(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143277
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法、プログラム及び三次元測定機
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050563
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】高野 晃
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062AA04
2F062CC03
2F062DD02
2F062DD21
2F062EE01
2F062EE62
2F062JJ04
2F062JJ05
(57)【要約】
【課題】測定領域の温度変化に応じて生じる、測定ヘッドにおける長さの変化に起因する測定データの誤差が抑制される、データ処理装置、データ処理方法、プログラム及び三次元測定機を提供する。
【解決手段】コンピュータ(40)は、測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッド(24)を校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報(85)を取得する温度情報取得部(74)、ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得部(66)及び温度差及び温度変化量パラメータを用いて、測定子の座標値を補正する座標値補正部(66)を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の測定点へ接触させる測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッドを校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得部と、
前記温度情報取得部を用いて取得された前記温度差及び前記温度変化量パラメータ取得部を用いて取得された前記温度変化量パラメータを用いて、前記測定子の座標値を補正する座標値補正部と、
を備えたデータ処理装置。
【請求項2】
前記温度変化量パラメータ取得部は、前記プローブにおける単位温度あたりの長さの変化量と、前記プローブを支持するプローブ支持部における単位温度あたりの長さの変化量とを加算して算出される前記温度変化量パラメータを取得する請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記温度変化量パラメータ取得部は、
前記プローブの単位温度あたりの長さの変化量として、前記プローブの熱膨張係数と前記校正温度における前記プローブの長さとを乗算して算出された値を取得し、
前記プローブを支持するプローブ支持部の単位温度あたりの長さの変化量として、前記プローブ支持部の熱膨張係数と前記校正温度における前記プローブ支持部の長さとを乗算して算出された値を取得する請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
1つ以上のプローブについて、前記プローブの熱膨張係数及び前記校正温度における前記プローブの長さが登録されるプローブ情報登録部を備え、
前記温度変化量パラメータ取得部は、測定に使用されるプローブにおける熱膨張係数及び前記校正温度における長さを、プローブ情報登録部から取得する請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
1つ以上のプローブ支持部について、前記プローブ支持部の熱膨張係数及び前記校正温度における前記プローブ支持部の長さが登録されるプローブ支持部情報登録部を備え、
前記温度変化量パラメータ取得部は、測定に使用されるプローブ支持部おける熱膨張係数及び前記校正温度における長さを、前記プローブ支持部情報登録部から取得する請求項3又は4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
予め規定される前記プローブの基準方向に対する、測定の際の前記プローブの方向を表す方向パラメータを取得する方向パラメータ取得部を備え、
前記座標値補正部は、前記方向パラメータ、前記温度差及び前記温度変化量パラメータを用いて、前記測定子の座標値を補正する請求項3から5のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記温度変化量パラメータ取得部は、前記プローブの前記基準方向における単位温度あたりの長さの変化量に、前記基準方向における前記プローブ支持部の単位温度あたりの長さの変化量を加算した前記温度変化量パラメータを取得する請求項6に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記方向パラメータ取得部は、鉛直下向きを前記基準方向とする前記方向パラメータを取得する請求項6又は7に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記温度変化量パラメータ取得部は、異なる方向を向く複数のプローブ構成要素を含む前記プローブが使用される場合、前記プローブ構成要素ごとに前記プローブの単位温度あたりの長さの変化量の総和を含む前記温度変化量パラメータを取得する請求項1から8のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記温度変化量パラメータ取得部は、前記温度変化量パラメータとして、前記測定温度に対する前記プローブの長さの変化量を表す直線の傾きを取得する請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
予め規定される前記プローブの基準方向に対する、測定の際の前記プローブの方向を表す方向パラメータを取得する方向パラメータ取得部を備え、
前記座標値補正部は、前記方向パラメータ、前記温度差及び前記温度変化量パラメータを用いて、前記測定子の座標値を補正する請求項10に記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記座標値補正部は、前記温度差に対する前記測定子の直径の変化を補正する請求項1から11のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項13】
測定対象物の測定点へ接触させる測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッドを校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報を取得する温度情報取得工程と、
前記ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得工程と、
前記温度情報取得工程において取得された前記温度差及び前記温度変化量パラメータ取得工程において取得された前記温度変化量パラメータを用いて、前記測定子の座標値を補正する座標値補正工程と、
を含むデータ処理方法。
【請求項14】
コンピュータに、
測定対象物の測定点へ接触させる測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッドを校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報を取得する温度情報取得機能、
前記ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得機能、及び
前記温度情報取得機能を用いて取得された前記温度差及び前記温度変化量パラメータ取得機能を用いて取得された前記温度変化量パラメータを用いて、前記測定子の座標値を補正する座標値補正機能を実現させるプログラム。
【請求項15】
測定対象物の測定点へ接触させる測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッドと、
前記測定子を前記測定点へ接触させて測定される前記測定点の座標値を取得する測定点座標値取得部と、
前記ヘッドを校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得部と、
前記温度情報取得部を用いて取得された前記温度差及び前記温度変化量パラメータ取得部を用いて取得された前記温度変化量パラメータを用いて、前記測定子の座標値を補正する座標値補正部と、
を備えた三次元測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、データ処理方法、プログラム及び三次元測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元測定機は、主として、温度管理された検査室内で使用されている。近年、三次元測定機は、本体の温度変化への耐久性能の向上に伴い、空調が十分でない製造現場などで使用されるケースが増えている。
【0003】
三次元測定機に具備されるプローブは、環境温度の影響を受けて伸び縮みする。三次元測定は、校正の際の環境温度を起点として、環境温度の変化に追従して測定誤差が大きくなるという問題が存在する。
【0004】
温度変化に伴う測定精度の低下を抑制する方法として、例えば、環境温度がA℃において三次元測定機のプローブを校正した場合、環境温度がA℃の場合のプローブの座標及びプローブの先端に具備されるチップの直径が記憶され、記憶された情報が測定に用いられる。
【0005】
環境温度がA℃からB℃へ変化した場合、A℃とB℃との温度差に起因するプローブの膨張の測定精度への影響を抑制するには、環境温度がB℃においてプローブが再度校正され、環境温度がB℃におけるプローブの座標及びプローブの先端に具備されるチップの直径が記憶され、記憶された情報が測定に用いられる。
【0006】
複数のプローブ方向が存在する場合は、プローブ方向の数の分の校正が実施される。また、1つのプローブが複数の方向を向くプローブ構成要素を有する場合は、プローブ構成要素の数の分の校正が実施される。すなわち、1つのプローブについて、プローブの方向の数×プローブ構成要素の数の回数の校正が実施される。
【0007】
特許文献1は、被測定物を測定するX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれの温度を検出する温度センサを備え、温度センサを用いて検出される各軸の温度に基づき、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれの座標値について温度補正を行う三次元測定機が記載される。
【0008】
同文献に記載の装置は、各軸に具備されるスケールの熱膨張係数と、検出温度の基準温度からの差分値と、スケールのカウント値とを乗算して、各軸の座標値の補正値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、空調が十分でない環境では、定常的に環境温度の変化が生じるおそれがある。そうすると、校正が実施される環境温度と測定が実施される環境温度との間に温度差が生じ、環境温度の変化に伴う測定データの誤差が生じてしまう。
