(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143417
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】計測装置、計測方法、および計測プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/242 20210101AFI20230928BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20230928BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61B5/242
G01R33/09
G01R33/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050771
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉嶋 晃士
【テーマコード(参考)】
2G017
4C127
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA03
2G017AA08
2G017AB02
2G017AC09
2G017AD55
2G017BA08
2G017BA15
2G017BA18
4C127AA10
4C127HH13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】計測装置、計測方法、および計測プログラムを提供する。
【解決手段】複数の磁気センサセルを有する磁気センサアレイによって計測された被計測体の計測データを取得する取得部と、被計測体を、設定可能な複数の観測方向のうち指定された観測方向から観測する観測面を設定する観測面設定部と、計測データを用いて、観測面における被計測体からの磁場または電場を示す観測マップを生成する観測マップ生成部と、観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なう表示処理部とを備える計測装置を提供する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁気センサセルを有する磁気センサアレイによって計測された被計測体の計測データを取得する取得部と、
前記被計測体を、設定可能な複数の観測方向のうち指定された観測方向から観測する観測面を設定する観測面設定部と、
前記計測データを用いて、前記観測面における前記被計測体からの磁場または電場を示す観測マップを生成する観測マップ生成部と、
前記観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なう表示処理部と
を備える計測装置。
【請求項2】
前記表示処理部は、前記被計測体と前記観測面との位置関係を示す設定画面を前記表示装置に表示するための表示処理を更に行ない、
前記観測面設定部は、前記設定画面上で前記観測面の位置の指定を受け取ったことに応じて、前記観測面を設定する
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記観測面設定部は、前記設定画面上で、前記観測面についての前記被計測体に対する角度の指定を受け付ける請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記被計測体の診断結果を格納する診断データベースを更に備え、
前記観測面設定部は、前記観測面の位置を登録する指示を受けたことに応じて、前記観測面の位置を、前記被計測体の診断結果の少なくとも一部として前記診断データベースに登録する
請求項1から3のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記表示処理部は、第1の前記観測マップと、前記第1の観測マップの生成に用いた観測面に対応する比較用の第2の観測マップとを前記表示装置に表示するための表示処理を行なう請求項1から4のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記第1の観測マップおよび前記第2の観測マップの乖離度を示す乖離度マップを生成する乖離度マップ生成部を更に備え、
前記表示処理部は、前記乖離度マップを前記表示装置に表示するための表示処理を行なう請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記複数の磁気センサセルのうちの少なくとも1つによって計測された計測データの時間変化を示す波形を生成する波形生成部を更に備え、
前記表示処理部は、生成された前記波形を前記表示装置に表示する波形表示画面の表示処理を行なう
請求項1から6のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項8】
前記表示処理部は、前記被計測体についての第1の前記波形と、前記第1の波形に対応する比較用の第2の波形とを比較可能に前記波形表示画面に表示するための表示処理を行なう請求項7に記載の計測装置。
【請求項9】
前記被計測体についての第1の前記波形および前記第1の波形に対応する比較用の第2の波形のタイミング毎の乖離度を算出する乖離度算出部を更に備え、
前記表示処理部は、タイミング毎の乖離度を前記波形表示画面に表示するための表示処理を行なう請求項7または8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記観測マップ生成部は、タイミングの指定を受け取ったことに応じて、指定されたタイミングにおける前記観測マップを生成する請求項7から9のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項11】
前記被計測体は、検査対象の生体であり、
他の生体を検査対象の前記被計測体の比較対象である他の被計測体とする
請求項5、6、8、または9のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項12】
前記他の被計測体は、比較対象とする健康な他の生体である請求項11に記載の計測装置。
【請求項13】
比較対象とする他の生体の選択に用いる疾患の指定を取得したことに応じて、指定された前記疾患を有する他の生体を比較対象の生体として設定する比較対象設定部を更に備える請求項11に記載の計測装置。
【請求項14】
前記観測マップ生成部は、前記観測面について、前記被計測体からの磁場または電場の時間変化を示す動画像の観測マップを生成し、
前記表示処理部は、前記動画像の観測マップを前記表示装置に表示するための表示処理を行なう
請求項1から13のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項15】
正規直交関数と前記磁気センサアレイの各磁気センサの位置および磁気感度とから計算された基底ベクトルに基づき、前記計測データによって示される入力磁場の空間分布を信号分離する信号空間分離部を更に備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項16】
前記観測マップ生成部は、前記信号分離した結果に基づいて、前記観測面の位置について、外乱磁場成分が分離された計測対象磁場成分の磁場を再構成する請求項15に記載の計測装置。
【請求項17】
計測装置が、複数の磁気センサセルを有する磁気センサアレイによって計測された被計測体の計測データを取得することと、
前記計測装置が、前記被計測体を、設定可能な複数の観測方向のうち指定された観測方向から観測する観測面を設定することと、
前記計測装置が、前記計測データを用いて、前記観測面における前記被計測体からの磁場または電場を示す観測マップを生成することと、
前記計測装置が、前記観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なうことと
を備える計測方法。
【請求項18】
コンピュータにより実行され、前記コンピュータを、
複数の磁気センサセルを有する磁気センサアレイによって計測された被計測体の計測データを取得する取得部と、
前記被計測体を、設定可能な複数の観測方向のうち指定された観測方向から観測する観測面を設定する観測面設定部と、
前記計測データを用いて、前記観測面における前記被計測体からの磁場または電場を示す観測マップを生成する観測マップ生成部と、
前記観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なう表示処理部と
して機能させる計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測方法、および計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「前記計測データを用いて、三次元空間内において指定された平面である仮想センサアレイ面上の1つ以上の位置について前記仮想センサアレイ面に直交する成分の磁場を再構成する磁場再構成部」を備える磁場計測装置が記載されている(請求項1)。特許文献2には、「被検者の生体から発せられる磁場を複数の位置で計測する生体磁場計測装置」において「該演算手段により算出された特徴パラメータを、前記基準データベース記憶手段に記憶された基準データベースをもとに健常者の集団の特徴パラメータと比較する比較手段を備え、更に該比較手段による比較結果に基づき被検者が健常であるかどうかを識別するための識別情報を算出する識別情報算出手段を備え」ることが記載されている(請求項1)。特許文献3には、「生体の状態を示す周期的情報を用いて異常を検出する検出装置」において、「前記部分情報特徴量算出部により算出された特徴量に基づいて、前記部分情報生成部により生成された部分情報の異常を検出する部分情報異常検出部」を備えることが記載されている(請求項1)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2021-177159号公報
[特許文献2] 特開2003-144406号公報
[特許文献3] 特開2021-16630号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、計測装置を提供する。計測装置は、複数の磁気センサセルを有する磁気センサアレイによって計測された被計測体の計測データを取得する取得部を備えてよい。計測装置は、被計測体を複数の観測方向のそれぞれから観測する複数の観測面を設定する観測面設定部を備えてよい。計測装置は、計測データを用いて、複数の観測面のそれぞれにおける被計測体からの磁場または電場を示す複数の観測マップを生成する観測マップ生成部を備えてよい。計測装置は、複数の観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なう表示処理部を備えてよい。
【0004】
表示処理部は、被計測体と観測面との位置関係を示す設定画面を表示装置に表示するための表示処理を更に行なってよい。観測面設定部は、設定画面上で複数の観測面のそれぞれの位置の指定を受け取ったことに応じて、複数の観測面のそれぞれを設定してよい。
【0005】
観測面設定部は、設定画面上で、複数の観測面のそれぞれについての被計測体に対する直交する2方向の角度の指定を受け付けてよい。
【0006】
計測装置は、被計測体の診断結果を格納する診断データベースを更に備えてよい。観測面設定部は、複数の観測面のうち少なくとも1つの観測面の位置を登録する指示を受けたことに応じて、少なくとも1つの観測面の位置を、被計測体の診断結果の少なくとも一部として診断データベースに登録してよい。
【0007】
表示処理部は、複数の観測マップのうちの第1の観測マップと、少なくとも1つの他の被計測体を第1の観測マップの生成に用いた観測面から観測した第2の観測マップとを表示装置に表示するための表示処理を行なってよい。
【0008】
計測装置は、第1の観測マップおよび第2の観測マップの差分を示す差分マップを生成する差分マップ生成部を備えてよい。表示処理部は、差分マップを表示装置に表示するための表示処理を行なってよい。
【0009】
計測装置は、複数の磁気センサセルのうちの少なくとも1つによって計測された計測データの時間変化を示す波形を生成する波形生成部を更に備えてよい。表示処理部は、生成された波形を表示装置に表示する波形表示画面の表示処理を行なってよい。
【0010】
表示処理部は、被計測体についての第1の波形と、第1の波形に対応する、他の被計測体についての第2の波形とを比較可能に波形表示画面に表示するための表示処理を行なってよい。
【0011】
計測装置は、第1の波形および第2の波形のタイミング毎の乖離度を算出する乖離度算出部を備えてよい。表示処理部は、第1の波形および第2の波形と共に、タイミング毎の乖離度を波形表示画面に表示するための表示処理を行なってよい。
【0012】
観測マップ生成部は、波形表示画面上でタイミングの指定を受け取ったことに応じて、指定されたタイミングにおける複数の観測マップを生成してよい。
【0013】
被計測体は、検査対象の生体であってよい。他の被計測体は比較対象とする他の生体であってよい。
【0014】
他の被計測体は、比較対象とする健康な他の生体であってよい。
【0015】
計測装置は、比較対象とする他の生体の選択に用いる疾患の指定を取得したことに応じて、指定された疾患を有する他の生体を比較対象の生体として設定する比較対象設定部を備えてよい。
【0016】
観測マップ生成部は、複数の観測面のうちの少なくとも1つの観測面について、被計測体からの磁場または電場の時間変化を示す動画像の観測マップを生成してよい。表示処理部は、動画像の観測マップを表示装置にスロー表示するための表示処理を行なってよい。
【0017】
正規直交関数と磁気センサアレイの各磁気センサの位置および磁気感度とから計算された基底ベクトルに基づき、計測データによって示される入力磁場の空間分布を信号分離する信号空間分離部を備えてよい。
【0018】
観測マップ生成部は、信号分離した結果に基づいて、複数の観測面のそれぞれにおける1つ以上の位置について、外乱磁場成分が分離された計測対象磁場成分の磁場を再構成してよい。
【0019】
本発明の第2の態様においては、計測方法を提供する。計測方法は、計測装置が、複数の磁気センサセルを有する磁気センサアレイによって計測された被計測体の計測データを取得することを備えてよい。計測方法は、計測装置が、被計測体を複数の観測方向のそれぞれから観測する複数の観測面を設定することを備えてよい。計測方法は、計測装置が、計測データを用いて、複数の観測面のそれぞれにおける被計測体からの磁場または電場を示す複数の観測マップを生成することを備えてよい。計測方法は、計測装置が、複数の観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なうことを備えてよい。
