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特開2023-143652液体組成物セット、画像形成方法、及び画像形成装置
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  • 特開-液体組成物セット、画像形成方法、及び画像形成装置 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143652
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】液体組成物セット、画像形成方法、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20230928BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230928BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20230928BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20230928BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20230928BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41J2/01 123
B41J2/01 501
C09D11/54
C09D11/322
C09B67/20 F
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175549
(22)【出願日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022047265
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩加
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EE18
2C056FB03
2C056FC01
2C056HA42
2C056HA45
2C056HA46
2C056HA47
2H186AB02
2H186AB03
2H186AB06
2H186AB12
2H186AB39
2H186AB41
2H186AB47
2H186AB54
2H186AB55
2H186AB56
2H186BA08
2H186DA17
2H186FB07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
4J039AE06
4J039BA13
4J039EA18
4J039EA36
4J039EA43
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】布帛に対して、優れた白隠蔽性と堅牢性とを両立する画像を形成することができる液体組成物のセットを提供すること。
【解決手段】白色インクと、樹脂を含有しており前記白色インクの前に布帛に付与される第二処理液と、有機酸塩を含有しており前記第二処理液の前に布帛に付与される第一処理液と、を有する液体組成物のセットである。
【選択図】図1B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色インクと、
樹脂を含有しており前記白色インクの前に布帛に付与される第二処理液と、
有機酸塩を含有しており前記第二処理液の前に布帛に付与される第一処理液と、
を有することを特徴とする液体組成物のセット。
【請求項2】
前記有機酸塩が、酢酸カルシウム及び乳酸カルシウムの少なくともいずれかである、請求項1に記載の液体組成物のセット。
【請求項3】
前記樹脂が、オキサゾリン基を有する、請求項1から2のいずれかに記載の液体組成物のセット。
【請求項4】
前記第二処理液における前記樹脂の含有量が、3質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の液体組成物のセット。
【請求項5】
前記第一処理液における前記有機酸塩の含有量が、6質量%以上10質量%以下である、請求項4に記載の液体組成物のセット。
【請求項6】
前記樹脂のガラス転移温度(Tg)が、0℃未満である、請求項1に記載の液体組成物のセット。
【請求項7】
前記白色インクが、カルボキシル基を有する樹脂を含有する、請求項1に記載の液体組成物のセット。
【請求項8】
前記白色インクを乾燥させて得られる乾燥物の、25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率G’が、7.0×10Pa以下である、請求項1に記載の液体組成物のセット。
【請求項9】
布帛に、有機酸塩を含有する第一処理液を付与する第一処理液付与工程と、
前記第一処理液が付与された領域に、樹脂を含有する第二処理液を付与する第二処理液付与工程と、
前記第二処理液が付与された領域に、白色インクを付与する白色インク付与工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
請求項1に記載の液体組成物セットを用いて行われる、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記第二処理液付与工程が、前記布帛に付与された前記第一処理液が湿潤状態にあるうちに、前記第一処理液が付与された領域に前記第二処理液を付与することにより行われ、
前記白色インク付与工程が、前記第二処理液が湿潤状態にあるうちに、前記第二処理液が付与された領域に前記白色インクを付与することにより行われる、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項12】
布帛に、有機酸塩を含有する第一処理液を付与する第一処理液付与手段と、
前記第一処理液が付与された領域に、樹脂を含有する第二処理液を付与する第二処理液付与手段と、
前記第二処理液が付与された領域に、白色インクを付与する白色インク付与手段と、
を含むことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物セット、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有し、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。近年では、家庭用のみならず、織物や編物等ファブリックに対しても、捺染可能なことを特徴とするインクジェット記録方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、Tシャツ等の衣類に直接印字する、いわゆるDTG(Direct to Garment)分野では、従来の綿や綿とポリエステルとの混紡メディアだけでなく、スポーツウェア向けの需要が急増しており、ポリエステルメディア対応性が求められている。このような動向は、DTG分野のみならず、捺染分野全体に認められ、巻出巻取機構を備えたインクジェット印刷機においても、綿やポリエステルを始めとする様々な素材のファブリックに対して、発色性及び種々堅牢性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要が益々高まりつつある。
【0004】
例えば、インク組成物を布帛に付着させる前に、処理液組成物をポリエステル布帛に塗布する捺染方法が開示されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、布帛に対して、優れた白隠蔽性と堅牢性とを両立する画像を形成することができる液体組成物のセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体組成物のセットは、白色インクと、樹脂を含有しており前記白色インクの前に布帛に付与される第二処理液と、有機酸塩を含有しており前記第二処理液の前に布帛に付与される第一処理液と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、布帛に対して、優れた白隠蔽性と堅牢性とを両立する画像を形成することができる液体組成物のセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、本発明の画像形成装置の一例を示す概略説明図である。
図1B図1Bは、本発明の画像形成装置の別の一例を示す概略説明図である。
図2図2は、図1A又は図1Bの画像形成装置の制御手段の一例を示す概略説明図である。
図3図3は、図1A又は図1Bの画像形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明のインクカートリッジの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(液体組成物セット)
本発明の液体組成物セットは、白色インクと、樹脂を含有しており前記白色インクの前に布帛に付与される第二処理液と、有機酸塩を含有しており前記第二処理液の前に布帛に付与される第一処理液と、を有し、更に必要に応じて、その他の構成を有する。
【0010】
本明細書において、「液体組成物セット」とは、前記第一処理液、前記第二処理液、及び前記白色インクがそれぞれ独立した状態で存在していればよい。例えば、前記液体組成物セットは、前記第一処理液を収容している第一処理液収容手段、前記第二処理液を収容している第二処理液収容手段、及び前記白色インクを収容している白色インク収容手段が一体化した状態で製造、販売等されている場合に限られない。例えば、前記液体組成物セットは、前記第一処理液収容手段、前記第二処理液収容手段、及び前記白色インク収容手段が独立して製造、販売等されていたとしても、前記第一処理液、前記第二処理液、及び前記白色インクが併用されることを前提としている場合、あるいは、前記第一処理液、前記第二処理液、及び前記白色インクが併用されることを実質的に誘導している場合などは、本発明の液体組成物セットに含まれる。
【0011】
従来、公知のインクジェット法等による画像形成方法では、布帛、特に濃色の染料で染色されたポリエステル等の化学繊維からなる布帛においては、カラーインクの下地層として白色インクを用いて印刷した場合、白色インクの熱定着時に布帛中の染料の移染が生じ、白色インクによる十分な白隠蔽性や堅牢性が得られないという課題があった。
【0012】
これに対し、本発明の液体組成物セットによれば、布帛に白色インクを付与する前に、前記第一処理液と、前記第二処理液とをこの順で付与して前処理することで、前記第一処理液が含有する有機酸塩中のカルボキシル基と、前記第二処理液が含有する樹脂とが架橋反応し、布帛中の繊維表面で前記樹脂が凝集化して樹脂膜が形成されるため、繊維表面に前記樹脂を留めることができる。これにより、その後に白色インクを付与し、熱定着を行った場合であっても、布帛中の染料等の白色インクへの移染を防ぐことができ、また白色インクの布帛への浸透も抑制することができるため、白隠蔽性に優れる画像を得ることができる。更に、前記樹脂が凝集化して形成された樹脂膜は強固なものであるため、堅牢性にも優れるものである。
【0013】
[白隠蔽性]
前記白隠蔽性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、85%以上が好ましく、88%以上がより好ましく、93%以上が更に好ましい。前記白隠蔽性が、85%以上であると、布帛に対する白隠蔽性に優れるものである。
【0014】
前記液体組成物セットにおいて、前記白色インクにより布帛に形成された白色画像の白隠蔽性は、白色インクによる画像形成前の布帛の光学濃度(OD)、及び白色インクによる画像形成後の光学濃度(OD)に基づき下記式(1)により算出した白隠蔽性(%)により評価することができる。
前記白色画像の光学濃度(OD)は、分光濃度測色計(例えば、X-Rite eXact、ビデオジェット・エックスライト株式会社製)を用いて測定することができる。
白隠蔽性(%)=(OD-OD)/OD×100 ・・・ 式(1)
【0015】
[堅牢性]
前記液体組成物セットで表面に画像形成された布帛の堅牢性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、洗濯堅牢性であることが好ましい。
前記洗濯堅牢性は、AATCC 61-2Aに準拠した洗濯堅牢性試験により評価することができ、等級が、3.5級以上であることが好ましく、4.0級以上であることがより好ましく、4.5級以上であることが更に好ましい。
なお、AATCC 61-2Aは、American Association of Textile Chemists and Colorists(リサーチ・トライアングル・パーク、米国ノースカロライナ州)によって開発された試験である。
【0016】
以下、本発明の液体組成物セットについて説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、又は削除などの当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用及び効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0017】
<第一処理液>
