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特開2023-143550液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143550
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B41J2/14 609
B41J2/14 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051456
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022046770
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇裕
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AG14
2C057AG44
(57)【要約】
【課題】堅牢性に優れ、外部からの衝撃による破損を低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】
複数のノズルが配置されたノズル板を備える液体吐出ヘッドであって、前記複数のノズルは所定の定義に基づいたノズル列を成して前記ノズル板に配置され、前記ノズル列の並び方向において中央寄りの領域に、N個のノズルを有するノズル列が配置され、前記並び方向において第1の端部に、前記N個よりも少ないM個のノズルを有するノズル列が配置され、前記並び方向において第2の端部に、(N-M)個のノズルを有するノズル列が配置される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルが、ノズル板の長手方向において記録解像度に対応する所定のピッチ(d)で配置されたノズル板を備え、
前記複数のノズルは、前記ノズル板長手方向において(d×P)の間隔で配置される複数のサブノズルからなるP個(Pは1以上の整数)のサブノズル群に分割され、
前記サブノズル群のそれぞれは、前記ノズル板長手方向に前記(d×P)の間隔で、かつ、前記ノズル板長手方向および該ノズル板長手方向と直交するノズル板短手方向に対して傾斜した方向に並ぶ複数のサブノズルからなるサブノズル列を有し、
前記傾斜した方向に沿って一列に並ぶ、P個のサブノズル群のサブノズル列からなる列の組をノズル列と定義したとき、
前記ノズル板には、
前記ノズル板長手方向において前記ノズル板の中央寄りの領域に、N個のノズルを有する前記ノズル列が配置され、
前記ノズル板長手方向において前記中央寄りの領域よりも第1の端部側である前記ノズル板の第1の端部に、前記N個よりも少ないM個のノズルを有する前記ノズル列が配置され、
前記ノズル板長手方向において前記中央寄りの領域よりも前記第1の端部側とは反対側の第2の端部側である前記ノズル板の第2の端部に、(N-M)個のノズルを有する前記ノズル列が配置される
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ノズル列の並ぶ向きは、前記ノズル板の短辺の稜線の向きと異なることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
複数の前記ノズル列は、外形形状が概略平行四辺形の領域内に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記Pの値は2以上の整数であり、
複数のサブノズル群として第1のサブノズル群と第2のサブノズル群とを有し、
前記中央寄りの領域から前記第1の端部に向かうに従い、前記第1のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数が順次減少していき、前記第1のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数がゼロになったあと、前記第2のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数が順次減少していくように、前記ノズルが配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記Pの値は2以上の整数であり、
複数のサブノズル群として第1のサブノズル群と第2のサブノズル群とを有し、
前記中央寄りの領域から前記第2の端部に向かうに従い、前記第2のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数が順次減少していき、前記第2のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数がゼロになったあと、前記第1のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数が順次減少していくように、前記ノズルが配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1の端部および前記第2の端部においてそれぞれ前記中央寄りの領域と同じ規則で一列あたりN個のノズルが配置されたと仮定し、
前記第1の端部における前記ノズル板の前記稜線の短辺よりも外側の領域を第1の欠損領域と定義し、
前記第2の端部における前記ノズル板の前記稜線の短辺よりも外側の領域を第2の欠損領域と定義したとき、
前記第1の端部において仮定したN個のノズルのうち、N-M個のノズルの少なくとも一部は、前記第1の欠損領域にあり、
前記第2の端部において仮定したN個のノズルのうち、M個のノズルの少なくとも一部は、前記第2の欠損領域にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記Pの値は2以上の整数であり、
複数のサブノズル群として第1のサブノズル群と第2のサブノズル群とを有し、
前記ノズル板長手方向において中央寄りの領域に、N個のノズルを有するノズル列を配置し、前記ノズル板長手方向において端部に、前記第1のサブノズル群の前記サブノズル列のみ、または、前記第2のサブノズル群の前記サブノズル列のみからなるN/2個のノズルを有するノズル列を配置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズル板を複数備え、複数の前記ノズル板が前記ノズル板長手方向に複数個並んで設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを、前記ノズル板長手方向に複数個並べてなることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド、または請求項9に記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体を吐出する複数のノズルを配置したヘッドモジュールを複数つなぎあわせて構成した液滴吐出ヘッドが開示されている。
【0003】
特許文献2には、平行四辺形の外形形状を有したアクチュエータユニットを複数配置して構成したインクジェットヘッドが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構成では、複数のヘッドモジュールのつなぎ部分と、ノズルが形成されるノズル領域との間に大きなスペースを設けることが難しく、ヘッドの堅牢性が低いという課題があった。
【0005】
特許文献2のような構成では、複数のアクチュエータユニットのつなぎ部分と、アクチュエータユニット内でノズルが形成されるノズル領域との間に大きなスペースを設けることが難しく、ヘッドの堅牢性が低いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を吐出する複数のノズルが、ノズル板の長手方向において記録解像度に対応する所定のピッチ(d)で配置されたノズル板を備え、前記複数のノズルは、前記ノズル板長手方向において(d×P)の間隔で配置される複数のサブノズルからなるP個(Pは1以上の整数)のサブノズル群に分割され、前記サブノズル群のそれぞれは、前記ノズル板長手方向に前記(d×P)の間隔で、かつ、前記ノズル板長手方向および該ノズル板長手方向と直交するノズル板短手方向に対して傾斜した方向に並ぶ複数のサブノズルからなるサブノズル列を有し、前記傾斜した方向に沿って一列に並ぶ、P個のサブノズル群のサブノズル列からなる列の組をノズル列と定義したとき、前記ノズル板には、前記ノズル板長手方向において前記ノズル板の中央寄りの領域に、N個のノズルを有する前記ノズル列が配置され、前記ノズル板長手方向において前記中央寄りの領域よりも第1の端部側である前記ノズル板の第1の端部に、前記N個よりも少ないM個のノズルを有する前記ノズル列が配置され、前記ノズル板長手方向において前記中央寄りの領域よりも前記第1の端部側とは反対側の第2の端部側である前記ノズル板の第2の端部に、(N-M)個のノズルを有する前記ノズル列が配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、堅牢性に優れ、外部からの衝撃による破損を低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体吐出装置の一例を示した概略構成図。
