(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144265
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】端子台及び端子台の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 9/16 20060101AFI20231003BHJP
H01R 43/20 20060101ALI20231003BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01R9/16
H01R43/20 Z
H01R13/52 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051169
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】木原 泰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 良平
【テーマコード(参考)】
5E063
5E086
5E087
【Fターム(参考)】
5E063HA01
5E063HB12
5E086CC47
5E086DD20
5E086LL06
5E086LL13
5E087GG02
5E087GG31
5E087JJ02
5E087LL03
5E087LL12
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】製造が簡易であり、ハウジングとバスバーとの界面に形成される空隙部の封止性に優れた端子台を提供する。
【解決手段】樹脂部を有するハウジングと、前記樹脂部に埋設されている部分である埋設部と、前記埋設部と連続し、前記埋設部から外方向へ突出した、導電体が接続される接続部と、を有するバスバーと、前記埋設部と前記樹脂部との間に設けられ、前記埋設部と前記樹脂部との界面に形成される空隙を封じるシール部と、を備えた端子台であり、前記シール部は、前記埋設部の外周面に沿って設けられた、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープで構成されている端子台。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部を有するハウジングと、
前記樹脂部に埋設されている部分である埋設部と、前記埋設部と連続し、前記埋設部から外方向へ突出した、導電体が接続される接続部と、を有するバスバーと、
前記埋設部と前記樹脂部との間に設けられ、前記埋設部と前記樹脂部との界面に形成される空隙を封じるシール部と、
を備えた端子台であり、
前記シール部は、前記埋設部の外周面に沿って設けられた、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープで構成されている端子台。
【請求項2】
前記両面粘着テープが、フォーム基材と、前記フォーム基材の両面に付与された感圧接着剤と、を有する請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記フォーム基材が、アクリル系部材である請求項2に記載の端子台。
【請求項4】
前記フォーム基材が、独立気泡を有する発泡体である請求項2または3に記載の端子台。
【請求項5】
前記感圧接着剤が、アクリル系接着剤である請求項2乃至4のいずれか1項に記載の端子台。
【請求項6】
前記接続部に、自動車の配線に用いられるワイヤハーネスが接続される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の端子台。
【請求項7】
樹脂部を有するハウジングと、
前記樹脂部に埋設されている部分である埋設部と、前記埋設部と連続し、前記埋設部から外方向へ突出した、導電体が接続される接続部と、を有するバスバーと、
前記埋設部と前記樹脂部との間に設けられ、前記埋設部と前記樹脂部との界面に形成される空隙を封じるシール部と、
を備えた端子台の製造方法であり、
前記バスバーにおける前記埋設部となる領域の少なくとも一部に、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープを前記埋設部の外周面に沿って貼り付ける、両面粘着テープ貼り付け工程と、
インサート成形により、前記両面粘着テープが貼り付けられたバスバーと前記樹脂部とを一体化し、前記埋設部と前記樹脂部との界面にシール部を形成する、シール部形成工程と、
を有する、端子台の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気中継部となる端子台及び端子台の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気中継部、例えば、車両用電気中継部では、オイルや水等の液体に対する防液性を確保するために、接着剤によるシール部材が用いられることがある。車両用電気中継部としては、例えば、自動車用のワイヤハーネスが接続される端子台が挙げられる。
【0003】
端子台は、樹脂部を有するハウジングと金属製のバスバーとを有しており、インサート成形によって、ハウジングの樹脂部にバスバーが一体化されていることで、ハウジングにバスバーが固定されている。
【0004】
一方で、樹脂部と金属製のバスバーとの間に優れた接着性を付与することは難しく、また、樹脂部は温度変化や経年劣化等により寸法変化が生じやすいので、樹脂部と金属製のバスバーとの界面に、隙間が形成されることがある。そこで、樹脂部と金属製のバスバーとの界面に形成される隙間にオイルや水等の液体が浸入することを防止するために、樹脂部と金属製のバスバーとの間にシール部が形成される。
