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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142497
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】導電接続部品および導電接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/516 20210101AFI20230928BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20230928BHJP
   H01M 50/526 20210101ALI20230928BHJP
   B23K 20/04 20060101ALI20230928BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230928BHJP
【FI】
H01M50/516
H01M50/522
H01M50/526
B23K20/04 C
B23K20/04 D
B23K26/21 G
B23K26/21 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049445
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 茂男
(72)【発明者】
【氏名】織田 喜光
(72)【発明者】
【氏名】横山 紳一郎
【テーマコード(参考)】
4E167
4E168
5H043
【Fターム(参考)】
4E167BC12
4E167DB11
4E167DC02
4E168BA02
4E168BA29
4E168BA86
4E168BA87
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168DA29
5H043AA01
5H043BA19
5H043FA04
5H043HA17F
5H043JA22F
5H043KA06F
5H043KA09F
5H043LA00F
5H043LA02F
5H043LA11F
(57)【要約】
【課題】異材質の正極側接合部とバスバー側接合部との溶接用ワイヤーを用いないより一般的なレーザー溶接で、適切な融接部の形成が可能な導電接続部品、および、好適な接続強度を有する導電接続構造を提供する。
【解決手段】Fe層とAl層のクラッド材で構成され、電池の正極側のFe系接合部にレーザー溶接可能な第1接合領域と、バスバーのAl系接合部に接合可能な第2接合領域と、レーザー受光領域と、を有し、第1接合領域はFe層の表面に設けられ、第2接合領域はAl層の表面に設けられ、レーザー受光領域は、厚さ方向の第1接合領域と反対側の表面に設けられ、第1接合領域が設けられた部分のFe層の厚さをTsとし、レーザー受光領域が設けられた部分のAl層の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たす導電接続部品とし、これを用いて引張破断荷重が600N以上の導電接続構造を得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FeまたはFe合金から成るFe層とAlまたはAl合金から成るAl層とが圧延接合されて成るクラッド材により構成され、電池の正極側に設けられるFeまたはFe合金から成る正極側接合部に対してレーザー溶接が可能な第1接合領域と、バスバー側に設けられるAlまたはAl合金から成るバスバー側接合部に対して接合が可能な第2接合領域と、レーザー光の受光が可能なレーザー受光領域と、を有し、
前記第1接合領域は前記Fe層の圧延方向に沿う表面に設けられ、前記第2接合領域は前記Al層の圧延方向に沿う表面に設けられ、前記レーザー受光領域は、前記クラッド材の厚さ方向の前記第1接合領域とは反対側の表面に設けられ、
前記第1接合領域が設けられた部分の前記Fe層の厚さをTsとし、前記レーザー受光領域が設けられた部分の前記Al層の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たす、導電接続部品。
【請求項2】
FeまたはFe合金から成るFe層とAlまたはAl合金から成るAl層とが圧延接合されて成るクラッド材により構成された導電接続部品を介して、電池の正極側に設けられるFeまたはFe合金から成る正極側接合部と、バスバー側に設けられるAlまたはAl合金から成るバスバー側接合部とが、接続されて構成された導電接続構造であって、
前記導電接続部品と前記正極側接合部とを接続する第1接合部と、前記導電接続部品と前記バスバー側接合部とを接続する第2接合部と、前記導電接続部品の厚さ方向の前記第1接合部とは反対側の表面にある融接痕と、を有し、
前記第1接合部がある部分の前記Fe層の厚さをTsとし、前記融接痕がある部分の前記Al層の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たし、前記導電接続部品の厚さ方向における前記正極側と前記導電接続部品との間の引張破断荷重が600N以上である、導電接続構造。
【請求項3】
前記導電接続部品の厚さ方向における前記正極側と前記導電接続部品との間の引張破断応力が250MPa以上である、請求項2に記載の導電接続構造。
【請求項4】
前記正極側接合部に対する前記第1接合部の溶け込み深さをDpとするとき、Dp≧0.18mmを満たし、
前記正極側接合部に対する前記第1接合部の溶け込み断面積をStとするとき、St≧1.2mmを満たす、請求項2または3に記載の導電接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池などの電気的接続に用いられる、導電接続部品および導電接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリシステムでは、複数の電池セルの電気的接続に、導電金属から成るバスバーが用いられている。バスバーは、電池セルの導電金属から成る正極側接合部または負極側接合部に対して、溶接用ワイヤーを用いたレーザー溶接や溶接用ワイヤーを用いないレーザー溶接などの接合手段で接続される。溶接用ワイヤーを用いないより一般的なレーザー溶接の場合、たとえば、正極側接合部(または負極側接合部)に対してバスバー側接合部を接触させて、そのバスバー側接合部とは反対側(バスバーの外表面側)からバスバーの外表面にレーザー光を照射する。これにより、バスバーの外表面からバスバー側接合部までと、このバスバー側接合部に接触する正極側接合部(または負極側接合部)の表面から正極側接合部(または負極側接合部)の所望の深さまでの両方を部分的に溶融・凝固させて融接部を形成し、導電接続構造を構成する。
【0003】
ところで、正極側接合部(または負極側接合部)を構成する導電金属とバスバー側接合部を構成する導電金属とが、材質的に異なる場合がある。この場合、互いが異質の導電金属から成る接合部であることに起因して、互いの接触部に形成された上記融接部に脆弱な金属間化合物が過度に存在し、接続強度が不十分な導電接続構造になるおそれがある。このような異材質のレーザー溶接では、接合すべき異質の導電金属から成る2つの接合部の間に、クラッド材で構成された導電接続部品を介在させる手段が知られている。
【0004】