【0020】
本発明の第3の態様においては、コンピュータにより実行される計測プログラムを提供する。計測プログラムは、コンピュータを、複数の磁気センサセルを有する磁気センサアレイによって計測された被計測体の計測データを取得する取得部として機能させてよい。計測プログラムは、コンピュータを、被計測体を複数の観測方向のそれぞれから観測する複数の観測面を設定する観測面設定部として機能させてよい。計測プログラムは、コンピュータを、計測データを用いて、複数の観測面のそれぞれにおける被計測体からの磁場または電場を示す複数の観測マップを生成する観測マップ生成部として機能させてよい。計測プログラムは、コンピュータを、複数の観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なう表示処理部として機能させてよい。
【0021】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る計測装置10の構成を示す。
【
図2】本実施形態に係る磁気センサユニット110の構成を示す。
【
図3】本実施形態に係る磁気センサアレイ210における磁気センサセル220の構成を示す。
【
図4】本実施形態に係る磁気抵抗素子を有する磁気センサの入出力特性の一例を示す。
【
図5】本実施形態に係るセンサ部300の構成例を示す。
【
図6】本実施形態に係るセンサ部300の入出力特性の一例を示す。
【
図7】本実施形態に係る磁気センサ520の構成例を示す。
【
図8】本実施形態に係る磁気センサ520にフィードバック磁場を発生させた時の磁束分布を示す。
【
図9】本実施形態に係る磁気センサアレイ210における複数の磁気センサセル220の配置例を示す。
【
図10】本実施形態に係る磁気センサアレイ210、センサデータ収集部230、およびセンサデータ処理部1000の構成を示す。
【
図11】本実施形態に係る計測装置10が磁場の空間分布を信号分離するフローを示す。
【
図12】本実施形態に係るデータ解析部1200の構成を示す。
【
図13】本実施形態に係るデータ解析部1200による解析処理のフローを示す。
【
図16】本実施形態に係るデータ解析部1200による波形出力のフローを示す。
【
図17】本実施形態に係る波形表示画面1700の一例を示す。
【
図18】本実施形態に係るデータ解析部1200による観測マップ出力のフローを示す。
【
図19】本実施形態に係る観測マップ表示画面1900の一例を示す。
【
図20】本実施形態に係るデータ解析部1200による観測マップ生成のフローを示す。
【
図21】本実施形態に係る計測装置10が仮想センサアレイ面上の1つ以上の位置について再構成した磁場の一例を示す。
【
図22】本実施形態に係る計測装置10が生成した電流マップの一例を示す。
【
図23】本実施形態に係るデータ解析部1200による推測モデル1275の学習処理のフローを示す。
【
図24】本実施形態に係るデータ解析部1200による推測結果出力のフローを示す。
【
図26】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、本実施形態に係る計測装置10の構成を示す。計測装置10は、3軸方向の入力磁場を検出可能な三次元の磁気センサアレイによって磁場を計測する。そして、本実施形態に係る計測装置10は、当該磁気センサアレイによって計測された計測データを用いて、仮想センサアレイ面上の磁場を再構成する。計測装置10による検査対象となる被計測体は、生体であってよい。本実施形態においては、計測装置10が、人間の心臓の電気活動により生成される磁場である心磁を計測する心磁計測装置である場合を一例として説明する。しかしながら、計測対象となる被計測体は、これに限定されるものではない。計測装置10は、人間以外の生体の心磁を計測するために用いられてもよいし、脳磁場等の心磁以外の生体磁場を計測するために用いられてもよい。また、計測装置10は、生体以外の、例えば鉄鋼材料や溶接部の表面および表面化の傷等を検出するための磁気探傷検査のために用いられてもよい。
【0025】
計測装置10は、本体部100と、計測処理装置150とを備える。本体部100は、被検者の心磁をセンシングするためのコンポーネントであり、測定台105と、磁気センサユニット110とを有する。
【0026】
測定台105は、心磁計測時に被計測体である被検者を乗せる基台であり、本図の例においては被検者を仰臥位で支持する。磁気センサユニット110は、心磁計測時に被検者の胸部における心臓に向かう位置に配置され、被検者の心磁をセンシングする。
【0027】
計測処理装置150は、本体部100により計測したデータを処理して表示・印刷等により出力するためのコンポーネントである。計測処理装置150は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。これに代えて、計測処理装置150は、磁場計測の情報処理用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。
【0028】
図2は、本実施形態に係る磁気センサユニット110の構成を示す。磁気センサユニット110は、磁気センサアレイ210およびセンサデータ収集部230を有する。磁気センサアレイ210は、複数の磁気センサセル220を有し、3軸方向の入力磁場を検出可能である。本図は、磁気センサアレイ210において、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれに複数の磁気センサセル220(例えば、X方向に8個、Y方向に8個、およびZ方向に2個の計128個の磁気センサセル220)が配置されている場合を示している。
【0029】
センサデータ収集部230は、磁気センサアレイ210に含まれる複数の磁気センサセル220に電気的に接続され(図示せず。)、複数の磁気センサセル220からのセンサデータ(出力信号)を収集して計測処理装置150へと供給する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る磁気センサアレイ210における磁気センサセル220の構成を示す。複数の磁気センサセル220のそれぞれは、各々が磁気抵抗素子を有する少なくとも1つのセンサ部300を有する。本図においては、複数の磁気センサセル220のそれぞれが、3つのセンサ部300x~z(「センサ部300」と総称する。)を有し、入力磁場を3軸方向で検出可能である場合を一例として示す。しかしながら、複数の磁気センサセル220のいずれもが、3つのセンサ部300x~zを有することには限定されず、磁気センサアレイ210の少なくとも一部で、3軸方向の入力磁場を検出可能であればよい。この際、後述するように、磁気センサアレイ210によって各球面調和関数を空間サンプリングする場合、磁場における角運動量に関連した空間周波数への依存性を検出する必要がある。そのため、磁気センサアレイ210における各センサ部300の配置位置は、少なくとも、方位角方向および天頂角方向において、可能な限り偏りなく配置されているとよい。同様の理由により、磁気センサアレイ210における各センサの感磁軸についても、少なくとも、方位角方向および天頂角方向において可能な限り偏りなく配置されているとよい。センサ部300xはX軸方向に沿って配置されX軸方向の磁場を検出可能である。また、センサ部300yはY軸方向に沿って配置されY軸方向の磁場を検出可能である。また、センサ部300zはZ軸方向に沿って配置されZ軸方向の磁場を検出可能である。本図において一点鎖線で示される拡大図によって示されるように、本実施形態において、各センサ部300は、それぞれ、磁気抵抗素子の両端に磁気収束板が配置されている。したがって、各センサ部300は、磁気収束板に挟まれた狭い位置に配置された磁気抵抗素子を用いて磁場の空間分布をサンプリングすることにより、各軸方向において、空間におけるサンプリング点を明確にすることができる。各センサ部300の構成の詳細については後述する。
【0031】
複数の磁気センサセル220は、X軸方向に沿ってΔx、Y軸方向に沿ってΔy、Z軸方向に沿ってΔzの間隔でそれぞれ等間隔に配列されている。磁気センサアレイ210における各磁気センサセル220の位置は、X方向の位置i、Y方向の位置j、およびZ方向の位置kの組[i,j,k]により表される。ここで、iは1≦i≦Nxを満たす整数であり(NxはX方向に配列された磁気センサセル220の個数を示す)、jは1≦j≦Nyを満たす整数であり(NyはY方向に配列された磁気センサセル220の個数を示す)、kは1≦k≦Nzを満たす整数である(NzはZ方向に配列された磁気センサセル220の個数を示す)。なお、上述の説明では、複数の磁気センサセル220が、各軸方向に沿って等間隔に配列されている場合を一例として示した。しかしながら、これに限定されるものではない。複数の磁気センサセル220は、例えば、X軸方向、Y軸方向、および、Z軸方向の少なくともいずれか一つの軸方向において、それぞれ異なる間隔に配列されていてもよい。
【0032】
本図において、センサ部300x、300y、および300zにより検出する磁場の3軸方向と、磁気センサセル220を配列する三次元の方向とが同一方向である。これにより、測定磁場の分布の各成分の把握が容易となる。しかしながら、検出する磁場の3軸方向と磁気センサセル220を配列する三次元の方向とは異なっていてもよい。例えば、検出する磁場の3軸方向としてX軸、Y軸、およびZ軸に代えて、極座標系のr軸、θ軸、およびφ軸を用いてもよい。また、磁気センサセル220を配列する三次元の方向として、X軸、Y軸およびZ軸に代えて、極座標系のr軸、θ軸、およびφ軸を用いてもよい。検出する磁場の3軸方向と磁気センサセル220を配列する三次元の方向とが異なる場合、磁気センサセル220内におけるセンサ部300の配置や、磁気センサセル220の配列方向に制約を受けることがなく、磁気センサアレイ210の設計の自由度を増すことができる。この場合、磁気センサセル220を小さく構成することができ、このため、このような複数の磁気センサセル220を有する磁気センサアレイ210を小型化することが可能となる。
【0033】
図4は、本実施形態に係る磁気抵抗素子を有する磁気センサの入出力特性の一例を示す。本図は、横軸が磁気センサに入力する入力磁場の大きさBを示し、縦軸が磁気センサの出力信号の大きさV_xMR0を示す。磁気センサは、例えば、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto-Resistance)素子またはトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto-Resistance)素子等を有し、予め定められた一軸方向の磁場の大きさを検出する。
【0034】
このような磁気センサは、入力磁場Bに対する出力信号V_xMR0の傾きである磁気感度が高く、10pT程度の微小な磁場を検出することができる。その一方で、磁気センサは、例えば、入力磁場Bの絶対値が1μT程度で出力信号V_xMR0が飽和してしまい、入出力特性の直線性が良好な範囲が狭い。そこで、このような磁気センサにフィードバック磁場を発生させる閉ループを加えると、磁気センサの直線性を改善することができる。このような磁気センサについて次に説明する。
【0035】
図5は、本実施形態に係るセンサ部300の構成例を示す。センサ部300は、複数の磁気センサセル220のそれぞれの内部に設けられ、磁気センサ520と、磁場生成部530と、出力部540と、を含む。なお、センサ部300の一部、例えば増幅回路532等は、磁気センサセル220側ではなくセンサデータ収集部230側に設けられてもよい。
【0036】
磁気センサ520は、
図4で説明した磁気センサと同様に、GMR素子またはTMR素子等の磁気抵抗素子を有する。また、磁気センサ520のそれぞれは、磁気抵抗素子と磁気抵抗素子の両端に配置された二つの磁気収束板とを含み、磁気抵抗素子は、二つの磁気収束板に挟まれた位置に配置される。磁気センサ520が有する磁気抵抗素子は、感磁軸の正の方向を+X方向とした場合に、+X方向の磁場が入力すると抵抗値が増加し、-X方向の磁場が入力すると抵抗値が減少するように形成されてよい。即ち、磁気センサ520が有する磁気抵抗素子の抵抗値の変化を観測することにより、当該磁気センサ520に入力する入力磁場Bの大きさを検出することができる。例えば、磁気センサ520の磁気感度をSとすると、磁気センサ520の入力磁場Bに対する検出結果は、S×Bと算出できる。なお、磁気センサ520は、一例として、電源等が接続され、抵抗値の変化に応じた電圧降下を、入力磁場Bの検出結果として出力する。磁気センサ520の構成の詳細については後述する。
【0037】
磁場生成部530は、出力部540が出力する出力信号に応じた大きさで、磁気センサ520が検出した入力磁場Bを低減させるフィードバック磁場を発生させ、磁気センサ520に与える。磁場生成部530は、例えば、磁気センサ520に入力する入力磁場Bとは逆向きで、絶対値が当該入力磁場Bと略同一のフィードバック磁場B_FBを発生させ、入力磁場を打ち消すように動作する。磁場生成部530は、増幅回路532と、フィードバックコイル534とを含む。
【0038】
増幅回路532は、磁気センサ520の入力磁場の検出結果に応じた電流をフィードバック電流I_FBとして出力する。磁気センサ520が有する磁気抵抗素子が、少なくとも1つの磁気抵抗素子を含むブリッジ回路により構成される場合、増幅回路532の入力端子対には、ブリッジ回路の出力がそれぞれ接続される。そして、増幅回路532は、ブリッジ回路の出力に応じた電流をフィードバック電流I_FBとして出力する。増幅回路532は、例えば、トランスコンダクタンスアンプを含み、磁気センサ520の出力電圧に応じたフィードバック電流I_FBを出力する。例えば、増幅回路532の電圧・電流変換係数をGとすると、フィードバック電流I_FBは、G×S×Bと算出できる。
【0039】
フィードバックコイル534は、フィードバック電流I_FBに応じたフィードバック磁場B_FBを発生させる。フィードバックコイル534は、磁気センサ520が有する磁気抵抗素子および磁気抵抗素子の両端に配置された二つの磁気収束板を取り囲むように、磁気センサ520が検出対象とする磁場の軸方向に沿って巻かれている。フィードバックコイル534は、磁気センサ520の全体にわたって均一のフィードバック磁場B_FBを発生させることが望ましい。例えば、フィードバックコイル534のコイル係数をβとすると、フィードバック磁場B_FBは、β×I_FBと算出できる。ここで、フィードバック磁場B_FBは、入力磁場Bを打ち消す向きに発生するので、磁気センサ520に入力する磁場は、B-B_FBに低減されることになる。したがって、フィードバック電流I_FBは、次式のように示される。