図2】ヘッドユニットの一例を示した底面図。
図3】ヘッドの一例を示した概略分解図。
図4】ヘッドの流路部分の平面説明図。
図5】ヘッドの流路部分の拡大断面斜視説明図。
図6】ノズル列の定義の説明図。
図7】ノズル列の定義の説明図。
図8】比較例としてのヘッドモジュールの要部底面図。
図9】比較例としてのヘッドモジュールを複数並べた場合の要部底面図。
図10】本発明の第1実施形態におけるヘッドモジュールの要部底面図。
図11】第1実施形態のヘッドモジュールを複数並べた場合の要部底面図。
図12】本発明の第2実施形態におけるヘッドの要部底面図。
図13】第2実施形態のヘッドを複数並べた場合の要部底面図。
図14】本発明の第3実施形態におけるヘッドの要部底面図。
図15】第3実施形態のヘッドを複数並べた場合の要部底面図。
図16】本発明の第4実施形態におけるヘッドの要部底面図。
図17】本発明の第5実施形態におけるヘッドの概略底面図。
図18】本発明の第5実施形態におけるヘッドの概略底面図。
図19】変形例を示すヘッドの概略底面図。
図20】ヘッドユニットの変形例を示した底面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
<液体吐出装置の概略>
はじめに図1を用いて液体吐出装置の概略を説明する。図1は、液体吐出装置の一例を示した概略構成図である。ここに例示された液体吐出装置は、インクジェット方式により用紙にインクを吐出し、用紙に画像を形成する印刷装置である。
【0011】
印刷装置500は、給紙部501、搬送部503、印刷部505、乾燥部507および排紙部509を備える。給紙部501は、ロール状に巻かれた用紙510を保持する保持ローラ511を備え、長尺に連続した用紙510を印刷部505側へ供給する。搬送部503は、給紙部501から供給された用紙510に対して、例えば、張力制御や蛇行補正を行い、用紙510の張力や搬送位置の状態を整えて、用紙510を印刷部505へ搬送する。
【0012】
印刷部505は、ヘッドユニット555を搭載したインクジェット記録部550と、インクジェット記録部550に対向する搬送ガイド部材559とを備える。印刷部505は、搬送ガイド部材559上を移動する用紙510に対してヘッドユニット555からインクを吐出させることにより、用紙510に画像を形成する。
【0013】
なお、インクジェット記録部550に搭載するヘッドユニット555の数は、印刷装置500で用いるインクの色の種類や数に応じて適宜増減してよい。また、ヘッドユニット555で用いる液体は、インクに限らず、用紙510の表面を改質するための処理液、または用紙510に形成した画像を保護するためのコート剤などを含んでもよい。
【0014】
乾燥部507は、画像を載せた用紙510を加熱し、用紙510および用紙510に形成された画像を乾かす。排紙部509は、用紙510を巻き取る巻取ローラ591を備え、乾燥部507から送り出された用紙510を巻き取る。
【0015】
以降、上述の印刷装置500の構成に基づいて説明するが、本発明に係る液体吐出装置は印刷装置に限られるものではない。例えば、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)に適用することも可能である。また、電子回路のレジストパターンを形成するために、レジストパターン形成用液を吐出させる電子素子生産装置などへの適用も可能である。
【0016】
また、媒体は、用紙510に限られるものではない。紙以外に、例えば、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど種々材質に適用することが可能である。媒体の形態についても、長尺物に限られるものではなく、予め所定のサイズに裁断された媒体でもよい。
【0017】
また、印刷装置500は、定位置のインクジェット記録部550に対して用紙510を移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるライン型の装置構成を例示したが、ライン型に限られるものではない。インクジェット記録部550と用紙510とは相対的に移動する構成であればよい。したがって、例えば、間欠送りされる用紙に対してインクジェット記録部を用紙送り方向と直交する方向へ移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるシリアル型の装置構成でもよい。あるいは、用紙載置テーブルに保持された用紙に対してインクジェット記録部をXY方向へ移動させ、用紙510に画像形成を行う、いわゆるフラットベッド型の装置構成でもよい。
【0018】
また、液体を吐出する装置で用いられる吐出物は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。また、液体は金属粉などの微粉末を含むものでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0019】
<ヘッドユニットの構成>
次に、図2を用いてヘッドユニットの構成を説明する。図2は、ヘッドユニットの一例を示した底面図であり、図1のインクジェット記録部550に図示された8つのヘッドユニット555のうちの1つを、搬送ガイド部材559側から見た図である。
【0020】
ヘッドユニット555は、媒体送り方向と直交する方向に並ぶ複数のヘッドモジュール1a、1b、1c、1dを備える。以降、これらヘッドモジュール1a~1dを総称する場合は「ヘッドモジュール1」と記す。
【0021】
さらに、ヘッドモジュール1a~1dは、ヘッド101a~101d、ヘッド保持部材102a~102dおよびマウント部材103a~103dを備える。以降、ヘッド101a~101dを総称する場合は「ヘッド101」、ヘッド保持部材102a~102dを総称する場合は「ヘッド保持部材102」、マウント部材103a~103dを総称する場合は「マウント部材103」と記す。
【0022】
ヘッド101は、複数のノズルが形成された、外形形状が概略平行四辺形をしたノズル板10を備え、ヘッド101は、ヘッド保持部材102によって保持されている。ヘッド保持部材102は、その一部にマウント部材103を備え、マウント部材103をインクジェット記録部550に設けた支持部材550aに取り付けることで、ヘッドユニット555はインクジェット記録部550に固定される。ここで、ヘッドユニット555は「液体吐出ユニット」の一例であり、ヘッド101は「液体吐出ヘッド」の一例である。
【0023】
<ヘッドの構成>
次に、図3乃至図5を用いてヘッドの構成を説明する。図3は、ヘッドの一例を示した概略分解図であり、図2のヘッドモジュール1を構成するヘッド101のみを表した図である。図4は、ヘッドの流路部分の平面説明図、図5は、ヘッドの流路部分の拡大断面斜視説明図である。なお、ノズル板10は、図2に示したように概略平行四辺形の外形形状を成すが、ここでは長方形に簡略化した図を用いて説明する。
【0024】
ヘッド101は、ノズル板10、流路板(個別流路部材)20、振動板部材30、共通流路部材50、ダンパ部材60、フレーム部材80および駆動回路104を実装した基板(フレキシブル配線基板)105などを備える。
【0025】
ノズル板10は、液体(本実施形態ではインク)を吐出する複数のノズル11を備え、複数のノズル11は二次元状に並んで配置されている。
【0026】
個別流路部材20は、複数のノズル11に各々連通する複数の圧力室(個別液室)21と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別供給流路22と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別回収流路23とを形成している。なお、1つの圧力室21およびこれに通じる個別供給流路22と個別回収流路23を併せて個別流路25と称する。
【0027】
振動板部材30は、圧力室21の変形が可能な壁面である振動板31を形成し、振動板31には圧電素子40が一体に設けられている。また、振動板部材30には、個別供給流路22に通じる供給側開口32と、個別回収流路23に通じる回収側開口33とが形成されている。