たとえば、AlまたはAl合金から成るAl接合部と、FeまたはFe合金から成るFe接合部との異材質の接合では、Al接合部と同質のAl層と、Fe接合部と同質のFe層とから成る2層構造のクラッドインサート(導電接続部品)を介在させる。このクラッドインサートにより、異材質の接合構造を同材質の接合構造に置き換えることができる。レーザー溶接ではないが、一例として、特許文献1が開示するクラッドインサートが知られている。特許文献1が開示するクラッドインサートは、鋼層とAl層とから成る特定の板厚構成を有するものであり、鋼板(Fe接合部)とAl板(Al接合部)との抵抗溶接に際して用いられる。このクラッドインサートの板厚構成は、鋼層の厚さをT(mm)、Al層の厚さをT(mm)、鋼層の比抵抗をR(μΩ・cm)とするとき、T>(30/R)×T-0.3を満たす。これにより、抵抗溶接の適切な溶接条件の範囲が広がって、適切かつ安定なナゲット(融接部)の形成が可能になるため、高い接続強度(継手強度)を有する導電接続構造を得ることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-155964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示するクラッドインサートは、レーザー溶接ではなく、鋼板(Fe接合部)とAl板(Al接合部)との抵抗溶接に用いられる。抵抗溶接は、少なくとも2つの被溶接金属材を重ね合わせ、溶接個所を電極で挟み込み、適切な圧力を加えながら適切な電流を流し、溶接個所の接触抵抗に起因するジュール熱で被溶接金属材を溶融・凝固させて接合する溶接方法である。ところが、近年、上記バッテリシステムの小型化や省スペース化が一層重視されるようになり、正極側接合部(Fe接合部)とバスバー側接合部(Al接合部)とを電極で挟み込めない導電接続構造が益々増えている。そのため、正極側接合部とバスバー側接合部とのレーザー溶接による接続部(継手)の信頼性向上が急務である。さらに、より一般的な溶接用ワイヤーを用いないレーザー溶接で、溶接時間短縮や生産性向上を可能にすることも強く求められている。しかし、一般的なレーザー溶接に特許文献1が開示する抵抗溶接に特化したクラッドインサートの板厚構成を採用したとしても、好ましい接続強度(継手強度)を有する導電接続構造が得られないおそれがある。
【0007】
この発明の目的は、異材質の正極側接合部とバスバー側接合部との溶接用ワイヤーを用いないより一般的なレーザー溶接において、適切な融接部の形成を可能にするFe層とAl層を有する導電接続部品(クラッドインサート)を提供し、その導電接続部品を用いた好ましい接続強度を有する導電接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明者は、Fe層とAl層とが圧延接合されて成るクラッドインサートにおいて、正極側接合部に対する第1接合領域とバスバー側接合部に対する第2接合領域とレーザー受光領域の配置を特定するとともに、第1接合領域の配置部分のFe層の厚さとレーザー受光領域の配置部分のAl層の厚さの関係を特定することによって、上記課題が解決できることを見出し、この発明に想到した。
【0009】
すなわち、この発明に係る導電接続部品は、FeまたはFe合金から成るFe層とAlまたはAl合金から成るAl層とが圧延接合されて成るクラッド材により構成され、電池の正極側に設けられるFeまたはFe合金から成る正極側接合部に対してレーザー溶接が可能な第1接合領域と、バスバー側に設けられるAlまたはAl合金から成るバスバー側接合部に対して接合が可能な第2接合領域と、レーザー光の受光が可能なレーザー受光領域と、を有し、前記第1接合領域は前記Fe層の圧延方向に沿う表面に設けられ、前記第2接合領域は前記Al層の圧延方向に沿う表面に設けられ、前記レーザー受光領域は、前記クラッド材の厚さ方向の前記第1接合領域とは反対側の表面に設けられ、前記第1接合領域が設けられた部分の前記Fe層の厚さをTsとし、前記レーザー受光領域が設けられた部分の前記Al層の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たす。この導電接続部品により、好ましい接続強度(継手強度)を有する導電接続構造を得ることができる。
【0010】
この発明に係る導電接続部品を用いることにより、好ましい接続強度(継手強度)を有する導電接続構造を得ることができる。すなわち、この発明に係る導電接続構造は、FeまたはFe合金から成るFe層とAlまたはAl合金から成るAl層とが圧延接合されて成るクラッド材により構成された導電接続部品を介して、電池の正極側に設けられるFeまたはFe合金から成る正極側接合部と、バスバー側に設けられるAlまたはAl合金から成るバスバー側接合部とが、接続されて構成された導電接続構造であって、前記導電接続部品と前記正極側接合部とを接続する第1接合部と、前記導電接続部品と前記バスバー側接合部とを接続する第2接合部と、前記導電接続部品の厚さ方向の前記第1接合部とは反対側の表面にある融接痕と、を有し、前記第1接合部がある部分の前記Fe層の厚さをTsとし、前記融接痕がある部分の前記Al層の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たし、前記導電接続部品の厚さ方向における前記正極側と前記導電接続部品との間の引張破断荷重が600N以上(好ましくは650N以上)である。
【0011】
また、この発明に係る導電接続構造は、好ましくは、前記導電接続部品の厚さ方向における前記正極側と前記導電接続部品との間の引張破断応力が250MPa以上(好ましくは280MPa以上、より好ましくは300MPa以上)である。
【0012】
また、この発明に係る導電接続構造は、好ましくは、前記正極側接合部に対する前記第1接合部の溶け込み深さをDpとするとき、Dp≧0.18mm(好ましくはDp≧0.20mm)を満たし、前記正極側接合部に対する前記第1接合部の溶け込み断面積をStとするとき、St≧1.2mm(好ましくはSt≧1.3mm)を満たす。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、異材質の正極側接合部とバスバー側接合部との溶接用ワイヤーを用いないより一般的なレーザー溶接において、適切な融接部の形成を可能にするFe層とAl層を有する導電接続部品(クラッドインサート)の提供、および、その導電接続部品を用いた好ましい接続強度(継手強度)を有する導電接続構造の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明に係る導電接続構造の一実施形態となる構成を示す図である。
図2】この発明に係る導電接続部品の一実施形態となる構成であって、図1に示す導電接続構造に組み込まれる前の導電接続部品の構成を示す図である。
図3図1に示す第1接合部4付近の厚さ方向に沿う切断面を示す図である。
図4】この発明に係る導電接続部品の一実施形態となる構成を示す図である。
図5】この発明に係る導電接続部品の一実施形態となる構成を示す図である。
図6】この発明に係る導電接続部品の一実施形態となる構成を示す図である。
図7】この発明に係る導電接続部品の一実施形態となる構成を示す図である。
図8】この発明に係る導電接続部品の一実施形態となる構成を示す図である。
図9】この発明に係る導電接続構造の実施形態を模した継手構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に係る導電接続部品および導電接続構造について、適宜図面を参照して、説明する。なお、この発明に係る導電接続部品および導電接続構造の実施形態は、図面を参照して説明した構成例に限定されない。この発明に係る導電接続部品および導電接続構造の実施形態には、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形例が含まれると解することが相当である。
【0016】
まず、この発明に係る導電接続構造の一実施形態となる構成を挙げる。図1に示す導電接続構造1は、この発明に係る導電接続構造の一実施形態である。図1に示す導電接続構造は、電池(電池セル2)の正極側に構成されている。この導電接続構造1は、電池セル2の正極端子2bと、バスバー3と、導電接続部品10(クラッドインサート)とにより構成されている。この電池セル2は、たとえば、バッテリシステムの複数の電池セルの1つであってよい。
【0017】
一般的な電池(電池セル)の場合、正極側には正極端子が設けられ、負極側には負極端子が設けられる。図1に示す電池セル2の正極端子2bにも、他の電池(電池セル)等と接合するための正極側接合部2aが設けられている。図1に示す電池セル2の正極端子2bの場合、正極側接合部2aは正極端子2bの上側(Z1側)の表面部分に設けられている。この正極側接合部2aは、FeまたはFe合金から成る。近年、リチウムイオン二次電池の高容量正極の実現に向けてステンレス鋼の優れた耐アルカリ性を活かした正極集電体が指向されていることから、同質のステンレス鋼から成る正極側接合部2a(正極端子2b)への対応が求められている。