【0011】
一定の温度変化が生じる度にプローブの校正が実施されると、三次元測定機の稼働率の低下が生じてしまう。また、複数回のプローブの校正は、三次元測定機の稼働率の低下を
助長してしまう。
【0012】
特許文献1に記載の装置では、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに具備されるスケールの膨張及び収縮の補正は可能であるが、プローブを含めた測定ヘッド自体の膨張及び収縮に起因する測定データの補正は困難である。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、測定領域の温度変化に応じて生じる、測定ヘッドにおける長さの変化に起因する測定データの誤差が抑制される、データ処理装置、データ処理方法、プログラム及び三次元測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0015】
本開示に係るデータ処理装置は、測定対象物の測定点へ接触させる測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッドを校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報を取得する温度情報取得部と、ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得部と、温度情報取得部を用いて取得された温度差及び温度変化量パラメータ取得部を用いて取得された温度変化量パラメータを用いて、測定子の座標値を補正する座標値補正部と、を備えたデータ処理装置である。
【0016】
本開示に係るデータ処理装置によれば、ヘッドが校正される校正温度に対する測定の際の測定温度の温度差に応じて、測定対象物を測定する測定子の中心座標が補正される。これにより、測定ヘッドの長さの変化に起因して生じる測定データの誤差が抑制される。また、測定ヘッドの校正の実施回数を減らすことができ、ダウンタイムの短縮化が実現される。
【0017】
他の態様に係るデータ処理装置において、温度変化量パラメータ取得部は、プローブにおける単位温度あたりの長さの変化量と、プローブを支持するプローブ支持部における単位温度あたりの長さの変化量とを加算して算出される温度変化量パラメータを取得してもよい。
【0018】
かかる態様によれば、校正温度に対する測定温度の温度差に起因する、プローブの長さの変化及びプローブ支持部の長さの変化を補正し得る。
【0019】
他の態様に係るデータ処理装置において、温度変化量パラメータ取得部は、プローブの単位温度あたりの長さの変化量として、プローブの熱膨張係数と校正温度におけるプローブの長さとを乗算して算出された値を取得し、プローブを支持するプローブ支持部の単位温度あたりの長さの変化量として、プローブ支持部の熱膨張係数と校正温度におけるプローブ支持部の長さとを乗算して算出された値を取得してもよい。
【0020】
かかる態様によれば、熱膨張係数及び校正温度における長さに基づく、温度変化量パラメータを取得し得る。
【0021】
他の態様に係るデータ処理装置において、1つ以上のプローブについて、プローブの熱膨張係数及び校正温度におけるプローブの長さが登録されるプローブ情報登録部を備え、温度変化量パラメータ取得部は、測定に使用されるプローブにおける熱膨張係数及び校正温度における長さを、プローブ情報登録部から取得してもよい。
【0022】
かかる態様によれば、予め登録されるプローブの熱膨張係数及び校正温度における長さ
基づく、温度変化量パラメータを取得し得る。
【0023】
他の態様に係るデータ処理装置において、1つ以上のプローブ支持部について、プローブ支持部の熱膨張係数及び校正温度におけるプローブ支持部の長さが登録されるプローブ支持部情報登録部を備え、温度変化量パラメータ取得部は、測定に使用されるプローブ支持部おける熱膨張係数及び校正温度における長さを、ローブ支持部情報登録部から取得してもよい。
【0024】
かかる態様によれば、予め登録されるプローブ支持部の熱膨張係数及び校正温度における長さ基づく、温度変化量パラメータを取得し得る。
【0025】
他の態様に係るデータ処理装置において、予め規定されるプローブの基準方向に対する、測定の際のプローブの方向を表す方向パラメータを取得する方向パラメータ取得部を備え、座標値補正部は、方向パラメータ、温度差及び温度変化量パラメータを用いて、測定子の座標値を補正してもよい。
【0026】
かかる態様によれば、測定の際のプローブの姿勢に応じた温度変化量パラメータを取得し得る。
【0027】
他の態様に係るデータ処理装置において、温度変化量パラメータ取得部は、プローブの基準方向における単位温度あたりの長さの変化量に、基準方向におけるプローブ支持部の単位温度あたりの長さの変化量を加算した温度変化量パラメータを取得してもよい。
【0028】
かかる態様によれば、基準方向におけるプローブ及びプローブ支持部の長さの変化量に応じた温度補正を実施し得る。
【0029】
他の態様に係るデータ処理装置において、方向パラメータ取得部は、鉛直下向きを基準方向とする方向パラメータを取得してもよい。
【0030】
かかる態様によれば、鉛直下向きにおけるプローブ及びプローブ支持部の長さの変化量に応じた温度補正を実施し得る。
【0031】
他の態様に係るデータ処理装置において、温度変化量パラメータ取得部は、異なる方向を向く複数のプローブ構成要素を含むプローブが使用される場合、プローブ構成要素ごとにプローブの単位温度あたりの長さの変化量の総和を含む温度変化量パラメータを取得してもよい。
【0032】
かかる態様によれば、プローブの構成に応じた温度補正を実施し得る。
【0033】
他の態様に係るデータ処理装置において、温度変化量パラメータ取得部は、温度変化量パラメータとして、測定温度に対するプローブの長さの変化量を表す直線の傾きを取得してもよい。
【0034】
かかる態様によれば、プローブ情報等が予め記憶されていないヘッドが適用される場合であっても、温度変化量パラメータが適用される温度補正を実施し得る。
【0035】
他の態様に係るデータ処理装置において、予め規定されるプローブの基準方向に対する、測定の際のプローブの方向を表す方向パラメータを取得する方向パラメータ取得部を備え、座標値補正部は、方向パラメータ、温度差及び温度変化量パラメータを用いて、測定子の座標値を補正してもよい。
【0036】
かかる態様によれば、測定の際のプローブの姿勢に応じた温度変化量パラメータを取得し得る。
【0037】
他の態様に係るデータ処理装置において、座標値補正部は、温度差に対する測定子の直径の変化を補正してもよい。
【0038】
かかる態様によれば、校正温度に対する測定温度の温度差に起因する接触子の直径の変化を補正し得る。
【0039】
本開示に係るデータ処理方法は、測定対象物の測定点へ接触させる測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッドを校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報を取得する温度情報取得工程と、ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得工程と、温度情報取得工程において取得された温度差及び温度変化量パラメータ取得工程において取得された温度変化量パラメータを用いて、測定子の座標値を補正する座標値補正工程と、を含むデータ処理方法である。
【0040】
本開示に係るデータ処理方法によれば、本開示に係るデータ処理装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係るデータ処理装置の構成要件は、他の態様に係るデータ処理方法の構成要件へ適用し得る。
【0041】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、測定対象物の測定点へ接触させる測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッドを校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報を取得する温度情報取得機能、ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得機能、及び温度情報取得機能を用いて取得された温度差及び温度変化量パラメータ取得機能を用いて取得された温度変化量パラメータを用いて、測定子の座標値を補正する座標値補正機能を実現させるプログラムである。
【0042】
本開示に係るプログラムによれば、本開示に係るデータ処理装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係るデータ処理装置の構成要件は、他の態様に係るプログラムの構成要件へ適用し得る。
【0043】
本開示に係る三次元測定機は、測定対象物の測定点へ接触させる測定子が取り付けられるプローブを備えるヘッドと、測定子を測定点へ接触させて測定される測定点の座標値を取得する測定点座標値取得部と、ヘッドを校正する際の校正温度に対する、測定対象物を測定する際の測定温度の温度差を含む温度情報を取得する温度情報取得部と、ヘッドにおける単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得部と、温度情報取得部を用いて取得された温度差及び温度変化量パラメータ取得部を用いて取得された温度変化量パラメータを用いて、測定子の座標値を補正する座標値補正部と、を備えた三次元測定機である。
【0044】
本開示に係る三次元測定機によれば、本開示に係るデータ処理装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係るデータ処理装置の構成要件は、他の態様に係る三次元測定機の構成要件へ適用し得る。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、ヘッドが校正される校正温度に対する測定の際の測定温度の温度差に応じて、測定対象物を測定する測定子の中心座標が補正される。これにより、測定ヘッドの長さの変化に起因して生じる測定データの誤差が抑制される。また、測定ヘッドの校正の実施回数を減らすことができ、ダウンタイムの短縮化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は第1実施形態に係る三次元測定機の全体構成図である。
【
図2】
図2はヘッドの構成例を示すヘッドの斜視図である。
【
図3】
図3はプローブ交換マガジンの斜視図である。
【
図4】
図4は
図1に示す三次元測定機に適用される電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は
図4に示す測定データ補正部の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は
図4に示すヘッド設定部の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7は第1実施形態に係るデータ処理方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8はヘッドの熱膨張及び熱収縮に起因する測定誤差の説明図である。
