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特開2023-143775ガスセンサシステム、ガスセンサ制御装置及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143775
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ガスセンサシステム、ガスセンサ制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/61 20060101AFI20230928BHJP
   G01N 21/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01N21/61
G01N21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036060
(22)【出願日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2022050736
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】高木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】鵜篭 直也
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC15
2G059EE01
2G059EE16
2G059HH01
2G059HH06
2G059KK09
2G059MM05
2G059NN02
(57)【要約】
【課題】ユーザを待たせることなく精度の高い測定が可能なガスセンサシステム、ガスセンサ制御装置及び制御方法が提供される。
【解決手段】ガスセンサシステム(1)は、空気中の測定対象ガスの濃度測定を行うガスセンサ(10)と、ガスセンサを加熱するヒーター(17)と、ガスセンサに接続された吸気口(11)及び排気口(12)と、ガスセンサを加熱するようにヒーターを動作させて、加熱制御を実行する制御装置(20)と、を備え、制御装置は、ガスセンサの温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報を取得し、ガスセンサの温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて加熱制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の測定対象ガスの濃度測定を行うガスセンサと、
前記ガスセンサを加熱するヒーターと、
前記ガスセンサに接続された吸気口及び排気口と、
前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、加熱制御を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報を取得し、前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて加熱制御を実行する、ガスセンサシステム。
【請求項2】
前記吸気口からの吸気を遮断する吸気遮断手段を備え、
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて前記吸気口からの吸気を遮断する吸気遮断制御を実行する、請求項1に記載のガスセンサシステム。
【請求項3】
外部から起動信号を受信する受信部を備え、
前記制御装置は、前記起動信号の受信によってガスセンサを起動させ、前記ガスセンサの起動から前記濃度測定の開始前に前記加熱制御及び前記吸気遮断制御の少なくとも1つを実行する、請求項2に記載のガスセンサシステム。
【請求項4】
前記吸気遮断手段はファンである、請求項2に記載のガスセンサシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記加熱制御において前記ファンを停止させる又は前記吸気口から排気が行われるように前記ファンを動作させる、請求項4に記載のガスセンサシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記加熱制御において、前記ガスセンサの温度が加熱閾値になるまで前記ヒーターを動作させる、請求項4に記載のガスセンサシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度と前記吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが、加熱差分閾値以上である場合に、前記加熱制御を実行する、請求項1から6のいずれか一項に記載のガスセンサシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記加熱制御において前記ガスセンサの温度情報に基づいて、前記加熱制御を停止する、請求項1から6のいずれか一項に記載のガスセンサシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記加熱制御において外部からの信号に基づいて前記吸気遮断手段の動作を制御する、請求項2から6のいずれか一項に記載のガスセンサシステム。
【請求項10】
前記ガスセンサシステムは車両に搭載されたシステムであって、
前記受信部は、前記車両の操作に応じて前記車両の制御装置から前記起動信号を受信し、前記ガスセンサを起動させる、請求項3に記載のガスセンサシステム。
【請求項11】
前記車両の操作は前記車両のドアのロックが解除されたことを含む、請求項10に記載のガスセンサシステム。
【請求項12】
前記濃度測定の準備ができたことを通知する通知部を更に備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のガスセンサシステム。
【請求項13】
前記ガスセンサは、NDIR方式又は光音響方式であって、
前記ヒーターは、前記ガスセンサの少なくとも光学部材を加熱する、請求項1から6のいずれか一項に記載のガスセンサシステム。
【請求項14】
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度情報を取得し、前記ガスセンサの温度情報に基づいて、起動信号の受信から前記濃度測定の開始前に、前記加熱制御、前記吸気遮断制御及び前記ガスセンサを冷却するように前記吸気遮断手段を動作させる冷却制御の少なくとも1つを実行する、請求項2から6のいずれか一項に記載のガスセンサシステム。
【請求項15】
空気中の測定対象ガスの濃度測定を行うガスセンサの温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報を取得し、前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて、起動信号の受信から前記濃度測定の開始前に、前記ガスセンサを加熱するように前記ガスセンサを加熱するヒーターを動作させて、加熱制御を実行する、ガスセンサ制御装置。
【請求項16】