【0005】
従来、シール部として、接着剤を有機溶剤で希釈した接着剤塗料を用いて樹脂部と金属製のバスバーとを接着することで、樹脂部と金属製のバスバーとの界面に形成される隙間を塞いだシール部(特許文献1)、樹脂部と金属製のバスバーとの間に存在する隙間を接着剤シートで封止したシール部(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-45510号公報
【特許文献2】特開2017-147147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、接着剤を有機溶剤で希釈した接着剤塗料を用いてシール部を形成するので、接着剤塗料の塗布後、インサート成形前に、有機溶剤を揮発させるための乾燥工程が必要であり、製造工程に長時間を要するという問題があった。また、特許文献1では、接着剤塗料を均一に塗布する必要があるので、接着剤塗料の粘度を常に一定に保っておく必要があることから、有機溶剤の揮発を防止するために、接着剤塗料の塗布には密閉シリンジを使用する等、製造工程が煩雑であるという問題があった。また、接着剤塗料を塗布する特許文献1では、シール部に幅、厚みの寸法精度を付与することが難しく、十分な封止性が得られない場合があるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2では、接着剤シートをバスバーに巻き付けた後に、接着剤シートとバスバーとの接着性を得るために、加熱による接着剤シートの熱硬化工程が必要となり、やはり、製造工程に長時間を要するという問題があった。また、特許文献2では、バスバーに対する接着剤シートの接着強度を安定化させるために、前記熱硬化工程中に、バスバーに巻き付けられた接着剤シートを加圧処理する必要もあるので、やはり、製造工程が煩雑であるという問題があった。また、特許文献2では、前記熱硬化工程後に、インサート成形を行うので、インサート成形の際に、接着シートとハウジングの樹脂部との接着性が弱まって、十分な封止性が得られない場合があるという問題があった。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、製造が簡易であり、ハウジングとバスバーとの界面に形成される空隙部の封止性に優れた端子台及び前記端子台の製法方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の構成の要旨は以下の通りである。
[1]樹脂部を有するハウジングと、
前記樹脂部に埋設されている部分である埋設部と、前記埋設部と連続し、前記埋設部から外方向へ突出した、導電体が接続される接続部と、を有するバスバーと、
前記埋設部と前記樹脂部との間に設けられ、前記埋設部と前記樹脂部との界面に形成される空隙を封じるシール部と、
を備えた端子台であり、
前記シール部は、前記埋設部の外周面に沿って設けられた、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープで構成されている端子台。
[2]前記両面粘着テープが、フォーム基材と、前記フォーム基材の両面に付与された感圧接着剤と、を有する[1]に記載の端子台。
[3]前記フォーム基材が、アクリル系部材である[2]に記載の端子台。
[4]前記フォーム基材が、独立気泡を有する発泡体である[2]または[3]に記載の端子台。
[5]前記感圧接着剤が、アクリル系接着剤である[2]乃至[4]のいずれか1つに記載の端子台。
[6]前記接続部に、自動車の配線に用いられるワイヤハーネスが接続される[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の端子台。
[7]樹脂部を有するハウジングと、
前記樹脂部に埋設されている部分である埋設部と、前記埋設部と連続し、前記埋設部から外方向へ突出した、導電体が接続される接続部と、を有するバスバーと、
前記埋設部と前記樹脂部との間に設けられ、前記埋設部と前記樹脂部との界面に形成される空隙を封じるシール部と、
を備えた端子台の製造方法であり、
前記バスバーにおける前記埋設部となる領域の少なくとも一部に、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープを前記埋設部の外周面に沿って貼り付ける、両面粘着テープ貼り付け工程と、
インサート成形により、前記両面粘着テープが貼り付けられたバスバーと前記樹脂部とを一体化し、前記埋設部と前記樹脂部との界面にシール部を形成する、シール部形成工程と、
を有する、端子台の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の端子台の態様によれば、バスバーの埋設部とハウジングの樹脂部との界面に形成される空隙を封じるシール部として、前記埋設部の外周面に沿って設けられた、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープが用いられていることにより、両面粘着テープとバスバーとの接着性を得るための加熱工程が必要ではないので、製造が簡易である。また、本発明の端子台の態様によれば、バスバーにハウジングを取り付けるためにインサート成形を行っても、両面粘着テープとバスバーとの接着性を得るための加熱工程が必要ではなく両面粘着テープとハウジングの樹脂部との粘着性及び両面粘着テープとバスバーの埋設部との粘着性の低下を防止できるので、ハウジングとバスバーとの界面に形成される空隙部の封止性に優れた端子台を得ることができる。