【数1】
【0040】
(数1)式をフィードバック電流I_FBについて解くと、センサ部300の定常状態におけるフィードバック電流I_FBの値を算出することができる。磁気センサ520の磁気感度Sおよび増幅回路532の電圧・電流変換係数Gが十分に大きいとすると、(数1)式から次式が算出される。
【数2】
【0041】
出力部540は、磁場生成部530がフィードバック磁場B_FBを発生するために流すフィードバック電流I_FBに応じた出力信号V_xMRを出力する。出力部540は、例えば、抵抗値Rの抵抗性素子を有し、当該抵抗性素子にフィードバック電流I_FBが流れることによって生じる電圧降下を出力信号V_xMRとして出力する。この場合、出力信号V_xMRは、(数2)式より次式のように算出される。
【数3】
【0042】
以上のように、センサ部300は、外部から入力する磁場を低減させるフィードバック磁場を発生するので、磁気センサ520に実質的に入力する磁場を低減させる。これにより、センサ部300は、例えば、磁気センサ520として
図4に示した非線形性であり、動作磁場範囲が狭い特性を有する磁気抵抗素子を用い、入力磁場Bの絶対値が1μTを超えても、出力信号V_xMRが飽和することを防止できる。このようなセンサ部300の入出力特性を次に説明する。
【0043】
図6は、本実施形態に係るセンサ部300の入出力特性の一例を示す。本図は、横軸がセンサ部300に入力する入力磁場の大きさBを示し、縦軸がセンサ部300の出力信号の大きさV_xMRを示す。センサ部300は、磁気感度が高く、10pT程度の微小な磁場を検出することができる。また、センサ部300は、例えば、入力磁場Bの絶対値が100μTを超えても、出力信号V_xMRの良好な線形性を保つことができる。
【0044】
即ち、本実施形態に係るセンサ部300は、例えば、入力磁場Bの絶対値が数百μT以下といった、予め定められた入力磁場Bの範囲において、当該入力磁場Bに対する検出結果が線形性を有するように構成される。このようなセンサ部300を用いることにより、心磁信号のように微弱な磁気的信号を簡便に検出することができる。
【0045】
図7は、本実施形態に係る磁気センサ520の構成例を示す。本図において、磁気センサ520は、磁気抵抗素子710と、磁気抵抗素子710の両端に配置された磁気収束板720および730とを有する。磁気収束板720および730は、磁気抵抗素子710を間に挟むように、磁気抵抗素子710の両端に配置されている。本図において、磁気収束板720は、感磁軸に沿って磁気抵抗素子710の負側に設けられ、磁気収束板730は、感磁軸に沿って磁気抵抗素子710の正側に設けられている。なお、ここで、感磁軸は、磁気抵抗素子710を形成する磁化固定層において固定された磁化の方向に沿っていてよい。また、感磁軸の負側から正側に向かって磁場が入力されると、磁気抵抗素子710の抵抗は増加または減少してよい。磁気収束板720および730は、例えばパーマロイ等の透磁率の高い材料により形成される。そして、磁気センサ520が本図に示すように構成される場合、フィードバックコイル534は、磁気抵抗素子710と、磁気抵抗素子710の両端に配置された磁気収束板720および730との断面を取り囲むように、磁気センサ520が検出対象とする磁場の軸方向に沿って巻かれている。また、磁気センサ520は、1つの磁気センサ520内に複数の磁気抵抗素子710を有する場合、磁気抵抗素子およびその両端に配置された磁気収束板を含む組を複数有してもよい。その場合、磁気抵抗素子およびその両端に配置された磁気収束板を含む組を1つのコイルで取り囲むようにフィードバックコイル534が巻かれてもよい。
【0046】
このような磁気センサ520において、感磁軸の負側から正側に磁場が入力されると、透磁率の高い材料で形成された磁気収束板720および730が磁化されることにより、本図において破線で示すような磁束の分布が発生する。すると、磁気収束板720および730が磁化されることにより発生する磁束は、二つの磁気収束板720および730の間に挟まれた磁気抵抗素子710の位置を通過することとなる。このため、磁気抵抗素子710の位置における磁束密度は、磁気収束板720および730を配置することによって大幅に増加させることができる。また、本図のように、磁気収束板720および730に挟まれた狭い位置に配置された磁気抵抗素子710を用いて磁場の空間分布をサンプリングすることにより、空間におけるサンプリング点を明確にすることができる。
【0047】
図8は、本実施形態に係る磁気センサ520にフィードバック磁場を発生させた時の磁束分布を示す。
図8においては、
図7と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。本実施形態に係る磁気センサ520において、フィードバックコイル534にフィードバック電流が供給されると、フィードバックコイル534がフィードバック磁場を発生させることにより、本図において一点鎖線で示すような磁束の分布が発生する。このフィードバック磁場により発生する磁束は、磁気抵抗素子710に入力され磁気収束板720および730によって磁気増幅された磁場の空間分布をキャンセルするように空間分布する。このため、磁気センサ520は、本図に示すように磁気抵抗素子710の両端に磁気収束板720および730が配置されている場合には、磁気抵抗素子710の位置における磁場分布をフィードバック磁場によって正確にキャンセルすることができるため、入力磁場と出力電圧との間の線形性が高いセンサを実現することができる。
【0048】
図9は、本実施形態に係る磁気センサアレイ210における複数の磁気センサセル220の配置例を示す。
図2および
図3においては、説明の便宜上、磁気センサアレイ210が平面状であるように示した。しかしながら、実際には、磁気センサアレイ210は、本図に示すように、複数の磁気センサセル220がそれぞれ一方向に湾曲させた2つの曲面の間の格子点に配置されるように三次元に配列して構成されてよい。それぞれ一方向に湾曲させた2つの曲面とは、例えば、同一の軸および互いに異なる径を有する2つの円筒面それぞれの一部であってよい。それぞれ一方向に湾曲させた2つの曲面の湾曲の度合いは同一であってもよいし、異なっていてもよい。一例として、磁気センサアレイ210は、複数の磁気センサセル220を断面視円弧状に三次元に配列して構成されてよい。
【0049】
すなわち、複数の磁気センサセル220は、被計測体(被検者)の重心を中心として、被計測体の胸部に沿うように断面視円弧状に配列されてよい。この際、各磁気センサセル220は、三次元格子空間におけるそれぞれ一方向に湾曲させた2つの曲面の間の格子点にそれぞれ配置されている。なお、ここで、格子点とは、X方向、Y方向およびZ方向にそれぞれ予め定められた間隔で等間隔に設けられた格子状の点である。一例として、各磁気センサセル220は、X方向、Y方向およびZ方向のいずれか一の方向から見たときに、一の方向に直交する方向に凸を有する曲面に沿うように配置されている。本図においては、各磁気センサセル220が、Y方向から見たときに、Z軸のプラス方向に凸を有する曲面に沿うように配置されている例を示す。そして、磁気センサアレイ210は、例えば、各磁気センサセル220の各頂点が、Z軸のプラス方向に凸を有する予め定められた曲面を超えない範囲で、できる限りZ軸のマイナス方向に配置されるように、各磁気センサセル220を三次元格子空間における格子点にそれぞれ配置することで、Z軸のプラス方向に凸を有する曲面形状を形成してよい。
【0050】
より詳細には、本図断面視において、内側(Z軸マイナス側)の複数の磁気センサセル220、すなわち、磁気センサセル220[1,j,1]~220[8,j,1]が、符号910で示される磁気センサアレイ210の内接円の外部に配置されるように、符号915の一点鎖線で示される円弧の外部に配列される。また、外側(Z軸プラス側)の複数の磁気センサセル220、すなわち、磁気センサセル220[1,j,2]~220[8,j,2]が、符号920で示される磁気センサアレイ210の外接円の内部に配置されるように、符号925の二点鎖線で示される円弧の内部に配列される。これら内接円、外接円の中心は共通であり、後述の信号分離計算における座標原点と一致する。
【0051】
これにより、磁気センサアレイ210は、心臓に対向する一方向だけでなく多方向にセンサ部を配置させることができ、心磁を多方向からセンシングすることができる。また、本実施形態に係る磁気センサアレイ210は、一例として磁気センサセル220を直方体状に形成しているため、磁気センサアレイ210の形状を容易に変更することができる。すなわち、本実施形態に係る磁気センサアレイ210は、磁気センサセル220を格子点に配置して構成可能な様々な形状を採ることができ、設計の自由度が高い。したがって、磁気センサアレイ210は、本図に示すように、複数の磁気センサセル220を三次元の空間においてそれぞれ一方向に湾曲させた2つの曲面の間の格子点に配置することで、三次元の空間において曲面形状を容易に形成することができる。そして、計測装置10は、被計測体の胸部が曲面の中心側に位置するように、すなわち、計測対象磁場源である心臓が曲面の中心側に位置するように磁気センサアレイ210を配置して磁場を計測する。これにより、計測装置10は、計測対象磁場源である心臓に近い位置で計測した計測データを用いて信号空間分離する(後述する)ことで、高精度に計測対象磁場と外乱磁場とを分離することができる。なお、この際、磁気センサアレイ210は、曲面の曲率が被計測体の胸部周りの曲率と略同等であると、計測対象磁場源である心臓により近い位置で磁場を計測できるため、好ましい。
【0052】
図10は、本実施形態に係る磁気センサアレイ210、センサデータ収集部230、および、センサデータ処理部1000の構成を示す。
【0053】
磁気センサアレイ210は、各々が少なくとも1つのセンサ部300を有する複数の磁気センサセル220により構成され、磁気センサアレイ210全体として、3軸方向の入力磁場を検出可能である。本図においては、磁気センサアレイ210が、M個のセンサ部300[1]~300[M]を有する場合を一例として示している。各センサ部300は、
図5に示したGMR素子またはTMR素子等の磁気抵抗素子を用いたものであってよい。これに代えて、各センサ部300は、光ポンピング等の他の磁気センシング技術を用いて入力磁場を検出するものであってもよい。
【0054】
センサデータ収集部230は、複数のAD変換器232およびクロック発生器234を有する。複数のAD変換器232は、複数のセンサ部300[1]~300[M]のそれぞれに対応して設けられており、対応するセンサ部300が出力するアナログの出力信号(
図6のV_xMR)をデジタルの計測データV[1]~V[M]にそれぞれ変換する。
【0055】
クロック発生器234は、サンプリングクロックを発生させ、共通のサンプリングクロックを複数のAD変換器232のそれぞれへ供給する。そして、複数のAD変換器232のそれぞれは、クロック発生器234から供給された共通のサンプリングクロックに応じてAD変換を行う。したがって、異なる位置に設けられた複数のセンサ部300[1]~300[M]の出力をそれぞれAD変換する複数のAD変換器232の全てが同期動作をする。これにより、複数のAD変換器232は、異なる空間に設けられた複数のセンサ部300[1]~300[M]の検出結果を同時にサンプリングすることができる。
【0056】
センサデータ処理部1000は、計測処理装置150内に設けられる。センサデータ処理部1000は、複数のセンサ部300[1]~300[M]のそれぞれに対応して設けられた複数の計測データ取得部1020および複数のデータ出力部1040と、基底ベクトル記憶部1050と、信号空間分離部1060とを有する。
【0057】
計測データ取得部1020は、取得部の一例であり、磁気センサアレイ210によって計測された被計測体の計測データを取得する。計測データ取得部1020は、対応するセンサ部300に接続された複数のAD変換器232のそれぞれに接続され、磁気センサアレイ210が有する複数のセンサ部300[1]~300[M]によって計測された計測データV[1]~V[M]をそれぞれ取得する。具体的に、計測データ取得部1020は、AD変換器232によってデジタルに変換されたデジタルの計測データVを所定のタイミングTでラッチして取得するフリップフロップ等を用いて構成されてよい。
【0058】
データ出力部1040は、複数の計測データ取得部1020のそれぞれから供給された計測データV[1]~V[M]を各センサ信号成分Φ[1]~Φ[M]とした、センサアレイ信号Φを信号空間分離部1060に供給する。
【0059】
基底ベクトル記憶部1050は、信号空間分離部1060がセンサアレイ信号Φを信号分離するために必要な基底ベクトルを記憶し、これを信号空間分離部1060へ供給する。
【0060】
信号空間分離部1060は、データ出力部1040からセンサアレイ信号Φの各成分として供給された計測データV[1]~V[M]によって示される入力磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイ210で検出した場合に複数の磁気センサ520のそれぞれが出力する信号を各信号成分として有するベクトル信号を基底ベクトルとして信号分離する。すなわち、信号空間分離部1060は、正規直交関数と磁気センサアレイ210の各磁気センサ520の位置および磁気感度とから計算された基底ベクトルに基づき、計測データV[1]~V[M]によって示される入力磁場の空間分布を信号分離する。この際、信号空間分離部1060は、信号分離に必要な基底ベクトルを、基底ベクトル記憶部1050から取得する。そして、信号空間分離部1060は、基底ベクトル記憶部1050から取得した基底ベクトルを用いて、計測データV[1]~V[M]によって示される磁場の空間分布を、計測対象磁場(信号源空間信号)と外乱磁場(外乱空間信号)とに信号分離する。信号空間分離部1060は、信号分離した結果をデータ解析部1200へ供給する。これについては後述する。また、本実施形態に係る信号空間分離部1060は、クロック発生器234が発生するサンプリングクロックのタイミングで取得される計測データV[1]~V[M]の時系列データ自体もデータ解析部1200に供給する。
