(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143327
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ネギ風味向上剤及びネギ風味向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230928BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20230928BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20230928BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230928BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/10 C
A23L27/20 D
A23L19/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050646
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 崇幸
【テーマコード(参考)】
4B016
4B047
【Fターム(参考)】
4B016LG10
4B016LK02
4B047LB03
4B047LB08
4B047LF01
4B047LG12
4B047LG13
4B047LP01
4B047LP20
(57)【要約】
【課題】当該ネギの乾燥食品を製造する際における風味劣化に対してネギ風味を向上させる方法を課題とする。
【解決手段】
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を有効成分として含有する、ネギ風味向上剤とする。また、本発明においては、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン及びブチュ精油の両方を有効成分とすることが好ましい。さらに、さらに、2-イソブチル-3-メトキシピラジンを含有することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を有効成分として含有する、ネギ風味向上剤。
【請求項2】
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン及びブチュ精油を有効成分として含有する、ネギ風味向上剤。
【請求項3】
さらに、2-イソブチル-3-メトキシピラジンを含有する請求項1又は2に記載の、ネギ風味向上剤。
【請求項4】
前記ネギ風味向上剤が、乾燥ネギに対するネギ風味向上剤である請求項1~3のいずれかに記載のネギ風味向上剤。
【請求項5】
乾燥ネギの製造方法であって、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュオイルを添加する工程を含む乾燥ネギの製造方法。
【請求項6】
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュオイルが添加されたネギ。
【請求項7】
前記ネギが乾燥ネギである請求項6に記載のネギ
【請求項8】
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を利用することを特徴とする、ネギに対するネギ風味向上方法。
【請求項9】
前記ネギが乾燥ネギである請求項8に記載のネギ風味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネギ風味向上剤及びネギ風味向上方法に関する。特に、乾燥ネギを製造する場合において当該ネギに対して利用することでネギ風味を向上させるネギ風味向上剤及び向上方法において好適に利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来から即席味噌汁や即席麺等の即席食品やその他の多くの食品の具材として、乾燥ネ
ギが使用されている。これらのネギの乾燥方法としては、熱風乾燥法、凍結乾燥法、真空
乾燥法、マイクロウエーブ乾燥法等が挙げられる。
乾燥ネギは、ネギの水分を減らすことで保存性を向上させたものであり、今後も多くの
利用が見込まれる具材である。
【0003】
一方、乾燥野菜はその種類を問わず、乾燥工程において細胞組織の酸化反応等により、風味が揮散したり、土様や金属臭の様な特別の風味を呈することがあることが指摘されていた。このような点において、乾燥野菜は生野菜より風味が劣る等の問題が指摘されていた。
また、このような問題は、乾燥ネギにおいても同様であり、この点を回避する方法が望まれていた。
一方、このような乾燥野菜の風味劣化に対応する方法として、例えば、以下の先行技術が
開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-142244
【特許文献2】特開平7-298849
【0005】
上記特許文献1及び2の技術は乾燥臭の回避するための優れた技術である。しかし、特
許文献1は、スープを対象としており、適用範囲が限定されている。さらに、モノグルコ
シルヘスペリジンを加える点を必須としており、当該物質のコスト等も考慮される。また
、特許文献2は、野菜類を粉砕することを前提にしており、用途が限定されるという点が
指摘される。
【0006】
また、これらの方法は凍結乾燥する対象としての野菜の範囲が広く、特定の野菜を対象
とする凍結乾燥方法ではない。
しかし、野菜はその種類によってその組成や特性が異なるものである。したがって、乾燥野菜を製造する場合にも、野菜の種類による固有の問題が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、対象とする野菜をネギとして、当該ネギの乾燥食品を製造する