【0028】
圧電素子40は、振動板31を変形させて圧力室21内の液体を加圧する圧力発生手段である。
【0029】
なお、個別流路部材20と振動板部材30とは、部材として別部材であることに限定されるものではない。例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を使用して個別流路部材20および振動板部材30を同一部材で一体に形成することも可能である。つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を個別流路部材20とし、シリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜とで振動板31を形成することができる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層およびシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は個別流路部材20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0030】
共通流路部材50は、2以上の個別供給流路22に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の個別回収流路23に通じる複数の共通回収流路支流53とを、媒体送り方向と直交方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材50には、個別供給流路22の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、個別回収流路23の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。また、共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1または複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1または複数の共通回収流路本流57を形成している。
【0031】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面(対向)する供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面(対向)する回収側ダンパ63を有している。ここで、共通供給流路支流52および共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62または回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜または無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
【0032】
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面には、流路中を流れる液体に対して内壁面を保護するための保護膜(接液膜とも言う)が形成されている。例えば、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、および共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面はSi基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0033】
フレーム部材80は、その上部に供給ポート81と排出ポート82を備える。供給ポート81は、共通供給流路本流56に液体を供給し、排出ポート82は、共通回収流路本流57より排出される液体を排出する。
【0034】
次に、ノズル板10に設けられるノズル11の配列を説明するにあたり、図6および図7を用いて、本実施形態における「ノズル列」の定義を説明する。図6および図7において、ノズル11を格子形状として表現したが、ノズル11は円形やその他の形状でもよい。また、ノズル11のサイズや直径は図示したものより小さくてもよい。
【0035】
図6に示すように、ノズル板10に設けられた複数のノズル11は、ノズル板長手方向においてd×Pの間隔で配置された複数のノズル11(図の例では4つのノズル)によりサブノズル列11sb1,11sb2を構成する。なお、上記の間隔において、dは記録解像度、Pは後述のサブノズル群の個数を示し、Pは1以上の整数である。
【0036】
また、各サブノズル列は、複数のサブノズル列11sb1によってサブノズル群SBN1を構成し、複数のサブノズル列11sb2によってサブノズル群SBN2を構成する。つまり、図はノズル板10に2つのサブノズル群SBN1,SBN2を設けた構成、すなわちP=2を例示している。
【0037】
サブノズル群SBN1,SBN2は、ノズル板長手方向にd×Pの間隔で、かつ、ノズル板長手方向およびノズル板短手方向に対して傾斜した方向に並ぶ複数のサブノズルからなるサブノズル列11sb1,11sb2を有する。なお、「サブノズル」とは、ノズル板10に設けられた全てのノズル11のうち、サブノズル群単位における複数のノズルを意味する。すなわち、サブノズル群SBN1に属する複数のノズル11は、サブノズル群SBN1を構成するサブノズルである。また、サブノズル群SBN2に属する複数のノズル11は、サブノズル群SBN2を構成するサブノズルである。ここで、傾斜した方向に沿って一列に並ぶ、P個(図の例では2つ)のサブノズル群SBN1,SBN2のサブノズル列11sb1,11sb2からなる列の組を「ノズル列」(ノズル列11N)と定義する。
【0038】
なお、サブノズル列11sb1,11sb2を成すノズル11の数は、4つに限るものではない。サブノズル列11sb1,11sb2を成すノズル11の数は、4つより多くてもよく、また4つより少なくてもよい。また、サブノズル群SBN1,SBN2の数についても2つに限るものではない。サブノズル群SBN1,SBN2の数は、2つより多くてもよく、また1つであってもよい。
【0039】
図7は、ノズル列の定義をより具体的に説明する説明図である。複数のノズル11は、上述のようにノズル板短手方向において、P個(Pは1以上の整数)のサブノズル群SBN1,SBN2に分割される。ここで、サブノズル群SBN1,SBN2の各サブノズル列11sb1,11sb2(図6参照)に含まれる複数のノズル11は、ノズル板長手方向においてd×Pの間隔で配置される。
【0040】
また、ノズル板長手方向に並ぶ複数のノズル11の、ノズル板短手方向における配置は、所定数のノズル分だけノズル板短手方向の第1の方向(図7の矢印A方向)に所定距離L1ずつ順次ずれて行く。そして、次のサブノズル列のノズルは、第1の方向とは逆の第2の方向(図7の矢印B方向)にずれる。ノズル11の配置は、以上を繰り返す規則を有する。
【0041】
ノズル板10は、ノズル板長手方向に延びる長手稜線(稜線の長辺)とノズル板短手方向に延びる短手稜線(稜線の短辺)とを有する。ここで、長手稜線と短手稜線とが角度θ1(θ1は鋭角)で交わる第1の角部を原点とし、第1の角部から短手稜線が延びる象限が第2象限となるように座標平面を構成するための直交する2つの軸として、長手方向に延びる第1軸と短手方向に延びる第2軸とを定義する。
【0042】
また、サブノズル群のうち、短手方向において第1の角部に最も近いサブノズル群を第1サブノズル群(本例ではサブノズル群SBN1)と定義する。そしてサブノズル群SBN1に含まれる複数のノズル11のうちの1つのノズルと、当該1つのノズルからみて第1軸負側においてd×Pずつ等間隔に離れ、且つ第2軸正側において所定距離L1ずつ等間隔に離れて配置された1または複数のノズルと、を含む複数のノズルからなる列を「第1サブノズル列」と定義する。また、短手方向において第1サブノズル群の隣に配置されたサブノズル群を、第2サブノズル群(本例ではサブノズル群SBN2)とし、第2サブノズル群(本例ではサブノズル群SBN2)に含まれるサブノズル列を「第2サブノズル列」と定義する。なお、サブノズル群の個数Pが3以上の場合は、同様に第3サブノズル列、第4サブノズル列、を定義する。
【0043】
また、ノズル板10の中央寄りの領域での、複数の第1サブノズル列それぞれに含まれる最も第2軸負側に配置されたノズル同士の間隔を、所定のピッチ(d)で除した数をNと定義する。
【0044】
また、第1サブノズル列に含まれる複数のノズルを通る1つの直線を、第1サブノズル列に含まれる最も第2軸負側に配置されたノズル(本例ではノズル11-1)を基点として、当該基点が第1サブノズル列の隣のサブノズル列に含まれる最も第2軸負側に配置されたノズル(本例ではノズル11-2)に一致するようにずらす距離をL2と定義する。
