(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143303
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】植物鮮度保持用組成物、板状体、積層体、ラベル及び包材
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20230928BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20230928BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20230928BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K5/10
C08K5/01
C08K3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050607
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 歩
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB071
4J002DJ037
4J002EA026
4J002EH018
4J002EH128
4J002FD028
4J002FD036
4J002FD037
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】混練時における過度なトルク上昇を抑制できる植物鮮度保持用組成物及びその応用を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む植物鮮度保持用組成物及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む植物鮮度保持用組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を含む、請求項1に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位は、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位である、請求項2に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、前記(メタ)アクリル樹脂の全量に対して、5質量%~50質量%である、請求項2又は請求項3に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル樹脂の含有量は、植物鮮度保持用組成物の全量に対して、15質量%~90質量%である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項6】
可塑剤をさらに含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含む植物鮮度保持用組成物。
【請求項8】
前記可塑剤は、脂肪酸エステル、アセチルクエン酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、及びテレフタル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項6又は請求項7に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項9】
150℃における粘度が100Pa・s~15000Pa・sである、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項10】
前記老化防止剤は、シクロプロペン化合物を含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項11】
前記多孔質材料は、珪素を含む無機多孔質材料である、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項12】
前記多孔質材料は、珪藻土を含む、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物。
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物を含む、板状体。
【請求項14】
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物を含む第1層と、
第2層と、
を有する、積層体。
【請求項15】
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物を含む、ラベル。
【請求項16】
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の植物鮮度保持用組成物を含む、包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物鮮度保持用組成物、板状体、積層体、ラベル及び包材に関する。
【背景技術】
【0002】
植物、特に、野菜、果物等の青果物は、収穫後に、徐々に鮮度が落ちることが知られている。鮮度を保持する技術の開発が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、1種以上の疎水性物質と、1種以上の親水性物質とを含む溶融可能な固体マトリックス、並びに、マトリックス中に分布した、分子封入剤に封入された揮発性シクロプロペン化合物の封入複合体の1種以上、を含む組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている組成物は、混練時にトルクが上昇し、製造が困難であった。
【0006】
そこで、本開示の一実施形態は、混練時における過度なトルク上昇を抑制できる植物鮮度保持用組成物を提供することを目的とする。
また、本開示の一実施形態は、上記植物鮮度保持用組成物を含む積層体、板状体、ラベル及び包材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む植物鮮度保持用組成物。
<2>(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を含む、<1>に記載の植物鮮度保持用組成物。
<3>(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位は、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位である、<2>に記載の植物鮮度保持用組成物。
<4>(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全量に対して、5質量%~50質量%である、<2>又は<3>に記載の植物鮮度保持用組成物。
<5>(メタ)アクリル樹脂の含有量は、植物鮮度保持用組成物の全量に対して、15質量%~90質量%である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物。
<6>可塑剤をさらに含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物。
<7>熱可塑性樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含む植物鮮度保持用組成物。
<8>可塑剤は、脂肪酸エステル、アセチルクエン酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、及びテレフタル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、<6>又は<7>に記載の植物鮮度保持用組成物。
<9>150℃における粘度が100Pa・s~15000Pa・sである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物。
<10>老化防止剤は、シクロプロペン化合物を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物。
<11>多孔質材料は、珪素を含む無機多孔質材料である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物。
<12>多孔質材料は、珪藻土を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物を含む、板状体。
<14><1>~<12>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物を含む第1層と、第2層と、を有する、積層体。
<15><1>~<12>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物を含む、ラベル。
<16><1>~<12>のいずれか1つに記載の植物鮮度保持用組成物を含む、包材。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、混練時における過度なトルク上昇を抑制できる植物鮮度保持用組成物が提供される。また、本開示の一実施形態によれば、上記植物鮮度保持用組成物を含む積層体、板状体、ラベル及び包材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例及び比較例における、製造中の混練機にかかるトルクの測定結果である。
【
図2】
図2は、実施例及び比較例における、製造中の混練物の温度の測定結果である。
【
図3】
図3は、実施例1及び未処理における、色差の算出結果である。
【
図4】
図4は、実施例1及び未処理における、硬度差の算出結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の植物鮮度保持用組成物、積層体、板状体、ラベル及び包材について詳細に説明する。
【0011】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。また、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念である。
【0014】
[植物鮮度保持用組成物]
本開示の第1の態様である植物鮮度保持用組成物(以下、「第1組成物」ともいう)は、(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む。