【
図9】
図9は三次元測定機の稼働時間と測定領域の温度との関係を示すグラフである。
【
図11】
図11はプローブが(0,0,-1)と表される方向を向くヘッドの正面図である。
【
図12】
図12はプローブが(1,0,0)と表される方向を向くヘッドの正面図である。
【
図13】
図13はプローブが(-1,0,0)と表される方向を向くヘッドの正面図である。
【
図14】
図14は温度補正前のチップ直径と温度補正後のチップ直径との関係を示す模式図である。
【
図18】
図18は第2実施形態に係る三次元測定機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図21】
図21はプローブモジュール設定画面の説明図である。
【
図23】
図23はプローブ構成設定画面の第1例の説明図である。
【
図24】
図24は第1例に係る構成を有するプローブが搭載されるプローブヘッド斜視図である。
【
図26】
図26は第2例に係る構成を有するプローブヘが搭載されるプローブヘッド斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0048】
[第1実施形態に係る三次元測定機の全体構成]
図1は第1実施形態に係る三次元測定機の全体構成図である。三次元測定機10は、測定対象物であるワークの測定点の座標値を取得し、ワークの三次元形状の測定及びワークに含まれる幾何要素の解析を実施する。なお、三次元測定機は、英語表記Coordinate Mea
suring Machineの省略語を用いてCMMと称されることがある。
【0049】
同図に示す三次元測定機10は、架台12、テーブル14、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、Xガイド18、Xキャリッジ20、Zキャリッジ22及びヘッド24を備える。
【0050】
架台12はテーブル14の下面を支持する支持台である。テーブル14は定盤が適用される。テーブル14は、上面のX軸方向における一方の端部に右Yキャリッジ16Rが立設され、他方の端部に左Yキャリッジ16Lが立設される。
【0051】
テーブル14のX軸方向における両端部の上面及び側面は、Y軸方向に沿って右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lが摺動する摺動面が形成される。また、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lは、テーブル14の摺動面に対向する位置にエアベアリングが具備される。すなわち、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lは、テーブル14を用いて、Y軸方向について移動自在に支持される。なお、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lに具備されるエアベアリングの図示を省略する。
【0052】
Xガイド18は、右Yキャリッジ16Rを用いてX軸方向の一方の端部が支持され、左Yキャリッジ16Lを用いてX軸方向の他方の端部が支持される。右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L及びXガイド18は門型フレーム26を構成する。門型フレーム26は、Y軸方向について移動自在に構成される。
【0053】
Xガイド18は、Xキャリッジ20が摺動する摺動面がX軸方向に沿って形成される。Xキャリッジ20は、Xガイド18の摺動面に対向する位置にエアベアリングが具備される。Xキャリッジ20は、Xガイド18を用いてX軸方向について移動自在に支持される。なお、Xガイド18の摺動面に対向する位置に具備されるエアベアリングの図示を省略する。
【0054】
Zキャリッジ22は、Xキャリッジ20を用いて、Z軸方向に沿って移動自在に支持される。Xキャリッジ20は、Z軸方向についてZキャリッジ22を案内するエアベアリングが具備される。なお、Z軸方向についてZキャリッジ22を案内するエアベアリングの図示を省略する。
【0055】
ヘッド24は、Zキャリッジ22の下端に取り付けられる。ヘッド24は、プローブヘッド24A、プローブモジュール24B及びスタイラス24Cを備える。スタイラス24Cは、プローブ24D及びチップ24Eを含んで構成される。また、スタイラス24Cは、プローブ24Dをプローブモジュール24Bへ取り付ける取付部を含む。なお、取付部の図示を省略する。
【0056】
ヘッド24は、チップ24Eを無段階に位置決めし得る無段階位置決め機構を備える5軸同時制御プローブヘッドを適用し得る。5軸には、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を含み、更に、回転方向を示すA軸及びB軸が含まれる。
【0057】
三次元測定機10は、X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部を備える。X駆動部はX軸方向に沿ってXキャリッジ20を移動させる。Y駆動部はY軸方向に沿って門型フレーム26を移動させる。Z駆動部はZ軸方向に沿ってZキャリッジ22を移動させる。
【0058】
三次元測定機10は、X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部を適宜動作させて、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について、任意の位置へヘッド24を移動させ得る。なお、
図1ではX駆動部、Y駆動部及びZ駆動部の図示を省略する。X駆動部、Y駆動
部及びZ駆動部は、駆動部28として
図2に図示する。
【0059】
三次元測定機10は、プローブヘッド24Aに対して、プローブモジュール24B、プローブ24D及びチップ24Eを、Z軸方向に直交する回転軸RSAの回りに一体に回転させるA軸駆動部を備える。
【0060】
また、三次元測定機10は、Z軸方向に平行となる回転軸RS
Bの回りにプローブヘッド24Aを回転させるB軸駆動部を備える。A軸駆動部及びB軸駆動部は、プローブ24D及びチップ24Eを任意の姿勢に設定し得る。なお、
図1ではA軸駆動部及びB軸駆動部の図示を省略する。A軸駆動部及びB軸駆動部は、駆動部28として
図4に図示する。
【0061】
Xガイド18は、X軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、Xキャリッジ20はX軸方向位置検出ヘッドが具備される。X軸方向位置検出ヘッドは、X軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、X軸方向位置検出信号を出力する。
【0062】
テーブル14は、X軸方向における一方の端の側面にY軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、右Yキャリッジ16RはY軸方向位置検出ヘッドが具備される。Y軸方向位置検出ヘッドは、Y軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、Y軸方向位置検出信号を出力する。
【0063】
Zキャリッジ22は、Z軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、Xキャリッジ20はZ軸方向位置検出ヘッドが具備される。Z軸方向位置検出ヘッドは、Z軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、Z軸方向位置検出信号を出力する。
【0064】
ヘッド24は、プローブ24D及びチップ24Eの回転角度を検出するエンコーダが具備される。プローブ24D及びチップ24Eの回転角度は、回転軸RSAの回りを回転する際のA軸方向における回転角度θA及び回転軸RSBの回りを回転する際のB軸方向における回転角度θBが適用される。
【0065】
ヘッド24は、チップ24Eのワークへの接触を検出する接触センサを備える。接触センサは接触検出信号を出力する。すなわち、三次元測定機10は、ワークにおける任意の測定点へのチップ24Eの接触を検出した際に、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置検出信号を取得し、かつ、A軸方向及びB軸方向の回転角度検出信号を取得し、チップ24Eの座標値を導出し得る。
【0066】
三次元測定機10は、コントローラ30及びコンピュータ40を備える。コントローラ30及びコンピュータ40は、三次元測定機10の測定制御部として機能する。コントローラ30は、X駆動部、Y駆動部、Z駆動部、A軸駆動部及びB軸駆動部へ制御信号を送信し、チップ24Eの位置及びプローブ24D及びチップ24Eの姿勢を制御する。
【0067】
コントローラ30は、ジョイスティック及び操作ボタン等を備えるコントローラ操作部32を備える。コントローラ操作部32は、ヘッド24を手動操作する際に操作される。
【0068】
コントローラ30は、通信インターフェースを備える。コントローラ30は、通信インターフェースを介して、各種の位置検出ヘッド及び接触センサ等と電気接続される。コントローラ30は、各種の位置検出ヘッド及び接触センサ等が出力する各種の検出信号を取得する。
【0069】
コントローラ30は、通信インターフェースを介して、コンピュータ40と通信可能に接続される。コントローラ30とコンピュータ40との通信プロトコルは、TCP/IP
を適用し得る。なお、TCPはTransmission Control Protocolの省略語である。また、IPはInternet Protocolの省略語である。
【0070】
コンピュータ40は、三次元測定機10の各種の機能に対応する命令が含まれるソフトウェア81が記憶されるコンピュータ可読媒体82を備える。また、コンピュータ40は、ソフトウェア81の各種の命令を実行するプロセッサ83を備える。プロセッサ83は、非一時的な有体物であるコンピュータ可読媒体82へ記憶されるソフトウェア81の各種の命令を実行して、三次元測定機10の各種の機能を実現する。なお、ソフトウェアはプログラムと同義である。以下、ソフトウェアはプログラムと称する場合がある。
【0071】
コンピュータ40は、測定データを取得し、取得した測定データを解析し、解析結果を出力する。解析結果は、ディスプレイ装置50へ表示させてもよいし、印刷装置を用いて印刷用紙へ印刷させてもよい。
【0072】
三次元測定機10は、ディスプレイ装置50及び入力装置52を備える。ディスプレイ装置50は、コンピュータ40から送信される表示信号に基づき、三次元測定機10における各種の情報を表示する。
【0073】
入力装置52は、キーボート及びマウス等が含まれる。入力装置52はユーザが入力する各種の情報を表す信号をコンピュータ40へ送信する。コンピュータ40は、入力装置52から送信される信号に基づき、各種の処理を実施する。ディスプレイ装置50はタッチパネル方式を適用して、操作部と一体に構成してもよい。
【0074】
[ヘッドの構成例]