【0045】
そして、第1サブノズル列に含まれる複数のノズルを通る直線と、距離L2ずつ等間隔にずらした複数の直線と、を含む直線群(図7において破線で示された直線)を「ノズル列直線群」と定義し、ノズル列直線群に含まれる直線同士の中間を通る線(図7において一点鎖線で示された直線)を「中間線」と定義する。
【0046】
このとき、「ノズル列」は、P個のサブノズル群の全体に含まれる複数のノズル11のうち、ノズル列直線群に含まれる1つの直線上にあるノズル、当該1つの直線からみてノズル板長手方向において第1軸正側に隣り合う中間線上または当該中間線よりも上記1つの直線寄りに位置するノズル、および、上記1つの直線からみて第1軸負側に隣り合う中間線よりも上記1つの直線寄りに位置するノズルからなる列として定義される。
【0047】
<比較例>
次に、図8および図9を用いて比較例の構成について説明する。図8は、比較例としてのヘッドモジュールの要部底面図、図9は、比較例としてのヘッドモジュールを複数並べた場合の要部底面図である。
【0048】
比較例として示されたヘッドモジュール1Rは、媒体送り方向に対して角度θr傾斜した稜線を有し、ヘッド101rおよびノズル板10rもこの稜線に沿う形状に形成されている。ヘッド101rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板10rを有し、ノズル板10rには複数のノズル11rが規則的に二次元状に配列されている。ノズル11rの配列は、N個のノズル11rによって1列のノズル列11Nを成し、このノズル列11Nを、上述の稜線と平行に、且つ媒体送り方向と直交する方向に複数列設けた配列となっている。
【0049】
上記構成のヘッドモジュール1rは、図9に示すように複数のヘッドモジュール1ra、1rbを媒体送り方向と直交する方向に1列に並べることができる。しかし比較例は、ノズル列11Nが一律にN個のノズル11rから成る。そのため、複数のヘッドモジュール1ra,1rbに含まれるノズル11rを所定のピッチd(記録解像度)で並ぶように接続しつつ、ノズル列11N同士の左右方向(媒体送り方向と直交する方向)の間隔が等しくなるようにヘッドモジュール1r同士を並べようとすると、複数のヘッドモジュール1ra,1rbを左右方向に近接させる必要がある。したがって、両ヘッドモジュール間の間隔を十分に取ることが難しい。
【0050】
つまり、ヘッドモジュール1raの右端に位置するノズル列の隣に、ヘッドモジュール1rbの左端に位置するノズル列を並べる必要があり、両ノズル列の間に十分な間隔を確保することができない。そのため、端部のノズル列からヘッド101rの稜線までの距離が近く、外部からの衝撃などでノズルやそれにつながる圧力室や流路の破損をまねきやすいという課題がある。
【0051】
以下、本発明の実施形態に係るヘッドモジュールの構成について説明する。
【0052】
<第1実施形態>
図10および図11を用いて第1実施形態の構成について説明する。図10は、第1実施形態におけるヘッドモジュールの要部底面図、図11は、第1実施形態のヘッドモジュールを複数並べた場合の要部底面図である。
【0053】
第1実施形態として示したヘッドモジュール1は、ノズル板短手方向に対して角度θa傾斜した稜線を有する。また、ヘッドモジュール1に設けられるヘッド101、およびヘッド101に設けられるノズル板10も、この稜線に沿う形状に形成されている。ヘッド101は、外形形状が概略平行四辺形をしたノズル板10を有し、ノズル板10には複数のノズル11が規則的に二次元状に配列されている。
【0054】
ノズル11の配列は、N個のノズル11によって1列のノズル列11Nを成し、このノズル列11Nを、ノズル板短手方向に対して角度θb(≠θa)の傾きで、且つノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。つまり、ノズル列11Nを成す各ノズル11の並び方向は、ノズル板10の稜線の向きと異ならせて形成される。
【0055】
この結果、ノズル板10におけるノズル11の配列は、複数のノズル列が並ぶ方向(ノズル板長手方向)において中央寄りには1列にN個のノズル11を有するノズル列11Nが配置される。これに対し、ノズル板10の一方の端部には1列にM(<N)個のノズル11を有するノズル列11Mが配置され、他方の端部には1列にN-M個のノズル11を有するノズル列11Lが配置される。
【0056】
なお、本実施形態では、ノズル列11Nは、第1サブノズル群SBN1と、第1サブノズル群SBN1に対してノズル板短手方向に間隔を隔てて設けた第2サブノズル群SBN2とに分割して設けられる。複数のサブノズル群を設けることにより、サブノズル群が1つのみの場合に比べて、ノズル同士の物理的な距離(ノズル板10の表面におけるノズル11同士の距離)を確保しつつ、ヘッド101の記録解像度を高めることができる。
【0057】
なお、第1サブノズル群SBN1と第2サブノズル群SBN2とが互いに異なる色の液体を吐出するようにヘッドを構成してもよい。なお、媒体に記録される画像に実質的に影響しない限り、ノズル板長手方向において、ノズル板10の右側端部および/または左側端部の領域に配置されるノズル11同士の間隔を、中央の領域に配置されるノズル11同士の間隔と異ならせてもよい。
【0058】
また、ノズル板10の中央領域から一方の端部(図10では左側端部)へ向かうに従い、第1サブノズル群SBN1に含まれるノズル11の数は順次減少していく。そして、第1サブノズル群SBN1に含まれるノズル11の数がゼロになったあと、第2サブノズル群SBN2に含まれるノズル11の数が順次減少していくように、ノズル11が配置されている。
【0059】
ノズル板10の他方の端部(図10では右側端部)においては、ノズル板10の中央領域から他方の端部へ向かうに従い、第2サブノズル群SBN2に含まれるノズル11の数は順次減少していく。そして、第2サブノズル群SBN2に含まれるノズル11の数がゼロになったあと、第1サブノズル群SBN1に含まれるノズル11の数が順次減少していくように、ノズル11が配置されている。ここで、ノズル板10の一方の端部(図10では左側端部)は「第1の端部」の一例であり、ノズル板10の他方の端部(図10では右側端部)は「第2の端部」の一例である。
【0060】
上記構成のヘッドモジュール1は、図11に示すように複数のヘッドモジュール1a、1bをノズル板長手方向に1列に並べることができる。このとき、ヘッドモジュール1bのM個のノズル11からなるノズル列11Mと、ヘッドモジュール1aのN-M個のノズル11からなるノズル列11Lとが上下方向(ノズル板短手方向)に間隔を空けて整列する。その結果、ノズル列11Nと同等の、N個のノズル11からなるノズル列が形成される。ヘッドモジュール1bのノズル列11Mと、ヘッドモジュール1aのノズル列11Lと、を上下方向(ノズル板短手方向)に並べる際、両ヘッドモジュールの端部のノズル同士の間に上下方向に所定の隙間を空けつつ、ヘッドモジュール同士を接続することができる。
【0061】
これにより、ノズル11をヘッドモジュール1の端部ぎりぎりまで配置せず、また、ヘッドモジュール全体を他のヘッドモジュールに対して上下方向に大きくオフセットさせなくても、複数のヘッドモジュール1a、1bに含まれるノズル11を所定のピッチd(記録解像度)で並ぶようにヘッドモジュール同士を接続することができる。これにより、ヘッドモジュール1をノズル板長手方向に1列に並べて、任意の長さでライン状のヘッドを製作することが可能になる。
【0062】
また、ヘッドモジュール間に上下方向の間隔を確保し、端部のノズル11からヘッド101の稜線までの距離を長く取ることができるため、ヘッド101自体が強固になり、堅牢性を高めることができる。その結果、ヘッド101のノズル板10側面が外部から衝撃を受けた際にも、その側面の稜線からノズル、圧力室、流路等に衝撃が伝わりにくくなり、ヘッド101の破損を防ぐことができる。
【0063】
また、本発明は、図10に示した欠損領域A,Bというものを仮定して捉えることもできる。すなわち、ノズル板10の両端部にはそれぞれ中央寄りの領域と同じ規則で1列あたりN個のノズルが配置されたと仮定する。そして、ノズル板10の第1の端部(図10では左側の端部)におけるノズル板10の稜線の短辺よりも外側の領域を第1の欠損領域Aと定義する。また、ノズル板10の第2の端部(図10では右側の端部)におけるノズル板10の稜線の短辺よりも外側の領域を第2の欠損領域Bと定義する。
【0064】
