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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144209
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】装置及び装置の取り扱い方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/28 20060101AFI20231003BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20231003BHJP
   B24B 47/04 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B23Q1/28 A
F16H25/24 Z
B24B47/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051076
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
【テーマコード(参考)】
3C034
3C048
3J062
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB32
3C034BB73
3C034BB83
3C034BB93
3C034CA22
3C034DD20
3C048BC02
3C048CC17
3J062AA27
3J062AB21
3J062AC07
3J062BA35
3J062CD02
3J062CD22
(57)【要約】
【課題】別途の固定部材を可動体周辺に設置する作業が発生せず、該装置を設置場所に搬送し設置作業を実施する際に、該固定部材を外す作業の必要がない装置を提供する。
【解決手段】ボールスクリュー62の回転を許容する開放状態から外力によって該ボールスクリュー62の回転を規制する締結状態に変位するテーパー部64aが先端に形成されたチャック体64と、チャック体64をボールスクリュー62に配設するブラケット63と、可動体31に形成されチャック体64のテーパー部64aに係合して締結状態にする逆テーパー部311cと、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に支持されたレール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を含む装置であって、
該ボールスクリューの回転を許容する開放状態から外力によって該ボールスクリューの回転を規制する締結状態に変位するテーパー部が先端に形成されたチャック体と、該チャック体を該ボールスクリューに配設するブラケットと、該可動体に形成され該チャック体の該テーパー部に係合して該締結状態にする逆テーパー部と、を備えた装置。
【請求項2】
基台に支持されたレール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を含む装置であって、
該可動体に形成され該ボールスクリューの回転を許容する開放状態から外力によって該ボールスクリューの回転を規制する締結状態に変位するテーパー部を先端に備えたチャック体と、該ボールスクリューに配設され該チャック体の該テーパー部に係合して該チャック体を締結状態にする逆テーパー部と、を備えた装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置の取り扱い方法であって、
該ボールスクリューを正回転して該逆テーパー部を該テーパー部に係合して該チャック体を締結状態として該ボールスクリューを固定するボールスクリュー固定ステップと、
該装置を設置場所まで移動する装置移動ステップと、
該設置場所において、該ボールスクリューを逆回転して該チャック体を開放状態にして該ボールスクリューの固定を解除する固定解除ステップと、
を含み構成される装置の取り扱い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台に支持されたレール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を含む装置、及び該装置の取り扱い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、該切削手段をX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に切り込み送りするZ軸送り手段と、複数のウエーハを収容したカセットを載置し上下動するカセットテーブルと、カセットから仮受けテーブルまでウエーハを搬出する搬出手段と、該仮受けテーブルから該チャックテーブルまでウエーハを搬送する搬送手段と、を含み構成されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-111628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したダイシング装置をトラック等の運送車両により設置場所に搬送する際は、搬送時の揺れや振動に起因して、上記のX軸送り手段、Y軸送り手段、Z軸送り手段等により移動させられるチャックテーブル等の可動体が動くことで、ダイシング装置の破損、故障等が生じる恐れがあり、別途の固定部材を用意して、該可動体の周辺に該固定部材が介在するように配置し、該可動体を固定状態として搬送することが行われている。
