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特開2023-142878インク、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142878
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】インク、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20230928BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230928BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050000
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】立石 佐太郎
(72)【発明者】
【氏名】松山 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】栗本 鋭司
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA21
2C056FA10
2C056FC01
2C056HA42
2H186AB12
2H186BA08
2H186BA10
2H186DA12
2H186DA14
2H186FB07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD13
4J039BA04
4J039BC05
4J039BC09
4J039BC40
4J039BC50
4J039BC61
4J039BC69
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE28
4J039BE30
4J039CA07
4J039EA15
4J039EA16
4J039EA17
4J039EA19
4J039EA29
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来のインクでは不充分であった保存安定性や普通紙、コート紙における画像濃度、彩度を改善したインクを提供することを課題とする。
【解決手段】顔料、ポリマー化合物、及び、水を含むインクであり、前記ポリマー化合物が下記一般式(1)で表される共重合体であることを特徴とするインク。(但し、R1は水素原子もしくはメチル基、R2はエステル結合を有する炭素数1~18のアルキル基、k:l:m=20~30:10~20:55~65のモル比)

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、ポリマー化合物、及び、水を含むインクであって、前記ポリマー化合物が下記一般式(1)で表される共重合体であることを特徴とするインク。
【化1】
(但し、R1は水素原子もしくはメチル基、R2はエステル結合を有する炭素数1~18のアルキル基、k:l:m=20~30:10~20:55~65のモル比)
【請求項2】
前記顔料と前記一般式(1)で表される共重合体との質量比が90/10~70/30である、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記顔料と前記一般式(1)で表される共重合体との質量比が83/17~72/28である、請求項1または請求項2に記載のインク。
【請求項4】
前記顔料がカーボンブラックである、請求項1~3のいずれか1項に記載のインク。
【請求項5】
前記顔料が下記構造式(1)で表されるC.I.ピグメントイエロー74である、請求項1~3のいずれか1項に記載のインク。
【化2】
【請求項6】
前記顔料が下記構造式(2)で表されるC.I.ピグメントブルー15:3もしくは15:4である、請求項1~3のいずれか1項に記載のインク。
【化3】
【請求項7】
前記顔料が下記構造式(3)で表されるC.I.ピグメントレッド122である、請求項1~3のいずれか1項に記載のインク。
【化4】
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のインクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項9】
請求項8に記載のインクカートリッジと、前記インクカートリッジから供給されるインクを吐出する吐出手段と、を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
記録媒体上に、請求項1~7のいずれか1項に記載のインクを用いて記録することを特徴とする記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは低騒音、低ランニングコストといった利点から目覚しく普及し、普通紙に印字可能なカラープリンタも市場に盛んに投入されるようになった。
しかしながら、画像の色再現性、耐擦化性、耐久性、耐光性、画像の乾燥性、文字にじみ(フェザリング)、色境界にじみ(カラーブリード)、両面印刷性、吐出安定性などの要求される全ての特性を満足することは非常に難しく、用途に応じて優先される特性によって用いるインクが選択されている。
【0003】
インクジェット記録に使用されるインクは水を主成分とし、これに着色剤及び目詰まり防止等の目的でグリセリン等の水溶性溶剤を含有したものが一般的である。着色剤としては、優れた発色性や安定性から染料が用いられてきたが、画像の耐光性、耐水性等は充分とは言えない。耐水性については、インク吸収層を有するインクジェット専用記録紙の改善によってある程度向上しているが、普通紙については満足できるものではない。
【0004】
これらの欠点を補うため、着色剤として顔料を用いたインクが使用され始めてきた。
画像の耐光性、耐水性等は大きく改善されるものの、発色が悪く、一般的に染料に較べて顔料の発色性は劣っていると言われている。
【0005】
このような顔料を用いた場合の発色性の低下を補う方法として、顔料粒子を樹脂で被覆することで発色性を改善する方法が用いられている。この方法によれば、樹脂により定着性や耐ガス性が更に改善されるが、インクの保存安定性や発色性は染料に及ばない。
【0006】
特許文献1には、顔料(A)を水不溶性ポリマー(B)で分散した顔料水分散体であって、該ポリマー(B)が、イタコン酸(b-1)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-2)由来の構成単位を含み、更に酸基の少なくとも一部が中和されてなる、顔料水分散体が開示されており、樹脂印刷媒体への定着性及び画像濃度に優れる顔料水分散体、及び該顔料水分散体を含有するインクを提供している。
【0007】
特許文献2には、A)芳香族環を有するモノマー、B)カルボキシル基を2個又は3個有するモノマー、C)アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを用いた共重合体の塩であるインクジェット用顔料分散体を用いて、保存安定性が良好で平滑紙、非平滑紙のいずれでも高画像濃度が実現できるインクを提供している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のインクは、普通紙、コート紙の画像濃度や保存安定性及び、カラーインクの彩度の点で十分なものではなかった。
本発明は、従来の顔料インクでは不充分であった保存安定性や普通紙、コート紙における画像濃度、彩度を改善したインクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、顔料、ポリマー化合物、及び、水を含むインクであって、前記ポリマー化合物が下記一般式(1)で表される共重合体であるインク、によって解決される。
【化1】
(但し、R1は水素原子もしくはメチル基、R2はエステル結合を有する炭素数1~18のアルキル基、k:l:m=20~30:10~20:55~65のモル比)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存安定性や普通紙、コート紙における画像濃度、彩度を改善したインクを提供することができる。