ことに際して、上記の風味劣化の問題に対応するために、ネギの風味を向上させる方法を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々の素材を用いてその香気成分について実験を繰り返し実施した。本発明者の鋭意研究の結果、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を利用することで、ネギに対して当該ネギ風味を向上させる効果を見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本願第一の発明は、
“4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を有効成分として含有する、ネギ風味向上剤。”、である。
【0010】
次に、本発明においては、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン及びブチュ精油の両方を有効成分とすることが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
“4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン及びブチュ精油を有効成分として含有する、ネギ風味向上剤。”、である。
【0011】
次に、本発明においては、さらに、2-イソブチル-3-メトキシピラジンを併用することが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
“さらに、2-イソブチル-3-メトキシピラジンを含有する請求項1又は2に記載の、ネギ風味向上剤。”、である。
【0012】
次に、本発明においては、ネギのうち、乾燥ネギに対して利用することが好ましい。すなわち、本願第四の発明は、
“前記ネギ風味向上剤が、乾燥ネギに対するネギ風味向上剤である請求項1~3のいずれかに記載のネギ風味向上剤。”、である。
【0013】
次に、本発明においては、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュオイルを添加する工程を有する乾燥ネギの製造方法について意図している。
すなわち、本願第五の発明は、“乾燥ネギの製造方法であって、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュオイルを添加する工程を含む乾燥ネギの製造方法。”、である。
【0014】
次に、本発明においては、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュオイルが添加されたネギ自体についても意図している。
すなわち、本願第六の発明は、
“4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュオイルが添加されたネギ。”、である。
【0015】
次に、本願第六の発明においては、ネギについて乾燥ネギであることが好ましい。
すなわち、本願第七の発明は、
“前記ネギが乾燥ネギである請求項6に記載のネギ。”である。
【0016】
次に、本発明においては、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を利用するネギ風味向上方法についても意図している。
すなわち、本願第八の発明は、
“4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を利用することを特徴とする、ネギに対するネギ風味向上方法。”、である。
【0017】
次に、本願第七の発明においては、ネギについて乾燥ネギであることが好ましい。
すなわち、本願第九の発明は、
“前記ネギが乾燥ネギである請求項8に記載のネギ風味向上方法。”、である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のネギ風味向上剤又はネギ風味向上方法を利用することで、ネギ、特に乾燥ネギの風味を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【符号の説明】
【0020】
1 葉身部
2 葉鞘部
3 根部
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施の形態に準じて詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。本発明の有効成分は以下の物質である。
【0022】
─4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュオイル─
本発明でいう4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン(CAS 19872-52-7)とは、C6H12OSで表され、化学式以下の構造式を有する。
【0023】
【0024】
本発明に利用する4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン(4-Mercapto-4-methyl-2-pentanone)については、市販のタイプを入手等することができ食品用香料化合物として使用することができる。食品用香料化合物は、食品衛生法施行規則 別表第一で指定され、着香を目的として使用される食品添加物として指定されている。
【0025】
すなわち、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン(4-Mercapto-4-methyl-2-pentanone)は、指定添加物として、類又は誘導体として指定されている18項目の香料(いわゆる18類)に該当すると判断された具体的品目に含まれている。
本発明に利用する4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン(4-Mercapto-4-methyl-2-pentanone)については、市販のタイプを購入することができる。また、合成したものを利用することもできる。さらに、食品等から抽出(蒸留等)により、その香気成分を抽出したものを用いることもできる。
【0026】