【0006】
しかし、上記の如く可動体が動かないように固定部材を使用する場合は、該固定部材を可動体周辺に設置する作業が発生すると共に、該装置が設置場所に到着して設置作業を実施する際に、該固定部材を外す作業が必要であり、さらには、外した固定部材を処分するか、又は再利用すべく回収する必要があることから、該設置作業が面倒で煩わしいという問題がある。このような問題は、ダイシング装置に限定されるものではなく、基台に支持されたレール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を備えたあらゆる装置、例えばレーザー加工装置においても発生し得る。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、装置における可動体が動かないように固定する場合に、別途の固定部材を可動体周辺に設置する作業が発生せず、該装置を設置場所に搬送し設置作業を実施する際に、該固定部材を外す作業の必要がない装置を提供すると共に、該装置の取り扱い方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、基台に支持されたレール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を含む装置であって、該ボールスクリューの回転を許容する開放状態から外力によって該ボールスクリューの回転を規制する締結状態に変位するテーパー部が先端に形成されたチャック体と、該チャック体を該ボールスクリューに配設するブラケットと、該可動体に形成され該チャック体の該テーパー部に係合して該締結状態にする逆テーパー部と、を備えた装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、基台に支持されたレール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を含む装置であって、該可動体に形成され該ボールスクリューの回転を許容する開放状態から外力によって該ボールスクリューの回転を規制する締結状態に変位するテーパー部を先端に備えたチャック体と、該ボールスクリューに配設され該チャック体の該テーパー部に係合して該チャック体を締結状態にする逆テーパー部と、を備えた装置が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、上記の装置の取り扱い方法であって、該ボールスクリューを正回転して該逆テーパー部を該テーパー部に係合して該チャック体を締結状態として該ボールスクリューを固定するボールスクリュー固定ステップと、該装置を設置場所まで移動する装置移動ステップと、該設置場所において、該ボールスクリューを逆回転して該チャック体を開放状態にして該ボールスクリューの固定を解除する固定解除ステップと、を含み構成される装置の取り扱い方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の装置は、基台に支持されたレール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を含む装置であって、該ボールスクリューの回転を許容する開放状態から外力によって該ボールスクリューの回転を規制する締結状態に変位するテーパー部が先端に形成されたチャック体と、該チャック体を該ボールスクリューに配設するブラケットと、該可動体に形成され該チャック体の該テーパー部に係合して該締結状態にする逆テーパー部と、を備えていることにより、可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外し、更には該固定部材を処分する作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題を解消することができる。
【0012】
また、本発明の装置は、基台に支持されたレール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を含む装置であって、該可動体に形成され該ボールスクリューの回転を許容する開放状態から外力によって該ボールスクリューの回転を規制する締結状態に変位するテーパー部を先端に備えたチャック体と、該ボールスクリューに配設され該チャック体の該テーパー部に係合して該チャック体を締結状態にする逆テーパー部と、を備えていることにより、可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外し、更には該固定部材を処分する作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題を解消することができる。
【0013】