【0011】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、従来の顔料インクでは不充分であった発色性が改善され、紙の種類を選ばず高発色な画像を実現できるインクジェット用インクが提供され、これを用いた画像形成技術が提供されるという極めて優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す図である。
図2図2は、本発明に係るカートリッジの一例を示す外観斜視図である。
図3図3は、本発明に係るカートリッジの一例の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクは、顔料、ポリマー化合物、及び、水を含むインクであって、前記ポリマー化合物が下記一般式(1)で表される共重合体であるインクである。
【化1】
(但し、R1は水素原子もしくはメチル基、R2はエステル結合を有する炭素数1~18のアルキル基、k:l:m=20~30:10~20:55~65のモル比)
【0014】
(一般式(1)で表される共重合体)
一般式(1)で表される共重合体は、R1が水素原子;、もしくはメチル基、R2が炭素数1~18の炭素鎖を持つエステルである一般式(1)の構造をもつ共重合体の塩であり、一般式(1)で表される共重合体としては、例えば、スチレン、イタコン酸、メタクリル酸メチル、もしくはアクリル酸イソブチルなどが挙げられる。
【0015】
上記一般式(1)で表される共重合体によって、インクの保存安定性が向上し、印刷した際には普通紙、コート紙における画像濃度や彩度に優れる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
【0016】
保存安定性向上効果が得られる理由としては、次のことが推察される。
例えばイタコン酸のようなカルボキシル基を2個有するモノマーを用いることで局所的に酸基密度の高い親水的な部分が形成され、ポリマーの顔料分散能を高めることができる。また、アミド結合を含まないことで水素結合のエネルギーが下がり、水溶性がさらに向上する。更に、例えばスチレンのような芳香族環を有するモノマーを用いることで顔料表面に局在化しやすくなり、化合物分子同士の接触を少なくなることで水素結合保存安定性が向上する。
【0017】
画像濃度、及び彩度向上効果が得られる理由としては次のことが推察される。
カルボキシル基を2個有するモノマーを用いると、画像形成時にインクが紙に接触した際に、多くの紙が含有する炭酸カルシウムのカルシウムイオンと、カルボキシル基を2個有するモノマーが錯体を形成することにより不溶化し凝集性を高める。また、メタクリル酸メチルやアクリル酸イソブチルのエステル結合部分が紙の内部への吸収を妨げることによって、向上する。
【0018】
上記一般式(1)のR1、及びR2を持つモノマーは、R1に水素基、もしくはメチル基、R2に炭素数1~18の炭素鎖を持つエステル結合であれば、特に限定されないが、メタクリル酸メチル、もしくはアクリル酸イソブチル等が挙げられ、重合可能であれば2種類以上用いても良い。
また、カルボキシル基は塩の状態であることが好ましく、例えば、Li、Na、K等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;モノ、ジ又はトリメチルアミン、モノ、ジ又はトリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、コリン、アミノエタンプロパンジオール、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、アミノエチルプロパンジオールの有機アミン塩;モノホリン、N-メチルモノホルリン、N-メチル-2ピロリドン、2-ピロリドン等の環状アミン等の有機アミン塩が挙げられるが、画像濃度向上効果の面からLi塩、Na塩が好ましく、特にNa塩が好ましい。
これらはモノマー塩として用いても良いし、各モノマーを重合した後、中和し化合物塩の状態にして用いてもよい。
【0019】
(顔料)
顔料は無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。 カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・バイオレット19、C.I.ピグメント・ブルー15:3、及びC.I.ピグメント・ブルー15:4から選ばれる1種以上の製品が挙げられる。
顔料は上記の顔料を単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
【0020】
上記C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:3、及びC.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・バイオレット19はそれぞれ以下の構造式で表される顔料である。
構造式(1):C.I.ピグメント・イエロー74
構造式(2):C.I.ピグメント・ブルー15:3、15:4
構造式(3):C.I.ピグメント・レッド122
構造式(4):C.I.ピグメント・バイオレット19
【0021】
【化2】
【化3】
【化4】

【化5】
【0022】
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他、水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体中の顔料濃度は、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下が特に好ましい。
更に本発明に係る顔料としては、分散剤等の界面活性剤や樹脂で被覆したりグラフト処理やカプセル化処理したりしたものを使用することも可能であるが、上記一般式(1)で表される共重合体を分散剤に用いた方がより好ましい。
分散剤の量は、顔料の種類により適宜選択する必要があるが、通常の場合、顔料と化合物の質量比が90/10から70/30が好ましく、83/17~72/28がより好ましい。
【0023】
本発明のインクに分散している顔料粒子径としては、30nm以上120nm以下が好ましく、より好ましくは60nm以上100nm以下である。顔料粒子径をこの範囲に調整する方法としては、ビーズミルやボールミルのようなボールを用いた混練分散機、ロールミルのような剪断力を用いた混練分散機、超音波分散機などを用いることができる。
この中でも特にビーズミル分散機が、本発明においては有効である。顔料粒子径が30nmよりも大きいと耐光性が良好となるため色の変化が小さくなり、顔料を用いるメリットが得られる。
顔料粒子径が100nmよりも小さいと、画像における光沢性が得られるため、彩度や明度の高い良好な画像を得ることができる。
【0024】
インク中の顔料濃度は1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上12質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。顔料濃度が1質量%よりも多いと充分な着色力が得られるため、高い彩度や画像濃度を得ることができる。
顔料濃度が15質量%以下であるとインクの安定性が良好となるため、長期間安定なインクを得ることができる。ただし、このような分散工程の後には粗大粒子が含まれていることが多く、インクジェットノズルや供給経路の目詰まりの原因となるため、フィルターや遠心分離器を用いて粒径1μm以上の粒子を除去する必要がある。
【0025】
また、本発明の効果を損なわない範囲で上記一般式(1)で表される共重合体と他の分散剤との併用も可能である。
他の分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種々の界面活性剤や高分子型の分散剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸及びその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ-4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸-アミドプロピルジメチルアミノ-酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0026】