図2はヘッドの構成例を示すヘッドの斜視図である。同図に示すヘッド24は、ヘッド取付部22Aを介して、
図1に示すZキャリッジ22の先端に取り付けられる。プローブヘッド24Aは、プローブモジュール24B、プローブ24D及びチップ24Eを、A軸方向の回転軸RS
Aの回りに回転自在に支持する。ヘッド取付部22Aは、プローブヘッド24Aを、B軸方向の回転軸RS
Bの回りに回転自在に支持する。
【0075】
なお、実施形態に記載のチップ24Eは測定子の一例である。実施形態に記載のプローブヘッド24A及びプローブモジュール24Bは、プローブを支持するプローブ支持部の構成要素の一例である。
【0076】
[複数のスタイラスの構成例]
図3はプローブ交換マガジンの斜視図である。
図3には、仕様が異なる6本のスタイラス24Cであり、測定点の形状及び構造等に応じて選択的に使用されるスタイラス24Cが収納されるプローブ交換マガジン27を図示する。
【0077】
プローブ交換マガジン27は、プローブモジュール24Bに取り付けられたスタイラス24Cが収納される。プローブ交換マガジン27に収納されるスタイラス24Cは、プローブ番号が付与される。
図3には、6本のスタイラス24Cに対して、1から6までの通し番号が付される態様を図示する。
【0078】
プローブ交換マガジン27は、
図1に示すテーブル14における、ヘッド24の移動可能範囲であり、ワークの測定の障害とならない任意の位置に載置される。
【0079】
図3に示す6本のスタイラス24Cのうち、プローブ番号が1から4までのスタイラス24C及びプローブ番号が6のスタイラス24Cは、プローブ24Dが1方向を向く形状を有する。プローブ番号が5のスタイラス24Cは、2本のプローブ24Dであるプロー
ブ24D
1及びプローブ24D
2を有し、プローブ24D
1及びプローブ24D
2が互いに直交する方向を向く形状を有する。
【0080】
なお、
図3に示すスタイラス24Cの数及びスタイラス24Cごとの形状は例示であり、
図3に図示される態様に限定されない。また、プローブ交換マガジン27の構造及び形状についても
図3に図示される態様に限定されず、スタイラス24Cの数等に応じて、適宜、規定し得る。
【0081】
実施形態に記載のプローブ24D1及びプローブ24D2のそれぞれは、異なる方向を向く複数のプローブ構成要素の一例である。
【0082】
[第1実施形態に係る三次元測定機の電気的構成]
図4は
図1に示す三次元測定機に適用される電気的構成を示す機能ブロック図である。コンピュータ40は、駆動制御部60を備える。ワークの自動測定が実施される場合に、駆動制御部60はコントローラ30へ指令信号を送信する。
【0083】
コントローラ30は、コンピュータ40から送信される指令信号に基づき駆動部28を制御して、キャリッジ29を動作させ、かつ、ヘッド24を回転させ、自動測定を実施する。
【0084】
ワークの手動測定が実施される場合に、コントローラ30はコントローラ操作部32の操作に応じて駆動部28を制御して、キャリッジ29を動作させ、かつ、ヘッド24を回転させる。
【0085】
なお、
図4に示す駆動部28は、X駆動部、Y駆動部、Z駆動部、第一回転駆動部及び第二回転駆動部が含まれる。また、キャリッジ29は、
図1に示すXキャリッジ20、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L及びZキャリッジ22が含まれる。
【0086】
コンピュータ40は、モード設定部62を備える。モード設定部62は、三次元測定機10の動作モードを設定する。三次元測定機10の動作モードは、自動測定モード、手動測定モード及びティーチングモードが含まれる。
【0087】
自動測定モードは、測定プログラムを実行してワークの自動測定を実施する場合に設定される動作モードである。手動測定モードは、オペレータがコントローラ操作部32を操作してヘッド24を移動させて、ワークを測定する場合に設定される動作モードである。
【0088】
モード設定部62は、動作モードの設定を表すモード設定情報を取得し、モード設定情報に応じて、三次元測定機10の動作モードを設定する。コンピュータ40は、設定された動作モードをディスプレイ装置50へ表示させてもよい。
【0089】
コンピュータ40は、測定データ取得部64を備える。測定データ取得部64は、ワークの測定データとして、ワークの測定点へ接触させたチップ24Eの座標値を表すプロービング信号をヘッド24から取得する。
【0090】
測定データ取得部64は、三次元測定機10が自動測定モードに設定されている場合に、ワークに対して予め規定される測定点に接触させたチップ24Eの座標値を表すプロービング信号を取得する。
【0091】
測定データ取得部64は、三次元測定機10が手動測定モードに設定されている場合に、ユーザが定義した測定点の座標値を表すプロービング信号を取得する。ユーザは、コン
トローラ操作部32を操作して測定点を定義し得る。
【0092】
測定データ取得部64を介して取得された測定点におけるチップ24Eの座標値は、測定点の識別情報と関連付けされ、記憶される。測定点の識別情報は、複数の測定点に対して付与される連続番号、測定対象における測定点の部位名等を適用し得る。測定点の識別情報は、複数の情報の組み合わせを適用し得る。なお、実施形態に記載の測定データ取得部64は、測定点の座標値を取得する測定点座標値取得部の一例である。
【0093】
コンピュータ40は、測定データ補正部66を備える。測定データ補正部66は、三次元測定機10の測定領域における温度変化に応じて測定データを補正する温度補正を実施する。
【0094】
すなわち、測定データ補正部66は、プローブ24Dの校正が実施された校正温度に対してワークを測定する際の測定温度が変化した場合に生じるヘッド24の膨張又は収縮に応じて、測定データとして取得した測定点ごとの座標値を補正する。測定データ補正部66における測定データの温度補正の詳細は後述する。
【0095】
コンピュータ40は、解析部68を備える。解析部68は、ワークの測定データとして採用された測定点ごとのプロービング信号を解析し、ワークの測定結果として解析結果を出力する。
【0096】
コンピュータ40は、入力信号取得部70を備える。入力信号取得部70は、入力装置52から送信される入力情報を表す信号を取得する。コンピュータ40は、入力情報に基づき各種の制御を実施する。
【0097】
コンピュータ40は、表示制御部72を備える。表示制御部72は、ディスプレイ装置50へ表示信号を送信する。ディスプレイ装置50は、表示制御部72から送信される表示信号に基づき、三次元測定機10における各種の情報を表示する。
【0098】
コンピュータ40は、温度情報取得部74を備える。温度情報取得部74は、三次元測定機10の測定領域の温度を検出する温度センサ76から出力される、測定領域の温度を表すセンサ信号を取得する。
【0099】
具体的には、温度情報取得部74は、プローブ24Dの校正が実施される際の測定領域の温度を校正温度として取得する。また、温度情報取得部74は、ワークの測定が実施される際の測定領域の温度を測定温度として取得する。校正温度は、予め規定される固定値を取得してもよい。
【0100】
温度情報取得部74は、温度情報85として、校正温度及び測定温度をメモリ82Aへ記憶する。温度情報取得部74は、温度情報85として、校正温度と測定温度との温度差を算出し、メモリ82Aへ記憶してもよい。
【0101】
ここでいう温度差の算出は、温度差の取得という概念に含まれる。すなわち、本明細書における算出という用語は、取得という概念に含まれ得る。
【0102】
温度情報取得部74は、規定の周期を適用して、温度センサ76から出力されるセンサ信号を複数回にわたり測定温度として取得してもよい。温度情報取得部74は、センサ信号を取得した時刻とセンサ信号が表す温度情報とを関連付けして記憶してもよい。
【0103】
温度センサ76は、ヘッド24に取り付けられる温度センサでもよいし、三次元測定機
10の測定領域に配置されるセンサでもよい。複数の温度センサ76が具備され、互いに異なる複数の位置のそれぞれに温度センサ76が具備されてもよい。温度センサ76は、測定領域の外部に配置され、測定領域をターゲットとする非接触式を適用してもよい。
【0104】
ここで、三次元測定機10の測定領域は、ワークを測定する際にプローブ24D及びチップ24Eが移動し得る3次元空間であり、三次元測定機10に規定される座標系の座標値を用いて表される領域である。三次元測定機10に規定される座標系は、マシン座標系が適用されてもよいし、ワーク座標系が適用されてもよい。
【0105】
コンピュータ40は、ヘッド情報登録部78を備える。ヘッド情報登録部78は、ヘッド24に関連するヘッド情報86を登録する。複数の異なるヘッド24が選択的に使用される場合、ヘッド情報86はヘッド24の識別情報と関連付けされ、登録される。登録されたヘッド情報86は、メモリ82Aへ記憶される。
【0106】
ヘッド情報86は、プローブヘッド24Aに関連するプローブヘッド情報、プローブモジュール24Bに関連するプローブモジュール情報、プローブ24Dに関連するプローブ情報及びチップ24Eに関連するチップ情報が含まれる。ヘッド情報86の詳細は後述する。
【0107】
コンピュータ40は、ヘッド設定部79を備える。ヘッド設定部79は、予め登録されているヘッド24の中から測定に使用されるヘッド24を設定する。例えば、ユーザは、入力装置52を介して選択したヘッドを測定に使用されるヘッド24として設定し得る。
【0108】
ヘッド24の設定には、プローブヘッド24Aの設定、プローブモジュール24Bの設定、プローブ24Dの設定及びチップ24Eの設定が含まれる。測定点に応じて複数の異なるプローブ24D及びチップ24Eが選択的に使用される場合、プローブ24D及びチップ24Eは測定点の識別情報と関連付けされ、設定される。
【0109】
測定データ補正部66は、ヘッド設定部79を用いて設定されたヘッド24に対応するヘッド情報86をメモリ82Aから読み出し、測定領域における温度変化に応じた測定データの温度補正に使用する。
【0110】
駆動制御部60等の各種の制御部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを用いて構成される。各種の制御部は、一つのプロセッサが適用されてもよいし、複数のプロセッサが適用されてもよい。また、一つのプロセッサを適用して、複数の制御部が構成されてもよい。複数のプロセッサは、同一の種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0111】
コンピュータ40は、コンピュータ可読媒体82を備える。コンピュータ可読媒体82は、主記憶装置であるメモリ82A及び補助記憶装置であるストレージ82Bを含み得る。コンピュータ可読媒体82は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ等を適用し得る。コンピュータ可読媒体82は、複数のデバイスの組み合わせを適用し得る。
【0112】