【0018】
この発明において、Feという表記はC(炭素)が0.02質量%以下の純鉄または元素記号を意図し、Fe合金という表記はFeが基となる合金を意図する。FeまたはFe合金を具体的に挙げるとすれば、たとえば、電解鉄、アームコ鉄、カーボニル鉄および還元鉄などの純鉄、JIS規格のSUYシリーズおよびAシリーズなどの電磁軟鉄、並びに、フェライト系(JIS規格のSUS430他)やオーステナイト系(JIS規格のSUS304やSUS316L他)などの各種のステンレス鋼、JIS規格の絞り用のSPCD、深絞り用のSPCE、SPCFおよびSPCGなどの冷間圧延鋼板などである。
【0019】
図1に示すバスバー3は、電池セル2の正極端子2bに設けられた正極側接合部2aの上方(Z1側)に配置されている。このバスバー3の下部分(Z2側の部分)には、バスバー側接合部3aが設けられている。このバスバー側接合部3aは、AlまたはAl合金から成る。近年、FeまたはFe合金、NiまたはNi合金、CuまたはCu合金などの比較的高強度な材料から成るバスバーが、車載用バッテリシステムや携帯機器用電池の軽量化が可能なAlまたはAl合金から成るバスバーに替わりつつあり、その対応が求められている。
【0020】
この発明において、Alという表記はアルミニウム(Al)が99.5質量%以上の純アルミニウムまたは元素記号を意図し、Al合金という表記はAlが基となる合金を意図する。AlまたはAl合金を具体的に挙げるとすれば、たとえば、JIS-H4000:2014に規定される、A1050およびA1100などの導電性に優れるA1000シリーズ(純アルミニウム)、純アルミニウムよりも高強度であるA3003などのA3000シリーズ(Al-Mn系)、純アルミニウムよりも熱膨張率が小さいA4032およびA4043などのA4000シリーズ(Al-Si系)、および、より高強度であるA5052などのA5000シリーズ(Al-Mg系)などがある。
【0021】
図1に示す導電接続部品10は、電池セル2の正極側接合部2aとバスバー側接合部3aとの間に配置されている。この導電接続部品10は、図2に示すように、FeまたはFe合金から成るFe層11と、AlまたはAl合金から成るAl層12とが、圧延接合されて成るクラッド材により構成されている。図2に示す導電接続部品10は、図1に示す導電接続構造1に組み込まれる前の導電接続部品10である。この導電接続部品10のFe層11は、正極側接合部2aを構成する導電金属と同等または略同等の材質である。この導電接続部品10のAl層12は、バスバー側接合部3aを構成する導電金属と同等または略同等の材質である。
【0022】
なお、図2に示す導電接続部品10は、その側面側(以下、X1側とする。)からの側面視であり、その輪郭は長方形である。しかし、この発明に係る導電接続部品の側面視の輪郭は長方形に限られず、必要に応じて凹凸がある異形の輪郭に設計することができる。この点は、別の構成例を挙げて後述する。また、図2に示す導電接続部品10は、図示は略すが、そのZ1側からの平面視において、その輪郭は円形である。しかし、この発明に係る導電接続部品の平面視の輪郭は円形に限られず、必要に応じて楕円形や四角形や凹凸がある異形の輪郭に設計することができる。
【0023】
ここで、この発明に係る導電接続部品の製造方法について説明する。この発明に係る導電接続部品は、従来の異種金属の圧延接合プロセスによりFe層とAl層とが圧延接合されて成るクラッド材を製造し、そのクラッド材から所望の形状に加工成形することにより製造することができる。具体的には、少なくとも、FeまたはFe合金から成るFe板とAlまたはAl合金から成るAl板とを積層した状態で圧延接合するクラッド圧延プロセスと、クラッド圧延プロセス後のクラッド材を加熱保持して適度な金属拡散を生じさせる拡散焼鈍プロセスとを含む、異種金属の圧延接合プロセスにより、Fe層とAl層とが圧延接合されて成るクラッド材を製造することができる。
【0024】
次いで、そのクラッド材を素材とし、必要に応じて、ワイヤーカット加工、プレス機などによる打抜き加工や成形加工、エンドミルや旋盤や研削盤などによる切削加工や研削加工、レーザートリミング加工、エッチング加工およびピーリング加工などの加工手段を選択し、そのクラッド材から所望の形状に加工成形することにより、導電接続部品を製造することができる。
【0025】
上記した異種金属の圧延接合プロセスには、圧延接合前の軟化焼鈍や中間圧延、圧延接合後の軟化焼鈍や中間圧延、目的製品の厚み、幅、表面性状および各種特性を得るための仕上げ圧延、スキンパス圧延、応力除去を目的とする焼鈍、表面処理、条取り加工などの製造工程が含まれ、必要に応じて、幾つかの製造工程を選択することができる。
【0026】
図1に示す導電接続構造1は、導電接続部品10と正極側接合部2aとを接続する第1接合部4を有する。図1に示す第1接合部4は、ビードが奇麗で高速かつ低歪みの溶接が可能なレーザー溶接による細長い融接部(正極側融接部)である。このレーザー溶接に用いるレーザー光については、レーザー光の種類(CO2、YAG、半導体、ディスク、ファイバーなど)やレーザー光の媒質(気体、固体)は、必要に応じて選択することができる。第1接合部4を形成するためのレーザー溶接は、好ましくは、熱伝導溶接よりも溶け込みが深い細長い形状の高品位な融接部を、高精度でより安定に形成可能なキーホール溶接である。
【0027】
図1に示す導電接続構造1において、第1接合部4は、導電接続部品10の外縁側の領域に、環状に、連続的または不連続的に配置されている。この導電接続部品10の外縁側の領域は、導電接続部品10の第1接合領域10a(図2参照)またはその内側の領域に対応する。なお、レーザー溶接で形成されたビードが表面に連続している形態を連続的な配置と呼び、そのビードが表面に連続していない形態(たとえば、略点状、略点線状、略破線状などの形態)を不連続的な配置と呼ぶ。
【0028】
上記のように、第1接合部4を導電接続部品10の外縁側の領域に配置することで、バスバー3に対する導電接続部品10のレーザー溶接などによる接続が先行する場合でも、正極側接合部2aに対する導電接続部品10のレーザー溶接による接続を容易に行うことができる。また、正極側接合部2aに対する導電接続部品10のレーザー溶接による接続が先行する場合は、第1接合部4を導電接続部品10のバスバー側接合領域10b(図2参照)以外の領域に配置することで、バスバー3に対する導電接続部品10のレーザー溶接などによる接続を容易に行うことができる。
【0029】
図1に示す導電接続構造1は、導電接続部品10とバスバー側接合部3aとを接続する第2接合部5を有する。図1に示す第2接合部5は、第1接合部4と同様、好ましくは、レーザー溶接による融接部(バスバー側融接部)である。なお、第2接合部5は、必要に応じて、レーザー溶接以外の他の接続手段によるものであってよい。たとえば、超音波溶接、摩擦拡散接合、ワイヤボンディングおよびボルト締めなどの他の接続手段によるものであってよい。
【0030】
図1に示す導電接続構造1において、第2接合部5は、導電接続部品10の中央側の領域に、すなわち第1接合部4の内側に、連続的または不連続的に、配置されている。この導電接続部品10の中央側の領域は、導電接続部品10の第2接合領域10b(図2参照)に対応する。なお、第2接合部5を設ける位置の設定は、第1接合部4を設ける位置を設定した後に行えばよい。なお、レーザー溶接の融接部などの接続部分が表面に連続している形態を連続的な配置と呼び、その接続部分が表面に連続していない形態(たとえば、略点状、略点線状、略破線状などの形態)を不連続的な配置と呼ぶ。
【0031】
図1に示す導電接続構造1は、導電接続部品10の上側(Z1側)の表面部分に融接痕6を有する。この融接痕6は、導電接続部品10と正極側接合部2aとをレーザー溶接により接続して第1接合部4を形成したときに形成されるものである。たとえば、レーザー光のパワー密度が熱伝導溶接よりも高いキーホール溶接では、レーザー光が、導電接続部品10のレーザー受光領域10c(図2参照)内の表面部分を蒸発させて小さな窪みを形成し、その窪みの直下の金属をさらに深く溶かし込み、熱伝導溶接よりもさらに細長い空洞(キーホール)を形成する。そして、その細長い空洞で溶融金属が凝固し、熱伝導溶接よりも細長い融接部が形成される。この細長い融接部のZ1側の表面への露出部分が融接痕6であり、その融接痕6からZ2側に向かって伸びるように形成された細長い融接部が第1接合部4である。したがって、融接痕6は、導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)の第1接合部4とは反対側(Z1側)の表面に位置する。そして、融接痕6は、第1接合部4と同様、導電接続部品10の外縁側の領域に、環状に、連続的または不連続的に配置される。
