
なお、横孔102の内部に、軟磁性材料を充填することも良い。軟磁性材料の態様は、ヨーク1Aの本体よりも強度が低く、破断し易い態様であると良い。軟磁性材料に代えて、樹脂材料などの高分子材料を充填しても良い。
横孔102が開口する外周面に、樹脂材料によるコーティングを設けることも良い。
【0048】
なお、
図14に示すように、横孔102に代えて、軸方向に貫通する縦孔103(孔の一例。)を設けることも良い。例えば、縦孔103は、ヨーク1Aの中心軸を含む平面に沿って複数、形成されている。ヨーク1Aでは、このように縦孔103が沿う平面が、周方向における45度の等間隔で設けられている。ヨーク1Aの端面では、縦孔103の開口が放射状に配置されている。同図のヨーク1Aでは、隙間の一例をなす縦孔103の形成面(上記の平面。)により区画された断面扇形状の柱状領域が形成されている。
【0049】
なお、横孔102(
図12及び
図13)に加えて縦孔103(
図14)を設けることも良い。本例では、横孔102及び縦孔103として、貫通孔を例示しているが、貫通していない有底の孔であっても良い。隙間の一例をなす孔を設けたヨークは、孔の存在により強度が低下しており破断し易くなっている。このヨークは、破断によって複数の小片に分離可能な構造を有する。
なお、横孔102及び縦孔103の開口部分の取り扱いについては、スリット101の場合と同様である。外部に開口したままとしても良い。
【0050】
(第3のヨーク)
図15のヨーク1Aは、直径30mmの円板状のシート片11が、接着材料あるいは粘着材料を利用して積層された柱状の磁気マーカである。このヨーク1Aは、上記第1及び第2のヨークと同様、直径30mm、高さ20mmの柱状の外形状を呈する磁性部品である。シート片11は、軟磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させた磁性材料を、シート状に形成した磁性部品である。ヨーク1Aは、磁性部品である円板状のシート片11の集合体である。なお、このヨーク1Aの磁気的な性能は、上記の第1及び第2のヨークとほぼ同様である。
【0051】
図15のヨーク1Aでは、隣り合うシート片11間の隙間に、接着材料等による接合層12が形成されている(
図16参照。)。接着材料あるいは粘着材料として、例えば、時間が経過しても硬化しない接着材料あるいは粘着材料を採用すれば、接合層12を介して隣り合う小片が分離し易くなる。あるいは硬化する一方、接合層12の破断が生じやすい接着材料等を採用することも良い。接合層12が破断すれば、隣り合うシート片11の間で亀裂が生じて破断し、ヨーク1Aが複数の小片に分離し易くなる。
【0052】
なお、接着材料は、使用前は液体で、経時変化により個体となる狭義の接着材料である。粘着材料は、液体と固体の両方の性質を有し、半固形で粘性を持つ粘着材料である。広義の接着材料の概念に、狭義の接着材料および粘着材料が含まれると考えることもできる。
【0053】
接着材料あるいは粘着材料としては、例えば、接合直後には比較的強度が高い一方、経時変化等により、接合強度が次第に低下する接着材料等を採用することも良い。また、例えば、何らかの解体因子を有し、解体因子を活性化させる解体操作により接合力が低下したり剥離したりする特性を有する解体性接着材料あるいは解体性粘着材料を採用することも良い。
【0054】