【0061】
図11は、本実施形態に係る計測装置10が磁場の空間分布を信号分離するフローを示す。ステップ1110において、基底ベクトル記憶部1050は、基底ベクトルを記憶する。一例として、基底ベクトル記憶部1050は、磁気センサアレイ210が各センサの誤差が無く理想的に作られたものと仮定してシミュレーションした結果により予め決められている信号ベクトルを、基底ベクトルとして記憶してよい。また、基底ベクトル記憶部1050は、予め定められたキャリブレーション磁場を磁気センサユニット110に与え、キャリブレーション磁場の空間分布を信号空間分離部1060が信号分離した場合における分離誤差を最小化するように最適化された基底ベクトルを記憶してよい。
【0062】
次に、ステップ1120において、信号空間分離部1060は、磁気センサアレイ210によって計測されたセンサアレイ信号Φ、すなわち、計測データV[1]~V[M]を、データ出力部1040から取得する。
【0063】
また、ステップ1130において、信号空間分離部1060は、ステップ1110において基底ベクトル記憶部1050が基底ベクトルとして記憶した信号ベクトルを、基底ベクトル記憶部1050から取得する。なお、本フローにおいて、ステップ1120とステップ1130とはどちらが先に行われてもよい。
【0064】
ステップ1140において、信号空間分離部1060は、ステップ1120において取得した計測データV[1]~V[M]によって示される磁場の空間分布を、ステップ1130において取得した信号ベクトルを基底ベクトルとして利用して級数展開する。そして、信号空間分離部1060は、級数展開によって得られたベクトルから、磁場の空間分布を計測対象磁場と外乱磁場とに信号分離する。すなわち、信号空間分離部1060は、計測データV[1]~V[M]によって示される入力磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイ210で検出した場合に磁気センサ520のそれぞれが出力する信号を各信号成分として有するベクトル信号を基底ベクトルとして信号分離する。すなわち、信号空間分離部1060は、正規直交関数と磁気センサアレイ210の各磁気センサ520の位置および磁気感度とから計算された基底ベクトルに基づき、計測データV[1]~V[M]によって示される入力磁場の空間分布を信号分離する。ここで、正規直交関数は球面調和関数であってよい。また、信号空間分離部1060は、信号分離するにあたって、基底ベクトルの係数を最小2乗法により計算する。以下、これについて詳細に説明する。
【0065】
磁気センサアレイ210を構成する各センサが配置される位置に関して、座標原点からの位置を表す位置ベクトルrの位置において、電流i(r)=0であるとき、静磁場B(r)は、ラプラス方程式Δ・V(r)=0を満たすポテンシャルV(r)を用いて、次式のように、ポテンシャルV(r)の空間勾配(gradient)として求められる。ここで、Δはラプラシアンであり、μは透磁率であり、∇はベクトル微分演算を表す演算子である。
【数4】
【0066】
そして、ラプラス方程式の解は、一般に、正規直交関数系である球面調和関数Y
l,m(θ,φ)を使った級数展開の形での解を持つため、ポテンシャルV(r)は次式で表すことができる。ここで、|r|は位置ベクトルrの絶対値(座標原点からの距離)であり、θおよびφは球座標における2つの偏角であり、lは方位量子数であり、mは磁気量子数であり、αおよびβは多極モーメントであり、LinおよびLoutはそれぞれ被計測体から見て磁気センサアレイ210の手前の空間と奥の空間のそれぞれについての級数の数である。方位量子数lは正の整数をとり、磁気量子数mは-lから+lまでの整数をとる。すなわち、例えばlが1のとき、mは-1、0、および1であり、例えばlが2のとき、mは-2、-1、0、1、および2である。なお、磁場においては単磁極が存在しないことから、(数5)において方位量子数lは、0からではなく1から始まっている。(数5)における第1項は、座標原点からの距離に反比例する項であり、座標原点から見て磁気センサアレイ210の手前の空間に存在するポテンシャルを示している。また、(数5)における第2項は、座標原点からの距離に比例する項であり、座標原点から見て磁気センサアレイ210の奥の空間に存在するポテンシャルを示している。
【数5】
【0067】
したがって、(数4)および(数5)によれば、静磁場B(r)は、次式で表すことができる。ここで、(数6)における第1項は、被計測体から見て磁気センサアレイ210の手前の空間に存在する磁場源、すなわち、例えば、心臓の電気活動が作る心磁(計測対象磁場)を示している。また、(数6)における第2項は、被計測体から見て磁気センサアレイ210の奥の空間に存在する磁場源が作る外乱磁場を示している。
【数6】
【0068】
球面調和関数を使った級数展開の形でラプラス方程式の解を表した場合、その一般解は無限級数となるが、生体磁場を計測するのに十分なSNR(信号ノイズ比、すなわち、外乱磁場及びセンサノイズに対する計測対象磁場信号の比)が得られればよく、実際には10項程度の級数で表せば十分であると言われている。また、脳磁計における信号空間分離の級数については、Lin=8、Lout=3程度でよいと言われている。したがって、本実施形態においても、Lin=8、Lout=3の場合を一例として説明する。しかしながら、LinおよびLoutの値は、これに限定されるものではなく、外乱磁場を十分抑制し計測対象磁場だけを算出するのに十分な、いかなる数値であってもよい。
【0069】
ここで、センサアレイ信号Φは、M次元のベクトルからなり、ベクトルの各信号成分は、各センサ部300の磁気センサ520が配置された位置ベクトルr[m]における磁場ベクトルB(r[m])と、各磁気センサ520の磁気感度ベクトルS[m]の内積となる。したがって、各磁気センサ520について、それぞれが磁気感度ベクトルS[m]=(S[m],x、 S[m],y、 S[m],z)を持つ場合、センサアレイ信号Φは、次式で表される。
【数7】
【0070】
すなわち、各センサ信号成分Φ[m]は、次式で表される。
【数8】
【0071】
したがって、基底ベクトルa
l,mおよびb
l,mは、次式のように定義される。
【数9】
【0072】
ここで、A、B、Xin、およびXoutをそれぞれ次のように定義する。すなわち、Aを、l=1からL=Linまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各ベクトルaを順に列に並べた、計Lin・(Lin+2)列のベクトルと定義する。また、Bを、l=1からL=Loutまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各ベクトルbを順に列に並べた、計Lout・(Lout+2)列のベクトルと定義する。また、Xinを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各多極モーメントαを順に列に並べたベクトルを転置した、計Lin・(Lin+2)行のベクトルと定義する。また、Xoutを、l=1からl=Loutまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各多極モーメントβを順に並べたベクトルを転置した、計Lout・(Lout+2)行のベクトルと定義する。
【数10】
【0073】
そうすると、センサアレイ信号Φは、次式に示すように、基底ベクトル行列[A B]と縦ベクトルXの内積の形で表すことができる。ここで、基底ベクトル行列[A B]は、基底ベクトルを示し、例えば、ステップ1130において、信号空間分離部1060が基底ベクトル記憶部1050から取得したものである。また、縦ベクトルXは、基底ベクトルに係る係数を示す。
【数11】
【0074】
信号空間分離部1060は、ステップ1140において、この(数11)で得られたモデル式に基づいて、次式を用いて、Φ=[A B]・Xを最小2乗近似で満たす縦ベクトル^X(ここで、「^X」は、(数12)における左辺を示し、Xのハット(推定値)を意味するものとする。)を決定する。
【数12】
【0075】
したがって、信号空間分離部1060は、最小2乗解のM次元ベクトルとして、センサアレイ信号のハット^Φを、次式により表すことができる。これにより、信号空間分離部1060は、ステップ1140において、磁場の空間分布を解くことができる。
【数13】
【0076】
これにより、本実施形態に係る計測装置10によれば、複数の磁気センサセル220を有し、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイ210を用いて計測された計測データV[1]~V[M]によって示される磁場の空間分布を、計測対象磁場成分^Xin・Aと外乱磁場成分^Xout・Bとに信号分離することができる。本実施形態に係る計測装置10によれば、複数のセンサ部300がそれぞれ磁気収束板を有するので、センサ部300の磁気感度を高めるとともに、空間サンプリング点を明確化することができ、信号空間分離技術との親和性をより高めることができる。
【0077】
図12は、本実施形態に係るデータ解析部1200の構成を示す。本実施形態において、データ解析部1200は、センサデータ処理部1000と共に計測処理装置150内に設けられる。データ解析部1200は、被計測体に生じる磁場の空間分布をセンサデータ処理部1000から取得する。そして、データ解析部1200は、取得した磁場の空間分布を用いて、被計測体の解析処理を行なう。
【0078】
データ解析部1200は、1または複数の被計測体について解析に用いる情報を蓄積する。また、データ解析部1200は、蓄積した情報を用いて被計測体を解析してよい。これを実現するために、本実施形態に係るデータ解析部1200は、基本情報入力部1205と、データ取得部1207と、診断入力部1210と、診断DB(データベース)1215と、診断DB接続部1220とを備える。
【0079】
基本情報入力部1205は、1または複数の被計測体のそれぞれの基本情報を計測装置10のユーザから入力する。被計測体が心磁計測の被検者である場合、基本情報入力部1205は、被検者の年齢、性別、およびその他の情報を取得する。
【0080】
データ取得部1207は、センサデータ処理部1000に接続される。データ取得部1207は、磁気センサアレイ210によって計測された被計測体の計測データをセンサデータ処理部1000による加工済みのデータ形式で取得する。本実施形態において、データ取得部1207は、磁気センサアレイ210によって計測された各タイミングにおける被計測体の計測データと、センサデータ処理部1000によって生成された各タイミングにおける被計測体の磁場の空間分布とを含むデータを取得する。
【0081】
診断入力部1210は、1または複数の被計測体のそれぞれの診断結果を計測装置10のユーザから入力する。被計測体が心磁計測の被検者である場合、診断入力部1210は、被検者を診察した医師等のユーザから、被検者が健常か否か、および被検者が健常でない場合には心疾患の種類等の診断結果を入力する。
【0082】
診断DB1215は、1または複数の被計測体のそれぞれに対応付けて、基本情報入力部1205により取得された基本情報、データ取得部1207により取得された各タイミングにおける被計測体の計測データ、および被計測体の磁場の空間分布を含む被計測体の診断結果を記憶する。診断DB1215は、被計測体の診断が行なわれた場合には、診断された被計測体に対応付けて、診断入力部1210により取得された診断結果を記憶する。また、診断DB1215は、検査対象の被計測体の計測データまたは磁場の空間分布との比較対象となる計測データまたは磁場の空間分布を記憶してもよい。例えば、診断DB1215は、特定の健常者の計測データ等、健常者の標準的な計測データ等、特定の疾患を有する特定の患者の計測データ等、特定の疾患を有する患者の標準的な計測データ等の、リファレンスデータを記憶してもよい。
【0083】
本実施形態において、診断DB1215は、データ解析部1200内に設けられる。これに代えて、診断DB1215は、NAS(Network Attached Storage)またはクラウド上のストレージ等であってよく、計測処理装置150の外部に設けられてもよい。
【0084】
診断DB接続部1220は、基本情報入力部1205、データ取得部1207、および診断入力部1210に接続される。診断DB接続部1220は、基本情報入力部1205からの基本情報、データ取得部1207からのデータ、および診断入力部1210からの診断結果を受け取り、診断DB1215へと格納する。また、診断DB接続部1220は、データ解析部1200内の各コンポーネントからの要求に応じて診断DB1215をアクセスする。
【0085】
解析処理部1225は、診断DB接続部1220に接続される。解析処理部1225は、診断DB接続部1220を介して診断DB1215に格納された被計測体のデータを解析する。本実施形態において、解析処理部1225は、磁気センサアレイ210に含まれる少なくとも1つの磁気センサセル220により計測された時系列の計測データを解析して、例えばP波の幅および高さ、並びに、QRS波の幅および高さ等の、心磁波形または心電波形から得られる心臓の状態を表す各種のパラメータを算出する。解析処理部1225は、被計測体の解析結果を診断DB接続部1220を介して診断DB1215に格納する。
【0086】
データ解析部1200は、被計測体に生じる磁場の波形の解析を可能としてよい。本実施形態においては、データ解析部1200は、被計測体の心磁波形の解析を可能とする。これを実現するために、本実施形態に係るデータ解析部1200は、波形指定部1230と、比較対象設定部1235と、波形生成部1240と、乖離度算出部1245とを備えてよい。
【0087】
波形指定部1230は、診断DB接続部1220に接続される。波形指定部1230は、複数の磁気センサセル220のうちいずれの磁気センサセル220により計測された計測データによる波形を選択するかの指定を入力する。比較対象設定部1235は、検査対象とする被計測体との比較対象の指定を入力し、比較対象を設定する。ここで、検査対象とする被計測体の比較対象は、少なくとも1つの他の被計測体であってよい。比較対象である他の被計測体は、他の生体であってよい。比較対象である他の被計測体は、理論値等を用いて生成された、健常者のデータまたは特定の疾患を有する生体モデルであってもよい。比較対象としての「他の被計測体」は、このような生体モデルを含むものとする。
【0088】