本開示の第2の態様である植物鮮度保持用組成物(以下、「第2組成物」ともいう)は、熱可塑性樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含む。
第1組成物及び第2組成物に共通する説明に関しては、単に「組成物」ともいう。
【0015】
本開示の組成物によれば、混練時における過度なトルク上昇を抑制できる。この理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0016】
エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む組成物では、混練時にエチレン-酢酸ビニル共重合体が分解し、架橋することから、混練物の粘度が高くなり、トルク上昇が発生する。これに対して、本開示の第1組成物には(メタ)アクリル樹脂が含まれるため、比較的低温で溶融可能であり、混練時に分解しにくい。そのため、混練時における過度なトルク上昇が抑制されると考えられる。
本開示の第2組成物は、熱可塑性樹脂及び可塑剤を含むため、混練時に樹脂同士の相互作用が小さくなることで、混練物の溶融粘度が低下し、混練時における過度なトルク上昇が抑制されると考えられる。
【0017】
本開示の組成物は、植物鮮度保持用であり、植物の鮮度を保持するために用いられる。植物としては特に限定されないが、例えば、青果物及び草花が挙げられる。本開示の組成物は、特に、青果物の鮮度を保持するために用いられることが好ましい。すなわち、本開示の組成物は、青果物鮮度保持用組成物であることが好ましい。
【0018】
青果物としては、例えば、柑橘、りんご、梨、ブドウ、ブルーベリー、柿、イチゴ、パイナップル、チェリー、ライチ、ザクロ、ビワ、バナナ、メロン、マンゴー、パパイア、キウイフルーツ、チェリモヤ、アボカド、グアバ、プランテン、プラム、桃、パッションフルーツ、アンズ、ブレッドフルーツ(パンノキ)、パラミツ、ポーポー、ドリアン、フェイジョア、ドラゴンフルーツ、スターフルーツ、ランブータン、ナツメ、ピーマン、パプリカ、シシトウ、キュウリ、ナス、トマト、ミニトマト、カボチャ、ゴーヤ、オクラ、スィートコーン、エダマメ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ソラマメ等の果実類;オオバ、ホウレンソウ、コマツナ、ミズナ、ミブナ、アスパラガス、クウシンサイ、レタス、タイム、セージ、パセリ、イタリアンパセリ、ローズマリー、オレガノ、レモンバーム、チャイブ、ラベンダー、サラダバーネット、ラムズイヤー、ロケット、ダンディライオン、ナスタチューム、バジル、ルッコラ、クレソン、モロヘイヤ、セロリ、ケール、ネギ、キャベツ、ハクサイ、シュンギク、サラダナ、サンチュ、フキ、ナバナ、チンゲンサイ、ミツバ、セリ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ミョウガ、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、ラディッシュ、カブ、サツマイモ、ジャガイモ、ナガイモ、ヤマイモ、サトイモ、ジネンジョ、ヤマトイモ等の野菜類;及び菌茸類が挙げられる。
【0019】
<第1組成物>
本開示の第1組成物は、(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む。
【0020】
((メタ)アクリル樹脂)
本開示の第1組成物は、(メタ)アクリル樹脂を含む。本開示の第1組成物に含まれる(メタ)アクリル樹脂は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0021】
本開示の第1組成物は、(メタ)アクリル樹脂を含むため、混練時における過度なトルク上昇が抑制される。そのため、トルク上昇に基づく発熱が抑制され、混練物の温度上昇が抑制される。それに伴い、第1組成物に含まれる老化防止剤の揮発及び分解が抑制される。
【0022】
本開示において、(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物に由来する構造単位を含む重合体(単独重合体又は共重合体)を意味する。
【0023】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリルアミドが挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。すなわち、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル樹脂に含まれる(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、4-ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO;以下同じ)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO;以下同じ)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネートが挙げられる。
【0025】
中でも、混練時における過度なトルク上昇を抑制する観点から、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
【0026】
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物に由来する構造単位と、(メタ)アクリロイル基を有する化合物以外の他のエチレン性不飽和モノマーに由来する構造単位と、を含む共重合体であることが好ましい。
【0028】
他のエチレン性不飽和モノマーは、エチレン性不飽和基を1つ有する単官能エチレン性不飽和モノマーであってもよく、エチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能エチレン性不飽和モノマーであってもよい。
【0029】
単官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、α-オレフィン、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル、N-ビニル化合物、不飽和カルボン酸無水物、N-置換マレイミド、及び(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0030】
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、及び4-メチル-1-ヘキセンが挙げられる。
【0031】
単官能芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、3-プロピルスチレン、4-プロピルスチレン、3-ブチルスチレン、4-ブチルスチレン、3-ヘキシルスチレン、4-ヘキシルスチレン、3-オクチルスチレン、4-オクチルスチレン、3-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-(2-エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4-t-ブトキシカルボニルスチレン、及び4-t-ブトキシスチレンが挙げられる。
【0032】
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが挙げられる。
【0033】
単官能N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム及びN-ビニルピロリドンが挙げられる。
【0034】
不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸及び無水イタコン酸が挙げられる。
【0035】
N-置換マレイミドとしては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-i-プロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド、N-n-ヘキシルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-1-ナフチルマレイミドが挙げられる。
【0036】
多官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸アリルエステル、多塩基酸アリルエステル、多官能芳香族ビニル化合物、及び多官能ビニルエーテルが挙げられる。
【0037】
多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、及びトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0038】
不飽和カルボン酸アリルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル及びケイ皮酸アリルが挙げられる。
【0039】
多塩基酸アリルエステルとしては、例えば、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、及びトリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
【0040】
多官能芳香族ビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルナフタレン、及び1,5-ジビニルナフタレンが挙げられる。
【0041】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、EO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、PO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、EO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、PO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、EO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、PO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、EO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、及びPO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルが挙げられる。
