IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143713
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】含ホウ素縮合環化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
C07F5/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010437
(22)【出願日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022050608
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 謙
【テーマコード(参考)】
4H048
【Fターム(参考)】
4H048AA02
4H048AC90
4H048BE56
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ホウ素原子を含有する縮合環化合物が従来よりも高い収率で得られる製造方法を提供する。
【解決手段】特定の部分構造を有するハロゲン化物を、BX3で表されるホウ素化合物と直接反応させるか、又は、前記ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後に、前記ホウ素化合物と反応させて、下式で表される部分構造を有する含ホウ素縮合環化合物を得る環化工程を含む、含ホウ素縮合環化合物の製造方法。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物を、BX3で表されるホウ素化合物(式中、Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のXは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)と直接反応させるか、又は、前記ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後に、前記ホウ素化合物と反応させて、下記式(2)で表される部分構造を有する含ホウ素縮合環化合物を得る環化工程を含む、含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化1】

[式(1’)中、
環A、環B、及び環Cはそれぞれ独立に、芳香環を表し、
A1、RA2、RB1、RB2、RC1及びRC2はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、
A3、RB3及びRC3はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、
k1、k2、m1、m2、n1及びn2はそれぞれ独立に、0以上の整数であり、
k1+k2は、RA2及びRA3が環Aと結合可能な数の最大値であり、
m1+m2は、RB2及びRB3が環Bと結合可能な数の最大値であり、
n1+n2は、RC2及びRC3が環Cと結合可能な数の最大値であり、
A1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)のうち少なくとも2つの群は、ハロゲン原子を含み、
1及びX2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は-N(R)-で表される基を表し、
Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、Rは環A、環B又は環Cと結合して環を形成していてもよく、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。
但し、前記ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後に、前記ホウ素化合物と反応させる場合には、RA1、RB1及びRC1は水素原子である。]
【化2】


[式(2)中、
A2、HB2及びHC2は、水素原子を表し、
k1’、m1’及びn1’はそれぞれ独立に、0以上の整数であり、
k1’+k2は、HA2及びRA3が環Aと結合可能な数の最大値であり、
m1’+m2は、HB2及びRB3が環Bと結合可能な数の最大値であり、
n1’+n2は、HC2及びRC3が環Cと結合可能な数の最大値であり、
環A、環B、環C、X1、X2、RA3、RB3、RC3、k2、m2、及びn2の定義は、式(1’)における環A、環B、環C、X1、X2、RA3、RB3、RC3、k2、m2、及びn2の定義と同じであり、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記X1及びX2が、-N(R)-で表される基である、請求項1に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【請求項3】
前記式(1’)中、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)に含まれるハロゲン原子の数は、2又は3である、請求項1又は請求項2に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【請求項4】
前記式(1’)中、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)はそれぞれ、ハロゲン原子を含む、請求項1又は請求項2に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化物が、下記式(1A’)で表される化合物であり、
前記含ホウ素縮合環化合物が、下記式(2A)で表される化合物である、請求項1又は請求項2に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化3】

[式(1A’)中、
A30、RB30及びRC30はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、
A30、RB30及びRC30は、隣接する炭素原子に結合する基同士で結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよく、
k10及びk20はそれぞれ独立に、0~3の整数であり、
m10、m20、n10及びn20はそれぞれ独立に、0~4の整数であり、
k10+k20は、1~3の整数であり、
m10+m20は、1~4の整数であり、
n10+n20は、1~4の整数であり、
A1、RA2、RB1、RB2、RC1、RC2、X1及びX2の定義は、式(1’)におけるRA1、RA2、RB1、RB2、RC1、RC2、X1及びX2の定義と同じであり、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
【化4】

[式(2A)中、
k10’は、0~3の整数であり、
m10’及びn10’はそれぞれ独立に、0~4の整数であり、
k10’+k20は、1~3の整数であり、
m10’+m20は、1~4の整数であり、
n10’+n20は、1~4の整数であり、
環A、環B、環C、X1、X2、HA2、HB2、及びHC2の定義は、式(2)における環A、環B、環C、X1、X2、HA2、HB2、及びHC2の定義と同じであり、
A30、RB30、RC30、k20、m20及びn20の定義は、式(1A’)におけるRA30、RB30、RC30、k20、m20及びn20の定義と同じであり、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
【請求項6】
下記式(1)で表される部分構造を有する多環芳香族化合物をハロゲン化して、前記式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物を得る工程をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化5】

[式(1)中、
A1、HA2、HB1、HB2、HC1及びHC2は、水素原子を表し、
k1’、m1’及びn1’はそれぞれ独立に、0以上の整数であり、
k1’+k2は、HA2及びRA3が環Aと結合可能な数の最大値であり、
m1’+m2は、HB2及びRB3が環Bと結合可能な数の最大値であり、
n1’+n2は、HC2及びRC3が環Cと結合可能な数の最大値であり、
環A、環B、環C、X1、X2、RA3、RB3、RC3、k2、m2、及びn2の定義は、式(1’)における環A、環B、環C、X1、X2、RA3、RB3、RC3、k2、m2、及びn2の定義と同じであり、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含ホウ素縮合環化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子などの有機エレクトロニクス素子に用いるための多環芳香族化合物として、例えば、式(BN)で表されるホウ素原子を含有する縮合環化合物が検討されている。
【化1】
【0003】
前記式(BN)で表される縮合環化合物の合成方法として、例えば、特許文献1には、式(i)で表される製造方法が記載されている。
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-020877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記製造方法は、収率が必ずしも高くない。
そこで、本開示は、ホウ素原子を含有する縮合環化合物が従来よりも高い収率で得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
【0007】
[1]
下記式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物を、BX3で表されるホウ素化合物(式中、Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のXは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)と直接反応させるか、又は、ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後に、ホウ素化合物と反応させて、下記式(2)で表される部分構造を有する含ホウ素縮合環化合物を得る環化工程を含む、含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化3】


[式(1’)中、
環A、環B、及び環Cはそれぞれ独立に、芳香環を表し、
A1、RA2、RB1、RB2、RC1及びRC2はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、
A3、RB3及びRC3はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、
k1、k2、m1、m2、n1及びn2はそれぞれ独立に、0以上の整数であり、
k1+k2は、RA2及びRA3が環Aと結合可能な数の最大値であり、
m1+m2は、RB2及びRB3が環Bと結合可能な数の最大値であり、
n1+n2は、RC2及びRC3が環Cと結合可能な数の最大値であり、
A1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)のうち少なくとも2つの群は、ハロゲン原子を含み、
1及びX2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は-N(R)-で表される基を表し、
Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、Rは環A、環B又は環Cと結合して環を形成していてもよく、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。
但し、ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後に、ホウ素化合物と反応させる場合には、RA1、RB1及びRC1は水素原子である。]
【化4】


[式(2)中、
A2、HB2及びHC2は、水素原子を表し、
k1’、m1’及びn1’はそれぞれ独立に、0以上の整数であり、
k1’+k2は、HA2及びRA3が環Aと結合可能な数の最大値であり、
m1’+m2は、HB2及びRB3が環Bと結合可能な数の最大値であり、
n1’+n2は、HC2及びRC3が環Cと結合可能な数の最大値であり、
環A、環B、環C、X1、X2、RA3、RB3、RC3、k2、m2、及びn2の定義は、式(1’)における環A、環B、環C、X1、X2、RA3、RB3、RC3、k2、m2、及びn2の定義と同じであり、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
