(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143669
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】液体塗布装置、液体塗布方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189437
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022046659
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上本 菜央
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雄貴
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB29
2C056EB58
2C056EC11
2C056EC72
2C056EC79
2C056ED05
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】キャリッジの走査範囲を超える領域に対しても液体塗布を行える液体塗布装置、液体塗布方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドにより液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への順次移動を制御する移動制御手段と、前記各分割領域において前記液体吐出ヘッドをXY走査方向に移動制御して液体塗布を行うヘッド制御手段と、を備え、前記ヘッド制御手段によって前記分割領域での液体塗布を実施したのち、前記移動制御手段によって次の隣接または一部重複する領域に移動させることで、液体塗布により生成された画像を連結させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドにより液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への順次移動を制御する移動制御手段と、
前記各分割領域において前記液体吐出ヘッドをXY走査方向に移動制御して液体塗布を行うヘッド制御手段と、
を備え、
前記ヘッド制御手段によって前記分割領域での液体塗布を実施したのち、前記移動制御手段によって次の隣接または一部重複する領域に移動させることで、液体塗布により生成された画像を連結させる、
ことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
前記移動制御手段は、隣接又は一部重複する前記分割領域への順次移動を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項3】
前記ヘッド制御手段は、前記分割領域に塗布データが存在しない場合には、液体塗布動作を実行せず、
前記移動制御手段は、次の隣接または一部重複する領域への移動を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項4】
印刷領域を複数に分割した各分割領域の端部同士が重なり合うオーバーラップ領域における左右または左右上下による少なくとも2領域での重複を考慮した塗布量を算出し、XY走査方向での塗布濃度を調整したぼかし処理を行う濃度制御手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項5】
前記濃度制御手段は、2つの前記分割領域のオーバーラップ領域にかけるぼかし処理において、2つのマスクのうちの一方は他方のマスクを反転させたものを用いる、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体塗布装置。
【請求項6】
前記濃度制御手段は、4つの前記分割領域のオーバーラップ領域にかけるぼかし処理において、2方向のマスクを掛け合わせて生成したマスクを用いる、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体塗布装置。
【請求項7】
前記濃度制御手段は、前記液体塗布領域の状態を認識して、前記塗布量を可変とする、
ことを特徴とする請求項4ないし6の何れか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項8】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える液体塗布装置における液体塗布方法であって、
前記液体吐出ヘッドにより液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への順次移動を制御する移動制御工程と、
前記各分割領域において前記液体吐出ヘッドをXY走査方向に移動制御して液体塗布を行うヘッド制御工程と、
を含み、
前記ヘッド制御工程によって前記分割領域での液体塗布を実施したのち、前記移動制御工程によって次の隣接または一部重複する領域に移動させることで、液体塗布により生成された画像を連結させる、
ことを特徴とする液体塗布方法。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える液体塗布装置を制御するコンピュータを、
前記液体吐出ヘッドにより液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への順次移動を制御する移動制御手段と、
前記各分割領域において前記液体吐出ヘッドをXY走査方向に移動制御して液体塗布を行うヘッド制御手段と、
として機能させ、
前記ヘッド制御手段によって前記分割領域での液体塗布を実施したのち、前記移動制御手段によって次の隣接または一部重複する領域に移動させることで、液体塗布により生成された画像を連結させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗布装置、液体塗布方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