【0032】
図1に示す導電接続構造1は、上記したように、FeまたはFe合金から成るFe層11とAlまたはAl合金から成るAl層12とが圧延接合されて成るクラッド材により構成された導電接続部品10を介して、電池セル2の正極側に設けられるFeまたはFe合金から成る正極側接合部10aと、バスバー3側に設けられるAlまたはAl合金から成るバスバー側接合部10bとが、接続されて構成された、電池の正極側に適用可能な導電接続構造の一例である。
【0033】
図1に示す導電接続構造1に組み込まれる前の導電接続部品10は、たとえば、図2に示す導電接続部品10であってよい。図2に示す導電接続部品10は、FeまたはFe合金から成るFe層11と、AlまたはAl合金から成るAl層12とが、圧延接合されて成るクラッド材により構成されている。図2に示す導電接続部品10は、第1接合領域10aと、第2接合領域10bと、レーザー受光領域10cとを有している。
【0034】
図2に示す導電接続部品10の第1接合領域10aは、Fe層11の圧延方向(Y方向)に沿う下側(Z2側)の表面部分に設けられている。この第1接合領域10aは、たとえば、図1に示す導電接続構造1の第1接合部4の配置を想定し、導電接続部品10の外縁側の表面部分に、環状に設定することができる。この第1接合領域10aは、電池セル2の正極側接合部2aに対して上記したレーザー溶接が可能である。なお、レーザー溶接が可能な第1接合領域10aとは、導電接続部品10の下側(Z2側)の表面部分であって、正極側接合部2aに対して実質的な隙間がない接触状態を得ることが可能で、第1接合領域10aとは反対側(Z1側)の導電接続部品10の表面(レーザー受光領域10c)からレーザー光が入射したときに導電接続部品10の表面(Z1側)から内部(Z2側)に向かって溶け込むことで貫通溶融の状態を得ることが可能で、上記したような細長い融接部(第1接合部4)の形成を妨げない形態や性状を有する構成を意図する。
【0035】
図2に示す導電接続部品10の第2接合領域10bは、Al層12の圧延方向(Y方向)に沿う上側(Z1側)の表面部分に設けられている。この第2接合領域10bは、たとえば、図1に示す導電接続構造1の第2接合部5の配置を想定し、導電接続部品10の中央側の表面部分に、すなわち、圧延方向(Y方向)において第1接合領域10aの内側であって、第1接合領域10aとは厚さ方向(X方向)において反対側(Z1側)のAl層12の表面部分に、環状に設定することができる。この第2接合領域10bは、バスバー3のバスバー側接合部3aに対して上記したレーザー溶接などの接続手段による接合が可能である。なお、レーザー溶接などの接続手段による接合が可能な第2接合領域10bとは、たとえばレーザー溶接による場合、導電接続部品10の上側(Z1側)の表面部分であって、バスバー側接合部3aに対して実質的な隙間がない接触状態を得ることが可能で、バスバー側接合部3aを溶かし込んで貫通したレーザー光が第2接合領域10bに入射したときに導電接続部品10の表面(Z1側)から内部(Z2側)に向かって溶け込むことで上記したような細長い融接部(第2接合部5)の形成を妨げない形態や性状を有する構成を意図する。
【0036】
図2に示す導電接続部品10のレーザー受光領域10cは、クラッド材である導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)の第1接合領域10aとは反対側(Z1側)のAl層12の表面に設けられている。このレーザー受光領域10cは、たとえば、図1に示す導電接続構造1の融接痕6の配置を想定し、導電接続部品10の圧延方向(Y方向)の外縁側のAl層12の表面に、環状に設定することができる。このレーザー受光領域10cは、レーザー光の受光が可能である。なお、レーザー光の受光が可能なレーザー受光領域10cとは、導電接続部品10の上側(Z1側)に向かって開放された表面であって、上方(Z1側)から照射されたレーザー光の受光による上記したような第1接合部4と融接痕6の形成を妨げない形態や性状を有する構成を意図する。このレーザー受光領域10cは、その表面にレーザー光の反射防止剤が塗布されていてもよい。
【0037】
図2に示す導電接続部品10は、第1接合領域10aが設けられた部分のFe層11の厚さをTsとし、レーザー受光部10cが設けられた部分のAl層12の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たすように、構成されている。0≦Ta≦Ts/10を満たす構成を有する導電接続部品10を用いた導電接続構造1は、好ましい接続強度(継手強度)を有する導電接続構造1を得ることができる。
【0038】
たとえば、導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)における正極側(Z2側)と導電接続部品10との間に、600N以上(好ましくは650N以上)の引張破断荷重を得ることが可能になる。また、導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)における正極側(Z2側)と導電接続部品10との間に生じる引張破断応力を、250MPa以上(好ましくは280MPa以上、より好ましくは300MPa以上)に抑制することが可能になる。この点は後述する実験で確認している。なお、この引張破断応力は、上記した引張破断荷重を正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み断面積St(図3参照)で除した値である。第1接合部4の溶け込み断面積Stについては後述する。
【0039】
図2に示す導電接続部品10において、0≦Ta≦Ts/10を満たす場合、レーザー受光部10cが設けられた部分のAl層12の厚さが0以上(Ta≧0)に構成されるとともに、第1接合領域10aが設けられた部分のFe層11の厚さの1/10以下(Ta≦Ts/10)に構成されている。このレーザー受光部10cが設けられた部分とは、導電接続部品10を構成するクラッド材の厚さ方向(Z方向)の第1接合領域10aとは反対側(Z1側)の表面部分である。
【0040】
Taが0を超える(Ta>0)場合、導電接続部品10の第1接合領域10aとは反対側(Z1側)の表面部分にAl層12が存在していることを意味する。したがって、この場合、Al層12のZ1側の表面部分に、レーザー受光領域10c部を設定することができる。なお、図2に示す導電接続部品10は、レーザー受光部10cが設けられた部分にAl層12が存在するため、Taが0を超えて(Ta>0)いる。
【0041】
また、Taが0(Ta=0)の場合、導電接続部品10の第1接合領域10aとは反対側(Z1側)の表面部分にAl層12が存在していないことを意味する。これは、クラッド材から導電接続部品10を作製する段階で、Fe層11の上側(Z1側)に圧延接合されていたAl層12が部分的に除去されたため、導電接続部品10の第1接合領域10aに設定する予定領域の反対側(Z1側)の表面部分がFe層11になったためである。したがって、この場合、Fe層11のZ1側の表面部分に、レーザー受光領域10c部を設定することができる。
【0042】