[2]
1及びX2が、-N(R)-で表される基である、[1]に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
[3]
式(1’)中、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)に含まれるハロゲン原子の数は、2又は3である、[1]又は[2]に記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
[4]
式(1’)中、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)はそれぞれ、ハロゲン原子を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
[5]
ハロゲン化物が、下記式(1A’)で表される化合物であり、
含ホウ素縮合環化合物が、下記式(2A)で表される化合物である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化5】

[式(1A’)中、
A30、RB30及びRC30はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよく、
A30、RB30及びRC30は、隣接する炭素原子に結合する基同士で結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよく、
k10及びk20は、それぞれ独立に、0~3の整数であり、
m10、m20、n10及びn20はそれぞれ独立に、0~4の整数であり、
k10+k20は、1~3の整数であり、
m10+m20は、1~4の整数であり、
n10+n20は、1~4の整数であり、
A1、RA2、RB1、RB2、RC1、RC2、X1及びX2の定義は、式(1’)におけるRA1、RA2、RB1、RB2、RC1、RC2、X1及びX2の定義と同じであり、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
【化6】

[式(2A)中、
k10’は、0~3の整数であり、
m10’及びn10’はそれぞれ独立に、0~4の整数であり、
k10’+k20は、1~3の整数であり、
m10’+m20は、1~4の整数であり、
n10’+n20は、1~4の整数であり、
環A、環B、環C、X1、X2、HA2、HB2、及びHC2の定義は、式(2)における環A、環B、環C、X1、X2、HA2、HB2、及びHC2の定義と同じであり、
A30、RB30、RC30、k20、m20及びn20の定義は、式(1A’)におけるRA30、RB30、RC30、k20、m20及びn20の定義と同じであり、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
[6]
下記式(1)で表される部分構造を有する多環芳香族化合物をハロゲン化して、式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物を得る工程をさらに含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の含ホウ素縮合環化合物の製造方法。
【化7】

[式(1)中、
A1、HA2、HB1、HB2、HC1及びHC2は、水素原子を表し、
k1’、m1’及びn1’はそれぞれ独立に、0以上の整数であり、
k1’+k2は、HA2及びRA3が環Aと結合可能な数の最大値であり、
m1’+m2は、HB2及びRB3が環Bと結合可能な数の最大値であり、
n1’+n2は、HC2及びRC3が環Cと結合可能な数の最大値であり、
環A、環B、環C、X1、X2、RA3、RB3、RC3、k2、m2、及びn2の定義は、式(1’)における環A、環B、環C、X1、X2、RA3、RB3、RC3、k2、m2、及びn2の定義と同じであり、
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ホウ素原子を含有する縮合環化合物が従来よりも高い収率で得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
<共通する用語の説明>
本開示で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
【0011】
「室温」とは、25℃を意味する。
Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、i-Prはイソプロピル基、t-Buはtert-ブチル基を表す。
【0012】
水素原子は、重水素原子であっても、軽水素原子であってもよい。
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×10以下の化合物を意味する。
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上(例えば、1×10~1×10)である重合体を意味する。
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。高分子化合物中に2個以上存在する構成単位は、一般に、「繰り返し単位」とも呼ばれる。
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよい。
高分子化合物の末端基は、発光特性等の観点から、好ましくは安定な基である。高分子化合物の末端基としては、好ましくは、高分子化合物の主鎖と共役結合している基であり、例えば、炭素-炭素結合を介して高分子化合物の主鎖と結合するアリール基又は1価の複素環基が挙げられる。
【0013】
「アルキル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。分岐のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20であり、更に好ましくは5~10である。
アルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-プロピルヘプチル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ヘキシルデシル基、ドデシル基等が挙げられる。また、アルキル基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基が挙げられる。
【0014】
「シクロアルキル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基が挙げられる。また、シクロアルキル基は、このような基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい(例えば、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等)。
【0015】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。
アリール基としては、例えば、単環式の芳香族炭化水素(例えば、ベンゼンが挙げられる。)、又は、多環式の芳香族炭化水素(例えば、ナフタレン及びインデン等の2環式の芳香族炭化水素;アントラセン、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン及びフルオレン等の3環式の芳香族炭化水素;ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン、ベンゾフルオレン、ピレン及びフルオランテン等の4環式の芳香族炭化水素;ジベンゾアントラセン、ジベンゾフェナントレン、ジベンゾフルオレン、ペリレン及びベンゾフルオランテン等の5環式の芳香族炭化水素;スピロビフルオレン等の6環式の芳香族炭化水素;並びに、ベンゾスピロビフルオレン及びアセナフトフルオランテン等の7環式の芳香族炭化水素が挙げられる。)から、環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基が挙げられる。また、アリール基は、これらの基が複数結合した基を含む。
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基等が挙げられる。また、アリール基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0016】
「アルコキシ基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。また、アルコキシ基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0017】
「シクロアルコキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。シクロアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。
シクロアルコキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。また、シクロアルコキシ基は、このような基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0018】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基等が挙げられる。また、アリールオキシ基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0019】
「アルキルスルフェニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキルスルフェニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐のアルキルスルフェニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
アルキルスルフェニル基は、置換基を有していてもよい。アルキルスルフェニル基としては、例えば、メチルスルフェニル基、エチルスルフェニル基、プロピルスルフェニル基、イソプロピルスルフェニル基、ブチルスルフェニル基、イソブチルスルフェニル基、tert-ブチルスルフェニル基、ペンチルスルフェニル基、ヘキシルスルフェニル基、ヘプチルスルフェニル基、オクチルスルフェニル基、2-エチルヘキシルスルフェニル基、ノニルスルフェニル基、デシルスルフェニル基、3,7-ジメチルオクチルスルフェニル基、ラウリルスルフェニル基等が挙げられる。また、アルキルスルフェニル基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0020】
「シクロアルキルスルフェニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
シクロアルキルスルフェニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルスルフェニル基としては、例えば、シクロヘキシルスルフェニル基が挙げられる。また、シクロアルキルスルフェニル基は、このような基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0021】
「アリールスルフェニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
アリールスルフェニル基は、置換基を有していてもよい。アリールスルフェニル基としては、例えば、フェニルスルフェニル基、1-ナフチルスルフェニル基、2-ナフチルスルフェニル基、1-アントラセニルスルフェニル基、9-アントラセニルスルフェニル基、1-ピレニルスルフェニル基等が挙げられる。また、アリールスルフェニル基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0022】
「1価の複素環基」とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。1価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち1個の水素原子を除いた残りの原子団である「1価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、及び、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