コンピュータ可読媒体82は、各種のソフトウェア81、測定データ84、温度情報85及びヘッド情報86が記憶される。すなわち、コンピュータ可読媒体82は、各種のソフトウェア81が記憶される領域、測定データ84が記憶される領域、温度情報85が記憶される領域及びヘッド情報86が記憶される領域が含まれる。コンピュータ可読媒体82は、各種のソフトウェア81を実行する際に使用される各種のパラメータが記憶される領域が含まれていてもよい。
【0113】
[測定データ補正部の構成例]
図5は
図4に示す測定データ補正部の構成例を示す機能ブロック図である。
図5に示す測定データ補正部66は、温度変化量パラメータ算出部100、補正演算部102及び温度補正データ出力部104を備える。
【0114】
温度変化量パラメータ算出部100は、
図4に示すヘッド設定部79を用いて設定されたヘッド24に対応するヘッド情報86をメモリ82Aから読み出し、ヘッド情報86を用いて測定データ84の温度補正に適用される温度変化量パラメータを算出する。温度変化量パラメータ算出部100は、算出した温度変化量パラメータを補正演算部102へ送信する。なお、実施形態に記載の温度変化量パラメータ算出部100は、温度変化量パラメータ取得部の一例である。
【0115】
補正演算部102は、メモリ82Aから温度情報85を読み出す。補正演算部102は、温度情報として校正温度及び測定温度を取得する場合、校正温度と測定温度との差を算出する。補正演算部102は、温度情報として校正温度と測定温度との温度差を取得してもよい。
【0116】
補正演算部102は、メモリ82Aから測定データ84を読み出し、校正温度と測定温度との温度差及び温度変化量パラメータを用いて、測定データ84に対して温度補正を実施し、温度補正がされたチップ24Eの座標値を算出する。なお、実施形態に記載の補正演算部102は、測定子の座標値を補正する座標値補正部の一例である。
【0117】
温度補正データ出力部104は、温度補正が施された測定データ84として、温度補正が実施された測定点ごとの座標値を出力する。
図4に示す解析部68は、温度補正が施された測定データ84を取得し、温度補正が施された測定データ84に対して解析処理を実施し得る。
【0118】
[ヘッド設定部の構成例]
図6は
図4に示すヘッド設定部の構成例を示す機能ブロック図である。
図6に示すヘッド設定部79は、プローブヘッド設定部120、プローブモジュール設定部122、プローブ設定部124を備える。
【0119】
プローブヘッド設定部120は、
図1に示すプローブヘッド24Aを設定する。プローブヘッド24Aの設定は、
図4に示すディスプレイ装置50に表示される複数のプローブヘッド24Aの中から、ユーザが入力装置52を操作して所望のプローブヘッド24Aを選択してもよい。
【0120】
プローブモジュール設定部122は、プローブモジュール24Bを設定する。プローブヘッド24Aの設定と同様に、ディスプレイ装置50に表示される複数のプローブモジュール24Bの中から、ユーザが入力装置52を操作して所望のプローブモジュール24Bを選択してもよい。
【0121】
プローブ設定部124は、プローブ構成設定部126、プローブ番号設定部128及びプローブ姿勢設定部130を備える。プローブ構成設定部126は、測定に使用されるプローブ24Dの構成及びチップ24Eの構成を設定する。
【0122】
測定点に応じて、複数のプローブ24D及びチップ24Eの組み合わせが選択的に使用される場合、複数のプローブ24D及びチップ24Eの組み合わせのそれぞれについて、プローブ24Dの構成及びチップ24Eの構成が設定される。
【0123】
プローブ番号設定部128は、プローブ24D及びチップ24Eの組み合わせに対してプローブ番号を設定する。プローブ24D及びチップ24Eの組み合わせは、設定されたプローブ番号を用いて管理される。プローブ番号の例として、
図3に図示される1から6までの通し番号が挙げられる。
【0124】
プローブ姿勢設定部130は、測定に適用されるプローブ24Dの姿勢を規定する。すなわち、プローブ姿勢設定部130は測定点ごとのA軸方向の回転角度θA及びB軸方向の回転角度θBを設定する。
【0125】
[測定データ処理方法の手順]
図7は第1実施形態に係るデータ処理方法の手順を示すフローチャートである。ヘッド設定工程S10では、
図4に示すヘッド設定部79は、ワークの測定に使用されるヘッド24を設定する。ヘッド設定工程S10の後に、ヘッド情報取得工程S12へ進む。
【0126】
ヘッド情報取得工程S12では、測定データ補正部66は、ヘッド情報取得工程S12において設定されたヘッド24に対応するヘッド情報86をメモリ82Aから読み出す。ヘッド情報取得工程S12の後に、温度変化量パラメータ算出工程S14へ進む。
【0127】
温度変化量パラメータ算出工程S14では、測定データ補正部66は、ヘッド情報取得工程S12において取得されたヘッド情報86を用いて、温度変化量パラメータを算出する。温度変化量パラメータ算出工程S14の後に、測定データ取得工程S16へ進む。
【0128】
測定データ取得工程S16では、測定データ補正部66は、メモリ82Aから測定点ごとの測定データ84を読み出す。測定データ取得工程S16の後に、温度情報取得工程S18へ進む。
【0129】
温度情報取得工程S18では、メモリ82Aから測定点ごとの測定データ84に対応する温度情報として、校正温度に対する測定温度の温度差を取得する。ここでいう温度差の取得は、予め算出される温度差を取得する態様及び校正温度及び測定温度から温度差を算出する態様が含まれる。
【0130】
測定データ取得工程S16と温度情報取得工程S18とは、並行して実行されてもよいし、一体的に実行されてもよい。すなわち、測定データの温度補正が実施される際に、測定点ごとの測定データと測定の際の測定温度との組を取得してもよい。温度情報取得工程S18の後に、中心座標補正工程S20へ進む。
【0131】
中心座標補正工程S20では、測定データ補正部66は、温度変化量パラメータ及び温度情報を用いて、チップ24Eの中心座標を補正する。中心座標補正工程S20の後に直径補正工程S22へ進む。なお、実施形態に記載の中心座標補正工程S20は、測定子の座標値を補正する座標値補正工程の一例である。
【0132】
直径補正工程S22では、測定データ補正部66はチップ24Eの直径の温度補正を実施し、温度補正処理が施された測定データである温度補正データを生成する。直径補正工程S22の後に温度補正データ出力工程S24へ進む。
【0133】
温度補正データ出力工程S24では、測定データ補正部66は温度補正データを出力する。温度補正データ出力工程S24において、温度補正データが記憶されてもよい。温度補正データ出力工程S24の後に、データ処理終了判定工程S26へ進む。
【0134】
データ処理終了判定工程S26では、測定データ補正部66はデータ処理を終了させるか否かを判定する。データ処理終了判定工程S26において、測定データ補正部66が規定のデータ処理終了条件を満たしていないと判定する場合は、No判定となる。No判定の場合は、測定データ取得工程S16へ進み、データ処理終了判定工程S26においてYes判定となるまで、測定データ取得工程S16からデータ処理終了判定工程S26までの各工程が繰り返し実行される。
【0135】
一方、データ処理終了判定工程S26において、測定データ補正部66が規定のデータ処理終了条件を満たしている判定する場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、コンピュータ40は、規定の終了処理を実行し、データ処理方法を終了する。
【0136】
データ処理終了条件の例として、全ての測定データについて温度補正データが生成された場合及び測定データ処理を強制的に終了させる旨の命令を取得した場合などが挙げられる。
【0137】
[温度補正処理の詳細な説明]
〔ヘッドの熱膨張及び熱収縮に起因する測定誤差〕
図8はヘッドの熱膨張及び熱収縮に起因する測定誤差の説明図である。
図8には、ワークWの第1側面WS
1及びワークWの第2側面WS
2が測定される状態を模式的に図示する。なお、
図8に示すヘッド24は、第1側面WS
1の測定位置と、第2側面WS
2の測定位置との間を移動して、第1側面WS
1の測定と第2側面WS
2の測定とを実施する。
【0138】
ワークWの測定公差が50マイクロメートルであり、測定許容誤差が50マイクロメートル/4=12.5マイクロメートルとするワークWの測定を考える。三次元測定機10の本体が持つ誤差を4.3マイクロメートとすると、ヘッド24の熱膨張等に起因する誤差の許容範囲は、12.5マイクロメートル-4.3マイクロメート=8.2マイクロメートルとなる。
【0139】
プローブ24Dの熱膨張係数αpが2.0マイクロメートル毎℃の場合、8.2/(2.0×2)=2.05℃の温度変化が生じる場合は、その都度、ヘッド24の校正を実施する必要がある。
【0140】
〔ヘッドの校正〕
図9は三次元測定機の稼働時間と測定領域の温度との関係を示すグラフである。同図に示すグラフの横軸は時刻あり、単位は時である。同図に示すグラフの縦軸は測定領域の温度であり、単位は℃である。
【0141】
図9には、6時から24時までの18時間において、測定温度の最大値と測定温度の最小値との差が2.70℃の場合を示す。測定温度が校正温度から2.05℃変化した場合にヘッド24の校正を実施する必要があると、稼働開始の6時における校正温度23.8℃から2.05℃上昇して、測定温度が25.85となる15時にヘッド24の校正を実施する必要がある。
【0142】
また、15時に校正が実施される場合に、校正温度25.85℃から2.05℃下降して、測定温度が23.8℃となる24時にヘッド24の校正を実施する必要がある。このように、三次元測定機は、平均して1日に3回程度のヘッド24の校正を実施する必要がある。
【0143】
ここで、ヘッド24の校正は、プローブ姿勢ごとに、プローブ24D及びチップ24Eの組み合わせの数分の回数が実施される。1つのプローブ24D及びチップ24Eの組み
合わせについて1つのプローブ姿勢における校正に30秒を要する場合、プローブ24D及びチップ24Eの組み合わせの数が6であり、プローブ姿勢が5の場合、1回のヘッド24の校正には15分を要する。
【0144】
1回のヘッド24の校正に15分を要し、1日に3回のヘッド24の校正が実施される場合は、45分のダウンタイムが発生してしまう。また、プローブ方向が任意に設定されるヘッド24の場合、1つのプローブ24D及びチップ24Eの組み合わせの校正に10分を要し、プローブ24D及びチップ24Eの組み合わせの数が6の場合に、すべてのプローブ24D及びチップ24Eの組み合わせの校正には60分を要する。そうすると、1日に3回のヘッド24の校正が実施される場合には、180分のダウンタイムが発生してしまう。
【0145】
本実施形態に係る三次元測定機10では、測定温度に応じた測定データに対する温度補正が実施される。これにより、規定の測定精度の確保が達成され、かつ、ヘッド24の校正の実施が抑制でき、ヘッド24の校正に起因するダウンタイムの削減を達成し得る。
【0146】
[ヘッド情報の具体例]
図10はヘッド情報の説明図である。
図10には、プローブの番号nがn=1のプローブ24D(1)と、プローブの番号nがn=2のプローブ24D(2)とを備えるヘッド24を図示する。
【0147】
〔プローブヘッド情報〕
図4に示すヘッド情報86は、