図1に示す導電接続構造1を構成するとき、上記した0≦Ta≦Ts/10を満たす導電接続部品10と正極側接合部2aとをレーザー溶接(好ましくはキーホール溶接)により接続して第1接合部4を形成することによって、第1接合部4を細長い融接部(正極側融接部)にすることができる。第1接合部4が細長い融接部であると、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み幅や溶け込み断面積は比較的小さくなるが、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み深さが好適に大きくなる。正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み幅や溶け込み断面積を比較的小さくても適度に確保することにより、適度な接続強度(継手強度)を担保しつつ溶融・凝固に起因する正極側(正極端子2b)の機械的特性などの劣化を抑制することができる。正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み深さを好適に大きくすることにより、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み幅が比較的小さい場合でも、正極側接合部2a(すなわち正極端子2b)と導電接続部品10との間に比較的大きな接続強度(継手強度)を得ることができる。
【0043】
図3は、図1に示す第1接合部4の付近を導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)に沿って切断した断面を模式的に示す図である。この発明では、融接痕6の中心(中心線Lc)を通り導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)に沿う断面視において、正極側接合部2aと導電接続部品10との境界相当線Lbが第1接合部4と交差する線分の長さを、正極側接合部2aに対する第1接合部4の融接幅と見做し、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み幅Wtとする。
【0044】
また、上方(Z1側)から見た融接痕6が不連続的な点状(円形、楕円形、四角形、六角形などに近似な形状)である場合、溶け込み幅Wtを直径とする円を想定し、その円相当断面積を、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み断面積Stとする。あるいは、上方(Z1側)から見た融接痕6が連続的な線状(ビード)である場合、溶け込み幅Wtにその線状(ビード)の長さを乗じた断面積を、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み断面積Stとする。なお、有効な融接痕6が複数ある場合、その有効なそれぞれの融接痕6の溶け込み断面積を合計した値を、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み断面積Stとする。
【0045】
また、境界相当線Lbは、融接痕6の中心(中心線Lc)を通るように導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)に沿って切断した、その断面視において、導電接続部品10の圧延方向(Y方向)に沿う境界面Sbの概ね線状に見える、その線(直線)とする。境界相当線Lbが第1接合部4と交差する方向は、導電接続部材10の圧延方向(Y方向)である。正極側接合部2aと導電接続部品10との境界面Sbは、第1接合部4の周囲で正極側接合部2aと導電接続部品10とが接触しているX-Y平面上の面部分とする。
【0046】
また、融接痕6の中心(中心線Lc)を通り導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)に沿う断面視において、正極側接合部2aと導電接続部品10との境界相当線Lbと直交し、第1接合部1と交差する最長の線分の長さを、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み深さDpとする。境界相当線Lbと直交し、第1接合部1と交差する方向は、導電接続部材10の厚さ方向(Z方向)である。
【0047】
また、融接痕6の中心(中心線Lc)は、上方(Z1側)から見た融接痕6が不連続的な点状(円形、楕円形、四角形、六角形などに近似な形状)である場合、その点状の形状の略中央に設定する。あるいは、上方(Z1側)から見た融接痕6が連続的な線状(ビード)である場合、その線状(ビード)の長さ方向の位置を無作為に選定し、その選定した箇所の幅方向の略中央に、融接痕6の中心(中心線Lc)を設定する。また、第1接合部4の中心は、導電接続部品10の厚さ方向(Z方向)において融接痕6の中心と重なっていると見做し、中心線Lc上に位置するものとする。
【0048】
図1図3に示す導電接続構造1の第1接合部4において、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み深さDpは、適度に大きいことが好ましく、たとえば、0.20mm以上であることが好ましい。また、正極側接合部2aに対する第1接合部4の溶け込み幅Wtや溶け込み断面積Stは、比較的小さくても適度に確保することが好ましく、たとえば、溶け込み断面積Stは1.2mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましい。これにより、正極側接合部2a(すなわち正極端子2b)と導電接続部品10とを、厚さ方向(Z方向)の引張破断荷重が大きく(たとえば、600N以上、好ましくは650N以上)、厚さ方向(Z方向)の引張破断応力が小さい(たとえば、250MPa以上、好ましくは280MPa以上、より好ましくは300MPa以上)、好適な接続強度(継手強度)を有する継手構造にすることができる。
【0049】
そして、第2接合部5がレーザー溶接(好ましくはキーホール溶接)で形成された第1接合部4と同様の細長い融接部であれば、あるいは、バスバー3と導電接続部品10とがレーザー溶接以外の接続手段であっても強固に接続されていれば、バスバー側接合部3a(すなわちバスバー3)と導電接続部品10とを、好適な接続強度(継手強度)を有する継手構造にすることができる。
【0050】
このように、正極側接合部2aと導電接続部品10とが第1接合部4で強固に接続されるとともに、バスバー側接合部3aと導電接続部品10とが第2接合部5で強固に接続されることにより、導電接続部品10を介した、正極側接合部2a(すなわち正極端子2b)とバスバー側接合部3a(すなわちバスバー3)とによる継手構造を、引張破断荷重が大きく、引張破断応力が小さい、好適な接続強度(継手強度)を有する導電接続構造1にすることができる。
【0051】
次に、この発明に係る導電接続部品の実施形態について、図2に示す導電接続部品10とはX1側からの側面視において形状が異なる構成例を幾つか挙げる。
【0052】
<変形例1>
図4に示す導電接続部品20は、上記した導電接続部品10と同様に、FeまたはFe合金から成るFe層21と、AlまたはAl合金から成るAl層22とが、圧延接合されて成るクラッド材により構成されている。この導電接続部品20は、第1接合領域20aと、第2接合領域20bと、レーザー受光領域20cと、を有している。
【0053】
この導電接続部品20は、側面視において、その輪郭は、上側(Z1側)部分が小さく、下側(Z2側)部分が大きい、上側(Z1側)に凸の形状である。この導電接続部品20は、図示は略すが、平面視において、その輪郭は、上記した導電接続部品10と同等の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。この導電接続部品20は、クラッド材から導電接続部品20を作製する段階で、Al層22の中央部分が厚さ方向(Z方向)において凸の形状になるように、加工成形されている。このAl層22の凸の形状は、Fe層21の上側(Z1側)に圧延接合されていたAl層22を部分的に除去する製造方法や、プレス機などにより部分的に加圧成形してAl層22の厚さを部分的に小さくする製造方法などにより、加工成形することができる。
【0054】
この導電接続部品20の第1接合領域20aは、Fe層21の圧延方向(Y方向)に沿う下側(Z2側)の表面部分に設けられている。この第1接合領域20aは、導電接続部品20の外縁側の表面部分に、たとえば、環状に設定することができる。この第1接合領域20aは、相手の接合部(たとえば正極側接合部2a)に対して上記したレーザー溶接が可能である。
【0055】