1価の複素環基としては、例えば、単環式の複素環式化合物(例えば、フラン、チオフェン、オキサジアゾール、ピロール、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ジアザベンゼン及びトリアジンが挙げられる。)、又は、多環式の複素環式化合物(例えば、アザナフタレン、ジアザナフタレン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンゾジアゾール及びベンゾチアジアゾール等の2環式の複素環式化合物;ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ジベンゾホスホール、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、アザカルバゾール、ジアザカルバゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、9,10-ジヒドロアクリジン、5,10-ジヒドロフェナジン、フェナザボリン、フェノホスファジン、フェノセレナジン、フェナザシリン、アザアントラセン、ジアザアントラセン、アザフェナントレン及びジアザフェナントレン等の3環式の複素環式化合物;ヘキサアザトリフェニレン、ベンゾカルバゾール、ベンゾナフトフラン及びベンゾナフトチオフェン等の4環式の複素環式化合物;ジベンゾカルバゾール、インドロカルバゾール及びインデノカルバゾール等の5環式の複素環式化合物;カルバゾロカルバゾール、ベンゾインドロカルバゾール及びベンゾインデノカルバゾール等の6環式の複素環式化合物;並びに、ジベンゾインドロカルバゾール等の7環式の複素環式化合物が挙げられる。)から、環を構成する原子に直接結合する水素原子1個を除いた基が挙げられる。また、1価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは3~20であり、より好ましくは4~20である。
1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジニル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基等が挙げられる。また、1価の複素環基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0023】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0024】
「アミノ基」は、置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基が好ましい。アミノ基が有する置換基が複数存在する場合、それらは同一で異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する窒素原子とともに環を形成していてもよい。
置換アミノ基としては、二置換アミノ基が好ましい。二置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基及びジアリールアミノ基が挙げられる。
二置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。また、二置換アミノ基は、これらの基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子、塩素原子等で置換された基であってもよい。
【0025】
「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基及びアミノ基が挙げられ、これらの基は、更に置換基(即ち、二次置換基)を有していてもよい。
【0026】
<含ホウ素縮合環化合物の製造方法>
本開示に係る製造方法は、式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物を、BX3で表されるホウ素化合物(式中、Xは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のXは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)と直接反応させるか、又は、上記ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後に、上記ホウ素化合物と反応させて、式(2)で表される部分構造を有する含ホウ素縮合環化合物を得る環化工程を含む。本開示に係る製造方法において、原料、試薬などは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0027】
本開示に係る製造方法によれば、ホウ素原子を含有する縮合環化合物が従来よりも高い収率で得られる。この理由は定かではないが、本発明者は、本開示に係る製造方法において、収率向上にはラジカルが寄与していると推測しており、具体的には、以下のように推測している。
【0028】
本開示に係る製造方法において、式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物は、環A、環B及び環Cのうち少なくとも2つの環に、少なくとも1つのハロゲン原子を有することにより、従来のハロゲン化物(即ち、環A、環B及び環Cのうちの1つのみにハロゲン原子を有する化合物)に比べて、ラジカルが生成しやすい状態であると推測される。
本発明者は、本開示に係る製造方法において、ラジカルが、例えば、上記ハロゲン化物とホウ素化合物との反応、及び/又は、該反応後の環化反応を促進していると推測しており、その結果、本開示に係る製造方法の収率が向上すると推測している。
上記のとおり、式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物のラジカルの生成しやすさ、及び、生成したラジカルが上記反応の促進や収率向上に寄与し、本開示に係る製造方法は、従来よりも収率が向上したと推測される。同様に、本開示に係る製造方法において、ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後にホウ素化合物と反応させる場合も、上記と同様の理由で、収率が向上すると推測される。
【0029】
[式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物]
環A、環B、及び環Cで表される芳香環は、芳香族性を示す環(例えば、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環)であればよく、例えば、芳香族性を示す単環(例えば、単環式の芳香族炭化水素環又は単環式の芳香族複素環)、芳香族性を示す縮合環(例えば、多環式の芳香族炭化水素環又は多環式の芳香族複素環)等であってよい。
単環式の芳香族炭化水素環としては、例えば、上述のアリール基の項で説明した単環式の芳香族炭化水素を構成する環が挙げられる。単環式の芳香族複素環としては、例えば、上述の1価の複素環基の項で説明した単環式の複素環式化合物を構成する環が挙げられる。多環式の芳香族炭化水素環としては、例えば、上述のアリール基の項で説明した多環式の芳香族炭化水素を構成する環が挙げられる。多環式の芳香族複素環としては、例えば、上述の1価の複素環基の項で説明した多環式の複素環式化合物を構成する環が挙げられる。
【0030】
環A、環B及び環Cは、好ましくは芳香族炭化水素環(例えば、上述の単環式の芳香族炭化水素又は縮合した芳香族炭化水素)であり、より好ましくはベンゼン環である。
【0031】
1及びX2は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは酸素原子、硫黄原子又は-N(R)-で表される基であり、より好ましくは酸素原子又は-N(R)-で表される基であり、更に好ましくは-N(R)-で表される基である。
【0032】
Rは、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくはアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0033】
Rが有していてもよい置換基は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基又はアミノ基であり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はアミノ基であり、更に好ましくはアルキル基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0034】
A1、RA2、RB1、RB2、RC1及びRC2で表されるハロゲン原子は、ホウ素化合物との反応において脱離しやすいので、好ましくは臭素原子又はヨウ素原子であり、より好ましくは臭素原子である。RA1、RB1及びRC1がハロゲン原子である場合、RA1、RB1及びRC1は、ホウ素化合物との反応において脱離し、RA1、RB1及びRC1に結合する炭素原子が、ホウ素原子と結合する。ハロゲン原子の脱離しやすさは、反応速度に寄与し、収率の向上に寄与すると考えられる。
【0035】
A3、RB3及びRC3で表される置換基は、ホウ素化合物との反応において脱離しない置換基であれば特に限定されないが、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子(好ましくは、塩素原子又はフッ素原子)、すなわち、後述のRA30、RB30及びRC30であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基又は塩素原子であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0036】
式(1’)中、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)のうち少なくとも2つの群は、ハロゲン原子を含む。即ち、上記ハロゲン化物における環A、環B及び環Cのうち少なくとも2つの環には、少なくとも1つの脱離可能なハロゲン原子が結合している。
【0037】
中でも、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)に含まれるハロゲン原子の数は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、2又は3であることが好ましい。具体的には、以下の態様が挙げられる。
態様1:RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、並びに、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)それぞれが、1つのハロゲン原子を含む態様
態様2:RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)それぞれが、1つのハロゲン原子を含む態様
態様3:RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)それぞれが、1つのハロゲン原子を含む態様
態様4:RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)それぞれが、1つのハロゲン原子を含む態様
【0038】
上記態様の中では、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、態様3又は態様4が好ましく、態様4がより好ましい。
【0039】
また、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)はそれぞれ、ハロゲン原子を含むことがより好ましい。それぞれの群に含まれるハロゲン原子の数は、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。すなわち、上記態様4がより好ましい。
【0040】
環A、環B及び環Cそれぞれにハロゲン原子が結合していることにより、環A、環B及び環Cは、ラジカルが生成しやすい状態にあると考えられ、上述のとおり、収率がより向上すると考えられる。
【0041】
式(1’)において、k1が1以上であって、RA2の少なくとも1つがハロゲン原子である場合に、環Aに対するRA2の結合位置は特に限定されない。k2が1以上であって、RA3の少なくとも1つが置換基である場合に、環Aに対するRA3の結合位置は特に限定されない。m1が1以上であって、RB2の少なくとも1つがハロゲン原子である場合に、環Bに対するRB2の結合位置は特に限定されない。m2が1以上であって、RB3の少なくとも1つが置換基である場合に、環Bに対するRB3の結合位置は特に限定されない。n1が1以上であって、RC2の少なくとも1つがハロゲン原子である場合に、環Cに対するRC2の結合位置は特に限定されない。k2が1以上であって、RC3の少なくとも1つが置換基である場合に、環Cに対するRC3の結合位置は特に限定されない。
【0042】