前記第一処理液は、有機酸塩を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記第一処理液は、布帛上で前記第二処理液中の樹脂及び白色インク中に好ましく含有される樹脂及び顔料分散体を凝集させる役割を有する。具体的には、前記第一処理液中の前記有機酸塩と、前記第二処理液中の樹脂及び前記白色インク中に好ましく含有される樹脂及び顔料分散体とが反応し、布帛上で前記樹脂及び顔料分散体が凝集化する。これにより、布帛表層に前記樹脂及び前記顔料を留めることができ、白隠蔽性に優れた画像が得られる。
【0018】
<<有機酸塩>>
前記第一処理液に含有される有機酸塩としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択できるが、カルボキシル基を有する有機酸塩が好ましく、例えば、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の水溶性の有機酸塩が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記有機酸塩の具体例としては、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、乳酸アルミニウム、乳酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらの中でも、前記有機酸塩としては、溶解性に優れ、また、良好な白隠蔽性と堅牢性が得られる点から、酢酸カルシウム及び乳酸カルシウムの少なくともいずれかが好ましい。
【0020】
前記第一処理液における前記有機酸塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その下限値としては、白隠蔽性の観点から、前記第一処理液の全質量に対して1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。また、前記第一処理液における前記有機酸塩の含有量の上限値としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶解性の観点から、前記第一処理液の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。前記第一処理液における前記有機酸塩の含有量の下限値と上限値とは適宜組み合わせることができ、3質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましく、6質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0021】
<<その他の成分>>
前記第一処理液における前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、水、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
-有機溶剤-
前記有機溶剤としては、特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができ、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物;プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。
【0024】
前記有機溶剤は、湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0025】
また、前記有機溶剤としては、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。
前記炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
前記グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0026】
前記第一処理液における前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、前記第一処理液の付与方法などに応じて適宜選択することができる。例えば、前記第一処理液をスプレーコート法で付与する場合は、前記第一処理液は前記有機溶剤を含有する必要はない。一方、前記第一処理液をインクジェット法で付与する場合は、ヘッドへの保湿性や吐出可能な粘度域へのマッチングの観点から、前記第一処理液は前記有機溶剤を含有することが好ましい。
このような場合の前記第一処理液における前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第一処理液の全質量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0027】
-水-
前記第一処理液における前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記第一処理液における水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第一処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記第一処理液の全質量に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0029】
-界面活性剤-
前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
--シリコーン系界面活性剤--
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すため特に好ましい。
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0031】
前記シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学株式会社などから入手できる。
【0032】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
但し、前記一般式(S-1)中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。
【0033】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(以上、信越化学工業株式会社製)、EMALEX SS-5602、EMALEX SS-1906EX(以上、日本エマルジョン株式会社製)、DOWSIL FZ-2105、DOWSIL FZ-2118、DOWSIL FZ-2154、DOWSIL FZ-2161、DOWSIL FZ-2162、DOWSIL FZ-2163、DOWSIL FZ-2164(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(以上、ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などが挙げられる。
【0034】
--フッ素系界面活性剤--
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましく、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
【0036】
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
【0037】
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
【0038】
これらのフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、例えば、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0039】
これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に下記一般式(F-1)及び下記一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
但し、前記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するために、「m」は、0~10の整数が好ましく、「n」は、0~40の整数が好ましい。
【化3】
但し、前記一般式(F-2)で表される化合物において、「Y」はH、C2m+1(但し、「m」は1~6の整数)、CHCH(OH)CH-C2q+1(但し、「q」は4~6の整数)、又はC2p+1(但し、「p」は1~19の整数)であり、「n」は1~6の整数であり、「a」は4~14の整数である。
【0040】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロン(登録商標)S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(以上、AGCセイミケミカル株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(以上、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(以上、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)(登録商標)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(以上、DuPont社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(以上、株式会社ネオス製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(以上、オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性が著しく向上する点から、DuPont社製のゾニール(Zonyl)(登録商標)FS-3100、FS-34、FS-300;株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0041】
--両性界面活性剤--
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
--ノニオン系界面活性剤--
前記ノニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
--アニオン系界面活性剤--
前記アニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記第一処理液における前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、前記第一処理液の付与方法などに応じて適宜選択することができる。例えば、前記第一処理液をスプレーコート法で付与する場合は、前記第一処理液は前記界面活性剤を含有する必要はない。一方、前記第一処理液をインクジェット法で付与する場合は、ヘッドへの保湿性や吐出可能な粘度域へのマッチングの観点から、前記第一処理液は前記界面活性剤を含有することが好ましい。
このような場合の前記第一処理液における前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第一処理液の全質量に対して、0.001質量%~5質量%が好ましく、0.05質量%~5質量%がより好ましい。
【0045】
-消泡剤-
前記消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記消泡剤としては、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0046】
-pH調整剤-
前記pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
-防腐防黴剤-
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0048】
-防錆剤-
前記防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
なお、前記第一処理液中に含有される前記有機酸塩及び前記その他の成分の定性方法又は定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置としては、例えば、GCMS-QP2020NX(株式会社島津製作所製)などが挙げられる。また、前記第一処理液中に含有される各成分における各官能基に関しては、前述した測定方法にて検出されたピークを確認することで、どの官能基が物質を修飾しているのかについての判別が可能である。
前記第一処理液中に含有される水分量は、一般的な方法として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による揮発成分の定量や、熱重量・示差熱同時測定法(TG-DTA)による質量変動等により測定することができる。
【0050】
[第一処理液の物性]
前記第一処理液の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
【0051】
-第一処理液の粘度-
前記第一処理液の25℃での粘度は、インクジェット法で塗布する場合に良好な吐出性が得られ、前記布帛上に膜形成しやすい点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