【0012】
本発明の端子台の態様によれば、前記両面粘着テープが、フォーム基材と、前記フォーム基材の両面に付与された感圧接着剤と、を有することにより、フォーム基材が、両面粘着テープの支持体として機能し、両面粘着テープのバスバーへの巻き付け性が向上する。また、フォーム基材が、シール部のパッキンとして機能する。従って、本発明の端子台の態様によれば、シール部の封止性がさらに向上する。
【0013】
本発明の端子台の態様によれば、フォーム基材がアクリル系部材であることにより、耐熱性と耐油性が向上するので、車両に搭載されたモータの冷却に用いられた油が高温化し、高温化した冷却用油に端子台が曝されても、シール部の優れた封止性を長期にわたって維持することができる。
【0014】
本発明の端子台の態様によれば、フォーム基材が独立気泡を有する発泡体であることにより、フォーム基材が、フォーム基材自身のシール性と、バスバー表面の凹凸に追従する柔軟性とを有するので、シール部の封止性がさらに向上する。
【0015】
本発明の端子台の態様によれば、感圧接着剤が、アクリル系接着剤であることにより、耐熱性と耐油性が向上するので、車両に搭載されたモータの冷却に用いられた油が高温化し、高温化した冷却用油に端子台が曝されても、シール部の優れた封止性を長期にわたって維持することができる。
【0016】
本発明の端子台の製造方法の態様によれば、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープを前記埋設部の外周面に沿って貼り付けるにあたり、両面粘着テープとバスバーとの接着性を得るための加熱処理の必要がないので、簡易な製造工程にて端子台を製造することができる。また、本発明の端子台の製造方法の態様によれば、バスバーにハウジングを取り付けるためのインサート成形により、両面粘着テープが貼り付けられたバスバーと樹脂部とを一体化し、バスバーの埋設部と樹脂部との界面にシール部を形成する際に、両面粘着テープと樹脂部との粘着性及び両面粘着テープと埋設部との粘着性の低下を防止できるので、ハウジングとバスバーとの界面に形成される空隙部の封止性に優れた端子台を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る端子台の概要を説明する正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る端子台のシール部に用いられる、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープの説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る端子台に用いられるバスバーの概要を説明する正面図である。
【
図4】バスバーに両面粘着テープを巻き付けた状態を説明する正面図である。
【
図5】バスバーに両面粘着テープを巻き付けた状態を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係る端子台について詳細を説明する。なお、
図1は、本発明の実施形態に係る端子台の概要を説明する正面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る端子台のシール部に用いられる、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープの説明図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る端子台1は、樹脂部11を有するハウジング10と、樹脂部11と一体化されて、樹脂部11に固定されているバスバー20と、を備えている。バスバー20は、樹脂部11に埋設されている部分である埋設部21と、埋設部21と連続し、埋設部21から外方向へ突出した、導電体(図示せず)が接続される接続部22と、を有している。
【0020】
樹脂部11は、熱可塑性樹脂から形成されている。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。樹脂部11は、バスバー保持部12にて、バスバー20を保持している。
【0021】
バスバー20は、埋設部21にて樹脂部11と一体化されていることで、ハウジング10に固定されている。バスバー20は、銅等の金属製であり、板状部材である。バスバー20は、後述するように、インサート成形により、ハウジング10の樹脂部11に固定されている。すなわち、バスバー20は、樹脂部11のバスバー保持部12にて保持された状態で、樹脂部11に固定されている。バスバー20のうち、樹脂部11のバスバー保持部12に対応する部分が、埋設部21となっている。また、バスバー20のうち、バスバー保持部12から外部へ露出している部分が、接続部22となっている。端子台1では、埋設部21の両端から接続部22が延在しており、バスバー20は、埋設部21の両端に接続部22を備えている。
【0022】
端子台1では、複数(
図1では、3つ)のバスバー20が、所定の間隔にて並列配置されている。
【0023】
端子台1では、バスバー20の埋設部21とハウジング10の樹脂部11との間に、シール部35が設けられている。シール部35は、バスバー20の埋設部21とハウジング10の樹脂部11との界面に形成される空隙(図示せず)を封じている。シール部35は、バスバー20の埋設部21における少なくとも一部の領域とハウジング10の樹脂部11との間に配置されている。
【0024】