上記のように定義したとき、本実施形態では、第1の端部において仮定したN個のノズルのうち、N-M個のノズルの少なくとも一部は、第1の欠損領域Aにあることになる。また、第2の端部において仮定したN個のノズルのうち、M個のノズルの少なくとも一部は、第2の欠損領域Bにあることになる。
【0065】
このようなノズル配列を有するヘッドモジュール1を図9のようにつなぎあわせることで、ヘッドサイズを大きくすることなくノズル列を規則的に配置することができる。
【0066】
上述のように本実施形態は、液体を吐出する複数のノズル11が、ノズル板の長手方向において記録解像度に対応する所定のピッチ(d)で配置されたノズル板10を備え、複数のノズル11は、ノズル板長手方向において(d×P)の間隔で配置される複数のサブノズルからなるP個(Pは1以上の整数)のサブノズル群SBN1,SBN2に分割され、サブノズル群SBN1,SBN2のそれぞれは、ノズル板長手方向に(d×P)の間隔で、かつ、ノズル板長手方向および当該ノズル板長手方向と直交するノズル板短手方向に対して角度θb傾斜した方向に並ぶ複数のサブノズルからなるサブノズル列11sb1,11sb2を有し、上記傾斜した方向に沿って一列に並ぶ、P個のサブノズル群SBN1,SBN2のサブノズル列11sb1,11sb2からなる列の組をノズル列11Nと定義したとき、ノズル板10には、ノズル板長手方向においてノズル板10の中央寄りの領域に、N個のノズルを有するノズル列11Nが配置され、ノズル板長手方向において中央寄りの領域よりも第1の端部側であるノズル板10の第1の端部(図10において左側端部)に、N個よりも少ないM個のノズルを有するノズル列11Mが配置され、ノズル板長手方向において中央寄りの領域よりも第1の端部側とは反対側の第2の端部側であるノズル板10の第2の端部(図10において右側端部)に、(N-M)個のノズルを有するノズル列11Lが配置される。
【0067】
これにより、端部のノズル11からヘッド101の稜線までの距離を長く取ることが可能になり、ヘッド101の堅牢性を高めることができる。その結果、ヘッド101が外部から衝撃を受けた際にも、ノズル、圧力室、流路等に衝撃が伝わりにくくなり、ヘッド101の破損を防ぐことができる。
【0068】
また、上述のように、ノズル列11N、11M、11Lの並ぶ向き(ノズル板短手方向に対し角度θb傾斜)は、ノズル板の短辺の稜線の向き(ノズル板短手方向に対し角度θa)と異なる。
【0069】
これにより、複数のノズル板10をノズル板長手方向に並べた際に、M個のノズルとN-M個のノズルとの間を横切るようにノズル板10の稜線の短辺が配置される。この場合、2つのノズル板10同士をノズル板短手方向に大きくオフセットさせなくても、1つのノズル板10のM個のノズルと他のノズル板のN-M個のノズルとを規則的に並べることができる。また、2つのノズル板10をその稜線の短辺同士が互いに対向するように並べて配置することで、ヘッド全体の短手方向のサイズを小さくできる。また、M個のノズルの端部のノズルから稜線の短辺までの距離、および、N個のノズルの端部のノズルから稜線の短辺までの距離を、ノズル板短手方向に確保することができ、外部からの衝撃等により端部のノズルが欠けることをより防止できる。
【0070】
また、上述のように、複数のノズル列11N、11M、11Lは、外形形状が概略平行四辺形の領域内に配置される。
【0071】
これにより、複数のノズル板10を規則的に並べて長尺なヘッドにすることができ、ヘッド全体のサイズを小型にできる。また、複数のヘッドを並べて構成されるヘッドユニットの全体のサイズを小型にできる。
【0072】
また、上述のように、Pの値は2以上の整数であり、複数のサブノズル群として第1サブノズル群SBN1と第2サブノズル群SBN2とを有し、中央寄りの領域から第1の端部(図10では左側端部)に向かうに従い、第1サブノズル群SBN1のサブノズル列11sb1に含まれるノズル11の数が順次減少していき、第1サブノズル群SBN1のサブノズル列11sb1に含まれるノズル11の数がゼロになったあと、第2サブノズル群SBN2のサブノズル列11sb2に含まれるノズル11の数が順次減少していくように、ノズル11が配置される。
【0073】
また、Pの値は2以上の整数であり、複数のサブノズル群として第1サブノズル群SBN1と第2サブノズル群SBN2とを有し、中央寄りの領域から第2の端部(図10では右側端部)に向かうに従い、第2サブノズル群SBN2のサブノズル列11sb2に含まれるノズルの数が順次減少していき、第2サブノズル群SBN2のサブノズル列11sb2に含まれるノズル11の数がゼロになったあと、第1サブノズル群SBN1のサブノズル列11sb1に含まれるノズル11の数が順次減少していくように、ノズル11が配置される。
【0074】
これにより、サブノズル群が1つのみの場合に比べてヘッドの記録解像度を高めることができ、かつ、ヘッド(ノズル板)の端部ぎりぎりまでノズル11を配置せずに、中央寄りの領域と同数のノズルからなるノズル列を形成することができる。
【0075】
また、上記第1の端部および第2の端部においてそれぞれ中央寄りの領域と同じ規則で一列あたりN個のノズルが配置されたと仮定し、第1の端部におけるノズル板10の稜線の短辺よりも外側の領域を第1の欠損領域Aと定義し、第2の端部におけるノズル板10の稜線の短辺よりも外側の領域を第2の欠損領域Bと定義したとき、第1の端部において仮定したN個のノズルのうち、N-M個のノズルの少なくとも一部は、第1の欠損領域Aにあり、第2の端部において仮定したN個のノズルのうち、M個のノズルの少なくとも一部は、第2の欠損領域Bにある。
【0076】
これにより、ヘッド(ノズル板)の端部ぎりぎりまでノズルを配置せずに、中央寄りの領域と同数のノズルからなるノズル列を形成することができる。
【0077】
<第2実施形態>
次に、図12および図13を用いて第2実施形態の構成について説明する。なお、以降の実施形態においては、ヘッドモジュール1の図示は省略し、ヘッド101(ノズル板10)のみに簡素化して説明する。図12は、第2実施形態におけるヘッドの要部底面図、図13は、第2実施形態のヘッドを複数並べた場合の要部底面図である。
【0078】
第1実施形態に示したヘッド101は、ノズル列11Nを、第1サブノズル群SBN1と第2サブノズル群SBN2とに分割したが、図12に示すようにノズル列11Nを分割しなくてもよい。この場合、ノズル列11N、11M、11Lをなすノズル11は、各ノズル列11N、11M、11L内において等間隔に並んで配置される。
【0079】
第2実施形態の場合も、第1実施形態と同様、図11に示すように複数のヘッド101a、101bをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、また、第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0080】
<第3実施形態>
次に、図14および図15を用いて第3実施形態の構成について説明する。図14は、第3実施形態におけるヘッドの要部底面図、図15は、第3実施形態のヘッドを複数並べた場合の要部底面図である。
【0081】
第3実施形態として示すヘッド101は、第1実施形態および第2実施形態よりも、ノズル板長手方向と成す傾き(角度θc)を大きくしている。ヘッド101は、外形形状が概略平行四辺形をしたノズル板10を有し、ノズル板10には複数のノズル11が規則的に二次元状に配列されている。ノズル11の配列は、N個のノズル11によって1列のノズル列11Nを成し、このノズル列11Nを、ノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
【0082】
複数のノズル列の並び方向(ノズル板長手方向)において、中央寄りの領域には、N個のノズル11を有するノズル列11Nを配置し、両端部には、N/2個のノズル11を有するノズル列11Na、11Nbを配置する。ノズル列11Nは、ノズル列の並び方向と交差する方向(ノズル板短手方向)において第1サブノズル群SBN1と、第2サブノズル群SBN2とに分割して設けられる。また、N/2個のノズル11を有するノズル列11Na、11Nbのうち、ノズル列11Naは第1サブノズル群SBN1のみから構成され、ノズル列11Nbは第2サブノズル群SBN2のみから構成される。
【0083】
第3実施形態の場合も、第1および第2実施形態と同様、図15に示すように複数のヘッド101a、101bをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、第1および第2実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0084】