空気中の測定対象ガスの濃度測定を行うガスセンサと、前記ガスセンサを加熱するヒーターと、前記ガスセンサに接続された吸気口及び排気口と、前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、加熱制御を実行する制御装置と、を備えるガスセンサシステムが実行する制御方法であって、
前記制御装置が、
前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報を取得することと、
前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて加熱制御を実行することと、を含む、制御方法。
【請求項17】
前記制御装置が、前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、前記吸気口から吸気されないようにファンを停止させる又は前記吸気口から排気が行われるように前記ファンを動作させること、を含む、請求項16に記載の制御方法。
【請求項18】
前記制御装置は、前記ファンを動作させることにおいて、前記ガスセンサの温度が加熱閾値になるまで前記ヒーターを動作させる、請求項17に記載の制御方法。
【請求項19】
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度と前記吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが、加熱差分閾値以上である場合に、前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、前記吸気口から吸気されないように前記ファンを制御することを実行する、請求項17又は18に記載の制御方法。
【請求項20】
前記ガスセンサは、NDIR方式又は光音響方式であって、
前記ヒーターは、前記ガスセンサの少なくとも光学部材を加熱する、請求項16から18のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項21】
前記制御装置が、
前記ガスセンサの温度情報に基づいて、起動信号の受信から前記濃度測定の開始前に、
前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、前記吸気口から吸気されないようにファンを制御すること、又は、
前記ガスセンサを冷却するように前記ファンを動作させること、を含む、請求項16に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はガスセンサシステム、ガスセンサ制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に波長が2μm以上の長波長帯の赤外線は、その熱的効果及びガスによる赤外線吸収の効果から、ガスセンサ等に使用されている。例えばガスの種類によって吸収される赤外線の波長が異なることを利用し、この吸収量を検出することによりそのガス濃度を測定するNDIR(非分散赤外線吸収:Non-Dispersive InfraRed)方式のガスセンサが使用される(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなガスセンサの例として、車両に搭載されるアルコールセンサがある。例えば特許文献2に記載の呼気検査システムは、空気流によって呼気を取り込むためのファンを備え、呼気の検知時にファンを停止することによって正確に呼気アルコール濃度を判定する。また、ガスセンサの他の活用事例として、COセンサを挙げることができる。COセンサは、例えば車両の空気質モニタ又は置き去り検知として使われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6530652号公報
【特許文献2】特開2019-023651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスセンサは、特に室外などでの使用において、ガスセンサの温度が使用環境温度と大きく異なると測定精度が低下することがある。このような場合に、従来のガスセンサでは、ユーザからの測定開始指示を受けてからガスセンサの温度を取得して、ガスセンサが適切な温度になるまで測定を開始しない、又は、測定するが適切な温度になるまで測定値を活用しないなどの対応を行うことがあった。そのため、測定によって信用できる情報が得られるまでに時間がかかることがあった。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、ユーザを待たせることなく精度の高い測定が可能なガスセンサシステム、ガスセンサ制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係るガスセンサシステムは、
空気中の測定対象ガスの濃度測定を行うガスセンサと、
前記ガスセンサを加熱するヒーターと、
前記ガスセンサに接続された吸気口及び排気口と、
前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、加熱制御を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報を取得し、前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて加熱制御を実行する。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記吸気口からの吸気を遮断する吸気遮断手段を備え、
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて前記吸気口からの吸気を遮断する吸気遮断制御を実行する。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(2)において、
外部から起動信号を受信する受信部を備え、
前記制御装置は、前記起動信号の受信によってガスセンサを起動させ、前記ガスセンサの起動から前記濃度測定の開始前に前記加熱制御及び前記吸気遮断制御の少なくとも1つを実行する。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(2)又は(3)において、
前記吸気遮断手段はファンである。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(4)において、
前記制御装置は、前記加熱制御において前記ファンを停止させる又は前記吸気口から排気が行われるように前記ファンを動作させる。
【0012】
(6)本開示の一実施形態として、(4)又は(5)において、
前記制御装置は、前記加熱制御において、前記ガスセンサの温度が加熱閾値になるまで前記ヒーターを動作させる。
【0013】
(7)本開示の一実施形態として、(1)から(6)のいずれかにおいて、
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度と前記吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが、加熱差分閾値以上である場合に、前記加熱制御を実行する。
【0014】
(8)本開示の一実施形態として、(1)から(7)のいずれかにおいて、