式(1’)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Bとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0043】
式(1’)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Cとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0044】
式(1’)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Aとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0045】
上記ハロゲン化物は、低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよい。また、式(1’)で表される部分構造を1つのみ有する化合物であってもよく、式(1’)で表される部分構造を複数有する化合物であってもよい。式(1’)で表される部分構造を複数有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
上記ハロゲン化物が高分子化合物である場合、該高分子化合物としては、例えば、式(1’)で表される部分構造を構成単位として含む高分子化合物及び式(1’)で表される部分構造を繰り返し単位として含む高分子化合物が挙げられる。高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、5×10~1×10であってもよく、1×10~5×10であってもよく、2×10~2×10であってもよい。
【0046】
上記ハロゲン化物は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは低分子化合物である。上記ハロゲン化物の分子量は、好ましくは200以上5,000以下であり、より好ましくは400以上3,000以下である。
【0047】
[式(2)で表される部分構造を有する含ホウ素縮合環化合物]
本開示に係る製造方法では、式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物を用いた環化反応によって、式(2)で表される部分構造を有する含ホウ素縮合環化合物が得られる。
【0048】
式(2)において、k1’、m1’又はn1’が1以上である場合、環Aに対するHA2の結合位置、環Bに対するHB2の結合位置、及び環Cに対するHC2の結合位置はそれぞれ、式(1’)における環Aに対するRA2の結合位置、環Bに対するRB2の結合位置、及び環Cに対するRC2の結合位置と同じである。k2、m2、又はn2が1以上である場合、環Aに対するRA3の結合位置、環Bに対するRB3の結合位置、及び環Cに対するRC3の結合位置はそれぞれ、式(1’)における環Aに対するRA3の結合位置、環Bに対するRB3の結合位置、及び環Cに対するRC3の結合位置と同じである。
【0049】
式(2)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Bとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0050】
式(2)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Cとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0051】
式(2)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Aとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0052】
上記含ホウ素縮合環化合物は、低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよい。また、式(2)で表される部分構造を1つのみ有する化合物であってもよく、式(2)で表される部分構造を複数有する化合物であってもよい。式(2)で表される部分構造を複数有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
上記含ホウ素縮合環化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物としては、例えば、式(2)で表される部分構造を構成単位として含む高分子化合物及び式(2)で表される部分構造を繰り返し単位として含む高分子化合物が挙げられる。高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、5×10~1×10であってもよく、1×10~5×10であってもよく、2×10~2×10であってもよい。
【0053】
上記含ホウ素縮合環化合物は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは低分子化合物である。上記含ホウ素縮合環化合物の分子量は、好ましくは200以上5,000以下であり、より好ましくは400以上3,000以下である。
【0054】
[式(1A’)で表される化合物]
式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、式(1A’)で表される化合物であることが好ましい。
【0055】
A30、RB30及びRC30の好ましい態様は、上記のRA3、RB3及びRC3の好ましい態様と同様である。
【0056】
A30、RB30及びRC30は、隣接する炭素原子に結合する基同士で結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していないことが好ましい。
【0057】
式(1A’)において、k10が1であって、RA2がハロゲン原子である場合に、ベンゼン環に対するRA2の結合位置は特に限定されず、RA1に対してメタ位であってもよく、パラ位であってもよい。含ホウ素縮合環化合物の収率が向上するので、ベンゼン環に対するRA2の結合位置は、RA1に対してメタ位であることが好ましい。
【0058】
m10が1であって、RB2がハロゲン原子である場合に、ベンゼン環に対するRB2の結合位置は特に限定されず、Xに対してオルト位であってもよく、メタ位であってもよく、パラ位であってもよい。含ホウ素縮合環化合物の収率が向上するので、ベンゼン環に対するRB2の結合位置は、Xに対してパラ位であることが好ましい。
【0059】
n10が1であって、RC2がハロゲン原子である場合に、ベンゼン環に対するRC2の結合位置は特に限定されず、Xに対してオルト位であってもよく、メタ位であってもよく、パラ位であってもよい。含ホウ素縮合環化合物の収率が向上するので、ベンゼン環に対するRC2の結合位置は、Xに対してパラ位であることが好ましい。
【0060】
式(1A’)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、RB1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0061】
式(1A’)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、RC1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0062】
式(1A’)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、RA1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0063】
[式(2A)で表される含ホウ素縮合環化合物]
本開示に係る製造方法では、式(1A’)で表されるハロゲン化物を用いた環化反応によって、式(2A)で表される含ホウ素縮合環化合物が得られる。
【0064】
式(2A)において、k10’、m10’又はn10’が1以上である場合、各ベンゼン環に対するHA2、HB2及びHC2の結合位置は、式(1A’)における各ベンゼン環に対するRA2、RB2及びRC2の結合位置と同じである。k20、m20又はn20が1以上である場合、各ベンゼン環に対するRA30、RB30及びRC30の結合位置は、式(1A’)における各ベンゼン環に対するRA30、RB30及びRC30の結合位置と同じである。
【0065】
式(2A)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、RB1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0066】
式(2A)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、RC1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0067】
式(2A)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、RA1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0068】
上記ハロゲン化物の好適な一態様として、例えば、式(1B’)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
【0069】
式(1B’)中、Y1及びY2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。
1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
1及びX2の定義は、式(1’)におけるX1及びX2の定義と同じである。
【0070】
式(1B’)中、含ホウ素縮合環化合物の安定性が向上するので、R5及びR7は水素原子であることが好ましい。また、反応性を上げて、含ホウ素縮合環化合物の収率を向上させることができるので、R及びRの少なくとも一方は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子(好ましくは、塩素原子又はフッ素原子)であることが好ましく、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子又はフッ素原子)であることがより好ましい。
【0071】
ハロゲン化物が式(1B’)で表される化合物であると、後述の環化工程により、含ホウ素縮合環化合物として、式(2B)で表される化合物を得ることができる。
【化9】
【0072】
式(2B)中、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R11、X1及びX2の定義は、式(1B’)におけるR1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R11、X1及びX2の定義と同じである。
【0073】
ハロゲン化物の好適な他の一態様として、例えば、式(1C’)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
【0074】
式(1C’)中、Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。
1、R3、R4、R6、R7、R8、R9、R11、X1及びX2の定義は、式(1B’)におけるR1、R3、R4、R6、R7、R8、R9、R11、X1及びX2の定義と同じである。
【0075】
式(1C’)中、含ホウ素縮合環化合物の安定性が向上するので、R7は水素原子であることが好ましい。また、反応性を上げて、含ホウ素縮合環化合物の収率を向上させることができるので、R及びRの少なくとも一方は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルフェニル基、シクロアルキルスルフェニル基、アリールスルフェニル基、1価の複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子(好ましくは、塩素原子又はフッ素原子)であることが好ましく、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子又はフッ素原子)であることがより好ましい。
【0076】
ハロゲン化物が式(1C’)で表される化合物であると、後述の環化工程により、含ホウ素縮合環化合物として、式(2C)で表される化合物を得ることができる。
【化11】
【0077】
式(2C)中、R1、R3、R4、R6、R7、R8、R9、R11、X1及びX2の定義は、式(1B’)におけるR1、R3、R4、R6、R7、R8、R9、R11、X1及びX2の定義と同じである。
【0078】