また、第3実施形態では、ヘッド101(ノズル板10)の傾きを大きくし、ノズル11をヘッドモジュール1の端部からさらに内側に配置することができるようになる。つまり、ノズル11をヘッドモジュール1の端部から遠ざけて配置することが可能になる。そのため、ヘッドモジュール1の端部に外部からの衝撃が加わった場合、その衝撃をノズル、圧力室、流路等に、より伝わりにくくすることができる。
【0085】
<第4実施形態>
次に、図16を用いて第4実施形態の構成について説明する。図16は、第4実施形態におけるヘッドの要部底面図である。
【0086】
第3実施形態に示したヘッド101は、ノズル列11Nを、第1サブノズル群SBN1と第2サブノズル群SBN2とに分割したが、図16に示すようにノズル列11Nを分割しなくてもよい。すなわち、サブノズル群の個数P=1としてもよい。この場合、各ノズル列11N、11M、11Lの列の中でノズル11が等間隔に並んで配置される。
【0087】
ノズル11の配列は、複数のノズル列が並ぶ方向(ノズル板長手方向)において、中央寄りには1列にN個のノズル11を有するノズル列11Nが配置される。また、中央寄りの領域から両端部に向かうに従い、M(<N)個のノズル11を有するノズル列11M、N-M個のノズル11を有するノズル列11Lと、ノズル数が減少していくように、ノズル11が配置される。
【0088】
第4実施形態の場合も、第3実施形態と同様、複数のヘッド101を媒体送り方向と直交方向に1列に並べることが可能であり、また、第3実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0089】
<第5実施形態>
次に、図17を用いて第5実施形態の構成について説明する。図17は、第5実施形態におけるヘッドの概略底面図である。
【0090】
例えば、第3実施形態では、図17(b)に示すように第1サブノズル群SBN1を成す第1サブノズル列11sb1と第2サブノズル群SBN2を成す第2サブノズル列11sb2とがおおよそ直線ノズル列直線上で整列する配置とした。これに対し、第5実施形態では、図17(a)に示すように、第1サブノズル列11sb1を通る直線Lsb1と第2サブノズル列11sb2を通る直線Lsb2とが重ならない配置としている。
【0091】
つまり、第5実施形態では、第1サブノズル列11sb1を通る直線Lsb1上に、第2サブノズル列11sb2を配置せず、図17(a)において最も左端に位置する第1サブノズル列11sb1を通る直線Lsb1の外側に、第2サブノズル列11sb2を配置する。逆に、右端においては、第2サブノズル列11sb2の外側に第1サブノズル列11sb1を配置する。
【0092】
ノズル列11Nは、以下(i)、(ii)および(iii)の各ノズルからなる列として定義する。
【0093】
(i)第1サブノズル群SBN1および第2サブノズル群SBN2の全体に含まれる複数のノズル11のうち、ノズル列直線群に含まれる1つの直線(すなわち、図17(a)において第1サブノズル列11sb1の各ノズルを通る直線)上にある第1サブノズル列11sb1の各ノズル。
【0094】
(ii)当該1つの直線からみてノズル板長手方向において第1軸正側に隣り合う中間線LB上または当該中間線LBよりも上記1つの直線寄りに位置するノズル(すなわち、図17(a)において第2サブノズル列11sb2の各ノズル)。
【0095】
(iii)上記1つの直線からみて第1軸負側に隣り合う中間線LAよりも上記1つの直線寄りに位置するノズル(図17(a)においては該当するノズルなし)。
【0096】
なお、図18に示すように2本の中間線LA,LB上に2つの第2サブノズル列11sb2が一致するような場合も、ノズル列11Nは、以下(i)、(ii)および(iii)の各ノズルからなる列として定義する。
【0097】
(i)1サブノズル群SBN1および第2サブノズル群SBN2の全体に含まれる複数のノズル11のうち、ノズル列直線群に含まれる1つの直線(すなわち、図18において第1サブノズル列11sb1の各ノズルを通る直線)上にある第1サブノズル列11sb1の各ノズル。
【0098】
(ii)当該1つの直線からみてノズル板長手方向において第1軸正側に隣り合う中間線LB上または当該中間線LBよりも上記1つの直線寄りに位置するノズル(すなわち、図18において第2サブノズル列11sb2の各ノズル)。
【0099】
(iii)上記1つの直線からみて第1軸負側に隣り合う中間線LAよりも上記1つの直線寄りに位置するノズル(図18においては該当するノズルなし)。
【0100】
このように定義されたノズル列は、ノズル板10において、ノズル板長手方向においてノズル板の中央寄りの領域でN個のノズルを有するノズル列として配置され、ノズル板長手方向において中央寄りの領域よりも第1の端部側である前記ノズル板の第1の端部にN個よりも少ない(N/2)個のノズルを有するノズル列として配置され、ノズル板長手方向において中央寄りの領域よりも第1の端部側とは反対側の第2の端部側であるノズル板の第2の端部に、(N/2)個のノズルを有するノズル列として配置される。
【0101】
これにより、第1実施形態と同様に、堅牢性に優れ、外部からの衝撃による破損を低減することが可能な液体吐出ヘッドとすることができる。また、上記の構成とすることで、第3実施形態が有する効果に加え、第1サブノズル群SBN1と第2サブノズル群SBN2の距離を任意に設定することが可能になり、設計自由度を増すことができる。
【0102】
なお、第5実施形態については、図17および図18に示したノズル配列に限るものではなく、図6および図7で説明したノズル列の定義の範疇において、適宜変更してよい。
【0103】
また、これまでの実施形態においては、ノズル板10を1つずつ備えたヘッド101を複数個並べてヘッドユニット555とする構成を説明した。しかし、1つのヘッド101に設けるノズル板10の数は必ずしも1つでなくてもよい。例えば、1つのヘッド101にノズル板10を複数備え、この複数のノズル板10がノズル板長手方向に1つのヘッド101内で複数個並んで設けられるように構成してもよい。
【0104】
上記構成の場合にも、ヘッド101が外部から衝撃を受けた際、ノズル、圧力室、流路等に衝撃が伝わりにくくなり、ヘッド101の破損を防ぐことができる。
【0105】
<変形例>
次に、図19を用いて本実施形態の変形例について説明する。図19は、変形例を示すヘッドの概略底面図である。
【0106】
上述の各実施形態では、複数のヘッド101を並べる際、ノズル板短手方向に伸びた稜線同士を隣り合わせにしたが、図19に示すようにノズル板長手方向に伸びる稜線同士を隣り合わせにしてヘッド101を並べる構成としてもよい。
【0107】
本変形例によれば、ヘッド101aの右端部のノズル列11Naと、ヘッド101bの左端部のノズル列11Nbとの間に十分な間隔が得られ、ヘッド101の端部への衝撃に対する堅牢性をより高めることができる。
【0108】
次に、図20を用いて本実施形態の変形例について説明する。図20は、ヘッドユニットの変形例を示した底面図である。
【0109】
図2に示したヘッドユニット555は、媒体送り方向と直交する方向(ノズル板長手方向)に複数のヘッドモジュール1a~1dを並べることで構成されている。これに対し、図20に示すヘッドユニット555´は、ヘッド保持部材102や、マウント部材103をノズル板10(ヘッド101)毎に設けずに、一体の部材として構成している。これにより、例えば、複数のノズル板10に対して流路や配線の少なくとも一部を共通にすることができる等の効果を奏する。
【0110】
<適用例>
<<適用例1>>
本発明の液体吐出ヘッドは、立体造形物を形成するために用いられる液体も吐出可能である。立体造形物を形成するために用いられる液体として例えば、治療の手技トレーニングに用いられる三次元立体構造体を形成するための、ハイドロゲル形成材料が挙げられる。ハイドロゲル形成材料は、水および重合性モノマーを含有し、鉱物、有機溶媒を含有することが好ましく、さらに必要に応じて、重合開始剤、その他の成分を含有する。重合性モノマーは、不飽和炭素-炭素結合を1つ以上有する化合物であり、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合する重合性モノマーが好ましい。
【0111】
重合性モノマーとしては、例えば、単官能モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。多官能モノマーとしては、例えば、2官能モノマー、3官能モノマー、4官能以上のモノマーなどが挙げられる。
【0112】
鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ハイドロゲルが水を主成分とすることから、粘土鉱物が好ましく、さらに、水中で一次結晶のレベルで均一に分散可能な層状粘土鉱物が好ましく、水膨潤性層状粘土鉱物がより好ましい。
