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  • 特開-用紙断裁精度の安定化装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142509
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】用紙断裁精度の安定化装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/34 20060101AFI20230928BHJP
   B65H 23/28 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B26D5/34 A
B65H23/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049458
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】生沼 尚己
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓己
(72)【発明者】
【氏名】平野 智信
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 遥香
【テーマコード(参考)】
3C024
3F104
【Fターム(参考)】
3C024FF01
3C024FF03
3F104AA01
3F104FA08
3F104KA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】断裁機において、巻取紙の形状変化に伴う読取値の変化を抑制することで用紙断裁精度を安定化する。
【解決手段】巻取紙1を所定の枚葉紙単位に断裁する断裁機における断裁精度の安定化に関して、巻取紙1に付与されたプリントマーク3を読み取る画像検出装置2の上方かつ巻取紙1の走行位置の下端に設けられた透明板5、及び巻取紙1を挟んで透明板5と対向する位置に設けられた紙押さえ治具6を備える用紙断裁精度の安定化装置である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
模様が付与された巻取紙を所定の寸法の枚葉紙に断裁する際の用紙断裁精度を安定化するための装置であって、
前記巻取紙、前記巻取紙に付与された前記模様の位置を示すプリントマーク、前記プリントマークを読取り、前記巻取紙を前記枚葉紙に断裁するためのスリット刃を制御する画像検出装置を備え、
前記画像検出装置の上方かつ前記巻取紙の走行位置の下端に設けられた透明板、及び前記巻取紙を挟んで前記透明板と対向する位置に設けられた紙押さえ治具を備えることを特徴とする用紙断裁精度の安定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取紙を枚葉紙に断裁する際の断裁精度を安定化するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券、株券、債権等の貴重製品は、偽造や改ざんがされにくいことが求められ、これらの偽造防止技術としては、透過光下で観察されるすき入れ模様が代表的である。すき入れ模様は、木材等の繊維を原料として抄紙工程において形成されることが一般的であり、円網方式やダンディロールを用いて湿紙に型押しする長網方式で形成される。
【0003】
抄紙工程ですき入れ模様が形成された連続用紙は、乾燥後に巻き取られ巻取紙となったのち、次工程である断裁工程において用紙断裁機で枚葉紙に断裁されるが、巻取紙を用紙断裁機で断裁する際には、定位置断裁及び定寸断裁を行う必要がある。
【0004】
定位置断裁とは、すき入れ模様等の模様が形成された巻取紙を所定の枚葉紙単位に断裁する際に、模様の位置が各枚葉紙で一定の位置となるように断裁を行う方法である。
【0005】
定寸断裁とは、巻取紙を所定の枚葉紙単位に断裁する際に、各枚葉紙の寸法が一定となるように断裁を行う方法である。
【0006】
このような定位置断裁及び定寸断裁は次工程において、枚葉紙に印刷を行う際の印刷と枚葉紙中のすき入れ模様等の模様との刷り合わせを確実に合わせるために必要な断裁方法である。
【0007】
定位置断裁方式とは、前述のようにすき入れ模様等の模様の位置を基準として定位置で断裁する方式であるが、実際には、断裁工程で高速搬送される巻取紙に形成されたすき入れ模様を高精度に検出することが困難であるため、抄紙工程で、すき入れ模様から所定の距離だけ離れた位置に黒色のマーク(以下、「プリントマーク」という。)を印字している。
【0008】
用紙断裁機で、定位置断裁を行う時は、巻取紙(1)から枚葉紙に断裁する際の断裁位置を決定するために、図1及び図2に示すように、画像検出装置(2)でプリントマーク(3)の長さを検出してプリントマーク(3)の長さが設定された長さになるように、測定結果に応じてスリット刃(4)の位置を調整し、定位置断裁を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011-46507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、実際には図3に示すように、画像検出装置(2)上部と巻取紙(1)には空間が存在していた。また、巻取紙(1)を押さえる機構になっていないため、巻取紙(1)(プリントマーク(3))は完全に空中に浮いた状態になっていた。
【0011】
また、巻取紙(1)は張力をつけ、巻き付けるため、波打ちやしわが発生してしまう。又、巻取側面は空気に触れているため水分を吸着するため変化しやすい。
【0012】
そのため、図4に示すように、巻取紙(1)の坪量や、水分量の変化により波打ち等の形状変化が生じてしまう。
【0013】
巻取紙(1)(プリントマーク(3))が空中に浮いた状態の場合、巻取紙(1)の波打ち等の形状変化により上下に位置が変化し、画像検出装置(2)と巻取紙(1)(プリントマーク(3))の距離が常に変化しながら巻取紙(1)が走行していた。
【0014】
このように、画像検出装置(2)と巻取紙(1)(プリントマーク(3))との距離が変動することにより、プリントマーク(3)の実際の長さである実測値とは、異なった読み取り値を画像検出装置(2)が読み取ってしまっていた。