尚、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン(4-Mercapto-4-methyl-2-pentanone)を食品の製造において使用する場合は、液体油脂等の溶剤又は水系、エタノール等に溶解させた状態のタイプのものを利用することが好ましい。
【0027】
─ブチュ精油─
本発明でいうブチュ精油(ブチュー精油)とは、南アフリカ等の柑橘系の木であるAgathosma betulina (Barosma betulina)から水蒸気蒸留や溶媒抽出等によって抽出される成分をいう。
ここで、精油とは、植物の幹、樹脂、花、葉、つぼみ又は果実等から得られる芳香のある揮発性の成分をいう。主に、テルペン系化合物、芳香族化合物、エステル類等などから成り,蒸留や圧搾・抽出によって分離される。
【0028】
本発明におけるブチュ精油(ブチュ精油)の場合、一般的には、当該樹木の葉から蒸留又は溶媒抽出によって抽出された香料又は精油成分をいう。また、当該樹木の木部又は樹皮等から蒸留したものでもよい。また、抽出方法は上述に限定することなく種々の方法が利用可能である。
【0029】
本発明に利用するについては、市販のタイプを入手等することができ飲食品用として使用することができる。
尚、本ブチュ精油を飲食品の製造において使用する場合は、液体油脂等の溶剤に溶解させた状態のタイプのものを利用することが好ましい(ブチュオイル)。
【0030】
─ネギ─
本発明はネギに対するものである。例えば、ネギの種類としては、千住ネギ・加賀ネギ・下仁田ネギの様な白ネギ、九条ネギ・博多万能ネギの様な青ネギ(葉ネギ)、超津ネギの様な中間型、赤ネギ、わけぎ、あさつき、リーキまで、幅広く用いることができる。
尚、乾燥ネギの製造に際しては、
図1に示すように葉鞘部のみならず、葉身部をも含めて製造されることが多いが本発明はこのような場合でも、当然に利用することができる。
【0031】
生ネギの収穫後においてネギを洗浄する際には、水等により洗浄するが、収穫直後のまま、洗浄するかあるいは、根部や葉身部の先端部を除去した上で洗浄することが好ましい。
次に洗浄後のネギについては、次のように切断する。切断する方向としては、ネギの伸長方向に対して垂直に切断する方法の他、ネギに対して斜めに切断してもよい。具体的には、ネギの伸長方向と切断面との角度が25°程度以上に切断する方法が挙げられる。また、伸長方向に垂直・斜め方向に切断する方法の他、ネギの伸長方向に沿って切断する方法も可能である。切断は包丁やナイフ等による手切りの他、スライサーを用いることもできる。切断の幅としては、一定間隔でもよいし変化させてもよい。具体的な切断の幅としては、2mm~30mm程度まで幅広く切断する方法が可能である。特に5mm~15mm程度が好ましい。
【0032】
また、本工程において次亜塩素酸ナトリウム水溶液による殺菌工程を追加してもよい。この場合は、例えば、根部や葉身部の先端部を除去した生ネギを次亜塩素酸ナトリウム150~250ppm程度の水溶液中に10分~20分程度浸漬することにより行い、殺菌後、水で洗浄する。当該次亜塩素酸処理はネギのカット前後のいずれに実施してもよい。
【0033】
─乾燥方法─
本発明のネギ風味向上の効果については、生のネギに対して利用することができるが、特に乾燥タイプのネギに対して好適に利用することができる。一般に乾燥ネギの製造における乾燥方法については、熱風乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法、マイクロウエーブ乾燥法等が挙げられる。本発明おいては、これらの乾燥方法のいずれにも適用できるが、特に、熱風乾燥や凍結乾燥の方法において好適に利用できる。
【0034】
尚、通常、熱風乾燥方法では、熱風を供給する乾燥機があれば、処理が可能であるため、簡便な設備で乾燥を実現できる。尚、乾燥前において蒸気等によって適宜ブランチング処理を施してもよいことは勿論である。
【0035】
─乾燥工程─
前記水切り後のネギについて、乾燥処理を行う。乾燥方法については、それぞれの乾燥
方法において一般的な方法を適用することができる。
例えば、熱風乾燥においては、当該熱風乾燥の温度については、概ね30℃~90℃程度で行うことができる。また、熱風乾燥の時間については、特に限定されないが、水分含量が5~15重量%程度となるまで乾燥する。熱風乾燥の時間は特に限定されないが、概ね40℃~80℃程度であると、4時間~10時間程度である。
【0036】
また、上記熱風乾燥については、二段階の乾燥としても可能である。すなわち、80~60℃で程度乾燥した後、70~50℃のやや低い温度で継続して乾燥する方法等が挙げられる。
また、凍結乾燥の場合においては、蒸気等によるブランチングの後、凍結させた後、減圧下(通常0.8Torr以下の真空度)で棚温度50℃~80℃で概ね14~24時間程度の乾燥処理を行う方法が挙げられる。
但し、上記の各乾燥方法については、例を示したものであり、本発明においては乾燥方法について特に限定されないことは勿論である。
【0037】
─ネギ風味向上剤─
本発明のネギ風味向上剤とは、使用する生又は乾燥ネギに対してネギ風味を向上したり、ネギを含有している食品に対して使用することでそのネギ風味を向上させることをいう。
すなわち、本発明におけるネギ風味向上剤における“向上”とは、ネギ風味をすでに有している場合において当該ネギ風味を増強させるという意味をいうものとする。
【0038】
特に本発明における4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を利用することで、ネギのフレッシュな甘い香りの向上効果を有することができる。また、ネギ風味の向上の効果とともに、乾燥ネギの場合、乾燥ネギ特有の乾燥臭の軽減という効果も奏することができる場合がある。
【0039】
また、本発明の風味向上剤については、少なくとも4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を含有していればよく、他の成分として各種の油脂、溶媒、香料、調味料等を含んでいてもよいことは勿論である。
【0040】