【0113】
有機溶媒としては、例えば、水溶性有機溶媒などが挙げられる。水溶性有機溶媒の水溶性とは、有機溶媒が水に対して30質量%以上溶解可能であることを意味する。水溶性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の炭素数1以上4以下のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルコールエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0114】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保湿性の点から、多価アルコール、グリセリン、プロピレングリコールが好ましく、グリセリン、プロピレングリコールがより好ましい。
【0115】
重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。光重合開始剤としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることができる。なお、ハイドロゲル形成材料を用いて立体造形する場合には、UV(Ultra Violet)照射機構を設け、吐出したハイドロゲル形成材料にUV照射することで硬化して形成する。
【0116】
(ハイドロゲル形成材料具体例)
減圧脱気を30分間実施したイオン交換水120.0質量部を撹拌させながら、層状粘土鉱物として[Mg5.34Li0.66Si8O20(OH)4]Na-0.66の組成を有する合成ヘクトライト(ラポナイトXLG、RockWood社製)12.0質量部を少しずつ添加して撹拌した。さらに、エチドロン酸(東京化成工業株式会社製)0.6質量部を加えて撹拌して分散液を作製した。得られた分散液に、重合性モノマーとして、活性アルミナのカラムを通過させ重合禁止剤を除去したアクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製)44.0質量部、メチレンビスアクリルアミド(東京化成工業株式会社製)0.4質量部を添加した。さらに、グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)20.0質量、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)0.8質量部混合し、ハイドロゲル形成用材料を得た。
【0117】
<<適用例2>>
本発明の液体吐出ヘッドは、細胞からなる組織体を人工的に形成するために、細胞を任意に配置するためのインクジェット法にも使用可能であり、細胞懸濁液(細胞インク)を吐出可能である。細胞懸濁液(細胞インク)は、少なくとも細胞および細胞乾燥抑制剤を含有する。さらに、細胞懸濁液(細胞インク)は、細胞を分散させる分散培を含有し、必要に応じて、分散剤、pH調整剤などのその他の添加材料を含有してもよい。
【0118】
細胞は、その種類等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分類学的に、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
真核細胞としては、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、動物細胞が好ましく、細胞が細胞集合体を形成する場合は、細胞と細胞とが互いに接着し、物理化学的な処理を行わなければ単離しない程度の細胞接着性を有する接着性細胞がより好ましい。
【0120】
細胞乾燥抑制剤としては、細胞の表面を覆い、細胞の乾燥を抑制する働きを有するものであり、例えば、多価アルコール類、ゲル状多糖類、および細胞外基質から選ばれる蛋白質などが挙げられる。
【0121】
分散培としては、細胞培養用の培地や緩衝液が好ましい。培地は、細胞組織体の形成と維持に必要な成分を含み、乾燥を防ぎ浸透圧などの外部環境を整える溶液であり、培地として知られているものであれば適宜選択して使用することができる。細胞を常時培地液内に浸しておく必要がない場合には、細胞懸濁液から培地は適宜除去することができる。緩衝液は、細胞や目的に合わせpHを調整するためのものであり、公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0122】
(細胞懸濁液(細胞インク)具体例)
緑色蛍光染料(商品名:Cell Tracker Green、Life Technologies社製)を10mmol/L(mM)の濃度でジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と称す)へ溶解させ、無血清ダルベッコ変法イーグル培地(Life Technologies社製)と混合し、濃度10μmol/L(μM)の緑色蛍光染料含有無血清培地を調製した。次に、培養したNIH/3T3細胞(Clone 5611、JCRB Cell Bank)のディッシュに緑色蛍光染料含有無血清培地を5mL添加し、インキュベーター(KM-CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5体積%CO2環境))内で30分間培養した。その後、アスピレータを用いて、上澄みを除去した。ディッシュにリン酸緩衝生理食塩水(Life Technologies社製、以下、PBS(-)とも称する)を5mL加え、アスピレータでPBS(-)を吸引除去し、表面を洗浄した。PBS(-)による洗浄作業を2回繰り返した後、0.05質量%トリプシン-0.05質量%EDTA溶液(life technologies社製)をディッシュ1枚あたり2mL加えた。
【0123】
次に、インキュベーター内にて5分間加温し、ディッシュから細胞を剥離した後、10質量%ウシ胎児血清(以下、「FBS」とも称す)および1質量%抗生物質(Antibiotic-Antimycotic Mixed Stock Solution(100x)、ナカライテスク株式会社製)を含むD-MEMを4mL加えた。次に、トリプシンを失活させた細胞懸濁液を50mL遠沈管1本に移し、遠心分離(商品名:H-19FM、KOKUSAN社製、1,200rpm、5分間、5℃)を行い、アスピレータを用いて上清を除去した。
【0124】
除去後、遠沈管に10質量%FBSおよび1質量%抗生物質を含むD-MEMを2mL添加し、穏やかにピペッティングを行い、細胞を分散させ細胞懸濁液を得た。この細胞懸濁液から10μLをエッペンドルフチューブに取り出し、培地を70μL添加後、10μLを別のエッペンドルフチューブに取り出し、0.4質量%トリパンブルー染色液10μLを加えてピペッティングを行った。染色した細胞懸濁液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せた。
【0125】
商品名:Countess Automated Cell Counter(インビトロジェン社製)を用いて細胞数を計測して細胞数を求めることで、細胞数を計測した細胞懸濁液を得た。分散培としてPBS(-)を用いた。PBS(-)へ、細胞乾燥抑制剤としてグリセリン(分子生物学用グレード、和光純薬工業株式会社製)を質量比0.5質量%となるように溶解させ、NIH/3T3細胞懸濁液を6×106cell/mLとなるように分散培へ分散させて、細胞インクを得た。
【0126】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0127】
第1の態様は、液体を吐出する複数のノズルが、ノズル板の長手方向において記録解像度に対応する所定のピッチ(d)で配置されたノズル板を備え、前記複数のノズルは、前記ノズル板長手方向において(d×P)の間隔で配置される複数のサブノズルからなるP個(Pは1以上の整数)のサブノズル群(例えば、第1サブノズル群SBN1,第2サブノズル群SBN2)に分割され、前記サブノズル群のそれぞれは、前記ノズル板長手方向に前記(d×P)の間隔で、かつ、前記ノズル板長手方向および該ノズル板長手方向と直交するノズル板短手方向に対して傾斜した方向に並ぶ複数のサブノズルからなるサブノズル列(例えば、サブノズル列11sb1,11sb2)を有し、前記傾斜した方向に沿って一列に並ぶ、P個のサブノズル群のサブノズル列からなる列の組をノズル列(例えば、ノズル列11N)と定義したとき、前記ノズル板には、前記ノズル板長手方向において前記ノズル板の中央寄りの領域に、N個のノズルを有する前記ノズル列が配置され、前記ノズル板長手方向において前記中央寄りの領域よりも第1の端部側である前記ノズル板の第1の端部(例えば、図10においてノズル板10の左側端部)に、前記N個よりも少ないM個のノズルを有する前記ノズル列(例えば、ノズル列11M)が配置され、前記ノズル板長手方向において前記中央寄りの領域よりも前記第1の端部側とは反対側の第2の端部側である前記ノズル板の第2の端部(例えば、図10においてノズル板10の右側端部)に、(N-M)個のノズルを有する前記ノズル列(例えば、ノズル列11L)が配置されることを特徴とするものである。