前記制御装置は、前記加熱制御において前記ガスセンサの温度情報に基づいて、前記加熱制御を停止する。
【0015】
(9)本開示の一実施形態として、(2)から(6)のいずれかにおいて、
前記制御装置は、前記加熱制御において外部からの信号に基づいて前記吸気遮断手段の動作を制御する。
【0016】
(10)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記ガスセンサシステムは車両に搭載されたシステムであって、
前記受信部は、前記車両の操作に応じて前記車両の制御装置から前記起動信号を受信し、前記ガスセンサを起動させる。
【0017】
(11)本開示の一実施形態として、(10)において、
前記車両の操作は前記車両のドアのロックが解除されたことを含む。
【0018】
(12)本開示の一実施形態として、(1)から(11)のいずれかにおいて、
前記濃度測定の準備ができたことを通知する通知部を更に備える。
【0019】
(13)本開示の一実施形態として、(1)から(12)のいずれかにおいて、
前記ガスセンサは、NDIR方式又は光音響方式であって、
前記ヒーターは、前記ガスセンサの少なくとも光学部材を加熱する。
【0020】
(14)本開示の一実施形態として、(2)から(6)のいずれかにおいて、
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度情報を取得し、前記ガスセンサの温度情報に基づいて、起動信号の受信から前記濃度測定の開始前に、前記加熱制御、前記吸気遮断制御及び前記ガスセンサを冷却するように前記吸気遮断手段を動作させる冷却制御の少なくとも1つを実行する。
【0021】
(15)本開示の一実施形態に係るガスセンサ制御装置は、
空気中の測定対象ガスの濃度測定を行うガスセンサの温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報を取得し、前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて、起動信号の受信から前記濃度測定の開始前に、前記ガスセンサを加熱するように前記ガスセンサを加熱するヒーターを動作させて、加熱制御を実行する。
【0022】
(16)本開示の一実施形態に係る制御方法は、
空気中の測定対象ガスの濃度測定を行うガスセンサと、前記ガスセンサを加熱するヒーターと、前記ガスセンサに接続された吸気口及び排気口と、前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、加熱制御を実行する制御装置と、を備えるガスセンサシステムが実行する制御方法であって、
前記制御装置が、
前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報を取得することと、
前記ガスセンサの温度情報及び前記吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて加熱制御を実行することと、を含む。
【0023】
(17)本開示の一実施形態として、(16)において、
前記制御装置が、前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、前記吸気口から吸気されないようにファンを停止させる又は前記吸気口から排気が行われるように前記ファンを動作させること、を含む。
【0024】
(18)本開示の一実施形態として、(17)において、
前記制御装置は、前記ファンを動作させることにおいて、前記ガスセンサの温度が加熱閾値になるまで前記ヒーターを動作させる。
【0025】
(19)本開示の一実施形態として、(17)又は(18)において、
前記制御装置は、前記ガスセンサの温度と前記吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが、加熱差分閾値以上である場合に、前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、前記吸気口から吸気されないように前記ファンを制御することを実行する。
【0026】
(20)本開示の一実施形態として、(16)から(19)のいずれかにおいて、
前記ガスセンサは、NDIR方式又は光音響方式であって、
前記ヒーターは、前記ガスセンサの少なくとも光学部材を加熱する。
【0027】
(21)本開示の一実施形態として、(16)において、
前記制御装置が、
前記ガスセンサの温度情報に基づいて、起動信号の受信から前記濃度測定の開始前に、
前記ガスセンサを加熱するように前記ヒーターを動作させて、前記吸気口から吸気されないようにファンを制御すること、又は、
前記ガスセンサを冷却するように前記ファンを動作させること、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、ユーザを待たせることなく精度の高い測定が可能なガスセンサシステム、ガスセンサ制御装置及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に係るガスセンサシステムの一構成例のブロック図である。
図2図2は、本開示の第1の実施形態に係るガスセンサシステムの適用例を示す図である。
図3図3は、本開示の第1の実施形態に係る制御方法を例示するフローチャートである。
図4図4は、本開示の第2の実施形態に係るガスセンサシステムの一構成例のブロック図である。
図5図5は、本開示の第2の実施形態に係るガスセンサシステムの適用例を示す図である。
図6図6は、本開示の第2の実施形態に係る制御方法を例示するフローチャートである。
図7図7は、本開示の第3の実施形態に係る制御方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るガスセンサシステム、ガスセンサ制御装置及び制御方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0031】
[第1の実施形態]
<ガスセンサシステム>
図1は、第1の実施形態に係るガスセンサシステム1のブロック図である。ガスセンサシステム1は、ガスセンサ10と、吸気口11と、排気口12と、吸気遮断手段であるファン13と、ヒーター17と、制御装置20と、受信部30と、送信部31と、を備える。制御装置20は、ガスセンサ制御装置であって、温度情報取得部21と、制御部22と、を備える。ガスセンサシステム1は、本実施形態のように、第1の温度測定部14と、第2の温度測定部15と、通知部16と、をさらに備えてよい。
【0032】
図2は、本実施形態に係るガスセンサシステム1の適用例を示す図である。ガスセンサシステム1は、例えば車両に搭載されたシステムであって、車内の空気中の測定対象ガスの濃度測定を行い、測定結果に応じた搭乗者への通知及び車両の制御を実行させる。ガスセンサシステム1の用途は限定されないが、本実施形態において、運転者の呼気中のアルコール濃度を判定して、判定結果に応じて車両を運転が許可された状態又は運転が許可されない状態にするために用いられる。本実施形態において、ガスセンサシステム1のユーザは車両の運転者を含む。別の例として、ガスセンサシステム1は車内の空気中の二酸化炭素濃度を測定して、測定結果に応じてユーザに換気などのアドバイスを行うために、又は自動で換気を行う制御のために用いられてよい。このとき、ガスセンサシステム1のユーザは車両の搭乗者を含む。また、ガスセンサシステム1は、車両に搭載されるものに限定されず、例えば室内及び設置物の内部において測定対象ガスの濃度測定を行うものであってよい。