図10に示すプローブヘッド24Aに関するプローブヘッド情報が含まれる。下記の表1にプローブヘッド情報の具体例を示す。プローブヘッド情報は、A軸方向の回転角度θ
A、B軸方向の回転角度θ
B、プローブヘッド24Aの熱膨張係数α
h及びプローブヘッド24Aの長さL
hが含まれる。
プローブヘッド24Aの長さL
hは、回転軸RS
Aからプローブヘッド24Aとプローブモジュール24Bとの境界までの長さである。
【0148】
【0149】
なお、実施形態に記載のA軸方向の回転角度θA及びB軸方向の回転角度θBhが含まれるヘッド情報を取得する測定データ補正部66は、方向パラメータ取得部の一例である。
【0150】
〔プローブモジュール情報〕
ヘッド情報86は、プローブモジュール24Bに関するプローブモジュール情報が含まれる。下記の表2にプローブモジュール情報の具体例を示す。プローブモジュール情報として登録されるパラメータは、プローブモジュール24Bの熱膨張係数αm及びプローブモジュール24Bの長さLmが含まれる。
【0151】
プローブモジュール24Bの長さLmは、プローブヘッド24Aとプローブモジュール24Bとの境界から、プローブモジュール24Bとプローブ24D(1)との境界までの長さである。
【0152】
プローブモジュール24Bが存在しないヘッド24又はプローブモジュール24Bがプローブヘッド24Aと一体化しているヘッド24では、プローブモジュール24Bの長さLmは、Lm=0とされる。
【0153】
【0154】
なお、表1に示すプローブヘッド情報及び表2に示すプローブモジュール情報が記憶されるメモリ82Aは、プローブ支持部の熱膨張係数及び校正温度におけるローブ支持部の長さが登録されるプローブ支持部情報登録部の一例である。
【0155】
〔プローブ情報〕
ヘッド情報86は、プローブ24Dに関するプローブ情報が含まれる。下記の表3にプローブ情報の具体例を示す。プローブ情報として登録されるパラメータは、プローブ24D(n)の番号n、プローブ24D(n)の方向ベクトルVijk(n)、プローブ24D(n)の熱膨張係数αijk(n)及びプローブ24D(n)の長さLijk(n)が含まれる。
【0156】
プローブ24D(n)の方向ベクトルVijk(n)は、Vijk(n)=(i(n),j(n),k(n))と表される。なお、プローブの番号nは1以上でありプローブ24Dの総数以下の整数である。互いに直交する3方向を表すi、j及びkは、1、0及び-1が適用される。すなわち、プローブ24D(n)の方向ベクトルVijk(n)は、プローブ24D(n)の方向を表す単位ベクトルである。
【0157】
プローブ64D(1)の長さLijk(1)は、プローブモジュール24Bとプローブ24D(1)との境界から、チップ24Eの中心をプローブ24D(1)と直交する方向に伸ばした線分までの長さである。プローブ24D(1)の方向ベクトルVijk(1)は、Vijk(1)=(0,0,-1)である。
【0158】
プローブ24D(2)の長さLijk(2)は、プローブ24D(2)のチップ24Eの反対側の端からプローブ24D(2)とチップ24Eとの境界までの長さである。プローブ24D(2)の方向ベクトルVijk(2)は、Vijk(2)=(0,-1,0)である。
【0159】
【0160】
なお、表3に示すプローブ情報が記憶されるメモリ82Aは、プローブの熱膨張係数及び校正温度におけるプローブの長さが登録されるプローブ情報登録部の一例である。
【0161】
〔チップ情報〕
ヘッド情報86は、チップ24Eに関するチップ情報が登録される。下記の表4にはチップ情報の具体例を示す。チップ情報として登録されるパラメータは、チップ24Eの中心座標(x,y,z)、チップ24Eの熱膨張係数αc及びチップ24Eの直径Lcが含まれる。
【0162】
【0163】
[温度情報の具体例]
図4に示す温度情報取得部74は、温度情報85として、ヘッド24の校正が実施される際の校正温度T
A及び測定点ごとの測定の際の測定温度T
Bが取得される。温度情報取得部74は、温度情報85として、測定温度T
Bから校正温度T
Aを減算した温度差dTを取得してもよい。測定温度T
Bは、チップ24Eが接触点に接触したタイミングの温度を適用してもよいし、事前に登録した温度を適用してもよい。
【0164】
[チップの中心座標補正の具体例]
下記の式1を適用して、
図4に示す測定データ補正部66は、チップ24Eの中心座標(x,y,z)を補正して、補正後のチップ24Eの中心座標(x
c,y
c,z
c)を算出する。
【0165】
すなわち、測定データ補正部66は、ヘッド設定部79を用いて設定されたヘッド24に対応するヘッド情報86をメモリ82Aから読み出し、上記の表1から表4までに示すパラメータを下記の式1に代入して、補正後のチップ24Eの中心座標(xc,yc,zc)を算出する。
【0166】
【0167】
式1における右辺の第1項は、チップ24Eの中心座標(x,y,z)である。右辺の第2項は、測定温度T
Bから校正温度T
Aを減算した温度差である。右辺の第3項は、B軸方向の回転角度θ
Bに対応する方向を示す。右辺の第4項は、A軸方向の回転角度θ
Aに対応する方向を示す。
図1に示すA軸方向の回転機構及びB軸方向の回転機構を備えていないヘッドの場合、第3項におけるB軸方向の回転角度θ
Bがθ
B=0とされ、第4項におけるA軸方向の回転角度θ
Aがθ
A=0とされる。
【0168】
なお、式1における右辺の第3項及び右辺の第4項は、予め規定されるプローブの基準方向に対する、測定の際のプローブの方向を表す方向パラメータの構成要素の一例である。
【0169】
式1における右辺の第5項は、ヘッド24における単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータである。第5項における第1項は、基準方向におけるプローブヘッド24Aの単位温度あたりの長さの変化量に対応する。第5項における第2項は、基準方向におけるプローブモジュール24Bの単位温度あたりの長さの変化量に対応する。
【0170】
第5項における第3項は、プローブ24D(n)のi方向、j方向及びk方向のそれぞれにおける単位温度あたりの長さの変化量を、全てのプローブ24D(n)について合算した総和である。なお、校正温度TA及び測定温度TBにセルシウス温度が適用される場合の単位温度は1℃としてもよい。
【0171】
実施形態に記載の式1における右辺の第5項は、プローブにおける単位温度あたりの長さの変化量とローブ支持部における単位温度あたりの長さの変化量とを加算して算出される温度変化量パラメータの一例である。
【0172】
実施形態に記載の第5項における第1項は、プローブの熱膨張係数と校正温度におけるプローブの長さとを乗算して算出された、プローブの単位温度あたりの長さの変化量の一例である。
【0173】
実施形態に記載の第5項における第2項は、プローブ支持部の熱膨張係数と校正温度におけるプローブ支持部の長さとを乗算して算出された、プローブ支持部の単位温度あたりの長さの変化量の一例である。
【0174】
式1において、A軸方向の回転角度θAがθA=0°であり、B軸方向の回転角度θBがθB=0°の場合が基準方向とされる。基準方向を表す単位ベクトルは(0,0,-1)と表される。
【0175】
図11はプローブが(0,0,-1)と表される鉛直下向きを向くヘッドの正面図であ
る。
図11には、プローブ24Dが基準方向である(0,0,-1)と表される方向を向くヘッド24が図示される。(0,0,-1)と表される方向は、プローブ24DがZ軸方向の下方向を向く方向であり、A軸方向の回転角度θ
Aがθ
A=0°であり、B軸方向の回転角度θ
Bがθ
B=0°である。
【0176】
なお、基準方向は(0,0,-1)と表される方向に限定されず、任意の方向をとしてもよい。上記の式1の(0,0,-1)と表される方向に代わり、基準方向を表すベクトルが適用される。
【0177】
図12はプローブが(1,0,0)と表される方向を向くヘッドの正面図である。
図11には、A軸方向の回転角度θ
Aがθ
A=プラス90°であり、B軸方向の回転角度θ
Bがθ
B=プラス90°の場合のヘッド24を示す。
【0178】
図13はプローブが(-1,0,0)と表される方向を向くヘッドの正面図である。
図12には、A軸方向の回転角度θ
Aがθ
A=プラス90°であり、B軸方向の回転角度θ
Bがθ
B=マイナス90°の場合のヘッド24を示す。
【0179】
[チップの直径の補正]
図14は温度補正前のチップ直径と温度補正後のチップ直径との関係を示す模式図である。
図14には、
図10に示すチップ24Eを拡大して図示する。チップ24Eの直径L
cは、チップ情報及び温度情報を用いて補正される。
【0180】
すなわち、チップ24Eの直径Lc、チップ24Eの熱膨張係数αc、校正温度TA及び測定温度TBを用いて、温度補正後のチップ24Eの直径Lccは、下記の式2として表される。温度補正後のチップ24Eの直径Lccは、ワークの測定点の座標であるプロービング座標の算出に適用される。
【0181】
Lcc=Lc+(TB-TA)×αc×Lc …式2
【0182】
[測定点の座標値の算出の具体例]
図15はプロービング座標の説明図である。
図15には、ワークWにおける任意の測定点W
prvに対して、チップ24Eを接触させた状態を図示する。
図15に示すチップ24Eの中心からワークWにおける任意の測定点W
prvへ向かうベクトルは、プロービング方向の単位ベクトルである、プロービングベクトルV
prvである。
【0183】
ワークWの測定点Wprvの座標を表すプロービング座標(xprv,yprv,zprv)は、温度補正後のチップ24Eの中心の座標(xc,yc,zc)、温度補正後のチップ24Eの直径Lcc及びプロービングベクトルVprvを用いて、下記の式3として表される。
【0184】
(xprv,yprv,zprv)=(xc,yc,zc)+{(Lcc×Vprv)/2} …式3
【0185】
[ワークの幅を測定する際の例]
図16はワークの幅の測定の模式図である。
図16には、直方体形状を有するワークWの幅L
wH1を測定する際に、ワークWの一方の面WS
1へチップ24E
1を接触させ、ワークWの他方の面WS
2へチップ24E
2を接触させた状態を示す。
【0186】
温度補正後のチップ24E1の中心座標を(xc1,yc1,zc1)とし、温度補正後のチップ24E2の中心座標を(xc2,yc2,zc2)とする。温度補正後のチッ
プ24E1の直径をLcc1とし、温度補正後のチップ24E2の直径をLcc2とする。チップ24E1とチップ24E2との中心間距離をLc12とする。ワークWの幅LwH1は、下記の式4を用いて算出される。
【0187】
LwH1=Lc12-(Lcc1/2)-(Lcc2/2) …式4
【0188】
なお、式4におけるチップ24E1とチップ24E2との中心間距離Lc12は、以下の式5として表される。
【0189】
Lc12={(xc1-xc2)2+(yc1-yc2)2+(xc1-xc2)2}1/2 …式5
【0190】
図16には、互いに異なる2つのチップである、チップ24E
1及びチップ24E
2が用いられる例を示したが、チップ24E
1又はチップ24E
2のいずれか一方のみが用いられてもよい。
図17に示す球形状のワークの幅L