例えば、粘着界面でのガス発生という解体因子を備えており、紫外線照射という解体操作により接合力を喪失する粘着材料であっても良い。この粘着材料は、例えば、半導体プロセスにおいてダイシングテープと呼ばれる紫外線剥離テープの粘着材料として利用される。例えば、吸水性樹脂の膨張という解体因子を備え、水浸漬といった解体操作により接合力が低下する吸水性樹脂混入接着材料であっても良い。例えば、マイクロカプセルの膨張という解体因子を備え、加熱によって接合力が低下する熱膨張性マイクロカプセル混入粘着材料であっても良い。例えば、軟化・溶融という解体因子を備えており、加熱という解体操作によって接合力が低下する熱硬化・熱可塑性接着材料であっても良い。例えば、粘着材料の脆性化という解体因子を備えており、加熱、紫外性照射によって脆性化し接合力が低下する粘着材料であっても良い。例えば、加水分解という解体因子を備えており、水分の供給という解体操作により接合力が低下する加水分解性の接着材料あるいは粘着材料であっても良い。接着材料の吸湿及び軟化・溶融という解体因子を備えており、温水浸漬によって接合力が低下する吸湿剥離接着材料であっても良い。例えば、軟化・溶融という解体因子を備えており、電磁誘導加熱によって接合力が低下する電磁誘導・熱可塑性接着材料であっても良い。例えば、力学的破壊という解体因子を備えており、垂直負荷を作用するという解体操作により接合力が低下する易剥離接着材料であっても良い。例えば、力学的破壊という解体因子を備えており、せん断負荷の作用という解体操作により接合力が低下する粘着材料であっても良い。
【0055】
また、例えば、生分解性の接着材料あるいは粘着材料を採用することも良い。自然界の中で分解する生分解性の接着材料等を利用すれば、ヨーク1Aの埋設後に接合力を次第に低下させることができる。さらに、生分解性の接着材料等であれば、ヨーク1Aの廃棄が容易になり、ヨーク1Aの廃棄に要するコストを低減できる。
【0056】
収容孔30(
図2参照。)にヨーク1Aを収容した後、アスファルト等や樹脂材料等の高分子材料を収容孔30に充填すれば、その高分子材料によってヨーク1Aの形状が保持され得る。そのため、経時的に接合層12の接合力が失われても、収容孔30にヨーク1Aが留まる限り、ヨーク1Aが複数の小片に分離することなく、一体の状態が保持され得る。
【0057】
なお、
図15のヨーク1Aを構成するシート片11の表面に、
図17のごとく、凹状の溝111を格子状に設けることも良い。このシート片11は、凹状の溝111が切れ目となって細分化され易くなっている。このシート片11を積層したヨークは、接合層12に加えて、各シート片11の溝111が切れ目となり、複数の小片に分離し易くなる。また、
図15のシート片11を積層するに当たっては、凹状の溝111以外の表面にのみ、あるいは凹状の溝111のみ、に接着材料等を塗布することも良い。この場合には、隣り合うシート片11間の接合面積を抑制でき、接合強度を低下させることができる。
【0058】
図18のごとく、シート片11の表面のうち、同図中、ドットハッチで示すX字状の領域113のみに接着材料等を塗布することも良い。この場合には、隣り合うシート片11間の接合面積を抑制することで、ヨーク1Aが複数の小片に分離し易くなる。
【0059】
(第4のヨーク)
図19のヨーク1Aは、第3のヨークと同様のシート片11の積層状態が、所定の方向に延在する円筒状のガイド部材115によって保持されたものである。第4のヨーク1Aは、第3のヨーク1Aと同様、シート片11の集合体である。ガイド部材115は、例えば、シート状の紙、アルミ箔などの金属箔、あるいは樹脂フィルムなどを円筒状に巻いたものである。ガイド部材115は、高強度のものよりも、破れ易いものが好ましい。ガイド部材115が破れる等、破断することで、ヨーク1Aが複数の小片に分離し易くなる。なお、ヨーク1Aにおいて隣り合う2片のシート片11は、接合力の弱い接着材料等を利用して相互に接合されていても良い。
【0060】
円筒状のガイド部材115は、シート片11が積層された柱状体の外周面に形成されたモールド層であっても良い。モールド層は、例えば、アスファルトや樹脂材料などの高分子材料よりなる層である。樹脂材料としては、例えば、ゴム、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、ナイロン66、ナイロン12等を例示できる。なお、シート片11は、
図17に例示するものであっても良い。ガイド部材115は、水や湿気等の水分や熱の作用により溶ける等、その形状が失われるものであっても良い。