【0033】
ガスセンサシステム1は、車両に搭載される場合に、冬季などに低温の環境で使用され得る。ガスセンサ10が低温になっていると、呼気を含む空気がセルに導入された場合に結露が生じることがある。特に光学部材に結露が生じると、赤外線の反射時などに吸収及び散乱が生じて受光素子が受け取る光量が低下する。そのため、結露によって測定精度が低下する。ガスセンサ10が低温のままで測定を行うと誤ったアルコール濃度判定が行われて、車両の運転に支障が生じるおそれがある。従来、ユーザからの測定開始指示を受けてからガスセンサ10の温度を取得して、ガスセンサ10の昇温を開始し、ガスセンサ10が適切な温度になるまでアルコール濃度の測定を開始しないなどの対応が行われることがあった。しかし、車両をなるべく早くに発進させたいユーザの要望があるため、ユーザを待たせずにアルコール濃度測定を開始できるシステムが望まれていた。本実施形態に係るガスセンサシステム1は、以下に説明する構成によって、ユーザを待たせることなく精度の高い測定を可能にする。ここで、本実施形態において、ガスセンサ10の温度は、使用環境における空気の温度未満であるとして説明される。
【0034】
(ガスセンサ)
ガスセンサ10は、空気中の測定対象ガスの濃度測定を行う装置である。ガスセンサ10は特に限定されないが、光学式であるNDIR方式、光音響方式又は電気化学式を原理としたガスセンサであってよい。NDIR方式は、ガスの種類によって吸収される赤外線の波長が異なることを利用し、この吸収量を検出することによりガス濃度を測定する。光音響方式は、赤外線を吸収したガス分子の振動を高性能なマイクで音として拾うことでガス濃度を測定する。電気化学式は、酸化還元反応を利用してガス濃度を測定する。以下、本実施形態において、ガスセンサ10はNDIR方式の装置であるとして説明する。
【0035】
例えばガスセンサ10は、赤外線を発する発光素子と、発光素子が発した赤外線を受光素子に導く光学部材と、赤外線を受け取る受光素子と、測定対象ガスを含む空気が導入されるセル(チャンバ)と、ガス濃度を演算する演算部と、を備える。発光素子は例えば電球、MEMS光源、赤外線LEDである。受光素子は例えばPIN構造を持ったフォトダイオードのような量子型赤外線センサ、サーモパイルである。光学部材は例えばミラー及びレンズである。光学部材によって、発光素子から受光素子までの赤外線の光路が、空気が導入されるセルを通過するように構成される。例えば演算部は、受光素子の出力信号から測定対象ガスによって吸収される赤外線の受光量を演算し、測定対象ガスが存在しない場合の受光量と比較することによって、ガス濃度を演算する。本実施形態において、演算部は、アルコール濃度判定及び判定結果を車両の制御装置に出力する機能を備えてよい。
【0036】
ここで、赤外線の波長は2μm~12μmであってよい。2μm~12μmの領域は、各種ガスに固有の吸収帯が数多く存在し、ガスセンサ10に用いるのに特に適した波長帯である。例えば3.3μmの波長にメタン、4.3μmの波長に二酸化炭素、9.5μmの波長にアルコール(エタノール)の吸収帯が存在する。本実施形態において、測定対象ガスはアルコールを含み、9.5μmを含む波長帯の赤外線が用いられる。
【0037】
(吸気口、排気口)
吸気口11及び排気口12はガスセンサ10に接続される。本実施形態において、アルコール濃度測定が行われる場合に、吸気口11から運転者の呼気を含む空気がガスセンサ10のセルに導入される。また、アルコール濃度測定後などに、ガスセンサ10のセルの空気が排気口12から排出される。
【0038】
(受信部)
ガスセンサを外部装置から起動するために、起動信号を受信する受信部30が設けられている。起動信号は、濃度測定前情報に基づき生成される。例えば、本実施形態であれば、乗車前の予備動作に基づき、車両のECUから起動信号が生成される。乗車前の予備動作とは、例えば乗車意思を検知するものであってよく、ドアのロック解除、リモートキーの車両への接近検知、車両のリモートスタートである。乗車前の予備動作は、車両のエンジン又は電源をONにする前の予備動作であってよく、パーキングブレーキの解除、ブレーキペダルの踏み込み、シフトレバーの接触、着座検知を含んでよい。室内の換気扇に組み込まれるガスセンサシステムであれば、予備動作は、部屋を使用する意思の検知であってよい。部屋を使用する意思の検知とは、例えば換気扇が設置された部屋への入室検知、部屋の照明点灯などである。
【0039】
(吸気遮断手段)
吸気遮断手段として、吸気口11及び排気口12からの吸気及び排気を行うために、1つ以上のファン13が設けられている。ファン13は、ガスセンサ10の外部、内部を問わずに設けられていてよい。ファン13は複数であってよい。ファン13は、プロペラ及びモーターを備える構造であって、プロペラの回転によって空気流を生じさせるものであってよい。モーターは、プロペラが取り付けられており、例えば制御装置20によって回転のオン又はオフ及び回転方向が制御されてよい。上記のように、測定対象ガスの濃度測定の前後において、吸気口11から吸気し、排気口12へ排気を行うようにファン13が動作する。本実施形態において、ファン13は、プロペラの回転方向を通常と逆にすることによって、吸気口11へ排気を行うことも可能である。
【0040】
(ヒーター)
ヒーター17は、ガスセンサ10を加熱する装置である。ヒーター17は、ガスセンサ10に近接して又は内蔵して配置される。ヒーター17は、少なくともガスセンサ10の光学部材を加熱可能なように配置されてよい。ヒーター17の種類は限定されないが、電流を流すことによって発熱する電熱式の装置であってよい。ヒーター17は、制御装置20によってオン又はオフが制御される。
【0041】
(温度測定部)
第1の温度測定部14は、ガスセンサ10の温度を測定し、測定した温度を示す信号である温度情報を出力する。また、第2の温度測定部15は、吸気口が吸気する空間の温度を測定し、測定した温度を示す信号である温度情報を出力する。以下、第1の温度測定部14と第2の温度測定部15とを区別しない場合に、これらをまとめて「温度測定部」と称することがある。また、「吸気口が吸気する空間の温度」を図面などにおいて「空気の温度」と表記することがある。温度測定部は、例えばサーミスタなどの温度センサであってよい。ここで、ガスセンサシステム1は、構成部品数を減らして小型化するために、第1の温度測定部14及び第2の温度測定部15の少なくとも1つを備えない構成であってよい。このような構成の場合に、例えば温度情報取得部21は、ガスセンサ10が備える演算部からガスセンサ10の温度情報を取得してよい。また、例えば温度情報取得部21は、車両の制御装置から吸気口が吸気する空間の温度情報を取得してよい。温度情報取得部21は、温度計を備えない場合に、ガスセンサシステムに包含されない外部機器から温度情報を受け取ることで代替することも可能である。
【0042】
(送信部)