本開示に係る製造方法は、上記ハロゲン化物を、BX3で表されるホウ素化合物と直接反応させるか、又は、上記ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後にBX3で表されるホウ素化合物と反応させる。
【0079】
製造工程を簡略化し、かつ、製造に用いる原料等を少なくすることができるので、上記ハロゲン化物を、ホウ素化合物と直接反応させることが好ましい。通常、ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行うことにより、その後のホウ素化合物との反応性が高まることが知られている。これに対して、本開示に係る製造方法では、環A、環B及び環Cのうち少なくとも2つの環に少なくとも1つのハロゲン原子が結合しているハロゲン化物を用いているため、反応性に優れ、ホウ素化合物と直接反応させても、従来よりも高い収率で含ホウ素縮合環化合物を得ることができる。
【0080】
BX3で表されるホウ素化合物におけるXは、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは臭素原子又はヨウ素原子であり、更に好ましくはヨウ素原子である。
【0081】
上記ハロゲン化物を、ホウ素化合物と直接反応させる場合、ハロゲン化物とホウ素化合物との反応(環化反応)は、通常、溶媒中で行われる。環化反応に用いられる溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合物が挙げられる。また、環化反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0082】
ホウ素化合物の量は、ハロゲン化物1モルに対して、通常0.1~20モルであり、好ましくは0.3~10モルである。
【0083】
環化反応は、塩基の存在下で実施してもよい。塩基としては、例えば、ジイソプロピルエチルアミン等の3級アミンを好適に用いることができる。
【0084】
塩基の量は、ハロゲン化物1モルに対して、通常0.1~30モルであり、好ましくは0.3~10モルである。
【0085】
環化反応の反応温度は、通常0℃~200℃、好ましくは室温~溶媒の沸点温度である。環化反応の反応時間は、通常0.1時間~100時間、好ましくは0.5時間~48時間である。
【0086】
環化反応の反応終了後は、公知の精製方法等を行うことで、含ホウ素縮合環化合物を得ることができる。例えば、環化反応の反応終了後、反応混合物に水を加え、有機溶媒で抽出して、有機相を乾燥させ又は濃縮し、必要に応じて昇華、抽出、晶析、クロマトグラフィー、吸着剤処理等の精製を行うことで、含ホウ素縮合環化合物を得ることができる。
【0087】
また、上記ハロゲン化物に対してハロゲン-金属交換反応を行った後に、ホウ素化合物と反応させてもよい。
【0088】
ハロゲン化物のハロゲン-金属交換反応は、ハロゲン化物中のハロゲン原子を金属含有基に置換する反応ということができる。上記ハロゲン化物中のハロゲン原子とは、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)に含まれるハロゲン原子である。
【0089】
金属含有基としては、例えば、-Li、-Na、-K、-MgX3(X3はハロゲン原子(好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)を表す。)、-ZnX3(X3はハロゲン原子(好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)を表す。)等が挙げられ、好ましくは-Li、-Na、-MgX3であり、より好ましくは-Liである。
【0090】
ハロゲン-金属交換反応は、通常、溶媒中で行われる。ハロゲン-金属交換反応に用いられる溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素、エーテル、非プロトン性極性溶媒、及びこれらの混合物が挙げられる。後述の溶媒置換が不要となるので、ハロゲン-金属交換反応に用いられる溶媒は、芳香族炭化水素が好ましい。また、ハロゲン-金属交換反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0091】
ハロゲン-金属交換反応は、例えば、ハロゲン化物と金属化剤とを反応させて行うことができる。金属化剤としては、例えば、金属リチウム、アルキルリチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属マグネシウム、アルキルマグネシウムクロリド、アルキルマグネシウムブロミド等が挙げられ、アルキルリチウムを特に好適に用いることができる。
【0092】
金属化剤の量は、ハロゲン化物1モルに対して、通常0.1~10モルであり、好ましくは0.3~5モルである。
【0093】
ハロゲン-金属交換反応の反応温度は、通常-100℃~100℃である。ハロゲン-金属交換反応の反応時間は、通常0.1~100時間、好ましくは0.5~48時間である。
【0094】
ハロゲン-金属交換反応の反応終了後は、必要に応じて溶媒置換を行った後、反応混合液にホウ素化合物を添加して、反応混合液とホウ素化合物との反応(環化反応)を行うことができる。
【0095】
反応混合液とホウ素化合物との反応(環化反応)は、通常、溶媒中で行われる。環化反応に用いられる溶媒としては、芳香族炭化水素が好ましい。また、環化反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0096】
ホウ素化合物の量は、ハロゲン-金属交換反応に用いたハロゲン化物1モルに対して、通常0.1~30モルであり、好ましくは0.3~10モルである。
【0097】
環化反応の反応温度は、通常0~250℃、好ましくは室温~200℃である。環化反応の反応時間は、通常0.1時間~100時間、好ましくは0.5時間~50時間である。
【0098】
環化反応の反応終了後は、公知の精製方法等を行うことで、含ホウ素縮合環化合物を得ることができる。例えば、環化反応の反応終了後、反応混合物に水を加え、有機溶媒で抽出して、有機相を乾燥させ又は濃縮し、必要に応じて昇華、抽出、晶析、クロマトグラフィー、吸着剤処理等の精製を行うことで、含ホウ素縮合環化合物を得ることができる。
【0099】
[式(1)で表される部分構造を有する多環芳香族化合物]
本開示に係る製造方法は、式(1)で表される部分構造を有する多環芳香族化合物をハロゲン化して、式(1’)で表される部分構造を有するハロゲン化物を得る工程(以下、「ハロゲン化工程」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0100】
多環芳香族化合物は、低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよい。また、式(1)で表される部分構造を1つのみ有する化合物であってもよく、式(1)で表される部分構造を複数有する化合物であってもよい。式(1)で表される部分構造を複数有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
上記多環芳香族化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物としては、例えば、式(1)で表される部分構造を構成単位として含む高分子化合物及び式(1)で表される部分構造を繰り返し単位として含む高分子化合物が挙げられる。高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、5×10~1×10であってもよく、1×10~5×10であってもよく、2×10~2×10であってもよい。
上記多環芳香族化合物は、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、好ましくは低分子化合物である。上記多環芳香族化合物の分子量は、好ましくは200以上5,000以下であり、より好ましくは400以上3,000以下である。
【0101】
ハロゲン化工程は、上記多環芳香族化合物に含まれる水素原子のうち、2つ又は3つの水素原子をハロゲン化する工程であることが好ましい。
【0102】
ハロゲン化工程は、環A、環B、及び環C上の水素原子を少なくとも1つずつハロゲン化する工程であることが好ましい。ハロゲン化工程は、環B、及び環C上の水素原子を少なくとも1つずつハロゲン化する工程であることもまた好ましい。
【0103】
式(1)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Bとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0104】
式(1)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Cとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0105】
式(1)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、Rと環Aとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0106】
多環芳香族化合物としては、得られる含ホウ素縮合環化合物の安定性が向上し、かつ、合成がし易くなるので、式(1A)で表される化合物が好ましい。
【0107】
【化12】
【0108】
式(1A)中、
環A、環B、環C、X1、X2、HA2、HB2、HC2、RA30、RB30、RC30、k10’、m10’n10’、k20、m20及びn20の定義は、式(2A)における環A、環B、環C、X1、X2、HA2、HB2、HC2、RA30、RB30、R
30、k10’、m10’、n10’、k20、m20及びn20の定義と同じである。
A1、HB1及びHC1の定義は、式(1)におけるHA1、HB1及びHC1の定義と同じである。
式中で複数存在する記号は、同一でも異なっていてもよい。
【0109】
式(1A)で表される化合物をハロゲン化することで、式(1A’)で表される化合物が得られる。
【0110】
式(1A)中、k10’、m10’及びn10’のうち少なくとも2つが1であることが好ましい。
【0111】
式(1A)中、k10’、m10’及びn10’がいずれも1であり、ハロゲン化工程は、HA2、HB2及びHC2をハロゲン化する工程であることが好ましい。式(1A)中、m10’及びn10’がいずれも1であり、ハロゲン化工程は、HB2及びHC2をハロゲン化する工程であることもまた好ましい。
【0112】
式(1A)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、HB1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0113】
式(1A)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、HC1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0114】
式(1A)において、本開示に係る製造方法の収率が向上するので、HA1が結合する環とRとが結合して環を形成しないことが好ましい。
【0115】
ハロゲン化工程は、多環芳香族化合物における、環A上の水素原子(好ましくはHA1以外の水素原子)、環B上の水素原子(好ましくはHB1以外の水素原子)及び環C上の水素原子(好ましくはHC1以外の水素原子)からなる群より選択される異なる環上の少なくとも2つの水素原子をハロゲン化する工程であることが好ましい。ハロゲン化工程は、好ましくは多環芳香族化合物中の2つ以上の水素原子をハロゲン化する工程であり、より好ましくは多環芳香族化合物中の2~3つの水素原子をハロゲン化する工程である。
【0116】
ハロゲン化工程におけるハロゲン化は、好ましくは塩素化、臭素化又はヨウ素化であり、より好ましくは臭素化又はヨウ素化である。
【0117】
好適な一態様において、ハロゲン化工程は、環B上の水素原子(好ましくはHB1以外の水素原子)及び環C上の水素原子(好ましくはHC1以外の水素原子)からなる群より選択される異なる環上の少なくとも2つの水素原子をハロゲン化する工程であってよい。
【0118】
環BがX1と結合するベンゼン環を有する場合、ハロゲン化工程は、環BのX1に対するパラ位の水素原子をハロゲン化する工程であることが好ましい。
【0119】
好適な他の一態様において、環A上の水素原子(好ましくはHA1以外の水素原子)、環B上の水素原子(好ましくはHB1以外の水素原子)及び環C上の水素原子(好ましくはHC1以外の水素原子)からなる群より選択される異なる環上の少なくとも3つの水素原子をハロゲン化する工程であってよい。
【0120】
環AがHA1と結合するベンゼン環を有する場合、ハロゲン化工程は、環AのHA1に対するメタ位の水素原子をハロゲン化する工程であることが好ましい。