さらに、ネギ風味向上剤の剤形態は必ずしも所定の形式の容器等に収納されている場合のみならず、ネギを含有する食品を製造等する際に、当該ネギ風味の向上のために、少なくとも4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を含む素材(粉状物、粒状物等の添加用の各種食材)が存在すればよく、当該素材について、ネギ自体又は、ネギを含有する食品の製造の際や、喫食の際に添加や混合する態様であれば、本発明にいうネギ風味向上剤に該当するものとする。
【0041】
─ネギへの添加─
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油のネギに対する添加方法については種々の方法を選択することができる。
生ネギに対して添加する場合には、切断後又は切断前に適宜ネギに対して添加することができる。添加には噴霧する方法等の種々が可能である。
次に乾燥ネギに対して添加する場合においては、“乾燥処理”の工程に加えて、乾燥後の乾燥ネギに対して、添加物として4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を添加することができる。尚、乾燥前に添加することも可能である。
【0042】
ネギに対する添加量としては、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノンの場合、特に限定されるものではないが、乾燥ネギの場合、概ね乾燥ネギに対して概ね1ppt~10ppm程度が一般的である。また、10ppt~1ppmが好ましい。さらに、100ppt~10ppbがより好ましい。
次に、ブチュ精油の場合、ブチュ精油(ブチュオイル)の濃度にもよるが、市販されているタイプを利用する場合、乾燥ネギの場合、概ね乾燥ネギに対して概ね1ppt~10ppmが一般的である。また、100ppt~10ppmが好ましい。さらに、10ppb~1ppmがより好ましい。
【0043】
─2-イソブチルー3-メトキシピラジン(2-Isobutyl-3-methoxypyrazine)─
本発明者らの鋭意研究の結果、上述の4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油に加えて、2-イソブチルー3-メトキシピラジン(2-Isobutyl-3-methoxypyrazine)(CAS 24683-00-9)を添加することによって、ネギ風味を一層向上させることができることを見出した。
【0044】
2-イソブチルー3-メトキシピラジンについては、市販のタイプを入手等することができ食品用香料化合物として使用することができる。食品用香料化合物は、食品衛生法施行規則 別表第一で指定され、着香を目的として使用される食品添加物として指定されている。
すなわち、2-イソブチルー3-メトキシピラジン(2-Isobutyl-3-methoxypyrazine)は、指定添加物として、類又は誘導体として指定されている18項目の香料(いわゆる18類)に該当すると判断された具体的品目に含まれている。
【0045】
2-イソブチルー3-メトキシピラジンについては、油溶性及び水溶性であるため、植物又は動物油、水、エタノール等に溶かした状態で使用したり、エタノールに当該2-イソブチルー3-メトキシピラジンを溶かして利用する方法が挙げられる。
具体的な添加の方法としては、上述の熱風乾燥後のネギに対して、2-イソブチルー3-メトキシピラジンを10ppt~10ppmとなるように溶かした液状油脂又は水系、エタノール等のアルコール等を噴霧する方法が挙げられる。また、100ppt~1ppmが好ましい。
尚、2-イソブチルー3-メトキシピラジンの添加の方法は上述の方法に限定されず、種々の方法が可能であることは勿論である。
【0046】
―4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を含むネギ─
本発明においては、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を含有するネギ(乾燥ネギ)についても意図している。ここで、乾燥ネギが4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を含有するとは、まず、生のネギに添加したり、乾燥ネギの製造過程のいずれかにおいて、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を添加する場合が挙げられる。
【0047】
また、例えば、即席麺や即席ライス等の加工食品等で喫食時に添付フレーバーとして、喫食者が付属のスープパック等を開封して加える場合には、当該スープパック等に含有しているものでもよく、喫食時に乾燥又はお湯で復元されたネギと4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油が同時に含有する態様であれば、あらゆる態様を含むものとする。
【0048】
さらに、添加される4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油は必ずしも精製されたものである必要はなく、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油をその一部の成分として含む、香料、食品素材等であれば、あらゆる態様を含むことは勿論である。
【0049】
─4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を添加する工程を含む乾燥ネギの製造方法─
本発明においては、ネギ風味の向上を目的として、乾燥ネギの製造工程において4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を添加する(含有させる)工程を含む乾燥ネギの製造方法も意図している。すなわち、乾燥ネギの製造過程のいずれかの工程で4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を含有させる工程を含む工程が存在すればよく、また、その使用量については限定されないが、概ね上述したネギ又は乾燥ネギに対する添加量となるように調製することが好ましい。