【0061】
ガイド部材115の一例をなすモールド層は、
図20のごとく、軸方向に延在するものであれば良く、円筒状を呈することは必須ではない。同図のごとく、円柱状のヨーク1Aの外周面のうち周方向の複数箇所に、軸方向に延在する短冊状のモールド層116を設けることも良い。このようなモールド層116は、シート片11の積層状態を保持するのに有効である。
図20のモールド層116に代えて、紙、アルミ箔などの金属箔、樹脂フィルムなどの短冊状のテープを利用することも良い。モールド層あるいはテープは、強度の高いものよりも、破断し易いものが好適である。モールド層116は、水や湿気等の水分や熱の作用により溶ける等、その形状が失われるものであっても良い。
【0062】
なお、実施例2における無線タグ18の2次アンテナ19(
図7)を、ガイド部材として利用することも良い。この場合には、ヨーク1Aの外周面において、軸方向の全域に亘って2次アンテナ19の直線部191が形成されるようにすると良い。また、金属箔の2次アンテナの場合には、十分に薄くて破断し易く小片に分離可能というヨーク1Aの特徴を阻害しないものを採用するか、あるいはヨーク1Aの外周面から容易に剥がれるように構成すると良い。
【0063】
(第5のヨーク)
図21のヨーク1Aは、中心に小孔が設けられた円板状のシート片11が、所定の方向に延在する棒状のガイド部材117により保持されたものであり、シート片11の集合体である。シート片11は、中心の小孔を除いて上記の第3のヨークのシート片と同様である。棒状のガイド部材117は、例えば、紙や木材の棒のほか、高分子材料を棒状に固めたものであっても良い。
【0064】
ガイド部材117としての紙や木材の棒は、細かったり、軸方向の複数箇所に切れ目が設けられているなど、折れ易いものが良い。高分子材料よりなる棒としては、アスファルトが固まった棒であっても良く、ゴム、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、ナイロン66、ナイロン12等の樹脂材料よりなる棒であっても良い。折れ易い材料や、太さを選定すると良い。ガイド部材117は、水や湿気等の水分や熱の作用により溶ける等、その形状が失われるものであっても良い。軟磁性材料よりなる棒をガイド部材117として採用することも良い。
【0065】
(第6のヨーク)
図22のヨーク1Aは、断面扇形状の柱状のヨーク片13を、円柱状をなすように複数、組み合わせたものである。第6のヨーク1Aは、柱状のヨーク片13の集合体である。ヨーク片13同士は、例えば、第3のヨークの接着材料等を利用して接合しても良いし、帯状のベルトやひも等を用いて結束しても良い。あるいは第4のヨークで例示した筒状のガイド部材を用いても良い。ベルトは、紙、金属箔、樹脂フィルムを環状に巻いたものであっても良く、高分子材料よりなるモールド層であっても良い。ひもは、紙、金属、天然繊維、化学繊維であっても良く、高分子材料を外周面に印刷して形成された紐状のものであっても良い。
【0066】
例えば、ごく薄い鉄製のベルトやひもであれば、道路に配設された後の酸化等の経年変化により、結束する機能を失わせることができる。ベルトやひもによる結束機能が失われた場合であっても、収容孔30に収容され、外周にアスファルト等が充填された状態であれば、ヨーク1Aの柱状が保持され得る。なお、ベルトやひもやガイド部材等、断面扇形状の柱状のヨーク片13を結束する部材は、水や湿気等の水分や熱等の作用により溶ける等、その形状が失われるものであっても良い。
【0067】
さらに、
図23のごとく、
図22のヨーク片13と同様の形状の柱状体を、軸方向に複数に分割したヨーク片131を採用しても良い。このヨーク片131は、ピザの一片のような扇形状の薄いシート片であっても良い。扇形状の薄いシート片を積層することにより断面扇形状の柱状体を形成できる。
図23のヨーク1Aは、この柱状体を組み合わせたものである。