ここで、粘度は、例えば、回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
【0052】
-第一処理液の表面張力-
前記第一処理液の表面張力としては、布帛上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
【0053】
-第一処理液のpH-
前記第一処理液のpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0054】
<第二処理液>
前記第二処理液は、樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0055】
-樹脂-
前記第二処理液に含有される樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、アクリル-シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂が好ましく、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂が、堅牢性の点からより好ましい。
【0056】
前記樹脂は、更にオキサゾリン基を有する樹脂(以下、「オキサゾリン基含有樹脂」と略記することがある)を含有することが好ましい。前記第二処理液が、前記オキサゾリン基含有樹脂を含有することで、該オキサゾリン基含有樹脂中のオキサゾリン基と、前記第一処理液に含有される有機酸塩中のカルボキシル基とが架橋反応して架橋構造(アミドエステル結合)を形成し、強固な膜が形成されるため、より堅牢性に優れる点で好ましい。更に、前記オキサゾリン基含有樹脂中のオキサゾリン基は、前記白色インクが含有する樹脂がカルボキシル基を有する場合、該カルボキシル基とも反応して架橋構造(アミドエステル結合)を形成し、更に強固な膜が形成されるため、更に堅牢性に優れる点で好ましい。
【0057】
前記樹脂は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記樹脂の市販品としては、例えば、日本触媒株式会社製のエポクロス(登録商標)K-2000シリーズ(オキサゾリン基含有アクリル-スチレン系樹脂)、エポクロス(登録商標)WSシリーズ(オキサゾリン基含有アクリル系樹脂)、エポクロス(登録商標)RPSシリーズ(オキサゾリン基含有スチレン系樹脂)、エポクロス(登録商標)RASシリーズ(オキサゾリン基含有アクリロニトリル-スチレン系樹脂)などが挙げられる。
【0058】
また、前記樹脂としては、該樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよく、該樹脂を表面に吸着させた微粒子を用いてもよい。
【0059】
前記樹脂を表面に吸着させた微粒子は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記樹脂を表面に吸着させた微粒子の市販品としては、例えば、創研化学株式会社製のMEシリーズ、日本純薬株式会社製のジュリマーMBシリーズ、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のトスパールシリーズ、日本ペイント株式会社製のマイクロジェルシリーズ、AGC株式会社製のフルオン(登録商標)シリーズ等の有機微粒子;出光興産社株式会社製のチタニアリリーズ、日本アエロジル株式会社製のアルミニウムオキサイドC等の無機微粒子などが挙げられる。
【0060】
これらの樹脂粒子は、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、前記その他の成分と混合して前記第二処理液を得ることが可能である。
【0061】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性及び高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0062】
前記樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10,000以上200,000以下が好ましい。前記樹脂の重量平均分子量(Mw)が10,000以上であると、堅牢性に好適であり、200,000以下であると、吐出安定性に好適である。
前記樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、例えば、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算分子量により求めることができる。
【0063】
前記樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、0℃未満であることが更に好ましい。前記樹脂のTgが50℃以下であると、良好な堅牢性が得られ、更に樹脂のTgが0℃未満であると、樹脂の成膜性が向上し、充分な柔軟性も担保されるため基材密着性が強固なものとなるためより好ましい。なお、エマルションの安定性の観点から、前記樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-80℃以上であることが好ましい。
【0064】
前記第二処理液における前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その下限値としては、前記第一処理液中の有機酸塩との凝集物を布帛の繊維表面に留め、これにより前記白色インクを布帛表面に留め、高い白隠蔽性を得る観点から、前記第二処理液の全質量に対して1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、前記第二処理液における前記樹脂の含有量の上限値としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、布帛の風合いを維持する観点から、前記第二処理液の全質量に対して10質量%以下の範囲であることが好ましい。前記第二処理液における前記樹脂の含有量の下限値と上限値とは適宜組み合わせることができ、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましく、5質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0065】
更に、前記第一処理液における前記有機酸塩の含有量が6質量%以上10質量%以下であり、かつ、前記第二処理液における前記樹脂の含有量が3質量%以上10質量%以下である場合に、白隠蔽性及び堅牢性が特に優れる。
【0066】
-その他の成分-
前記第二処理液における前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、水、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記第二処理液に含有される前記その他の成分については、前記第一処理液と同様に使用することができるため、これらの説明を省略する。但し、前記第二処理液における前記有機溶剤及び前記界面活性剤の含有量については、以下の範囲であることが好ましい。
【0067】
--有機溶剤--
前記第二処理液における前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第二処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記第二処理液の全質量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0068】
--界面活性剤--
前記第二処理液における前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れる点から、前記第二処理液の全質量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0069】
なお、前記第二処理液中に含有される前記樹脂及び前記その他の成分の定性方法又は定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置、前記第二処理液中に含有される各成分における各官能基の判別方法、前記第二処理液中に含有される水分量などは、前記第一処理液と同様にして分析することができる。
【0070】
[第二処理液の物性]
前記第二処理液の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が前記第一処理液と同様の物性であることが好ましい。
【0071】
<白色インク>
本明細書において、「白色インク」とは、前記布帛に前記第一処理液及び前記第二処理液が付与された領域に対して付与されることで、白色画像を形成することができる液体組成物である。
前記白色インクは、前記布帛に白色画像を形成することで、例えば、前記白色インクが付与された領域に対して付与されるカラーインクにより形成されるカラー画像の下地として機能し、カラー画像の発色性を向上させる。
なお、本明細書において、「白色」とは、社会通念上、白及びホワイトなどと称される色であり、微量着色されているものも含む。
【0072】
前記白色インクは、色材を含有し、更に樹脂を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0073】
-色材-
前記白色インクに含有される色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機又は有機の白色顔料などが挙げられる。
【0074】
前記無機の白色顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択でき、例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記有機の白色顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択できる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
これらの中でも、前記白色インクに含有される色剤としては、無機の白色顔料が好ましく、白隠蔽性の点から酸化チタンがより好ましい。
【0077】
前記白色顔料を分散して白色インクを得るための方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法などが挙げられる。
【0078】
前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
【0079】
前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、例えば、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、前記白色インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
【0080】
前記分散剤を用いて分散させる方法としては、例えば、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
【0081】
前記分散剤としては、特に制限はなく、顔料の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界系面活性剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
【0082】
前記白色インクにおける前記色材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
【0083】
前記白色インクの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記顔料に、水や有機溶剤等のその他の成分を混合する方法などが挙げられる。また、前記顔料と、水や分散剤等のその他の成分を混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
【0084】
前記顔料分散体の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、顔料、顔料分散剤、更に必要に応じてその他の成分を混合して分散し、粒径を調整して得る方法などが挙げられる。前記分散には、分散機を用いることができる。
【0085】
前記顔料分散体における顔料の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることがより好ましい。
前記顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0086】
前記顔料分散体における前記顔料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、前記顔料分散体の全質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上40質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0087】
-樹脂-
前記白色インク中に含有する前記樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0088】
前記白色インク中に含有する前記樹脂は、カルボキシル基を有する樹脂(以下、「カルボキシル基含有樹脂」と称することがある)を含有することが好ましい。