wH2の測定についても同様である。
【0191】
[ワークの幅を測定する際の他の例]
図17は球形状のワークの幅の測定の模式図である。
図17には、球形状を有するワークWの幅L
WH2を測定する際に、ワークWの表面WSへチップ24E
1及びチップ24E
2を接触させた状態を示す。なお、球形状を有するワークWの幅L
wH2は、ワークWの直径と一致する。
【0192】
上記の式4を用いて算出される直方体形状を有するワークWの幅LwH1と同様に、球形状を有するワークWの幅LwH2は下記の式6を用いて算出される。
【0193】
LwH2=Lc12-(Lcc1/2)-(Lcc2/2) …式6
【0194】
上記の式6におけるチップ24E1とチップ24E2との中心間距離Lc12は、上記の式5を用いて表される。
【0195】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態に係る三次元測定機10及びデータ処理方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0196】
〔1〕
ワークWの測定点へ接触させるチップ24Eが取り付けられるプローブ24D、プローブ24Dを支持するプローブモジュール24B及びプローブヘッド24Aを備えるヘッド24を用いてワークWを測定する際に、測定温度TBと校正温度TAとの温度差に基づき、単位温度あたりのヘッド24の長さの変化量を表す温度変化量パラメータを用いて、チップ24Eの中心座標(x,y,z)が補正され、温度補正後のチップ24Eの中心座標(xc,yc,zc)が算出される。これにより、測定温度TBと校正温度TAとの温度差に起因するヘッド24における各方向の長さの変化が補正され、ヘッド24の校正の実施回数を相対的に減らすことができ、ダウンタイムの低減化が実現される。
【0197】
〔2〕
測定温度TBと校正温度TAとの温度差に基づき、チップ24Eの直径Lcが補正され、温度補正後のチップ24Eの直径Lccが算出され、温度補正後のチップ24Eの直径Lccを用いて、温度補正後のチップ24Eの中心座標(xc,yc,zc)が算出される。これにより、測定温度TBと校正温度TAとの温度差に起因するチップ24Eの直径Lcの変化量が補正される。
【0198】
〔3〕
ヘッド24の温度変化量パラメータは、プローブヘッド24A、プローブモジュール24B及びプローブ24Dのそれぞれの単位温度あたりの長さの変化量が含まれる。これにより、プローブヘッド24A、プローブモジュール24B及びプローブ24Dのそれぞれについて、測定温度TBと校正温度TAとの温度差に起因する測定データの誤差を補正し得る。
【0199】
〔4〕
基準方向(0,0,-1)に対するプローブの回転角度をパラメータとして、温度補正後のチップ24Eの中心座標(xc,yc,zc)が算出される。これにより、基準方向(0,0,-1)に対してプローブ24Dを回転自在に構成されるヘッド24について、基準方向(0,0,-1)に対するプローブの回転角度が考慮された温度補正後のチップ24Eの中心座標(xc,yc,zc)を算出し得る。
【0200】
〔5〕
複数のプローブ24D(n)が具備されるヘッド24において、プローブ24Dの単位温度あたりの長さの変化量には、プローブ24D(n)ごとの単位温度あたりの長さの変化量が含まれる。これにより、プローブ24D(n)ごとの単位温度あたりの長さの変化量が考慮された温度補正後のチップ24Eの中心座標(xc,yc,zc)を算出し得る。
【0201】
[第2実施形態に係る三次元測定機の電気的構成]
図18は第2実施形態に係る三次元測定機の電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る三次元測定機10Aは、プローブ24Dの熱膨張係数α
pなどのヘッド情報86が登録されていない場合であり、プローブ24Dの形状がストレートの場合に、ヘッド長さの実測値に基づいて上記の式1における第5項として表される温度変化量パラメータを算出する。なお、ヘッド長さは、符号L
HEADを用いて
図19に図示する。
【0202】
すなわち、三次元測定機10Aは、
図4に示すコンピュータ40に具備されるヘッド情報登録部78及びヘッド設定部79に代わり、プロファイル生成部90及び温度変化量パラメータ算出部92が具備されるコンピュータ40Aを備える。プロファイル生成部90は、ヘッド長さL
HEADの測定タイミングにおけるヘッド24の環境温度に対するヘッド長さL
HEADの関係を表すプロファイルを生成する。
【0203】
温度変化量パラメータ算出部92は、プロファイル生成部90を用いて生成されるヘッド24の環境温度に対するヘッド長さLHEADの関係を表すプロファイルから、温度変化量パラメータを算出する。
【0204】
図19はヘッド長さ測定の説明図である。同図には、ヘッド長さ測定の際のプローブ24D等の姿勢が模式的に図示される。なお、一点鎖線を用いて図示されるチップ24Eは、ヘッド24が熱膨張した場合を示す。ヘッド長さL
HEADは、プローブヘッド24Aの関節軸である回転軸RS
Aからチップ24Eの中心T
0までの長さである。ヘッド長さ測定には、以下の手順が適用される。
【0205】
第1姿勢測定工程として、A軸方向の回転角度θ
Aがθ
A=0°、B軸方向の回転角度θ
Bがθ
B=0°となるヘッド24の第1姿勢において、ブロックゲージBの側面BSを測定し、第1姿勢における測定値としてヘッド長さL
HEADを取得する。
図19には二点鎖線を用いてヘッド24の第1姿勢を図示する。
【0206】
第2姿勢測定工程として、A軸方向の回転角度θ
Aがθ
A=90°、B軸方向の回転角度θ
Bがθ
B=0°の第2姿勢において、ブロックゲージBの側面BSを測定し、第2姿勢測定値としてヘッド長さL
HEADを取得する。
図19には実線を用いてヘッド24の第2姿勢を図示する。
【0207】
温度測定工程として、第2姿勢測定工程におけるヘッド24の環境温度THを測定し、第2姿勢測定工程におけるヘッド24の環境温度THを取得し、ヘッド24の環境温度THとヘッド長さLHEADとを関連付けして記憶する。
【0208】
温度変化量算出工程として、第2姿勢におけるヘッド長さLHEADから、第1姿勢におけるヘッド長さLHEADを減算して、温度変化量dLHEADを算出し、第2姿勢測定工程におけるヘッド24の環境温度THと温度変化量dLHEADとを関連付けして記憶する。
【0209】
第1姿勢測定工程から温度変化量算出工程までの各工程を繰り返し実行して、ヘッド24の環境温度THと温度変化量dLHEADとの関係を導出する。最小二乗法などを用いて、ヘッド24の環境温度THに対する温度変化量dLHEADの近似直線を導出し、近似直線の傾きm(0,0,-1)を算出する。傾きm(0,0,-1)は、式1の第5項として表される温度変化量パラメータに相当する。
【0210】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態に係る三次元測定機10Aによれば、ヘッド24のヘッド情報が登録されていない場合であっても、ヘッド24における単位温度あたりの長さの変化量を表す温度変化量パラメータが算出される。これにより、ヘッド情報が未知のヘッド24について、測定温度TBと校正温度TAとの温度差に起因する測定データの誤差を補正し得る。
【0211】
[データ処理装置への適用例]
図4等に示すコンピュータ40は、三次元測定機10等から測定データを取得し、測定データに対して温度補正を実施するデータ処理装置として機能する。
図18に示すコンピュータ40Aについても同様である。
【0212】
例えば、三次元測定機10から取得される測定データの温度補正処理を実施するデータ処理装置は、
図4に示す測定データ取得部64、測定データ補正部66、温度情報取得部74、ヘッド情報登録部78、ヘッド設定部79及びメモリ82A等を構成要素として備え得る。
【0213】
[プログラムへの適用例]
コンピュータに、測定データ取得部64に対応する測定データ取得機能、測定データ補正部66に対応する測定データ補正機能、温度情報取得部74に対応する温度情報取得機能、ヘッド情報登録部78に対応するヘッド情報登録機能及びヘッド設定部79に対応するヘッド設定機能等の各種の機能を実現させるプログラムであり、
図7に示す各工程の機能を実現させるプログラムを構成し得る。
【0214】
コンピュータは、上記したプログラムに含まれる各種の命令を実行して、測定領域の温度を取得する測定領域温度取得機能、温度変化量パラメータを取得する温度変化量パラメータ取得機能及び温度変化量パラメータを用いてチップ24Eの中心座標を補正する座標値補正機能を実現する。
【0215】
[ユーザインターフェースの構成例]
〔プローブヘッド設定画面〕
図20はプローブヘッド設定画面の説明図である。同図に示すプローブヘッド設定画面200は、測定に使用されるプローブヘッド24Aをユーザが設定する際にディスプレイ装置50へ表示される。プローブヘッド設定画面200を用いて設定されたプローブヘッド24Aの設定は、
図6に示すプローブヘッド設定部120へ送信される。
【0216】
図20に示すプローブヘッド設定画面200は、第1文字情報表示領域202、第2文字情報表示領域204及びボタン表示領域206が含まれる。第1文字情報表示領域202は、プローブヘッド設定画面200のタイトルを表す文字情報が表示される。第2文字情報表示領域204は、プローブヘッド設定画面200を用いて実施される処理の内容が表示される。
【0217】
ボタン表示領域206は、ユーザが操作する各種のボタンが表示される。第1ボタン210はプローブヘッド1に割り付けられ、第2ボタン212はプローブヘッド2に割り付けられる。
【0218】
また、第3ボタン214はプローブヘッド3に割り付けられ、第4ボタン216はプローブヘッド4に割り付けられる。ユーザは、第1ボタン210から第4ボタン216までのいずれかを操作して、プローブヘッド1からプローブヘッド4までのいずれかを選択し得る。なお、プローブヘッド24Aに割り付けられるボタンの数は、使用されるプローブヘッド24Aの数に応じて規定される。
【0219】
また、ボタン表示領域206は、第5ボタン218及び第6ボタン220が含まれる。第5ボタン218は、プローブヘッド1からプローブヘッド4までのいずれかの選択を確定させるオーケーボタンとして機能する。第6ボタン220は、プローブヘッド1からプローブヘッド4までのいずれかの選択を取り消すキャンセルボタンとして機能する。
【0220】
〔プローブモジュール設定画面〕
図21はプローブモジュール設定画面の説明図である。同図に示すプローブモジュール設定画面230は、
図20に示すプローブヘッド設定画面200においてプローブヘッドの選択を確定させた場合に表示される。
図21に示すプローブモジュール設定画面230を用いて設定されたプローブモジュール24Bの設定は、
図6に示すプローブモジュール設定部122へ送信される。
【0221】
プローブモジュール設定画面230は、第1文字情報表示領域202、第2文字情報表示領域204及びボタン表示領域206Aが含まれる。ボタン表示領域206Aには、第7ボタン232及び第8ボタン234が表示される。また、ボタン表示領域206Aには、オーケーボタンとして機能する第5ボタン218及びキャンセルボタンとして機能する第6ボタン220が表示される。