この導電接続部品20の第2接合領域20bは、Al層22の圧延方向(Y方向)に沿う上側(Z1側)の表面部分に設けられている。この第2接合領域20bは、導電接続部品20の中央側の表面部分に、すなわち、圧延方向(Y方向)において第1接合領域20aの内側であって、第1接合領域20aとは厚さ方向(X方向)において反対側(Z1側)のAl層22の表面部分に、たとえば、環状に設定することができる。この第2接合領域20bは、相手の接合部(たとえばバスバー側接合部3a)に対して上記したレーザー溶接などの接続手段による接合が可能である。
【0056】
この導電接続部品20のレーザー受光領域20cは、クラッド材である導電接続部品20の厚さ方向(Z方向)の第1接合領域20aとは反対側(Z1側)のAl層22の部分的に厚さが小さい表面に設けられている。このレーザー受光領域20cは、たとえば、図1に示す導電接続構造1の融接痕6の配置を想定し、導電接続部品20の圧延方向(Y方向)の外縁側のAl層22の表面に、環状に設定することができる。このレーザー受光領域20cは、レーザー光の受光が可能である。このレーザー受光領域20cは、その表面にレーザー光の反射防止剤が塗布されていてもよい。
【0057】
この導電接続部品20は、第1接合領域20aが設けられた部分のFe層21の厚さをTsとし、レーザー受光部20cが設けられた部分のAl層22の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たすように、構成されている。この導電接続部品20は、レーザー受光部20cが設けられた部分にAl層22が存在するため、Taが0を超えて(Ta>0)いる。0≦Ta≦Ts/10を満たす構成を有する導電接続部品20を用いた導電接続構造は、図1に示す導電接続構造1と同様に、好ましい接続強度(継手強度)を有することができる。
【0058】
<変形例2>
図5に示す導電接続部品30は、上記した導電接続部品10と同様に、FeまたはFe合金から成るFe層31と、AlまたはAl合金から成るAl層32とが、圧延接合されて成るクラッド材により構成されている。この導電接続部品30は、第1接合領域30aと、第2接合領域30bと、レーザー受光領域30cと、を有している。
【0059】
この導電接続部品30は、上記した導電接続部品20と同様に、側面視において、その輪郭は、上側(Z1側)部分が小さく、下側(Z2側)部分が大きい、上側(Z1側)に凸の形状である。この導電接続部品30は、図示は略すが、平面視において、その輪郭は、上記した導電接続部品20と同等の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。この導電接続部品30は、クラッド材から導電接続部品30を作製する段階で、圧延方向(Y方向)において、Al層32の外縁側の部分が環状に除去されて、除去されなかったAl層32の中央部分が厚さ方向(Z方向)において凸の形状になるように、加工成形されている。このAl層32の凸の形状は、Fe層31の上側(Z1側)に圧延接合されていたAl層32を部分的に除去する製造方法などにより、加工成形することができる。
【0060】
この導電接続部品30の第1接合領域30aは、Fe層31の圧延方向(Y方向)に沿う下側(Z2側)の表面部分に設けられている。この第1接合領域30aは、導電接続部品30の外縁側の表面部分に、たとえば、環状に設定することができる。この第1接合領域30aは、相手の接合部(たとえば正極側接合部2a)に対して上記したレーザー溶接が可能である。
【0061】
この導電接続部品30の第2接合領域30bは、Al層32の圧延方向(Y方向)に沿う上側(Z1側)の表面部分に設けられている。この第2接合領域30bは、導電接続部品30の中央側の表面部分に、すなわち、圧延方向(Y方向)において第1接合領域30aの内側であって、第1接合領域30aとは厚さ方向(X方向)において反対側(Z1側)のAl層32の表面部分に、たとえば、環状に設定することができる。この第2接合領域30bは、相手の接合部(たとえばバスバー側接合部3a)に対して上記したレーザー溶接などの接続手段による接合が可能である。
【0062】
この導電接続部品30のレーザー受光領域30cは、クラッド材である導電接続部品30の厚さ方向(Z方向)の第1接合領域30aとは反対側(Z1側)のAl層32の除去により露出したFe層31の表面に設けられている。このレーザー受光領域30cは、たとえば、図1に示す導電接続構造1の融接痕6の配置を想定し、環状に設定することができる。このレーザー受光領域30cは、レーザー光の受光が可能である。このレーザー受光領域30cは、その表面にレーザー光の反射防止剤が塗布されていてもよい。
【0063】
この導電接続部品30は、第1接合領域30aが設けられた部分のFe層31の厚さをTsとし、レーザー受光部30cが設けられた部分のAl層32の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たすように、構成されている。この導電接続部品30は、レーザー受光部30cが設けられた部分はAl層32の除去により露出したFe層31の表面であって、Al層32の表面ではないので、Taが0(Ta=0)となる。この導電接続部品30のように、レーザー受光部30cが設けられた部分にAl層32が存在しない構成では、Taを0(Ta=0)として、0≦Ta≦Ts/10の関係を適用することができる。0≦Ta≦Ts/10を満たす構成を有する導電接続部品30を用いた導電接続構造は、図1に示す導電接続構造1と同様に、好ましい接続強度(継手強度)を有することができる。
【0064】
<変形例3>
図6に示す導電接続部品40は、上記した導電接続部品10と同様に、FeまたはFe合金から成るFe層41と、AlまたはAl合金から成るAl層42とが、圧延接合されて成るクラッド材により構成されている。この導電接続部品40は、第1接合領域40aと、第2接合領域40bと、レーザー受光領域40cと、を有している。
【0065】
この導電接続部品40は、側面視において、その輪郭は、上記した導電接続部品10と同等の形状であって、図示は略すが、厚さ方向(Z方向)に沿う断面の側面視において、上側(Z1側)の中央部分が下側(Z2側)に凹の形状である。この導電接続部品40は、図示は略すが、平面視において、その輪郭は、上記した導電接続部品10と同等の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。この導電接続部品40は、クラッド材から導電接続部品40を作製する段階で、Al層42の中央部分が厚さ方向(Z方向)において凹の形状になるように、加工成形されている。このAl層42の凹の形状は、Fe層41の上側(Z1側)に圧延接合されていたAl層42を部分的に除去する製造方法や、プレス機などにより部分的に加圧成形してAl層42の厚さを部分的に小さくする製造方法などにより、加工成形することができる。
【0066】
この導電接続部品40の第1接合領域40aは、Fe層41の圧延方向(Y方向)に沿う下側(Z2側)の表面部分に設けられている。この第1接合領域40aは、導電接続部品40の外縁側の表面部分に、たとえば、環状に設定することができる。この第1接合領域40aは、相手の接合部(たとえば正極側接合部2a)に対して上記したレーザー溶接が可能である。
【0067】
この導電接続部品40の第2接合領域40bは、Al層42の圧延方向(Y方向)に沿う上側(Z1側)の中央部分の表面部分に設けられている。すなわち、この第2接合領域40bは、圧延方向(Y方向)において第1接合領域40aの内側であって、第1接合領域40aとは厚さ方向(X方向)において反対側(Z1側)のAl層42の部分的に厚さが小さい凹の形状の底面部分に設定することができる。この第2接合領域40bは、相手の接合部(たとえばバスバー側接合部3a)に対して上記したレーザー溶接などの接続手段による接合が可能である。
【0068】
この導電接続部品40のレーザー受光領域40cは、クラッド材である導電接続部品40の厚さ方向(Z方向)の第1接合領域40aとは反対側(Z1側)のAl層42の表面に設けられている。このレーザー受光領域40cは、たとえば、図1に示す導電接続構造1の融接痕6の配置を想定し、導電接続部品40の圧延方向(Y方向)の外縁側のAl層42の表面に、環状に設定することができる。このレーザー受光領域40cは、レーザー光の受光が可能である。このレーザー受光領域40cは、その表面にレーザー光の反射防止剤が塗布されていてもよい。