前記白色インクが、前記カルボキシル基含有樹脂を含有する場合、該カルボキシル基含有樹脂中のカルボキシル基は、前記第二処理液中の前記樹脂、好ましくは前記オキサゾリン基含有樹脂のオキサゾリン基と反応して架橋構造(アミドエステル結合)を形成する。したがって、前記第一処理液に含有される有機酸塩中のカルボキシル基と、前記第二処理液に含有される前記樹脂との架橋反応による凝集物の生成に加え、前記白色インクに含有されるカルボキシル基含有樹脂中のカルボキシル基と、前記第二処理液に含有される前記樹脂、好ましくは前記オキサゾリン基含有樹脂のオキサゾリン基との架橋反応による凝集物が生成され、更に強固な膜が形成されるため、更に堅牢性に優れる点で好ましい。
【0089】
前記樹脂は、これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよい。
前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、前記色材や、前記その他の成分としての有機溶剤等の材料と混合して白色インクを得ることが可能である。
【0090】
前記樹脂粒子の体積平均粒径D50としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性及び高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0091】
前記白色インクにおける前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、前記白色インク全質量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0092】
-その他の成分-
前記白色インクにおける前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、水、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記白色インクに含有される前記その他の成分については、前記第一処理液と同様に使用することができるため、これらの説明を省略する。但し、前記白色インクにおける前記有機溶剤及び前記界面活性剤の含有量については、前記第二処理液と同様であることが好ましい。
【0093】
なお、前記白色インク中に含有される各成分の定性方法又は定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置、前記白色インク中に含有される各成分における各官能基の判別方法、前記白色インク中に含有される水分量などは、前記第一処理液と同様にして分析することができる。
【0094】
[白色インクの物性]
-白色インクの粘度-
前記白色インクの25℃における粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第一処理液と同様の物性であることが好ましい。
【0095】
-白色インク中の固形分の粒径-
前記白色インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1,000nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることがより好ましい。前記固形分には、前記樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。
前記白色インクの固形分の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0096】
-白色インク乾燥物の貯蔵弾性率G’-
前記白色インクを乾燥させることで得られる乾燥物(以下、「白色インク乾燥物」と称することがある)の、25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率G’としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高い柔軟性により優れた堅牢性を持つ画像を得られるという観点から、7.0×10Pa以下であることが好ましく、4.0×10Pa以下であることがより好ましい。
【0097】
前記白色インクを乾燥させることにより得られる乾燥物の25℃における貯蔵弾性率G’を制御する方法としては、例えば、前記樹脂の分子量、ガラス転移温度、3官能以上のモノマー類による架橋構造を有する場合はそのモノマー類の樹脂中の濃度、ウレタン基やウレア基等の水素結合生成成分の濃度などを調整する方法が挙げられる。
【0098】
例えば、前記白色インク中の前記樹脂の分子量が大きいと前記貯蔵弾性率G’は大きくなる傾向を示し、前記白色インク中の前記樹脂の分子量が小さいと前記貯蔵弾性率G’は小さくなる傾向を示す。
また、前記白色インク中の前記樹脂のガラス転移温度が高いと前記貯蔵弾性率G’は大きくなる傾向を示し、前記白色インク中の前記樹脂のガラス転移温度が低いと前記貯蔵弾性率G’は小さくなる傾向を示す。
更に、前記白色インクが3官能以上のモノマー類による架橋構造を有する場合はそのモノマー類の樹脂中の濃度が高いと貯蔵弾性率G‘は大きくなる傾向を示し、前記モノマー類の樹脂中の濃度が低いと貯蔵弾性率G‘は小さくなる傾向を示す。
なお、前記3官能以上のモノマー類としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
【0099】
なお、本明細書において、前記白色インクを乾燥させることにより得られる「乾燥物」(白色インク乾燥物)とは、テフロン(登録商標)シャーレ(直径50)に6mLに入れ、前記白色インクを40℃、相対湿度60%の条件下で12時間乾燥させ、次に150℃、相対湿度60%の条件下で12時間乾燥させ、更に0.5mmHg、150℃の条件下で3時間減圧乾燥させることで得たものを意味する。
【0100】
前記白色インクを乾燥させることにより得られる乾燥物の25℃における動的粘弾性測定に用いる試験片の寸法は、膜厚0.2mm~0.5mm、長さ20mm、幅4.5mm~5.5mmである。試験片の寸法のうち、膜厚は乾燥させるインク濃度を調整することにより制御可能である。
【0101】
本明細書において、前記白色インク乾燥物の、25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率G’の値は、該白色インク乾燥物の25℃における動的粘弾性測定を、冷凍機付ARES-G2(TA Instruments社製)を用い測定した値である。具体的には、試験片固定用治具としてトーションクランプを用い、20℃にて試験片を装置にセットした後、2gのAuto tensionをかけた状態で-70℃まで冷却する。-70℃に到達してから10分間後に、以下の測定条件にて測定を行う。得られた測定データから25℃における貯蔵弾性率を読み取ることができる。
[測定条件]
・測定モード:temperature sweep
・測定温度範囲:-70℃~160℃
・昇温速度:4℃/分間
・周波数:1Hz
・初期歪:0.1%
・Auto tension:2g
【0102】
<記録媒体>
前記液体組成物セットが用いられる記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできる。
前記記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
これらの中でも、本発明において、記録に用いる記録媒体としては布帛が好ましい。
【0103】
本明細書において「布帛」とは、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。前記繊維の太さや網目の大きさに制限はない。
前記繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然繊維、再生繊維、合成繊維、半合成繊維、生分解性繊維、又はこれらの混紡繊維などが挙げられる。
【0104】
前記天然繊維としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹などからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0105】
前記再生繊維としては、例えば、ビスコース、リヨセル、ポリノジック、レーヨン、キュプラなどからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0106】
前記合成繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ナイロン、Nomex(登録商標)(Dupon社製)、Kevlar(登録商標)(Dupon社製)などからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0107】
前記半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、トリアセテートなどからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0108】
前記生分解性繊維としては、例えば、ポリ乳酸などからなる繊維が挙げられる。
【0109】
前記布帛を形成する繊維の中でも、綿等の天然繊維よりも、ポリエステル等の合成繊維の方が、白色インクを下地層とする際に高い白隠蔽性を出すことが難しく、また堅牢性を両立させることが難しいとされる。しかし、前記第一処理液及び前記第二処理液は、このような布帛に対しても好適に作用し、高い白隠蔽性と堅牢性を確保することが可能となる点で有利である。
【0110】
前記布帛は、該布帛に用いられる繊維が染料を内部又は表面において化学的にまたは物理的に保持することにより着色されたものであり、本発明は、前記布帛の染色が濃色である場合であっても、白隠蔽性に優れるものである。
【0111】
なお、本明細書において「濃色の布帛」とは、L色空間におけるL値が50以下の明度の低い布帛のことである。
前記L色空間は、国際照明委員会(CIE)で規格化されている。L色空間では、明度をL、色相と彩度を示す色度をaで表わす。aは、色の方向を示しており、aは赤方向、-aは緑方向、bは黄方向、-bは青方向を示す。
【0112】
前記布帛に用いられる染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直接染料、酸性染料、分散染料、カチオン染料、建染染料、硫化染料、反応染料、ナフトール染料などが挙げられる。
これらの中でも、分散染料は、通常熱定着時に移染が生じやすいが、前記第一処理液及び前記第二処理液は、分散染料を有する布帛に対しても好適に作用し、高い白隠蔽性と堅牢性を確保することが可能となる点で有利である。
なお、前記布帛は、蛍光染料を有するものではないことが好ましい。
【0113】
本発明の液体組成物セットの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。更に、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
【0114】
したがって、本発明の液体組成物セットは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
【0115】
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0116】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、布帛に、有機酸塩を含有する第一処理液を付与する第一処理液付与工程と、前記第一処理液が付与された領域に、樹脂を含有する第二処理液を付与する第二処理液付与工程と、前記第二処理液が付与された領域に、白色インクを付与する白色インク付与工程と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0117】
本発明の画像形成装置は、布帛に、有機酸塩を含有する第一処理液を付与する第一処理液付与手段と、前記第一処理液が付与された領域に、樹脂を含有する第二処理液を付与する第二処理液付与手段と、前記第二処理液が付与された領域に、白色インクを付与する白色インク付与手段と、を有し、更に前記第一処理液を収容する第一処理液収容手段、前記第二処理液を収容する第二処理液収容手段、前記白色インクを収容する白色インク収容手段を有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
【0118】
なお、本発明において、画像形成装置及び画像形成方法とは、記録媒体に対して前記第一処理液、前記第二処理液、及び前記白色インク、更に必要に応じてその他の各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。前記記録媒体とは、前記第一処理液、前記第二処理液、及び前記白色インク、更に必要に応じてその他の各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味し、前記布帛が好適である。
また、前記画像形成装置及び画像形成方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
【0119】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に行うことができる。
以下、本発明の画像形成方法の説明と併せて、本発明の画像形成装置について説明する。
【0120】
<第一処理液収容手段>