【0068】
断面扇形状の柱状体を形成するに当たって接着材料等を利用する一方、この柱状体を組み合わせてヨーク1Aとするに当たっては、ベルトやひもや円筒状のガイド部材で結束することも良く、接着材料等を利用して柱状体同士を接合しても良い。あるいは、柱状体を形成するに当たって、第4のヨークのようなモールド層やテープを利用する一方、柱状体の組合せに当たって、接着材料等を利用して柱状体同士を接合しても良く、ベルトやひもや円筒状のガイド部材で結束することも良い。
【0069】
(第7のヨーク)
図24のヨーク1Aは、直径1mm程度の粒状の磁性部品である磁性粒118(磁性部品の一例)が成形材料中に分散配置された略円柱状の成形品である。ヨーク1Aは、複数の磁性粒118の集合体である。成形材料を連結材料として隣り合う磁性粒118が相互に連結されて、複数の磁性粒118が全体として柱状をなしている。なお、
図24は、柱状のヨーク1Aの中心軸を含む断面を示す斜視図である。
【0070】
磁性粒118は、軟磁性材料である酸化鉄(ソフトフェライト)の磁粉を基材である高分子材料中に分散させた磁性部品である。高分子材料は、例えばナイロン12である。高分子材料としては、ナイロン12のほか、例えば、ゴム、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、ナイロン66等を採用することも良い。
【0071】
磁性粒118は、磁性材料が酸化鉄であるため腐食に強い。それ故、この磁性粒118の集合体である第7のヨーク1Aは、腐食による磁力低下のおそれが少なく、路面3Sに設けた収容孔30に直接、収容可能である。
【0072】
第7のヨーク1Aをなす成形材料は、樹脂材料の一例であるポリスチレンである。ヨーク1Aは、例えば、ポリスチレンと炭化水素系の発泡剤からなる原料ビーズを1次発泡させた材料中に粒状の磁性粒118を混合し、図示しない金型に充填して柱状に成形することで作製できる。本例のヨーク1Aでは、多孔性の発泡体の一例をなす発泡スチロール(発泡プラスチック、発泡樹脂)が、磁性粒118の間隙をなす領域100に満たされている。つまり、ヨーク1Aでは、発泡スチロールを連結材料として、隣り合う粒状の磁性粒118が連結された状態にある。連結材料としての発泡スチロールは、磁性粒118よりも低脆性である。ヨーク1Aに対して過大な外力が作用したとき、磁性粒118が破断、破壊等するよりも前に、連結材料である発泡スチロールが破断し、これにより、ヨーク1Aが複数の小片に分離し分解し得る。
【0073】
なお、本例では、直径1mmの粒状の磁性粒118が分散配置されたヨーク1Aを例示している。粒状の磁性粒118の大きさは、0.2mm以上3.0mm以下とすると良い。磁性粒118として、直径1mmの球体状の磁性部品を例示したが、直方体形状や立方体形状の粒状であっても良いし、例えば金平糖のように複数の突起を有する粒状であっても良い。磁性粒118の大きさは様々であっても良い。さらに、磁性粒118は、粉状であっても良く、不定形の小片状であっても良い。
【0074】
第7のヨーク1Aをなす成形材料は、本例のポリスチレンに代えて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの樹脂材料を採用することも良い。第7のヨーク1Aでは、これらの樹脂材料よりなる発泡樹脂(発泡体)中に、磁性粒118が分散配置されていれば良い。例えば、磁性粒118が予め充填された金型内に、ポリウレタン原液を流し込み、発泡させることも良い。これにより、発泡体の一例をなすポリウレタンフォーム中に磁性粒118が分散するヨークを得ることができる。なお、発泡体をなす樹脂材料として、分解性の材料を採用することも良い。
【0075】
(第8のヨーク)
図25の第8のヨーク1Aは、第7のヨーク1A(
図24)と同様、直径1mmの粒状の磁性粒118を含んでいる。このヨーク1Aでは、粒状の磁性粒118同士が外接する箇所で相互に接着され、全体として柱状の外形状が実現されている。なお、
