(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143225
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】生麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20230928BHJP
【FI】
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050488
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老原 脩
(72)【発明者】
【氏名】仲西 由美子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武紀
(72)【発明者】
【氏名】小澤 佳祐
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA01
4B046LB01
4B046LC01
4B046LG16
4B046LG29
4B046LP22
4B046LP31
4B046LQ04
4B046LQ06
(57)【要約】
【課題】軟らかく粘りのある食感の生麺類を提供すること。
【解決手段】本発明の生麺類の製造方法は、小麦粉を含む粉体原料と液体原料とを用いて生地を得る生地調製工程と、該生地を押出製麺して生麺線を得る生地成形工程と、下記の生地熟成工程及び麺線熟成工程の少なくとも一方とを有する。生地熟成工程:前記生地調製工程で得られた生地を、雰囲気温度10~45℃の環境に0.25~72時間置く工程。麺線熟成工程:前記生地成形工程で得られた生麺線を、雰囲気温度10~45℃の環境に0.25~72時間置く工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を含む粉体原料と液体原料とを用いて生地を得る生地調製工程と、
前記生地を押出製麺して生麺線を得る生地成形工程と、
下記の生地熟成工程及び麺線熟成工程の少なくとも一方と
を有する、生麺類の製造方法。
・生地熟成工程:前記生地調製工程で得られた生地を、雰囲気温度10~45℃の環境に0.25~72時間置く工程。
・麺線熟成工程:前記生地成形工程で得られた生麺線を、雰囲気温度10~45℃の環境に0.25~72時間置く工程。
【請求項2】
前記生地調製工程では、前記粉体原料100質量部に対して前記液体原料を30~50質量部用いる、請求項1に記載の生麺類の製造方法。
【請求項3】
前記液体原料の温度が15℃以上である、請求項1又は2に記載の生麺類の製造方法。
【請求項4】
前記粉体原料は、中力粉、強力粉及びデュラム小麦粉砕物から選択される1種以上の小麦粉と澱粉とを含む、請求項1~3の何れか1項に記載の生麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生麺線を含む生麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麺類を食品工業的に大量生産する場合には機械製麺が利用されている。機械製麺における製麺方法として、圧延製麺法と押出製麺法とが知られている。圧延製麺法は、麺生地に圧力をかけて伸ばしてから麺線に成形する方法であり、典型的には、小麦粉等を含む原料粉に加水し混捏して麺生地を得、該麺生地を重ね合わせてロール圧延機等の圧延手段により複数回圧延して麺帯を得、該麺帯を所定の切り刃で切断して生麺線を得る工程を有する。一方、押出製麺法は、生地に圧力をかけて麺線に押出成形する方法であり、典型的には、麺生地を押出機に供給し、該押出機が備えるダイスの孔から押し出して生麺線を得る工程を有する。
【0003】
特許文献1には、機械製麺を利用しながらも、熟成させた手延べ麺類のような良好な外観と食感を有する麺類が得られる麺類の製造方法として、水分含量10~38%の麺線を温度50~100℃の雰囲気で10~100時間熟成処理することを含むものが記載されている。前記熟成処理に供される麺線は、製麺した麺線を乾燥させて得た乾麺である。
【0004】