【0121】
ハロゲン化工程では、多環芳香族化合物を出発原料とする多段階反応によってハロゲン化物を得てもよいが、多環芳香族化合物を出発原料とする一段階のハロゲン化反応によってハロゲン化物を得ることが好ましい。
【0122】
ハロゲン化反応は、通常、溶媒中で行われる。ハロゲン化反応に用いられる溶媒としては、例えば、アルコール、ニトリル、エーテル、芳香族炭化水素、非プロトン性極性溶媒、ハロゲン化炭化水素、水、及びこれらの混合物が挙げられる。また、ハロゲン化は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0123】
ハロゲン化反応は、例えば、多環芳香族化合物とハロゲン化剤との反応により実施できる。ハロゲン化剤としては、公知のハロゲン化剤を特に制限なく使用できる。ハロゲン化剤としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、及びN-ヨードスクシンイミドが挙げられる。
【0124】
ハロゲン化剤の量は、多環芳香族化合物1モルに対して、通常0.1~10モルであり、好ましくは0.2~8モルであり、より好ましくは0.3~5モルである。
【0125】
ハロゲン化反応の反応温度は、通常-40℃~200℃、好ましくは-20℃~50℃である。ハロゲン化反応の反応時間は、通常0.1~100時間、好ましくは0.5~48時間である。
【0126】
ハロゲン化反応の反応終了後は、公知の精製方法等を行うことで、ハロゲン化物を単離することができる。例えば、ハロゲン化反応の反応終了後、反応混合物に水を加え、有機溶媒で抽出して、有機相を乾燥させ又は濃縮し、必要に応じて昇華、抽出、晶析、クロマトグラフィー、吸着剤処理等の精製を行うことで、ハロゲン化物を得ることができる。
【0127】
ハロゲン化工程で得られるハロゲン化物は、多環芳香族化合物における環A上の水素原子(好ましくはHA1以外の水素原子)、環B上の水素原子(好ましくはHB1以外の水素原子)及び環C上の水素原子(好ましくはHC1以外の水素原子)からなる群より選択される異なる環上の少なくとも2つの水素原子が、ハロゲン原子に置換された化合物である。
【0128】
本開示の製造方法として、下記の合成ルートによる製造方法が例示できる。
【化13】
【0129】
本開示の製造方法においてハロゲン化工程を行う場合に、多環芳香族化合物として、下記の化合物が例示できる。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】
【0130】
本開示の製造方法においてハロゲン化工程を行う場合に、多環芳香族化合物として、下記の構成単位を含む化合物が例示できる。
【化23】
【0131】
本開示の製造方法における、ハロゲン化物として、下記の化合物が例示できる。
【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】
【0132】
本開示の製造方法における、ハロゲン化物として、下記の構成単位を含む化合物が例示できる。
【化35】
【0133】
本開示の製造方法により製造される含ホウ素縮合環化合物として、下記の化合物が例示できる。
【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】
【0134】
本開示の製造方法により製造される含ホウ素縮合環化合物として、下記の構成単位を含む化合物が例示できる。
【化48】
【0135】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0136】
例えば、本開示の一側面は、上述した各化合物(例えば、上述の含ホウ素縮合環化合物、上述のハロゲン化物及び上述の多環式化合物)に関するものであってもよい。一態様において、本開示の化合物は、本開示の製造方法により、製造された含ホウ素縮合環化合物であってもよい。
【0137】
本開示の他の一側面は、材料(例えば、発光材料)及び該材料の製造方法に関するものであってもよい。一態様において、本開示の材料(例えば、発光材料)は、本開示の製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された材料(例えば、発光材料)であってもよい。他の一態様において、本開示の材料(例えば、発光材料)の製造方法は、本開示の製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された材料(例えば、発光材料)の製造方法であってもよい。
【0138】
本開示の他の一側面は、膜及び該膜の製造方法に関するものであってもよい。一態様において、本開示の膜は、本開示の製造方法により、製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された膜であってもよい。他の一態様において、本開示の膜の製造方法は、本開示の製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された膜の製造方法であってもよい。本開示の膜は、例えば、乾式法又は湿式法により作製することができる。本開示の膜は、発光素子における発光層として好適に用いることができる。
【0139】
本開示の他の一側面は、発光素子及び該発光素子の製造方法に関するものであってよい。一態様において、本開示の発光素子は、例えば、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた有機層(例えば、発光層)と、を備える発光素子であってもよい。本開示の発光素子において、有機層(例えば、発光層)は、本開示の製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された層であってもよい。他の一態様において、本開示の発光素子は、例えば、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた有機層(例えば、発光層)と、を備える発光素子の製造方法であってよい。本開示の発光素子の製造方法において、有機層(例えば、発光層)は、本開示の製造方法により製造された含ホウ素縮合環化合物を用いて形成された層であってもよい。本開示の発光素子において、有機層(例えば、発光層)は、例えば、乾式法又は湿式法により作製することができる。
【実施例0140】
以下、実施例によって本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0141】
LC-MSは、下記の方法で測定した。
測定試料を約2mg/mLの濃度になるようにクロロホルム又はテトラヒドロフランに溶解させ、LC-MS(Agilent製、商品名:1290 Infinity LC及び6230 TOF LC/MS)に約1μL注入した。LC-MSの移動相には、アセトニトリル及びテトラヒドロフランの比率を変化させながら用い、1.0mL/分の流量で流した。カラムは、SUMIPAX ODS Z-CLUE(住化分析センター製、内径:4.6mm、長さ:250mm、粒径3μm)を用いた。
【0142】
TLC-MSは、下記の方法で測定した。
測定試料をトルエン、テトラヒドロフラン又はクロロホルムのいずれかの溶媒に任意の濃度で溶解させ、DART用TLCプレート(テクノアプリケーションズ社製、商品名:YSK5-100)上に塗布し、TLC-MS(日本電子製、商品名:JMS-T100TD(The AccuTOF TLC))を用いて測定した。測定時のヘリウムガス温度は、200℃~400℃の範囲で調節した。
【0143】
NMRは、下記の方法で測定した。
5~10mgの測定試料を約0.5mLの重クロロホルム(CDCl3)、重テトラヒドロフラン、重ジメチルスルホキシド、重アセトン、重N,N-ジメチルホルムアミド、重トルエン、重メタノール、重エタノール、重2-プロパノール又は重塩化メチレンに溶解させ、NMR装置(Agilent製、商品名:INOVA300、又は、JEOL RESONANCE製、商品名:JNM-ECZ400S/L1)を用いて測定した。
【0144】
化合物の純度の指標として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)面積百分率の値(以下、「LC面積百分率値」という)を用いた。この値は、特に記載がない限り、HPLC(島津製作所製、商品名:LC-20A)でのUV=254nmにおける値とする。この際、測定する化合物は、0.01~0.2質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン又はクロロホルムに溶解させ、濃度に応じてHPLCに1~10μL注入した。HPLCの移動相には、アセトニトリル/テトラヒドロフランの比率を100/0~0/100(容積比)まで変化させながら用い、1.0mL/分の流量で流した。カラムは、SUMIPAX ODS Z-CLUE(住化分析センター製、内径:4.6mm、長さ:250mm、粒径3μm)又は同等の性能を有するODSカラムを用いた。検出器には、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製、商品名:SPD-M20A)を用いた。
【0145】
以下実施例における環化工程において、加熱反応が完了した時点(N,N-ジイソプロピルエチルアミンを添加する前段階)でのLC面積百分率値を反応収率とした。
【0146】
以下、実施例において、目的物のLC面積百分率値が最初に20%を超えた時点の目的物のLC面積百分率値をPS、目的物のLC面積百分率値が最初に20%を超えた時点の経過加熱時間をTS、目的物のLC面積百分率値が最初に反応収率の90%のLC面積百分率値を超えた時点の目的物のLC面積百分率値をPF、目的物のLC面積百分率値が最初に反応収率の90%のLC面積百分率値を超えた時点の経過加熱時間をTFとし、反応速度を(PF-PS)/(TF-TS)という式で算出した。
【0147】
<実施例M1>
式(M-1A)の方法で化合物S1を合成した。詳細を以下に示す。
【0148】
【化49】
【0149】
反応容器内をアルゴン雰囲気とした後、化合物1b(0.7g)、三ヨウ化ホウ素(0.8g)、及び、1,2-ジクロロベンゼン(12mL)を加え、120℃で26時間撹拌した。前記26時間撹拌後の時点で、化合物S1のLC面積百分率値は95%であった。本実施例において、PSは27%、TSは6h、PFは86%、TFは13hであり、反応速度は8%/hと算出された。その後、反応液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.5g)、及び、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(6mL)を加え室温で撹拌した。分液し、イオン交換水で洗浄した。得られた洗浄液を分液し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物S1(0.67g、黄色固体)を得た。
1H-NMR(400MHz、CD2Cl2)δ(ppm)=8.80(2H,d),7.36(4H,s),7.19(2H,dd),6.72(2H,d),6.07(2H,s),1.85(12H,s),1.41(18H,s),0.94(9H,s).
TLC-MS(positive):m/z=713.3[M+H]+
【0150】
<合成例1>
上記化合物1bは、式(M-1B)の方法で合成した。詳細を以下に示す。
【0151】
【化50】
【0152】
化合物1aは、国際公開第2021-199948号に記載された方法に従って合成した。
【0153】
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物1a(0.5g)、及び、クロロホルム(10mL)を加え撹拌し、0℃まで冷却後、N-ブロモスクシンイミド(0.25g)を加え、0℃で3時間撹拌した。得られた溶液に10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(5mL)を加え、撹拌した。得られた溶液を、イオン交換水(5mL)で2回洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭を加え10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をクロロホルムで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物1b(0.7g)を得た。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.26(2H,d),7.07(4H,s),6.90(2H,d),6.63(2H,d),6.57(2H,dd),6.29(1H,t),1.92(12H,s),1.30(18H,s),1.08(9H,s).