図25中の破線が、略円柱状の外形状を示している。
【0076】
磁性粒118を相互に接合する接着材料として、本例では、高分子材料であるアスファルトを採用している。ヨーク1Aにおける接着材料は、隣り合う磁性粒118の間隙に所在し、隣り合う磁性粒118を連結する連結材料の一例となっている。接着材料としてのアスファルトは、球体状をなす粒状の磁性粒118の外周面を覆うように配置されている一方、隣接する磁性粒118の間隙には満たされていない。これにより、隣接して隣り合う磁性粒118の間隙に、孔108を含む領域100が形成されている。
【0077】
ここで、第8のヨーク1Aの作製方法の一例を示す。アスファルトよりなるコーティング層118Cを外周面に設けた直径1mmの略球状の磁性粒118(
図26)を、直径30mm、深さ20mmの空間を有する図示しない型内に充填した後、加熱してアスファルトを軟化させる。型内の磁性粒118は、相互に外接する箇所において軟化アスファルトにより接着されて接合され、これにより直径30mm、高さ20mmの柱状をなすように連結される。
【0078】
第8のヨーク1Aでは、略球状の磁性粒118が相互に外接する一方、隣り合う磁性粒118の間に隙間が生じて孔108が形成されている。第8のヨーク1Aでは、隣り合う磁性粒118が互いに接触して接着されている面積が少ない。そのため、ヨーク1Aは破断し易く、小片に分離し易くなっている。
【0079】
アスファルトは、路面の舗装材料でもある。路面の舗装では、隣接する骨材の間隙がアスファルトによって満たされている。一方、本例の磁気マーカ1は、骨材に替わる粒状の磁性粒118の間隙にアスファルトが満たされておらず孔108が形成された状態にある。それ故、磁気マーカ1は、アスファルトよりなる舗装よりも破壊強度が低くなっている。
【0080】
磁性粒118として、基材をなすアスファルト中に磁粉を分散させた磁性部品を採用しても良い。この場合には、磁性粒118を加熱することで、磁性粒118の外周を軟化させることができ、これにより隣り合う磁性粒118同士を接着できる。
【0081】
有底筒状のガイド部材119(
図27)を用意し、ガイド部材119の内部に、粒状の磁性粒118を充填し、その後、加熱することも良い。加熱により磁性粒118が相互に接着された後、ガイド部材119を取り外しても良いし、そのまま、ヨーク1Aの一部としても良い。
【0082】
第8のヨーク1Aでは、磁性粒118同士を接着させるための接着材料としてアスファルトを例示している。接着材料は、アスファルトに限定されない。ゴム、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、ナイロン66、ナイロン12等を採用することも良い。
【0083】
(第9のヨーク)
第9のヨーク1A(
図28)は、第7のヨーク1A(
図24)に基づき、経時変化によって分解する分解性材料を、成形材料として採用した例である。第9のヨーク1Aでは、磁性粒118の間隙をなす領域100が分解性の材料によって満たされている。領域100は、分解性の材料が経時変化により分解して孔や亀裂が形成され得る領域となっている。当然に、領域100の成形材料が分解して孔や亀裂が生じれば、ヨーク1A自体の破壊強度が低下する。
【0084】
経時変化によって分解する分解性の材料としては、例えば、熱、光、水のうちの少なくともいずれかの作用により分解する高分子材料や、自然界において微生物の関与により低分子化合物に分解される生分解性材料、などがある。
【0085】
さらに、第9のヨーク1Aの成形材料として、当初は強度が高い一方、経時変化等により、強度が次第に低下する接着材料や粘着材料等を採用することも良い。ここで、接着材料は、使用前は液体で、経時変化により個体となる狭義の接着材料である。粘着材料は、液体と固体の両方の性質を有し、半固形で粘性を持つ粘着材料である。広義の接着材料の概念に、狭義の接着材料および粘着材料が含まれると考えることもできる。