特許文献2には、生地を押出し機で押出して麺線群を得る工程を有する冷麺の製造方法において、押出された麺線群が互いに付着しやすいため、経時的に団塊化してしまうという問題を解決するために、該工程で得られた麺線群に冷風を吹付けて表面を乾燥させた後、包装した状態で所定時間放置する工程を採用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-42169号公報
【特許文献2】特開平6-296468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軟らかく粘りのある食感の生麺類が求められている。斯かる要望に応え得るものとして従来提案されている技術は、軟らかさと粘りが不十分であるか、又はこれらが十分であっても製麺性が低下する等の問題が生じ、改善の余地があった。製麺性を損なうことなく、軟らかく粘りのある食感の生麺類を安定的に製造し得る技術は未だ提供されていない。
【0007】
本発明の課題は、軟らかく粘りのある食感の生麺類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、小麦粉を含む粉体原料と液体原料とを用いて生地を得る生地調製工程と、前記生地を押出製麺して生麺線を得る生地成形工程と、下記の生地熟成工程及び麺線熟成工程の少なくとも一方とを有する、生麺類の製造方法である。
・生地熟成工程:前記生地調製工程で得られた生地を、雰囲気温度10~45℃の環境に0.25~72時間置く工程。
・麺線熟成工程:前記生地成形工程で得られた生麺線を、雰囲気温度10~45℃の環境に0.25~72時間置く工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製麺性を損なうことなく、軟らかく粘りのある食感の生麺類を安定的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で製造する生麺類は、乾燥工程を経ないで製造された麺類である。ここで言う「麺類」には、麺と称される食品全般が包含される。具体的には例えば、ロングパスタ等のパスタ、うどん、蕎麦、素麺、冷麦、中華麺、フォー、ビーフン等が挙げられる。本発明によって製造される生麺類の水分含量は、特に制限されないが、典型的には、好ましくは25質量%以上、より好ましくは28~50質量%である。
本明細書において「水分含量」は、絶乾法によって測定された値である。
本発明で製造する生麺類は、典型的には、生麺線の集合体である麺塊である。本発明で製造する生麺類において、生麺線の長手方向と直交する方向での断面(以下、「麺線断面」とも言う。)の形状は特に制限されず、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形等であり得る。
本発明で製造する生麺類は、常法に従って加熱調理することで喫食可能な状態となる。斯かる加熱調理法は特に制限されず、例えば、湯を用いた茹で調理、飽和水蒸気又は過熱水蒸気を用いた蒸し調理など、水分の存在下での加熱調理法が挙げられる。
【0011】
本発明の生麺類の製造方法は、粉体原料と液体原料とを用いて生地を得る工程(生地調製工程)と、該生地を押出製麺して生麺線を得る工程(生地成形工程)とを有する。
【0012】
前記生地調製工程で用いる粉体原料は、常温常圧で粉体であり、少なくとも小麦粉を含む。小麦粉としては、麺類の製造で使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉、デュラム小麦粉砕物が挙げられ、製造する麺類の種類等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において「デュラム小麦粉砕物」とは、デュラム小麦由来の小麦粉を指し、具体的には例えば、デュラムセモリナ、デュラム小麦粉が挙げられる。デュラムセモリナは、デュラム小麦由来の小麦粉のうち平均粒径が300μmを超えるものを指し、デュラム小麦粉は、デュラム小麦由来の小麦粉のうち平均粒径が300μm以下のものを指す。
粉体原料における小麦粉の含有量は、該粉体原料の全質量に対して、好ましくは50~100質量%である。
【0013】
前記生地調製工程で用いる粉体原料は、小麦粉以外の他の原料粉(常温常圧で粉体の原料)の1種以上を含有してもよい。斯かる他の原料粉としては、小麦粉以外の穀粉及び澱粉が挙げられる。ここで言う「澱粉」は、小麦等の植物から単離された「純粋な澱粉」を意味し、穀粉中に含有されている澱粉とは区別される。