【0042】
中でも、低温で溶融混練が可能であり、かつ、柔軟性に優れる共重合体とする観点から、他のエチレン性不飽和モノマーは、α-オレフィンであることが好ましく、炭素数2~10のα-オレフィンであることがより好ましく、炭素数2~4のα-オレフィンであることがさらに好ましく、エチレンであることが特に好ましい。
【0043】
すなわち、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を含むことがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を含むことがさらに好ましく、メチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を含むことが特に好ましい。
【0044】
また、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、エチレンに由来する構造単位と、を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位と、エチレンに由来する構造単位と、を含むことがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位と、エチレンに由来する構造単位と、を含むことがさらに好ましく、メチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、エチレンに由来する構造単位と、を含むことが特に好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を含む共重合体において、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、適切な融解温度を得る観点から、(メタ)アクリル樹脂の全量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~45質量%であることがより好ましく、15質量%~40質量%であることがさらに好ましく、20質量%~40質量%であることが特に好ましく、25質量%~40質量%であることがさらに特に好ましく、30質量%~40質量%であることが極めて好ましく、35質量%~40質量%であることが最も好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が上記範囲であると、低温で溶融混練が可能であり、かつ、柔軟性により優れる。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位と、を含む共重合体において、α-オレフィンに由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全量に対して、50質量%~95質量%であることが好ましく、55質量%~90質量%であることがより好ましく、60質量%~85質量%であることがさらに好ましく、60質量%~80質量%であることが特に好ましく、60質量%~75質量%であることがさらに特に好ましく、60質量%~70質量%であることが極めて好ましく、60質量%~65質量%であることが最も好ましい。
【0048】
-MFR-
(メタ)アクリル樹脂のメルトフローレート(MFR)は、流動性及び粘着性、並びに、フィルムとした場合のフィッシュアイの抑制及び外観向上の観点から、0.01g/10分以上であることが好ましく、0.1g/10分以上であることがより好ましく、1g/10分以上であることがさらに好ましく、10g/10分以上であることが特に好ましい。また、フィルムとした場合の強度を高める観点から、1000g/10分未満であることが好ましく、100g/10分未満であることがより好ましく、50g/10分未満であることがさらに好ましい。
【0049】
本開示において、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、温度190℃、荷重21.18Nで測定される。
【0050】
-融解温度-
(メタ)アクリル樹脂は、溶融混練して製造する際の生産性の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0051】
本開示において、熱可塑性樹脂とは、融解温度が150℃以下の樹脂を意味する。
【0052】
(メタ)アクリル樹脂の融解温度は、加工時の樹脂温度の上昇を抑制し、老化防止剤の加工時の損失を防ぐ観点から、0℃~150℃であることが好ましく、10℃~120℃であることがより好ましく、15℃~100℃であることがさらに好ましく、20℃~80℃であることが特に好ましく、20℃~65℃であることがより特に好ましく、30~60℃であることが極めて好ましく、40℃~60℃であることが最も好ましい。
【0053】
本開示において、融解温度は、JIS K7121:2012(ISO 3146:1985)に準じて測定される。
【0054】
-曲げ弾性率-
(メタ)アクリル樹脂の曲げ剛性率は、組成物の形状保持を行いやすい観点から、0.001MPa~4000MPaであることが好ましく、0.001MPa~2500MPaであることがより好ましく、0.01MPa~500MPaであることがさらに好ましく、0.01MPa~100MPaであることが特に好ましく、0.01MPa~20MPaであることが極めて好ましく、0.01MPa~15MPaであることがより極めて好ましく、0.1MPa~10MPaであることが特に極めて好ましく、1MPa~5MPaであることが最も好ましい。
【0055】
本開示において、曲げ剛性率は、ASTM D747-70に準じて測定される。
【0056】
-デュロメータ硬さ-
(メタ)アクリル樹脂のデュロメータ硬さは、組成物の形状保持を行いやすい観点から、1~70であることが好ましく、1~40であることがより好ましく、2~35であることがさらに好ましく、3~30であることが特に好ましく、3~25であることが極めて好ましく、5~20であることが最も好ましい。
【0057】
本開示において、デュロメータD硬さは、JIS K7215-1986に準じて測定される。
【0058】
-重量平均分子量-
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、混練時における過度なトルク上昇を抑制する観点から、5000~100万であることが好ましく、1万~50万であることよりが好ましく、3万~40万であることがさらに好ましく、3万~30万であることが特に好ましく、3万~15万であることが極めて好ましく、3万~7万であることがより極めて好ましく、3万~5万であることが最も好ましい。
【0059】
本開示において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。例えば、GPCとして、HLC-8121GPC/HT(東ソー社製)を用い、カラムとして、GMHHR-H(S)HT×3本(東ソー社製)を用い、溶離液としてオルトジクロロベンゼン(BHT0.5mg/mL添加)を用いる。条件は、試料濃度を2mg/mL、流速を1mL/分、サンプル注入量を0.3mL、測定温度を155℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて検出する。
【0060】
-ガラス転移温度-
(メタ)アクリル樹脂は、組成物中での老化防止剤等の運動性を確保する観点から、使用環境で樹脂分子鎖に運動性を持たせることが好ましい。ガラス転移温度未満の環境下では、樹脂分子鎖の運動性が著しく制限されることから、(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度は、40℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがさらに好ましく、0℃以下であることが特に好ましく、-10℃以下であることがより特に好ましく、―20℃以下であることがさらに特に好ましく、-30℃以下であることが最も好ましい。ガラス転移温度の下限値は特に限定されず、例えば、-150℃である。
本開示において、ガラス転移温度は、JIS K7121:2012(ISO 3146:1985)に準じて測定される。
【0061】
(メタ)アクリル樹脂の含有量は、本開示の第1組成物の全量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル樹脂の含有量が10質量%以上であると、老化防止剤及び多孔質材料を組成物中に保持しやすい。また、(メタ)アクリル樹脂の含有量が90質量%以下であると、老化防止剤及び多孔質材料の含有量がある程度確保され、植物の鮮度を保持する効果が高い。植物の鮮度を保持する効果を発現させ、かつ、形状保持性を高めやすい観点から、(メタ)アクリル樹脂の含有量は、本開示の第1組成物の全量に対して、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。一方、植物の鮮度を保持する効果をより発現させる観点から、(メタ)アクリル樹脂の含有量は、本開示の第1組成物の全量に対して、85質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましく、50質量%以下であることがさらに特に好ましく、40質量%以下であることが最も好ましい。
【0062】
(老化防止剤)
本開示の第1組成物は、老化防止剤を含む。本開示の第1組成物に含まれる老化防止剤は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0063】
本開示において、老化防止剤とは、青果物、草花等の植物の老化又は劣化を抑制する物質を意味する。植物の老化又は劣化は、例えば、植物の経時変化(例えば、色、硬さの変化)によって確認することができる。
【0064】
本開示の第1組成物は、老化防止剤を含むため、植物の鮮度が保持される。具体的には、老化防止剤よって、植物の色の変化を抑制し、又は、植物の色等の変化を遅延させることができる。
【0065】
老化防止剤としては、例えば、植物の老化ホルモンであるエチレン生合成阻害剤、及び、エチレンの作用阻害剤が挙げられる。
【0066】