【0086】
接着材料あるいは粘着材料としては、例えば、接合直後には比較的強度が高い一方、経時変化により、接合強度が次第に低下する接着材料等を採用することも良い。また、例えば、何らかの解体因子を有し、解体因子を活性化させる解体操作により接合力が低下したり剥離する特性を有する解体性接着材料あるいは解体性粘着材料を採用することも良い。領域100の接着材料等の接合力等が低下すれば、隣り合う磁性粒118間の結合が弱くなり亀裂等が生じ易くなる。
【0087】
例えば、粘着界面でのガス発生という解体因子を備えており、紫外線照射という解体操作により接合力を喪失する粘着材料であっても良い。この粘着材料は、例えば、半導体プロセスにおいてダイシングテープと呼ばれる紫外線剥離テープの粘着材料として利用される。例えば、吸水性樹脂の膨張という解体因子を備え、水浸漬といった解体操作により接合力が低下する吸水性樹脂混入接着材料であっても良い。例えば、マイクロカプセルの膨張という解体因子を備え、加熱によって接合力が低下する熱膨張性マイクロカプセル混入粘着材料であっても良い。例えば、軟化・溶融という解体因子を備えており、加熱という解体操作によって接合力が低下する熱硬化・熱可塑性接着材料であっても良い。例えば、粘着材料の脆性化という解体因子を備えており、加熱、紫外性照射によって脆性化し接合力が低下する粘着材料であっても良い。例えば、加水分解という解体因子を備えており、水分の供給という解体操作により接合力が低下する加水分解性の接着材料あるいは粘着材料であっても良い。接着材料の吸湿及び軟化・溶融という解体因子を備えており、温水浸漬によって接合力が低下する吸湿剥離接着材料であっても良い。例えば、軟化・溶融という解体因子を備えており、電磁誘導加熱によって接合力が低下する電磁誘導・熱可塑性接着材料であっても良い。例えば、力学的破壊という解体因子を備えており、垂直負荷を作用するという解体操作により接合力が低下する易剥離接着材料であっても良い。例えば、力学的破壊という解体因子を備えており、せん断負荷の作用という解体操作により接合力が低下する粘着材料であっても良い。
【0088】
また、例えば、生分解性の材料を、ヨークの成形材料として採用することも良い。さらに、生分解性の接着材料あるいは粘着材料を採用することも良い。自然界の中で分解する生分解性の接着材料等を利用すれば、ヨークの埋設後に接合力を次第に低下させることができる。さらに、生分解性の接着材料等であれば、ヨークの廃棄が容易になり、ヨークの廃棄に要するコストを低減できる。
【0089】
(第10のヨーク)
第10のヨーク1A(
図29)は、断面扇形状の柱状の複数の磁性領域15に区分されるよう、径方向のスリット151を設けた磁気マーカである。スリット151は、径方向及び軸方向により規定される平面に沿うように形成され、径方向におけるヨーク1Aの中心部1Cを避けて形成されている。それ故、断面扇形状の複数の磁性領域15は、パイナップルの芯のような中心部1Cを介して相互に連結されている。
【0090】
このヨーク1Aでは、断面扇形状の磁性領域15が中心部1Cに接続されているのみであり、周方向において隣り合う磁性領域15はスリット151を介して隣り合っており、相互に接続されていない。すなわち、
図29のヨーク1Aでは、スリット151の存在により、径方向の断面積が周方向において急変する箇所があり、この箇所において応力が集中する。
【0091】
なお、磁性領域15をなす磁性片を、前記のヨーク1Aの中心部1Cに相当する棒状のガイド部材に対して接合して、
図29のヨーク1Aと同様のヨークを形成することも良い。
スリット151には、軟磁性材料を充填することも良い。軟磁性材料の態様は、ヨーク1Aをなす磁性片よりも強度が低く、破断し易い態様であると良い。軟磁性材料に代えて、樹脂材料などの高分子材料を充填しても良い。スリット151が開口する外周面に、樹脂材料によるコーティングを設けることも良い。