【0222】
第7ボタン232はプローブモジュール1が割り付けられ、第8ボタン234はプローブモジュール2が割り付けられる。ユーザは、第7ボタン232又は第8ボタン234のいずれかを操作して、プローブモジュール1又はプローブモジュール2を選択し得る。なお、プローブモジュール24Bに割り付けられるボタンの数は、使用されるプローブモジュール24Bの数に応じて規定される。
【0223】
〔プローブ選択画面〕
図22はプローブ選択画面の説明図である。同図に示すプローブ選択画面240は、
図21に示すプローブモジュール設定画面230においてプローブモジュール24Bの選択を確定させた場合に表示される。プローブ選択画面240を用いて設定されたプローブ24Dの情報は、
図6に示すプローブ設定部124へ送信される。
【0224】
プローブ選択画面240は、第1文字情報表示領域202、第2文字情報表示領域204及びボタン表示領域206Bが含まれる。ボタン表示領域206Bには、測定プローブ1から測定プローブ20までのそれぞれ割り付けられる20個の第9ボタン241が表示される。なお、第9ボタン241の数は、使用されるプローブ24Dの数に応じて規定される。
【0225】
また、ボタン表示領域206Bには、第10ボタン242、第11ボタン244及び第12ボタン246が表示され、キャンセルボタンとして機能する第6ボタン220が表示される。
【0226】
第10ボタン242は、選択された第9ボタン241に割り付けられるプローブの構成を設定する際に操作される構成設定ボタンとして機能する。第10ボタン242が操作された場合、選択されたプローブ24Dの構成を設定するプローブ構成設定画面が表示される。
【0227】
第11ボタン244は、プローブ選択画面240から
図21に示すプローブモジュール設定画面230へ戻る際に操作される戻るボタンとして機能する。第11ボタン244が操作されると、プローブ選択画面240の表示からプローブモジュール設定画面230の表示へディスプレイ装置50の表示が切り替えられる。
【0228】
第12ボタン246は、次の画面への表示切り替えを行う次へボタンとして機能する。第12ボタン246が操作される場合、次の処理に対応する画面である、
図27に示すプローブ番号選択画面が表示される。
【0229】
〔プローブ構成設定画面〕
図23はプローブ構成設定画面の第1例の説明図である。同図に示すプローブ構成設定画面250は、
図22に示すプローブ選択画面240において、第10ボタン242が操作された場合に表示される。プローブ選択画面240において設定されるプローブ24Dの構成を表す情報は、
図6に示すプローブ構成設定部126へ送信される。
【0230】
プローブ構成設定画面250は、第1文字情報表示領域202、第2文字情報表示領域204及びボタン表示領域206Cが含まれる。ボタン表示領域206Cには、ヘッド仕様表示252及びスタイラス構成表示254が表示される。また、ボタン表示領域206Cには、オーケーボタンとして機能する第5ボタン218及びキャンセルボタンとして機能する第6ボタン220が表示される。
【0231】
ヘッド仕様表示252は、プローブヘッド設定画面200において選択されたプローブヘッドの名称、プローブボディの名称及びプローブモジュール設定画面230において設定されたプローブモジュールの名称が表示される。なお、
図23に示すプローブモジュール設定画面230では、プローブボディの名称欄には非表示を表す記号が表示される。
【0232】
スタイラス構成表示254は、プローブ選択画面240において選択されたプローブ24Dを含むスタイラス24Cの構成部品が表形式を用いて表示される。なお、
図23に示す製品1から製品10までは、スタイラス24Cを構成する部品の名称を表す。
【0233】
スタイラス構成表示254は、部品ごとに、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれにおける長さ、熱膨張率及び材質が入力される。各方向における長さに付されるマイナスを表す符号は、マイナス方向の長さを有することを意味する。
【0234】
ユーザは、
図1等に示す入力装置52を用いて、ヘッド仕様表示252及びスタイラス構成表示254の各項目欄へ情報を入力し得る。ユーザは、入力装置52を用いて、ヘッド仕様表示252及びスタイラス構成表示254へ表示される情報を修正してもよい。
【0235】
図24は第1例に係る構成を有するプローブが搭載されるプローブヘッド斜視図である。
図23のスタイラス構成表示254における製品1は、
図24に示すスタイラス24Cのプローブモジュール24Bへの取付部分であり、製品2はプローブ24Dであり、製品3はチップ24Eである。
【0236】
スタイラス24Cのプローブモジュール24Bへの取付部分は、Z方向のマイナス方向の長さが8ミリメートルであり、プローブ24Dは、Z方向のマイナス方向の長さが40ミリメートルである。また、チップ24Eは、Z方向のマイナス方向の長さが2ミリメートルである。チップ24EのZ方向のマイナス方向の長さは、チップ24Eの直径である。
【0237】
図25はプローブ構成画面の第2例の説明図である。以下、主として、
図23に示すプローブ構成画面の第1例との違いを説明する。
図25には、
図3に示すプローブ番号が5のスタイラス24Cと同様に、2本のプローブ24Dを備えるスタイラス24Cが取り付けられる場合のプローブ構成設定画面260を図示する。
【0238】
ボタン表示領域206Dには、ヘッド仕様表示262及びスタイラス構成表示264が表示される。
図25に示すヘッド仕様表示262は、
図23に示すヘッド仕様表示252と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0239】
図25に示すスタイラス構成表示264は、部品ごとに、各方向における長さ、熱膨張率及び材質が入力される点は、
図23に示すスタイラス構成表示254と同様である。
図25に示すスタイラス構成表示264において製品3として表示される部品は、Y方向のマイナス方向の長さが3ミリメートルであり、Z方向のマイナス方向の長さが2ミリメートルである。また、製品4として表示される部品は、Y方向のマイナス方向の長さが10ミリメートルであり、製品5として表示される部品は、Y方向のマイナス方向の長さが2ミリメートルである。
【0240】
図26は第2例に係る構成を有するプローブヘが搭載されるプローブヘッド斜視図である。同図に示すプローブ24D
11は、
図25に示す製品2であり、プローブ連結部24D
13は製品3である。また、プローブ24D
12は製品4であり、チップ24Eは製品5である。
【0241】
図23に示すプローブ構成設定画面250及び
図25に示すプローブ構成設定画面260において、ユーザは第5ボタン218を操作してプローブの構成を確定させ得る。また、ユーザは第6ボタン220を操作して、
図22に示すプローブ選択画面240を表示させ得る。
【0242】
〔プローブ番号選択画面〕
図27はプローブ番号選択画面の説明図である。同図に示すプローブ番号選択画面270は、
図23に示すプローブ構成設定画面250及び
図25に示すプローブ構成設定画面260において、第5ボタン218が操作された際に表示される。
図27に示すプローブ番号選択画面270を用いて送信された情報は、
図6に示すプローブ番号設定部128へ送信される。
【0243】
プローブ番号選択画面270は、第1文字情報表示領域202、第2文字情報表示領域
204及びボタン表示領域206Eが含まれる。ボタン表示領域206Eは、プローブ番号一覧272、オーケーボタンとして機能する第5ボタン218、キャンセルボタンとして機能する第6ボタン220及び戻るボタンとして機能する第11ボタン244が含まれる。
【0244】
プローブ番号一覧272は、プローブ構成設定画面250等においてスタイラスの構成が設定されたプローブ24Dの識別番号であるプローブ番号の一覧が表形式を用いて表示される。
【0245】
ユーザは、プローブ番号一覧272からプローブ番号を選択して、スタイラスの構成が設定されたプローブ24Dに対してプローブ番号を付与し得る。
図27に示すプローブ番号一覧272には、プローブ番号1が選択中であり、プローブ番号11が設定済みであることが表示される。
【0246】
ユーザは、第5ボタン218を操作してプローブ番号を確定させることができ、第6ボタン220を操作してプローブ番号の選択をキャンセルすることができる。また、ユーザは、第11ボタン244を操作して、前の画面へ戻る処理を選択し得る。
【0247】
〔プローブ方向指定画面〕
図28はプローブ姿勢指定画面の説明図である。同図に示すプローブ姿勢指定画面280は、A軸方向の回転角度θ
A及びB軸方向の回転角度θ
Bを指定して、プローブ24Dの姿勢を指定する際に、ディスプレイ装置50へ表示される。また、プローブ姿勢指定画面280を用いて設定された情報は、
図6に示すプローブ姿勢設定部130へ送信される。
【0248】
ボタン表示領域206Fは、テンキー282、A軸方向の回転角度図形表示284、A軸方向の回転角度数値表示286、B軸方向の回転角度図形表示288、B軸方向の回転角度数値表示290が含まれる。
【0249】
ユーザがテンキー282を操作して、A軸方向の回転角度θAの数値を入力し、セットすると、A軸方向の回転角度図形表示284には、入力された数値に対応するA軸方向の回転角度が図形として表示される。また、A軸方向の回転角度数値表示286には、セットされた数値が表示される。
【0250】
同様に、ユーザがテンキー282を操作して、B軸方向の回転角度θBの数値を入力し、セットすると、B軸方向の回転角度図形表示288には、入力された数値に対応するB軸方向の回転角度が図形として表示される。また、B軸方向の回転角度数値表示290には、セットされた数値が表示される。
【0251】
ボタン表示領域206Fには、テンキー282を操作して入力された暫定の数値が表示される暫定数値表示292及び数値の入力可能な範囲を示す数値範囲表示294が表示される。
【0252】
ユーザは、第5ボタン218を操作してプローブ24Dの姿勢を確定させることができ、第6ボタン220を操作して、入力された数値をキャンセルすることができる。
【0253】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0254】
10…三次元測定機、10A…三次元測定機、24…ヘッド、24A…プローブヘッド、24B…プローブモジュール、24D…プローブ、24D1…プローブ、24D2…プローブ、24D11…プローブ、24D12…プローブ、24E…チップ、40…コンピュータ、40A…コンピュータ、64…測定データ取得部、66…測定データ補正部、74…温度情報取得部、78…ヘッド情報登録部、79…ヘッド設定部、81…ソフトウェア、82…コンピュータ可読媒体、100…温度変化量パラメータ算出部、102…補正演算部、104…温度補正データ出力部、120…プローブヘッド設定部、122…プローブモジュール設定部、124…プローブ設定部、126…プローブ構成設定部、128…プローブ番号設定部、130…プローブ姿勢設定部