【0154】
<実施例M2>
式(M-2A)の方法で化合物S1を合成した。詳細を以下に示す。
【0155】
【化51】
【0156】
反応容器内をアルゴン雰囲気とした後、化合物1c(1.6g)、三ヨウ化ホウ素(4.0g)、及び、1,2-ジクロロベンゼン(32mL)を加え、120℃で27時間撹拌した。前記27時間撹拌の時点で、化合物S1のLC面積百分率値は86%であった。本実施例において、PSは32%、TSは23h、PFは83%、TFは25hであり、反応速度は26%/hと算出された。その後、反応液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.0g)、及び、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(16mL)を加え室温で撹拌した。分液し、イオン交換水で洗浄した。得られた洗浄液を分液し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物S1(1.5g、黄色固体)を得た。
【0157】
<合成例2>
上記化合物1cは、式(M-2B)の方法で合成した。詳細を以下に示す。
【0158】
【化52】
【0159】
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物1a(2.0g)、及び、クロロホルム(40mL)を加え撹拌し、0℃まで冷却後、N-ブロモスクシンイミド(1.5g)を加え、0℃で6時間撹拌した。得られた溶液に10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(20mL)を加え、撹拌した。得られた溶液を、イオン交換水(20mL)で2回洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭を加え10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をクロロホルムで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物1c(2.9g)を得た。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.28(1H,d),7.24(1H,s),7.10-6.88(5H,m),6.87(1H,d),6.68-6.50(2H,m),6.08(1H,broad-s),6.03(1H,d),1.80(12H,s),1.42(9H,s),1.30(9H,s),1.28(9H,s).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]=939.
【0160】
<実施例M3>
式(M-3A)の方法で化合物S2を合成した。詳細を以下に示す。
【0161】
【化53】
【0162】
反応容器内をアルゴン雰囲気とした後、化合物2b(1.3g)、三ヨウ化ホウ素(3.6g)、及び、1,2-ジクロロベンゼン(25mL)を加え、120℃で24時間撹拌した。前記24時間撹拌の時点で、化合物S2のLC面積百分率値は84%であった。本実施例において、PSは25%、TSは18h、PFは84%、TFは24hであり、反応速度は10%/hと算出された。その後、反応液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.0g)、及び、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(13mL)を加え室温で撹拌した。分液し、イオン交換水で洗浄した。得られた洗浄液を分液し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物S2(1.7g、黄色固体)を得た。
1H-NMR(400MHz、CD2Cl2)δ(ppm)=8.86(2H,d),7.66(1H,t),7.45(4H,d),7.43-7.30(12H,m),7.25(2
H,dd),6.82(2H,d),6.42(2H,s),1.91(12H,s),1.41(18H,s).
TLC-MS(positive):m/z=885[M+H]+
【0163】
<合成例3>
上記化合物2bは、式(M-3B)の方法で合成した。詳細を以下に示す。
【0164】
【化54】
【0165】
(化合物2c)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、1,3-ジブロモ-5-ヨードベンゼン(47g)、4,4,5,5-テトラメチル-2-[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-5’-イル-1,3,2-ジオキサボロラン(46g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(15g)、40質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(208g)、トルエン(840mL)、及び、水(208mL)を加え撹拌し、オイルバス70℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却後、トルエン(465mL)、及び、イオン交換水(232mL)を加え撹拌した。得られた溶液を、イオン交換水(465mL)で2回洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、セライト、及びシリカゲルを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をトルエンで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を、トルエン及びエタノールの混合溶媒で複数回、再結晶した。得られた白色固体を50℃で減圧乾燥させることで、化合物2c(51g、白色固体)を得た。化合物2cのLC面積百分率は99%以上であった。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.84(1H,t),7.80(2H,t),7.74-7.66(7H,m),7.48(4H,t),7.39(2H,t).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]=463.
【0166】
(化合物2a)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物2c(4.4g)、化合物1a(5.5g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.3g)、テトラフルオロほう酸トリ-tert-ブチルホスフィン(0.3g)、ナトリウム tert-ブトキシド(2.7g)、及び、トルエン(138mL)を加え、オイルバス50℃で5時間加熱しながら、撹拌した。反応液を室温まで冷却後、イオン交換水(55mL)を加え、撹拌した。得られた溶液をイオン交換水(55mL)で2回洗浄し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭(2g)を加え、10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をトルエン(30mL)で洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン及びヘプタンの混合溶媒)で精製した。得られた粗生成物を、メタノールで洗浄した。得られた白色固体を50℃で減圧乾燥させることで、化合物2a(6.5g、白色固体)を得た。化合物2aのLC面積百分率は99%以上であった。
1H-NMR(CD2Cl2,400MHz):δ(ppm)=7.71(1H,t),7.57(4H,d),7.47(2H,d),7.41(4H,t),7.34(2H,t),7.11-7.05(6H,m),6.92(2H,t),6.82(2H,dd),6.80-6.73(3H,m),6.72(2H,d),2.01(12H,s),1.29(18H,s).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]+=877.
【0167】
(化合物2b)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物2a(1.0g)、及び、クロロホルム(20mL)を加え撹拌し、0℃まで冷却後、N-ブロモスクシンイミド(0.6g)を加え、0℃で6時間撹拌した。得られた溶液に10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(10mL)を加え、撹拌した。得られた溶液を、イオン交換水(10mL)で2回洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭を加え10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をクロロホルムで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物2b(1.6g)を得た。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.85-7.20(15H,m),7.10-6.30(10H,m),2.00-1.60(12H,m),1.34-1.25(18H,m).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]=1111.
【0168】
<実施例M4>
式(M-4A)の方法で化合物S3を合成した。詳細を以下に示す。
【0169】
【化55】
【0170】
反応容器内をアルゴン雰囲気とした後、化合物3b(3.5g)、三ヨウ化ホウ素(12g)、及び、1,2-ジクロロベンゼン(69mL)を加え、120℃で32時間撹拌した。前記32時間撹拌の時点で、化合物S3のLC面積百分率値は75%であった。本実施例において、PSは26%、TSは15h、PFは73%、TFは27hであり、反応速度は4%/hと算出された。その後、反応液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.6g)、及び、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(35mL)を加え室温で撹拌した。分液し、イオン交換水で洗浄した。得られた洗浄液を分液し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物S3(5.8g、黄色固体)を得た。
1H-NMR(400MHz、CD2Cl2)δ(ppm)=8.91(2H,d),7.90(4H,d),7.85(2H,t),7.78(4H,s),7.68(9H,t),7.52(8H,d),7.43(6H,t),7.29(2H,dd),7.18(4H,t),7.06(2H,tt),6.93(2H,d),6.94(2H,s),2.33(8H,q),1.46(8H,sextet),1.37(36H,s),1.07(8H,sextet),0.55(12H,t).
TLC-MS(positive):m/z=1622[M+H]+
【0171】
<合成例4>
上記化合物3bは、式(M-4B)の方法で合成した。詳細を以下に示す。
【0172】
【化56】
【0173】
(化合物3c)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、テトラヒドロフラン(1050mL)を加え撹拌し、-60℃まで冷却後、n-ブチルリチウム溶液(2.6mol/L,ヘキサン溶液)(607mL)、及び、塩化亜鉛溶液(2mol/L,2-メチルテトラヒドロフラン溶液)(830mL)を加え、室温まで昇温した。得られた溶液に、4-クロロ-2,6-ジブロモアニリン(150g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(23g)、テトラフルオロほう酸トリ-tert-ブチルホスフィン(23g)、及び、トルエン(1500mL)を加え、室温で9時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、2mol/L塩酸(405mL)を加え、撹拌した。得られた溶液をイオン交換水(675mL)で2回洗浄し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭(14g)を加え、10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をトルエン(675mL)で洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン及びクロロホルムの混合溶媒)で精製した。得られたオイルを50℃で減圧乾燥させることで、化合物3c(88g、紫褐色オイル)を得た。化合物3cのLC面積百分率は99%以上であった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)=6.89(2H,s),3.57(2H,broad-s),2.45(4H,t),1.62-1.36(8H,m),0.95(6H,t).