【0092】
さらに、
図30のごとく、
図29の磁性領域15と同様の形状の領域を複数のスリット152により輪切りし、複数の磁性領域155に分割することも良い。柱状のヨーク1A全体では、スリット152が中心部1Cを残して円環状をなしている。ピザの一片のような扇形状をなす磁性領域155は、中心部1Cにより保持されている。
【0093】
上記の第1~第10のヨーク1Aのうち、第1、第2及び第10のヨーク1Aは、外部から作用する力に応じた応力の均一性が損なわれて応力が集中する箇所が生じる形状を有する柱状の磁性部品である。応力が集中する箇所が生じるヨーク1Aは、外力が作用したときの応力の均一性が高いヨークとの比較において、応力が過大になり易く、破断し易い。このようなヨーク1Aであれば、舗装が傷んでポットホールが生じたとき、ポットホールの拡がりに応じて応力集中が生じて破断し易く、一部を分離できる可能性がある。それ故、ポットホールが近くで生じた場合であっても、磁気マーカ1の一部が道路側に残存できる可能性が高くなっており、磁気マーカ1の磁気的な機能をある程度、維持できる可能性がある。
【0094】
第1のヨーク1Aでは、軸方向に直交する断面面積がスリット101の存在により急激に減少する箇所に、応力が集中する箇所が形成されている。第2のヨーク1Aでは、孔102、103の存在により、軸方向に直交する断面積あるいは径方向の断面積が急激に減少する箇所が形成され、これらの箇所で応力が集中する。
【0095】
上記の第1~第10のヨーク1Aのうち、第3~第9のヨーク1Aは、複数の磁性部品の集合体であって、複数の磁性部品が柱状をなすように連結されて形成されている。これらのヨーク1Aでは、隣り合う磁性部品(シート片11や磁性粒118など。)の連結強度が、磁性部品自体の強度よりも抑制されている。それ故、これらのヨーク1Aでは、隣り合う磁性部品の連結が破断されて、小片に分離し易くなっている。
【0096】
以上のように、本例のヨーク1Aは、複数の小片に分離可能な構造を有する磁性部品である。このヨーク1Aであれば、舗装が傷んでポットホールが生じたとき、ポットホールの拡がりに応じて一部を分離可能である。それ故、ポットホールが近くで生じた場合であっても、ヨーク1Aの一部が道路側に残存できる可能性が高くなっており、マーカ本体の磁気を誘導するというヨーク1Aの磁気的な機能をある程度、維持できる可能性がある。
【0097】
また、舗装の表層3A(例えば
図2参照。)をなす粗骨材331が、例えば、粒径2.5~5mmである一方、ヨーク1Aの大きさは直径30mm高さ20mmである。仮にヨークが一体的であると、ポットホールが生じたとき、粗骨材331よりも大きなサイズのヨークが路面に転がり出る可能性がある。一方、複数の小片に分離可能な構造を有する本例のヨーク1Aであれば、一体のままで路面に転がり出るおそれが少ない。このヨーク1Aは、複数の小片に分離可能であるため、粗骨材331とサイズ的に同等、あるいはサイズ的により小さな小片となって路面に転がり出るのみである。
【0098】
本例では、断面円形状の柱状のヨークを例示している。断面形状は、円形状に限定されない。三角形状、四角形状、五角形状等の断面形状を有する柱状の磁気マーカであっても良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0099】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0100】
1 磁気マーカ
1A ヨーク
1B マーカ本体
101 スリット(溝、隙間)
102 横孔(孔、隙間)
103 縦孔(孔、隙間)
11 シート片(磁性部品)
115 ガイド部材
116 モールド層(ガイド部材)
117 ガイド部材
118 磁性粒(磁性部品)
12 接合層
18 無線タグ
180 溝
181 タグガード
19 2次アンテナ
3 道路
3S 路面
30 収容孔
331 粗骨材
332 細骨材