(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142784
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】付加硬化性液状シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム成型体
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20230928BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20230928BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049867
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 野歩
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP035
4J002CP042
4J002CP043
4J002CP044
4J002CP141
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD142
4J002FD143
4J002FD144
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】硬化が早く、かつ硬化後に適度な硬さ等を有し、変形しにくいシリコーンゴムを与える付加硬化性液状シリコーンゴム組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ケイ素原子結合アルケニル基を1分子中に2個以上有する平均重合度1,500以下の液状オルガノポリシロキサン
(B)(B-1)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均4個以上側鎖に有する末端トリアルキルシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B-2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均1.5~2.5個側鎖に有する末端トリアルキルシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B-3)主鎖がジアルキルシロキサン単位のみからなる両末端ジアルキルハイドロジェンシロキシ基封鎖直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒュームドシリカ
(D)付加反応触媒
を含有する付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)成分:
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有し、平均重合度が1,500以下であり、25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記(B-1)~(B-3)成分:
(B-1)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均4個以上側鎖に含有し、末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B-2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均1.5~2.5個側鎖に含有し、末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B-3)両末端がジアルキルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、主鎖がジアルキルシロキサン単位のみからなる直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:
(B-1)成分と(B-2)成分と(B-3)成分のケイ素原子結合水素原子(Si-H基)の合計モル数(合計Si-H基)に対するそれぞれの成分のSi-H基のモル数が、[Si-H基(B-1)]/[合計Si-H基]=50~80モル%、
[Si-H基(B-2)]/[合計Si-H基]=5~40モル%、
[Si-H基(B-3)]/[合計Si-H基]=5~15モル%であり、かつ
組成物中のアルケニル基の合計(合計アルケニル基)に対する合計Si-H基のモル比が、[合計Si-H基]/[合計アルケニル基]=1~1.8となる量、
(C)BET法による比表面積が130m2/g以上であるヒュームドシリカ:5~40質量部、
(D)付加反応触媒:(A)成分の質量に対し、白金族金属(質量換算)として0.5~100ppm
を含有する付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
更に、(E)平均重合度が2,000以上であり、25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサンを(A)成分100質量部に対して1~200質量部含有する請求項1記載の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
更に、(F)平均重合度が500以下であり、25℃で液状であって、付加反応性を有する置換基を含有しないオルガノポリシロキサンを(A)成分100質量部に対して1~200質量部含有する請求項1又は2記載の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(B-2)成分が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1~3のいずれか1項記載の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物からなるシリコーンゴム成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化性液状シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、安全性、外観の良さ(透明性)、肌触りの良さ、更には、耐久性の良さから、幼児用遊具、食器、歯ブラシ等を成形する材料として広く使用されている。中でも、哺乳瓶用乳首や赤ちゃん用おしゃぶりを成形する材料として好適に用いられる。特に、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物は、副生成物を生じないため、安全性の点から、上記用途に好んで使用されている。
【0003】
現在、広く使用されているシリコーンゴム製の哺乳瓶用乳首の硬さは、デュロメータタイプA硬度で、30~50程度である。しかし、そのデザインの多様化を図るため、あるいは吸引力の弱い赤ちゃん用に、更に低硬度のものが望まれていた。
一方、低硬度のシリコーンゴムの用途としては、マスクの顔面に接触する部分に低硬度シリコーンゴムを使用する場合がある。マスク材料に低硬度のゴムを使用した場合、装着時の不快感を低減させることができる。ところが、低硬度のシリコーンゴムを作製しようして原料に含まれる補強性シリカの量を減らすと、成形したゴムの強度が低下する。そのため、成形後に金型から成型物を取り外す際にゴムに亀裂が入ったり、使用時に容易にゴムが切断されたりしてしまう。また、架橋密度を下げて低硬度にしようとすると、へたりや表面のべたつきがあるゴムになってしまい、哺乳瓶用乳首やマスク材料として、感触が悪いものになってしまう。
【0004】
上記の問題を解決するために、液状シリコーンゴム組成物にシリコーン生ゴムを添加し、ゴムを低硬度化して、べたつき感を解消する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法を用いて硬さを15以下とした場合、表面がべたついたゴムになったり、硬化性が低く、成形時に加硫時間が長くなりすぎたりする問題があった。
このため、架橋点数の異なる3種類の架橋剤を適量併用することで、硬さが15以下でも硬化が早く、高強度となるシリコーンゴム組成物が提案されている(特許文献2)。しかし、この方法で製造されたシリコーンゴム組成物を金型で成形すると、脱型時に成形物が伸びて変形することがあった。また、上手く成形できても、二次加硫しないで成形物を使用した場合、成形物の形状復元性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-321609号公報