比較対象設定部1235は、ユーザの指定に応じて、健康な他の生体を診断DB1215から検索し、比較対象として設定してもよい。比較対象設定部1235は、健康な他の複数の生体の平均等を用いて比較用の健常者の生体モデルを生成し、比較対象の被計測体として設定してもよい。また、比較対象設定部1235は、比較対象とする他の生体の選択に用いる疾患の指定を取得したことに応じて、指定された疾患を有する他の生体を診断DB1215から検索し、比較対象の生体として設定してもよい。比較対象設定部1235は、指定された疾患を有する他の複数の生体の平均等を用いて比較用の生体モデルを生成し、比較対象の被計測体として設定してもよい。また、比較対象設定部1235は、ユーザの指定に応じて、診断対象とする被計測体と共通する属性を有する人等の選択を入力してよい。
【0089】
波形生成部1240は、診断DB接続部1220、波形指定部1230、および比較対象設定部1235に接続される。波形生成部1240は、複数の磁気センサセル220のうち波形指定部1230によって指定された少なくとも1つの磁気センサセル220によって計測された計測データの時間変化を示す波形を生成する。ここで、波形生成部1240は、検査対象とする被計測体についての第1の波形と、第1の波形に対応する、比較用の第2の波形とを生成する。比較用の第2の波形は、他の被計測体(生体または生体モデル)についての波形であってよく、予め定められたリファレンス波形等の、第1の波形と比較可能な他の波形であってもよい。
【0090】
乖離度算出部1245は、波形生成部1240に接続される。乖離度算出部1245は、検査対象とする被計測体についての第1の波形と、比較用の第2の波形とのタイミング毎の乖離度を算出する。
【0091】
データ解析部1200は、被計測体に生じる磁場または電場の観測マップの解析を可能としてよい。これを実現するために、本実施形態に係るデータ解析部1200は、タイミング指定部1250と、観測面設定部1255と、観測マップ生成部1260と、乖離度マップ生成部1265とを備えてよい。
【0092】
タイミング指定部1250は、検査対象の被計測体について磁場の空間分布を取得した各タイミングの中から、観測マップを生成するタイミングの指定をユーザから入力する。観測面設定部1255は、被計測体を、設定可能な複数の観測方向のうち指定された観測方向から観測する観測面を設定する。観測面設定部1255は、ユーザからの指定を受けて、被計測体を1または複数の観測方向のそれぞれから観測する1または複数の観測面を設定してよい。観測面設定部1255は、被計測体を、予め指定された1または複数の観測方向のそれぞれから観測する1または複数の観測面を設定してもよい。
【0093】
観測マップ生成部1260は、診断DB接続部1220、タイミング指定部1250、および観測面設定部1255に接続される。観測マップ生成部1260は、タイミング指定部1250により指定されたタイミングにおける検査対象の被計測体の計測データを用いて、観測面設定部1255により設定された1または複数の観測面における被計測体からの磁場または電場を示す1または複数の観測マップを生成する。本実施形態において、観測マップ生成部1260は、センサデータ処理部1000によって生成された被計測体の磁場の空間分布を用いることにより、被計測体の計測データを間接的に用いて観測マップを生成する。また、観測マップ生成部1260は、タイミング指定部1250により指定されたタイミングにおける比較対象となる計測データを用いて、1または複数の観測マップのうちの第1の観測マップについて、第1の観測マップの生成に用いた観測面に対応する比較用の第2の観測マップを生成する。
【0094】
観測マップ生成部1260は、タイミング指定部1250により指定されたタイミングにおける比較対象となる少なくとも1つの他の被計測体の計測データを用いて、1または複数の観測マップのうちの第1の観測マップについて、少なくとも1つの他の被計測体を第1の観測マップの生成に用いた観測面から観測した第2の観測マップを生成してよい。ここで、観測マップ生成部1260は、理論値等を用いて生成された、健常者のデータまたは特定の疾患を有する生体のデータ等を含む生体モデルを比較対象の他の被計測体として用いて、比較対象の生体モデルで表される生体を計測したと仮定した場合に得られる計測データを計算することにより、比較用の第2の観測マップを生成してもよい。
【0095】
本実施形態において、観測マップ生成部1260は、センサアレイ信号Φの各成分として供給された計測データV[1]~V[M]を用いて、三次元空間内において指定された平面である観測面(「仮想センサアレイ面」とも示す。)上の1つ以上の位置について仮想センサアレイ面に直交する成分の磁場を再構成する。この際、観測マップ生成部1260は、信号空間分離部1060が信号分離した結果に基づいて、仮想センサアレイ面上の1つ以上の位置について、外乱磁場成分が分離された計測対象磁場成分の磁場を再構成してよい。
【0096】
そして、観測マップ生成部1260は、仮想センサアレイ面上の複数の位置について再構成した磁場を用いて、被計測体の電気活動による活動電流の状態を仮想センサアレイ面に投影した電流マップを生成する。ここで、「電流マップ」は、観測マップの一例である。この際、観測マップ生成部1260は、仮想センサアレイ面上の複数の位置のそれぞれについて再構成した磁場と、隣接する位置について再構成した磁場との差分に基づいて、複数の位置における電流ベクトルを示す電流アローマップを生成してよい。
【0097】
乖離度マップ生成部1265は、診断DB接続部1220および観測マップ生成部1260に接続される。乖離度マップ生成部1265は、検査対象の被計測体についての第1の観測マップと、比較用の第2の観測マップとの差分または比等の乖離度を示す乖離度マップを生成する。
【0098】
データ解析部1200は、被計測体について蓄積した情報を用いて、被計測体の状態を推測してよい。これを実現するために、本実施形態に係るデータ解析部1200は、推測部1270と、学習処理部1285とを備えてよい。
【0099】
推測部1270は、診断DB接続部1220に接続される。推測部1270は、検査対象の被計測体について診断DB1215に格納された基本情報、解析結果、および磁場の空間分布のうちの少なくとも1つに基づいて、被計測体の状態を推測する。本実施形態においては、推測部1270は、少なくとも1つのタイミングにおける被計測体の磁場の空間分布を含む入力パラメータを入力とし、入力パラメータに応じて被計測体の罹患確率を推測する推測モデル1275を用いて、被計測体の状態を推測する。
【0100】
学習処理部1285は、診断DB接続部1220に接続される。学習処理部1285は、診断DB1215に格納された、複数の被計測体のそれぞれについてのデータを用いて推測モデル1275を学習により生成する。学習処理部1285は、生成した推測モデル1275を推測部1270に提供する。
【0101】
表示処理部1280は、診断DB接続部1220、解析処理部1225、乖離度算出部1245、乖離度マップ生成部1265、および推測部1270に接続される。表示処理部1280は、診断DB1215に格納された被計測体に関する情報、解析処理部1225による被計測体の解析結果、波形生成部1240および乖離度算出部1245により生成された波形および乖離度、観測マップ生成部1260および乖離度マップ生成部1265により生成された観測マップおよび乖離度マップ、並びに推測部1270による被計測体の状態の推測結果を表示装置に表示させる表示処理を行なう。ここで、表示処理を行うとは、表示装置上に実際に画面を表示することに限られず、計測処理装置150の外部に接続された表示装置または計測装置10のユーザが使用する端末等のリモートの表示装置に画面を表示するための表示データを生成することを含む。
【0102】
なお、説明の便宜上不図示であるが、表示処理部1280は、ユーザの入力を受け付ける基本情報入力部1205、診断入力部1210、波形指定部1230、比較対象設定部1235、タイミング指定部1250、および観測面設定部1255にも接続される。表示処理部1280は、これらのコンポーネントからの指示を受けて、これらのコンポーネントがユーザからの入力を受け付けるためにユーザに提示するべき入力欄、説明、および情報等の表示処理を行なう。
【0103】
図13は、本実施形態に係るデータ解析部1200による解析処理のフローを示す。データ解析部1200は、複数の被計測体のそれぞれに対して、本図のフローに示す解析処理を行なってよい。
【0104】
ステップS1310(S1310)において、基本情報入力部1205は、今回の検査対象となる被計測体の基本情報の入力をユーザから受け付ける。これに代えて、基本情報入力部1205は、他のシステム等に予め登録されている被計測体の基本情報を受信することにより取得してもよい。基本情報入力部1205は、取得した基本情報を、検査対象となる被計測体に対応付けて診断DB1215に格納する。
【0105】
S1320において、データ取得部1207は、検査対象の被計測体の計測データと、被計測体による磁場の空間分布とを含むデータを取得する。ここで、
図10に示したように、センサデータ処理部1000は、予め定められた期間内の連続する各タイミングにおいて磁気センサアレイ210によって計測された計測データを取得し、センサデータ処理部1000は、これらの各タイミングにおける磁場の空間分布を生成する。したがって、データ取得部1207は、連続する各タイミングにおける計測データ、および磁場の空間分布を取得する。データ取得部1207は、取得した計測データ、および磁場の空間分布を診断DB1215に格納する。
【0106】
S1330において、診断入力部1210は、検査対象の被計測体の診断結果を医師等のユーザから入力する。診断入力部1210は、検査対象の被計測体に対応付けて、診断結果を診断DB1215に格納する。なお、データ解析部1200は、表示処理部1280によって、解析処理部1225による解析結果、波形生成部1240および乖離度算出部1245により生成される各種の波形、観測マップ生成部1260および乖離度マップ生成部1265により生成される観測マップおよび乖離度マップ、ならびに推測部1270による被計測体の状態の推測結果等の様々な情報をユーザに提供する。計測装置10のユーザは、データ解析部1200が提供する情報を総合的に利用して、被計測体を診断してよい。この場合、診断入力部1210は、S1330の時点では診断結果を受け取らず、表示処理部1280による各種の表示を行なった後に診断結果を受け取ってよい。
【0107】
S1340において、解析処理部1225は、検査対象の被計測体に対応付けて診断DB1215に格納されたデータを診断DB接続部1220を介して取得して解析する。解析処理部1225は、磁気センサセル220により計測された時系列の計測データから心磁波形または心電波形を生成して、心臓の状態を表す各種のパラメータを算出する。解析処理部1225は、被計測体の解析結果を診断DB接続部1220を介して診断DB1215に格納する。
【0108】
S1350において、表示処理部1280は、検査対象の被計測体の基本情報および解析結果を表示装置に表示させる表示処理を行なう。S1330において診断結果が既に入力されている場合には、表示処理部1280は、診断結果の表示処理を行なってよい。表示処理部1280は、検査対象の被計測体に関する各種の情報を含む電子カルテを表示してよい。
【0109】
本図に示した処理を実行することにより、データ解析部1200は、被計測体の基本情報と、磁気センサセル220により計測された計測データまたは磁場の空間分布を含む検査結果と、検査結果から得られる心臓の状態の解析結果とを医師等に対して提示することができる。したがって、データ解析部1200は、被計測体の状態の診断を効率良く補助し、診断の速度および精度を高めることができる。
【0110】
図14は、本実施形態に係る基本情報の一例を示す。基本情報入力部1205は、
図13のS1310において、本図に例示したように、被検者(被計測体)の生年月日(年齢)、性別、体重、身長、BMI、既往歴、および体温等の、被検者の身体的特性、状態、または履歴等に関する1または複数の基本項目のそれぞれに対する情報を入力し、診断DB1215に格納してよい。
【0111】
図15は、本実施形態に係る解析結果の一例を示す。解析処理部1225は、
図13のS1340において被計測体の心磁波形または心電波形を解析して、本図に例示したようなP波幅、P波高さ、P-Q時間、QRS波幅、QRS波高さ、Q-T時間、およびST部信号積分値等の、波形の特徴を示す1または複数の項目(波形項目)のそれぞれに対する測定値を算出してよい。解析処理部1225は、被計測体の心磁波形または心電波形を解析して、T波の高さ若しくは形状、またはU波の高さ若しくは形状等の、本図に例示したもの以外の1または2以上の項目についての測定値を算出してもよい。表示処理部1280は、被計測体の各測定値を、例えば健常者における正常の範囲の目安値とともに表示装置に表示させる表示処理を行なってよい。
【0112】
ここで、磁場および電場は(数4)で示した関係を有する。したがって、解析処理部1225は、磁気センサアレイ210内の少なくとも1つの磁気センサセル220またはセンサ部300による磁場の計測データから心電波形を得ることができる。
【0113】
図16は、本実施形態に係るデータ解析部1200による波形出力のフローを示す。S1610において、波形指定部1230は、波形解析の対象とする波形の指定をユーザから入力する。波形指定部1230は、検査対象とする被計測体の指定、すなわち例えば被計測体の名前、識別番号等を入力してよい。また、波形指定部1230は、検査対象の被計測体について複数の磁気センサセル220により計測された計測データ(磁場データ)のうち、いずれの磁気センサセル220によって計測された計測データの波形を出力するかの指定を入力してもよい。
【0114】
S1620において、比較対象設定部1235は、比較対象とする少なくとも1つの他の被計測体の指定を入力し、比較対象として設定する。比較対象設定部1235は、比較対象の被計測体の名前、識別番号等を入力し、特定の被計測体を比較対象として設定してよい。
【0115】