キャリッジを移動させながら、被描画物に向けてヘッドからインクを吐出することにより、被描画物に対して描画物を描画することが可能な液体吐出装置が知られている。
【0003】
特許文献1(特許第5322436号公報)には、被印刷物を複数に分割し、左右相互からのドット濃淡を逆に変えて行う技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の印刷装置によれば、キャリッジの走査範囲外を印刷することができない、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、キャリッジの走査範囲を超える領域に対しても液体塗布を行える液体塗布装置、液体塗布方法およびプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドにより液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への順次移動を制御する移動制御手段と、前記各分割領域において前記液体吐出ヘッドをXY走査方向に移動制御して液体塗布を行うヘッド制御手段と、を備え、前記ヘッド制御手段によって前記分割領域での液体塗布を実施したのち、前記移動制御手段によって次の隣接または一部重複する領域に移動させることで、液体塗布により生成された画像を連結させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キャリッジの走査範囲を超える領域に対しても液体塗布を行える液体塗布装置、液体塗布方法およびプログラムを提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる液体塗布装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、液体塗布装置の演算装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、液体塗布装置がキャリッジ走査範囲外へ印刷する例を示す図である。
【
図4】
図4は、液体塗布装置が発揮する機能を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、演算装置における印刷処置の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、基準位置の第1の設定例について示す図である。
【
図7】
図7は、基準位置の路面性状を読み取って、画像書き出し位置の基準に利用した事例を示す図である。
【
図8】
図8は、基準位置の第2の設定例について示す図である。
【
図9】
図9は、基準位置の第3の設定例について示す図である。
【
図10】
図10は、基準位置の第4の設定例について示す図である。
【
図11】
図11は、基準位置の第5の設定例について示す図である。
【
図12】
図12は、オーバーラップ領域にかけるぼかし処理の第1の例について示す図である。
【
図13】
図13は、オーバーラップ領域にかけるぼかし処理の第2の例について示す図である。
【
図14】
図14は、オーバーラップ領域にかけるぼかし処理の第3の例について示す図である。
【
図15】
図15は、オーバーラップ領域における重複例を示す図である。
【
図17】
図17は、ユーザ入力の場合における塗布量変更にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、色数検出の場合における塗布量変更にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、路面状態に応じた塗布量変更にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、液体塗布装置、液体塗布方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施の形態にかかる液体塗布装置1の構成を示す図である。
図1(a)は液体塗布装置1の側面図、
図1(b)は液体塗布装置1を上方から見た平面図である。
図1に示す液体塗布装置1は、路面または壁面などの広範囲な印刷領域を複数に分割した各分割領域に順次移動し、大きな形状(模様、記号、ラインなど)を複数のセグメントに分割して印刷する液体塗布装置である。なお、「印刷」は、道路または壁面などに対する液体の塗布、または、吹き付けを行うことである。
【0011】
図1に示すように、液体塗布装置1は、印刷ユニット21と、制御ユニット22と、を備える。液体塗布装置1の印刷ユニット21は、インクを吐出して印刷を行う液体吐出ヘッドであるインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2を備える。なお、インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2は、多色多種用であって、複数備えられる。なお、「インク」は、道路または壁面などに対して塗布、または、吹き付けられる液体である。印刷ユニット21は、インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2が筐体11に水平に設けられたレール3上を矢印A方向に移動可能なガントリー構造である。なお、本実施形態の液体塗布装置1は、印刷ユニット21と制御ユニット22とを備えるものとしたが、印刷ユニット21と制御ユニット22とがそれぞれ別体であるシステム構成であってもよい。
【0012】
印刷ユニット21は、複数のタイヤ10およびモータ20(
図2参照)を筐体11の下部に備える。印刷ユニット21は、モータ20によるタイヤ10の回転制御によって、前後左右の4方向に移動可能である。
【0013】
インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2は、ベルト、プーリー、モータなどを用いたヘッド移動機構23(
図2参照)を備える。インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2は、ヘッド移動機構23により、印刷ユニット21のレール3に沿って矢印A方向に往復移動する。レール3は、ベルト、プーリー、モータなどを用いたレール移動機構24(
図2参照)を備える。レール3は、レール移動機構24により、レール3の長手方向に対する直交方向(矢印B方向)に、印刷ユニット21の筐体11に沿って往復移動する。つまり、インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2は、液体塗布装置1の筐体11内における水平方向において、矢印A方向である左右方向(X走査方向)および矢印B方向である前後方向(Y走査方向)に、自由に移動することができる。
【0014】
また、液体塗布装置1の制御ユニット22は、印刷に使用するインクを供給するインク供給系4を備える。インク供給系4は、インクの流路であるパイプ4aを介してインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2に対して連結されている。なお、本実施形態においては、インク供給系4は、印刷ユニット21に従動して移動するものとするが、これに限るものではなく、印刷ユニット21から独立して自走するものであってもよい。
【0015】
また、制御ユニット22は、印刷ユニット21のヘッド移動機構23、レール移動機構24、モータ20およびインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2などを駆動させるための電源を供給する電源供給系5を備える。電源供給系5は、外部で使用するものであって、かつ、印刷ユニット21のヘッド移動機構23、レール移動機構24、モータ20およびインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2以外にも電源を供給する為、大容量の蓄電池であることが好ましい。
【0016】
さらに、制御ユニット22は、印刷ユニット21のヘッド移動機構23、レール移動機構24、モータ20およびインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2の駆動制御を行ったり、GPS9で取得した座標データから液体塗布装置1の自己位置を推定したりする演算装置6を備える。
【0017】
さらに、印刷ユニット21は、周囲画像を撮像する周囲計測用の3次元形状計測装置である三次元カメラ7を、筐体11の前方部分に備える。三次元カメラ7は、撮像した画像を演算装置6に送信する。演算装置6は、三次元カメラ7で撮像した画像を、画像相関などの手法を用いて主に障害物との接触回避などに使用する。また、演算装置6は、三次元カメラ7で撮像した画像を、液体塗布装置1の移動量や姿勢などの推定に使用する。なお、三次元カメラ7は、自身に搭載しているバッテリから給電するが、連続運転を想定して電源供給系5から給電する方式としてもよい。
【0018】
また、印刷ユニット21は、路面及び塗装画像の近傍を撮像する二次元カメラ8を、四角錘形状にパイプなどを組んだ構造物12の頂点に備える。二次元カメラ8は、撮像した画像を演算装置6に送信する。演算装置6は、二次元カメラ8で撮像した画像を、画像相関などの手法を用いて、インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2及びレール3の移動量や速度の推定などに使用する。なお、二次元カメラ8は、自身に搭載しているバッテリから給電するが、連続運転を想定して電源供給系5から給電する方式としてもよい。
【0019】
さらに、液体塗布装置1は、地球上の現在位置を測定するGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)9を備える。GPS9は、取得した座標データを演算装置6に送信する。演算装置6は、GPS9で取得した座標データを、液体塗布装置1の累積移動量などのオドメトリ情報として保存する。なお、液体塗布装置1はGPS9を複数設置し、演算装置6は複数のGPS9で取得した座標データの差分などから座標データの誤差を補正してもよい。
【0020】
次に、液体塗布装置1の演算装置6のハードウェア構成について説明する。
【0021】
ここで、
図2は液体塗布装置1の演算装置6のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示すように、演算装置6は、CPU(Central Processing Unit)61と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)であるメモリ62と、入出力用のインタフェース(I/F)63と、ユニット制御回路64とを有する。これらは、システムバスを介して相互に接続されている。
【0022】
CPU61は、液体塗布装置1の動作を統括的に制御する。CPU61は、ユニット制御回路64を介して、印刷ユニット21のヘッド移動機構23、レール移動機構24、モータ20およびインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2の駆動制御を行ったり、GPS9で取得した座標データから液体塗布装置1の自己位置を推定したりする。
【0023】
また、CPU61は、三次元カメラ7で撮像した画像を、液体塗布装置1の移動量や姿勢などの推定に使用する。CPU61は、二次元カメラ8で撮像した画像を、画像相関などの手法を用いて、インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2及びレール3の移動量や速度の推定などに使用する。CPU61は、GPS9で取得した座標データを、液体塗布装置1の累積移動量などのオドメトリ情報として保存する。
【0024】
メモリ62は、CPU61の駆動に用いられるプログラムを記憶する。また、メモリ62は、CPU61のワークエリアとして使用される。
【0025】
I/F63は、タブレット端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、サーバ、ノートPC(Personal Computer)などの各種の外部機器30を接続するためのインタフェースである。
【0026】
上述したように液体塗布装置1は、前後左右の4方向に移動可能である。また、インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2は、液体塗布装置1の筐体11内を前後左右の4方向に走査して印刷することができる。
【0027】
ここで、
図3は液体塗布装置1がキャリッジ走査範囲外へ印刷する例を示す図である。液体塗布装置1は、インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2の走査範囲外に画像を印刷する場合、
図3に示すように画像全体を複数のセグメントに分割し、液体塗布装置1を移動させながら隣接するセグメントの画像同士にオーバーラップ領域を設けて画像を完成させる。
【0028】
次に、上述の印刷処理に際して、液体塗布装置1が発揮する特徴的な機能について説明する。
【0029】
ここで、
図4は液体塗布装置1が発揮する機能を示す機能ブロック図である。なお、
図4に示す各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部を、上述の演算装置6のCPU61が実行するプログラムで実現してもよいし、又は、ワイヤードロジック等によるハードウェアで実現してもよい。
【0030】
図4に示すように、画像全体を複数のセグメントに分割して印刷するために、液体塗布装置1は、移動制御手段54と、ヘッド制御手段55と、画像つなぎ計測手段51と、座標計測手段52と、濃度制御手段53と、を備える。
【0031】
移動制御手段54は、インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2により液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への液体塗布装置1の順次移動を制御する。より詳細には、移動制御手段54は、隣接又は一部重複する分割領域への液体塗布装置1の順次移動を制御する。
【0032】
ヘッド制御手段55は、各分割領域においてインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2をXY走査方向に移動制御して液体塗布を行う。ヘッド制御手段55は、分割領域に塗布データが存在しない場合には、液体塗布動作を実行しない。このようにヘッド制御手段55が分割領域に塗布データが存在しないために液体塗布動作を実行しない場合、移動制御手段54は、「オーバーラップ領域」を含む次の隣接または一部重複する領域への移動を制御する。
【0033】
画像つなぎ計測手段51は、画像全体を複数のセグメントに分割した分割領域の端部同士が重なり合う領域に設定された基準位置(画像書き出し位置)を二次元カメラ8で読み取り、画像書き出しの基準原点とする。
【0034】
座標計測手段52は、GPS9を用いたGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)計測および三次元カメラ7で撮像された画像(周囲画像データ)を組み合わせた自己位置推定技術によって液体塗布装置1の自己位置座標(位置および姿勢)を計測する。
【0035】
濃度制御手段53は、印刷領域を複数に分割した各分割領域の端部同士が重なり合うオーバーラップ領域における左右または左右上下での重複を考慮した塗布量を算出し、XY走査方向での塗布濃度を調整したぼかし処理を行う。なお、左右上下での重複には、後述する
図14に示す左右+下の他、左右+上、左右+上/下2領域なども含まれる。
【0036】
以下において、液体塗布装置1を移動させながら画像を完成させる印刷処理について説明する。
【0037】
ここで、
図5は演算装置6における印刷処置の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、演算装置6は、路面などの広範囲な印刷領域における印刷に際しては、液体塗布装置1が移動を停止した状態における印刷領域よりも画像が大きいので、画像全体を複数(N個)のセグメントに分割する(ステップS1)。なお、演算装置6は、隣接するセグメントの画像同士にオーバーラップ領域を設けて、各セグメントが重なり合うように設定する。より詳細には、演算装置6は、路面基準位置Aが複数のセグメントに含まれるように設定する。なお、オーバーラップ領域に対するぼかし処理の詳細については、後述する。
【0038】
なお、画像全体を複数(N個)のセグメントに分割する処理は、外部機器30で行うものであってもよい。
【0039】
次に、演算装置6は、分割数を決定すると、初期設定(インク吐出条件、キャリッジ速度:主走査、副走査、など)と初期位置(最初に画像を作像する領域:セグメント1(n=1))とに基づいて移動準備を行う(ステップS2)。
【0040】
次いで、演算装置6は、初期時(セグメント1の時)か否かを判断する(ステップS3)。
【0041】
演算装置6は、初期時(セグメント1の時)であると判断すると(ステップS3のYes)、粗い位置決めを行う処理ルーチンに進む。
【0042】
図5に示すように、演算装置6は、初期時(セグメント1の時)、三次元カメラ7で撮像された画像(周囲画像データ)を取得し(ステップS11)、画像特徴点を抽出し(ステップS12)、画像特徴点を追跡する(ステップS13)。
【0043】
加えて、演算装置6は、初期時(セグメント1の時)、座標計測手段52により座標データを取得し(ステップS14)、取得した座標データを液体塗布装置1の累積移動量などのオドメトリ情報として蓄積する(ステップS15)。
【0044】
次いで、演算装置6は、追跡した画像特徴と、蓄積したオドメトリ情報とに基づき、液体塗布装置1の粗い位置決め(数センチメートル単位)と姿勢とを計測する(ステップS16)。
【0045】
次いで、演算装置6は、3Dマップを生成し(ステップS17)、許容できる運動パラメータを定義し(ステップS18)、液体塗布装置1を初期位置に移動する(ステップS19)。
【0046】
一方、演算装置6は、初期以外の時(セグメント2~セグメントNの時)であると判断すると(ステップS3のNo)、詳細な位置決めを行う処理ルーチンに進む。
【0047】
演算装置6は、初期以外の時(セグメント2~セグメントNの時)、移動の際に液体塗布装置1が障害物と接触しないように、三次元カメラ7で安全を確認することで、移動可能領域であるかを確認する(ステップS21)。
【0048】
次に、演算装置6は、二次元カメラ8で計測する画像つなぎ計測手段51を利用して高精度に設定した画像書き出し位置に、液体塗布装置1及びインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2を移動する(ステップS22)。
【0049】
次に、演算装置6は、現領域での印刷(インク吐出ヘッドのキャリッジ2を主走査と副走査に移動)を実行し(ステップS23)、現セグメントが最終セグメント(n=N)であるかの判別を実施する(ステップS24)。
【0050】
演算装置6は、最終セグメントでない場合(ステップS24のNo)、次のセグメント(n=n+1)に移動する前に位置決めの基準となる次のセグメント用の基準位置を設定し(ステップS25)、ステップS21に戻る。なお、基準位置の設定方法は、後述する。
【0051】
一方、演算装置6は、最終セグメントである場合(ステップS24のYes)、液体塗布装置1を終了位置に移動する(ステップS26)。
【0052】
液体塗布装置1の移動において、GNNSを利用する座標計測手段52のみでは、位置精度が数センチメートルであり、画像つなぎ目が目立つ。そこで、本実施形態においては、移動前に設定した基準位置を移動後に、画像つなぎ計測手段51が、二次元カメラ8で読み取りながら書き出し位置を決定する。これらの作業を繰り返し、大きな画像の場合でもつなぎ目を小さくすることができる道路塗装が可能となる。なお、繰り返し作業となるので、ロボット化した自動運転システムで実施することにも展開できる。また、リモート動作による遠隔運転でも構わない。
【0053】
(基準位置(画像書き出し位置)の設定方法)
続いて、次のセグメントを作像する際の位置の基準となる基準位置(画像書き出し位置)の設定方法について、いくつかの例を説明する。
【0054】
ここで、
図6は基準位置の第1の設定例について示す図である。
図6に示すように、基準位置の第1の設定例においては、分割領域(セグメント)の端部同士が重なり合うように設定し、画像つなぎ計測手段51が、この重なりあったオーバーラップ領域の路面性状(基準位置)を二次元カメラ8で読み取り、この情報をもとに自己位置推定して、画像書き出しの基準原点とする。具体的には、以下の通りである。
【0055】
(a).作像領域四隅の路面情報(路面性状)を二次元カメラ8で読み取る(
図6の点線四角枠)
(b).4つの点線枠のうち1個以上撮影エリア内に入るように液体塗布装置1を移動(GNSS情報を利用)
(c).移動前と移動後で路面性状(点線枠領域)を二次元画像から抽出して位置検出(細かい位置推定)
【0056】
基準位置の第1の設定例によれば、検出マークやチョークライン、前領域の文字端部などの情報が不要となり、工数削減の効果がある。なお、重なり合った路面情報とは、アスファルトの場合、上層路盤材料には良好な骨材粒度に調整した粒度調整砕石、砕石にセメントや石灰を混合した安定処理材料を用いられる。このため、その路面表面は砕石やアスファルト組み合わせで特徴的な模様ができる。この模様を路面情報(路面性状)として記録し、位置合わせに利用する。
【0057】
図7は、基準位置の路面性状を読み取って、画像書き出し位置の基準に利用した事例を示す図である。
図7(a)は移動前を示し、
図7(b)は移動後を示している。
図7(a)に示すように、1セグメントの印刷は作像領域の端部(GNSS計測などで設定)を基準に印刷を実行する。この場合、画像書き出し位置はLとなる。一方、この画像書き出し位置と路面性状の位置関係も把握しておく(
図7(a)では路面性状3と書き出し位置L1)。一方、
図7(b)に示すように、2セグメントに移動した際に移動誤差σがあっても重なり合った領域の路面性状3の印刷基準位置とすると、2セグメントの画像書き出し位置がL1なので、つなぎ目誤差がない作像となる。
【0058】
なお、読み取った位置を参考に自走式の液体塗布装置1を止める方法もある。この場合、液体塗布装置1内の書き出し基準位置は、一定にできる。前者は書き出し位置を修正しており、後者は自走式の停止位置を補正している。
【0059】
ここで、
図8は基準位置の第2の設定例について示す図である。
図8に示すように、基準位置の第2の設定例においては、画像四隅に検出マークMである基準位置を印字し、画像つなぎ計測手段51が、検出マークMを二次元カメラ8で読み取り、この情報をもとに自己位置推定して、画像書き出しの基準原点とする。具体的には、以下の通りである。
【0060】
(a).インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2にて作像領域四隅に検出マークMを印字
(b).4つの検出マークMのうち1個以上撮影エリア内に入るように液体塗布装置1を移動
(c).GNSS情報を元に検出マークMの位置を推定(粗い位置推定)
(d).推定した検出マークMの位置中心に検出マークMを二次元画像から抽出して位置検出(細かい位置推定)
【0061】
基準位置の第2の設定例によれば、液体塗布装置1の印刷領域の四隅に基準位置を設けることで印刷領域を重なり領域を小さくでき、印刷時間を短くすることができる。
【0062】
ここで、
図9は基準位置の第3の設定例について示す図である。
図9に示すように、基準位置の第3の設定例においては、複数の領域に印字画像が重なる(つながる)様に分割し、画像つなぎ計測手段51が、この文字や記号などの端部:基準位置を二次元カメラ8で読み取り、この情報をもとに自己位置推定して、画像書き出しの基準原点とする。具体的には、以下の通りである。
【0063】
(a).インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2にて画像を印刷
(b).ある印字画像の端部が撮影エリア内に入るように液体塗布装置1を移動
(c).GNSS情報を元に印字画像の端部位置を推定(粗い位置推定)
(d).推定した印字画像端部位置中心に印字画像端部位置を二次元画像から抽出して位置検出(細かい位置推定)
【0064】
基準位置の第3の設定例によれば、前セグメントで印字した画像の一部(端部)を基準位置とすることで、基準位置設定の作業(
図5のS25)を簡略化することができる。
【0065】
ここで、
図10は基準位置の第4の設定例について示す図である。
図10に示すように、基準位置の第4の設定例においては、画像四隅に検出マークM(基準位置)をUV光等特殊な光源のみに反応する不可視のインクを用いて印字し、画像つなぎ計測手段51が、検出マークMを二次元カメラ8で読み取り、この情報をもとに自己位置推定して、画像書き出しの基準原点とする。具体的には、以下の通りである。
【0066】
(a).インク吐出用ヘッド(キャリッジ)2にて不可視のインクで作像領域四隅に検出マークMを印字
(b).4つの検出マークのうち1個以上撮影エリア内に入るように液体塗布装置1を移動
(c).GNSS情報を元に検出マークMの位置を推定(粗い位置推定)
(d).推定した検出マークMの位置中心に検出マークMを二次元画像から抽出して位置検出(細かい位置推定)
【0067】
基準位置の第4の設定例によれば、不可視のインクなので大きな検出マークM、または、多数の検出マークMを設定しても、見た目に影響がなく、つなぎ目が目立たない印刷が可能となる。
【0068】
ここで、
図11は基準位置の第5の設定例について示す図である。
図11に示すように、基準位置の第5の設定例においては、あらかじめ描いてあるチョークラインで基準軸を基準位置として、画像つなぎ計測手段51が、チョークラインを二次元カメラ8で読み取り、この情報をもとに自己位置推定して、画像書き出しの基準原点とする。具体的には、以下の通りである。
【0069】
(a).必要最低限のチョークラインを路面上に作業者が描く
(b).チョークラインが撮影エリア内に入るように液体塗布装置1を移動
(c).GNSS情報を元にチョークラインの位置を推定(粗い位置推定)
(d).推定したチョークライン位置中心にチョークラインを二次元画像から抽出して位置検出(細かい位置推定)
【0070】
基準位置の第5の設定例によれば、チョークラインを基準とすることで、印刷領域の重なり領域が無くなり、印刷時間がさらに短くなる。
【0071】
(オーバーラップ領域に対するぼかし処理)
上述したように、本実施形態においては、濃度制御手段53が、画像全体を複数のセグメントに分割した複数枚数分の画像を、液体塗布装置1を移動させて印刷する際、隣接する画像同士にオーバーラップ領域を設けてぼかし処理をかける。続いて、隣接する画像同士にオーバーラップ領域を設けてぼかし処理をかける例について、いくつか説明する。
【0072】
ここで、
図12はオーバーラップ領域にかけるぼかし処理の第1の例について示す図である。
図12(a)は左右の2つの画像のオーバーラップ領域Oを示し、
図12(b)はぼかし処理に用いる2つのマスクを示し、
図12(c)はオーバーラップ領域に対する各マスクの塗布量を示している。
図12に示す第1の例は、2つの画像のオーバーラップ領域にかけるぼかし処理を示すものである。
図12に示す2つの画像のオーバーラップ領域Oにかけるぼかし処理は、2つのマスクのうちの一方は他方のマスクを反転させたものを用いる。領域1として印刷されるオーバーラップ領域Oには、例えば配列1のような左から右に塗布量が減少する処理をかける。そして、領域2として印刷されるオーバーラップ領域Oには、配列1を反転させた処理をかける。
図12(c)のグラフにて示すように、配列1と配列2を足し合わせると塗布量は画像データ(塗布データ)に対して100%となる。なお、ここでは、画像のデータの通りに描画塗布できる場合を100%とする。反転は、1画像を2領域に分けて重ね書き(塗布)する場合である。濃度制御手段53は、2領域の相互で補完し、100%の画像とすることができる。
【0073】
ここで、
図13はオーバーラップ領域にかけるぼかし処理の第2の例について示す図である。
図13(a)は上下左右の4つの画像のオーバーラップ領域Oを示し、
図13(b)はぼかし処理に用いるマスクを示している。
図13に示す第2の例は、4つの画像のオーバーラップ領域Oにかけるぼかし処理を示すものである。
図13に示す4つの画像のオーバーラップ領域にかけるぼかし処理は、2方向のマスクを掛け合わせて生成したマスクを用いる。
図13(b)に示すように、領域1として印刷されるオーバーラップ領域Oにかかる処理は、縦方向をつなぐ処理と横方向をつなぐ処理とを掛け合わせてマスクが生成される。配列1~4は
図13(b)に示すように生成され、足し合わせると塗布量は100%となる。
【0074】
ここで、
図14はオーバーラップ領域にかけるぼかし処理の第3の例について示す図である。
図14(a)は3つの画像のオーバーラップ領域Oを示し、
図14(b)はぼかし処理に用いるマスクを示している。
図14に示す第3の例は、区画がずれた場合のオーバーラップ領域Oにかけるぼかし処理を示すものである。
図14(a)に示すように区画がずれた場合も、
図14(b)に示すように、オーバーラップ領域Oには上述した例と同様の方式で生成されたマスクを用いたぼかし処理をかける。なお、
図14に示すような3領域以上に分割したぼかし処理の場合(例えば、左右に上または下が重なる場合)は、直接的に反転とはならず、濃度制御手段53は、3領域での重ね書き(塗布)により、元の画像に一致できることになり、それぞれで補完することになる。
【0075】
なお、濃度制御手段53は、液体塗布領域の状態を認識して、塗布量を可変とするようにしてもよい。濃度制御手段53は、例えば、画像における線の端部などエッジにおいて白抜けが発生しないように、塗布量を多くするようにしてもよい。
【0076】
ここで、
図15はオーバーラップ領域における重複例を示す図である。
図15に示す例では、各分割領域の端部のドット配列(配列1、配列2)を示している。
図15において斜線で示す部分は、それぞれの配列(配列1、配列2)で塗布される部分を示している。濃度制御手段53は、印刷領域を複数に分割した各分割領域の端部同士が重なり合うオーバーラップ領域における左右領域または左右上下領域での重複を考慮した塗布量を算出し、XY走査方向での塗布濃度を調整したぼかし処理を行う。
【0077】
図16は、塗布濃度の調整例を示す図である。
図16に示すように、塗布濃度の調整には、総塗布量100%を超えるものを含む。すなわち、濃度制御手段53は、オーバーラップ領域において、塗布量を増加させる場合もある。
【0078】
なお、左右上下領域での重複には、上述した
図14に示すような左右領域に下領域が重なる場合の他、左右領域に上領域が重なる場合、左右領域に上領域および下領域の2領域が重なる場合なども含まれる。
【0079】
また、濃度制御手段53は、道路などの印刷対象面(液体塗布領域)の凹凸に応じて、インクの塗布量を変えるようにしてもよい。なお、
図16に示すように、道路などの印刷対象面の凹凸に応じて変化させるインクの塗布量は、総塗布量100%を超えてもよい。
【0080】
続いて、塗布量変更にかかる処理について説明する。
【0081】
図17は、ユーザ入力の場合における塗布量変更にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
【0082】
まず、
図17に示すように、濃度制御手段53は、入力画像と、オーバーラップ量と、塗布量と、の入力を受け付ける(ステップS31)。オーバーラップ量とは、隣接して印刷される分割画像の端部にぼかし処理をかける面積を示す。塗布量とは、オーバーラップ領域に塗布されるインクの総塗布量を示す。
【0083】
なお、濃度制御手段53は、オーバーラップ量および塗布量を数値化またはレベル化し、入力選択できるようにしてもよい。また、濃度制御手段53は、簡易的に100%を下限として、例えば100%,120%,140%のように3段階の塗布量から選択できるようにしてもよい。
【0084】
次に、
図17に示すように、演算装置6は、基準位置(画像書き出し位置)の設定を行うつなぎ処理を実行する(ステップS32)。
【0085】
図18は、色数検出の場合における塗布量変更にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
【0086】
まず、
図18に示すように、濃度制御手段53は、入力画像と、オーバーラップ量と、の入力を受け付ける(ステップS41)。
【0087】
次いで、
図18に示すように、濃度制御手段53は、塗布量計算処理を実行する(ステップS42)。
【0088】
より詳細には、濃度制御手段53は、入力画像の入力を受け付けると(ステップS421)、入力画像の使用する色数が1色であるかを判断し(ステップS422)、入力画像の色数に応じてインクの総塗布量を変更する。
【0089】
濃度制御手段53は、入力画像の使用する色数が1色の場合(ステップS422のYes)、インクの総塗布量を100%以上(例えば、200%)とし(ステップS423)、入力画像の使用する色数が2色の場合(ステップS422のNo)、インクの総塗布量を100%とする(ステップS424)。
【0090】
次に、
図18に示すように、演算装置6は、基準位置(画像書き出し位置)の設定を行うつなぎ処理を実行する(ステップS43)。
【0091】
図19は、路面状態に応じた塗布量変更にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
【0092】
まず、
図19に示すように、濃度制御手段53は、入力画像と、二次元カメラ8からの画像と、の入力を受け付ける(ステップS51)。
【0093】
次いで、
図19に示すように、濃度制御手段53は、塗布量計算処理を実行する(ステップS52)。
【0094】
より詳細には、濃度制御手段53は、二次元カメラ8からの画像の入力を受け付けると(ステップS521)、二次元カメラ8により撮影された画像の明暗度合いから表面粗さを計算する表面粗さ計算処理を実行する(ステップS522)。その後、濃度制御手段53は、表面粗さに係る係数値に応じて塗布量を計算する(ステップS523)。
【0095】
例えば、濃度制御手段53は、ステップS523の塗布量の計算として、簡易的に、係数値に応じて例えば塗布量を100%か140%かを選択するようにしてもよい。また、濃度制御手段53は、二次元カメラ8により撮影された画像からアスファルトの種類(密粒かポーラスか等)を表面粗さに係る係数値として判断して、塗布量を計算するようにしてもよい。
【0096】
次に、
図19に示すように、演算装置6は、基準位置(画像書き出し位置)の設定を行うつなぎ処理を実行する(ステップS53)。
【0097】
なお、上述のオーバーラップ領域にかけるぼかし処理は、複数のインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2で多色にした場合でも同様であり、相互に反転、補完するようにしてぼかし処理部の塗布を行うようにする。
【0098】
このように本実施形態によれば、キャリッジの走査範囲を超える領域に対しても液体塗布を行える。そして、本実施形態によれば、印刷領域を複数に分割した各分割領域の端部同士が重なり合うオーバーラップ領域における左右または左右上下での重複を考慮した塗布量を算出し、XY走査方向での塗布濃度を調整したぼかし処理を行うことにより、オーバーラップ領域の見た目を綺麗にすることができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、液体塗布装置1の高精度な自己位置推定を実現することで画像つなぎ部が目立ちにくい印刷を実現することができる。特に、分割領域の端部であるので、印刷領域のオーバーラップ領域を小さくすることができ、全体を印刷する時間を短くできる。また、分割領域ごとのつなぎ目が小さくなり、きれいな印刷(倍率誤差、スキューが小さいなど)を行うことができる。
【0100】
さらに、本実施形態によれば、GPS9を用いたGNSS計測および三次元カメラ7で撮像された画像(周囲画像データ)を組み合わせた自己位置推定技術によって液体塗布装置1の自己位置座標(位置および姿勢)の計測を粗めに行った後、二次元カメラ8で路面情報を取得してインク吐出用ヘッド(キャリッジ)2の自己位置推定を精細に行うことで、画像つなぎに必要な位置精度を確保することができるので、広範囲な印刷を自動で実現することができる。
【0101】
なお、本実施の形態の液体塗布装置1で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0102】
本実施の形態の液体塗布装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、本実施の形態の液体塗布装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の液体塗布装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0103】
本願において、「液体塗布装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体塗布装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0104】
この「液体塗布装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0105】
例えば、「液体塗布装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0106】
また、「液体塗布装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0107】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0108】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0109】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0110】
また、「液体塗布装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0111】
また、「液体塗布装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0112】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0113】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドにより液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への順次移動を制御する移動制御手段と、
前記各分割領域において前記液体吐出ヘッドをXY走査方向に移動制御して液体塗布を行うヘッド制御手段と、
を備え、
前記ヘッド制御手段によって前記分割領域での液体塗布を実施したのち、前記移動制御手段によって次の隣接または一部重複する領域に移動させることで、液体塗布により生成された画像を連結させる、
ことを特徴とする液体塗布装置。
<2>前記移動制御手段は、隣接又は一部重複する前記分割領域への順次移動を制御する、
ことを特徴とする<1>に記載の液体塗布装置。
<3>前記ヘッド制御手段は、前記分割領域に塗布データが存在しない場合には、液体塗布動作を実行せず、
前記移動制御手段は、次の隣接または一部重複する領域への移動を制御する、
ことを特徴とする<1>に記載の液体塗布装置。
<4>印刷領域を複数に分割した各分割領域の端部同士が重なり合うオーバーラップ領域における左右または左右上下による少なくとも2領域での重複を考慮した塗布量を算出し、XY走査方向での塗布濃度を調整したぼかし処理を行う濃度制御手段を備える、
ことを特徴とする<1>ないし<3>の何れか一に記載の液体塗布装置。
<5>前記濃度制御手段は、2つの前記分割領域のオーバーラップ領域にかけるぼかし処理において、2つのマスクのうちの一方は他方のマスクを反転させたものを用いる、
ことを特徴とする<4>に記載の液体塗布装置。
<6>前記濃度制御手段は、4つの前記分割領域のオーバーラップ領域にかけるぼかし処理において、2方向のマスクを掛け合わせて生成したマスクを用いる、
ことを特徴とする<4>に記載の液体塗布装置。
<7>前記濃度制御手段は、前記液体塗布領域の状態を認識して、前記塗布量を可変とする、
ことを特徴とする<4>ないし<6>の何れか一に記載の液体塗布装置。
<8>液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える液体塗布装置における液体塗布方法であって、
前記液体吐出ヘッドにより液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への順次移動を制御する移動制御工程と、
前記各分割領域において前記液体吐出ヘッドをXY走査方向に移動制御して液体塗布を行うヘッド制御工程と、
を含み、
前記ヘッド制御工程によって前記分割領域での液体塗布を実施したのち、前記移動制御工程によって次の隣接または一部重複する領域に移動させることで、液体塗布により生成された画像を連結させる、
ことを特徴とする液体塗布方法。
<9>液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える液体塗布装置を制御するコンピュータを、
前記液体吐出ヘッドにより液体塗布を行う液体塗布領域を複数に分割した各分割領域への順次移動を制御する移動制御手段と、
前記各分割領域において前記液体吐出ヘッドをXY走査方向に移動制御して液体塗布を行うヘッド制御手段と、
として機能させ、
前記ヘッド制御手段によって前記分割領域での液体塗布を実施したのち、前記移動制御手段によって次の隣接または一部重複する領域に移動させることで、液体塗布により生成された画像を連結させる、
ためのプログラム。
【符号の説明】
【0114】
1 液体塗布装置
2 液体吐出ヘッド
51 画像つなぎ計測手段
52 座標計測手段
53 濃度制御手段
54 移動制御手段
55 ヘッド制御手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】