前記第一処理液収容手段は、前記第一処理液を収容する手段である。
前記第一処理液収容手段は、後述する本発明のインクカートリッジであってもよい。
前記第一処理液としては、本発明の液体組成物セットに記載した通りであるため、説明は省略する。
【0121】
<第一処理液付与工程及び第一処理液付与手段>
前記第一処理液付与工程は、布帛に、有機酸塩を含有する第一処理液を付与する工程である。
前記第一処理液付与手段は、布帛に、有機酸塩を含有する第一処理液を付与する手段である。
前記第一処理液付与工程は、第一処理液付与手段により好適に行われる。
【0122】
前記第一処理液の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スプレーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
これらの中でも、前記第一処理液の付与方法は、インクジェット法が好ましい。
【0123】
前記布帛に対する前記第一処理液の単位面積当たりの塗布量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高い白隠蔽性が得られるという観点から、10mg/cm以上200mg/cm以下であることが好ましく、15mg/cm以上100mg/cm以下であることがより好ましく、30mg/cm以上60mg/cm以下であることが更に好ましい。前記布帛に対する前記第一処理液の塗布量が、10mg/cm以上であると、繊維表面に前記第二処理液及びインクを留める観点から好ましく、200mg/cm以下であると、乾燥性の観点から好ましい。
【0124】
<第二処理液収容手段>
前記第二処理液収容手段は、前記第二処理液を収容する手段である。
前記第二処理液収容手段は、後述する本発明のインクカートリッジであってもよい。
前記第二処理液としては、本発明の液体組成物セットに記載した通りであるため、説明は省略する。
【0125】
<第二処理液付与工程及び第二処理液付与手段>
前記第二処理液付与工程は、前記第一処理液が付与された領域に、樹脂を含有する第二処理液を付与する工程である。
前記第二処理液付与手段は、前記第一処理液が付与された領域に、樹脂を含有する第二処理液を付与する手段である。
前記第二処理液付与工程は、第二処理液付与手段により好適に行われる。
【0126】
前記画像形成方法において、前記第一処理液付与工程と、前記第二処理液付与工程とは、分けて行うことが必要である。前記第一処理液付与工程と、前記第二処理液付与工程とを同時に行う場合、第二処理液中の樹脂膜が繊維表層に形成しづらい、あるいは、前記第一処理液と前記第二処理液とを混合して行った場合、混合された処理液が塗布前に凝集してしまうという問題がある。そのため、前記第一処理液付与工程と、前記第二処理液付与工程とを分けて行うことで、より顕著な白隠蔽性向上の効果が得られる。
【0127】
また、前記第二処理液付与工程は、前記布帛上に付与された前記第一処理液が湿潤状態にある(「ウエットオンウエット」と称することがある)うちに、前記第一処理液が付与された領域に前記第二処理液を付与することにより行われることが好ましい。
本明細書において、前記第一処理液が「湿潤状態にあるうちに」とは、以下の(1)~(3)のいずれかを意味する。
(1)前記第一処理液に含まれる溶媒の70質量%以上が布帛に残存する状態で、前記第二処理液を更に付与すること。
(2)前記第一処理液を布帛に付与した後、120秒間以内に前記第二処理液を付与すること。
(3)前記第一処理液付与工程と、前記第二処理液付与工程との間に強制的な乾燥工程を含まないこと。
ただし、前記第一処理液が「湿潤状態にあるうち」には、上記の通り、前記第一処理液と前記第二処理液とを布帛に同時に付与すること(即ち、前記第一処理液付与工程と、前記第二処理液付与工程とを同時に行う)、及び前記第一処理液と前記第二処理液とを混合して布帛に付与することは含まない。
前記第二処理液付与工程を、前記布帛上に付与された前記第一処理液が湿潤状態にあるうちに行うことにより、前記第一処理液が含有する有機酸塩中のカルボキシル基と、前記第二処理液が含有する樹脂とを好適に架橋反応させることができる。なお、前記布帛上に付与された前記第一処理液が湿潤状態にあるうちに前記第二処理液を付与しても、前記第二処理液と混合することなく好適に前記第一処理液の増粘した膜を維持することができる。
【0128】
また、本明細書において、「強制的な乾燥工程」とは、5℃~35℃、相対湿度5%~90%の条件下における自然乾燥は含まれず、人工的に風を付与する又は人工的に加熱することを意味する。また、前記温度及び湿度の条件以外の場合であっても、前記(1)又は(2)を満たす限り、前記第一処理液が「湿潤状態にある」と言える。
人工的に加熱する場合、その加熱温度としては、前記自然乾燥条件以外の温度であり、例えば、35℃超などが挙げられる。また、人工的に加熱する場合、その加熱時間としては、特に制限はなく、例えば、1分間以上などが挙げられる。前記「強制的な乾燥工程」には、後述する加熱又は乾燥工程と同様の条件も含まれる。
【0129】
前記第二処理液の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、前記第一処理液付与工程及び前記第一処理液付与手段と同様に行うことができる。
【0130】
前記布帛に対する前記第二処理液の単位面積当たりの塗布量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記白色インクの布帛への浸透を抑制する観点から、0.1mg/cm以上50mg/cm以下であることが好ましく、1mg/cm以上30mg/cm以下であることがより好ましく、2mg/cm以上20mg/cm以下であることが更に好ましい。前記布帛に対する前記第二処理液の塗布量が、0.1mg/cm以上であると、白隠蔽性向上のため好ましく、50mg/cm以下であると、柔軟な風合いが得られるため好適である。
【0131】
前記第二処理液の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第一処理液に含有される前記有機酸塩1モルに対して、前記第二処理液に含有される前記樹脂が、0.5モル以下となる量であることが好ましく、0.25モル以下となる量であることがより好ましい。前記第二処理液の使用量が、前記第一処理液に含有される前記有機酸塩1モルに対して、前記第二処理液に含有される前記樹脂が0.5モル以下となる量であると、後に前記白色インクを付与した際、布帛で該白色インク中の顔料の凝集化が過度に進むことがなく、布帛の白色インクの定着性が向上する。また、前記第二処理液の使用量が、前記第一処理液に含有される前記有機酸塩1モルに対して、前記第二処理液に含有される前記樹脂が0.01モル以上となる量であることが、白色インクによる画像の定着性向上効果が大きくなるため好ましい。
【0132】
<白色インク収容手段>
前記白色インク収容手段は、前記白色インクを収容する手段である。
前記白色インク収容手段は、後述する本発明のインクカートリッジであってもよい。
前記白色インクとしては、本発明の液体組成物セットに記載した通りであるため、説明は省略する。
【0133】
<白色インク付与工程及び白色インク付与手段>
前記白色インク付与工程は、布帛に、有機酸塩を含有する白色インクを付与する工程である。
前記白色インク付与手段は、布帛に、有機酸塩を含有する白色インクを付与する手段である。
前記白色インク付与工程は、白色インク付与手段により好適に行われる。
【0134】
前記画像形成方法において、前記第二処理液付与工程と、前記白色インク付与工程とは、分けて行うことが必要である。前記第二処理液付与工程と、前記白色インク付与工程とを同時に行う、あるいは、前記第二処理液と前記白色インクとを混同して行った場合、白隠蔽性が低下するという問題がある。そのため、前記第二処理液付与工程と、前記白色インク付与工程とを分けて行うことで、白隠蔽性向上の効果が得られる。
【0135】
また、前記白色インク付与工程は、前記第二処理液が湿潤状態にあるうち(ウエットオンウエット)に、前記第二処理液が付与された領域に前記白色インクを付与することにより行われることが好ましい。
本明細書において、前記第二処理液が「湿潤状態にあるうちに」とは、以下の(1)~(3)のいずれかを意味する。
(1)前記第二処理液に含まれる溶媒の70質量%以上が布帛に残存する状態で、前記白色インクを更に付与すること。
(2)前記第二処理液を布帛に付与した後、120秒間以内に前記白色インクを付与すること。
(3)前記第二処理液付与工程と、前記白色インク付与工程との間に強制的な乾燥工程を含まないこと。
ただし、前記第二処理液が「湿潤状態にあるうち」には、上記の通り、前記第二処理液と前記白色インクとを布帛に同時に付与すること(即ち、前記第二処理液付与工程と、前記白色インク付与工程とを同時に行う)、及び前記第二処理液と前記白色インクとを混合して布帛に付与することは含まない。
前記白色インク付与工程を、前記布帛上に付与された前記第二処理液が湿潤状態にあるうちに行ことにより、前記白色インクが含有する樹脂、好ましくはカルボキシル基含有樹脂におけるカルボキシル基と、前記第二処理液が含有する樹脂とを好適に架橋反応させることができる。なお、前記第二処理液が湿潤状態にあるうちに前記白色インクを付与しても、前記第二処理液と混合することなく好適に前記第二処理液の増粘した膜を維持することができる。
【0136】
また、本明細書において、「強制的な乾燥工程」とは、5℃~35℃、相対湿度5%~90%の条件下における自然乾燥は含まれず、人工的に風を付与する又は人工的に加熱することを意味する。また、前記温度及び湿度の条件以外の場合であっても、前記(1)又は(2)を満たす限り、前記第二処理液が「湿潤状態にある」と言える。
人工的に加熱する場合、その加熱温度としては、前記自然乾燥条件以外の温度であり、例えば、35℃超などが挙げられる。また、人工的に加熱する場合、その加熱時間としては、特に制限はなく、例えば、1分間以上などが挙げられる。前記「強制的な乾燥工程」には、後述する加熱又は乾燥工程と同様の条件も含まれる。
【0137】
なお、前記第二処理液付与工程が、前記布帛に付与された前記第一処理液が湿潤状態にあるうちに、前記第一処理液が付与された領域に前記第二処理液を付与することにより行われ、かつ、前記白色インク付与工程が、前記第二処理液が湿潤状態にあるうちに、前記第二処理液が付与された領域に前記白色インクを付与することにより行われる場合、前記第一処理液により前記布帛からの移染抑制に対する保護層を更に好適に形成することができ、次に、前記第二処理液により白色インク受容層を更に好適に形成することができる。
【0138】
前記白色インクの付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、前記第一処理液付与工程及び前記第一処理液付与手段と同様に行うことができる。
【0139】
前記布帛に対する前記白色インクの単位面積当たりの塗布量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記白遮蔽性の点から、5mg/cm以上50mg/cm以下であることが好ましく、10mg/cm以上40mg/cm以下であることがより好ましく、15mg/cm以上30mg/cm以下であることが更に好ましい。前記布帛に対する前記白色インクの塗布量が、5mg/cm以上であると、白隠蔽性の観点で好適であり、50mg/cm以下であると、柔軟な風合いが得られる観点で好適である。
【0140】
前記白色インクの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第二処理液に含有される前記樹脂1質量部に対して、前記白色インクに含有される前記樹脂、好ましくは前記カルボキシル基含有樹脂が、5質量部以下となる量であることが好ましく、3質量部以下となる量であることがより好ましい。前記白色インクの使用量が、前記第二処理液に含有される前記樹脂1質量部に対して、前記白色インクに含有される前記樹脂が、5質量部以下となる量であると、前記白色インクを付与した際、布帛で該白色インク中の顔料の凝集化が過度に進むことがなく、布帛の白色インクの定着性が向上する。また、前記白色インクの使用量が、前記第二処理液に含有される前記樹脂1質量部に対して、前記白色インクに含有される前記樹脂が、1質量部以上となる量であることが、白色インクによる画像の定着性向上効果が大きくなるため好ましい。
【0141】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、例えば、加熱又は乾燥工程、カラーインク付与工程、後処理液付与工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、例えば、加熱又は乾燥手段、カラーインク付与手段、記録媒体の給送、搬送、又は排紙に係わる手段、後処理液付与手段などが挙げられる。
【0142】
<<加熱又は乾燥工程及び加熱又は乾燥手段>>
前記加熱又は乾燥工程は、前記布帛に付与された前記第一処理液、前記第二処理液、又は前記白色インクの印字面や裏面を加熱又は乾燥する工程である。
前記乾燥手段は、前記布帛に付与された前記第一処理液、前記第二処理液、又は前記白色インクの印字面や裏面を加熱又は乾燥する手段である。
前記加熱又は乾燥工程は、前記加熱又は乾燥手段により好適に行われる。
前記画像形成方法が、前記加熱又は乾燥工程を含むことにより、布帛上の画像の定着性が向上する点で好ましい。
【0143】
前記加熱又は乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の加熱又は乾燥手段の中から適宜選択することができ、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、赤外線ヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などが挙げられる。
【0144】
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、150℃以上であることが好ましく、150℃以上200℃以下程度であることがより好ましい。
また、前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、1分間以上であることが好ましく、1分間以上5分間以下程度であることがより好ましい。
【0145】
前記加熱又は乾燥工程は、印字前、印字中、又は印字後に行うことができる。また、前記加熱又は乾燥工程は、前記第一処理液付与工程と前記第二処理液付与工程の間、及び前記第二処理液付与工程と前記白色インク付与工程との間の少なくともいずれかで行ってもよいが、上記した通り、前記第二処理液付与工程は前記布帛に付与された前記第一処理液が湿潤状態にあるうちに行われることが好ましく、前記白色インク付与工程は前記第二処理液が湿潤状態にあるうちに行われることが好ましいため、前記第一処理液付与工程と前記第二処理液付与工程の間、及び前記第二処理液付与工程と前記白色インク付与工程との間に前記加熱又は乾燥工程を含まず、連続して前記第一処理液付与工程、前記第二処理液付与工程、及び前記白色インク付与工程を行い、その後に前記加熱又は乾燥工程を含むことが特に好ましい。これにより、前記布帛上に白色インク層が好適に形成され、高い白隠蔽性を得ることができる。
【0146】
<<カラーインク付与工程及びカラーインク付与手段>>
前記カラーインク付与工程は、前記白色インク付与工程の後に、前記白色インク上にカラーインクを付与する工程である。前記画像形成方法が、前記乾燥工程を含む場合、前記カラーインク付与工程は、前記乾燥工程後の白色インク層上にカラーインクを付与する工程であることが好ましい。
前記カラーインク付与手段は、前記白色インク上にカラーインク付与する手段である。
前記カラーインク付与工程は、前記カラーインク付与手段により好適に行われる。
【0147】
なお、前記白色インクをカラーインクの下地とする場合、使用するカラーインクとしては、特に制限はなく、公知のカラーインクの中から適宜選択することができる。
本明細書において、「カラーインク」とは、布帛の前記白色インクが付与された領域に対して付与されることでカラー画像を形成する液体組成物である。
また、本明細書において、「カラー」とは、前記「白色」に含まれない色を表し、例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、又はK(ブラック)などのインクが挙げられる。
【0148】
前記カラーインクの付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、前記第一処理液付与工程及び前記第一処理液付与手段と同様に行うことができる。
【0149】
<<後処理液付与工程及び後処理液付与手段>>
前記後処理液付与工程は、前記白色インク付与工程の後に、透明な層を形成する工程である。
前記後処理液付与手段は、前記白色インクを付与後に透明な層を形成する手段である。
前記後処理液付与工程は、前記後処理液付与手段により好適に行われる。
前記後処理液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、布帛に形成された記録領域の全域に塗布してもよいし、前記白色インクによる像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0150】
前記後処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0151】
以下に図面を用いて本発明の画像形成方法及び画像形成装置について具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0152】
図1Aは、本発明の画像形成装置の一例を示す概略説明図である。図2は、図1Aの画像形成装置の制御手段の一例を示す概略説明図である。図3は、図1Aの画像形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
なお、本発明の画像形成方法における白色インク付与工程と、第一処理液付与工程と、第二処理液付与工程とは同じ画像形成装置で実施してもよいし、それぞれ独立した装置(例えば、印刷機器)で実施してもよい。
【0153】
本発明の画像形成装置の一例としての画像形成装置100は、処理液付与手段110、及び白色インク付与手段120、制御手段160、及び記憶部170を有し、更に必要に応じて後処理液付与手段130、乾燥手段140、及び搬送手段150を有していてもよい。処理液付与手段110は、記録媒体Mに前記第一処理液又は前記第二処理液を付与する。なお、図1Aにおいて、処理液付与手段110は、1つのみを図示しており、第一処理液の付与又は第二処理液の付与が独立して行われる態様である。
【0154】
処理液付与手段110における第一処理液又は第二処理液の塗工方法は、特に制限はなく、公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、第一処理液又は第二処理液中に記録媒体を浸漬させる方法(浸漬塗布法)、第一処理液又は第二処理液をロールコーター等で塗布する方法(ローラー塗布法)、第一処理液又は第二処理液をスプレー装置等によって噴射する方法(スプレー塗布法)、第一処理液又は第二処理液をインクジェット方式により噴射する方法(インクジェット塗布法)などが挙げられ、いずれの方法も使用してもよい。これらの中でも、装置構成が簡便であり、第一処理液又は第二処理液の付与が迅速に行えるという点から、浸漬塗布法、ローラー塗布法、スプレー塗布法、インクジェット塗布法が好ましい。
【0155】
白色インク付与手段120は、記録媒体Mの第一処理液及び第二処理液が付与された面に、白色インクを付与する。
白色インク付与手段120としては、例えば、公知のインクジェットヘッド等を用いることができる。
なお、図1Aにおいて、インク付与手段としては白色インク付与手段120のみを図示しているが、インク付与手段として、更に白色インク以外の任意のカラーインクを吐出するヘッドを白色インク付与手段120と同様の構成で有していてもよい。例えば、必要に応じてY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のカラーインクを吐出するヘッドを設けてもよい。
【0156】
記憶部170としては、例えば、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)などであり、印刷する画像等のデータを保持する。画像形成装置100の制御手段160は、例えばCPUなどであり、記憶部170や各制御部への指示を出す。
処理液付与制御部161は、制御手段160からの指示に応じて処理液付与手段110の駆動を制御する。
インク付与制御部162は、制御手段160からの指示に応じて白色インク付与手段120の駆動を制御する。また、前記画像形成装置100が白色インク以外のインク付与手段を有する場合は、インク付与制御部162は、これらのインク付与手段の駆動も制御する。
【0157】
後処理液付与手段130は、記録媒体Mのインクジェットインクが付与された面のインクジェットインクが付与された領域に後処理液を付与できればよく、例えば、インクジェットヘッド以外にも、スプレーやローラーなどを用いることができる。なお、後処理液付与手段130は、省略してもよい。
【0158】
画像形成装置100は、第一処理液、第二処理液、及び白色インクが付与された記録媒体Mの印字面や裏面を乾燥させる乾燥手段140を有していてもよい。必要に応じて、後処理液を含むその他の液体が付与された後や、各液体の付与前後に記録媒体Mを乾燥させる工程を含んでもよい。加熱に用いる装置としては、多くの既知の装置を使用することができる。乾燥手段140としては、例えば、温風加熱、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥、ヒートプレス、定着ローラー等の装置が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。乾燥の強度は記録媒体の厚さや材質など熱収縮特性に応じて設定されるのが好ましい。これらの中でも、堅牢性向上、加熱時間短縮の観点からヒートプレスが好ましい。なお、乾燥手段140は、省略してもよい。
【0159】
搬送手段150は、記録媒体Mを搬送する。搬送手段150としては、記録媒体Mを搬送することが可能であれば、特に限定されないが、搬送ベルト、プラテンなどが挙げられる。なお、搬送手段150は、必要に応じて省略してもよい。
【0160】
なお、画像形成装置100は、記録媒体Mに形成された画像を加熱定着させる定着部を必要に応じて有してもよい。定着部としては、特に限定されないが、定着ローラーなどが挙げられる。
【0161】
卓上プリンタを画像形成装置として用いる場合には、処理液付与手段、後処理液付与手段の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などの一般的なカラーインクの場合と同様に、第一処理液、第二処理液、及び後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、第一処理液、第二処理液、及び後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
【0162】
[画像形成装置100の動作例]
画像形成装置100の動作について説明する。図3は、画像形成装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0163】
画像形成開始の指示を受け付けると、画像形成装置100は画像形成動作を開始する。
ステップS1にて、画像形成装置100の搬送手段150は記録媒体Mを搬送し、処理液付与手段110は記録媒体Mに対して第一処理液を付与する。この際、処理液付与手段110は、画像を形成する部分のみに対して第一処理液を付与してもよいし、記録媒体全面に付与してもよい。
処理液付与手段110が画像を形成する部分のみに対して第一処理液を付与する際には、処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて付与範囲を決定し、記録媒体Mに第一処理液を付与する。
処理液付与手段110が記録媒体全面に対して第一処理液を付与する際には、処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて記録媒体全面に第一処理液の付与を行う。
【0164】
ステップS2では、搬送手段150により搬送された、第一処理液が塗布された記録媒体Mに対して、処理液付与手段110が第二処理液を付与する。この際、処理液付与手段110は、第一処理液が塗布された部分のみに対して第二処理液を付与してもよいし、記録媒体全面に吐出してもよい。ただし、本発明においては第一処理液が塗布された部分に処理液付与手段110が第二処理液を付与することが好ましい。
第一処理液が塗布された部分のみに対して第二処理液を付与する際には処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて付与範囲を決定し、記録媒体Mに第二処理液を付与する。
処理液付与手段110が記録媒体全面に対して第二処理液を付与する際には、処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて記録媒体全面に第二処理液の付与を行う。
【0165】
ステップS3では、搬送手段150により搬送された、第一処理液及び第二処理液が塗布された記録媒体Mに対して、白色インク付与手段120が白色インクを吐出する。この際、白色インク付与手段120は、第一処理液及び第二処理液が吐出された部分のみに対して白色インクを吐出してもよいし、記録媒体全面に吐出してもよい。ただし、本発明においては第一処理液及び第二処理液が塗布された部分に白色インク付与手段120が白色インクを吐出することが好ましい。
画像を形成する部分のみに対して白色インクを吐出する際には、インク付与制御部162や制御手段160からの指示に応じて吐出範囲を決定し、白色インク付与手段120が白色インクを吐出する。
白色インク付与手段120が記録媒体全面に対して白色インクを吐出する際には、インク付与制御部162や制御手段160からの指示に応じて記録媒体全面に白色インクの吐出を行う。
【0166】
画像形成装置100には、記録媒体の位置や場所の認識を行うセンサーを設けていてもよい。記録媒体の位置や場所の認識を行う前記センサーを設けることで、処理液付与手段110及び白色インク付与手段120が、ステップS1、ステップS2、及びステップS3にてより効率的に、第一処理液、第二処理液、及び白色インクを記録媒体に塗布することが可能となる。
【0167】
ステップS3の後、第一処理液、第二処理液、及び白色インクを塗布した記録媒体を搬送手段150が乾燥手段140に搬送し、乾燥させる乾燥工程を設けてもよい。乾燥手段140は、本発明における画像形成方法及び画像形成装置に必須ではない。