比較対象設定部1235は、健常者を比較対象とすることの指定を入力してもよい。この場合、比較対象設定部1235は、比較対象の計測データとして、予め診断DB1215に登録されている健常者の計測データを使用することを設定してもよい。これに代えて、比較対象設定部1235は、診断DB1215に格納された複数の被計測体の中から、健康と診断された被計測体、または検査対象である心疾患がないと診断された被計測体を検索して、比較対象の被計測体としてよい。また、比較対象設定部1235は、健常者の生体または疾患を有する人の生体が有するべき特性の理論値を使って健常者または疾患を有する人の生体モデルを作成し、比較対象の被計測体として用いてよい。この場合、比較対象設定部1235は、被験者の診断結果を基に診断DB1215を更新し、新たな健常者(または患者)のデータを含む教師データを用いて生体モデルを更新してもよい。このような生体モデルは、各タイミングにおいてモデル化対象の生体に生じることが計算またはシミュレーション等により導き出された磁場の空間分布を含んでよい。
【0116】
また、比較対象設定部1235は、特定の疾患を有する人を比較対象とすることの指定を入力してもよい。この場合、比較対象設定部1235は、比較対象の計測データとして、予め診断DB1215に登録されている、指定された疾患を有する患者の計測データを使用することを設定してもよい。これに代えて、比較対象設定部1235は、診断DB1215に格納された複数の被計測体の中から、指定された疾患を有すると診断された被計測体を検索して、比較対象の被計測体としてよい。
【0117】
また、比較対象設定部1235は、
図14に例示したような基本情報に含まれる基本項目の条件等の指定を入力してもよい。例えば、比較対象設定部1235は、「40代、男性、体重70kg以上」のような条件の指定を受け付けてよい。
【0118】
また、比較対象設定部1235は、指定された1または2以上の基本項目が、検査対象の被計測体と共通する属性を有することとの条件の指定を受け付けてもよい。比較対象設定部1235は、検査対象とする被計測体と共通する属性を有する人として、例えば同年代であること、同性であること、身長または体重等の身体的パラメータが同じ範囲に属すること、同じ既往症があること等の条件の指定を受け付けてよい。この場合、比較対象設定部1235は、診断DB1215に格納された複数の被計測体の中から、指定された条件を満たす被計測体を検索して、比較対象の被計測体としてよい。比較対象設定部1235は、健常者または特定の疾患を有する人の指定に加えて条件の指定を入力して、比較対象の被計測体を絞り込んでよい。
【0119】
S1630において、波形生成部1240は、診断DB1215に格納された計測データをアクセスして、検査対象の被計測体、および比較対象設定部1235により指定された比較対象の被計測体のそれぞれについて、波形指定部1230によって指定された磁気センサセル220によって計測された計測データの時間変化を示す波形を生成する。ここで、磁気センサセル220が軸方向が異なる複数のセンサ部300を含む場合、波形生成部1240は、波形指定部1230において指定された軸方向のセンサ部300の計測値を波形値としてよい。これに代えて、波形生成部1240は、各センサ部300の計測値を要素とするベクトルの大きさを波形値としてもよい。なお、比較対象として複数の被計測体が選択されている場合、波形生成部1240は、各被計測体の波形を平均して、比較対象の波形を生成してよい。
【0120】
なお、心拍当たりの時間および心拍の強度等の被計測体の波形の横軸方向および縦軸方向の範囲は、被計測体毎に異なりうる。したがって、波形生成部1240は、検査対象の被計測体の波形および比較対象の被計測体の波形をそれぞれ正規化して、各波形の1周期の長さ、および波形の最大値または極大値等が一致するようにしてもよい。
【0121】
比較対象の被計測体が生体モデルである場合、波形生成部1240は、生体モデルによって表された生体を計測したと仮定した場合に計測されるべき計測データを算出して、算出した計測データの時間変化を示す波形を生成してよい。
【0122】
S1640において、乖離度算出部1245は、検査対象とする被計測体についての波形(第1の波形)と、第1の波形に対応する比較用の波形(第2の波形)とのタイミング毎の乖離度を算出する。第2の波形は、比較対象とする他の被計測体(生体または生体モデル)についての波形であってもよく、予め定められたリファレンス波形であってもよい。乖離度算出部1245は、各タイミングについて、第1の波形および第2の波形の差の絶対値または比等を算出して乖離度としてよい。
【0123】
S1650において、表示処理部1280は、波形生成部1240により生成された第1の波形を表示装置に表示する波形表示画面の表示処理を行なう。本実施形態に係る表示処理部1280は、生成された第2の波形を波形表示画面に表示する表示処理を行なう。また、表示処理部1280は、タイミング毎の乖離度を波形表示画面に表示するための表示処理を行なう。表示処理部1280は、第1の波形および第2の波形と共に、タイミング毎の乖離度を波形表示画面に表示する表示処理を行なってよい。なお、データ解析部1200は、第1の波形および第2の波形の乖離度が予め定められた閾値を超えた場合に、警告等を表示装置に表示させ、または警告音を発生する等によりユーザに警告を通知してもよい。
【0124】
図17は、本実施形態に係る波形表示画面1700の一例を示す。波形表示画面1700は、被計測体指定領域1705と、波形指定領域1710と、タイミング指定領域1720と、波形表示領域1730と、タイミング指定領域1740とを含む。
【0125】
被計測体指定領域1705は、
図16のS1610およびS1620において、検査対象の被計測体および比較対象の被計測体の指定を受け付けるために用いられる。表示処理部1280は、波形指定部1230および比較対象設定部1235の指示を受けて、検査対象の被計測体および比較対象の被計測体の指定を入力する入力欄を被計測体指定領域1705に表示する表示処理を行なう。表示処理部1280は、比較対象の被計測体として、「健常者」、「XX疾患の患者」、または「30代男性」等の、予め定められた属性を選択可能に表示する表示処理を行なってもよい。また、表示処理部1280は、比較対象の被計測体として、「健常者モデル」、「XX疾患の患者モデル」、または「30代男性モデル」等の、予め定められた属性を有する生体モデルを選択可能に表示する表示処理を行なってもよい。
【0126】
波形指定領域1710およびタイミング指定領域1720は、
図16のS1610において、波形解析の対象とする波形の指定を受け付けるために用いられる。表示処理部1280は、波形指定部1230の指示を受けて、被計測体と複数の磁気センサセル220との位置関係を示す模式図を波形指定領域1710に表示する表示処理を行なう。本図の例において、波形指定領域1710は、被検者と、被検者の胸部正面に設置された磁気センサアレイ210の複数の磁気センサセル220とを模式的に表示する。表示処理部1280は、模式図中の各磁気センサセル220における被検者および比較対象の計測データの乖離度に応じて、波形指定領域1710に表示する各磁気センサセル220に与える色、パターン、または図形等を変えてよい。また、表示処理部1280は、各磁気センサセル220における、被検者および比較対象の計測データの乖離度の数値を波形指定領域1710に表示させてもよい。波形指定部1230は、模式図中のいずれかの磁気センサセル220が選択されたことに応じて、波形指定部1230は、選択された磁気センサセル220によって計測された計測データの波形を生成することを波形生成部1240に指示する。
【0127】
表示処理部1280は、波形指定部1230の指示を受けて、測定期間中のいずれのタイミングにおける乖離度を波形指定領域1710に表示させるかの指定をユーザから入力するためのタイミング指定領域1720を表示する表示処理を行なう。本図の例において、タイミング指定領域1720は、横軸に時刻をとり、被検者および比較対象の計測データの各時刻における乖離度を、数値、色、またはパターンの濃淡等により示したスライドバーを表示する。表示処理部1280は、各タイミングに対応するスライドバーの数値、色、またはパターン等を、そのタイミングにおける、全磁気センサセル220についての被検者および比較対象の計測データの乖離度の和等に応じて設定してよい。タイミング指定領域1720上であるタイミングが指定されると、表示処理部1280は、波形指定領域1710に表示する各磁気センサセル220に与える数値、色、またはパターン等を、そのタイミングにおける各磁気センサセル220での乖離度に応じて変更してよい。
【0128】
波形表示領域1730は、
図16のS1650において、検査対象の被計測体についての波形(第1の波形)および比較対象の被計測体についての波形(第2の波形)を表示するために用いられる。表示処理部1280は、被計測体についての第1の波形と、第1の波形に対応する、他の被計測体についての第2の波形とを比較可能に波形表示領域1730に表示するための表示処理を行なう。一例として、表示処理部1280は、本図に示すように第1の波形および第2の波形を同じグラフ上に表示させることにより比較可能としてよい。
【0129】
タイミング指定領域1740は、
図16のS1650において、第1の波形および第2の波形のタイミング毎の乖離度を表示するために用いられる。本図の例において、タイミング指定領域1740は、横軸に時刻をとり、波形指定領域1710上で選択された磁気センサセル220における、被検者および比較対象の計測データの各時刻における乖離度を数値、色、またはパターンの濃淡等により示したスライドバーを表示する。タイミング指定部1250は、タイミング指定領域1740を用いて指定されたタイミングを、検査対象の被計測体の観測マップを生成するタイミングに設定する。
【0130】
データ解析部1200は、本図に例示した波形表示画面1700を表示装置に表示させることにより、各磁気センサセル220で計測された計測データの中から被計測体の状態の判断に適した計測データを効率良く選択可能とすることができる。また、データ解析部1200は、検査対象の計測体および比較対象の被計測体についての計測データを比較可能とすることにより、検査対象の被計測体の状態の判断を補助して、判断の精度および効率を向上させることができる。
【0131】
図18は、本実施形態に係るデータ解析部1200による観測マップ出力のフローを示す。S1810において、タイミング指定部1250は、
図17のタイミング指定領域1740を用いて指定されたタイミングを入力する。本実施形態に係るデータ解析部1200は、
図17のタイミング指定領域1740によりタイミングが指定された後、「観測マップ」と示されたボタンが押されたことに応じて、処理をS1820へと進める。データ解析部1200は、タイミング指定領域1740により指定されたタイミングが変化する度に、処理をS1820へと進めて観測マップの更新等を行なってよい。また、データ解析部1200は、
図17において「OK」と示されたボタンが押されたことに応じて、波形表示画面1700の表示を終了してよい。
【0132】
S1820において、観測面設定部1255は、ユーザからの指定を受けて、被計測体を観測する観測面を設定する。S1830において、観測マップ生成部1260は、波形表示領域1730およびタイミング指定領域1740を含む波形表示画面上でタイミングの指定を受け取ったことに応じて、指定されたタイミングにおける検査対象の被計測体の1または複数の観測マップを生成する。複数の観測マップのそれぞれは、観測面設定部1255により設定された各観測面における、指定されたタイミングでの被計測体からの磁場または電場を示す。また、観測マップ生成部1260は、タイミング指定部1250により指定されたタイミングにおける比較対象となる他の被計測体の計測データ、または生体モデルを用いて算出した、生体モデルに対応する生体を計測した場合に得られるべき計測データを用いて、検査対象の被計測体の観測マップのうちの少なくとも1つの第1の観測マップの生成に用いた観測面に対応する比較用の第2の観測マップを生成する。
【0133】
S1840において、乖離度マップ生成部1265は、検査対象の被計測体についての第1の観測マップと、第2の観測マップとの乖離度を示す乖離度マップを生成する。S1850において、表示処理部1280は、検査対象の被計測体の第1の観測マップを表示するための表示処理を行なう。また、表示処理部1280は、比較対象の被計測体の第2の観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なう。また、表示処理部1280は、乖離度マップを表示装置に表示するための表示処理を行なう。なお、データ解析部1200は、第1の観測マップおよび第2の観測マップの差分が予め定められた閾値を超えた場合、または第1の観測マップおよび第2の観測マップの比が予め定められた範囲を超えた場合に、警告等を表示装置に表示させ、または警告音を発生する等によりユーザに警告を通知してもよい。ここで、乖離度マップ生成部1265は、乖離度マップにおける各点の差分の絶対値または比の合計または平均等を計算し、観測マップ同士の差分または比としてもよい。
【0134】
データ解析部1200は、ユーザの指示に応じて本図のフローを繰り返し実行することにより、被計測体を複数の観測方向のそれぞれから観測した複数の観測マップを生成し、順次または同時に表示装置に表示してよい。この場合、観測面設定部1255は、S1820を複数回実行することにより、被計測体を複数の観測方向のそれぞれから観測する複数の観測面を設定する。これに代えて、観測面設定部1255は、ユーザからの指示を受けずに予め設定された2、3、またはそれ以上の異なる観測方向からの観測面を設定してもよい。
【0135】
観測マップ生成部1260は、S1830を複数回実行することにより、複数の観測面のそれぞれにおける、検査対象の被計測体についての観測マップを生成する。観測マップ生成部1260は、複数の観測マップのうちの1または2以上の第1の観測マップのそれぞれと同じ観測面から比較対象の被計測体(生体または生体モデル)を観測した1または2以上の第2の観測マップを生成する。また、観測マップ生成部1260は、第1の観測マップおよび第2の観測マップの乖離度を示す乖離度マップを生成する。
【0136】
表示処理部1280は、検査対象の被計測体についての複数の観測マップを表示装置に表示するための表示処理を行なう。また、表示処理部1280は、第2の観測マップを表示装置に表示する表示処理と、乖離度マップを表示装置に表示するための表示処理とを行なってよい。
【0137】
なお、被計測体に対する磁気センサユニット110の位置は、検査毎に多少ずれる場合がある。また例えば、成人と子供では心臓の大きさが異なりうる。したがって、観測面設定部1255は、S1820において、被計測体に対する磁気センサユニット110の位置のずれ量に応じて観測面の位置を調整し、および被計測体の大きさの違いに応じて観測面上の各軸方向のスケールを調整することにより、検査対象の被計測体および比較対象の被計測体の観測マップを同一座標の点同士で比較可能となるようにしてもよい。