前記の「小麦粉以外の穀粉」及び「澱粉」は、何れも供給源となる植物は特に制限されない。小麦粉以外の穀粉としては、例えば、米粉、大麦粉、ライ麦粉が挙げられる。澱粉としては、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、米澱粉、エンドウ豆澱粉、緑豆澱粉、小豆澱粉、サゴ澱粉が挙げられる。粉体原料に用いる澱粉は、未加工の澱粉でもよく、あるいは未加工の澱粉に、架橋、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化などの加工処理の1種以上を施した加工澱粉でもよい。
粉体原料に澱粉を含有させる場合の澱粉の含有量は、該粉体原料の全質量に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~45質量%である。
【0014】
粉体原料の好ましい一例として、中力粉、強力粉及びデュラム小麦粉砕物から選択される1種以上の小麦粉と澱粉とを含むものが挙げられる。
斯かる好ましい粉体原料において、小麦粉として、中力粉又は強力粉とデュラム小麦粉砕物とを用いると、可食状態において軟らかく粘りのある食感を有する生麺類が一層得られやすくなる。この場合、粉体原料における中力粉又は強力粉とデュラム小麦粉砕物との含有質量比は、前者(中力粉又は強力粉):後者(デュラム小麦粉砕物)として、好ましくは20:80~80:20、より好ましくは25:75~75:25である。
【0015】
前記生地調製工程で用いる粉体原料は、前述した穀粉及び澱粉以外の他の原料の1種以上を含有してもよい。斯かる他の原料としては、例えば、小麦蛋白、小麦グルテン、大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい、焼成カルシウム、膨張剤、乳化剤、増粘剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、アルコール、保存剤、酵素剤が挙げられる。
【0016】
前記生地調製工程で用いる液体原料としては、典型的には、水が用いられるが特に制限されず、例えば、水に塩などの調味料を溶解又は分散させた調味液、卵液等を用いることができる。
【0017】
前記生地調製工程において、生地の調製は常法に従って行うことができる。典型的には、粉体原料と液体原料とを混合し、その混合物をミキサー等を用いて混捏することで、多数の麺粒の集合体からなるそぼろ状の生地(粗生地)を調製する。
粉体原料と混合する液体原料の量は、製造する生麺類の種類等に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば、粉体原料100質量部に対して28~55質量部とすることができる。
【0018】
前記生地成形工程では、前記生地調製工程で得られた生地を生麺線に成形するところ、斯かる生地の成形方法として押出製麺法を用いる。押出製麺法は、粗生地を押出機に供給し、常圧下又は減圧下で適当な形状及び大きさの穴が開いたダイスから押し出して生麺線を得る手法である。
製麺法には、押出製麺法以外に例えば圧延製麺法が知られている。圧延製麺法は、粗生地を圧延し、得られた生地を任意に複合し、複数回の圧延により段階的に薄く延ばして麺帯とし、該麺帯を適当な切り刃で切断して生麺線を得る手法である。本発明者らの知見によれば、圧延製麺法の方が押出製麺法に比べて、可食状態で軟らかく粘りのある食感の生麺類を得るのに適している。しかし、押出製麺法によってもこのような食感を実現し得る技術に対するニーズがある。斯かる技術によれば、製麺設備として押出機のみを所有する場合でも、その既存の押出機を用いて押出製麺法によって製麺を行うことで目的の食感を得ることが可能となり、圧延ロール等の圧延製麺法の実施に必要な製麺設備を新たに導入する必要がなくなるというメリットがある。本発明は、このような観点から、生地の成形方法として押出製麺法を選択している。
【0019】