ノニオン界面活性剤としては、次のようなものが挙げられる。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系;
ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;
2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール系。
【0027】
顔料分散体の分散媒としては水を含むことが望ましいが、必要に応じて各種有機溶媒を併用してもよい。例えば、水溶性有機溶媒としてメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、N-メチルピロリドン、2-ピロリドン等のピロリドン誘導体、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0028】
顔料分散体及びインクには、必要に応じて、樹脂、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することができる。
樹脂としては水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかが好適に用いられる。
前記水溶性樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;ポリウレタン;ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、四級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウムの共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等セルロース;カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂、又はこれらの変性物、ポリエステルとポリウレタンの共重合体等の合成樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、自家変性澱粉、カチオン化澱粉、又は各種変性澱粉、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、インク吸収性の観点から、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルとポリウレタンの共重合体、などが特に好ましい。
【0029】
前記水分散性樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。水分散性樹脂は造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えているので、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。
具体例としては、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコーン-アクリル系共重合体、などが挙げられる。
また、メチロール化メラミン、メチロール化尿素、メチロール化ヒドロキシプロピレン尿素、イソシアネート等の架橋剤を含有してよいし、N-メチロールアクリルアミドなどの単位を含む共重合体で自己架橋性を持つものでもよい。
これらの中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル-シリコーン樹脂微粒子及びフッ素系樹脂微粒子が好ましい。
また、これらの水分散性樹脂の複数を同時に用いることも可能である。
【0030】
本発明のインクは水を液媒体として使用するものであるが、インクの乾燥を防止、分散安定性の向上や、普通紙におけるカール防止の目的で下記の水溶性溶剤が使用される。これら水溶性溶剤は複数混合して使用してもよい。
水溶性溶剤の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピリデングリセロール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類。
【0031】
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類。
【0032】
エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類。
2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミイダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物。
ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド等のアミド類。
【0033】
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類。
ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類。
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。
これら水溶性溶剤の中でも、特に3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、イソプロピリデングリセロール、N,N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミドが好ましい。これらは普通紙におけるカールを防止するために優れた効果を得ることができる。
【0034】
その他、本発明においては水溶性溶剤として糖を含有することができる。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどがあげられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α-シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖、酸化糖、アミノ酸、チオ酸などがあげられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどがあげられる。
【0035】
顔料と水溶性溶剤の比は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響がある。顔料固形分が高いのに水溶性溶剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらす。水溶性溶剤の配合量はインク全体に対して、10~70質量%が好ましく、より好ましくは20~50質量%である。この範囲にあるインクは、乾燥性や保存試験や信頼性試験が非常に良好となる。
【0036】
浸透剤をインクに添加することで、表面張力が低下し、ノズルへのインク充填性が向上し、吐出の安定性が向上することに加え、記録媒体にインク滴が着弾した後の記録媒体中への浸透が速くなるため、フェザリングやカラーブリードを軽減することができる。浸透剤としては界面活性剤や浸透性を有する溶剤などが用いられる。
界面活性剤は、親水基によりアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤に大別され、疎水基によりフッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等に大別することができる。
【0037】
アニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0038】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオール、グリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコールなどが挙げられる。