【特許文献2】特開2017-222814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、硬化が早く、かつ硬化後に適度な硬さを有し、引裂強さが高く、変形しにくいシリコーンゴムを与えることが可能な付加硬化性液状シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有し、特定の平均重合度を有し、25℃で液状のオルガノポリシロキサンと、特定数のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを複数種と、補強性シリカとを組み合わせることにより、硬化性に優れると共に、一次加硫のみで、所望の硬さ、引裂強さを有し、変形しにくい低硬度シリコーンゴムを与えることが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記に示す付加硬化性液状シリコーンゴム組成物、硬化物及びシリコーンゴム成型体を提供する。
〔1〕
下記(A)~(D)成分:
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有し、平均重合度が1,500以下であり、25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記(B-1)~(B-3)成分:
(B-1)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均4個以上側鎖に含有し、末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B-2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均1.5~2.5個側鎖に含有し、末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B-3)両末端がジアルキルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、主鎖がジアルキルシロキサン単位のみからなる直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:
(B-1)成分と(B-2)成分と(B-3)成分のケイ素原子結合水素原子(Si-H基)の合計モル数(合計Si-H基)に対するそれぞれの成分のSi-H基のモル数が、[Si-H基(B-1)]/[合計Si-H基]=50~80モル%、
[Si-H基(B-2)]/[合計Si-H基]=5~40モル%、
[Si-H基(B-3)]/[合計Si-H基]=5~15モル%であり、かつ
組成物中のアルケニル基の合計(合計アルケニル基)に対する合計Si-H基のモル比が、[合計Si-H基]/[合計アルケニル基]=1~1.8となる量、
(C)BET法による比表面積が130m2/g以上であるヒュームドシリカ:5~40質量部、
(D)付加反応触媒:(A)成分の質量に対し、白金族金属(質量換算)として0.5~100ppm
を含有する付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
〔2〕
更に、(E)平均重合度が2,000以上であり、25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサンを(A)成分100質量部に対して1~200質量部含有する〔1〕記載の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
〔3〕
更に、(F)平均重合度が500以下であり、25℃で液状であって、付加反応性を有する置換基を含有しないオルガノポリシロキサンを(A)成分100質量部に対して1~200質量部含有する〔1〕又は〔2〕記載の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
〔4〕
(B-2)成分が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物。
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物の硬化物。
〔6〕
〔5〕記載の硬化物からなるシリコーンゴム成型体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物は、硬化性に優れ、しかも、適度な硬さ、引裂強さを有し、変形しにくいシリコーンゴムを与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
〔(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン〕
まず、(A)成分は、本発明の組成物の主剤(ベースポリマー)であって、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有し、平均重合度が1,500以下であり、25℃で液状のオルガノポリシロキサンである。
本発明の組成物において、25℃で液状の(即ち、自己流動性のある)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、このオルガノポリシロキサン((A)成分)のみからなるものである。
【0011】
ここで、(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示され、25℃で液状のものを用いることができる。
R1
aSiO(4-a)/2 (1)
【0012】
式中、R1は、互いに同一又は異種の、炭素数1~20の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは、1.5~2.8の正数である。
【0013】
R1の一価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~6のアルキル基;炭素数6~20、好ましくは6~10、より好ましくは6~8のアリール基;炭素数7~20、好ましくは7~10のアラルキル基;炭素数2~20、好ましくは2~10、より好ましくは2~8のアルケニル基等が挙げられる。
R1の一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基などが挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等も挙げられる。
これらの中でも、R1としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましく、全R1のうち、アルケニル基を除いた90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0014】
また、全R1のうち、2個以上はアルケニル基であるが、このアルケニル基としては、炭素数2~6のものがより好ましく、更に好ましくはビニル基である。
なお、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中、1.0×10-6~3.0×10-3モル/gが好ましく、1.0×10-5~2.0×10-3モル/gがより好ましい。アルケニル基の量が1.0×10-6~3.0×10-3モル/gの範囲であれば、強度が高く、低硬度なゴムを与えることができる。
aは、1.5~2.8の正数であるが、好ましくは1.8~2.5、より好ましくは1.95~2.05の正数である。
【0015】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造であるが、部分的には、モノオルガノシルセスキオキサン単位を有する分岐状構造、環状構造などであってもよい。
【0016】
アルケニル基は、分子鎖末端(両末端又は片末端)のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合していてもよいが、本発明の(A)成分においては、分子鎖末端のケイ素原子(即ち、トリオルガノシロキシ基中のケイ素原子)に結合したアルケニル基を分子中に1個以上、好ましくは2個以上含有することが好ましく、分子鎖途中のケイ素原子(即ち、ジオルガノシロキサン単位又はモノオルガノシルセスキオキサン単位中のケイ素原子)に結合したアルケニル基は含有していても、含有していなくてもよい。分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を1個以上、好ましくは2個以上含有しないと、低硬度で、かつ高引裂き強度のゴム硬化物が得られない場合がある。
【0017】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの平均重合度は、1,500以下であり、好ましくは100~1,500、より好ましくは150~1,100である。1,500以下であれば、組成物が成形しやすい粘度となる。
なお、本発明において、平均重合度とは、数平均重合度のことを指し、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした平均重合度を指す。
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:1mL/分
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:KF-805L×2(Shodex社製)
カラム温度:25℃
試料注入量:30μL(濃度0.2質量%のトルエン溶液)
【0018】
また、(A)成分のオルガノポリシロキサンの粘度は、JIS K 7117-1;1999に基づくブルックフィールド型粘度測定において、25℃で、好ましくは0.1~1,000Pa・s、より好ましくは1~500Pa・s、更に好ましくは1~200Pa・sである。粘度がこの範囲であると、組成物が成形しやすくなる。
【0019】
このような(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端オルガノジアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端トリアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体、分子鎖の片末端がジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖で、他方の片末端がトリオルガノシロキシ基封鎖であるジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体である。なお、上記各シロキサン中の「オルガノ基」とは、式(1)中のR1のうち、アルケニル基を除く非置換又は置換の一価炭化水素基と同様のものを意味する。
(A)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
〔(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン〕
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、下記(B-1)成分、(B-2)成分、及び(B-3)成分の3種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用することを特徴とする。(B)成分は、分子中のSi-H基が前記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものである。
(B-1)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均4個以上側鎖に含有し、末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B-2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に平均1.5~2.5個側鎖に含有し、末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B-3)両末端がジアルキルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、主鎖がジアルキルシロキサン単位のみからなる直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
なお、ケイ素原子に結合した水素原子を側鎖に含有するとは、分子鎖途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合した水素原子を含有することをいう。
【0021】
〔(B-1)成分〕
(B-1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造を有するものであってもよいが、直鎖状のものが好ましく、下記平均構造式(2)で示され、1分子中に平均4個以上、好ましくは平均6個以上、より好ましくは平均6~100個、更に好ましくは平均6~50個のケイ素原子結合水素原子(Si-H基)を有するものが好適に用いられる。
【0022】
【0023】
式(2)中、R2は、互いに同一又は異種の、炭素数1~10の非置換又は置換のアルキル基であり、bは、4以上の数であり、cは、0~300の数である。なお、括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は、任意である。
【0024】
ここで、上記R2の炭素数1~10のアルキル基は、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。R2のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等を挙げることができる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等も挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。
これらの中でも、R2としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
bは、好ましくは6以上、より好ましくは6~100、更に好ましくは6~50の数であり、cは、好ましくは1~300の数である。
【0025】
(B-1)成分のSi-H基の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中、0.001~0.017モル/gが好ましく、0.002~0.017モル/gがより好ましい。
【0026】
(B-1)成分の1分子中のケイ素原子の数(又は平均重合度)は、6~500個が好ましく、8~300個程度がより好ましく、8~100個程度が更に好ましく、8~50個程度が特に好ましく、(B-1)成分としては、25℃で液状のものが好適に用いられる。
【0027】
上記(B-1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基等で置換したものなどが挙げられる。
(B-1)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
〔(B-2)成分〕
(B-2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造を有するものであってもよいが、直鎖状のものが好ましく、下記平均構造式(3)で示され、1分子中に平均1.5~2.5個、好ましくは平均1.6~2.4個のケイ素原子結合水素原子(Si-H基)を有するものが好適に用いられる。
【0029】
【0030】
式(3)中、R2は、上記と同じであり、dは、1.5~2.5、好ましくは1.6~2.4の数であり、eは、0~100、好ましくは1~100の数である。なお、括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は、任意である。
【0031】
(B-2)成分のSi-H基の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中、0.0002~0.010モル/gが好ましく、0.0004~0.008モル/gがより好ましい。
【0032】
(B-2)成分の1分子中のケイ素原子の数(又は平均重合度)は、4~100個が好ましく、8~50個程度がより好ましく、(B-2)成分としては、25℃で液状のものが好適に用いられる。