【0069】
この導電接続部品40は、第1接合領域40aが設けられた部分のFe層41の厚さをTsとし、レーザー受光部40cが設けられた部分のAl層42の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たすように、構成されている。この導電接続部品40は、レーザー受光部40cが設けられた部分にAl層42が存在するため、Taが0を超えて(Ta>0)いる。0≦Ta≦Ts/10を満たす構成を有する導電接続部品40を用いた導電接続構造は、図1に示す導電接続構造1と同様に、好ましい接続強度(継手強度)を有することができる。
【0070】
<変形例4>
図7に示す導電接続部品50は、上記した導電接続部品10と同様に、FeまたはFe合金から成るFe層51と、AlまたはAl合金から成るAl層52とが、圧延接合されて成るクラッド材により構成されている。この導電接続部品50は、第1接合領域50aと、第2接合領域50bと、レーザー受光領域50cと、を有している。
【0071】
この導電接続部品50は、側面視において、その輪郭は、上側(Z1側)部分が小さく、下側(Z2側)部分が大きく、上側(Z1側)の片側(Y1側)が凸の段付き形状である。この導電接続部品50は、図示は略すが、平面視において、その輪郭は、上記した導電接続部品10と同等の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。この導電接続部品50は、クラッド材から導電接続部品50を作製する段階で、Al層52の片側(Y1側)が厚さ方向(Z方向)において凸の段付き形状になるように、加工成形されている。このAl層52の凸の段付き形状は、Fe層51の上側(Z1側)に圧延接合されていたAl層52を部分的に除去する製造方法や、プレス機などにより部分的に加圧成形してAl層52の厚さを部分的に小さくする製造方法などにより、加工成形することができる。
【0072】
この導電接続部品50の第1接合領域50aは、Fe層51の圧延方向(Y方向)に沿う下側(Z2側)の表面部分に設けられている。この第1接合領域50aは、導電接続部品50の中央部から片縁側(Y2側)の間の表面部分に設定することができる。この第1接合領域50aは、相手の接合部(たとえば正極側接合部2a)に対して上記したレーザー溶接が可能である。
【0073】
この導電接続部品50の第2接合領域50bは、Al層52の圧延方向(Y方向)に沿う上側(Z1側)の凸の段付き形状の表面部分に設けられている。この第2接合領域50bは、導電接続部品50の片側(Y1側)の表面部分に、すなわち、圧延方向(Y方向)において第1接合領域50aとは反対側(Y1側)であって、第1接合領域50aとは厚さ方向(Z方向)において反対側(Z1側)のAl層52の表面部分に設定することができる。この第2接合領域50bは、相手の接合部(たとえばバスバー側接合部3a)に対して上記したレーザー溶接などの接続手段による接合が可能である。
【0074】
この導電接続部品50のレーザー受光領域50cは、クラッド材である導電接続部品50の厚さ方向(Z方向)の第1接合領域50aとは厚さ方向(Z方向)において反対側(Z1側)のAl層52の厚さが部分的に小さい表面に設けられている。このレーザー受光領域50cは、レーザー光の受光が可能である。このレーザー受光領域50cは、その表面にレーザー光の反射防止剤が塗布されていてもよい。
【0075】
この導電接続部品50は、第1接合領域50aが設けられた部分のFe層51の厚さをTsとし、レーザー受光部50cが設けられた部分のAl層52の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たすように、構成されている。この導電接続部品50は、レーザー受光部50cが設けられた部分にAl層5が存在するため、Taが0を超えて(Ta>0)いる。0≦Ta≦Ts/10を満たす構成を有する導電接続部品50を用いた導電接続構造は、図1に示す導電接続構造1と同様に、好ましい接続強度(継手強度)を有することができる。
【0076】
<変形例5>
図8に示す導電接続部品60は、上記した導電接続部品10と同様に、FeまたはFe合金から成るFe層61と、AlまたはAl合金から成るAl層62とが、圧延接合されて成るクラッド材により構成されている。この導電接続部品60は、第1接合領域60aと、第2接合領域60bと、レーザー受光領域60cと、を有している。
【0077】
この導電接続部品60は、上記した導電接続部品50と同様に、側面視において、その輪郭は、上側(Z1側)部分が小さく、下側(Z2側)部分が大きく、上側(Z1側)の片側(Y1側)が凸の段付き形状である。この導電接続部品60は、図示は略すが、平面視において、その輪郭は、上記した導電接続部品50と同等の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。この導電接続部品60は、クラッド材から導電接続部品60を作製する段階で、圧延方向(Y方向)において、Al層62の中央付近から片側(Y2側)が除去されて、除去されなかったAl層62の中央付近から反対側(Y1側)が厚さ方向(Z方向)において凸の段付き形状になるように、加工成形されている。このAl層62の凸の段付き形状は、Fe層61の上側(Z1側)に圧延接合されていたAl層62を部分的に除去する製造方法などにより、加工成形することができる。
【0078】
この導電接続部品60の第1接合領域60aは、Fe層61の圧延方向(Y方向)に沿う下側(Z2側)の表面部分に設けられている。この第1接合領域60aは、導電接続部品60の中央部から片縁側(Y2側)の間の表面部分に設定することができる。この第1接合領域60aは、相手の接合部(たとえば正極側接合部2a)に対して上記したレーザー溶接が可能である。
【0079】
この導電接続部品60の第2接合領域60bは、Al層62の圧延方向(Y方向)に沿う上側(Z1側)の凸の段付き形状の表面部分に設けられている。この第2接合領域60bは、導電接続部品60の片側(Y1側)の表面部分に、すなわち、圧延方向(Y方向)において第1接合領域60aとは反対側(Y1側)であって、第1接合領域60aとは厚さ方向(Z方向)において反対側(Z1側)のAl層62の表面部分に設定することができる。この第2接合領域60bは、相手の接合部(たとえばバスバー側接合部3a)に対して上記したレーザー溶接などの接続手段による接合が可能である。
【0080】
この導電接続部品60のレーザー受光領域60cは、クラッド材である導電接続部品60の厚さ方向(Z方向)の第1接合領域60aとは厚さ方向(Z方向)において反対側(Z1側)のAl層62の除去により露出したFe層61の表面に設けられている。このレーザー受光領域60cは、レーザー光の受光が可能である。このレーザー受光領域60cは、その表面にレーザー光の反射防止剤が塗布されていてもよい。
【0081】
この導電接続部品60は、第1接合領域60aが設けられた部分のFe層61の厚さをTsとし、レーザー受光部60cが設けられた部分のAl層62の厚さをTaとするとき、0≦Ta≦Ts/10を満たすように、構成されている。この導電接続部品60は、レーザー受光部60cが設けられた部分はAl層62の除去により露出したFe層61の表面であって、Al層62の表面ではないので、Taが0(Ta=0)となる。この導電接続部品60のように、レーザー受光部60cが設けられた部分にAl層62が存在しない構成では、Taを0(Ta=0)として、0≦Ta≦Ts/10の関係を適用することができる。0≦Ta≦Ts/10を満たす構成を有する導電接続部品60を用いた導電接続構造は、図1に示す導電接続構造1と同様に、好ましい接続強度(継手強度)を有することができる。
【実施例0082】
この発明に係る導電接続構造の実施形態を模した図9に示す継手構造を実際に作製し、この発明に係る導電接続部品および導電接続構造の有効性を評価した。その結果を、表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