乾燥工程を設けない場合には、ユーザーが手動で別の乾燥装置を用いて乾燥を行ってもよい。なお、本発明においては、乾燥工程を設けないことが好ましい。
乾燥工程を設ける場合、乾燥時間や乾燥温度は、一定であってもよく、第一処理液、第二処理液、及び白色インクの付与量に応じて調節してもよい。第一処理液、第二処理液、及び白色インクの付与量に応じて調節することがより好ましい。
【0168】
画像形成装置100は、記録媒体に塗布された第一処理液、第二処理液、及び白色インクの塗布量の認識を行うセンサーを設けていてもよい。前記センサーを設けることで、第一処理液、第二処理液、及び白色インクが記録媒体に塗布された量に応じて乾燥時間や乾燥温度を設定、調節することが可能となるため、乾燥手段140がより効率的に記録媒体を乾燥させることができる。
第一処理液、第二処理液、及び白色インクの塗布量を認識する前記センサーは、実際に記録媒体に付着している液体量を認識するものであってもよいし、各付与手段にて記録媒体に吐出された量を計測して認識するものであってもよい。
【0169】
記録媒体の乾燥を行った後、画像形成装置による画像形成工程は終了するが、必要に応じて記録媒体を画像形成装置から取り出す工程や、記録媒体を搬送する工程があってもよい。
【0170】
図1Bは、本発明の画像形成装置の別の一例を示す概略説明図である。
本発明の画像形成装置の別の一例としての画像形成装置200は、図1Aに示す画像形成装置100において、処理液付与手段110を、第一処理液付与手段210及び第二処理液付与手段211に変更した態様であり、その他の構成は、図1Aに示す画像形成装置100と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図1Aに示す画像形成装置100では、第一処理液の付与又は第二処理液の付与が独立して行われる態様であったところ、図1Bに示す画像形成装置200では、第一処理液付与手段210による第一処理液の付与と、第二処理液付与手段211による第二処理液の付与が連続して行われる態様とすることができる。
【0171】
なお、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。また、本発明の画像形成装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この画像形成装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の画像形成装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙や布帛を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0172】
(インクカートリッジ)
本発明のカートリッジは、本発明の液体組成物セットを収容してなり、容器に収容してなることが好ましく、必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。
前記インクカートリッジは、インク交換などの作業において、インクに直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、またインクへのごみ等の異物混入を防止できる点で有利である。
【0173】
前記インクカートリッジは、前記液体組成物セットを、一体的に収容していてもよく、前記第一処理液、前記第二処理液、及び前記白色インクを、それぞれ独立に収容していてもよい。
【0174】
また、前記液体組成物セットは、更にカラーインクを有していてもよく、前記カラーインクを1種又は複数有する場合、前記インクカートリッジは、前記第一処理液、前記第二処理液、前記白色インク、及び1種又は複数のカラーインクを一体的に収容していてもよく、それぞれ独立に収容していてもよい。
【0175】
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、プラスチック製容器、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋等を有するものが挙げられる。
【0176】
前記インクカートリッジの一例として前記白色インクを収容する場合について、図4を用いて具体的に説明するが、本発明のインクカートリッジはこれに限られるものではない。
前記白色インクは、インク注入口242からインク袋241内に充填され、排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置にインクを供給する。インク袋241は、透気性の無いアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容され、インクカートリッジ240として、各種画像形成装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【0177】
上記インクカートリッジ240に、白色インクの代わりに前記第一処理液又は前記第二処理液を入れ、第一処理液用カートリッジ又は第二処理液用カートリッジとして用いれば、インクカートリッジと同様に、各種画像形成装置に着脱可能に装着して用いることができる。
【0178】
(記録物)
本発明の画像形成方法、本発明の画像形成装置、又は本発明の液体組成物セットにより画像形成された記録物は、布帛上に、第一処理液、第二処理液、及び白色インクを用いて形成された画像を有してなる。このような記録物も、本発明の範囲内である。
前記記録物は、好ましくは、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録された記録物である。
【実施例0179】
以下に調製例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの調製例及び実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の調製例、実施例、及び比較例において、別段の断りない限り「部」は「質量部」を示し、配合量は各原材料における固形分の配合量を示す。また、別段の断りない限り、調製及び評価は、室温25℃、相対湿度60%の条件下で行ったものとする。
【0180】
(調製例1-1~1-10:第一処理液1~10の調製)
下記表1-1及び表1-2に示す処方(組成及び配合量)で凝集剤、防腐剤、及び高純水を混合し、一時間撹拌した後、1.2μmセルロースアセテートタイプのメンブランフィルターにて加圧濾過し、第一処理液1~10を得た。
なお、下記表1-1及び表1-2の部数は質量部を表し、全体を100質量部とした。また、凝集剤の配合量は「塩濃度」として記載した。
【0181】
【表1-1】
【0182】
【表1-2】
【0183】
(調製例2-1~2-9:第二処理液1~9の調製)
下記表2-1及び表2-2に示す処方(組成及び配合量)で溶剤、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、樹脂、及び高純水を混合し、一時間撹拌した後、1.2μmセルロースアセテートタイプのメンブランフィルターにて加圧濾過し、第二処理液1~9を得た。
なお、下記表2-1及び表2-2の部数は質量部を表し、全体を100質量部とした。また、樹脂は固形分含量を示す。
【0184】
【表2-1】
【0185】
【表2-2】
【0186】
(調製例3-1:白色インク1の調製)
<白色顔料分散液の調製>
酸化チタン(商品名:JR-405、テイカ株式会社製)40部、顔料分散剤(商品名:TEGO(登録商標) Dispers 651、エボニック社製)5部、及び水55部を混合し、ビーズミル(商品名:リサーチラボ、株式会社シンマルエンタープライゼス製)にて、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填率60体積%、8m/秒間にて5分間分散し、白色顔料分散液を得た。
白色顔料分散液の体積平均粒径D50をナノ粒子測定装置(ナノトラック Nanotrac Wave-EX1500(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、210nmであった。
【0187】
<樹脂粒子分散液1の合成>
樹脂粒子分散液1については、下記手順にて合成した。
撹拌機、還流冷却管、温度計、及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量(Mn)1,000のポリカーボネートポリオール(デュラノールT5651、旭化成ケミカルズ製)を150g部、ジメチロールプロピオン酸20.0g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)120g、及びアセトン270gを加え、75℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを15g加えて中和した後、水900gを徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン15gを水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、不揮発分約30質量%となるよう50℃で脱溶剤を行い、樹脂粒子分散液1を得た。
樹脂粒子分散液1の体積平均粒径D50をナノ粒子測定装置(ナノトラック Nanotrac Wave-EX1500(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、60nmであった。
【0188】
<白色インクの調製>
下記表3に示す処方(組成及び配合量)の白色インク1を得た。
具体的には、白色顔料分散液及び樹脂粒子分散液1以外の材料をイオン交換水に溶解してビヒクルを作製した後、該ビヒクルと樹脂粒子分散液1とを混合し、得られた混合物に更に白色顔料分散液を混合し、平均孔径5μmのフィルターでろ過して、白色インク1を得た。
なお、下記表3の部数は質量部を表し、全体を100質量部とした。
【0189】
(調製例3-2:白色インク2の調製)
調製例3-1の白色インク1の調製において、樹脂粒子分散液1を、以下の方法で合成した樹脂粒子分散液2に変更したこと以外は、調製例3-1の白色インク1の調製と同様の方法で白色インク2を調製した。
【0190】
<樹脂粒子分散液2の合成>
樹脂粒子分散液2については、下記手順にて合成した。
撹拌機、還流冷却管、温度計、及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量(Mn)500のポリカーボネートポリオール(デュラノールT5650E、旭化成ケミカルズ製)を150g、ジメチロールプロピオン酸20.0g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)120g、及びアセトン270gを加え、75℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを15g加えて中和した後、水900gを徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン15gを水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、不揮発分約30質量%となるよう50℃で脱溶剤を行い、樹脂粒子分散液2を得た。
樹脂粒子分散液2の体積平均粒径D50をナノ粒子測定装置(ナノトラック Nanotrac Wave-EX1500(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、60nmであった。
【0191】
(調製例3-3:白色インク3の調製)
調製例3-1の白色インク1の調製において、樹脂粒子分散液1を、以下の方法で合成した樹脂粒子分散液3に変更したこと以外は、調製例3-1の白色インク1の調製と同様の方法で白色インク3を調製した。
【0192】
<樹脂粒子分散液3の合成>
樹脂粒子分散液3については、下記手順にて合成した。
撹拌機、還流冷却管、温度計、及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量(Mn)800のポリカーボネートポリオール(デュラノールT5650J、旭化成ケミカルズ製)を150g、ジメチロールプロピオン酸20.0g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)120g、及びアセトン270gを加え、75℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを15g加えて中和した後、水900gを徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン15gを水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、不揮発分約30質量%となるよう50℃で脱溶剤を行い、樹脂粒子分散液3を得た。
樹脂粒子分散液3の体積平均粒径D50をナノ粒子測定装置(ナノトラック Nanotrac Wave-EX1500(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、60nmであった。
【0193】
(調製例3-4:白色インク4の調製)
調製例3-1の白色インク1の調製において、樹脂粒子分散液1を、以下の方法で合成した樹脂粒子分散液4に変更したこと以外は、調製例3-1の白色インク1の調製と同様の方法で白色インク4を調製した。
【0194】
<樹脂粒子分散液4の合成>