【0039】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエーテル化合物等が挙げられ、構造式(3)または構造式(4)で表されるフッ素含有化合物を特に有用に用いることができる。
【0040】
アセチレングリコール系の界面活性剤としては、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールなどのアセチレングリコール系(例えばエアープロダクツ社(米国)のサーフィノール104、82、465、485あるいはTGなど)をもちいることができるが、特にサーフィノール465、104やTGが良好な印字品質を示す。
【0041】
浸透性のある溶剤としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどの炭素数8以上のポリオール、あるいはグリコールエーテルを用いることができる。
【0042】
上記界面活性剤は、単独または二種以上を混合して用いることができる。本発明の好ましい態様によれば、インク全体に対する浸透剤の添加量は0.01質量%から5質量%の比率範囲で使用することが好ましく、より好ましくは0.03質量%から2質量%である。
界面活性剤量が0.01質量%よりも多いと、印字後のドットが充分に広がり、ベタ画像をもれなく埋めることができるため、画像濃度や彩度を高く維持することができる。界面活性剤の量を5質量%よりも少なく抑えると、泡立ちが抑えられ、ノズル内の流路を泡が塞ぐことがなくなるため、良好にインク滴を吐出することが可能となる。
【0043】
本発明のインクには必要に応じて、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、コゲーション防止剤など従来より知られている添加剤を適宜選択し、加えることができる。
【0044】
前記pH調整剤を加えてアルカリ性に保つことで分散状態を安定化し、吐出を安定化することができる。また、pH11以上ではインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や、漏洩、吐出不良等の問題が発生してしまう。pH調整剤を加えるのは、顔料を分散剤とともに水に混錬分散する際に加えておくほうが、混錬分散後、水溶性溶剤、浸透剤等の添加剤とともに加えるよりも望ましい。これは、pH調整剤によっては添加することで分散を破壊する場合もあるためである。
前記pH調整剤としては、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩を一種類以上含むものが好ましく、アルコールアミン類として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3プロパンジオール等がある。アルカリ金属元素の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等がある。アンモニウムの水酸化物としては、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物がある。アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0045】
前記防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が本発明に使用できる。
【0046】
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等がある。
【0047】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0048】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0049】
本発明で用いることができるインクにはコゲーション防止剤を添加することができる。コゲーションとは、ヒーターに電流を流してインクを瞬間的に加熱し、インクが発泡する力を利用してインクを吐出するサーマル式ヘッドにおける不具合であり、インクが熱せられる際にインク成分に変質が起こり、ヒーターに変質物が付着する現象を言う。
コゲーションが生じると、ヒーターによる加熱が正常に行われなくなり、吐出力が弱くなったり、最悪の場合にはインクが吐出しないことが生じてしまう。そのため、コゲーションを防止すべく本発明で用いることができるインクにはコゲーション防止剤を添加することができる。
コゲーション防止剤としては、ポリリン酸、ポリアミノカルボン酸、アルドン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリオールリン酸エステル、及びこれらの塩、あるいは、アミノ基を有する酸及び/又はその塩、あるいは、メチル基又はメチレン基とカルボキシル基とを有する酸のアンモニウム塩、などが挙げられる。
【0050】
本発明で使用される水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。水の含有量は、インク総量に対して20質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0051】
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、インクジェット記録用プリンター、ファクシミリ装置、複写装置、プリンター/ファックス/コピア複合機などに好適に使用することができる。
【0052】
本発明のインクジェット記録装置の一例について、図面を用いて説明する。
図1のインクジェット記録装置は、前処理液及びインクを収納したカートリッジ20が搭載され、このカートリッジ20から前処理液及びインクが記録ヘッド18aに供給される。ここでカートリッジ20は前処理液用と色毎のインク用とが分離された状態で取り付けられている。
記録ヘッド18aは、キャリッジ18に搭載され、主走査モーター24で駆動されるタイミングベルト23によってガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。一方、被記録材はプラテン19によって記録ヘッド18aと対面する位置に置かれる。
図中の2は本体筐体、7は処理液、インク共通カートリッジ、16はギア機構、17は副走査モーター、25はギア機構、26は主走査モーター、27はギア機構である。
【0053】
図2図3に、前処理液及びインクを収納可能なカートリッジを示す。このカートリッジは前処理液とインクのいずれも収納することができる。
カートリッジ筐体41内部には液吸収体42があり、インク又は前処理液を吸収させることによりインクをカートリッジ内に保持させることができる。カートリッジ上部には、上蓋部材44が設けられ、上蓋部材44に設けられた大気開放口47から、インク又は前処理液をカートリッジ内に充填することができる。充填後、シール部材55により大気開放口47は密閉される。 インク又は前処理液は液供給口45から記録ヘッドに供給される。 カートリッジ位置決め部71は突上形状をしており、プリンター本体のカートリッジ収納部の凹部と重ねられることでカートリッジ位置を一定にすることが出来る。カートリッジ着脱用突状部81、カートリッジ着脱用指掛け部81a、カートリッジ着脱用窪み部82はカートリッジ試着時にプリンター本体のカートリッジ収納部の凹凸部により固定できるようになっている。43はケース、46はシールリング、48は溝、50はキャップ部材、51は液漏れ防止用突部、53はキャップ部材、Aはカートリッジ筐体41と液吸収体42との間の空間である。
インクと前処理液とは、記録ヘッドから同一箇所に重ねて吐出されることが最も好ましい。しかし、本発明では、例えば、前処理液を間引いて付与し、滲み等によって拡大した前処理液の上にインクを重ねたり、画像の輪郭部だけに前処理液を付与し、その上にインクの一部を重ねても十分効果が得られる。
【0054】
(記録物及び記録物の製造方法)
本発明における記録物の製造方法は、インクをインクジェットヘッドから吐出させて記録媒体に記録を行う工程を有する記録物の製造方法であって、前記インクが、本発明のインクである。