エチレン生合成阻害剤としては、例えば、S-アデノシル-L-メチオニンの1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)への変換を阻害するエチレン生合成阻害剤;ACCのエチレンへの変換を阻害するエチレン生合成阻害剤であって、植物利用可能な形態のコバルト塩又はニッケル塩;フェノールのラジカル捕捉剤;ポリアミン;ACCの構造類似体;サリチル酸;アシベンゾラル-S-メチル;アスコルビン酸の構造類似体;及びトリアゾリル化合物が挙げられる。
【0067】
S-アデノシル-L-メチオニンのACCへの変換を阻害するエチレン生合成阻害剤としては、例えば、ビニルグリシンの誘導体、ヒドロキシルアミン、及びオキシムエーテル誘導体が挙げられる。
フェノールのラジカル捕捉剤としては、例えば、没食子酸n-プロピルが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、プトレッシン、スペルミン、及びスペルミジンが挙げられる。
ACCの構造類似体としては、例えば、α-アミノイソ酪酸、及び、L-アミノシクロプロペン-1-カルボン酸が挙げられる。
アスコルビン酸の構造類似体としては、例えば、プロヘキサジオンカルシウム塩及びトリネキサパックエチルが挙げられる。
トリアゾール化合物としては、例えば、パクロブトラゾール及びウニコナゾールが挙げられる。
【0068】
エチレンの作用阻害剤としては、例えば、エチレンの構造類似体、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、銀塩(例えば、チオ硫酸銀錯塩)が挙げられる。
エチレンの構造類似体としては、例えば、シクロプロペン化合物及び2,5-ノルボルナジエンが挙げられる。
【0069】
老化防止剤は、ジベレリン、サイトカイニン、アブシシン酸等の植物ホルモンであってもよい。
【0070】
中でも、組成物の安定性の観点から、老化防止剤は、80℃以下の温度条件下で分解又は変性しないことが好ましい。
【0071】
また、植物の鮮度を保持する効果を得やすい観点から、老化防止剤は、常温(25℃)常圧(1atm)において、液体又は気体であることが好ましく、気体であることがより好ましい。
【0072】
老化防止剤が常温常圧で気体の場合、組成物から揮発するのを抑制するため、老化防止剤を分子包接剤に包接させて、包接体として用いることが好ましい。
【0073】
特に、植物の鮮度を保持する効果がより発揮される観点から、老化防止剤はエチレンの構造類似体であることが好ましく、シクロプロペン化合物であることがより好ましい。
【0074】
エチレンの構造類似体は、エチレンと構造が類似することから、植物のエチレン受容を阻害する作用に優れるため、植物の劣化を抑制することができると考えられる。
【0075】
シクロプロペン化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物である。
【0076】
【0077】
式(1)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素基である。
【0078】
R1、R2、R3、及びR4で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4の直鎖状アルキル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0079】
炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、置換又は非置換のフェノキシ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0080】
中でも、R1は炭化水素基であることが好ましく、R2、R3、及びR4は水素原子であることが好ましい。
【0081】
具体的に、シクロプロペン化合物は、1-メチルシクロプロペンであることが好ましい。
【0082】
シクロプロペン化合物は、分子包接剤に包接された包接体として、本開示の第1組成物に含まれていることが好ましい。
【0083】
分子包接剤は、有機分子包接剤であってもよく、無機分子包接剤であってもよい。
【0084】
有機分子包接剤としては、例えば、シクロデキストリン、置換シクロデキストリン、及びクラウンエーテルが挙げられる。無機分子包接剤としては、例えば、ゼオライトが挙げられる。
【0085】
中でも、分子包接剤は、有機分子包接剤であることが好ましく、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン、γシクロデキストリン、又はこれらの混合物であることがより好ましく、αシクロデキストリンであることがさらに好ましい。
【0086】
老化防止剤と分子包接剤とからなる包接体において、老化防止剤の含有量は、包接体の全量に対して、0.5質量%~50質量%であることが好ましく、1質量%~25質量%であることがより好ましく、1質量%~10質量%であることがさらに好ましく、2質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0087】
老化防止剤の含有量は、植物の鮮度保持効果を高め、かつ形状保持性を高めやすい観点から、本開示の第1組成物の全量に対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.02質量%~5質量%であることがより好ましく、0.05質量%~2質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%~1質量%であることが特に好ましい。
【0088】
老化防止剤と分子包摂体とからなる包摂体の含有量は、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、0.1質量部~100質量部であることが好ましく、1質量部~80質量部であることがより好ましく、2質量部~50質量部であることがさらに好ましく、3質量部~30質量部であることが特に好ましい。
【0089】
(多孔質材料)
本開示の第1組成物は、多孔質材料を含む。本開示の第1組成物に含まれる多孔質材料は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0090】
本開示において、多孔質材料とは、複数の空隙又は細孔を有する材料を意味する。
【0091】
本開示の第1組成物は、多孔質材料を含むため、多孔質材料を通して、老化防止剤を徐放することができる。老化防止剤の徐放により、老化防止剤による植物の鮮度保存効果を発現させることができる。
【0092】
多孔質材料の材質は特に限定されないが、例えば、セラミックス、金属、炭素、有機材料、及びこれらの複合材が挙げられる。
【0093】
多孔質材料は、非水溶性であることが好ましい
【0094】
多孔質材料の平均細孔径は、老化防止剤を徐放させる観点から、1nm~100μmであることが好ましく、1nm~10μmであることがより好ましく、2nm~1μmであることがさらに好ましく、2nm~500nmであることが特に好ましく、2~50nmであることがさらに特に好ましく、10~50nmであることが最も好ましい
【0095】
本開示において、多孔質材料の平均細孔径は、ガス吸着法、水銀圧入法、画像処理法などの方法を用いて測定される。例えば、ガス吸着法ではBELSORP-miniX(マイクロトラックベル社製)などを用いて測定される。
【0096】
多孔質材料の含水率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0097】
本開示において、多孔質材料の含水率は、23℃50%RHにおける重量と105℃で乾燥させた後に重量(乾燥重量)とを用いて、絶乾法により用いて測定される。
【0098】
多孔質材料の平均粒径は、10nm~1mmであることが好ましく、100nm~100μmであることがより好ましく、1μm~50μmであることがさらに好ましい。
【0099】
本開示において、多孔質材料の平均粒径は、粒径に応じ動的光散乱法、レーザー回折法、画像処理法などの方法を用いて測定される。例えば、画像処理法では、顕微鏡観察した画像から円相当径を求める。ここでいう平均粒径は、組成物中に存在する多孔質材料の平均粒径であって、原料として用いた多孔質材料の平均粒径と異なる場合がある。
【0100】
多孔質材料の吸油量は、多いほど空隙率が高いと考えられる。老化防止剤の透過性を高める観点から、多孔質材料の吸油量は、1ml/100g~250ml/100gであることが好ましく、10ml/100g~200ml/100gであることがより好ましく、50ml/100g~150ml/100gであることがさらに好ましい。
【0101】
具体的に、多孔質材料としては、シリカゲル、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、金属多孔体、金属有機構造体、セラミックス、珪藻土、及び樹脂多孔質体が挙げられる。多孔質材料は、無機多孔質材料であることが好ましく、珪素を含む無機多孔質材料であることがより好ましく、珪藻土であることがさらに好ましく、焼成珪藻土であることが特に好ましい。
【0102】
多孔質材料の含有量は、植物の鮮度保持効果を高め、かつ、形状保持性を高めやすい観点から、本開示の第1組成物の全量に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~70質量%であることがより好ましく、10質量%~60質量%であることがさらに好ましく、20質量%~60質量%であることが特に好ましく、25~60質量%であることがより特に好ましく、30~45質量%であることが最も好ましい。
【0103】
多孔質材料の含有量は、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、1質量部~300質量部であることが好ましく、10質量部~200質量部であることがより好ましく、20質量部~150質量部であることがさらに好ましく、50~150重量部であることが特に好ましく、110~150重量部であることが最も好ましい。
【0104】
(他の成分)
本開示の第1組成物は、(メタ)アクリル樹脂、老化防止剤、及び多孔質材料以外の他の成分を含有していてもよい。
【0105】