【0128】
第1の態様によれば、堅牢性に優れ、外部からの衝撃による破損を低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0129】
第2の態様は、第1の態様において、前記ノズル列の並ぶ向き(例えばノズル板短手方向に対し角度θb傾斜した方向)は、前記ノズル板の短辺の稜線の向き(例えばノズル板短手方向に対し角度θa傾斜した方向)と異なることを特徴とするものである。
【0130】
第2の態様によれば、複数のノズル板(ヘッド)をノズル板長手方向に並べた際に、M個のノズルとN-M個のノズルとの間を横切るようにノズル板の稜線の短辺が配置される。この場合、2つのノズル板同士をノズル板長手方向と直交するノズル板短手方向に大きくオフセットさせなくても、1つのノズル板のM個のノズルと他のノズル板のN-M個のノズルとを規則的に並べることができる。2つのノズル板をその稜線の短辺同士が互いに対向するように並べて配置することで、ヘッド全体の短手方向のサイズを小さくできる。また、M個のノズルの端部のノズルから稜線の短辺までの距離、および、N個のノズルの端部のノズルから稜線の短辺までの距離を、ノズル板短手方向に確保することができ、外部からの衝撃等により端部のノズルが欠けることをより防止できる。
【0131】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、複数の前記ノズル列は、外形形状が概略平行四辺形の領域内に配置されることを特徴とするものである。
【0132】
第3の態様によれば、複数のノズル板を規則的に並べて長尺なヘッドにすることができ、ヘッド全体のサイズを小型にできる。また、複数のヘッドを並べて構成されるヘッドユニットの全体のサイズを小型にできる。
【0133】
第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記Pの値は2以上の整数であり、複数のサブノズル群として第1のサブノズル群(例えば、第1サブノズル群SBN1と第2のサブノズル群(例えば、第2サブノズル群SBN2)とを有し、前記中央寄りの領域から前記第1の端部(例えば、図10においてノズル板10の左側端部)に向かうに従い、前記第1のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数が順次減少していき、前記第1のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数がゼロになったあと、前記第2のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数が順次減少していくように、前記ノズルが配置されることを特徴とするものである。
【0134】
第4の態様によれば、2つのサブノズル群を有することで、サブノズル群が1つのみの場合に比べてヘッドの記録解像度を高めることができ、かつ、ヘッド(ノズル板)の端部ぎりぎりまでノズルを配置せずに、中央寄りの領域と同数のノズルからなるノズル列を形成することができる。
【0135】
第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記Pの値は2以上の整数であり、複数のサブノズル群として第1のサブノズル群(例えば、第1サブノズル群SBN1と第2のサブノズル群(例えば、第2サブノズル群SBN2)とを有し、前記中央寄りの領域から前記第2の端部(例えば、図10においてノズル板10の右側端部)に向かうに従い、前記第2のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数が順次減少していき、前記第2のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数がゼロになったあと、前記第1のサブノズル群の前記サブノズル列に含まれるノズルの数が順次減少していくように、前記ノズルが配置されることを特徴とするものである。
【0136】
第5の態様によれば、2つのサブノズル群を有することで、サブノズル群が1つのみの場合に比べてヘッドの記録解像度を高めることができ、かつ、ヘッド(ノズル板)の端部ぎりぎりまでノズルを配置せずに、中央寄りの領域と同数のノズルからなるノズル列を形成することができる。
【0137】
第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記第1の端部(例えば、図10においてノズル板10の左側端部)および前記第2の端部(例えば、図10においてノズル板10の右側端部)においてそれぞれ前記中央寄りの領域と同じ規則で一列あたりN個のノズルが配置されたと仮定し、前記第1の端部における前記ノズル板の前記稜線の短辺よりも外側の領域を第1の欠損領域(例えば、第1の欠損領域A)と定義し、前記第2の端部における前記ノズル板の前記稜線の短辺よりも外側の領域を第2の欠損領域(例えば、第2の欠損領域B)と定義したとき、前記第1の端部において仮定したN個のノズルのうち、N-M個のノズルの少なくとも一部は、前記第1の欠損領域にあり、前記第2の端部において仮定したN個のノズルのうち、M個のノズルの少なくとも一部は、前記第2の欠損領域にあることを特徴とするものである。
【0138】
第6の態様によれば、ヘッド(ノズル板)の端部ぎりぎりまでノズルを配置せずに、中央寄りの領域と同数のノズルからなるノズル列を形成することができる。
【0139】
第7の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記Pの値は2以上の整数であり、複数のサブノズル群として第1のサブノズル群(例えば、第1サブノズル群SBN1)と第2のサブノズル群(例えば、第2サブノズル群SBN2)とを有し、前記ノズル板長手方向において中央寄りの領域に、N個のノズルを有するノズル列を配置し、前記ノズル板長手方向において端部に、前記第1のサブノズル群の前記サブノズル列のみ、または、前記第2のサブノズル群の前記サブノズル列のみからなるN/2個のノズルを有するノズル列(例えば、ノズル列11Na、11Nb)を配置することを特徴とするものである。
【0140】
第7の態様においても、堅牢性に優れ、外部からの衝撃等による破損を低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。また、複数のヘッドを並べて構成されるヘッドユニットの全体のサイズを小型にできる。
【0141】
第8の態様は、第1の態様乃至第7の態様のいずれかにおいて、前記液体吐出ヘッドは、前記ノズル板を複数備え、複数の前記ノズル板が前記ノズル板長手方向に複数個並んで設けられることを特徴とするものである。
【0142】
第8の態様によれば、例えば、複数のノズル板に対して流路や配線の少なくとも一部を共通にできる等、構成の簡素化、設計自由度を増すことができる。
【符号の説明】
【0143】
1 ヘッドモジュール
101 ヘッド
102 ヘッド保持部材
103 マウント部材
104 駆動回路
105 基板(フレキシブル配線基板)
10 ノズル板
11 ノズル
11L ノズル列(ノズルN-M個)
11M ノズル列(ノズルM個)
11N ノズル列(ノズルN個)
11Na、11Nb ノズル列(ノズルN/2個)
11sb1 第1サブノズル列
11sb2 第2サブノズル列
SBN1 第1サブノズル群
SBN2 第2サブノズル群
20 流路板(個別流路部材)
21 圧力室
22 個別供給流路
23 個別回収流路
25 個別流路
30 振動板部材
31 振動板
32 供給側開口
33 回収側開口
40 圧電素子
50 共通流路部材
52 共通供給流路支流
53 共通回収流路支流
54 供給口
55 回収口
56 共通供給流路本流
57 共通回収流路本流
60 ダンパ部材
62 供給側ダンパ
63 回収側ダンパ
80 フレーム部材
81 供給ポート
82 排出ポート
500 印刷装置
555 ヘッドユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0144】
【特許文献1】特開2013-173264号公報
【特許文献2】特開2007-160566号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20