また、本発明における記録物は、インクを用いて記録媒体に情報または画像が記録されている記録物であって、前記インクが、本発明のインクである。
すなわち、本発明の記録物は、本発明のインクを用いて記録媒体(記録メディア)に情報または画像が記録されている。本発明における記録物は、インクをインクジェットヘッドから吐出させて記録媒体に記録を行う工程により製造することができる。
【0055】
前記記録メディアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、普通紙、印刷用塗工紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、普通紙および印刷用塗工紙の少なくともいずれかが好ましい。前記普通紙は安価である点で有利である。また、前記印刷用塗工紙は光沢紙に比べ比較的安価でしかも平滑な光沢ある画像を与える点で有利である。普通紙および印刷用塗工紙は、乾燥性が悪く一般にインクジェット用には使用困難であったが、本発明のインクにより乾燥性が向上し使用可能となった。
本発明の記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
【実施例0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、これら実施例は、本発明についての理解を容易ならしめるためのものであって、本発明を限定するためのものではない。各例中、「部」及び「%」は、別段の断りない限り、「質量部」及び「質量%」を示す。
【0057】
(一般式(1)で表される共重合体の合成例)
<化合物α-1の作製>
四口フラスコに温度計、攪拌機及び還流冷却機を設置し、水500g及び過硫酸アンモニウム15gを仕込んだ溶液に、80℃~90℃の加熱条件下で、モノマーとしてスチレン100g、イタコン酸40g、メタクリル酸メチル158g、及びアクリル酸イソブチル41gをそれぞれ攪拌しながらゆっくり滴下した。
次いで、4時間反応させた後、冷却し、NaOHを用いて中和した。
更に蒸留水を加えて固形分を20%に調整し、スチレン-イタコン酸-メタクリル酸メチル-アクリル酸イソブチル共重合体のNa塩(化合物α-1)の水溶液を得た。
【0058】
<化合物α-2~α-3、β-1~β-2の作製>
化合物α―1と同様の方法で、以下の表1のモノマー比、炭素数になるように合成し、化合物のNa塩水溶液を得た。
【0059】
<化合物β-3の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを500g仕込み、撹拌しながら内温135℃まで昇温した。 そこに不飽和カルボン酸類としてアクリル酸120g、不飽和カルボン酸類と共重合可能な単量体としてスチレン480g、ジ-t-ブチルパーオキサイド8gを4時間かけて仕込んだ。仕込み終了後、内温145℃で1時間保温し、その後系内の不飽和カルボン酸類、不飽和カルボン酸類と共重合可能な単量体の未反応物及び溶媒を除去し、共重合体S-1を得た。
次いで、共重合体S-1と同様の方法でアクリル酸を50g、スチレンの代わりにメタクリル酸メチル350g、追加でアクリル酸-n-ブチル225gを仕込み、共重合体S-2を得た。
次いで、共重合体S-1と共重合体S-2を質量比2:1の割合で混合し、2-ジメチルアミノエタノールを用いて中和した。更に蒸留水を加えて固形分を20%に調整し、スチレン-アクリル酸共重合体とアクリル酸―メタクリル酸メチル--アクリル酸-n-ブチル共重合体とジメチルエタノールアミンの塩(化合物β-3)の水溶液を得た。
【0060】
上記一般式(1)で表される共重合体の合成処方を以下の表1に示す。
表1中のk、l、mは一般式(1)の各構成単位のモノマー比、m1及びm2は上記一般式(1)のmに該当するモノマーの内訳の比率を示す。「構造」欄の「St-It」は当該共重合体がスチレン-イタコン酸系の共重合体であることを示し、「St-Ac」は当該共重合体がスチレン-アクリル系の共重合体であることを示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例1)
<顔料分散体1の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、遠心分離タイプのビーズミル(日本コークス工業株式会社製MSC100循環式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速15m/s、液温7℃で滞留時間が4分間になるように分散し、顔料分散体1を得た。この処方は顔料と化合物α―1の固形分の質量比が80/20になるように定めた。
(処方)
・カーボンブラック: 16.84部
(旭カーボン株式会社製:SunBlack805)
・化合物α-1の水溶液(固形分20%): 21.05部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.0部
・蒸留水: 60.06部
・防黴剤 0.05部
【0063】
<インク1の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク1]を得た。
(処方)
・顔料分散体1: 35.84部
・プロピレングリコール: 23.80部
・1,3-ブタンジオール: 4.76部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 1.28部
・グリセリン: 9.11部
・フッ素系界面活性剤: 0.02部
・消泡剤: 0.08部
・防錆剤: 0.05部
・pH調整剤: 0.40部
・防黴剤; 0.05部
・蒸留水: 24.61部
【0064】
(実施例2)
<顔料分散体2の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、遠心分離タイプのビーズミル(日本コークス工業株式会社製MSC100循環式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速15m/s、液温7℃で滞留時間が4分間になるように分散し、顔料分散体2を得た。この処方は顔料と化合物α―2の固形分の質量比が90/10になるように定めた。
(処方)
・カーボンブラック: 16.84部
(旭カーボン株式会社製:SB805)
・化合物α-2の水溶液(固形分20%): 9.36部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.0部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 71.75部
【0065】
実施例1の顔料分散体1を顔料分散体2に変更した以外は、実施例1と同様の処方と方法を用いてインクジェット記録用の[インク2]を得た。
【0066】
(実施例3)
<顔料分散体3の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速12m/s、液温10℃で5分間分散し、顔料分散体3を得た。この処方は顔料と化合物α―1の固形分の質量比が77/23になるように定めた。
(処方)
・イエロー顔料: 15.00部
(Synthesia社製 5GXS(ピグメント・イエロー74))
・化合物α-1の水溶液(固形分20%): 22.50部
・1,3-ブタンジオール: 2.0部
・蒸留水: 60.45部
・防黴剤: 0.05部
【0067】
<インクの作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク3]を得た。
(処方)
・顔料分散体3: 36.52部
・プロピレングリコール: 33.75部
・1,3-ブタンジオール: 6.02部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 3.57部
・フッ素系界面活性剤: 0.04部
・消泡剤: 0.16部
・pH調整剤: 0.10部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水 17.79部
【0068】