送信部31は、測定対象ガスの濃度測定の準備ができたことを通知するための信号を送信する。測定対象ガスの濃度測定の準備ができたことは、ガスセンサの温度によって判断してよく、ガスセンサの温度のばらつき又は時間変動から判断してよい。また、ガスセンサの温度だけでなく、吸気する空間の空気の温度情報に基づいて判断が行われてよい。
【0043】
(通知部)
通知部16は、送信部31の信号に基づき、測定対象ガスの濃度測定の準備ができたことをユーザに通知する装置である。通知部16は、送信部31から準備ができたことを示す信号を取得してよい。通知部16の構成は限定されないが、本実施形態のように光で準備完了を通知するライトを含んでよいし、音で準備完了を通知するスピーカーを含んでよい。通知部16は、例えばダッシュボードにあるディスプレイなどへの表示を行ってよい。通知部16によって、ユーザは測定対象ガスの濃度測定が可能であることを明確に知ることができる。ここで、ガスセンサシステム1は、構成部品数を減らして小型化するために、通知部16を備えない構成であってよい。
【0044】
<制御装置>
本実施形態において、制御装置20は、温度情報取得部21と、制御部22と、を備える。制御装置20は、制御に特化したハードウェア又は演算及び制御を実行するプロセッサを備える装置などであってよく、例えばマイコン(Micro Controller Unit)によって実現されてよい。
【0045】
温度情報取得部21及び制御部22の機能はソフトウェアによって実現されてよく、ハードウェアによって実現されてよい。例えば制御装置20が備えるプロセッサによってアクセス可能な記憶装置に、1つ以上のプログラムが記憶されていてよい。記憶装置に記憶されたプログラムは、制御装置20が備えるプロセッサによって読み込まれると、制御装置20を温度情報取得部21及び制御部22として機能させてよい。
【0046】
(温度情報取得部)
温度情報取得部21はガスセンサ10の温度情報を取得する。本実施形態において、温度情報取得部21は吸気口が吸気する空間の温度情報も取得する。温度情報取得部21は、ガスセンサ10の起動から測定対象ガスの濃度測定の開始前に、温度情報を取得する。温度情報取得部21は、取得した温度情報を制御部22に出力する。
【0047】
(制御部)
制御部22は、ガスセンサ10、ファン13及びヒーター17の動作を制御する。制御部22は、ガスセンサ10の温度情報に基づいて、ガスセンサ10を加熱するようにヒーター17を動作させる加熱制御と、吸気口11から吸気されないようにファン13を制御する吸気遮断制御を実行する。吸気遮断制御は、ファン13の制御に限定されず、例えば物理的に吸気口又は排気口を塞ぐように制御することであってよいし、吸気をある程度遮断できる制御であればよい。つまり、吸気口からの吸気を遮断する吸気遮断手段は、ファン13であってよいが、これに限定されず、物理的に吸気口又は排気口を塞ぐものなどであってよい。吸気遮断手段は、例えばシャッター機構であってよい。ヒーター17を動作させることによってガスセンサ10を温めて、ファン13を制御することによって吸気口11から相対的に暖かい空気が入り込まないようにすることによって、結露を防止することができる。本実施形態において、制御部22は、ガスセンサ10の温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて加熱制御と吸気遮断制御を実行する。具体的に述べると、制御部22は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが、加熱差分閾値以上である場合に加熱制御及び吸気遮断制御の少なくとも1つを実行する。加熱差分閾値は、車両が使用される環境の平均湿度などに応じて設定されてよく、特に限定されないが、一例として10℃である。ここで、加熱差分閾値をゼロに設定することが可能である。このとき、ガスセンサ10の温度が、吸気口が吸気する空間の温度以下であれば加熱制御が実行される。
【0048】
制御部22は、加熱制御において、ガスセンサ10の温度が加熱閾値になるまでヒーター17を動作させてよい。加熱閾値は、例えば体温に近い温度として設定され、一例として36℃である。
【0049】
また、吸気遮断制御におけるファン13の制御は、具体的に述べると、ファン13を停止させる又は吸気口11から排気が行われるようにファン13を動作させることであってよい。吸気口11からの排気は、ファン13のプロペラを通常と逆回転させることによって実行され得る。吸気口11からの排気によって、さらに結露防止の効果を高めることが可能である。
【0050】
制御部22は、起動信号の受信から測定対象ガスの濃度測定の開始前に、加熱制御と吸気遮断制御を実行する。つまり、ユーザが測定対象ガスの濃度測定を実行しようとする時(ガスセンサ10の濃度測定結果を用いるアプリケーションを起動するようなことも含む)に、低温であったガスセンサ10が結露なく昇温されており、測定準備ができているか、少なくとも測定可能になるまでの待機時間が短縮されている。したがって、ユーザを待たせることなく精度の高い測定が可能になる。ここで、測定可能になるとは、測定値が信用できる値として取り扱うことができることを含む。また、制御部22は、測定対象ガスの濃度測定の開始前に加熱制御と吸気遮断制御を実行するために、ガスセンサ10が使用され得る状態(ガスセンサ10の起動タイミング)を検知する必要がある。本実施形態において、制御部22は車両からドアのロックが解除されたことを示す信号を取得し、ドアのロックが解除された場合にガスセンサ10を起動させる。制御部22は、ドアのロック解除の信号を、車両の制御装置から取得してよい。ここで、ドアのロック解除以外の乗車に関する情報がトリガーとして用いられてよい。例えばドアのロック解除、リモートキーの車両への接近検知、車両のリモートスタートなどの操作に応じて、ガスセンサ10が起動してよい。制御部22は、ガスセンサ10を起動させると、ガスセンサ10の温度情報に基づいて、温度が加熱閾値以上であるかを判定する。又は、制御部22は、ガスセンサ10の温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて、温度差の大きさが加熱差分閾値以上であるかを判定する。そして、制御部22は、温度差の大きさが加熱差分閾値以上である場合に加熱制御を実行して、ガスセンサ10の温度を上げて、吸気口11から吸気されないようにファン13を制御し、吸気遮断制御を実行する。
【0051】
<制御方法>
図3は、本実施形態に係るガスセンサシステム1の制御装置20が実行する動作制御方法を例示するフローチャートである。制御装置20は、ガスセンサ10を起動させる信号を取得するまで待機する(ステップS11のNo)。本実施形態において、ガスセンサ10を起動させる信号は、車両の制御装置からのドアのロックが解除されたことを示す信号である。
【0052】
制御装置20は、ドアのロック解除の信号を取得した場合に、ガスセンサ10を起動させて(ステップS11のYes)、温度情報を取得する(ステップS12)。本実施形態において、温度情報は、ガスセンサ10の温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報を含む。
【0053】