さらに、本発明の装置の取り扱い方法は、該ボールスクリューを正回転して該逆テーパー部を該テーパー部に係合して該チャック体を締結状態として該ボールスクリューを固定するボールスクリュー固定ステップと、該装置を設置場所まで移動する装置移動ステップと、該設置場所において、該ボールスクリューを逆回転して該チャック体を開放状態にして該ボールスクリューの固定を解除する固定解除ステップと、を含み構成されることにより、可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外し、更には該固定部材を処分する作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題が解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態のダイシング装置の全体斜視図である。
図2図1に示すダイシング装置に配設されたチャック体、逆テーパー部を備えたナット部材を示す斜視図である。
図3】(a)図2に示すチャック体が開放状態である断面図、(b)図2に示すチャック体が締結状態とされた断面図、(c)図2の別の実施態様を示す断面図である。
図4図1に示すダイシング装置に配設されるチャック体、ナット部材の別の実施形態を示す斜視図である。
図5】(a)図4に示すチャック体が開放状態である断面図、(b)図4に示すチャック体が締結状態とされた断面図である。
図6】(a)図4に示すチャック体、ナット部材の実施形態の変形例であり、チャック体が開放状態である状態を示す断面図、(b)(a)に示すチャック体が締結状態とされた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に基づいて構成される装置に係る実施形態、及び該装置の取り扱い方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0016】
図1には、本発明の装置に係る実施形態として開示されたダイシング装置1の全体斜視図が示されている。ダイシング装置1は、基台2上に配設されており、被加工物を保持する保持手段3と、保持手段3に保持された被加工物に切削加工を施す切削手段5と、保持手段3と切削手段5とを相対的に図中矢印Xで示すX軸方向に加工送りする第1の送り手段6と、切削手段5を、該X軸方向と直交する図中矢印Yで示すY軸方向に割り出し送りする第2の送り手段7と、を備えている。
【0017】
基台2には、X軸方向に沿う一対の第1のレール体2a、2aと、Y軸方向に沿う一対の第2のレール体2b、2bが支持されている。保持手段3は、該第1のレール体2a、2aに移動可能に配設された第1の可動体31と、第1の可動体31の上面に固定された円柱部材32と、円柱部材32の上部に固定されたカバー部材33と、カバー部材33の上面に突出し、被加工物を吸引保持するチャックテーブル34と、チャックテーブル34の外周に均等な間隔で複数(本実施形態では4つ)配設され被加工物を支持するフレームを把持するクランプ35と、を備えている。
【0018】
第1の送り手段6は、モータ61とボールスクリュー62とを含む。ボールスクリュー62の一端部にモータ61が配設され、他端部は、基台2上に配設された軸受部63により回転自在に支持されている。モータ61の回転運動は、ボールスクリュー62を介して第1の可動体31の下面側に配設された後述するナット部材311(図2も併せて参照)にボールねじ機構により伝達されて直線運動に変換される。これにより、基台2上の第1のレール体2a、2aに沿って第1の可動体31をX軸方向において進退させる。
【0019】
切削手段5は、Y軸方向に沿う第2のレール体2b、2bに沿って移動可能に配設された第2の可動体53によって支持されて、保持手段3がX軸方向において移動する領域のY軸方向に隣接した後方位置に配設されている。切削手段5はスピンドルユニット50を備え、スピンドルユニット50先端側には、回転スピンドルの先端部に固定され外周に切り刃を有する切削ブレード51を保護するブレードカバー52が配設されている。スピンドルユニット50の後端側には図示を省略するモータ等の回転駆動源が収容されており、該モータを回転させることで切削ブレード51を回転させる。また、スピンドルユニット50には、保持手段3に保持される被加工物を撮像し加工すべき領域を検出する撮像手段4が一体的に配設されている。
【0020】
第2の可動体53は、図に示すように、第2のレール体2b、2bに摺動自在に配設された水平壁部53aと、水平壁部53aに立設された垂直壁部53bとを備えている。スピンドルユニット50は、垂直壁部53bに昇降自在に支持されている。第2の可動体53は、第2の送り手段7によってY軸方向に沿って移動可能に構成されている。第2の送り手段7は、モータ71と、基台2上に配設された軸受部73に端部が回転自在に支持されたボールスクリュー72とを備える。第2の送り手段7は、モータ71の回転運動を、水平壁部53aの下面側に配設された図示を省略するナット部材に伝達し、ボールねじ機構を介して直線運動に変換し、基台2上の第2のレール体2b、2bに沿って第2の可動体53をY軸方向において進退させる。
【0021】
第2の可動体53の垂直壁部53bの側面には、矢印Zで示すZ軸方向(上下方向)に沿って支持された一対の第3のレール体54、54が設けられている(一部を細線で示す)。第3のレール体54、54には、スピンドルユニット50を支持する支持部材として機能する第3の可動体55が摺動可能に取り付けられている。上記した垂直壁部53bには、モータ56が配設されており、モータ56の回転を、図示を省略する軸受部に一端部が回転自在に支持されたボールスクリューを介して、ボールねじ機構により直線運動に変換し、第3の可動体55に伝達する。モータ56を正転、又は逆転させることにより、第3の可動体55をZ軸方向に進退させる。