(実施例4)
<顔料分散体4の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速12m/s、液温10℃で5分間分散し、顔料分散体4を得た。この処方は顔料と化合物α―1の質量比が70/30になるように定めた。
(処方)
・イエロー顔料: 15.00部
(Synthesia社製 5GXS(ピグメント・イエロー74))
・化合物α-1の水溶液(固形分20%): 32.14部
・1,3-ブタンジオール: 2.00部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 50.81部
【0069】
<インクの作製>
実施例3のインクの処方における顔料分散体3を顔料分散体4に変更した以外は、実施例3と同様の処方と方法を用いてインクジェット記録用の[インク4]を得た。
【0070】
(実施例5)
<顔料分散体5の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、遠心分離タイプのビーズミル(日本コークス工業株式会社製MSC100循環式)により、0.1mmジルコニアビーズを用いて周速13m/s、液温7℃で滞留時間が6分間になるように分散し、顔料分散体5を得た。この処方は顔料と化合物α―2の固形分の質量比が72/28になるように定めた。
(処方)
・シアン顔料: 18.00部
(DIC株式会社製 TGR-SD(ピグメント・ブルー15:3))
・化合物α-2の水溶液(固形分20%): 33.75部
・1,3-ブタンジオール: 19.2部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 29.00部
【0071】
<インクの作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク5]を得た。
(処方)
・顔料分散体5: 27.78部
・プロピレングリコール: 27.92部
・1,3-ブタンジオール: 0.25部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 4.17部
・フッ素系界面活性剤: 0.03部
・消泡剤: 0.12部
・pH調整剤: 0.50部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 37.18部
【0072】
(実施例6)
<顔料分散体6の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速8m/s、液温10℃で15分間分散し、顔料分散体6を得た。この処方は顔料と化合物α―1の質量比が70/30になるように定めた。
・シアン顔料: 15.00部
(DIC株式会社製 5452K(ピグメント・ブルー15:4))
・化合物α-1の水溶液(固形分20%): 33.75部
・1,3-ブタンジオール: 8.00部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 43.20部
【0073】
<インク6の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク6]を得た。
(処方)
・顔料分散体6: 33.78部
・プロピレングリコール: 27.92部
・1,3-ブタンジオール: 2.88部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 4.17部
・フッ素系界面活性剤: 0.03部
・消泡剤: 0.12部
・pH調整剤: 0.50部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 28.55部
【0074】
(実施例7)
<顔料分散体7の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、遠心分離タイプのビーズミル(日本コークス工業株式会社製MSC100循環式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速13m/s、液温7℃で滞留時間が10分間になるように分散し、顔料分散体7を得た。
この処方は顔料と化合物α―3の固形分の質量比が83/17になるように定めた。
(処方)
・マゼンタ顔料: 20.00部
(Honor Chemical China社製 HP RED 2574(ピグメント・レッド122))
・化合物α-3の水溶液(固形分20%): 20.00部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 57.95部
【0075】
<インク7の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク7]を得た。
(処方)
・顔料分散体7: 35.00部
・プロピレングリコール: 37.28部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 1.30部
・グリセリン: 4.67部
・フッ素系界面活性剤: 0.03部
・消泡剤: 0.12部
・pH調整剤: 0.10部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 21.45部
【0076】
(実施例8)
<顔料分散体8の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速6m/s、液温10℃で7分間分散し、顔料分散体8を得た。
この処方は顔料と化合物α―1の質量比が87/13になるように定めた。
・マゼンタ顔料: 15.00部
(Honor Chemical China社製 HP RED 2574(ピグメント・レッド122))
・化合物α-1の水溶液(固形分20%): 11.25部
・プロピレングリコール: 12.00部
・防黴剤 0.05部
・蒸留水: 61.70部
【0077】
<インク8の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク8]を得た。
(処方)
・顔料分散体8: 46.67部
・プロピレングリコール: 30.90部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 4.67部
・フッ素系界面活性剤: 0.03部
・消泡剤: 0.12部
・pH調整剤: 0.10部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 15.46部
【0078】
(実施例9)
<顔料分散体9の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、遠心分離タイプのビーズミル(日本コークス工業株式会社製MSC100循環式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速15m/s、液温7℃で滞留時間が4分間になるように分散し、顔料分散体9を得た。
この処方は顔料と化合物α―2の固形分の質量比が95/5になるように定めた。
(処方)
・カーボンブラック: 16.84部
(旭カーボン株式会社製:SunBlack805)
・化合物α-2の水溶液(固形分20%): 21.05部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.0部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 60.06部
【0079】
<インク9の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク9]を得た。
(処方)
・顔料分散体9: 35.84部
・プロピレングリコール: 23.80部
・1,3-ブタンジオール: 4.76部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 1.28部
・グリセリン: 9.11部
・フッ素系界面活性剤: 0.02部
・消泡剤: 0.08部
・防錆剤: 0.05部