【0138】
図19は、本実施形態に係る観測マップ表示画面1900の一例を示す。観測マップ表示画面1900は、垂直角指定領域1910と、水平角指定領域1920と、観測マップ1930と、観測マップ1940と、乖離度マップ1950とを含む。
【0139】
垂直角指定領域1910および水平角指定領域1920は、
図18のS1820において、被計測体と観測面との位置関係を設定するために用いられる。表示処理部1280は、被計測体と観測面との位置関係を示す設定画面の一例として、垂直角指定領域1910および水平角指定領域1920を表示装置に表示するための表示処理を行なう。本図の例において、表示処理部1280は、被計測体に対する観測方向の垂直角を指定するための垂直角指定領域1910と、被計測体に対する観測方向の水平角を指定するための水平角指定領域1920との表示処理を行なう。これに代えて、表示処理部1280は、人型等の生体の形を摸した図形を三次元的に画面上に表示させて、ユーザによるドラッグ等の指示を受けたことに応じて図形を三次元的に回転させることにより、観測面に対する角度を自在に変化させることができるようにしてもよい。
【0140】
観測面設定部1255は、垂直角指定領域1910および水平角指定領域1920を含む設定画面上で、1または複数の観測面のそれぞれの位置の指定を受け取る。観測面設定部1255は、本図に示したように、設定画面上で、複数の観測面のそれぞれについての被計測体に対する直交する2方向の角度(一例として垂直角および水平角)の指定を受け付けてよい。また、観測面設定部1255は、設定画面上で、複数の観測面のそれぞれと被計測体との距離の指定を受け付けてもよい。観測面設定部1255は、設定画面上で複数の観測面のそれぞれの位置の指定を受け取ったことに応じて、複数の観測面のそれぞれを設定する。
【0141】
観測マップ1930は、
図18のS1850において、検査対象の被計測体(図中「検査対象者」)の観測マップを表示するために用いられる。表示処理部1280は、観測マップ生成部1260により生成された観測マップを、観測マップ表示画面1900の観測マップ1930として表示する。本図の例において、観測マップは、対応する観測方向から見た観測面内に縦横に配置した各座標における磁場または電場の強さを色またはパターン等により表した図である。
【0142】
観測マップ1940は、
図18のS1850において、比較対象の被計測体(本図の例においては「健常者」)の観測マップを表示するために用いられる。表示処理部1280は、観測マップ生成部1260により生成された、比較対象の被計測体の観測マップを、観測マップ表示画面1900の観測マップ1940として表示する。
【0143】
乖離度マップ1950は、
図18のS1850において、検査対象の被計測体の観測マップおよび比較対象の被計測体の観測マップの乖離度を示す乖離度マップを表示するために用いられる。一例として、乖離度マップ生成部1265は、観測マップの各グリッドについて、検査対象の被計測体についての計測値から比較対象の被計測体についての計測値を減じた差をそのグリッドにおける乖離度としてよい。また、乖離度マップ生成部1265は、観測マップの各グリッドについて、検査対象の被計測体についての計測値から比較対象の被計測体についての計測値を減じた差の絶対値をそのグリッドにおける乖離度としてよい。また、乖離度マップ生成部1265は、観測マップの各グリッドについて、検査対象の被計測体についての計測値と比較対象の被計測体についての計測値との比をそのグリッドにおける乖離度としてよい。表示処理部1280は、乖離度マップ生成部1265により生成された乖離度マップを、観測マップ表示画面1900の乖離度マップ1950に表示する。本図の例において、乖離度マップは、観測マップの各グリッドに対応する差分値の大きさを色またはパターン等により表した図である。
【0144】
以上に示したように、データ解析部1200は、被計測体を様々な観測方向から観測する観測マップを出力することができる。これにより、データ解析部1200は、各磁気センサセル220が必ずしも設けられていない様々な観測面を用いて被計測体を観察可能とし、検査の精度を高めることに寄与する。また、データ解析部1200は、比較対象の被計測体の観測マップ、および乖離度マップを出力することにより、被計測体における心磁の異常箇所の特定に寄与することができる。
【0145】
なお、観測マップ生成部1260は、複数の指定されうる観測面のうちの少なくとも1つの観測面について、検査対象の被計測体からの磁場または電場の時間変化を示す動画像の観測マップを生成してもよい。観測マップ生成部1260は、比較対象の被計測体についても同様に、動画像の観測マップを生成してもよい。また、乖離度マップ生成部1265は、検査対象の被計測体についての動画像の観測マップと、比較対象の被計測体についての動画像の観測マップとの時刻毎の差分を示す動画像の乖離度マップを生成してもよい。表示処理部1280は、これらの動画像の観測マップおよび乖離度マップを、表示装置に対して実時間表示、スロー表示、高速表示、コマ送り、またはユーザ等が指定した再生速度による再生等のうちの少なくとも1つにより表示するための表示処理を行なってもよい。
【0146】
観測面設定部1255は、本図において「登録」と示されたボタンが押されると、複数の観測面のうち観測マップ表示画面1900に表示された少なくとも1つの観測マップ1930に対する少なくとも1つの観測面の位置を登録する指示を受けたと判断する。観測面設定部1255は、この指示を受けたことに応じて、少なくとも1つの観測面の位置を、被計測体の診断結果の少なくとも一部として診断DB1215に登録してよい。同様に、タイミング指定部1250は、本図において「登録」と示されたボタンが押されると、観測マップの生成対象として指定されたタイミングを登録する指示を受けたと判断してよい。タイミング指定部1250は、この指示を受けたことに応じて、観測マップの生成対象となったタイミングを、被計測体の診断結果の少なくとも一部として診断DB1215に登録してよい。
【0147】
このように、データ解析部1200は、ユーザが検査対象の状態の診断に用いた特定の観測面およびタイミングを記録に残せるようにし、後日必要に応じて同じ観測マップを呼び出すことを可能とする。これにより、データ解析部1200は、診断に用いられた過去の観測マップをより早くユーザへと出力することができ、検査の効率をより向上させることができる。なお、データ解析部1200は、本図において「OK」と示されたボタンが押されたことに応じて、観測マップ表示画面1900の表示を終了してよい。
【0148】
図20は、本実施形態に係るデータ解析部1200による観測マップ生成のフローを示す。本図は、本実施形態に係るデータ解析部1200が、
図18のS1830において磁場を再構成して、観測マップの一例である電流マップを生成するフローを示す。S2010において、データ解析部1200内の観測マップ生成部1260は、検査対象または比較対象となる被計測体の信号分離結果を取得する。一例として、観測マップ生成部1260は、信号空間分離部1060が
図11のフローにしたがって信号分離した結果に関する情報を診断DB1215から取得する。例えば、観測マップ生成部1260は、被計測体の診断結果の一部として診断DB1215に格納された、信号空間分離部1060が決定した縦ベクトル^Xに関する情報を、信号分離した結果に関する情報として診断DB1215から取得する。
【0149】
S2020において、観測マップ生成部1260は、観測面として用いる仮想センサアレイ面を取得する。仮想センサアレイ面は、三次元空間内において指定された平面であって、実体としてのセンサが存在していなくてもよい仮想的な平面である。観測マップ生成部1260は、観測面設定部1255によって設定された観測面を、仮想センサアレイ面として取得してよい。計測装置10が、心臓の電気活動により生成される磁場である心磁を計測対象とする場合、仮想センサアレイ面は、被計測体の胸面の前面における
図19の垂直角指定領域1910および水平角指定領域1920を用いて垂直角および水平角が指定された任意の観測面であってよい。
図20および
図21においては、説明の便宜上、仮想センサアレイ面が、被計測体の胸面の直上(前面)におけるXY平面と平行な面に指定されたものとして説明する。
【0150】
S2030において、観測マップ生成部1260は、磁場を再構成する。一例として、観測マップ生成部1260は、計測データを用いて、三次元空間内において指定された平面である仮想センサアレイ面上の1つ以上の各位置(各グリッド位置)について仮想センサアレイ面に直交する成分の磁場を再構成する。例えば、観測マップ生成部1260は、S2010において取得された信号分離結果に基づいて、S2020において指定された仮想センサアレイ面において等間隔(例えば、X軸方向2.5cm、Y軸方向2.5cm間隔)な格子状の複数の位置(例えば、X軸方向8か所×Y軸方向8か所=計64か所)について磁場を再構成する。すなわち、観測マップ生成部1260は、1≦i≦8、1≦j≦8、k=1として、仮想センサアレイ面上の複数の位置ベクトルr[i,j,k](3次元の極座標表示では(r[i,j,k],θ[i,j,k],φ[i,j,k])なる。)のそれぞれについて、次式を用いて磁場を再構成する。
【数14】
【0151】
ここで、(数14)における第1項が計測対象磁場成分を示し、第2項が外乱磁場成分を示している。そこで、観測マップ生成部1260は、(数14)における第1項のみを取り出し、第2項は削除して、仮想センサアレイ面の1つ以上の位置について再構成した磁場を取得する。このように、観測マップ生成部1260は、信号分離した結果に基づいて、仮想センサアレイ面上の1つ以上の位置について、外乱磁場成分が分離された計測対象磁場成分の磁場を再構成する。なお、この際、再構成された磁場は、仮想センサアレイ面に対するX軸成分、Y軸成分、および、Z軸成分の3軸成分を含む。本実施形態において、観測マップ生成部1260は、再構成した3軸成分のうちのZ軸成分Bzのみを使用する。なお、観測マップ生成部1260は、仮想センサアレイ面上の各位置の磁場強度を示す磁場マップを観測マップとする場合には、3軸成分からなる磁場ベクトルの大きさを使用してよい。
【0152】
S2040において、観測マップ生成部1260は、電流マップを生成する。一例として、観測マップ生成部1260は、S2030において仮想センサアレイ面上の複数の位置について再構成した磁場を用いて、被計測体の電気活動による活動電流の状態を仮想センサアレイ面に投影した電流マップを生成する。より詳細には、観測マップ生成部1260は、2≦i≦8、2≦j≦8として、次式により、仮想センサアレイ面上の複数の位置のそれぞれについて再構成した磁場と、隣接する位置について再構成した磁場との差分に基づいて、複数の位置における電流ベクトルを示す電流アローマップを生成する。
【数15】
【0153】
S2050において、計測装置10は、電流マップを出力する。一例として、観測マップ生成部1260は、検査対象の被計測体および比較対象の被計測体のそれぞれについてS2040において生成された各電流マップを、乖離度マップ生成部1265へと出力する。そして、観測マップ生成部1260は、フローを終了する。
【0154】
図21は、本実施形態に係る計測装置10が仮想センサアレイ面上の1つ以上の位置について再構成した磁場の一例を示す。本図左に示されるように、本実施形態に係る計測装置10は、各々が磁気センサ520と出力信号を出力する出力部540とを有する複数の磁気センサセル220がそれぞれ一方向に湾曲させた2つの曲面の間の格子点に配置されるように三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイ210を用いて磁場を計測する。また、計測装置10内の観測面設定部1255は、三次元空間内において指定された平面である仮想センサアレイ面2110を観測面として指定する。このような仮想センサアレイ面2110は、実体としてのセンサが存在していなくてもよい仮想的な平面である。本図においては、仮想センサアレイ面2110が、被計測体の胸面の直上(前面)におけるXY平面と平行な面に指定されている。そして、計測装置10は、このような3軸方向の入力磁場を検出可能な三次元の磁気センサアレイ210によって計測された計測データを用いて、例えば、
図11および
図20のフローにしたがって、仮想センサアレイ面2110上の1つ以上の位置について仮想センサアレイ面に直交する成分の磁場を再構成する。一例として、計測装置10は、本図右に示されるように、XY平面と平行な面である仮想センサアレイ面2110上において、X軸方向に8個の仮想センサが2.5cm間隔で等間隔に配置され、Y軸方向に8個の仮想センサが2.5cm間隔で等間隔に配置されているものとみなして、X軸方向8個×Y軸方向8個=計64個の仮想センサの位置におけるZ軸成分の磁場を再構成する。
【0155】
図22は、本実施形態に係る計測装置10が生成した電流マップの一例を示す。本実施形態に係る観測マップ生成部1260は、
図21に示されるように仮想センサアレイ面2110上の複数の位置について再構成した磁場を用いて、例えば、(数15)により、被計測体の電気活動による活動電流の状態を仮想センサアレイ面2110に投影した電流マップを生成する。本図は、一例として、観測マップ生成部1260が、仮想センサアレイ面2110上のX軸方向(8-1)か所×Y軸方向(8-1)か所=計49か所の位置における心臓の電気活動による活動電流のベクトルを示す、電流アローマップを生成した場合について示している。本実施形態に係る表示処理部1280は、このようにして生成された検査対象および比較対象の被計測体の電流マップを、
図19の観測マップ1930および観測マップ1940として表示してよい。計測装置10は、生成した電流マップを、心臓を撮影したX線画像やCT画像等の各種の画像と重ねて表示してもよい。この際、本実施形態に係る計測装置10によって心磁を計測するにあたって胸部に位置決め用の磁気マーカ(微小なコイル)を配置し、また、X線画像やCT画像を撮影するにあたっても位置決め用のマーカを配置する。そして、計測装置10は、これらマーカを用いて位置合わせをして、電流マップを種々の画像と重ね合わせて表示してよい。これにより、計測装置10は、より有益な診断情報を提供することができる。
【0156】