【0022】
ダイシング装置1には、図示を省略する制御手段が配設されている。制御手段は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略する)。該制御手段は、ダイシング装置1の各作動部を制御すると共に、撮像手段4によって撮像された画像に基づき、アライメントを行うことができる。
【0023】
図2に示すように、本実施形態のボールスクリュー62には、第1の可動体31の下面側に配設されたナット部材311が螺合しており、ボールスクリュー62を矢印R1で示す方向(正回転方向)に回転させることでナット部材311を矢印R2で示す方向に移動させることができる。なお、図2では、ナット部材311の上面311aに連結される第1の可動体31を、説明の都合上省略している。また、ボールスクリュー62には、チャック体64が配設されている。チャック体64には、ボールスクリュー62の回転を許容する開放状態から外力によってボールスクリュー62の回転を規制する締結状態に変位するテーパー部64aが先端に形成されている。このチャック体64は、長手方向においてテーパー部64aと反対側の後端側に軸部64bを備え、該軸部64bの後端部が軸受部63に固定されている。すなわち、軸受部63は、チャック体64をボールスクリュー62に配設する機能を有するブラケットである。チャック体64には、テーパー部64aと軸部64bとを貫通しボールスクリュー62が挿通される貫通孔64cが形成されている。なお、該貫通孔64cの内径は、テーパー部64aに外力が付与されていない状態では、ボールスクリュー62の外径よりも0.1~0.5mmと僅かに大きく、ボールスクリュー62を固定しない寸法に設定されている。チャック体64は、例えば、硬質のウレタン樹脂等で形成され、軸部64bの後端側(軸受部63側)の一部を除きテーパー部64aと軸部64bに跨る割断部64dが均等な間隔で複数(本実施形態では4つ)形成されている。なお、チャック体64は必ずしもウレタン樹脂で形成されることに限定されず、他の樹脂であっても良く、さらには、金属で形成されてもよい。ただし、チャック体64を金属で形成する際には、チャック体64が後述する締結状態とされたときにボールスクリュー62を損傷させないように、締結状態でボールスクリュー62と当接する部位に樹脂の被覆を施すことが好ましい。
【0024】
図2に加え、図3から理解されるように、第1の可動体31の下面に形成されたナット部材311において、該チャック体64と対向する平面311bには、上記したチャック体64のテーパー部64aと係合する環状の逆テーパー部311cが形成されている。
【0025】
本実施形態のダイシング装置1は、概ね上記したとおりであり、上記したダイシング装置1を、搬送元、例えば、ダイシング装置1の組み立て工場から、所望の設置場所(例えば、半導体ウエーハを切削加工する加工工場)に移動して設置する際の取り扱い方法について説明する。
【0026】
搬送元からダイシング装置1を搬送する前に、第1の可動体31を搬送時の揺れや振動に起因して、第1の可動体31が動くことを防止するためのボールスクリュー固定ステップを実施する。ボールスクリュー固定ステップでは、まず、第1の送り手段6のモータ61を作動して、矢印R1で示す方向にボールスクリュー62を正回転させる。この際にモータ61に供給される電力(例えば50W)は、ダイシング装置1が切削加工を実施する際の供給電力(例えば100W)よりも小さい電力でよい。これにより、ナット部材311と共に第1の可動体31を、図3(a)に矢印R2で示す方向に移動し、図3(b)に示すように、ナット部材311に形成された逆テーパー部311cを、チャック体64のテーパー部64aに係合させる。該係合後もモータ61の作動を所定のトルクに達するまで継続し、その後モータ61の電源をOFFにすることで、逆テーパー部311cからチャック体64のテーパー部64aに外力が付与される。そして、上記の割断部64dが形成されていることで、チャック体64の先端側が、図3(b)に示す矢印R3の方向に撓み、チャック体64の貫通孔64cが縮径してボールスクリュー62が固定されて締結状態とされる。以上により、ボールスクリュー固定ステップが完了する。このようにボールスクリュー固定ステップが施されることで、モータ61の電源をOFFにしてもボールスクリュー62の固定状態が維持され、搬送時に該ダイシング装置1が揺れたり、振動したりしても、第1の可動体31が動いたりすることが防止される。
【0027】
上記のように、ボールスクリュー固定ステップを実施して、チャック体64を締結状態としたならば、該ダイシング装置1を、所望の設置場所まで移動する装置移動ステップを実施する。該装置移動ステップの詳細は省略するが、トラック等の運送車両に載せる等して設置場所に搬送される。
【0028】