樹脂粒子分散液4については、下記手順にて合成した。
撹拌機、還流冷却管、温度計、及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量(Mn)1,000のポリエーテルポリオール(PTMG1000、三菱ケミカル株式会社製)を150g、ジメチロールプロピオン酸20.0g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)120g、及びアセトン270gを加え、75℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを15g加えて中和した後、水900gを徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン15gを水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、不揮発分約30質量%となるよう50℃で脱溶剤を行い、樹脂粒子分散液4を得た。
樹脂粒子分散液4の体積平均粒径D50をナノ粒子測定装置(ナノトラック Nanotrac Wave-EX1500(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、70nmであった。
【0195】
<<貯蔵弾性率(G’)の測定>>
得られた白色インク1~4の貯蔵弾性率(G’)は動的粘弾性測定により測定した。
まず、白色インク1~4をそれぞれテフロンシャーレ(直径50)に6mLに入れ、40℃、相対湿度60%の条件下で12時間乾燥させ、次に150℃、相対湿度60%の条件下で12時間乾燥させ、更に0.5mmHg、150℃の条件下で3時間減圧乾燥し、各白色インクの乾燥膜を得た。次に、得られた各白色インクの乾燥膜の25℃における動的粘弾性測定を、冷凍機付ARES-G2(TA Instruments社製)を用いて行った。試験片固定用治具としてトーションクランプを用い、20℃にて試験片を装置にセットした後、2gのAuto tensionをかけた状態で-70℃まで冷却した。-70℃に到達してから10分間後、以下の測定条件にて測定を行った。得られた測定データから25℃における貯蔵弾性率(G’)を読み取った。結果を下記表3に示す。
[測定条件]
・測定モード:temperature sweep
・測定温度範囲:-70℃~160℃
・昇温速度:4℃/分間
・周波数:1Hz
・初期歪:0.1%
・Auto tension:2g
【0196】
【表3】
【0197】
なお、前記表1-1、表1-2、表2-1、表2-2、及び表3における各材料としては、以下のものを使用した。
・ソルフィット(登録商標):3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(株式会社クラレ製)
・BYK-348:シリコン系界面活性剤(ビックケミー株式会社製)
・サーフィノール(登録商標)AD01:有機ジェミニ型界面活性剤(消泡剤)(AIR PRODUCTS社製)
・プロキセルLV:1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン(有効成分20質量%)(防腐剤)(ロンザジャパン社製)
・エポクロス(登録商標)K-2010E:オキサゾリン基含有ポリマー(ポリマー主鎖:スチレン/アクリル、Tc:-50℃)(日本触媒株式会社製)
・エポクロス(登録商標)K-2020E:オキサゾリン基含有ポリマー(ポリマー主鎖:スチレン/アクリル、Tg:0℃)(日本触媒株式会社製)
・エポクロス(登録商標)K-2035E:オキサゾリン基含有ポリマー(ポリマー主鎖:スチレン/アクリル、Tg:50℃)(日本触媒株式会社製)
・スーパーフレックス460:ウレタン樹脂(Tg:-21℃)(第一工業製薬株式会社製)
・7320:アクリル樹脂(Tg:-20℃)(ジャパンコーティングレジン株式会社製)
・スミカフレックス(登録商標)S-400HQ:エチレン酢酸ビニル樹脂(Tg:0℃)(住友化学株式会社製)
【0198】
(実施例1~19及び比較例1~3)
<液体組成物セットの作製>
調製例1-1~1-10で得られた第一処理液1~10と、調製例2-1~2-9で得られた第二処理液1~9と、調製例3-1~3-4で得られた白色インク1~4とを、下記表4に記載の組合せとし、実施例1~19及び比較例1~3の液体組成物セット1~22を作製した。
【0199】
<印刷方法>
作製した液体組成物セット1~22を使用して、以下の方法で印刷を行った。
【0200】
-第一処理液付与工程-
A4サイズに切り出した黒色ポリエステルTシャツ(トムス株式会社製)を、インクジェットプリンター(RICHO Ri 2000、株式会社リコー社製)のプラテン上にセットし、第一処理液1~10のいずれかを50mg/cmの付着量でスプレー塗布した。
【0201】
-第二処理液付与工程-
次いで、前記インクジェットプリンター(RICHO Ri 2000、株式会社リコー社製)に充填した第二処理液1~9を用い、第一処理液を塗布してから1分間経過後、第一処理液が湿潤状態にあるうちに、第一処理液を塗布した箇所に重複するようにして第二処理液を20mg/cmの付着量でインクジェット塗布した。
【0202】
-白色インク付与工程-
次いで、前記インクジェットプリンター(RICHO Ri 2000、株式会社リコー社製)に充填した白色インクとしての白色インク1~4を用い、第二処理液を塗布してから1分間経過後、第二処理液が湿潤状態にあるうちに、第一処理液及び第二処理液を塗布した箇所に重複するようにして白色インクを20mg/cmの付着量でインクジェット塗布し、ベタ画像を形成した。
【0203】
-乾燥工程-
次いで、前記ベタ画像を140℃に設定したヒートプレス機にて1分間乾燥させた。
【0204】
(実施例20)
実施例2で作製した液体組成物セット2を用い、実施例1~19及び比較例1~3の印刷方法を以下のように変更したこと以外は、実施例1~19及び比較例1~3と同様の方法で印刷を行った。
【0205】
<印刷方法>
実施例1~19及び比較例1~3の印刷方法において、液体組成物セット2を使用し、第一処理液付与工程の後に、第一処理液の乾燥工程を以下のようにして行い、第二処理液付与工程を以下のように変更したこと以外は、実施例1~19及び比較例1~3の印刷方法と同様の方法で印刷を行った。
【0206】
-第一処理液の乾燥工程-
第一処理液付与工程において第一処理液2を塗布したTシャツを、120℃に設定したヒートプレス機にて1分間乾燥させた。
【0207】
-第二処理液付与工程-
次いで、前記インクジェットプリンター(RICHO Ri 2000、株式会社リコー社製)に充填した第二処理液3を用い、第一処理液2を塗布し乾燥させた箇所に重複するようにして第二処理液3を20mg/cmの付着量でインクジェット塗布した。
【0208】
実施例1~20及び比較例1~3の乾燥工程後のベタ画像について、以下の方法により「白隠蔽性」及び「洗濯堅牢性」を評価した。
第一処理液、第二処理液、及び白色インクの組合せ、並びに「白隠蔽性」及び「洗濯堅牢性」の評価結果を下記表4に示す。
【0209】
<<白隠蔽性の評価>>
印刷前の黒色ポリエステルTシャツ(トムス株式会社製)について、分光濃度測色計(X-Rite eXact、ビデオジェット・エックスライト株式会社製)を用いて光学濃度(OD)を測色し、「元生地OD」とした。
次に、実施例1~20及び比較例1~3の白ベタ画像について、分光濃度・測色計(X-Rite eXact、ビデオジェット・エックスライト株式会社製)を用いて光学濃度(OD)を測色し、「ベタ画像OD」とした。
これらのOD値から、白隠蔽性を下記式(1)に基づき算出し、下記評価基準に基づき評価した。なお、下記評価基準において、「◎」、「〇」、及び「△」が、実用上問題ない範囲である。
白隠蔽性(%)=(元生地OD-ベタ画像OD)/元生地OD×100 ・・・ 式(1)
[評価基準]
◎:白隠蔽性が93%以上
〇:白隠蔽性が88%以上93%未満
△:白隠蔽性が85%以上88%未満
×:白隠蔽性が85%未満
【0210】
<<洗濯堅牢性の評価>>
実施例1~20及び比較例1~3のTシャツについて、AATCC 61-2Aに準拠して洗濯堅牢性試験を行い、下記評価基準に基づき洗濯堅牢性評価した。なお、下記評価基準において、「◎」、「〇」、及び「△」が、実用上問題ない範囲である。
[評価基準]
◎:等級が4.5級以上
○:等級が4.0級
△:等級が3.5級
×:等級が3.0級以下
【0211】
【表4】
【0212】
表4の結果より、実施例1~20では白隠蔽性及び洗濯堅牢性共に実用上十分あるいはそれ以上のレベルを示したが、比較例1~3では白隠蔽性及び洗濯堅牢性を同時に満足させることができなかった。
【0213】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 白色インクと、
樹脂を含有しており前記白色インクの前に布帛に付与される第二処理液と、
有機酸塩を含有しており前記第二処理液の前に布帛に付与される第一処理液と、
を有することを特徴とする液体組成物のセットである。
<2> 前記有機酸塩が、酢酸カルシウム及び乳酸カルシウムの少なくともいずれかである、前記<1>に記載の液体組成物のセットである。
<3> 前記樹脂が、オキサゾリン基を有する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体組成物のセットである。
<4> 前記第二処理液における前記樹脂の含有量が、3質量%以上10質量%以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体組成物のセットである。
<5> 前記第一処理液における前記有機酸塩の含有量が、6質量%以上10質量%以下である、前記<4>に記載の液体組成物のセットである。
<6> 前記樹脂のガラス転移温度(Tg)が、0℃未満である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体組成物のセットである。
<7> 前記白色インクが、カルボキシル基を有する樹脂を含有する、前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体組成物のセットである。
<8> 前記白色インクを乾燥させて得られる乾燥物の、25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率G’が、7.0×10Pa以下である、前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物のセットである。
<9> 布帛に、有機酸塩を含有する第一処理液を付与する第一処理液付与工程と、
前記第一処理液が付与された領域に、樹脂を含有する第二処理液を付与する第二処理液付与工程と、
前記第二処理液が付与された領域に、白色インクを付与する白色インク付与工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物セットを用いて行われる、前記<9>に記載の画像形成方法である。
<11> 前記第二処理液付与工程が、前記布帛に付与された前記第一処理液が湿潤状態にあるうちに、前記第一処理液が付与された領域に前記第二処理液を付与することにより行われ、
前記白色インク付与工程が、前記第二処理液が湿潤状態にあるうちに、前記第二処理液が付与された領域に前記白色インクを付与することにより行われる、前記<9>から<10>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<12> 布帛に、有機酸塩を含有する第一処理液を付与する第一処理液付与手段と、
前記第一処理液が付与された領域に、樹脂を含有する第二処理液を付与する第二処理液付与手段と、
前記第二処理液が付与された領域に、白色インクを付与する白色インク付与手段と、
を含むことを特徴とする画像形成装置である。
<13> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物セットを収容してなることを特徴とするインクカートリッジである。
<14> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物セット、前記<9>から<11>のいずれかに記載の画像形成方法、前記<12>に記載の画像形成装置、及び前記<13>に記載のインクカートリッジのいずれかにより画像形成されてなることを特徴とする記録物である。
【0214】
前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物セット、前記<9>から<11>のいずれかに記載の画像形成方法、前記<12>に記載の画像形成装置、前記<13>に記載のインクカートリッジ、及び前記<14>に記載の記録物は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0215】
100 画像形成装置
110 処理液付与手段
120 白色インク付与手段
130 後処理液付与手段
140 乾燥手段
150 搬送手段
160 制御手段
161 液付与制御部
162 インク付与制御部
170 記憶部
M 記録媒体(布帛)
200 画像形成装置
210 第一処理液付与手段
211 第二処理液付与手段
240 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0216】
【特許文献1】特開2011-246856号公報
【特許文献2】特開2019-167657号公報
図1A
図1B
図2
図3
図4