【0050】
─4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を利用することによってネギに対するネギ風味向上方法─
本発明においては、ネギ風味の向上を目的として、4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン又はブチュ精油を含有させたり、添加する等して利用することによってネギ風味を向上させる方法についても意図している。
【実施例0051】
以下に本発明の実施例について説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない
ことは勿論である。
【0052】
[試験例1]乾燥ネギに対する4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノンの効果の確認及び添加濃度の検討
乾燥ネギに対する4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノンの添加効果を調べた。
・4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン(4-mercapto-4-methyl-2-pentanone(CAS:19872-52-7)については、市販のものを使用した。
・乾燥ネギの調製方法
【0053】
市販の生ネギ(九条ネギ)を根部5mmの部分を切り離した後に、次亜塩素酸ナトリウム
200ppmに10分間浸漬した。当該浸漬後のネギを5mmごとにカットして、カットネ
ギを調製した。当該カットネギを流水で30分間水洗し、十分、水切りした後に当該水切り後のネギをトレイに入れて、熱風乾燥処理装置に入れて、70℃、50分間処理を行った後、さらに60℃、4時間の乾燥処理を実施した。乾燥後の乾燥ネギに対して、各試験区において4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノンを乾燥ネギに対して表1に記載の濃度となるように添加した後、以下の官能評価に供した。
【0054】
・乾燥ネギの評価方法
乾燥ネギの乾燥臭の抑制については、当該乾燥ネギ1gに対して99gの熱湯を注ぎ、当該ネギについて官能評価を行った。評価については熟練のパネラー5名が以下の点を評価した。
ネギ風味向上効果は各試験例の乾燥ネギの臭いを官能評価した。評価は、ネギ風味の向上を観点として、特にネギのフレッシュな甘い香りの向上効果を有するかどうかを判断した。
評価結果は、ネギ風味の向上効果が大きい程、数値が大きい評価とした。評価は(0:ネギ風味の向上効果が無い、1:ネギ風味の向上効果(小さい)⇔12:ネギ風味の向上効果(大きい))の13段階とした。評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノンを利用することで、乾燥ネギに対するネギ風味が向上することが分かった。さらに、乾燥ネギに対して概ね、10ppt~1ppm程度が好ましいことが判明した。
【0056】
[試験例2]乾燥ネギに対するブチュ精油の効果の確認及び添加濃度の検討
乾燥ネギに対するブチュ精油の添加効果を調べた。
ブチュ精油については市販のブチュオイルを使用した。試験例1の場合と同様に調製された乾燥ネギに対して、各試験区においてブチュオイルを乾燥ネギに対して表2に記載の濃度となるように添加した後、以下の官能評価に供した。評価方法は試験例1に示したものと同様である。評価結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
ブチュ精油(ブチュオイル)を利用することで、乾燥ネギに対するネギ風味が向上することが分かった。さらに、乾燥ネギに対して概ね、100ppt~10ppm程度が好ましいことが判明した。
【0058】
[試験例3]乾燥ネギに対する4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン及びブチュ精油の効果の確認及び添加濃度の検討
乾燥ネギに対する4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン及びブチュ精油の両方を添加した場合の効果について調べた。
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノンについては、試験例1で利用したもの、及びブチュ精油については、試験例2で利用したものを使用し、評価方法は試験例1で示したものと同様である。評価結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンとブチュオイルを併用した場合においても乾燥ネギに対するネギ風味が向上することが分かった。
【0060】
[試験例4]乾燥ネギに対する4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン、ブチュ精油に加えて利用した場合の効果の確認及び添加濃度の検討
乾燥ネギに対する4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノン及びブチュ精油の両方を添加し、さらに2-イソブチルー3-メトキシピラジンを添加した場合の効果について調べた。
【0061】
4-メルカプトー4-メチルー2-ペンタノンについては、試験例1で利用したもの、及びブチュ精油については、試験例2で利用したものを使用した。さらに、2-イソブチルー3-メトキシピラジンについては、市販のものを使用した。評価方法は試験例1で示したものと同様である。評価結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、ブチュオイルに加えて2-イソブチル-3-メトキシピラジンを併用することによってネギ風味がさらに向上することが分かった。2-イソブチル-3-メトキシピラジンについては概ね100ppt~1ppm程度が好ましいことが分かった。