前記生地成形工程において、生地を押出製麺して生麺線を得る際の生地に加える圧力(押出圧力)は特に制限されない。また、生地を麺線に押出す方法も特に制限されず、従来公知の押出製麺法を利用することができる。例えば、乾パスタ製造用の一軸押出製麺機、二軸押出製麺機等を用いて、常法に従って行うことができる。前記生地成形工程では、押出機から得られる麺帯様又は麺柱様生地を圧延ロールで段階的に薄く延ばして麺帯を得、該麺帯を適当な切り刃で切断して生麺線を得る方法を実施してもよい。
【0020】
本発明の生麺類の製造方法は、前述した2つの工程(生地調製工程、生地成形工程)に加えて更に、下記の生地熟成工程及び麺線熟成工程の少なくとも一方を有する点で特徴付けられる。すなわち本発明の生麺類の製造方法は、1)生地調製工程、生地熟成工程、生地成形工程をこの順で有していてもよく、2)生地調製工程、生地成形工程、麺線熟成工程をこの順で有していてもよく、3)生地調製工程、生地熟成工程、生地成形工程、麺線熟成工程をこの順で有していてもよい。前記1)~3)の何れの態様でも、製麺性を損なうことなく、軟らかく粘りのある食感の生麺類を安定的に製造することが可能である。
・生地熟成工程:前記生地調製工程で得られた生地を、雰囲気温度10~45℃の環境に0.25~72時間置く工程。
・麺線熟成工程:前記生地成形工程で得られた生麺線を、雰囲気温度10~45℃の環境に0.25~72時間置く工程。
【0021】
前記生地熟成工程は、典型的には、雰囲気温度が前記特定範囲にある環境(以下、「生地熟成環境」とも言う。)に、包装状態又は未包装の生地を静置することで実施される。包装状態の生地は、例えば、前記生地調製工程で得られた生地の全体を樹脂製フィルム等の包装袋で覆うことで得られる。生地熟成環境は、生地を静置することができ且つ雰囲気温度を前記特定範囲に設定し得る環境であることを条件として特に制限されず、例えば、公知の恒温庫、恒温室等を用いることができる。
生地熟成環境の雰囲気温度(以下、「生地熟成温度」とも言う。)は、好ましくは15~45℃、より好ましくは25~45℃、更に好ましくは30~45℃である。
生地熟成環境に生地を置く時間(以下、「生地熟成時間」とも言う。)は、好ましくは0.25~60時間、より好ましくは0.5~48時間、更に好ましくは2~48時間、とりわけ好ましくは4~48時間である。
【0022】
前記麺線熟成工程は、典型的には、雰囲気温度が前記特定範囲にある環境(以下、「麺線熟成環境」とも言う。)に、未包装の麺線をそのまま、又は樹脂製フィルム等の包装袋で覆った状態で静置することで実施される。麺線熟成環境は、麺線を静置することができ且つ雰囲気温度を前記特定範囲に設定し得る環境であることを条件として特に制限されず、生地熟成環境と同様のものを用いることができる。
麺線熟成環境の雰囲気温度(以下、「麺線熟成温度」とも言う。)は、好ましくは15~45℃、より好ましくは25~45℃、更に好ましくは30~45℃である。
麺線熟成環境に生地を置く時間(以下、「麺線熟成時間」とも言う。)は、好ましくは0.25~60時間、より好ましくは0.5~48時間、更に好ましくは2~48時間、とりわけ好ましくは4~48時間である。
【0023】
前記の生地熟成工程及び/又は麺線熟成工程による作用効果は、前記生地調製工程で得られる生地の水分含量及び品温を適切にコントロールすることで、より優れたものとなり得る。したがって、生地の水分含量及び品温に影響のある要素、例えば、前記生地調製工程における生地調製の条件を適切にコントロールすることは、本発明の所定の効果を得る上で有効である。
具体的には、前記生地調製工程では、粉体原料100質量部に対して液体原料を30~50質量部用いることが好ましく、35~48質量部用いることが更に好ましい。
また、前記生地調製工程で用いる液体原料の温度(粉体原料と混合する直前の液体原料の品温)は、好ましくは15℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは35~100℃である。液体原料としては、沸騰水を用いてもよい。
【0024】
本発明の生麺類の製造方法は、前記生地成形工程の後(前記麺線熟成工程を実施する場合はその後)に、生麺線を加熱調理する工程と、加熱調理された麺線を冷蔵又は冷凍する工程とを有していてもよい。加熱調理された麺線を冷蔵した場合にはチルド麺類が得られ、加熱調理された麺線を冷凍した場合には冷凍麺類が得られる。