制御装置20は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさ、すなわち吸気口が吸気する空間の温度からガスセンサ10の温度を引いた値が、加熱差分閾値以上である場合に(ステップS13のYes)、加熱制御(ステップS14A)と吸気遮断制御(ステップS14B)を実行する。加熱制御は、上記のように、ガスセンサ10を加熱するようにヒーター17を動作させ、吸気しないようにファン13を制御するものである。加熱制御によってガスセンサ10の温度が上昇し、かつ、吸気を遮断することにより結露を防止する。
【0054】
制御装置20は、加熱制御の後で準備完了となった場合に、又は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが加熱差分閾値未満である場合に(ステップS13のNo)、アルコール濃度測定を開始させる信号を取得するまで待機する(ステップS15のNo)。本実施形態において、アルコール濃度測定を開始させる信号は、車両の制御装置からの車両のエンジンが始動したことを示す信号である。このアルコール濃度測定を開始させる信号は、エンジンを始動させる信号を起点に生成されてよい。ここで、車両の種類は特に限定されず、例えば電気自動車が含まれる。例えば電気自動車では、上記のエンジンの始動を、駆動系が動作可能になった状態(運転可能状態)と言い換えることができる。また、制御装置20は、ガスセンサ10の温度情報に基づいて加熱制御を停止させてよいし、外部からの信号に基づいて加熱制御におけるファン13の動作を停止させてよい。例えば制御装置20は、温度情報に基づいてガスセンサ10の温度が上がったと判定する場合などに、加熱制御を停止させてよい。また、例えば制御装置20は、運転者が着席したという信号(外部からの信号の一例)に基づいて、加熱制御におけるファン13の動作(吸気しない制御)を停止又は回転数を下げてよい。
【0055】
制御装置20は、アルコール濃度測定を開始させる信号を取得した場合に(ステップS15のYes)、ガスセンサ10に測定対象ガスの濃度測定を実行させる(ステップS16)。ここで、加熱制御の後で準備完了となる前にアルコール濃度測定開始の信号を取得した場合には、制御装置20が加熱制御を継続して、準備完了となった後で測定対象ガスの濃度測定を実行させてよい。ここで、加熱制御中に測定対象ガスの濃度測定自体は実行されていてよい。準備完了まで、濃度測定結果の値は無効なものとして取り扱うことがあってよい。
【0056】
ここで、上記のように、ガスセンサシステム1は、構成部品数を減らして小型化するために、第1の温度測定部14及び第2の温度測定部15の少なくとも1つを備えないことがあり得る。例えばガスセンサシステム1が第2の温度測定部15を備えない場合に、制御装置20はガスセンサ10の温度情報のみに基づいて加熱制御と吸気遮断制御を実行してよい。このとき、制御装置20は、ステップS13の判定を、ガスセンサ10の温度が加熱閾値未満である場合に加熱制御と吸気遮断制御を実行するものとしてよい。加熱閾値は例えば36℃である。つまり、制御装置20は、吸気口が吸気する空間の温度と比較せずに、ガスセンサ10の温度が36℃未満であれば加熱制御と吸気遮断制御を実行してよい。
【0057】
また、本実施形態において、制御装置20は車両のバッテリーからの電力で加熱制御と吸気遮断制御を実行する。バッテリーの電力消費を大きくしないために、制御装置20は、加熱制御においてファン13の動作時間を一定時間(一例として60秒)以下にしてよい。このとき、制御装置20は、1回の加熱制御の終了後に準備完了でない、すなわち、さらにガスセンサ10の加熱が必要ならば、ステップS12の処理に戻るように制御を行ってよい。また、測定対象ガスの濃度測定の実行は1回に限定されない。測定対象ガスの濃度測定は例えば試行である仮の測定を含んでよく、最終的な判定結果を得るための測定が実施されるまで、図3のフローチャートの処理が繰り返し実行されてよい。ここで、図3のフローチャートは一例である。例えば、連続測定を実行する場合に、ステップS16の後で、ステップS12の処理に戻る制御が行われてよい。
【0058】
以上のように、本実施形態に係るガスセンサシステム1、制御装置20及び制御方法は、上記の構成及び処理によって、ガスセンサ10の温度が使用環境における吸気口が吸気する空間の温度未満の低温であるような場合に、測定開始前に加熱制御を実行して結露を防止する。そのため、本実施形態に係るガスセンサシステム1、制御装置20及び制御方法は、ユーザを待たせることなく精度の高い測定を可能にする。
【0059】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係るガスセンサシステム1のブロック図である。本実施形態に係るガスセンサシステム1は、第1の実施形態に係るガスセンサシステム1の構成要素からヒーター17が除かれている。
【0060】
図5は、本実施形態に係るガスセンサシステム1の適用例を示す図である。本実施形態に係るガスセンサシステム1は用途が限定されるものでないが、車両に搭載されたシステムであって、運転者の呼気中のアルコール濃度を判定するとして説明する。重複説明を回避するため、第1の実施形態と異なる構成が以下に説明される。
【0061】
ここで、ガスセンサシステム1は、車両に搭載される場合に高温になり得るダッシュボードなどに設置されることがある。ガスセンサ10が高温になるとSNR(信号ノイズ比)が劣化して測定精度が低下する。そのため、ガスセンサ10が高温のままで測定を行うと、ガスセンサ自身の温度と吸気する空間の温度が異なるために、吸気が行われた際にガスセンサの温度が不安定となり、誤ったアルコール濃度判定が行われて、車両の運転に支障が生じるおそれがある。従来、ユーザからの測定開始指示を受けてからガスセンサ10の温度を取得して、ガスセンサ10の冷却を開始し、ガスセンサ10が適切な温度になるまで、又は温度が安定化されるまでアルコール濃度の測定を開始しない、濃度測定の値を活用しないなどの対応が行われることがあった。しかし、車両をなるべく早くに発進させたいユーザの要望があるため、ユーザを待たせずにアルコール濃度測定を開始できるシステムが望まれていた。本実施形態に係るガスセンサシステム1は、以下に説明する構成によって、ユーザを待たせることなく精度の高い測定を可能にする。ここで、本実施形態において、ガスセンサ10の温度は、使用環境における空気の温度以上であるとして説明される。
【0062】
(制御部)
制御部22は、ガスセンサ10及びファン13の動作を制御する。制御部22は、ガスセンサ10の温度情報に基づいて、ガスセンサ10を冷却するようにファン13を動作させる冷却制御を実行する。ファン13を動作させることによって生じる空気の流れによってガスセンサ10を空冷し、高温のガスセンサ10の温度を下げることができる。また、ガスセンサ10より温度が低い空気が取り込まれることにより、ガスセンサ10の温度を下げることができる。本実施形態において、制御部22は、ガスセンサ10の温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて冷却制御を実行する。具体的に述べると、制御部22は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが、冷却差分閾値以上である場合に冷却制御を実行する。冷却差分閾値は、車両が使用される環境の平均気温などに応じて設定されてよく、特に限定されないが、一例として10℃である。この差分値閾値が小さいほど、準備には時間がかかるが、ガスセンサは温度が安定するために測定の精度を高められる。また、この差分値閾値が大きいほど、早期に準備が完了する一方で、測定の精度は下がる傾向にある。