他の成分としては、(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂、可塑剤、酸化防止剤、中和剤、架橋剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、顔料、充填剤、滑材、難燃剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0106】
本開示の第1組成物に含まれる他の成分は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0107】
他の成分の含有量は目的に応じて設定すればよく、特に限定されないが、本開示の第1組成物の全量に対して、50質量%未満であることが好ましく、40質量%未満であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0108】
混練時における過度なトルク上昇をさらに抑制する観点から、本開示の第1組成物は可塑剤を含むことが好ましい。
【0109】
可塑剤の含有量は、組成物の寸法安定性をより向上させる観点から、本開示の第1組成物の全量に対して、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが特に好ましく、20質量%以下であることが最も好ましい。
【0110】
可塑剤の種類は特に限定されないが、組成物からの可塑剤の揮散を抑制する観点から、可塑剤の25℃、1気圧における飽和蒸気圧は1.0×10-4以下であることが好ましく、1.0×10-5以下であることがより好ましい。
【0111】
(メタ)アクリル樹脂と可塑剤とのHSP距離は、組成物に可塑剤を安定的に保持させやすく、ブリードを抑制しやすい観点から、7.0MPa1/2以下であることが好ましく、5.0MPa1/2であることがより好ましく、4.0MPa1/2以下であることがさらに好ましく、3.0MPa1/2以下であることが特に好ましく、2.5MPa1/2以下であることが最も好ましい。
【0112】
(メタ)アクリル樹脂と可塑剤とのHSP距離が0に近づくほど、(メタ)アクリル樹脂と可塑剤との相溶性が良好であるといえる。
【0113】
本開示において、(メタ)アクリル樹脂と可塑剤とのHSP距離Rは、下記式で表される。
R={(δpA-δpB)2+(δhA-δhB)2}1/2
【0114】
式中、δpAは、(メタ)アクリル樹脂のハンセン溶解度パラメータにおける極性項を表し、δpBは、可塑剤のハンセン溶解度パラメータにおける極性項を表し、δhAは、(メタ)アクリル樹脂のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項を表し、δhBは、可塑剤のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項を表す。
【0115】
ハンセン溶解度パラメータは、物質の溶解度を3つの成分(分散項δd、極性項δp、水素結合項δh)に分割し、3次元空間に表したものである。分散項δdは分散力による効果、極性項δpは双極子間力による効果、水素結合項δhは水素結合力による効果を示す。ハンセン溶解度パラメータの定義と計算は、Charles M.Hansen著、Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook (CRCプレス,2007年)に記載されている。また、コンピュータソフトウエア Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を用いることにより、文献値等が知られていない物質に関しても、その化学構造から簡便にハンセン溶解度パラメータを推算することができる。本発明においては、HSPiPバージョン4.1に収録されるデータベースに登録されている化合物とモノマーに関しては、その値を使用し、登録されていない化合物及びモノマーに関しては、HSPiPバージョン4.1を利用した推算値を用いることにより、δd、δp、δhを求める。
(メタ)アクリル樹脂のδp又はδhは、(メタ)アクリル樹脂に含まれる各構造単位に由来するモノマーのδp又はδhに、該構造単位の含有率を乗じて合算した数値として求める。
(メタ)アクリル樹脂又は可塑剤が2種以上の物質の混合物である場合、該混合物に含まれる各物質のδpに各物質の含有率を乗じて合算した数値をその混合物のδpとする。
(メタ)アクリル樹脂又は可塑剤が2種以上の物質の混合物である場合、該混合物に含まれる各物質のδhに各物質の含有率を乗じて合算した数値をその混合物のδhとする。
【0116】
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、アセチルクエン酸エステル、グリコール酸エステル、トリメリット酸エステル、フタル酸及びその異性体のエステル、リシノール酸エステル、エポキシ化油、並びに、塩素化パラフィンが挙げられる。可塑剤は、(メタ)アクリル樹脂との相溶性の観点から、脂肪酸エステル、アセチルクエン酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、又はテレフタル酸エステルであることが好ましく、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、又はフタル酸エステルであることがより好ましく、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、又はアセチルクエン酸エステルであることがさらに好ましく、アセチルクエン酸エステルであることが特に好ましい。
【0117】
アセチルクエン酸エステルとしては、例えば、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、及びアセチルクエン酸2-エチルヘキシルが挙げられる。中でも、アセチルクエン酸エステルは、アセチルクエン酸トリブチルであることが好ましい。
【0118】
本開示の第1組成物の150℃における粘度は、混練時における過度なトルク上昇を抑制する観点から、100Pa・s~10000Pa・sであることが好ましく、1000Pa・s~6000Pa・sであることがより好ましい。
【0119】
本開示において、樹脂組成物の150℃における粘度は、JIS K7199に準じて、キャピラリーレオメータを用いて、測定温度150℃、せん断速度30sec-1、オリフィスサイズ:内径2mm、長さ20mmの条件で測定される。キャピラリーレオメータとしては、例えば、東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dが用いられる。
【0120】
本開示の第1組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、老化防止剤、多孔質材料、及び必要に応じて他の成分を、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、ニーダー、押出機、プラネタリーミキサー、バタフライミキサー、ディゾルバー、ロールミル、混合釜等の混合機を用いて混合する方法が挙げられる。混合した後に、組成物を、粉末状、ペレット状、塊状等の形状に成形してもよい。(メタ)アクリル樹脂、老化防止剤、及び多孔質材料のうち一部の原料を予備混合したマスターバッチを使用してもよい。
【0121】
また、(メタ)アクリル樹脂、老化防止剤、及び多孔質材料のうち一部の原料(例えば、アクリル樹脂)を予め粉末状、ペレット状、シート状、塊状等の形状に成形し、得られた成形体と、残りの原料(例えば、老化防止剤及び多孔質材料)とを接触させることにより、該成形体に残りの原料を含浸又は吸収させて、組成物を製造してもよい。
【0122】
例えば、本開示の第1組成物が2種以上の(メタ)アクリル樹脂を含有する場合、(メタ)アクリル樹脂、老化防止剤、及び多孔質材料を一度に混合してもよく、1種の(メタ)アクリル樹脂、老化防止剤、及び多孔質材料を混合し、得られた混合物と残りの成分とを混合し、組成物を製造してもよい。
【0123】
<第2組成物>
本開示の第2組成物は、熱可塑性樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含む。
【0124】
(熱可塑性樹脂)
本開示の第2組成物は、熱可塑性樹脂を含む。本開示の第2組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0125】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のメタ(アクリル)樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体;アクリロニトリル/スチレン共重合体;オレフィン系熱可塑性エラストマー;スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;及び天然樹脂が挙げられる。
【0126】
中でも、熱可塑性樹脂は、使用環境で樹脂分子鎖に運動性を持たせる観点から、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0127】
ポリオレフィンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、α-オレフィンコポリマー、及び、エチレンとビニル基を有する他の重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。
【0128】
中でも、ポリオレフィンは、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、α-オレフィンコポリマー、又は、エチレンとビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。
【0129】
α-オレフィンコポリマーは、α-オレフィンに由来する構造単位を有する共重合体である。α-オレフィンの具体例は、上述したとおりである。
α-オレフィンは、炭素数2~8のα-オレフィンであることが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、又は1-オクテンであることがより好ましい。
α-オレフィンコポリマーとしては、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α-オレフィン共重合体、及び、炭素原子数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位のみを含む共重合体が挙げられる。
【0130】