・pH調整剤: 0.40部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 24.61部
【0080】
(比較例1)
<顔料分散体10の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速15m/s、液温10℃で4分間分散し、顔料分散体10を得た。
この処方は顔料と化合物β―3の固形分の質量比が80/20になるように定めた。
(処方)
・カーボンブラック: 16.84部
(旭カーボン株式会社製 SunBlack805)
・化合物β-3の水溶液(固形分20%): 21.04部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 62.07部
【0081】
<インク10の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク10]を得た。
(処方)
・顔料分散体10: 35.84部
・プロピレングリコール: 23.80部
・1,3-ブタンジオール: 4.76部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 9.11部
・フッ素系界面活性剤: 0.02部
・消泡剤: 0.08部
・防錆剤: 0.05部
・pH調整剤: 0.40部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 23.89部
【0082】
(比較例2)
<顔料分散体11の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速12m/s、液温10℃で3分間分散し、顔料分散体11を得た。
この処方は顔料と化合物β―3の固形分の質量比が77/23になるように定めた。
(処方)
・イエロー顔料: 15.00部
(クラリアント社製 Hansa Yellow 5GX01(ピグメント・イエロー74))
・化合物β-3の水溶液(固形分20%): 22.50部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 62.45部
【0083】
<インク11の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク11]を得た。
(処方)
・顔料分散体11: 34.25部
・プロピレングリコール: 33.75部
・1,3-ブタンジオール: 6.75部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン 3.57部
・フッ素系界面活性剤: 0.04部
・消泡剤: 0.16部
・pH調整剤: 0.10部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 19.33部
【0084】
(比較例3)
<顔料分散体12の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速8m/s、液温10℃で15分間分散し、顔料分散体12を得た。
この処方は顔料と化合物β―3の質量比が72/28になるように定めた。
・シアン顔料: 15.00部
(DIC株式会社製 5452K(ピグメント・ブルー15:4))
・化合物β-3の水溶液(固形分20%): 33.75部
・1,3-ブタンジオール: 8.00部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 43.20部
【0085】
<インク12の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク12]を得た。
(処方)
・顔料分散体12: 35.06部
・プロピレングリコール: 27.92部
・1,3-ブタンジオール: 2.78部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 4.17部
・フッ素系界面活性剤: 0.03部
・消泡剤: 0.12部
・pH調整剤: 0.50部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 27.37部
【0086】
(比較例4)
<顔料分散体13の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、遠心分離タイプのビーズミル(日本コークス工業株式会社製MSC100循環式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速8m/s、液温7℃で滞留時間が13.5分間になるように分散し、顔料分散体13を得た。
この処方は顔料と化合物β―3の固形分の質量比が83/17になるように定めた。
(処方)
・マゼンタ顔料: 15.00部
(DIC株式会社製 JM04(ピグメント・レッド122/ピグメント・バイオレット19))
・化合物β-3の水溶液(固形分20%): 15.00部
・プロピレングリコール: 12.00部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 57.95部
【0087】
<インク13の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク13]を得た。
(処方)
・顔料分散体13: 46.67部
・プロピレングリコール: 30.90部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 4.67部
・フッ素系界面活性剤: 0.03部
・消泡剤: 0.12部
・pH調整剤: 0.10部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 15.46部
【0088】
(比較例5)
<顔料分散体14の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速15m/s、液温10℃で4分間分散し、顔料分散体14を得た。
この処方は顔料と化合物β―1の固形分の質量比が80/20になるように定めた。
(処方)
・カーボンブラック: 16.84部
(旭カーボン株式会社製 SunBlack805)
・化合物β-1の水溶液(固形分20%): 21.04部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 62.07部
【0089】
<インク14の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク14]を得た。
(処方)
・顔料分散体14: 35.84部
・プロピレングリコール: 23.80部
・1,3-ブタンジオール: 4.76部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 9.11部
・フッ素系界面活性剤: 0.02部
・消泡剤: 0.08部
・防錆剤: 0.05部
・pH調整剤: 0.40部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 23.89部
【0090】
(比較例6)
<顔料分散体15の作製>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(アシザワ・ファインテック株式会社製HFM02バッチ式)により、0.05mmジルコニアビーズを用いて周速8m/s、液温10℃で15分間分散し、顔料分散体15を得た。
この処方は顔料と化合物β―2の質量比が72/28になるように定めた。
・シアン顔料: 15.00部
(DIC株式会社製 TGR-SD(ピグメント・ブルー15:3))
・化合物β-2の水溶液(固形分20%): 33.75部
・1,3-ブタンジオール: 8.00部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 43.20部
【0091】
<インク15の作製>
下記処方の材料を15分間攪拌し、1.2μmのフィルターでろ過することでインクジェット記録用の[インク15]を得た。
(処方)
・顔料分散体15: 35.06部
・プロピレングリコール: 27.92部