該設置場所にダイシング装置1を設置したならば、適宜の組み立て作業等を経て、ダイシング装置1に電源を投入する。そして、モータ61を作動して、ボールスクリュー62を、図2の矢印R1とは反対方向に逆回転させる。このとき、モータ61に投入される電力は、ボールスクリュー固定ステップを実行する際に投入される電力よりも大きい電力(例えば100W)とすることが好ましい。これにより、ナット部材311が軸受部63に固定されたチャック体64から離反して図3(a)に示す状態となり、チャック体64のテーパー部64aに付与されていた外力が解除されて、上記した締結状態から、開放状態に復帰する。このように、チャック体64を開放状態にし、ボールスクリュー62の固定が解除されて固定解除ステップが完了する。上記したボールスクリュー固定ステップにおいて、ナット部材311の逆テーパー部311cがチャック体64のテーパー部64aに係合する領域は、ダイシング装置1が被加工物に切削加工を実施する通常作業時には、第1の可動体31が達しない領域であり、切削加工を実施している最中に、意図せずにボールスクリュー62が固定され、第1の可動体31が不動状態になることはない。なお、上記したボールスクリュー固定ステップと固定解除ステップは、上記の制御手段に制御プログラムとして記憶されており、オペレータの指示により実行される。
【0029】
なお、上記した説明では、チャック体64と、第1の可動体31のナット部材311に形成された逆テーパー部311cの作用についてのみ説明したが、これらに相当する構成を、第2のレール体2b、2b上を移動する第2の可動体53と第2の可動体53を移動させるボールスクリュー72とに配設すると共に、第3のレール体54、54上を移動する第3の可動体55と、第3の可動体55を移動させる図示を省略するボールスクリューとに配設する。これにより、上記の装置移動ステップの前にボールスクリュー固定ステップを、装置移動ステップの後に固定解除ステップをそれぞれにおいて実施することで、第2の可動体53と、第3の可動体55も、別途の固定部材を介在することなく固定される。
【0030】
上記した実施形態によれば、各可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外して固定部材を処分したり回収したりする作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題が解消する。
【0031】
上記した実施形態では、チャック体64を、ブラケットとして機能する軸受部63によってボールスクリュー62に配設し、チャック体64のテーパー部64aに係合する逆テーパー部311cを第1の可動体31のナット部材311に形成した例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図3(c)に示すように、上記したチャック体64と同様のテーパー部64a’、軸部64b’、貫通孔64c’、割断部64d’を有するチャック体64’を、第1の可動体31のナット部材311に配設し、該チャック体64’のテーパー部64a’に係合する環状の逆テーパー部65aを有するブロック体65を軸受部63に配設するようにしてもよい。このような構成によっても、上記した実施形態と同様に、ボールスクリュー62を正回転して逆テーパー部65aをチャック体64’のテーパー部64a’に係合してチャック体64’に外力を付与することにより締結状態としてボールスクリュー62を固定するボールスクリュー固定ステップを実施することが可能であり、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
本発明は、上記した実施形態に限定されず、図4~6に基づき説明する他の実施形態を含む。なお、図4~6に示す他の実施形態に係る装置は、図1に示すダイシング装置1の一部のみを変更したものであり、全体の斜視図は省略すると共に同一の構成に関する説明については省略する。
【0033】
図4には、ボールスクリュー62の回転を許容する開放状態から外力によってボールスクリュー62の回転を規制する締結状態に変位するテーパー部66aが先端に形成されたチャック体66と、チャック体66をボールスクリュー62に配設するブラケットとして機能するチャック体保持部材67と、第1の可動体31のナット部材311に形成されチャック体66のテーパー部66aに係合して外力を付与して締結状態にする環状の逆テーパー部311cとが、分解斜視図によって示されている。
【0034】
チャック体66は、テーパー部66aの後側に軸部66bを備え、軸部66bの中央には、四角柱状のガイド部66cが形成されている。チャック体保持部材67は、図示の如く略立方体形状をなし、側壁67aに囲まれて手前側が開放され、該チャック体66を収容する収容空間67bが形成されている。また、チャック体保持部材67の底部67cには、チャック体67のガイド部66cが摺動可能に挿入されるガイド孔67dが形成されている。
【0035】
チャック体66には、テーパー部66aと、軸部66b及びガイド部66cを貫通しボールスクリュー62が挿通される貫通孔66eが形成されている。なお、該貫通孔66eの内径は、後述する外力が付与されていない状態では、ボールスクリュー62の外径よりも0.1~0.5mmと僅かに大きい寸法になるように設定されている。チャック体66は、例えば、硬質のウレタン樹脂等で形成され、テーパー部66aと軸部66bに跨る割断部66fが均等な間隔で複数(本実施形態では4つ)形成されている。
【0036】