【0063】
制御部22は、起動信号の受信から測定対象ガスの濃度測定の開始前に、冷却制御を実行する。つまり、ユーザが測定対象ガスの濃度測定を実行しようとする時に、高温であったガスセンサ10が冷却されており、測定準備ができているか、少なくとも測定可能になるまでの待機時間が短縮されている。したがって、ユーザを待たせることなく精度の高い測定が可能になる。ここで、制御部22は、測定対象ガスの濃度測定の開始前に冷却制御を実行するために、例えば車両からドアのロックが解除されたことを示す信号を取得し、ドアのロックが解除された場合にガスセンサ10を起動させる。制御部22は、ドアのロック解除の信号を、車両の制御装置から取得してよい。制御部22は、ガスセンサ10を起動させると、ガスセンサ10の温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報に基づいて、温度差の大きさが冷却差分閾値以上であるかを判定する。そして、制御部22は、温度差の大きさが冷却差分閾値以上である場合に冷却制御を実行して、ガスセンサ10の温度を下げる。例えば、制御部22は、ガスセンサ10の温度が、吸気口が吸気する空間の温度以上の場合に、ガスセンサ10の温度を下げるように制御してよい。また、例えば、制御部22は、ガスセンサ10の温度が、吸気口が吸気する空間の温度より5℃以上高い場合に、ガスセンサ10の温度を下げるように制御してよい。また、例えば、制御部22は、ガスセンサ10の温度が、吸気口が吸気する空間の温度より10℃以上高い場合に、ガスセンサ10の温度を下げるように制御してよい。
【0064】
また、制御部22は、車両のエンジンが始動したことを示す信号を取得して、ユーザからの測定対象ガスの濃度測定(本実施形態においてアルコール濃度測定)の開始指示があると判定してよい。制御部22は、エンジン始動の信号を、車両の制御装置から取得してよい。制御部22は、測定対象ガスの濃度測定の開始指示があった場合に、ガスセンサ10が十分に冷却されて測定準備ができていれば、送信部31が通知部16に向け準備完了を示す信号を送信し、通知部16がユーザに準備完了を通知させる。制御部22は、測定対象ガスの濃度測定の開始指示があった場合に、さらにガスセンサ10の冷却が必要であれば(測定準備ができていなければ)、通知部16に準備完了でないことを通知させてよい。
【0065】
制御部22は、測定準備完了後に、ガスセンサ10に測定対象ガスの濃度測定を実行させてよい。ここで、制御部22は、ノイズ発生を抑制して測定精度をさらに高めるために、測定対象ガスの濃度測定中にファン13を停止させる制御を行ってよい。
【0066】
<制御方法>
図6は、本実施形態に係るガスセンサシステム1の制御装置20が実行する動作制御方法を例示するフローチャートである。制御装置20は、ガスセンサ10を起動させる信号を取得するまで待機する(ステップS1のNo)。本実施形態において、ガスセンサ10を起動させる信号は、車両の制御装置からのドアのロックが解除されたことを示す信号である。
【0067】
制御装置20は、ドアのロック解除の信号を取得した場合に、ガスセンサ10を起動させて(ステップS1のYes)、温度情報を取得する(ステップS2)。本実施形態において、温度情報は、ガスセンサ10の温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報を含む。
【0068】
制御装置20は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさ、すなわちガスセンサ10の温度から吸気口が吸気する空間の温度を引いた値が、冷却差分閾値以上である場合に(ステップS3のYes)、冷却制御を実行する(ステップS4)。冷却制御は、上記のように、ガスセンサ10を冷却するようにファン13を動作させる制御である。冷却制御によってガスセンサ10の温度が下げられる。
【0069】
制御装置20は、冷却制御の後で準備完了となった場合に、又は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが冷却差分閾値未満である場合に(ステップS3のNo)、アルコール濃度測定を開始させる信号を取得するまで待機する(ステップS5のNo)。本実施形態において、アルコール濃度測定を開始させる信号は、車両の制御装置からの車両のエンジンが始動したことを示す信号である。
【0070】
制御装置20は、アルコール濃度測定を開始させる信号を取得した場合に(ステップS5のYes)、ガスセンサ10に測定対象ガスの濃度測定を実行させる(ステップS6)。ここで、冷却制御の後で準備完了となる前にアルコール濃度測定開始の信号を取得した場合には、制御装置20が冷却制御を継続して、準備完了となった後で測定対象ガスの濃度測定を実行させてよい。また、準備中に、測定の空回し動作が行われてよい。
【0071】
ここで、上記のように、ガスセンサシステム1は、構成部品数を減らして小型化するために、第1の温度測定部14及び第2の温度測定部15の少なくとも1つを備えないことがあり得る。例えばガスセンサシステム1が第2の温度測定部15を備えない場合に、制御装置20はガスセンサ10の温度情報のみに基づいて冷却制御を実行してよい。このとき、制御装置20は、ステップS3の判定を、ガスセンサ10の温度が冷却閾値以上である場合に冷却制御を実行するものとしてよい。冷却閾値は例えば40℃である。つまり、制御装置20は、吸気口が吸気する空間の温度と比較せずに、ガスセンサ10の温度が40℃以上であれば冷却制御を実行してよい。ここで一例として40℃としたが、人間の呼気で結露が起こらない条件であればよい。
【0072】
また、本実施形態において、制御装置20は車両のバッテリーからの電力で冷却制御を実行する。バッテリーの電力消費を大きくしないために、制御装置20は、冷却制御においてファン13の動作時間を一定時間(一例として60秒)以下にしてよい。このとき、制御装置20は、1回の冷却制御の終了後に準備完了でない、すなわち、さらにガスセンサ10の冷却が必要ならば、ステップS2の処理に戻るように制御を行ってよい。また、測定対象ガスの濃度測定の実行は1回に限定されない。測定対象ガスの濃度測定は例えば試行である仮の測定を含んでよく、最終的な判定結果を得るための測定が実施されるまで、図6のフローチャートの処理が繰り返し実行されてよい。
【0073】
また、ガスセンサシステムの初期化作業の中で、ファンの動作検証と共に冷却制御が行われてよい。ガスセンサシステムの初期化における異常検出フェーズにおいて、ファンを動作させ、異常検出に併せて冷却を行うことができれば、冷却制御と初期化を並列に行うことができ、システムが効率化する。
【0074】
以上のように、本実施形態に係るガスセンサシステム1、制御装置20及び制御方法は、上記の構成及び処理によって、ガスセンサ10の温度が使用環境における吸気口が吸気する空間の温度以上の高温であるような場合に、測定開始前に冷却制御を実行する。そのため、本実施形態に係るガスセンサシステム1、制御装置20及び制御方法は、ユーザを待たせることなく精度の高い測定を可能にする。