【実施例0025】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1~16、19~34、比較例1~4、参考例1~3〕
所定の配合の粉体原料に、液体原料である水を所定量添加・混合し、その混合物を、製麺ミキサー(横型ピンミキサー)を用いて減圧度-0.08MPaの環境で、高速5分間、低速10分間混捏してそぼろ状の粗生地を得た(生地調製工程)。次に、得られた粗生地を、押出製麺法により麺線に成形し、生麺線を得た(生地成形工程)。具体的には、パスタ製造機を用いて、粗生地を、所定の押出圧力で、減圧度-0.08MPaの条件で押出し、太さ3.0mmの生麺線を得た。次に、得られた生麺線に対し麺線熟成工程を実施した。具体的には、庫内温度が所定温度に設定された恒温庫の庫内に生麺線を食品用ラップフィルムで覆った状態で所定時間静置することで、麺線熟成工程を実施した。こうして、生地調製工程、生地成形工程、麺線熟成工程をこの順で実施して生麺類を製造した。粉体原料の配合、液体原料の使用量及び温度(粉体原料と混合する直前の温度)、麺線熟成温度(恒温庫の庫内温度)、麺線熟成時間(恒温庫内に生麺線を静置した時間)を表1~表3に示す。なお、本明細書における減圧度(減圧空間の圧力)は、大気圧をゼロとしたゲージ圧である。
【0027】
〔実施例17〕
麺線熟成工程を実施せず且つ生地熟成工程を実施した以外は、実施例4と同様にして生麺類を製造した。すなわち実施例17では、生地調製工程、生地熟成工程、生地成形工程をこの順で実施して生麺類を製造した。生地熟成工程は、庫内温度が所定温度に設定された恒温庫の庫内に食品用ラップフィルムで覆った生地を所定時間静置することで、生地熟成工程を実施した。生地熟成温度(恒温庫の庫内温度)、生地熟成時間(恒温庫内に生地を静置した時間)を表1に示す。
【0028】
〔実施例18〕
生地熟成工程を実施した以外は、実施例4と同様にして生麺類を製造した。すなわち実施例18では、生地調製工程、生地熟成工程、生地成形工程、麺線熟成工程をこの順で実施して生麺類を製造した。生地熟成工程は、実施例17と同様に実施した。
【0029】
前記の実施例、比較例、参考例で使用した原料の詳細は下記のとおりである。
・中力粉(日清製粉株式会社製、商品名「特雀」)
・強力粉:日清製粉株式会社製、商品名「ミリオン」
・デュラムセモリナ:日清製粉株式会社製、商品名「レオーネG」
・タピオカ加工澱粉:タピオカヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉
【0030】
〔評価試験〕
前記生地成形工程において生地を生麺線に成形するときの製麺性を下記評価基準により評価した。また、評価対象の生麺類を沸騰水で3~5分間茹で調理して茹で麺を得、該茹で麺の食感を下記評価基準により評価してもらった。評価は訓練された10名のパネラーによって行い、10名の評価の平均点を求めた。結果を表1~表3に示す。なお、表1~表3では、比較を容易にする観点から、実施例4を基準としてこれを複数掲載している。
<製麺性の評価基準>
5点:生地のべたつきが全くなく、製麺性が非常に良好。
4点:生地のべたつきがなく、製麺性が良好。
3点:生地のべたつきが少なく、製麺性がやや良好。
2点:生地のべたつきがややあり、製麺性が不良。
1点:生地が非常にべたつき、製麺性が非常に不良。
<食感の評価基準>
5点:非常に好ましい軟らかさと粘性とを有する。
4点:好ましい軟らかさと粘性とを有する。
3点:やや好ましい軟らかさと粘性とを有する。
2点:軟らかさ及び粘性の少なくとも一方がやや不足している。
1点:軟らかさ及び粘性の少なくとも一方が非常に不足している。
【0031】
【0032】
表1に示すとおり、各実施例は、実施した熟成工程(生地熟成工程及び/又は麺線熟成工程)における熟成温度及び熟成時間がそれぞれ前記特定範囲にあるため、これを満たさない比較例に比べて、得られた生麺類の製麺性及び可食状態での食感に優れていた。
【0033】
【0034】
表2を参照して、実施例4、19、20と参考例1、2との対比から、生地調製工程における液体原料の使用量は、粉体原料100質量部に対して30~50質量部程度が好ましいことがわかる。また、実施例4、21~28と参考例3との対比から、液体原料の温度は、5℃を超える範囲が好ましく、15℃以上がより好ましいことがわかる。
【0035】