チャック体66の軸部66b側をチャック体保持部材67の収容空間67bに挿入し、該軸部66b、ガイド部66cをガイド孔67dから外方に突出させて、図示のように、スプリングSを介在して、リングナット66hを、軸部66bの端部に形成した雄ねじ66dに螺合して、スプリングSを保持する(図5(a)も参照)。チャック体保持部材67の開放端部67eは、第1の可動体31のナット部材311の平面311b側に適宜の固定手段により固着され、上記した各部材は一体とされる。図5(a)から理解されるように、チャック体66が開放状態であるときは、上記のスプリングSの作用により、チャック体66のテーパー部66aは、ナット部材311の逆テーパー部311cから、2~10mmと僅かに離間した状態とされる。以上の構成により、チャック体66は、チャック体保持部材67によりナット部材311に保持されると共にボールスクリュー62に配設された状態となる。
【0037】
上記した構成に基づき実施されるボールスクリュー固定ステップの実施態様について説明する。
【0038】
図4~5に示す構成において実施されるボールスクリュー固定ステップでは、まず、図5(a)に示すように、チャック体66が、軸受部63から離間した状態で、上記した第1の送り手段6のモータ61を作動して、矢印R1で示す正回転方向にボールスクリュー62を回転させる。この際にモータ61に供給される電力(例えば50W)は、ダイシング装置1が切削加工を実施する際の供給電力(例えば100W)よりも小さい電力でよい。これにより、ナット部材311を、図5(a)に矢印R2で示す方向に移動させる。そして、ナット部材311が軸受部63に接近し、図5(b)に示すように、チャック体66の軸部66bの後端部66gが、軸受部63に当接する。さらに、モータ61の作動を継続することにより、ナット部材311が矢印R2で示す方向に移動することで、チャック体66が押されてスプリングSが圧縮され、ナット部材311に形成された逆テーパー部311cを、チャック体66のテーパー部66aに係合させる。さらに、モータ61の作動を所定のトルクに達するまで継続することで、チャック体66のテーパー部66aに逆テーパー部311cから外力が付与され、上記の割断部66fが形成されていることでチャック体66の先端側が、図5(b)に示す矢印R3の方向に撓む。これにより、チャック体66の貫通孔66eが縮径してボールスクリュー62を固定する締結状態とされる。以上により、ボールスクリュー固定ステップが完了する。このようにボールスクリュー固定ステップが施されることで、モータ61の作動を停止してもボールスクリュー62が固定され続け、搬送時に該ダイシング装置1が揺れたり、振動したりしても、第1の可動体31が動いたりすることが防止される。
【0039】
上記のように、ボールスクリュー固定ステップを実施して、チャック体66を締結状態としたならば、該ダイシング装置1を、所望の設置場所まで移動する装置移動ステップを実施する。該装置移動ステップの詳細は省略するが、トラック等の運送車両に載せる等して設置場所に搬送される。
【0040】
該設置場所にダイシング装置1を設置したならば、先に説明した実施形態と同様に、適宜の組み立て作業等を経て、ダイシング装置1に電源を投入して、モータ61を作動して、ボールスクリュー62を、図4の矢印R1とは反対方向に逆回転させる。このとき、モータ61に投入される電力は、ボールスクリュー固定ステップを実行する際に投入される電力よりも大きい電力(例えば100W)とすることが好ましい。これにより、ナット部材311の逆テーパー部311cがチャック体66のテーパー部66aから離反して、チャック体66のテーパー部66aに付与されていた外力が解除されて、上記した締結状態から、図5(a)に示す開放状態に復帰する。このように、チャック体66を開放状態にすることで、ボールスクリュー62の固定を解除する固定解除ステップが完了する。
【0041】
なお、先に説明した実施形態と同様に、上記したチャック体66と、チャック体66のテーパー部66aに係合して締結状態にする逆テーパー部311cに相当する構成を、第2のレール体2b、2b上を移動する第2の可動体53と第2の可動体53を移動させるボールスクリュー72とに配設すると共に、第3のレール体54、54上を移動する第3の可動体55と、第3の可動体55を移動させる図示を省略するボールスクリューとに配設する。これにより、上記の装置移動ステップの前に、ボールスクリュー固定ステップを実施することで、第2の可動体53と、第3の可動体55も、別途の固定部材を介在することなく固定することができる。
【0042】
上記した実施形態によっても、各可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外し、更には該固定部材を処分する作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題が解消する。
【0043】
上記の如く、図4、5に基づき説明した実施形態については、さらに変形することが可能である。説明の都合上、斜視図については省略するが、図6にその断面図を示すように、ボールスクリュー62の回転を許容する開放状態から外力によってボールスクリュー62の回転を規制する締結状態に変位する先端にテーパー部68aが形成されたチャック体68を、第1の可動体31側のナット部材311に配設するようにしてもよい。チャック体68は、図2、3に基づき説明したチャック体64と略同様の構成を備えたものであり、テーパー部68aと軸部68bを備え、該軸部68bの後端側が、ナット部材311の平面311bに固定されている。チャック体68には、テーパー部68aと軸部68bとを貫通しボールスクリュー62が挿通される貫通孔68cが形成され、貫通孔68cの内径は、テーパー部68aに外力が付与されていない状態では、ボールスクリュー62の外径よりも0.1~0.5mmと僅かに大きい寸法に設定されている。チャック体68は、例えば、硬質のウレタン樹脂等で形成され、軸部68bの後端側(ナット部材311側)の一部を除きテーパー部68aと軸部68bに跨る割断部68dが均等な間隔で複数形成されている。