【0033】
上記(B-2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基等で置換したものなどが挙げられる。
(B-2)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
〔(B-3)成分〕
(B-3)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記式平均構造式(4)で示され、両末端にのみケイ素原子結合水素原子(Si-H基)を有するものが好適に用いられる。
【0035】
【0036】
式(4)中、R2は、上記と同じであり、fは、0~300、好ましくは1~300の数である。
【0037】
(B-3)成分のSi-H基の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中、0.00009~0.015モル/gが好ましく、0.0001~0.005モル/gがより好ましい。
【0038】
(B-3)成分の1分子中のケイ素原子の数(又は平均重合度)は、2~300個が好ましく、4~150個程度がより好ましく、4~50個程度が更に好ましく、(B-3)成分としては、25℃で液状のものが好適に用いられる。
【0039】
上記(B-3)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、1,3-ジヒドロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンや、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基などで置換したものなどが挙げられる。これらの中でも特に、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンが好ましい。
(B-3)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
(B-1)~(B-3)成分の配合比は、これら3種類の成分に含まれるケイ素原子結合水素原子(Si-H基)の合計モル数(合計Si-H基)に対するそれぞれの成分のSi-H基のモル数が、下記範囲となるようにする。
[Si-H基(B-1)]/[合計Si-H基]は、50~80モル%、好ましくは60~75モル%である。上記配合比が50~80モル%のとき、硬化が早く、ゴム強度が高くなる。
[Si-H基(B-2)]/[合計Si-H基]は、5~40モル%、好ましくは5~35モル%、より好ましくは5~30モル%である。上記配合比が5~40モル%のとき、硬化が早く、硬化物の硬度を低くしつつ、変形も抑えられる。
[Si-H基(B-3)]/[合計Si-H基]は、5~15モル%、好ましくは8~15モル%である。上記配合比が5~15モル%の範囲であれば、硬化物の硬度を低くしつつ、変形を抑えられる。
【0041】
また、これらの(B-1)~(B-3)成分の合計配合量は、(B-1)~(B-3)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中の合計Si-H基と、組成物中のアルケニル基の総量(特に、上述した(A)成分のアルケニル基、又は後述する(E)成分としてアルケニル基を有するものを配合する場合は(A)成分と(E)成分のアルケニル基の合計)とのモル比(合計Si-H基/合計アルケニル基)が、1~1.8となる量であり、1.1~1.7となる量が好ましい。この範囲に収めると、硬化が早く、硬化物の変形を抑えることができる。
【0042】
更に、(B-1)~(B-3)成分の合計配合量は、(A)成分100質量部に対して0.2~20質量部が好ましく、より好ましくは0.3~10質量部である。
【0043】
〔(C)ヒュームドシリカ〕
(C)成分は、BET法による比表面積が130m2/g以上のヒュームドシリカである。(C)成分のヒュームドシリカは、得られるシリコーンゴムに十分な強度を与えるために必須なものである。ヒュームドシリカのBET法による比表面積は、130m2/g以上であり、好ましくは130~400m2/g、より好ましくは130~380m2/gである。130m2/gより大きいと、成形物の透明性が高く、強度が高くなる。
【0044】
(C)成分のヒュームドシリカの配合量は、(A)成分100質量部に対し、5~40質量部であり、5~30質量部が好ましい。この範囲であると、硬度を低くしつつ、強度を高くできる。
【0045】
上記(C)成分のヒュームドシリカとしては、表面に疎水性処理を施したものを用いることが好ましい。表面処理をしない場合、組成物への分散性が悪く、ヒュームドシリカの凝集体が生成したり、配合が困難になったりする場合がある。
ヒュームドシリカの表面処理は、(A)成分との混合前に、予め粉体の状態で直接処理してもよいし、(A)成分との混合時に、シリカ表面処理剤とともに加熱混合することにより表面処理してもよい。
処理方法としては、従来公知の方法を採用でき、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に、未処理のヒュームドシリカとシリカ表面処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において、室温で又は加熱して混合処理することができる。場合により、触媒を使用して処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより、表面処理シリカ微粉末を製造し得る。
【0046】
シリカ表面処理剤は、上述したように(C)成分であるヒュームドシリカの表面を疎水性処理するために用いることができるものである。シリカ表面処理剤の具体例としては、へキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン等のシラザン類;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物などが挙げられる。これらの中でも、処理剤としては、特にシラン系カップリング剤又はシラザン類が好ましい。
【0047】
シリカ表面処理剤として、ビニル基のようなアルケニル基を含有する表面処理剤を用いる場合は、前記(B)成分の配合量を算出する際に、表面に処理されたアルケニル基の量を組成物のアルケニル基の量に含めるものとする。
なお、シリカ表面処理剤の使用量は、特に制限されるものではないが、(C)成分100質量部に対し、5~75質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましい。
【0048】
(C)成分のヒュームドシリカとしては、市販品を用いることができ、例えば、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジルR-812、アエロジルR-974等のアエロジルシリーズ(日本アエロジル(株)製)、レオロシールQS-102、103((株)トクヤマ製)等の表面未処理又は表面疎水化処理されたヒュームドシリカが挙げられる。
【0049】
〔(D)付加反応触媒〕
(D)成分は、付加反応触媒である。(D)成分の付加反応触媒としては、従来公知のものを使用することができ、その具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、白金とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒などが挙げられる。
この付加反応触媒の配合量は、触媒量とすることができ、通常、(A)成分の質量に対し、白金族金属(質量換算)として、0.5~100ppmであり、1~20ppm程度が好ましい。
【0050】
〔(E)生ゴム状オルガノポリシロキサン〕
次に、本発明の組成物には、(E)成分を配合することができる。(E)成分は、平均重合度(数平均重合度)が2,000以上で、25℃で生ゴム状(即ち、自己流動性のない非液状)のオルガノポリシロキサンである。
【0051】
(E)成分のオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(5)で示されるものを用いることができる。
R3
gSiO(4-g)/2 (5)
【0052】
式中、R3は、互いに同一又は異種の、炭素数1~20の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、gは、1.8~2.5の正数である。