この評価において、表1に示す継手A~Dは、導電接続部品に対応する試験体1~12を図1に示す陽極側接合部2a(正極端子2b)に対応する基板に対してレーザー溶接で接続した導電接続構造である。また、継手A~Dの融接部(3本のビード)は、図1に示す第1接合部4に対応する。また、試験体1~12と基板との接触面は、図3に示す境界面Sbに対応し、厚さ方向(Z方向)に沿う断面視においては境界相当線Lbに対応する。また、レーザー溶接でZ1側の表面部分に形成された3本の融接部(ビード)は、図1に示す融接痕6に対応する。また、レーザー溶接は、アマダウエルドテック製ファイバーレーザ溶接機(MF-C1000A-S)を用いて、理論集光径が23.9μmで、出力が300Wで、溶接速度が毎秒500mmの溶接条件で行った。
【0085】
表1において、継手Aの試験体は、Fe層を有し、Al層を有さない(Ta=0)ものである。また、継手B~Dの試験体は、Fe層とAl層とを重ねて構成したものである。また、試験体のFe層は、継手A~Dのいずれの場合も、SUS430相当のステンレス鋼板から成り、長さが100mmで、幅が30mmで、表1に示す0.200mmの厚さの平板である。また、試験体のAl層は、継手A~Dのいずれの場合も、A1050相当のアルミニウム板から成り、長さが50mmで、幅が30mmで、表1に示す厚さの平板である。また、上記した試験体(導電接続部品)と継手構造(導電接続構造)を構成するための基板は、継手A~Dのいずれの場合も、SUS430相当のステンレス鋼板から成り、長さが100mmで、幅が30mmで、厚さが0.300mmの平板である。これより、継手A~Dは、全長が150mmで、全幅が30mmで、重なり部分の長さが50mmの継手構造となる。
【0086】
表1に示す融接部の溶け込み深さDpと溶け込み幅Wtは、全幅が30mmの継手の幅方向の中央付近をY-Z平面に沿うように切断し、その断面を観察して求めた。その観察断面において、3本のビード(融接痕6に対応)に対応した3つの融接部の溶け込み深さDpと溶け込み幅Wtを測定して平均値を求め、その平均値を当該継手の融接部(第1接合部4に対応)の溶け込み深さDpと溶け込み幅Wtとした。また、表1に示す融接部の溶け込み断面積Stは、3本のビードの全長(5.0mm×3本)を融接部の全長と見做し、この融接部の全長に溶け込み幅Wtを乗じて求まる値とした。
【0087】
表1に示す引張破断荷重と引張破断応力は、引張試験で求めた。具体的には、図9に示す継手構造を参照するが、基板のY1側の端部を固定クランプで把持し、試験体のY2側の端部を可動クランプで把持し、可動クランプをY2側に向かって一定の速度で移動して引張荷重を加えた。そして、継手の融接部が離断したときの荷重を求め、引張破断荷重とした。そして、引張試験で求めた引張破断荷重を融接部の溶け込み断面積Stで除して求まる値を、引張破断応力とした。なお、表1において、継手Cの番号9と継手Dの番号12は、引張試験前に試験体が基板から離断したので、引張破断荷重を「0」とし、引張破断応力を「-」とした。
【0088】
表1に示す継手Aは、0≦Ta≦Ts/10を満たす試験体1~3を用いた継手構造である。試験体1~3を用いた継手Aの溶け込み深さDpは、0.207mm~0.260mmとなり、Dp≧0.18mmを満足し、より好ましいDp≧0.20mmをも満足していた。また、継手Aの溶け込み断面積Stは、1.335mm~1.620mmとなり、St≧1.2mmを満足し、より好ましいSt≧1.3mmをも満足していた。そして、継手Aの引張破断荷重は、738N~772Nとなり、600Nを大きく超えており、より好ましい650Nをも超えていた。また、継手Aの引張破断応力は、476MPa~578MPaとなり、250MPaよりも極めて大きくなり、より好ましい300MPaよりも十分に大きくなった。この結果より、0≦Ta≦Ts/10を満たす試験体1~3を用いることにより、好適な接続強度(継手強度)を有する継手Aが得られることが確認された。
【0089】
表1に示す継手Bは、0≦Ta≦Ts/10を満たす試験体4~6を用いた継手構造である。試験体4~6を用いた継手Bの溶け込み深さDpは、0.200mm~0.245mmとなり、Dp≧0.18mmを満足し、より好ましいDp≧0.20mmをも満足していた。また、継手Bの溶け込み断面積Stは、1.740mm~2.175mmとなり、St≧1.2mmを満足し、より好ましいSt≧1.3mmをも満足していた。そして、継手Bの引張破断荷重は、626N~682Nとなり、600Nを超えており、より好ましい650Nをも超えるものがあった。また、継手Bの引張破断応力は、314MPa~374MPaとなり、250MPaよりも極めて大きくなり、好ましい280MPaよりも十分に大きくなり、より好ましい300MPaよりも大きくなった。この結果より、0≦Ta≦Ts/10を満たす試験体4~6を用いることにより、好適な接続強度(継手強度)を有する継手Bが得られることが確認された。
【0090】
表1に示す継手Cは、0≦Ta≦Ts/10を満たさない試験体7~9を用いた継手構造である。試験体7~9を用いた継手Cの溶け込み深さDpは、0.059mm~0.178mmとなり、Dp≧0.18mmを満足していなかった。また、継手Cの溶け込み断面積Stは、0.765mm~1.050mmとなり、St≧1.2mmを満足していなかった。そして、継手Cの引張破断荷重は、463N~525N(試験体9は測定不可)となり、600Nを超えないものや測定できないものがあった。また、継手Cの引張破断応力は、500MPa~605MPa(試験体9は算定不可)となり、より好ましい300MPaを十分に超えるものがあったが、算定できないものもあったため、バラツキが大きく信頼性が得られなかった。この結果より、0≦Ta≦Ts/10を満たさない試験体7~9を用いることにより、十分な接続強度(継手強度)を有していない継手Cが得られることが確認された。
【0091】
表1に示す継手Dは、0≦Ta≦Ts/10を満たさない試験体10~12を用いた継手構造である。試験体10~12を用いた継手Dの溶け込み深さDpは、0.053mm~0.080mmとなり、Dp≧0.18mmを満足していなかった。また、継手Dの溶け込み断面積Stは、0.705mm~1.125mmとなり、St≧1.2mmを満足していなかった。そして、継手Dの引張破断荷重は、7N~551N(試験体12は測定不可)となり、600Nを超えないものや測定できないものがあった。また、継手Dの引張破断応力は、6MPa~602MPa(試験体12は算定不可)となり、より好ましい300MPaを十分に超えるものや、250MPaよりも極めて小さいものや、算定できないものがあったため、バラツキが大きく信頼性が得られなかった。この結果より、0≦Ta≦Ts/10を満たさない試験体10~12を用いることにより、十分な接続強度(継手強度)を有していない継手Dが得られることが確認された。
【0092】
以上より、0≦Ta≦Ts/10を満たす導電接続部品(試験体1~6)を用いた導電接続構造(継手A、B)は、図1に示す第1接合部4に対応する融接部の溶け込み深さDpがDp≧0.18mmを満足し、溶け込み断面積StがSt≧1.2mmを満足し、引張破断荷重が600N以上(好ましくは650N以上)となり、引張破断応力が250MPa以上(好ましくは250MPa以上、より好ましくは300MPa以上)となり、好適な接続強度(継手強度)を有することが確認された。よって、この発明は有効である。
【符号の説明】
【0093】
1:導電接続構造
2:電池セル
2a:正極側接合部
2b:正極端子
3:バスバー
3a:バスバー側接続部
4:第1接合部
5:第2接合部
6:融接痕
10、20、30、40、50、60:導電接続部品(クラッドインサート)
10a、20a、30a、40a、50a、60a:第1接合領域
10b、20b、30b、40b、50b、60b:第2接合領域
10c、20c、30c、40c、50c、60c:レーザー受光領域
11、21、31、41、51、61:Fe層
12、22、32、42、52、62:Al層
Ts:Fe層の厚さ(Ts≧0)
Ta:Al層の厚さ(Ta>0)
Dp:溶け込み深さ
Wt:溶け込み幅
St:溶け込み断面積
Lb:境界相当線
Sb:境界面
Lc:中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9