【0015】
具体的には、図5に示すように、本来、波打ち等の形状変化がない場合の位置である点線の位置よりも、画像検出装置(2)と巻取紙(1)(プリントマーク(3))の距離が遠い場合、画像が設定されている画素にかかる面積が小さくなるため値は小さくなる。逆に近い場合は大きい値となる。
【0016】
このように、実測値と異なった数値を読取ってしまうと、読取値に応じてスリット刃(4)の位置を制御をしているため、誤った位置にスリット刃(4)を移動するように制御をしてしまい、定位置断裁が出来なくなってしまうという課題があった。
【0017】
また、画像検出装置(2)の読取値を基に、製品の良品、不良品の判定を行っているため、読取値が誤った数値となってしまうと、本来は良品である製品を不良品、または本来は不良品である製品を良品と判定してしまい品質が安定しないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、模様が付与された巻取紙を所定の寸法の枚葉紙に断裁する際の用紙断裁精度を安定化するための装置であって、巻取紙、巻取紙に付与された模様の位置を示すプリントマーク、プリントマークを読取り、巻取紙を枚葉紙に断裁するためのスリット刃を制御する画像検出装置を備え、画像検出装置の上方かつ巻取紙の走行位置の下端に設けられた透明板、及び巻取紙を挟んで透明板と対向する位置に設けられた紙押さえ治具を備えることを特徴とする用紙断裁精度の安定化装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の用紙断裁精度の安定化装置によると、画像検出装置(2)と用紙(1)(プリントマーク(3))の距離を一定に保つことが可能となったことで、適切な画像検出装置(2)の読取りが可能となることで、断裁制度が向上する。
【0020】
また、画像検出装置(2)の読取値とプリントマーク(3)の実測値が近い数値となることで、スリット刃(4)を適切な位置に制御することが可能となる。
【0021】
さらに、画像検出装置(2)の読取値とプリントマーク(3)の実測値が近い数値となることで、製品の良品、不良品の判定が正確になり、オペレータが製品の品質状態を容易に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一般的な用紙断裁機を示す図
図2】プリントマークと画像検出装置の関係を示す図
図3】巻取紙と画像検出装置の位置関係を示す図
図4】巻取紙の形状変化を示す図
図5】巻取紙の形状変化によって画像検出装置の読取値が変動することを示す図
図6】本発明の用紙断裁精度の安定化装置を示す図
図7】本発明の用紙断裁精度の安定化装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。しかしながら、本願発明は以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他様々な形態がある。
【0024】
本発明の用紙断裁精度の安定化装置を図6に示す。
【0025】
本発明の用紙断裁精度の安定化装置は、従来の画像検出装置(2)に加え、画像検出装置(2)の上部かつ巻取紙(1)の走行位置の下端にあたる位置に透明板(5)を設けている。
【0026】
また、巻取紙(1)を挟んで透明板(5)と対向する位置に、紙押さえ治具(6)を設けている。
【0027】
前述したとおり、画像検出装置(2)の読取値をプリントマーク(3)の実測値と同じ測定値にするためには、画像検出装置(2)と巻取紙(1)の距離を適正な距離で保ち、読取対象であるプリントマーク(3)を常に一定の位置で読取る必要がある。
【0028】
そのためには、巻取紙(1)の波打ち等の用紙形状の変化に伴う、走行位置の上下動を低減する必要がある。
【0029】
本発明の、用紙断裁精度の安定化装置は、巻取紙(1)を透明板(5)と紙押さえ治具(6)で巻取紙を上下から挟み込むことで、巻取紙の走行位置を安定化するものである。
【0030】
透明板(5)は、巻取紙(1)の走行位置の下端に当たる位置に設けられ、巻取紙(1)を下方から押さえるとともに、走行時の段差等を無くし、巻取紙(1)が平滑に走行することを可能とする。
【0031】
透明板(5)は、下方に画像検出装置(2)が設けられていることから、画像検出装置(2)の読取を阻害しないために透明性の基材である必要がある。
【0032】
また、常に巻取紙(1)が接触しながら走行することから、耐摩擦性及び耐久性が高い素材であることが好ましく、たとえばガラス板等を用いることが出来る。
【0033】
紙押さえ治具(6)は、巻取紙(1)を挟んで透明板(5)と対向する位置に設けられ、巻取紙(1)を上方から押さえる役割を果たす。
【0034】
紙押さえ治具(6)の素材は、巻取紙(1)を押さえるだけの強度を有していれば特段限定されるものではなく、例えば厚紙や金属板を用いることが出来る。
【0035】
また、紙押さえ治具(6)は、常に巻取紙(1)と接触しながら抑える必要があることから、摩擦力が低い素材であることが好ましい。
【0036】
摩擦力が高い素材であると、摩擦力によって巻取紙(1)が損傷してしまう可能性がある。
【0037】
紙押さえ治具(6)の素材自体の摩擦力が高い場合は、巻取紙(1)との接触面に摩擦力を低減する素材を設けることも可能であり、例えば、摩擦力を低減するような平滑性の高いテープを貼ることも可能である。
【0038】
このように、透明板(5)と紙押さえ治具(6)で巻取紙(1)を挟み込むことで、巻取紙(1)の走行位置が上下動することが抑えられ、画像検出装置(2)と巻取紙(1)(プリントマーク(3))の距離が一定の距離に保たれることから、正確かつ安定した読取りが可能となる。
【0039】
なお、ここでは巻取紙(1)の下方に画像検出装置(2)及び透明板(5)を設け、巻取紙(1)の上方に紙押さえ治具(6)を設ける構成としたが、巻取紙(1)の上方に画像検出装置(2)及び透明板(5)を設け、巻取紙(1)の下方に紙押さえ治具(6)を設ける構成でも同様に効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0040】
1 巻取紙
2 画像検出装置
3 プリントマーク
4 スリット刃
5 透明板
6 紙押さえ治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7