【0053】
ここで、R3の一価炭化水素基の具体例としては、R1で例示した基と同様の基が挙げられるが、中でもメチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましく、全R3の90モル%以上がメチル基で、残余がビニル基であることが好ましい。
【0054】
また、R3には、アルケニル基は含まれていても、含まれていなくてもよいが、アルケニル基を含む場合の含有量は、0.0026モル/g以下が好ましく、0.0014モル/g以下がより好ましい。アルケニル基の量が0.0026モル/g以下であると、硬化が早く、硬化物は低硬度のゴムとなる。このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。また、このアルケニル基としては、炭素数2~6のものがより好ましく、更に好ましくはビニル基である。
gは、1.8~2.5の正数であるが、好ましくは1.9~2.1、より好ましくは1.98~2.01の正数である。
【0055】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、前記(A)成分と同様に、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0056】
分子量については、平均重合度が2,000以上(通常2,000~100,000程度)で、25℃で生ゴム状(即ち、自己流動性のない非液状)のものが好ましく、好ましくは平均重合度が3,000以上(3,000~80,000程度)のものである。平均重合度が2,000以上であると、組成物の粘度を高くでき、成形しやすい粘度に調整でき、また、ゴム表面のべたつきを抑えることができる。
【0057】
このような(E)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子中にアルケニル基を含有しないものとして、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン生ゴム等が挙げられ、また、分子中にアルケニル基を含有するものとして、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン生ゴム、分子鎖両末端オルガノジアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン生ゴム、分子鎖両末端トリアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン生ゴム、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体生ゴム、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体生ゴム、分子鎖の片末端がジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖で他方の片末端がトリオルガノシロキシ基封鎖であるジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体生ゴムなどが挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン生ゴム、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン生ゴム、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体生ゴム、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体生ゴムである。
なお、上記各シロキサン中の「オルガノ基」とは、式(5)中のR3のうち、アルケニル基を除く非置換又は置換の一価炭化水素基と同様のものを意味する。
【0058】
(E)成分は任意成分であるが、配合する場合、(A)成分100質量部に対し、1~200質量部が好ましく、より好ましくは3~150質量部、更に好ましくは5~120質量部である。上記範囲であれば、組成物を成形しやすい粘度にコントロールすることができ、硬化物表面のべたつき感を低減させることができる。
【0059】
〔(F)付加反応性を有する置換基を含有しないオルガノポリシロキサン〕
また、本発明の組成物には、(F)成分を配合することができる。(F)成分は、平均重合度(数平均重合度)が500以下であり、25℃で液状であって、付加反応性を有する置換基を含有しないオルガノポリシロキサンである。
ここで、上記「付加反応性を有する置換基」とは、例えば、アルケニル基のようにヒドロシリル化反応(付加反応)に供することのできる基をいう。
【0060】
(F)成分のオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(6)で示されるものを用いることができる。
R4
hSiO(4-h)/2 (6)
【0061】
式中、R4は、互いに同一又は異種の、炭素数1~20の非置換又は置換の、脂肪族不飽和結合を含有しない一価炭化水素基であり、hは、1.8~2.5の正数である。
【0062】
R4の一価炭化水素基の具体例としては、R1で例示した基のうち、アルケニル基以外のものと同様の基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましく、メチル基がより好ましく、全置換基の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
hは、1.8~2.5の正数であるが、好ましくは1.9~2.1、より好ましくは1.98~2.01の正数である。
【0063】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、前記(A)成分と同様に、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0064】
分子量については、平均重合度が500以下で、25℃で液状のもの、好ましくは平均重合度が20~500、より好ましくは30~300のものである。平均重合度が500以下であれば、ゴム表面のべたつきを抑えつつ、低硬度のゴムを与えることができる。
【0065】
このような(F)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0066】
(F)成分は任意成分であるが、配合する場合、(A)成分100質量部に対し、1~200質量部が好ましく、より好ましくは3~150質量部、更に好ましくは5~120質量部である。この範囲であると、硬化物の強度を高く保ったまま硬度を低下させることができる。
【0067】
〔その他の成分〕
本発明の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物には、その他の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、沈降シリカ、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウム等の充填剤;カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤;窒素含有化合物、アセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤;酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱剤;ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤;接着性付与剤(特には、分子中にアルケニル基、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基等から選ばれる少なくとも1種の官能性基を含有すると共に、分子中にSi-H基を含有しないアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物等);チクソ性付与剤などを配合することは任意である。
【0068】
本発明の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物の硬化スピードとしては、その効率を重視すると、硬化性試験機[ムービングダイ式レオメーター(MDR)]による150℃で2分測定時の10%硬化時間(即ち、150℃において測定開始から2分間における最大トルク値に対する10%のトルク値を与える時の測定開始からの時間)をT10(秒)、90%硬化時間(即ち、150℃において測定開始から2分間における最大トルク値に対する90%のトルク値を与える時の測定開始からの時間)をT90(秒)としたとき、T10が、5秒以上であることが好ましく、より好ましくは8秒以上であり、一方、T90は、50秒以下が好ましく、より好ましくは40秒以下である。この硬化速度であると、成形時のショートや気泡混入を抑制しつつ、成形サイクルを短時間にして連続成形が可能となる。
【0069】
本発明の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物の成形、硬化方法としては、常法を採用し得るが、成形法としては、液状射出成形法が好適に採用される。また、硬化条件としては、
100~230℃で3秒~30分間、好ましくは
110~210℃で5秒~20分間、特に
120~200℃で5秒~10分間程度の加熱処理条件を採用し得る。なお、必要により、80~230℃、特に100~210℃にて10分~24時間、特に30分~10時間のポストキュア(二次加硫)を行うことができる。
【0070】
本発明の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物は、120℃/10分のプレスキュアの条件で硬化して、低硬度でありながら高強度のシリコーンゴム弾性体(エラストマー)を与えることができる。具体的には、JIS K 6253-3:2012に基づく硬さ(デュロメータタイプA)が、好ましくは5~15、より好ましくは7~13であり、JIS K 6252:2007に基づく引裂強さ(クレセント形)が、好ましくは10kN/m以上、より好ましくは12kN/m以上である。
更に、本発明の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物は、上述した条件で成形した硬化物のJIS K 6273:2018に基づき、100%伸長、120℃/24時間の条件で測定した定伸長引張永久歪み試験において、引張永久歪みが、好ましくは15%以下である。引張永久歪みが15%以下であれば、脱型時や成形物を曲げて保管した際の変形を抑制できる。
なお、得られるシリコーンゴムが、上記硬さ等の値を有するためには、組成物において、上述した(A)~(D)成分、必要により(E)及び(F)成分を適切な比率(質量比)で配合することにより達成することができる。
【0071】
本発明の付加硬化性液状シリコーンゴム組成物は、硬化性に優れ、硬化後に低硬度かつ高引裂き強度を有し、変形を生じにくい硬化物及びシリコーンゴム成型体を与えるものであり、哺乳瓶用乳首、おしゃぶり、マスク等の材料などとして好適に用いられる。
【実施例0072】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記例において、「部」は、質量部のことを指す。また、粘度は、JIS K 7117-1;1999に基づくブルックフィールド型粘度測定における25℃での値を指す。
【0073】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であり、25℃での粘度が31Pa・sであるジメチルポリシロキサン(A1、前記式(1)におけるa=2.0027に相当)65部、BET法による比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(C1)(アエロジル300、日本アエロジル(株)製)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン0.1部、水2.0部を25℃で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。なお、このシリコーンゴムベースの29Si固体NMRを測定すると、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンの半量がシリカ上に固定されていることが分かった(ビニル基として0.00054モルに相当する。)。
【0074】
このシリコーンゴムベース105部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)25部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(E1、前記式(5)におけるg=2.00025に相当)30部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、平均重合度が60の分子中にビニル基を含有しないジメチルポリシロキサン(F1、前記式(6)におけるh=2.013に相当)50部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に、架橋剤として、下記式(7)
【化4】
で示される、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を平均15個有するメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-1-1)(平均重合度32、Si-H基量0.0069モル/g)を0.59部、下記式(8)
【化5】
で示される、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を平均2.0個有するメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-2-1)(平均重合度30、Si-H基量0.00091モル/g)を1.59部、下記式(9)
【化6】
で示される、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を有しないジメチルポリシロキサン(B-3-1)(平均重合度20、Si-H基量0.0014モル/g)を0.56部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.02部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
【0075】
なお、この混合物において、混合物全体中のSi-H基の合計に対する(B-1-1)成分、(B-2-1)成分、(B-3-1)成分のSi-H基の配合比は、(B-1-1)成分が65モル%、(B-2-1)成分が23モル%、(B-3-1)成分が12モル%であり、また、混合物全体の総Si-H基量と総ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.55である。
【0076】
このシリコーンゴム混合物中に、白金触媒(白金/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、Pt濃度1質量%)(D1)0.04部を混合してシリコーンゴム組成物とした。得られた組成物について以下の評価を行い、結果を表1に記載した。
【0077】
[組成物の硬化性]
レオメーターMDR2000(アルファテクノロジーズ社製)を用い、150℃、2分測定における硬化性T10及びT90を測定した。なお、T10、T90とは、150℃において測定開始から2分間における最大トルク値に対する10%及び90%のトルク値を与える時の測定開始からの時間を指す。
[硬化物の物性]
120℃×10分間プレスキュアを行い、上記組成物の2mm厚のシート状硬化物を作製し、以下の物性を測定した。
・硬さ…JIS K 6253-3:2012記載の方法で測定したデュロメータタイプAにおける硬さ
・引裂強さ…JIS K 6252:2007記載の方法で測定したクレセント形試験片を用いた引裂強さ
・定伸長引張永久歪み…JIS K 6273:2018記載の方法により、100%伸長、120℃/24時間の条件で測定した定伸長引張永久歪み
【0078】
[実施例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が1,000であり、25℃での粘度が98Pa・sであるジメチルポリシロキサン(A2、前記式(1)におけるa=2.0020に相当)65部、上記ヒュームドシリカ(C1)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン0.1部、水2.0部を25℃で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。なお、このシリコーンゴムベースの29Si固体NMRを測定すると、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンの半量がシリカ上に固定されていることが分かった。
【0079】
このシリコーンゴムベース105部に、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であり、25℃での粘度が10Pa・sであるジメチルポリシロキサン(A3、前記式(1)におけるa=2.0040に相当)25部、上記ジメチルポリシロキサン生ゴム(E1)30部、上記ジメチルポリシロキサン(F1)50部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に、架橋剤として、下記式(10)
【化7】
で示される、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を平均20個有するメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-1-2)(平均重合度42、Si-H基量0.0070モル/g)を0.60部、下記式(11)
【化8】
で示される、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を平均1.8個有するメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-2-2)(平均重合度20、Si-H基量0.0012モル/g)を1.25部、下記式(12)
【化9】
で示される、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を有しないジメチルポリシロキサン(B-3-2)(平均重合度40、Si-H基量0.00068モル/g)を0.88部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.02部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
【0080】
なお、この混合物において、混合物全体中のSi-H基の合計に対する(B-1-2)成分、(B-2-2)成分、(B-3-2)成分のSi-H基の配合比は、(B-1-2)成分が66.7モル%、(B-2-2)成分が23.8モル%、(B-3-2)成分が9.5モル%であり、また、混合物全体の総Si-H基量と総ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.60である。
【0081】
このシリコーンゴム混合物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)(D1)0.04部を混合してシリコーンゴム組成物とした。得られた組成物について、実施例1と同様に、硬化性、硬化物物性を測定し、結果を表1に記載した。
【0082】
[実施例3]
上記ジメチルポリシロキサン(A1)60部、上記ヒュームドシリカ(C1)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン0.1部、水2.0部を25℃で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。なお、このシリコーンゴムベースの29Si固体NMRを測定すると、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンの半量がシリカ上に固定されていることが分かった。
【0083】
このシリコーンゴムベース100部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)30部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が4,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(E2、前記式(5)におけるg=2.00050に相当)15部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(E3、前記式(5)におけるg=2.00025に相当)15部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、平均重合度が150の分子中にビニル基を含有しないジメチルポリシロキサン(F2、前記式(6)におけるh=2.033に相当)40部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に、架橋剤として、下記式(13)
【化10】
で示される、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を平均10個有するメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-1-3)(平均重合度27、Si-H基量0.0053モル/g)を0.74部、下記式(14)
【化11】
で示される、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を平均2.2個有するメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-2-3)(平均重合度34、Si-H基量0.00088モル/g)を2.22部、下記式(15)
【化12】
で示される、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を有しないジメチルポリシロキサン(B-3-3)(平均重合度17、Si-H基量0.0016モル/g)を0.41部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.02部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
【0084】
なお、この混合物において、混合物全体中のSi-H基の合計に対する(B-1-3)成分、(B-2-3)成分、(B-3-3)成分のSi-H基の配合比は、(B-1-3)成分が60モル%、(B-2-3)成分が30モル%、(B-3-3)成分が10モル%であり、また、混合物全体の総Si-H基量と総ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.60である。
【0085】
このシリコーンゴム混合物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)(D1)0.04部を混合してシリコーンゴム組成物とした。得られた組成物について、実施例1と同様に、硬化性、硬化物物性を測定し、結果を表1に記載した。
【0086】
[比較例1]
上記ジメチルポリシロキサン(A1)65部、上記ヒュームドシリカ(C1)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン0.1部、水2.0部を25℃で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。なお、このシリコーンゴムベースの29Si固体NMRを測定すると、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンの半量がシリカ上に固定されていることが分かった。
【0087】
このシリコーンゴムベース105部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)25部、ジメチルポリシロキサン生ゴム(E1)35部、上記ジメチルポリシロキサン(F1)55部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に、架橋剤として、上記両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-1-1)を0.71部、上記両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(B-3-1)を0.90部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.02部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
【0088】
なお、この混合物において、混合物全体中のSi-H基の合計に対する(B-1-1)成分、(B-3-1)成分のSi-H基の配合比は、(B-1-1)成分が80モル%、(B-3-1)成分が20モル%であり、また、混合物全体の総Si-H基量と総ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.50である。
【0089】
このシリコーンゴム混合物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)(D1)0.04部を混合してシリコーンゴム組成物とした。得られた組成物について、実施例1と同様に、硬化性、硬化物物性を測定し、結果を表1に記載した。
【0090】
[比較例2]
上記ジメチルポリシロキサン(A1)65部、上記ヒュームドシリカ(C1)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン0.1部、水2.0部を25℃で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。なお、このシリコーンゴムベースの29Si固体NMRを測定すると、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンの半量がシリカ上に固定されていることが分かった。
【0091】
このシリコーンゴムベース105部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)25部、ジメチルポリシロキサン生ゴム(E1)35部、上記ジメチルポリシロキサン(F2)70部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に、架橋剤として、上記両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-1-1)を0.80部、上記両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(B-3-1)を0.45部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.02部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
【0092】
なお、この混合物において、混合物全体中のSi-H基の合計に対する(B-1-1)成分、(B-3-1)成分のSi-H基の配合比は、(B-1-1)成分が90モル%、(B-3-1)成分が10モル%であり、また、混合物全体の総Si-H基量と総ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.50である。
【0093】
このシリコーンゴム混合物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)(D1)0.04部を混合してシリコーンゴム組成物とした。得られた組成物について、実施例1と同様に、硬化性、硬化物物性を測定し、結果を表1に記載した。
【0094】
[比較例3]
上記ジメチルポリシロキサン(A1)65部、上記ヒュームドシリカ(C1)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン0.1部、水2.0部を25℃で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。なお、このシリコーンゴムベースの29Si固体NMRを測定すると、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンの半量がシリカ上に固定されていることが分かった。
【0095】
このシリコーンゴムベース105部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)25部、ジメチルポリシロキサン生ゴム(E1)30部、上記ジメチルポリシロキサン(F2)50部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に、架橋剤として、上記両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-1-1)を0.57部、上記両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-2-2)を2.17部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.02部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
【0096】
なお、この混合物において、混合物全体中のSi-H基の合計に対する(B-1-1)成分、(B-2-2)成分のSi-H基の配合比は、(B-1-1)成分が60モル%、(B-2-2)成分が40モル%であり、また、混合物全体の総Si-H基量と総ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.60である。
【0097】
このシリコーンゴム混合物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)(D1)0.04部を混合してシリコーンゴム組成物とした。得られた組成物について、実施例1と同様に、硬化性、硬化物物性を測定し、結果を表1に記載した。
【0098】
[比較例4]
上記ジメチルポリシロキサン(A1)65部、上記ヒュームドシリカ(C1)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン0.1部、水2.0部を25℃で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。なお、このシリコーンゴムベースの29Si固体NMRを測定すると、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンの半量がシリカ上に固定されていることが分かった。
【0099】
このシリコーンゴムベース105部に、上記ジメチルポリシロキサン(A1)25部、ジメチルポリシロキサン生ゴム(E1)30部、上記ジメチルポリシロキサン(F2)60部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に、架橋剤として、上記両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-1-1)を0.58部、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(B-3-1)を0.67部、下記式(16)
【化13】
で示される、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSi-H基を平均3.0個有するメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(B-4-1)を0.89部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.02部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム混合物を得た。
【0100】
なお、この混合物において、混合物全体中のSi-H基の合計に対する(B-1-1)成分、(B-3-1)成分、(B-4-1)成分のSi-H基の配合比は、(B-1-1)成分が65モル%、(B-3-1)成分が15モル%、(B-4-1)成分が20モル%であり、また、混合物全体の総Si-H基量と総ビニル基量のモル比(Si-H基/ビニル基)は1.50である。
【0101】
このシリコーンゴム混合物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)(D1)0.04部を混合してシリコーンゴム組成物とした。得られた組成物について、実施例1と同様に、硬化性、硬化物物性を測定し、結果を表1に記載した。
【0102】