・1,3-ブタンジオール: 2.78部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール: 2.00部
・グリセリン: 4.17部
・フッ素系界面活性剤: 0.03部
・消泡剤: 0.12部
・pH調整剤: 0.50部
・防黴剤: 0.05部
・蒸留水: 27.37部
【0092】
実施例1~9と比較例1~6を以下の表2にまとめた。
表2中の顔料についての略号は次の顔料を意味する。
CB :カーボンブラック
PY-74 :ピグメント・イエロー74
PB15:3 :ピグメント・ブルー15:3
PB15:4 :ピグメント・ブルー15:4
PR122 :ピグメント・レッド122
PV19 :ピグメント・バイオレット19
【0093】
【表2】
【0094】
(評価方法、評価結果)
実施例、比較例で作成した分散体および記録用インクの評価項目、評価方法を以下に記載する。
【0095】
(1)保存安定性
インクの初期粘度を測定した後、該インク10gをアズワン株式会社製スクリュー管瓶13.5mlに密閉し、70℃の環境下で2週間保管した。この保管後のインクの粘度を測定し、下記式に従い変化率を計算しランク分けした。粘度計には東機産業社株式会社製TV-25を用いた。A、Bが許容範囲である。
変化率(%)=[(70℃環境下2週間後の粘度-初期粘度)/初期粘度]×100
[評価基準]
A:変化率が5%未満(良好)
B:変化率が5%以上10%未満(実用上問題ないレベル)
C:変化率が10%以上20%未満(問題あるレベル)
D:変化率が20%以上(問題あるレベル)
【0096】
(2)画像濃度評価
実施例および比較例におけるインクジェット記録用インクの内ブラックを、前述した図1図2の構造のリコー製インクジェットプリンターIPSiO GX e5500に充填し、ワンパスでベタ画像の印字を行った。印刷評価は下記の評価紙を使用して印字乾燥後、明度を反射型カラー分光測色濃度計X-Rite939(X-Rite社製)で測定した。A、Bが許容範囲である。
[評価紙]
普通紙(1):マイペーパー(A4、株式会社NBSリコー製)
普通紙(2):Fore Multi-Purpuse(HAMMERMILL社製)
コート紙:OKTC+127.9gsm A4 T目(王子製紙株式会社製)
[評価基準]
-普通紙(1)、(2)-
A:画像濃度 1.10以上
B:画像濃度 1.00以上1.10未満
C:画像濃度 1.00未満
-コート紙-
A:画像濃度 2.20以上
B:画像濃度 1.70以上2.20未満
C:画像濃度 1.70未満
【0097】
(3)彩度評価
実施例および比較例におけるインクジェット記録用インクの内、イエロー、シアン、マゼンタを、前述した図1図2の構造のリコー製インクジェットプリンターIPSiO GX e5500に充填し、ワンパスでベタ画像の印字を行った。印刷評価は下記の評価紙を使用して印字乾燥後、明度を反射型カラー分光測色濃度計X-Rite939(X-Rite社製)で測定した。
得られたa、bの値から、彩度C=((a+(b1/2を算出し、下の評価基準にしたがって評価した。ランクA、Bが許容範囲である。
[評価紙]
普通紙(1):マイペーパー(A4、株式会社NBSリコー製)
普通紙(2):Fore Multi-Purpuse(HAMMERMILL社製)
コート紙:OKTC+127.9gsm A4 T目(王子製紙株式会社製)
【0098】
[評価基準]
<イエロー>
-普通紙(1)(2)-
A:C≧80
B:80>C≧75
C:75>C
-コート紙-
A:C*≧95
B:95>C≧90
C:90>C
<シアン>
-普通紙(1)(2)-
A:C≧45
B:45>C≧40
C:40>C
-コート紙-
A:C≧65
B:65>C≧60
C:60>C
<マゼンタ>
-普通紙(1)(2)-
A:C≧70
B:70>C≧65
C:65>C
-コート紙-
A:C*≧80
B:80>C≧75
C:75>C
【0099】
実施例及び比較例のインクの評価結果を以下の表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
表3より、実施例1~9は比較例1~6より優れていることがわかる。
上記一般式(1)で表される共重合体を用いることにより、顔料インクの保存安定性が向上し、印刷した際には画像濃度や彩度に優れる顔料分散体、及び該顔料水分散体を含有する水系インクが提供される。
また、顔料と化合物の質量比により、保存安定性、画像濃度、及び彩度により優れる顔料分散体、及び該顔料水分散体を含有する水系インクが提供される。
【0102】
本発明は下記(1)のインクに係るものであるが、下記(2)~(11)を実施の形態として含む。
(1)顔料、ポリマー化合物、及び、水を含むインクであって、前記ポリマー化合物が下記一般式(1)で表される共重合体であることを特徴とするインク。
【化1】
(但し、R1は水素原子もしくはメチル基、R2はエステル結合を有する炭素数1~18のアルキル基、k:l:m=20~30:10~20:55~65のモル比)
(2)前記顔料と前記一般式(1)で表される共重合体との質量比が90/10~70/30である、上記(1)に記載のインク。
(3)前記顔料と前記一般式(1)で表される共重合体との質量比が83/17~72/28である、上記(1)または(2)に記載のインク。
(4)前記顔料がカーボンブラックである、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインク。
(5)前記顔料が下記構造式(1)で表されるC.I.ピグメントイエロー74である、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインク。
【化2】
(6)前記顔料が下記構造式(2)で表されるC.I.ピグメントブルー15:3もしくは15:4である、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインク。
【化3】
(7)前記顔料が下記構造式(3)で表されるC.I.ピグメントレッド122である、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインク。
【化4】
(8)前記顔料が下記構造式(4)で表されるC.I.ピグメント・バイオレット19である、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインク。
【化5】
(9)上記(1)~(8)のいずれか1項に記載のインクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
(10)上記(9)に記載のインクカートリッジと、前記インクカートリッジから供給されるインクを吐出する吐出手段と、を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
(11)記録媒体上に、上記(1)~(8)のいずれか1項に記載のインクを用いて記録することを特徴とする記録方法。
【符号の説明】
【0103】
1 インクジェット記録装置
2 本体筐体
7 処理液、インク共通カートリッジ
16 ギア機構
17 副走査モーター
18 キャリッジ
18a 記録ヘッド
19 プラテン
20 インクカートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
24 主走査モーター
25 ギア機構
26 主走査モーター
27 ギア機構
41 カートリッジ筐体
42 液吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 液供給口
46 シールリング
47 大気解放口
48 溝
50 キャップ部材
51 液漏れ防止用突部
53 キャップ部材
55 シール部材
71 カートリッジ位置決め部
81 カートリッジ着脱用突状部
81a カートリッジ着脱用指掛け部
82 カートリッジ着脱用窪み部
A 空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開2019-019293号公報
【特許文献2】特開2011-241307号公報
図1
図2
図3