エチレンとビニル系モノマーとの共重合体において、ビニル系モノマーは、ビニル基を有する重合性モノマーであれば特に限定されない。ビニル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール、塩化ビニル、無水マレイン酸、及びテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0131】
中でも、エチレンとビニル系モノマーとの共重合体は、エチレンと、酸素原子を有するビニル系モノマーとの共重合体であることが好ましい。酸素原子を有するビニル系モノマーとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(エチレン-メチルアクリレート共重合体及び/又はエチレン-メチルメタクリレート共重合体)等のエチレンとエチレン性不飽和結合を有する有機カルボン酸誘導体との共重合体、及び、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。エチレンとビニル系モノマーとの共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることがより好ましい。
なお、上記熱可塑性樹脂のうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物に由来する構造単位を含む重合体は、(メタ)アクリル樹脂である。
【0132】
熱可塑性樹脂が、エチレンとビニル系モノマーの共重合体である場合、適切な融解温度を得る観点、及び、可塑剤の組成物からのブリードを抑制する観点から、ビニル系モノマーの含有量は、共重合体の全量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~45質量%であることがより好ましく、15質量%~40質量%であることがさらに好ましく、20質量%~40質量%であることが特に好ましく、25質量%~40質量%であることがさらに特に好ましく、30質量%~40質量%であることが極めて好ましく、35質量%~40質量%であることが最も好ましい。
【0133】
熱可塑性樹脂のMFR、融解温度、曲げ弾性率、デュロメータ硬さ、重量平均分子量、及びガラス転移温度の好ましい範囲は、(メタ)アクリル樹脂の融解温度、曲げ弾性率、デュロメータ硬さ、重量平均分子量、及びガラス転移温度の好ましい範囲と同様である。
【0134】
熱可塑性樹脂の含有量は、本開示の第2組成物の全量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が10質量%以上であると、老化防止剤、多孔質材料、及び可塑剤を組成物中に保持しやすく、また、形状保持性を高めやすい。また、熱可塑性樹脂の含有量が90質量%以下であると、老化防止剤、多孔質材料、及び可塑剤の含有量がある程度確保され、植物の鮮度を保持する効果が高い。熱可塑性樹脂の含有量は、本開示の第2組成物の全量に対して、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。一方、植物の鮮度を保持する効果をより発現させる観点から、熱可塑性樹脂の含有量は、本開示の第2組成物の全量に対して、85質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましく、50質量%以下であることがさらに特に好ましく、40質量%以下であることが最も好ましい。
【0135】
(老化防止剤、多孔質材料、及び可塑剤)
本開示の第2組成物に含まれる老化防止剤の好ましい態様は、本開示の第1組成物に含まれる老化防止剤の好ましい態様と同様である。
本開示の第2組成物に含まれる多孔質材料の好ましい態様は、本開示の第1組成物に含まれる多孔質材料の好ましい態様と同様である。
本開示の第2組成物に含まれる可塑剤の好ましい態様は、本開示の第1組成物に含まれていてもよい可塑剤の好ましい態様と同様である。
すなわち、上記第1組成物の欄において説明した(メタ)アクリル樹脂を「熱可塑性樹脂」に読み替え、第1組成物を「第2組成物」に読み替えることができる。
【0136】
本開示の第2組成物は、熱可塑性樹脂及び可塑剤を含むため、混練時における過度なトルク上昇が抑制される。そのため、トルク上昇に基づく発熱が抑制され、混練物の温度上昇が抑制される。それに伴い、第2組成物の含まれる老化防止剤の揮発及び分解が抑制される。
【0137】
(他の成分)
本開示の第2組成物は、熱可塑性樹脂、老化防止剤、多孔質材料、及び可塑剤以外の他の成分を含有していてもよい。
【0138】
他の成分としては、熱可塑性樹脂以外の樹脂、酸化防止剤、中和剤、架橋剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、顔料、充填剤、滑材、難燃剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0139】
本開示の第2組成物に含まれる他の成分は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0140】
本開示の第2組成物の150℃における粘度は、混練時における過度なトルク上昇を抑制する観点から、100Pa・s~15000Pa・sであることが好ましく、500Pa・s~10000Pa・sであることがより好ましく、1000Pa・s~~6000Pa・sであることがさらに好ましい。
【0141】
本開示の組成物は、植物の鮮度を保持するために用いられ、さまざまな部材に適用可能である。
【0142】
本開示の組成物は、植物の鮮度を保持するために用いられ、例えば、板状体(シート、フィルム等)、ラベル、包材(袋体、箱、容器等)、コーティング剤(液状又は固体状)、布帛、粒剤、カプセル、及びチューブに適用可能である。
【0143】
板状体には、シート及びフィルムなどが含まれる。シート及びフィルムは、本開示の組成物をシート状又はフィルム状に成形した成形体であってもよく、本開示の組成物を含む層と、他の層と、を積層したシート状又はフィルム状の積層体であってもよい。例えば、本開示の組成物を含むシート又はフィルムを植物に被せることにより、植物の鮮度を保持することができる。
【0144】
ラベルは、本開示の組成物を含む層と、粘着層と、を積層した積層体であることが好ましい。例えば、本開示の組成物を含むラベルを植物に貼り付けることにより、植物の鮮度を保持することができる。
【0145】
包材には、袋体、箱、及び容器等が含まれる。袋体、箱、及び容器は、本開示の組成物を所望の形状(例えば、袋状、箱状等)に成形した成形体であってもよく、本開示の組成物を含む層と、他の層と、を積層した積層体を所望の形状に加工した加工体であってもよい。例えば、本開示の組成物を含む袋体、箱、又は容器に植物を収納することにより、植物の鮮度を保持することができる。
【0146】
コーティング剤は、例えば、本開示の組成物の固形分濃度をコーティング可能な濃度に調整することにより作製することができる。例えば、植物に、本開示の組成物を含むコーティング剤を塗布することにより、植物の鮮度を保持することができる。
【0147】
コーティング剤は、液状であってもよく、固体状であってもよい。液状の場合には、例えば、スプレー缶に収容して、噴射によって塗布することができる。
【0148】
布帛は、例えば、本開示の組成物を紡糸するか、又は、本開示の組成物を布又は糸に含浸させることにより作製することができる。例えば、本開示の組成物を含む布帛を植物に被せることにより、植物の鮮度を保持することができる。
【0149】
粒剤は、例えば、本開示の組成物を所望の形状(例えば、チューブ、ペレット等)に加工することにより作製することができる。本開示の組成物を含む粒剤を、植物の近くに置くことにより、植物の鮮度を保持することができる。
【0150】
カプセル及びチューブは、例えば、本開示の組成物を内部に封入することにより作製することができる。本開示の組成物を含むカプセル又はチューブを、植物の近くに置くことにより、植物の鮮度を保持することができる。
【0151】
[成形体]
本開示の組成物は、成形して成形体とすることができる。
【0152】
成形体は、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、スラッシュ(粉末)成形等の公知の成形方法により成形することにより製造することができる。成形体の形状は、成形体を使用する条件又は目的に応じて適宜決定してよく、特に限定されない。成形体の形状としては、例えば、棒状、平板状、メッシュ状、丸状、球状、扇状、及び三角形状が挙げられる。成形体は、ネット、繊維、不織布、シート、フィルム、チューブ、ペレット等に加工された成形体であってもよい。
【0153】
[複合体]
また、本開示の組成物は、他の材料と組み合わせて複合体とすることができる。
【0154】
複合体は、例えば、本開示の組成物と、本開示の組成物とは相溶しない成形体と、を複合させることにより製造することができる。複合体の形状は、複合体を使用する条件又は目的に応じて適宜決定してよく、特に限定されない。複合体の形状としては、例えば、棒状、平板状、メッシュ状、丸状、球状、扇状、及び三角形状が挙げられる。複合体は、ネット、繊維、不織布、シート、フィルム、チューブ、ペレット等に加工された複合体であってもよい。
【0155】
本開示の組成物とは相溶しない成形体の材質としては、例えば、樹脂、金属、セラミック、ガラス、植物及びその誘導体、並びに、動物の皮革及び毛が挙げられる。
【0156】
本開示の組成物と、本開示の組成物とは相溶しない成形体と、を複合させる方法としては、例えば、該成形体を液状の組成物に浸漬させる方法;該成形体に組成物を圧入する方法;該成形体を液状の組成物に添加し、場合により撹拌する方法;該成形体に液状の組成物を塗布する方法;該成形体にシート状の組成物を貼り付ける方法;及び、該成形体と、組成物の成形体とを編み合わせる方法が挙げられる。
【0157】
[積層体]
また、本開示の組成物は、本開示の組成物を含む積層体とすることができる。例えば、本開示の組成物を含む第1層と、本開示の組成物を含まない第2層と、を含む積層体とすることができる。
【0158】
第1層は、本開示の組成物を含む層であればよく、単層であってもよく、多層であってもよい。積層体の製造しやすさの観点から、第1層は、単層であることが好ましい。
【0159】
第1層が多層である場合、各層は、互いに同一の層であってもよく、組成、厚さ等において互いに異なる層であってもよい。第1層に含まれる本開示の組成物の含有量は、積層体の用途に応じて適宜設定することができるが、第1層の全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。また、上記含有量の上限値は特に限定されず、例えば、100質量%である。すなわち、第1層は、本開示の組成物からなる層であってもよい。