【0044】
さらに、ボールスクリュー62には、チャック体68のテーパー部68aに係合してチャック体68を締結状態にする機能を奏する環状の逆テーパー部69aを備えたブロック体69が配設される。ブロック体69は、上記したチャック体保持部材67と略同様の立方体形状からなるブロック体保持部材80の内部空間81に収容され、該ブロック体保持部材80は、ナット部材311に固定される。該ブロック体69における、逆テーパー部69aとは反対側の軸部69bを、ブロック体保持部材80のガイド孔82から露出させ、後端部69cにリングナット69dを螺合してブロック体保持部材80との間にスプリングSを保持する。図6(a)に示すように、ナット部材311が軸受部63から離間した状態では、該スプリングSの作用により、逆テーパー部69aがチャック体68のテーパー部68aから2~10mmと僅かに離間した状態が維持される。
【0045】
図6(a)に示す構成によって上記のボールスクリュー固定ステップを実施する場合は、上記した第1の送り手段6のモータ61を作動し、上記の矢印R1で示す正回転方向にボールスクリュー62を回転させる。この際にモータ61に供給される電力(例えば50W)は、ダイシング装置1が切削加工を実施する際の供給電力(例えば100W)よりも小さい電力でよい。これにより、ナット部材311を、図6(a)に矢印R2で示す方向に移動させる。そして、ナット部材311が軸受部63に接近することで、図6(b)に示すように、逆テーパー部69aを備えたブロック体69の後端部69cが、軸受部63に当接する。モータ61の作動を継続することにより、スプリングSが圧縮されて、該ブロック体69がチャック体68側に移動し、ブロック体69に形成された逆テーパー部69aを、チャック体68のテーパー部68aに係合させる。さらに、モータ61の作動を所定のトルクに達するまで継続することで、該ブロック体69の逆テーパー部69aからチャック体68のテーパー部68aに外力が付与され、上記の割断部68dが形成されていることにより、チャック体68の先端側が、図6(b)に示す矢印R3の方向に撓む。そして、チャック体68の貫通孔68cが縮径してボールスクリュー62を固定する締結状態とされ、ボールスクリュー固定ステップが完了する。
【0046】
上記のようにボールスクリュー固定ステップが施されることで、モータ61の作動を停止してもボールスクリュー62が固定され続け、搬送時に該ダイシング装置1が揺れたり、振動したりしても、第1の可動体31が動いたりすることが防止される。また、図6に示すのと同様の構成を第2の可動体53、第3の可動体55にも配設することにより、第1の可動体31と同様に、搬送時に該ダイシング装置1が揺れたり、振動したりしても、第2の可動体53、第3の可動体55が動いたりすることが防止される。
【0047】
本発明は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態は、本発明の装置をダイシング装置1に適用した例を示したものであるが、基台に支持されたレール体を備え、該レール体に移動可能に配設された可動体と、該可動体を移動させるボールスクリューと、を含む他のあらゆる加工装置(例えばレーザー加工装置、研削装置、検査装置、被加工物搬送装置等)に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1:ダイシング装置
2:基台
2a、2a:第1のレール体
2b、2b:第2のレール体
3:保持手段
31:第1の可動体
311:ナット部材
311a:上面
311b:平面
311c:逆テーパー部
32:円柱部材
33:カバー部材
34:チャックテーブル
35:クランプ
4:撮像手段
5:切削手段
51:スピンドルユニット
52:ブレードカバー
53:第2の可動体
53a:水平壁部
53b:垂直壁部
54、54:第3のレール体
55:第3の可動体
56:モータ
6:第1の送り手段
61:モータ
62:ボールスクリュー
63:軸受部(ブラケット)
64、64’:チャック体
64a、64a’:テーパー部
64b、64b’:軸部
64c、64c’:貫通孔
64d、64d’:割断部
65:ブロック体
65a:逆テーパー部
66:チャック体
66a:テーパー部
66b:軸部
66c:ガイド部
66d:雄ねじ
66e:貫通孔
66f:割断部
66g:後端部
66h:リングナット
67:チャック体保持部材
67a:側壁
67b:収容空間
67c:ガイド部
67d:ガイド孔
67e:開放端部
68:チャック体
68a:テーパー部
68b:軸部
68c:貫通孔
68d:割断部
69:ブロック体
69a:逆テーパー部
69b:軸部
69c:後端部
7:第2の送り手段
71:モータ
72:ボールスクリュー
73:軸受部(ブラケット)
80:ブロック体保持部材
82:ガイド孔
S:スプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6