【0174】
(化合物3d)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物3c(53g)、2-[3,5-ビス(4-tert-ブチルフェニル)フェニル]-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(114g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.3g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(1.8g)、40質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(430g)、トルエン(795mL)、及び、水(430mL)を加え撹拌し、オイルバス85℃で47時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却後、トルエン(265mL)、及び、イオン交換水(265mL)を加え撹拌した。得られた溶液を、イオン交換水(530mL)で2回洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、セライト、及びシリカゲルを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をトルエンで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン及びクロロホルムの混合溶媒)で精製した。
得られた粗生成物を、酢酸エチル及びメタノールの混合溶媒で複数回、再結晶した。得られた淡黄色固体を50℃で減圧乾燥させることで、化合物3d(95g、淡黄色固体)を得た。化合物3dのLC面積百分率は93%以上であった。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.69(2H,d),7.66(1H,t),7.63(4H,d),7.48(4H,d),7.26(2H,s),3.74(2H,broad-s),2.55(4H,t),1.63(4H,quin),1.43(4H,sextet),1.35(18H,s),0.96(6H,t).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]=546.
【0175】
(化合物3e)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物3d(64g)、1-ブロモ-3-クロロベンゼン(23g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(2.1g)、テトラフルオロほう酸トリ-tert-ブチルホスフィン(2.1g)、ナトリウム tert-ブトキシド(23g)、及び、トルエン(1925mL)を加え、オイルバス80℃で2時間加熱しながら、撹拌した。反応液を室温まで冷却後、イオン交換水(642mL)を加え、撹拌した。得られた溶液をイオン交換水(642mL)で2回洗浄し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭(15g)を加え、10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をトルエン(321mL)で洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン及びヘプタンの混合溶媒)で精製した。得られた粗生成物を、酢酸エチル及びメタノールの混合溶媒で複数回、再結晶した。得られた白色固体を50℃で減圧乾燥させることで、化合物3e(46g、白色固体)を得た。化合物3eのLC面積百分率は99%以上であった。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.77(3H,s),7.65(4H,d),7.50(4H,d),7.47(2H,s),7.16(1H,t),6.66(1H,dd),6.47-6.40(2H,m),5.32(1H,broad-s),2.58(4H,t),1.55(4H,quin),1.36(18H,s),1.30(4H,sextet),0.85(6H,t).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]=656.
【0176】
(化合物3a)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物3e(36g)、化合物2c(12.6g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.0g)、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン(0.7g)、ナトリウム tert-ブトキシド(7.8g)、及び、トルエン(900mL)を加え、オイルバス80℃で3時間加熱しながら、撹拌した。反応液を室温まで冷却後、イオン交換水(360mL)を加え、撹拌した。得られた溶液をイオン交換水(360mL)で2回洗浄し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭(9g)を加え、10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をトルエン(180mL)で洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン及びヘプタンの混合溶媒)で精製した。得られた粗生成物を、酢酸エチル及びメタノールの混合溶媒で複数回、再結晶した。得られた白色固体を50℃で減圧乾燥させることで、化合物3a(34g、白色固体)を得た。化合物3aのLC面積百分率は99%以上であった。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.75-7.70(7H,m),7.63-7.55(14H,m),7.48-7.43(12H,m),7.38(4H,t),7.28(2H,t),7.08(2H,t),7.02(2H,t),6.99(2H,d),6.89(2H,dd),6.81(2H,dd),6.61(1H,t),2.48(8H,t),1.45-1.30(44H,m),1.20(8H,sextet),0.75(12H,t).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]=1614.
【0177】
(化合物3b)
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物3a(3.0g)、及び、クロロホルム(60mL)を加え撹拌し、0℃まで冷却後、N-ブロモスクシンイミド(1.0g)を加え、0℃で6時間撹拌した。得られた溶液に10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(30mL)を加え、撹拌した。得られた溶液を、イオン交換水(30mL)で2回洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭を加え10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をクロロホルムで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物3b(4.1g)を得た。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.90-6.40(47H,m),2.50-2.20(8H,m),1.40-1.00(52H,m),0.80-0.60(12H,m).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]=1848.
【0178】
<比較例MC1>
式(MC-1A)の方法で化合物S1を合成した。詳細を以下に示す。
【0179】
【化57】
【0180】
反応容器内をアルゴン雰囲気とした後、化合物1d(0.56g)、三ヨウ化ホウ素(0.8g)、及び、1,2-ジクロロベンゼン(11mL)を加え、120℃で20時間撹拌した。前記20時間撹拌の時点で、化合物S1のLC面積百分率値は57%であった。本実施例において、PSは25%、TSは2h、PFは53%、TFは17hであり、反応速度は2%/hと算出された。その後、反応液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.5g)、及び、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(6mL)を加え室温で撹拌した。分液し、イオン交換水で洗浄した。得られた洗浄液を分液し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物S1(0.66g、黄色固体)を得た。
【0181】
<合成例5>
上記化合物1dは、式(MC-1B)の方法で合成した。詳細を以下に示す。
【0182】
【化58】
【0183】
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物1a(0.5g)、及び、クロロホルム(10mL)を加え撹拌し、0℃まで冷却後、N-ブロモスクシンイミド(0.13g)を加え、0℃で3時間加熱撹拌した。得られた溶液に10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(5mL)を加え、撹拌した。得られた溶液を、イオン交換水(5mL)で2回洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭を加え10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をクロロホルムで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮し、化合物1d(0.68g)を得た。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=7.28-6.95(6
H,m),6.92-6.87(2H,m),6.81-6.53(5H,m),6.33(1H,t),1.92(12H,s),1.33-1.26(18H,m),1.11-1.07(9H,m).
【0184】
実施例M1~M4及び比較例MC1における反応収率の結果を、表1に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
表1に示すとおり、実施例M1~M4の製造方法は、比較例MC1の製造方法と比較して、反応収率が優れていることがわかる。
【0187】
<比較例MC2>
式(MC-2A)の方法で化合物S4を合成した。詳細を以下に示す。
【0188】
【化59】
【0189】
反応容器内をアルゴン雰囲気とした後、化合物4a(0.50g)、三ヨウ化ホウ素(1.0g)、及び、1,2-ジクロロベンゼン(10mL)を加え、120℃で6時間撹拌した。前記6時間撹拌の時点で、化合物S4のLC面積百分率値は0%であった。本比較例において、反応収率が0%であったため、反応速度は算出しなかった。
【0190】
<合成例6>
上記化合物4aは、式(MC-2B)の方法で合成した。詳細を以下に示す。
【0191】
【化60】
【0192】
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、カルバゾール(1.4g)、1,5-ジブロモ-2,4-ジフルオロベンゼン(1.0g)、カリウムtert-ブトキシド(1.0g)、及び、N,N-ジメチルホルムアミド(20mL)を加え、撹拌し、0℃まで冷却後、N-ブロモスクシンイミド(0.13g)を加え、0℃で3時間加熱撹拌した。得られた溶液に10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液(5mL)を加え、オイルバス140℃で1時間加熱しながら、撹拌した。得られた溶液にトルエン(20mL)を加え、イオン交換水(40mL)で2回洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、活性炭を加え10分撹拌し、セライトを敷いたろ過器でろ過し、ろ物をトルエンで洗浄した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン及びヘプタンの混合溶媒)で精製した。得られた粗生成物を、トルエン及びアセトニトリルの混合溶媒で複数回、再結晶した。得られた薄黄色固体を50℃で減圧乾燥させることで、化合物4a(1.4g、薄黄色固体)を得た。化合物4aのLC面積百分率は96%以上であった。
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2):δ(ppm)=8.41(1H,s),8.11(4H,d),7.68(1H,s),7.43(4H,t),7.29(4H,t),7.19(4H,d).
TLC-MS(ESI,positive):[M+H]=565.
【0193】
以上より、実施例M1~M4の製造方法は、比較例MC2の製造方法と比較して、反応収率が優れていることがわかる。より詳細には、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)のうち1つのみにハロゲン原子を含む化合物4a(即ち、「RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)のうち少なくとも2つの群は、ハロゲン原子を含む」という要件を満たさない化合物4a)を用いた比較例MC2の製造方法に比較して、RA1及びRA2からなる群(但し、k1が0の場合には、RA1)、RB1及びRB2からなる群(但し、m1が0の場合には、RB1)、並びに、RC1及びRC2からなる群(但し、n1が0の場合には、RC1)のうち少なくとも2つの群は、ハロゲン原子を含む化合物を用いた実施例M1~M4の製造方法は、反応収率が優れていることがわかる。