このように、本実施形態に係る計測装置10は、3軸方向の入力磁場を検出可能な三次元の磁気センサアレイ210によって計測された計測データを用いて、仮想センサアレイ面上の磁場を再構成する。これにより、本実施形態に係る計測装置10によれば、例えば、1軸成分(垂直成分)の磁場のみを計測するセンサを平面状に配列したセンサアレイを用いて磁場を計測する場合に比べて、多方向からセンシングすることで、より高精度に磁場を計測して再現することができる。また、本実施形態に係る計測装置10は、このように高精度に再現された磁場を用いて電流アローマップ等の電流マップを生成する。これにより、本実施形態に係る計測装置10によれば、より精度の高い電流マップを提供することができる。また、本実施形態に係る計測装置10によれば、計測データによって示される入力磁場の空間分布を信号分離し、外乱磁場成分が分離された計測対象磁場成分の磁場を再構成する。これにより、本実施形態に係る計測装置10によれば、環境磁場をキャンセルすることができ、磁気シールドルーム無しで計測対象磁場の計測を実現することが可能となる。
【0157】
なお、
図21および
図22の例においては、観測マップ生成部1260は、実際の複数の磁気センサセル220と同一の間隔で複数の仮想センサを配置した仮想センサアレイ面を用いた電流マップを生成する。これに代えて、観測マップ生成部1260は、実際の複数の磁気センサセル220とは、センサ同士の間隔またはセンサの数の少なくとも1つが異なる仮想センサアレイ面を用いて電流マップを生成してもよい。
【0158】
図23は、本実施形態に係るデータ解析部1200による推測モデル1275の学習処理のフローを示す。推測モデル1275は、データ解析部1200のユーザが指定するタイミング、または定期的等の予め定められたタイミングで、推測モデル1275の学習処理を行なうことにより、推測モデル1275を生成または更新する。
【0159】
S2310において、学習処理部1285は、推測モデル1275の学習処理に用いる訓練データを取得する。学習処理部1285は、診断DB1215に格納された、複数の被計測体のそれぞれについての診断結果の中から、推測モデル1275の学習処理に用いる訓練データを抽出してよい。学習処理部1285は、複数の被計測体のうち、医師等のユーザによって健常か否か、および健常でない場合には疾患の種類が診断された少なくとも1つの被計測体を選択する。学習処理部1285は、選択した各被計測体の診断結果から、推測モデル1275に入力するべき入力データと、この入力データが入力されたことに応じて推測モデル1275が出力すべき目標データとを含む訓練データのサンプルを抽出する。学習処理部1285は、外部のサーバ、ネットワークストレージ、またはクラウドサービス等に登録された、他の計測装置での計測結果を含む診断結果をネットワークを介して取得して、訓練データとして利用してもよい。
【0160】
ここで、推測モデル1275は、基本情報に含まれる基本項目の少なくとも1つ(例えば
図14に例示した年齢、性別、…、または検査時体温等)を入力としてよい。また、推測モデル1275は、被計測体の心磁波形または心電波形を解析処理部1225により解析した解析結果の少なくとも一部(例えば
図15に例示したP波幅、…、またはST部信号積分値等)を入力としてよい。
【0161】
また、推測モデル1275は、磁気センサセル220により計測された計測データ、または信号空間分離部1060から出力された磁場の空間分布を示すパラメータ(例えば縦ベクトル^Xまたは^Xin)を入力としてよい。推測モデル1275は、計測データ、または磁場の空間分布を示すパラメータを入力とする場合、検査対象の被計測体を検査した検査期間のうち、予め定められた1または2以上のタイミングのそれぞれにおける計測データまたは磁場の空間分布を入力としてよい。一例として、推測モデル1275は、1心拍中のP波またはQRS波等の開始タイミングまたはピークとなるタイミング等のように、少なくとも1つの磁気センサセル220により計測された計測データの波形から特定可能なタイミングにおける計測データまたは磁場の空間分布を入力としてよい。この場合、学習処理部1285は、診断DB1215に格納された計測データまたは磁場の空間分布を解析して少なくとも1つのタイミングを特定し、特定したタイミングにおける1または複数の磁気センサセル220の計測データまたは磁場の空間分布を入力データに含めてよい。
【0162】
また、推測モデル1275は、上記のパラメータの複数の組合せを入力としてよい。学習処理部1285は、訓練データ中の各サンプルの入力データとして、推測モデル1275の入力パラメータ群の各値を含むデータを取得する。
【0163】
推測モデル1275は、被計測体の状態の推測結果を示す出力データを出力する。本実施形態に係る推測モデル1275は、1または複数の疾患のそれぞれについて、被計測体がその疾患に罹患している確率を推測する。推測モデル1275は、1または複数の疾患のそれぞれについて、その疾患の罹患確率を示す推測値を出力してよい。学習処理部1285は、訓練データの各サンプル中の目標データとして、出力パラメータ群の各値が対応する疾患の有無を示すデータを取得する。一例として、被計測体が疾患Aのみを有すると判断された場合、学習処理部1285は、疾患Aが目標値100%、疾患Bおよびその他の疾患が目標値0%であることを示す目標データを生成する。
【0164】
S2320において、学習処理部1285は、S2310において取得した訓練データを用いて推測モデル1275を学習により生成または更新する。一例として推測モデル1275がニューラルネットワークを用いたモデルである場合、学習処理部1285は、訓練データ中の各サンプルをモデルに入力した場合のモデルの出力と、ラベル(目標データ)との誤差を低減させるように、モデルのパラメータを更新していく。例えばニューラルネットワークを用いる場合、学習処理部1285は、訓練データの各サンプルを入力したことに応じてニューラルネットワークが出力する出力値と目標値との誤差を用いて、バックプロパゲーション等の手法により、ニューラルネットワークの各ニューロン間の重みおよび各ニューロンのバイアス等を調整する。これに代えて、推測モデル1275は、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、ロジスティック回帰、およびサポートベクタマシン(SVM)等を含む各種の機械学習アルゴリズムを適用したモデルであってよい。学習処理部1285は、推測モデル1275が用いる機械学習アルゴリズムに適応した学習処理を行なって推測モデル1275を生成してよい。
【0165】
なお、学習処理部1285は、交叉検定を用いて推測モデル1275を検証してよい。すなわち、学習処理部1285は、訓練データに含まれる複数のサンプルを訓練用のサンプルおよび評価用のサンプルに分割し、訓練用のサンプルを推測モデル1275の教育に用い、評価用のサンプルを推測モデル1275の推測誤差の算出に用いてよい。そして、学習処理部1285は、推測モデル1275の推測誤差が予め定められた許容誤差以下となるまで、推測モデル1275の学習処理を繰り返してよい。
【0166】
S2330において、学習処理部1285は、生成した推測モデル1275を推測部1270に提供する。学習処理部1285は、推測モデル1275内における学習によって調整されるパラメータ群を推測部1270に設定することにより、推測部1270が推測モデル1275を使用できるようにしてもよい。
【0167】
図24は、本実施形態に係るデータ解析部1200による推測結果出力のフローを示す。S2410において、推測部1270は、基本情報入力部1205により取得された被計測体の基本情報、解析処理部1225による被計測体の解析結果、およびデータ取得部1207により取得された被計測体についての磁場の空間分布を診断DB1215から取得する。ここで、推測部1270は、被計測体の基本情報、解析結果、および磁場の空間分布のうち、推測モデル1275が入力として使用するパラメータのみを診断DB1215から取得してもよい。
【0168】
S2420において、推測部1270は、S2410において取得した被計測体の基本情報、解析結果、および磁場の空間分布を推測モデル1275に入力する。より具体的には、推測部1270は、推測モデル1275が入力する各入力パラメータの値として、被計測体の基本情報、解析結果、または磁場の空間分布に含まれる対応するパラメータの値を設定する。
【0169】
S2430において、推測部1270は、推測モデル1275を用いて被計測体の状態の推測結果を生成する。推測部1270は、推測モデル1275が出力する各疾患についての出力値に基づいて、各疾患の罹患確率を算出してよい。
【0170】
ここで、疾患Aを推測する推測モデル1275の出力値の範囲が例えば0~100%(または-1.0~+1.0等)である場合において、学習処理部1285は、ある被計測体がある疾患Aを有すると診断されている場合に目標値を100%(あるいは1.0)とし、疾患Aを有しない場合に目標値を0%(あるいは-1.0等)とした訓練データを用いて推測モデル1275を訓練する。この場合、推測モデル1275は、検査対象の被計測体に対して、疾患Aの推測値として0~100%(または-1.0~+1.0)の範囲内の値を出力する。推測部1270は、このような推測値を、被計測体が疾患Aである確率を表す値とみなして、疾患Aの罹患確率を推測してよい。例えば、ある被計測体の疾患Aを推測する出力値が57%であった場合に、推測部1270は、疾患Aの確率を57%と推測してよい。また例えば、疾患Aを推測する出力値が-1.0~+1.0の範囲を取る場合において、ある被計測体についての出力値が+0.5であった場合に、推測部1270は、疾患Aの確率を75%と推測してよい。
【0171】
S2440において、表示処理部1280は、推測部1270によって生成された、被計測体の状態の推測結果を、表示装置に表示する表示処理を行なう。
【0172】
図25は、本実施形態に係る推測結果の一例を示す。表示処理部1280は、推測部1270によって生成された、被計測体の状態の推測結果を、本図に示した形式で表示する表示処理を行なってよい。
【0173】
本図は、心筋梗塞、狭心症、および頻脈性不整脈等の各種の疾患のそれぞれについて、被計測体がその疾患である確率の推測値を示す。本図の例においては、心筋梗塞の推測確率は70%、狭心症の推測確率は5%、頻脈性不整脈の推測確率は5%等と示されている。
【0174】
図23から
図25に示したように、データ解析部1200は、検査対象の被計測体から得られた計測データまたは磁場の空間分布を含む診断結果を用いて、被計測体の状態を推測することができる。これにより、データ解析部1200は、医師等のユーザに対して被計測体が有する可能性がある疾患を提示することができ、ユーザによる被計測体の診断精度を高める補助をすることができる。
【0175】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0176】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0177】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0178】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0179】
図26は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0180】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0181】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0182】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0183】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0184】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0185】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0186】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0187】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0188】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0189】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0190】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0191】
10 計測装置、100 本体部、105 測定台、110 磁気センサユニット、150 計測処理装置、210 磁気センサアレイ、220 磁気センサセル、230 センサデータ収集部、232 AD変換器、234 クロック発生器、300 センサ部、520 磁気センサ、530 磁場生成部、532 増幅回路、534 フィードバックコイル、540 出力部、710 磁気抵抗素子、720 磁気収束板、730 磁気収束板、1000 センサデータ処理部、1020 計測データ取得部、1040 データ出力部、1050 基底ベクトル記憶部、1060 信号空間分離部、1200 データ解析部、1205 基本情報入力部、1207 データ取得部、1210 診断入力部、1215 診断DB、1220 診断DB接続部、1225 解析処理部、1230 波形指定部、1235 比較対象設定部、1240 波形生成部、1245 乖離度算出部、1250 タイミング指定部、1255 観測面設定部、1260 観測マップ生成部、1265 乖離度マップ生成部、1270 推測部、1275 推測モデル、1280 表示処理部、1285 学習処理部、1700 波形表示画面、1705 被計測体指定領域、1710 波形指定領域、1720 タイミング指定領域、1730 波形表示領域、1740 タイミング指定領域、1900 観測マップ表示画面、1910 垂直角指定領域、1920 水平角指定領域、1930 観測マップ、1940 観測マップ、1950 乖離度マップ、2110 仮想センサアレイ面、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インターフェイス、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード