(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142824
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01L21/68 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049936
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 云峰
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA33
5F131BA37
5F131CA07
5F131DB22
5F131DB62
5F131DB72
(57)【要約】
【課題】フレームの開口に支持部材を介して保持されたウエーハを、液体で覆って搬送する際に、ウエーハの撓みを抑制することができる搬送装置を提供すること。
【解決手段】搬送ユニット1は、中央に開口211が形成されたフレーム212の開口211に支持部材210を介してウエーハ200を保持するフレームユニット215を搬送する装置であって、フレーム212を保持するフレーム保持部20と、ウエーハ200を覆うカバー部材30と、カバー部材30と、支持部材210との間に液体を供給する液体供給部60と、を備え、カバー部材30は、ウエーハ200から所定の隙間をあけて、ウエーハ200の上方を覆うプレート31と、プレート31から垂下し、フレーム212とウエーハ200との間の支持部材210に接触する側壁部32と、を有し、側壁部32の支持部材210と接触する下端面33で支持部材210を吸引保持する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口が形成されたフレームの該開口に支持部材を介してウエーハを保持するフレームユニットを搬送する搬送装置であって、
搬送装置は、該フレームを保持するフレーム保持部と、
該ウエーハを覆うカバー部材と、
該カバー部材と、該支持部材との間に液体を供給する液体供給部と、を備え、
該カバー部材は、
該ウエーハから所定の隙間をあけて、該ウエーハの上方を覆うプレートと、
該プレートから垂下し、該フレームと該ウエーハとの間の該支持部材に接触する側壁部と、を有し、
該側壁部の該支持部材と接触する面で該支持部材を吸引保持することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
該カバー部材の該側壁部は、外側壁部と、内側壁部と、によって二重に形成され、該側壁部と、該内側壁部との間の空間が該支持部材を吸引する吸引経路の一部になることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエーハを任意の加工ユニットによって加工した後に、搬送装置によって洗浄ユニットまで搬送する場合、搬送中にウエーハに付着した加工屑が乾燥してしまうと、その後洗浄ユニットによって除去できなくなる恐れがある。そこで、ウエーハを水で覆った状態で搬送する搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウエーハを水で覆う事でその重みでウエーハとウエーハを支持する支持部材との少なくともいずれかが下に撓み、フレームから支持部材が剥がれる、支持部材が伸びてしまう、撓みによってウエーハに力がかかり損傷する、などの恐れがあった。
【0005】
特にチップに個片化されたウエーハを搬送する際は、ウエーハや支持部材が撓むことでチップ同士が衝突し、欠けてしまう恐れや、支持部材が伸びることでチップの位置ずれやチップ同士の衝突が発生する恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、フレームの開口に支持部材を介して保持されたウエーハを、液体で覆って搬送する際に、ウエーハの撓みを抑制することができる搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の搬送装置は、中央に開口が形成されたフレームの該開口に支持部材を介してウエーハを保持するフレームユニットを搬送する搬送装置であって、搬送装置は、該フレームを保持するフレーム保持部と、該ウエーハを覆うカバー部材と、該カバー部材と、該支持部材との間に液体を供給する液体供給部と、を備え、該カバー部材は、該ウエーハから所定の隙間をあけて、該ウエーハの上方を覆うプレートと、プレートから垂下し、該フレームと該ウエーハとの間の該支持部材に接触する側壁部と、を有し、該側壁部の該支持部材と接触する面で該支持部材を吸引保持することを特徴とする。
【0008】
前記搬送装置において、該カバー部材の該側壁部は、外側壁部と、内側壁部と、によって二重に形成され、該側壁部と、該内側壁部との間の空間が該支持部材を吸引する吸引経路の一部になっても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、フレームの開口に支持部材を介して保持されたウエーハを、液体で覆って搬送する際に、ウエーハまたは支持部材の少なくともいずれかの撓みを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る搬送装置である搬送ユニットを備える加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された加工装置の加工対象のウエーハを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る搬送装置である搬送ユニットを模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る搬送方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示された搬送方法の保持ステップにおいて搬送ユニットのフレーム保持部の下端面及び側壁部の下端面を接触させた状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示された搬送方法の保持ステップにおいて搬送ユニットがフレームユニットを吸引保持した状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示された搬送方法の液体供給ステップを模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図4に示された搬送方法の搬送ステップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る搬送装置である搬送ユニット1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る搬送装置である搬送ユニットを備える加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示された加工装置の加工対象のウエーハを示す斜視図である。
図3は、実施形態1に係る搬送装置である搬送ユニットを模式的に示す断面図である。
【0013】
(ウエーハ)
実施形態1に係る搬送ユニット1は、
図1に示す加工装置100を構成する。実施形態1において、加工装置100は、
図2に示すウエーハ200を化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)する研磨装置である。
図1に示された加工装置100の加工対象であるウエーハ200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板201とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。
【0014】
ウエーハ200は、
図2に示すように、基板201の表面202に格子状に分割予定ライン203が設定され、分割予定ライン203によって区画された各領域にデバイス204が形成されている。
【0015】
デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、又はメモリ(半導体記憶装置)である。
【0016】
実施形態1において、ウエーハ200は、表面202にウエーハ200よりも大径な円板状の支持部材210が貼着され、支持部材210の外縁部に中央に開口211が形成されたフレーム212が貼着されて、
図2に示すフレームユニット215を構成する。フレームユニット215は、中央に開口211が形成されたフレーム212の開口211内に支持部材210を介してウエーハ200を保持して構成されるものである。
【0017】
ウエーハ200は、フレームユニット215を構成した状態で、加工装置100により裏面205が研磨される。ウエーハ200は、加工装置100により裏面205が研磨される。なお、実施形態1において、フレームユニット215を構成する支持部材210は、可撓性と非粘着性とを有する樹脂により構成された基材層と、基材層に積層されかつ可撓性と粘着性とを有する樹脂により構成された粘着層とを有した粘着テープである。
【0018】
しかしながら、本発明では、支持部材210は、可撓性と非粘着性とを有する樹脂により構成された基材層のみで構成されても良い。支持部材210は、可撓性と非粘着性とを有する樹脂により構成された基材層のみで構成される場合には、基材層がポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレンなどの熱可塑性樹脂で構成され、熱圧着によりウエーハ200及びフレーム212に貼着される。
【0019】
(加工装置)
次に、加工装置100を説明する。加工装置100は、ウエーハ200の裏面205を化学機械研磨する研磨装置である。加工装置100は、
図1に示すように、装置本体101と、研磨ユニット102と、研磨送りユニット103と、ターンテーブル104と、ターンテーブル104上に設置された複数(実施形態1では2つ)の保持テーブル105と、カセット106と、位置合わせユニット107と、搬入ユニット108と、洗浄ユニット109と、搬出入ユニット110と、制御ユニット111と、搬送装置である搬送ユニット1とを備えている。
【0020】
ターンテーブル104は、装置本体101の上面に設けられた円盤状のテーブルであり、水平面内でZ軸方向と平行な軸心回りに回転可能に設けられ、所定のタイミングで回転駆動される。このターンテーブル104上には、例えば2つの保持テーブル105が、例えば180度の位相角に配設されている。これら2つの保持テーブル105は、保持面112が水平方向と平行でかつ図示しない吸引源と接続した真空チャックを備えた保持テーブル構造のものであり、ウエーハ200の表面202側が保持面112上に載置されて、吸引源により吸引されて、ウエーハ200を保持面112に吸引保持する。
【0021】
これら保持テーブル105は、研削加工時には、鉛直方向即ちZ軸方向と平行な軸心回りに、回転駆動機構によって水平面内で回転駆動される。保持テーブル105は、ターンテーブル104の回転によって、搬入出領域301と研磨領域302とに亘って移動される。
【0022】
なお、搬入出領域301は、保持テーブル105にウエーハ200を搬入搬出する領域であり、研磨領域302は、研磨ユニット102で保持テーブル105に保持されたウエーハ200を化学機械研磨する領域である。
【0023】
また、保持テーブル105は、
図3に示すように、保持面112の外周に設けられ、かつ図示しない吸引源と接続し、吸引源により吸引されることでフレーム212を吸引保持する吸引保持部113を備える。
【0024】
研磨ユニット102は、保持テーブル105に保持されたウエーハ200の裏面205を化学機械研磨する研磨パッド114が装着されて、研磨領域302の保持テーブル105の保持面112に保持されたウエーハ200の裏面205にスラリーを供給しながら裏面205を化学機械研磨するものである。なお、スラリーは、砥粒を含むアルカリ性水溶液又は酸性水溶液であり、例えば、グリーンカーボランダム、ダイヤモンド、アルミナ、酸化セリウム、CBN(立方晶窒化ホウ素)の砥粒が含有される。
【0025】
研磨ユニット102は、モータ115により研磨パッド114が軸心回りに回転されるとともにスラリーを研磨領域302の保持テーブル105に保持されたウエーハ200の裏面205に供給しながら研磨送りユニット103により研磨パッド114が保持テーブル105に所定の送り速度で近づけられることによって、ウエーハ200の裏面205を化学機械研磨する。
【0026】
研磨送りユニット103は、研磨ユニット102をZ軸方向に移動させて、研磨ユニット102を保持テーブル105に対して離間及び接近させるものである。実施形態1において、研磨送りユニット103は、装置本体101の水平方向と平行なY軸方向の一端部から立設した立設柱116に設けられている。研磨送りユニット103は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及び研磨ユニット102のスピンドルハウジングをZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0027】
なお、実施形態1において、研磨ユニット102は、研磨パッド114の回転中心である軸心と、保持テーブル105の回転中心である軸心とが、互いに水平方向に間隔をあけて平行に配置されている。
【0028】
カセット106は、複数のスロットを有して、フレームユニット215を複数収容するための収容容器である。カセット106は、研磨加工前後のウエーハ200を含むフレームユニット215を複数枚収容する。実施形態1では、カセット106は、一対設けられ、それぞれカセット設置台に設置される。カセット設置台は、カセット106をZ軸方向に昇降する。位置合わせユニット107は、カセット106から取り出されたフレームユニット215が仮置きされて、その中心位置合わせを行うためのテーブルである。
【0029】
搬入ユニット108は、フレームユニット215を吸着する吸着パッドを有している。搬入ユニット108は、位置合わせユニット107で位置合わせされた研削加工前のウエーハ200を含むフレームユニット215を吸着保持して搬入出領域301に位置する保持テーブル105上に搬入する。洗浄ユニット109は、研磨後のウエーハ200を洗浄テーブル117に吸引保持して、洗浄し、研磨された裏面205に付着しているコンタミネーション、などを除去する。
【0030】
搬出入ユニット110は、研磨加工前のウエーハ200を含むフレームユニット215をカセット106から取り出して、フレームユニット215を位置合わせユニット107に搬送するとともに、研磨加工後のウエーハ200を含むフレームユニット215を洗浄ユニット109から取り出して、カセット106に搬送する。搬出入ユニット110は、例えばU字型ハンド118を備えるロボットピックであり、U字型ハンド118によってフレームユニット215を吸着保持して搬送する。
【0031】
制御ユニット111は、加工装置100を構成する上述した各構成ユニットをそれぞれ制御するものである。即ち、制御ユニット111は、ウエーハ200に対する加工動作を加工装置100に実行させるものである。制御ユニット111は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。
【0032】
制御ユニット111の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置100を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して加工装置100の上述した構成要素に出力する。また、制御ユニット111は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニット及びオペレータに報知する報知ユニットと接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニットは、音と光とタッチパネル上のメッセージとのうち少なくともいずれかを発して、オペレータに報知する。
【0033】
(搬送ユニット)
実施形態1において、搬送ユニット1は、搬入出領域301に位置する保持テーブル105の保持面112上の研磨加工後のウエーハ200を含むフレームユニット215を吸引保持して、フレームユニット215を洗浄ユニット109の洗浄テーブル117に搬送する搬送装置である。搬送ユニット1は、
図3に示すように、搬送アーム2と、支持プレート10と、フレーム保持部20と、カバー部材30と、吸引機構40と、カバー部材支持機構50と、液体供給部60とを備える。
【0034】
搬送アーム2は、直線状に延在している。搬送アーム2は、一端部が回動機構3により装置本体101にZ軸方向と平行な軸心回りに回動自在に設けられている。搬送アーム2は、他端部に支持プレート10を支持している。搬送アーム2は、回動機構3により装置本体101に対して一端部が軸心回りに回転されることで、支持プレート10が搬入出領域301に位置付けられた保持テーブル105の保持面112と対向する位置と、洗浄ユニット109の洗浄テーブル117と対向する位置とに亘って移動される。また、搬送アーム2は、一端部が昇降機構4により装置本体101に対してZ軸方向に昇降される。
【0035】
支持プレート10は、外径が、ウエーハ200よりも大径な円板状に形成され、搬送アーム2の他端部に支持されている。実施形態1では、支持プレート10は、両表面が水平方向と平行に配置され、外径がフレーム212の外径と等しい。
【0036】
フレーム保持部20は、フレームユニット215のフレーム212を吸引保持するものである。フレーム保持部20は、支持プレート10の外縁部に周方向に間隔(実施形態1では、等間隔)をあけて複数設けられている。フレーム保持部20は、支持プレート10の外縁部から下方に延在し、下端面22に開閉弁21を介して吸引機構40の吸引源41に接続した図示しない吸引孔が設けられている。フレーム保持部20は、吸引孔が吸引源41により吸引されることで、下端面22にフレームユニット215のフレーム212を吸引保持する。
【0037】
カバー部材30は、回動機構3により搬送アーム2の他端部に支持された支持プレート10が搬入出領域301に位置付けられた保持テーブル105の保持面112と対向する位置に位置付けられ、昇降機構4により搬送アーム2が下降されることで保持テーブル105に保持されたフレームユニット215のウエーハ200を覆うものである。カバー部材30は、支持プレート10の下方に支持プレート10と同軸に配置されている。カバー部材30は、ウエーハ200よりも大径でかつフレーム212の内径よりも小径な円板状のプレート31と、プレート31の外縁に全周に亘って連なった円筒状の側壁部32とを備える。
【0038】
プレート31は、両表面202が水平方向と平行に配置されている。プレート31は、カバー部材30が保持テーブル105に保持されたウエーハ200を覆う際に、保持テーブル105に保持されたウエーハ200から所定の隙間をあけて、ウエーハ200の上方を覆う。
【0039】
側壁部32は、プレート31の外縁から下方に向かって延在して、プレート31から垂下している。側壁部32は、回動機構3により搬送アーム2の他端部に支持された支持プレート10が搬入出領域301に位置付けられた保持テーブル105の保持面112と対向する位置に位置付けられると、下端面33が保持テーブル105の保持面112の外縁部と対向する。
【0040】
側壁部32は、回動機構3により搬送アーム2の他端部に支持された支持プレート10が搬入出領域301に位置付けられた保持テーブル105の保持面112と対向する位置に位置付けられ、昇降機構4により搬送アーム2が下降されることで下端面33がフレーム212の内径とウエーハ200の外径との間でかつ保持面112の外縁部上の支持部材210に接触する。なお、側壁部32の下端面33は、側壁部32の支持部材210と接触する面である。カバー部材30の側壁部32の少なくとも下端面33は、支持部材210から剥離し易いように、フッ素樹脂などにより構成されるか、フッ素樹脂などの剥離し易いコーティングが施されるのが望ましい。なお、支持部材210が粘着層を有さない基材層のみで形成される場合は、下端面33に支持部材210が貼着されるおそれがなく、吸引解除によって支持部材210からカバー部材30を容易に剥離できるので好ましい。
【0041】
また、カバー部材30は、プレート31が互いに重ねられた外プレート311と内プレート312とを備え、側壁部32が互いに重ねられた外側壁部321と内側壁部322とを備えている。このために、カバー部材30は、プレート31が外プレート311と内プレート312とによって二重に形成され、側壁部32が外側壁部321と内側壁部322とによって二重に形成されている。実施形態1では、外プレート311の外縁に外側壁部321が連なって、外プレート311と外側壁部321とが一体に構成されている。また、実施形態1では、内プレート312の外縁に内側壁部322が連なって、内プレート312と内側壁部322とが一体に構成されている。
【0042】
また、カバー部材30は、プレート311,312間及び側壁部321,322間に支持部材210を吸引する吸引経路36の一部になる空間34が設けられている。空間34は、下端面33に開口している。
【0043】
吸引経路36は、空間34と、空間34と吸引源41とを接続するとともに開閉弁35を設けた吸引管37とを含んでいる。吸引管37と空間34とは、外プレート311の中心で互いに接続している。なお、本発明では、カバー部材30は、プレート311,312間に空間34を設けずに、外側壁部321と内側壁部322との間のみに空間34を設け、外プレート311の外縁部または上部で吸引管37と空間34とを互いに接続しても良い。カバー部材30は、吸引源41により吸引経路36即ち空間34が吸引されることで、側壁部32の下端面33に支持部材210を吸引保持する。なお、空間34の開口となる吸引孔は、周方向に連続した溝に形成されても良く、周方向に間隔をあけて複数設けられても良い。周方向に連続した環状溝に形成されることで、液体61の漏れを防止してシールする効果がある。
【0044】
吸引機構40は、前述した吸引源41と、開閉弁21,35とを備え、フレーム保持部20の下端面22にフレーム212を吸引保持するとともに、側壁部32の下端面33に支持部材210を吸引保持するものである。即ち、カバー部材30は、下端面33で支持部材210を吸引保持する。
【0045】
カバー部材支持機構50は、カバー部材30を支持プレート10の下方に支持するものである。カバー部材支持機構50は、支持プレート10の貫通孔11内に遊挿されかつ下端がカバー部材30のプレート31に取り付けられた小径柱状部51と、小径柱状部51の上端に連なりかつ支持プレート10上に重なる大径円板部52と、小径柱状部51を内側に通しかつ支持プレート10とカバー部材30との間に配置されて、カバー部材30を支持プレート10から離れる方向即ち下方に向かって付勢するばね53とを備える。小径柱状部51は、実施形態では、円柱状に形成されている。大径円板部52は、実施形態1では、小径柱状部51の外径よりも大径な円板状に形成されている。
【0046】
液体供給部60は、カバー部材30と、下端面33に吸引保持した支持部材210との間に液体61(
図7に示す)を供給するものである。液体供給部60は、液体61を供給する液体供給源62と、液体供給源62に接続しかつカバー部材30の内プレート312の内面に開口した供給管63と、供給管63に設けられた開閉弁64とを備える。
【0047】
(搬送方法)
次に、実施形態1に係る搬送方法を説明する。
図4は、実施形態1に係る搬送方法の流れを示すフローチャートである。搬送方法は、フレームユニット215を搬送する方法である。実施形態1では、搬送方法は、前述した搬送ユニット1が、搬入出領域301に位置する保持テーブル105の保持面112上の研磨加工後のウエーハ200を含むフレームユニット215を保持して、洗浄ユニット109の洗浄テーブル117まで搬送する方法である。
【0048】
実施形態1に係る基板の搬送方法は、
図4に示すように、保持ステップ1001と、液体供給ステップ1002と、搬送ステップ1003とを備える。
【0049】
(保持ステップ)
図5は、
図4に示された搬送方法の保持ステップにおいて搬送ユニットのフレーム保持部の下端面及び側壁部の下端面を接触させた状態を模式的に示す断面図である。
図6は、
図4に示された搬送方法の保持ステップにおいて搬送ユニットがフレームユニットを吸引保持した状態を模式的に示す断面図である。保持ステップ1001は、フレームユニット215を搬送ユニット1が保持するステップである。保持ステップ1001は、フレーム保持ステップ1001-1と、支持部材保持ステップ1001-2とを備える。
【0050】
フレーム保持ステップ1001-1では、制御ユニット111が、開閉弁21,35,64を閉じた状態で、回動機構3及び昇降機構4を制御して、
図3に示すように、搬入出領域301に位置し研磨加工が施されたウエーハ200を保持する保持テーブル105の上方に支持プレート10を位置付ける。フレーム保持ステップ1001-1では、制御ユニット111が、昇降機構4を制御して、搬送アーム2を下降して、
図5に示すように、搬入出領域301に位置し研磨加工が施されたウエーハ200を含むフレームユニット215のフレーム212にフレーム保持部20の下端面22を接触させ、フレームユニット215の保持面112の外縁部上の支持部材210に側壁部32の下端面33を接触させる。
【0051】
フレーム保持ステップ1001-1では、制御ユニット111が、
図6に示すように、開閉弁21を開いて、フレーム保持部20の下端面22にフレーム212を吸引保持し、開閉弁35を開いて、側壁部32の下端面33に支持部材210を吸引保持する支持部材保持ステップ1001-2を実施する。こうして、カバー部材30は、側壁部32の下端面33に支持部材210を吸引保持することで、フレームユニット215のウエーハ200の上方を覆うこととなる。なお、フレーム保持ステップ1001-1と、支持部材保持ステップ1001-2とは、どちらを先に実施しても良いし、同時に実施しても良い。
【0052】
(液体供給ステップ)
図7は、
図4に示された搬送方法の液体供給ステップを模式的に示す断面図である。液体供給ステップ1002は、保持ステップ1001後に、カバー部材30と、支持部材210及びウエーハ200の裏面205との間に液体61を供給するステップである。
【0053】
実施形態1において、液体供給ステップ1002では、制御ユニット111が開閉弁64を開いて、
図7に示すように、カバー部材30と、支持部材210及びウエーハ200との間に液体61を充填する。実施形態1において、液体供給ステップ1002では、カバー部材30と、支持部材210及びウエーハ200との間に液体61が充填されると、制御ユニット111が開閉弁64を閉じる。なお液体61はウエーハ200の表面202が乾かないように表面202を被覆すれば十分であり、カバー部材30と、支持部材210及びウエーハ200と、の全ての空間を満たさなくても良い。
【0054】
(搬送ステップ)
図8は、
図4に示された搬送方法の搬送ステップを模式的に示す断面図である。搬送ステップ1003は、液体供給ステップ1002後に、搬送ユニット1が吸引保持したフレームユニット215を搬送するステップである。
【0055】
搬送ステップ1003では、制御ユニット111が、搬入出領域301に位置し研磨加工が施されたウエーハ200を含むフレームユニット215を保持する保持テーブル105の吸引保持を停止するとともに、吸引保持部113のフレーム212の吸引保持を停止する。実施形態1において、搬送ステップ1003では、制御ユニット111が、昇降機構4を制御して、
図8に示すように、搬送アーム2を上昇させた後、回動機構3を制御して、搬送アーム2の一端部を中心に回動させて、フレームユニット215を搬送ユニット1が洗浄ユニット109の洗浄テーブル117に搬送する。
【0056】
また、実施形態1において、洗浄ユニット109に搬送されたウエーハ200は、洗浄ユニット109の洗浄テーブル117に保持された後、フレーム212とカバー部材30との吸引保持を解除して、カバー部材30を含む搬送アーム2を上昇させることで、液体61を洗浄ユニット109内に流す。その後洗浄ユニット109で図示しない洗浄ノズルにより洗浄水が、裏面205等に供給され、ウエーハ200が洗浄される。洗浄後のウエーハ200を含むフレームユニット215は、搬出入ユニット110によりカセット106まで搬送され、カセット106内に収容される。
【0057】
以上説明したように、実施形態1に係る搬送ユニット1は、支持部材210を側壁部32の下端面33に吸引保持するので、吸引保持したフレームユニット215の支持部材210とウエーハ200との少なくともいずれかがカバー部材30内の液体61の質量などによって、フレーム212から垂れ下がることを抑制することができる。このために、搬送ユニット1は、吸引保持したフレームユニット215の支持部材210がフレーム212から剥がれる事、支持部材210が伸びる事、ウエーハ200が撓むことを抑制することができる。その結果、搬送ユニット1は、フレーム212の開口211に支持部材210を介して保持されたウエーハ200を、液体61で覆って搬送する際に、ウエーハ200の撓みを抑制し、ウエーハ200を損傷させる恐れを低減できるという効果を奏する。
【0058】
また、実施形態1に係る搬送ユニット1は、加工装置100において裏面205が研磨されたウエーハ200を含むフレームユニット215を搬送しているが、本発明では、裏面205が研削されたウエーハ200を含むフレームユニット215や、個々のデバイス204に分割されたまたは分割起点や分割溝が形成されたウエーハ200を含むフレームユニット215を搬送しても良い。特に、搬送ユニット1は、複数のデバイス204に個片化されたまたはデバイス204に分割する分割起点や分割溝が形成されたウエーハ200を搬送する場合は、ウエーハ200や支持部材210が撓まず比較的平坦に維持した状態で搬送することができるので、搬送中のデバイス204の位置ずれやデバイス204同士の衝突を抑制することができ、次工程でのピックアップ時にデバイス204を正確にピックアップできる効果や、デバイス204の損傷を防止できる。
【0059】
また、実施形態1に係る搬送ユニット1は、支持部材保持ステップ1001-2において側壁部32の下端面33に支持部材210を吸引保持した後、液体供給ステップ1002においてカバー部材30と、支持部材210及びウエーハ200との間に液体61を供給するので、液体61を供給する際には、側壁部32の下端面33に支持部材210が密着している。このために、搬送ユニット1は、カバー部材30と、支持部材210及びウエーハ200との間に供給された液体61を吸引することを抑制することができるとともに、液体61がカバー部材30の外側へもれる事を抑制できる。
【0060】
また、実施形態1に係る搬送ユニット1は、カバー部材30のプレート311,312間及び側壁部321,322間に支持部材210を吸引する吸引経路36の一部になる空間34を設けて、側壁部32の下端面33に支持部材210を吸引保持する構成としている。このために、搬送ユニット1は、側壁部32の下端面33に支持部材210を吸引保持可能としてもカバー部材30の大型化を抑制することができ、支持部材210を吸引保持するための吸引経路36を設けるための変更を最小限にすることができる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、本発明では、加工装置100は、実施形態1に記載された化学機械研磨装置に限らず、乾式研磨装置や、ウエーハ200をチャックテーブルで保持し分割予定ライン203に沿って切削ブレードで切削加工する切削装置、ウエーハ200をチャックテーブルで保持して裏面205を研削加工する研削装置、ウエーハ200をバイト切削加工するバイト切削装置等の種々の装置でも良い。加工装置100が切削装置、研削装置、又はバイト切削装置等のいずれの装置であっても、加工屑が発生する加工である場合は、ウエーハ200の種類や求める品質によっては、ウエーハ200に加工屑が付着し、洗浄ユニット109で洗浄される前に乾燥して固着してしまうことを防ぐ必要がある。このため、加工屑が発生する加工装置においては加工装置の種類は上記実施形態に限定されず、加工後のウエーハ200を含むフレームユニット215のウエーハ200を乾燥させずに液体61で被覆した状態で洗浄ユニットに搬送できる本発明は有効である。また、本発明では、液体61がウエーハ200の表面202を被覆する程度にとどまるなど、下端面33に形成された吸引孔からの液体61の吸引を防止できる場合は、支持部材保持ステップ1001-2において下端面33に支持部材210を吸引保持することなく、液体供給ステップ1002後で且つ搬送ステップ1003前に下端面33に支持部材210を吸引保持しても良い。
【0062】
なお、カバー部材30のプレート31の上面に超音波振動子を含み、液体供給ステップ1002の実施後に、フレームユニット215が保持テーブル105に載置されている状態または、保持テーブル105から搬出され洗浄ユニット109へと搬送されている状態、または洗浄ユニット109の洗浄テーブル117がフレームユニット215に載置された後、の少なくともいずれかのタイミングで液体61に超音波振動を付与し、ウエーハ200を洗浄しても良い。超音波振動を付与することで、加工痕に入り込んだ加工屑や、分割溝や分割起点に入り込んだ加工屑を浮かせてウエーハ200から除去することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 搬送ユニット(搬送装置)
20 フレーム保持部
30 カバー部材
31 プレート
32 側壁部
33 下端面(支持部材と接触する面)
34 空間
36 吸引経路
60 液体供給部
61 液体
200 ウエーハ
210 支持部材
211 開口
212 フレーム
215 フレームユニット
321 外側壁部
322 内側壁部