【0075】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係るガスセンサシステム1のブロック図は、第1の実施形態と同じである。本実施形態に係るガスセンサシステム1は、ガスセンサ10の温度情報に基づいて、上記の冷却制御又は加熱制御を実行する。本実施形態に係るガスセンサシステム1は用途が限定されるものでないが、車両に搭載されたシステムであって、運転者の呼気中のアルコール濃度を判定するとして説明する。重複説明を回避するため、第1の実施形態、第2の実施形態と異なる処理が以下に説明される。
【0076】
<制御方法>
図7は、本実施形態に係るガスセンサシステム1の制御装置20が実行する動作制御方法を例示するフローチャートである。ガスセンサシステム1は起動信号を取得するまで待機する(ステップS21のNo)。本実施形態において、ガスセンサ10を起動させる起動信号は、車両の制御装置からのドアのロックが解除されたことを起点に車両の制御装置より送信される信号である。
【0077】
制御装置20は、ドアのロック解除の信号を取得した場合に、ガスセンサ10を起動させて(ステップS21のYes)、温度情報を取得する(ステップS22)。本実施形態において、温度情報は、ガスセンサ10の温度情報及び吸気口が吸気する空間の温度情報を含む。
【0078】
制御装置20は、ガスセンサ10の温度が吸気口が吸気する空間の温度より低い場合に(ステップS23のYes)、ステップS24の処理に進む。制御装置20は、ガスセンサ10の温度が、吸気口が吸気する空間の温度以上の場合に(ステップS23のNo)、ステップS26の処理に進む。
【0079】
制御装置20は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさ、すなわち吸気口が吸気する空間の温度からガスセンサ10の温度を引いた値が、加熱差分閾値以上である場合に(ステップS24のYes)、加熱制御(ステップS25A)と吸気遮断制御(ステップS25B)を実行する。加熱制御は、上記のように、ガスセンサ10を加熱するようにヒーター17を動作させ、吸気しないようにファン13を制御するものである。加熱制御によってガスセンサ10の温度が上昇し、かつ、吸気を遮断することにより結露を防止する。
【0080】
制御装置20は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさ、すなわちガスセンサ10の温度から吸気口が吸気する空間の温度を引いた値が、冷却差分閾値以上である場合に(ステップS26のYes)、冷却制御を実行する(ステップS27)。冷却制御は、上記のように、ガスセンサ10を冷却するようにファン13を動作させる制御である。冷却制御によってガスセンサ10の温度が下げられる。
【0081】
制御装置20は、加熱制御若しくは冷却制御の後で準備完了となり、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが加熱差分閾値未満である場合に(ステップS24のNo)、アルコール濃度測定を開始させる信号を取得するまで待機する(ステップS28のNo)。また、制御装置20は、ガスセンサ10の温度と吸気口が吸気する空間の温度との差の大きさが冷却差分閾値未満である場合に(ステップS26のNo)、アルコール濃度測定を開始させる信号を取得するまで待機する(ステップS28のNo)。本実施形態において、アルコール濃度測定を開始させる信号は、車両の制御装置からの車両のエンジンが始動したことを示す信号である。このアルコール濃度測定を開始させる信号は、エンジンを始動させる信号を起点に生成されてよい。
【0082】
制御装置20は、アルコール濃度測定を開始させる信号を取得した場合に(ステップS28のYes)、ガスセンサ10に測定対象ガスの濃度測定を実行させる(ステップS29)。ここで、加熱制御の後で準備完了となる前にアルコール濃度測定開始の信号を取得した場合には、制御装置20が加熱制御又は冷却制御を継続して、準備完了となった後で測定対象ガスの濃度測定を実行させてよい。ここで、冷却制御中に測定対象ガスの濃度測定自体は実行されていてよい。準備完了まで、濃度測定結果の値は無効なものとして取り扱うことがあってよい。
【0083】
ここで、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明したように、例えばガスセンサシステム1が第2の温度測定部15を備えない場合に、冷却閾値及び加熱閾値を用いる判定が実行されてよい。また、制御装置20は、冷却制御及び加熱制御においてファン13の動作時間を一定時間以下にして、処理をループさせる制御を行ってよい。また、測定対象ガスの濃度測定は例えば試行である仮の測定を含んでよく、最終的な判定結果を得るための測定が実施されるまで、図7のフローチャートの処理が繰り返し実行されてよい。
【0084】
また、加熱制御及び冷却制御は状況に応じて組み合わせて実行されてよい。例えば、最初に加熱制御が実行されていたが、その後に吸気口が吸気する空間の温度の方がガスセンサ10の温度より低くなった場合に、冷却制御が実行されてよい。具体例として、冬にガスセンサ10が加熱されていたが、下車などで車両のドアが開けられて、外の冷たい空気が車内に入り、温度差が10度以上になったような場合に、冷却制御が実行されてよい。また、外の冷たい空気が車内に入り、ガスセンサがその冷たい空気を吸気口から取り込む事で冷却されてしまい、ガスセンサの温度が呼気によって結露が発生する可能性があると判断される場合に、加熱制御が実行されてよい。加熱制御と冷却制御は、結露がおこらないよう、またガスセンサの温度が安定するよう調整しながら実行される。
【0085】
以上のように、本実施形態に係るガスセンサシステム1、制御装置20及び制御方法は、上記の構成及び処理によって、ガスセンサ10の温度に応じて、測定開始前に冷却制御又は加熱制御を実行する。そのため、本実施形態に係るガスセンサシステム1、制御装置20及び制御方法は、ユーザを待たせることなく精度の高い測定を可能にする。
【0086】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0087】
上記の実施形態において、車両で使用されるガスセンサシステム1が例示されたが、ガスセンサシステム1の設置対象は制限されない。例えばガスセンサシステム1が室内で使用されて、結露によって測定精度が低下することを防止してよい。具体例として、ガスセンサ10が換気扇を有するキッチンなどに設けられており、お湯を沸かすなどで湿った熱い空気を取り込んで結露し得る状況で、上記の構成及び処理によって測定精度低下を防止してよい。
【符号の説明】
【0088】
1 ガスセンサシステム
10 ガスセンサ
11 吸気口
12 排気口
13 ファン
14 第1の温度測定部
15 第2の温度測定部
16 通知部
17 ヒーター
20 制御装置
21 温度情報取得部
22 制御部
30 受信部
31 送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7