【0160】
第2層は、植物の鮮度を保持する効果を発揮させる観点から、本開示の組成物に含まれる老化防止剤、及び水に対する透過性を有する層であることが好ましい。老化防止剤及び水に対する透過性を有する層とは、以下の方法で定義される要件を満たす層である。
【0161】
JIS Z 0208に規定される防湿包装材料の透湿度評価用の直径60mmの透湿カップに老化防止剤を3g、純水3gを入れ、防湿包装材料の代わりに第2層を用いて封かんする。透湿カップの質量を測定した後、40℃のオーブンに設置する。24時間経過後に、透湿カップの質量を測定する、初期の質量から0.5mg以上の質量減少があった場合に、この層は老化防止剤及び水に対する透過性を有する層であると判定する。また、上記のようにして測定される、質量減少量の値を透過度とする。
【0162】
第2層の老化防止剤及び水に対する透過度は、植物の鮮度を保持する期間を長くする観点から、0.5mg~3gであることが好ましく、0.5mg~1gであることがより好ましく、1mg~500mgであることがさらに好ましく、1mg~100mgであることが特に好ましい。
【0163】
第2層を構成する材料は、本開示の組成物に含まれる老化防止剤の種類に応じて、透過性が所望の程度となるように選択すればよく、特に限定されないが、樹脂であることが好ましい。
【0164】
第2層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体、ポリ乳酸等の生分解性樹脂、及びポリ塩化ビニルが挙げられる。老化防止剤及び水に対して良好な透過性を得やすい観点からは、第2層は、エチレン共重合体及びポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0165】
第2層の老化防止剤及び水に対する透過性を調整するために、第2層は貫通孔を有していてもよい。貫通孔の直径は、適宜調整してよいが、0.1μm~500μmであることが好ましい。第2層が貫通孔を有する場合、老化防止剤及び水は貫通孔を通じて第2層を透過し、揮散される。そのため、第2層が貫通孔を有する場合、第2層は老化防止剤及び水に対して透過性を有する材料で構成される必要はなく、第2層を構成する材料は、公知の樹脂、金属、ガラス等を含む任意の材料であってもよい。第2層を構成する材料は、加工性の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0166】
第2層は、布、紙等の繊維材料であってもよい。繊維材料における繊維としては、例えば、セルロース繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、金属繊維、動物の毛、及びこれらの混合物が挙げられる。繊維材料には、繊維を繋ぐ膠着剤;繊維間の隙間を埋める填料;若しくは、色又は模様をつけるための染料、顔料、塗料等の着色剤が含まれてもよい。
【0167】
第2層は、単層であってもよく、多層であってもよい。多層である第2層としては、例えば、ポリオレフィンを紙に塗工したラミネート紙が挙げられる。この場合、例えば、第2層/第1層の層構成を少なくとも有する積層体において、多層である第2層のポリオレフィンの層が第1層と接する面であってもよいし、第2層の紙の層が第1層と接する面であってもよい。
【0168】
また、第1層が単層であり、第2層が単層又は多層であり、第2層の一方の面が第1層と接し、第2層の他方の面が最表面である積層体は、多層である第2層のポリオレフィンの層が第1層と接する面であり、第2層の紙の層が最表面である構成の積層体であってもよく、第2層の紙の層が第1層と接する面であり、第2層のポリオレフィンの層が最表面である構成の積層体であってもよい。第2層のポリオレフィンの層が第1層と接する面であり、第2層の紙の層が最表面である構成の積層体が好ましい。
【0169】
本開示の組成物を含む第1層と、本開示の組成物を含まない第2層とを含む積層体は、第1層及び第2層とは異なる第3層をさらに有していてもよい。第3層としては、例えば粘接着層、表面保護層、着色層、老化防止剤透過バリア層、意匠層、及び紫外線吸収層からなる群から選択される少なくとも1種の層が挙げられる。
【0170】
積層体の1つの形態は、本開示の組成物を含む第1層と、本開示の組成物を含まない第2層とを含む積層体である。上記積層体は、例えば、第1層と第2層とが順に積層された積層体であってもよく、第1層、第2層、第1層がこの順に積層された積層体であってよい。第2層、第1層、第2層がこの順に積層された積層体は、積層体の両面から老化防止剤を放出させることができ、高い速度で環境へ老化防止剤を供給することが可能となる。上記積層体としては、例えば、第2層/第1層の層構成を少なくとも有する積層体、第2層/第1層/第2層の層構成を少なくとも有する積層体、及び、第2層/第1層/第2層/第1層/第2層の層構成を少なくとも有する積層体が挙げられる。ここで、第2層/第1層/第2層、第2層/第1層/第2層/第1層/第2層等の層構成において、各第1層は互いに同一であってもよく異なっていてもよいし、各第2層も互いに同一であってもよく異なっていてもよい。また、上記の層構成にさらに第3層が積層されていてもよい。本開示の積層体は、例えば、第1の樹脂層(第2層)と、本開示の板状体(第1層)と、第2の樹脂層(第2層)と、を順に含む積層構造を有する積層体であってもよく、第1の樹脂層及び第2の樹脂層は樹脂シートであってもよい。
【0171】
積層体の他の形態は、本開示の組成物からなる第1層と、本開示の組成物を含まない第2層と、第1層及び第2層とは異なる第3層と、を含む積層体であって、第2層/第1層/第3層の順に積層された層構成を少なくとも有する積層体である。この形態で積層された積層体は、積層体の両面からの老化防止剤の放出速度を変化させること、又は、第3層に老化防止剤とは異なる機能を持たせることで製品の価値を向上させることが可能となる。例えば、第3層を非透過性の材料とすることで、積層体で隔てられた空間の片側でのみ植物鮮度保持効果を発現させることができる。また、第3層を粘着性の材料とすることで、積層体を適当な面に貼り付け可能とすることができる。また、上記の層構成にさらに第3層が積層されていてもよい。
【0172】
積層体の他の形態は、本開示の組成物からなる第1層と、本開示の組成物を含まない第2層とを、第1層/第2層の順に積層した積層体である。この形態で積層された積層体は、老化防止剤の放出性を確保しつつ、積層体の機械的物性を向上させたり、老化防止剤を含む第1層に直接の接触を避けることが可能となる。また、第1層が粘着性を持つ場合には、積層体を適当な面に貼り付けることができる。また、上記の層構成にさらに第3層が積層されていてもよい。
【0173】
本発明の積層体は、好ましい一形態において、第1層が単層であり、第2層が単層又は多層であり、第2層の一方の面が第1層と接し、第2層の他方の面が最表面である積層体であってよい。上記積層体としては、例えば、単層の第1層/単層又は多層の第2層の層構成を含み、第2層の第1層と接しない面が最表面である積層体、及び、第2層/単層の第1層/第2層の層構成を含み、2つの第2層のうちの少なくとも一方の第2層において、第1層と接しない面が最表面である積層体が挙げられる。例えば、第2層/単層の第1層の順に積層された層構成を有する積層体、第2層/単層の第1層/第3層の順に積層された層構成を有する積層体、第2層/単層の第1層/第2層の順に積層された層構成を有する積層体、及び、第2層/単層の第1層/第2層/第3層の順に積層された層構成を有する積層体が挙げられる。
【0174】
積層体の製造方法は特に限定されない。例えば、シート状等の形状を有する第2層に、熱溶融又は適当な溶媒に溶解させることなどにより液状化させた本開示の組成物を塗工する方法;シート状等の形状を有する第1層に、熱溶融又は適当な溶媒に溶解させることなどにより液状化させた第2層用組成物を塗工する方法;シート状等の形状を持つ第1層及び第2層を常温又は加熱した状態で圧着させる方法が挙げられる。第1層用組成物及び第2層用組成物がいずれも熱可塑性を有する場合には、これらの組成物を共押出する方法、多層射出成形する方法、複合紡糸する方法、及び押出ラミネートする方法が挙げられる。
【0175】
ここで、第2層を高温で加工する必要がある場合、第2層を加工するための高温条件により第1層に含まれる老化防止剤が揮散、分解、又は重合することがある。老化防止剤の変性を防止しやすい観点から、第1層及び第2層のいずれか一方に、他方の層の材料を熱溶融又は溶媒に溶解させ塗工する方法、又は、第2層に第1層を押出ラミネートする方法により積層体を製造することが好ましい。
【0176】
本開示は、以下の態様であってもよい。
【0177】
(態様1)(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む組成物。
(態様2)(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含む組成物。
(態様3)熱可塑性樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含む組成物。
【0178】
(メタ)アクリル樹脂、熱可塑性樹脂、老化防止剤、多孔質材料、及び可塑剤の好ましい態様は上記のとおりである。
【0179】
また、本開示は、以下の態様であってもよい。
(態様A)(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む組成物を準備する工程と、上記組成物を含む成形体を作製する工程と、上記成形体で植物を被覆する工程と、を含む、植物の鮮度を保持する方法。
(態様B)(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む組成物を準備する工程と、上記組成物を含む層及び粘着層を積層した積層体を作製する工程と、上記積層体を植物、又は、植物を被覆する包材に貼り付ける工程と、を含む、植物の鮮度を保持する方法。
(態様C)(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む組成物を準備する工程と、上記組成物を含むコーティング剤を作製する工程と、上記コーティング剤を植物、又は、植物を被覆する包材に塗布する工程と、を含む、植物の鮮度を保持する方法。
【0180】
上記態様A~態様Cにおける「(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含む組成物を準備する工程」は、「(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含む組成物を準備する工程」又は「熱可塑性樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含む組成物を準備する工程」に置き換えてもよい。
【0181】
態様Aにおいて、「植物を被覆する」とは、植物を全体的に被覆してもよく、一部のみを被覆してもよい。また、成形体を植物に接触させて被覆する形態であってもよく、成形体を植物に接触することなく、例えば、袋状、箱状等の成形体の中に植物を収納する形態であってもよい。
【0182】
「植物の鮮度を保持する方法」とは、当該方法を用いなかった場合の所定期間における植物の色の変化と比較して、色の変化が抑制されていれば、植物の鮮度を保持する方法とみなす。
【実施例0183】
以下、実施例によって本開示の一実施形態を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0184】
<実施例1>
アクリル樹脂であるエチレン-メチルアクリレート共重合体(メチルアクリレートに由来する構造単位の含有量35質量%、製品名「アクリフト(登録商標」、住友化学(株)製)33g、珪藻土(製品名「ラヂオライト#900」、昭和化学工業(株)製;多孔質材料)40g、1-メチルシクロプロペン/αシクロデキストリン包接体(1-メチルシクロプロペン含有量3.3質量%;老化防止剤)10g、及び可塑剤(アセチルクエン酸トリブチル)17gを、ジャケット温度80℃の混練機(製品名「ラボプラストミル」、形式65C150、東洋精機製作所製)に投入し、100rpmの回転速度で30分間混練し、組成物を得た。
なお、上記アクリル樹脂は、MFRが40g/10分であり、融解温度が50℃であり、曲げ剛性率が3MPaであり、デュロメータ硬さが10であり、重量平均分子量が40000であった。
この組成物の150℃における粘度は3700Pa・sであった。
上記珪藻土は、平均細孔径が100nmであり、含水率が0.3%であり、平均粒径が28.7μmであり、吸油量が130ml/100gであった。
【0185】
<実施例2>
実施例1におけるアクリル樹脂を、アクリル樹脂であるエチレン-メチルアクリレート共重合体(メチルアクリレートに由来する構造単位の含有量30質量%、製品名「アクリフト(登録商標」、住友化学(株)製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で組成物を得た。
なお、上記アクリル樹脂は、MFRが7g/10分であり、融解温度が64℃であり、曲げ剛性率が7MPaであり、デュロメータ硬さが24であり、重量平均分子量が90000であった。
組成物の150℃における粘度は6600Pa・sであった。
【0186】
<参考例1>
実施例1におけるアクリル樹脂を、エチレン-酢酸ビニル共重合体(住友化学(株)製スミテート(登録商標)、酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量28質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で組成物を得た。
なお、上記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、MFRが7g/10分であり、融解温度が70℃であり、曲げ剛性率が13MPaであり、デュロメータ硬さが30であり、重量平均分子量が64000であった。
組成物の150℃における粘度は11000Pa・sであった。
【0187】
<比較例1>
実施例1におけるアクリル樹脂を、エチレン-酢酸ビニル共重合体(住友化学(株)製スミテート(登録商標)、酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量28質量%)に変更し、エチレン-酢酸ビニル共重合体の量を41g、珪藻土の量を49g、1-メチルシクロプロペン/αシクロデキストリン包接体を10gとし、可塑剤を用いなかったこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を得た。
組成物の150℃における粘度は16000Pa・sであった。
【0188】
実施例1、実施例2、参考例1、及び比較例1の組成物に関して、製造中の混練機にかかるトルク、製造中の混練物の温度を測定した。また、得られた組成物の外観及び臭気を評価した。測定結果及び評価結果は以下のとおりである。
【0189】
(トルク)
製造中の混練機にかかるトルクの測定結果を
図1に示す。
【0190】
図1に示すように、実施例1では、混練機にかかるトルクは経時的に減少し、混練を開始して5分後以降の最大トルクは35N・mであり、トルクは十分に小さいものであった。実施例2では、混練機にかかるトルクは経時的に減少し、混練を開始して5分後以降の最大トルクは37N・mであり、トルクは十分に小さいものであった。
【0191】
一方、参考例1では、混練機にかかるトルクは、混練を開始して10分後から増加に転じ、混練5分後以降の最大トルクは52N・mであった。
【0192】
比較例1では、混練機にかかるトルクは、混練を開始して12分後から増加に転じ、混練5分後以降の最大トルクは66N・mであり、過度なトルク上昇が見られた。
【0193】
(樹脂温度)
製造中の混練物の温度(
図2中「樹脂温度」)の測定結果を
図2に示す。
【0194】
図2に示すように、実施例1では、樹脂温度は、混練を開始してから経時的に緩やかに上昇し、最大値は159℃であり、過度な温度上昇は見られなかった。実施例2では、樹脂温度は、混練を開始してから経時的に緩やかに上昇し、最大値は169℃であり、過度な温度上昇は見られなかった。
【0195】
一方、参考例1では、樹脂温度は、混練を開始してから約10分経過後に急激に上昇し、最大値は209℃であった。
【0196】
比較例1では、樹脂温度は、混練を開始してから約10分経過後に急激に上昇し、最大値は241℃であり、適正な加工温度域を逸脱していた。
【0197】
(外観及び臭気)
得られた組成物の外観を目視で観察し、組成物の臭気の有無を確認した。
【0198】
実施例1及び実施例2では、組成物の外観は薄い灰色であり、臭気等も見られず良好であった。
【0199】
一方、参考例1及び比較例1では、得られた組成物の外観は焦げたような茶色がかった灰色であった。また、得られた組成物は、酢酸臭を有していることから、組成物内の成分が分解していることが考えられた。
【0200】
次に、実施例1の組成物を用いて、積層体(シート)を作成した。
【0201】
実施例1の組成物を、80℃、圧力20MPaでプレス成形し、縦200mm×横200mm×厚さ0.2mmのシート状の成形体を得た。次に、樹脂面にコロナ処理が施された厚さ0.03mmの低密度ポリエチレンフィルムを、コロナ処理面が成形体と接するように、成形体の両面に低密度ポリエチレンフィルムをハンドローラーで圧着し、シートを得た。得られたシートは、本開示の組成物からなる層を第1層、低密度ポリエチレンフィルムを第2層として、第2層/第1層/第2層の順に積層されていた。
【0202】
得られた積層体を用いて、放出試験及び鮮度保持試験を行った。試験方法及び結果は以下のとおりである。
【0203】
(放出試験)
作製した積層体を50mm四方に切り出し、試験サンプルを得た。試験サンプルを、25℃95RHの恒温恒湿槽に設置した。放出試験を行い、7日後及び14日後に回収した。
【0204】
回収した試験サンプルを純水100μLと共にバイアル瓶に封入した。150℃で20分間加熱し、試験サンプル中に残った1-メチルシクロプロペンを全て放出させた。その後、バイアル瓶内の気体成分をガスクロマトグラフィー質量分析計にて分離定量した。これにより、7日後及び14日後における1-メチルシクロプロペンの残存量を算出した。それぞれ3回試験を行い、平均値を採用した。
【0205】
その結果、放出試験を行わなかった試験サンプル中の1-メチルシクロプロペンの量を基準として、1-メチルシクロプロペンの残存量は試験開始7日後に39質量%、試験開始14日後に15質量%であり、2週間に渡り継続的に、1-メチルシクロプロペンが放出されていることが確認できた。
【0206】
(鮮度保持試験)
作製した積層体を50mm四方に切り出し、試験サンプルを得た。
千葉県産日本梨(豊水)2個と上記試験サンプルとを青果包装に一般に用いられるポリプロピレン製袋(ボードンパック 穴あり #20 No.12)に入れ、開口部をテープで止め、処理サンプルを作製した。
別途、千葉県産日本梨(豊水)2個のみをポリプロピレン製袋に入れ、開口部をテープで止め、未処理サンプルを作製した。
処理サンプル及び未処理サンプルを、25℃の恒温室に14日間静置した。静置前後において、梨表面の明度と色度をCIE1976L*a*b*色空間に基づき、測色計(製品名「spectro-guide 45/0 gloss」、BYK-Gardner GmbH製)で測定し、静置前後の色差ΔEを算出した。3回試験を行い、色差ΔEの平均値を算出した。
また、静置前後において、梨の硬度を、果実硬度計(製品名「KM-5」、藤原製作所製)を用いて測定し、静置前後の硬度差を算出した。3回試験を行い、硬度差の平均値を算出した。
【0207】
図3に、色差ΔEの算出結果を示す。
図3に示すように、処理サンプルでは、14日経過後の色差ΔEが2.8であったのに対して、未処理サンプルでは、色差ΔEが8.0であった。
【0208】
図4に、硬度差の算出結果を示す。
図4に示すように、処理サンプルでは、14日後において、梨の硬度が0.2kgf減少したのに対して、未処理サンプルでは、梨の硬度が1.2kgf減少した。
【0209】
さらに、処理サンプルでは、14日経過後において、梨の見た目に変化はなく、梨はハリを保っていた。一方、未処理サンプルでは、14日経過後の梨は褐変し、皮が柔らかくなり、袋内に果汁が漏れ出ていた。
【0210】
本開示の組成物は、(メタ)アクリル樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、を含み、鮮度を保持する効果に優れていることが分かった。
また、本開示の組成物は、熱可塑性樹脂と、老化防止剤と、多孔質材料と、可塑剤と、を含み、鮮度を保持する効果に優れていることが分かった。