端子台1では、シール部35は、バスバー20の埋設部21の外周面に沿って設けられた、感圧接着剤を両面に有する両面粘着テープ30で構成されている。具体的には、シール部35は、感圧接着剤を両面に有する1枚の両面粘着テープ30がバスバー20の埋設部21の外周面に巻き付けられて構成されている。シール部35は、バスバー20の埋設部21における少なくとも一部の領域に設けられている。
【0025】
図2に示すように、感圧接着剤32を両面に有する両面粘着テープ30は、長手方向Lと幅方向Wを有するテープ状の部材である。両面粘着テープ30は、両面粘着テープ30の長手方向Lに沿って、埋設部21の外周面に巻き付けられている。
【0026】
図2に示すように、両面粘着テープ30は、フォーム基材31と、フォーム基材31の両面に付与された感圧接着剤32と、を有する。感圧接着剤32は、両面粘着テープ30の状態で硬化が完了しており、圧力が付与されることで優れた粘着性(接着性)を発揮する。両面粘着テープ30は、テープ状のフォーム基材31と、フォーム基材31の両面に塗布された、感圧接着剤32からなる粘着層を有する、積層構造体となっている。また、一方の感圧接着剤32からなる粘着層には、離型フィルム33が設けられている。両面粘着テープ30から離型フィルム33を剥がし、バスバー20の埋設部21の外周面に、離型フィルム33を剥がした両面粘着テープ30を巻き付ける。
【0027】
端子台1では、両面粘着テープ30の一方の面の感圧接着剤32がバスバー20と接着し、他方の面の感圧接着剤32が樹脂部11と接着していることで、シール部35が形成されている。
【0028】
端子台1では、バスバー20の埋設部21とハウジング10の樹脂部11との界面に形成される空隙を封じるシール部35として、埋設部21の外周面に沿って設けられた、感圧接着剤32の粘着層を両面に有する両面粘着テープ30が用いられていることにより、両面粘着テープ30とバスバー20との粘着性はバスバー20への巻き付け時の圧力により得られるため、加熱工程が必要ではないので、製造が簡易である。また、端子台1では、両面粘着テープ30とバスバー20との接着性を得るための加熱工程が必要ではないので、インサート成形を行っても、両面粘着テープ30とハウジング10の樹脂部11との粘着性及び両面粘着テープ30とバスバー20の埋設部21との粘着性の低下を防止でき、ハウジング10とバスバー20との界面に形成される空隙部の封止性に優れた端子台1を得ることができる。また、感圧接着剤32の粘着層を両面に有する両面粘着テープ30では、インサート成形時における樹脂部11の原料である樹脂の射出圧により、バスバー20に巻き付けられた両面粘着テープ30へ圧縮力が加わるので、感圧接着剤32の粘着層と樹脂部11との間に優れた接着性が得られる。
【0029】
端子台1では、両面粘着テープ30は、バスバー20の埋設部21となる部位に巻き付けて加圧によりバスバー20の埋設部21となる部位に接着固定した後、インサート成形によりハウジング10を形成する。従って、両面粘着テープ30が、フォーム基材31と、フォーム基材31の両面に付与された感圧接着剤32と、を有することにより、フォーム基材31が、両面粘着テープ30の支持体として機能し、両面粘着テープ30のバスバー20への巻き付け性が向上する。また、フォーム基材31は、シール部35のパッキンとして機能する。従って、端子台1では、シール部35の封止性がさらに向上する。さらに、端子台1では、インサート成形時における樹脂の射出圧により、両面粘着テープ30に加わった圧縮応力により、バスバー20とハウジング10の両方に対する面圧が生じる点でも、シール部35の封止性がさらに向上する。
【0030】
フォーム基材31は、発泡体であることが好ましい。フォーム基材31が発泡体であることにより、両面粘着テープ30がゴム弾性と粘性と柔軟性を有し、両面粘着テープ30がバスバー20の埋設部21に巻き付けられる際にバスバー20方向へ加圧(例えば、50N/cm2以上の圧力)されることで、バスバー20表面の凸凹等の形状に追従する。従って、両面粘着テープ30は、バスバー20への巻き付け時のシール性に優れている。また、フォーム基材31が、連続気泡ではなく独立気泡の発泡体であることにより、フォーム基材31自身の気密シール性が得られる。上記から、フォーム基材31が独立気泡を有する発泡体であることにより、シール部35の封止性がさらに向上する。
【0031】
フォーム基材31の材質としては、耐熱性と耐油性が向上する点から、アクリル系であることが好ましい。
【0032】
電気自動車、ハイブリット自動車、燃料電池自動車に搭載されるモータは、モータの性能を安定化させるために、絶縁油をモータに直接散布することで冷却される場合がある。モータを冷却するために散布された絶縁油は、モータから受熱して高温(例えば、150℃程度)となる。端子台1が、例えば、オイルシール端子台である場合、高温化した絶縁油に曝される恐れがある。しかし、フォーム基材31がアクリル系部材であると、両面粘着テープ30の耐熱性と耐油性が向上するので、端子台1がオイルシール端子台であっても、両面粘着テープ30で構成されているシール部35の優れた封止性を、長期にわたって維持することができる。
【0033】
また、感圧接着剤32の種類としては、耐熱性と耐油性が向上する点から、アクリル系接着剤であることが好ましい。
【0034】
上記の通り、端子台1が、例えば、オイルシール端子台である場合、高温化した絶縁油に曝される恐れがあるが、感圧接着剤32がアクリル系部材であると、両面粘着テープ30の耐熱性と耐油性が向上するので、端子台1がオイルシール端子台であっても、両面粘着テープ30で構成されているシール部35の優れた封止性を、長期にわたって維持することができる。
【0035】
以下に、両面粘着テープ30の特性について説明する。両面粘着テープ30のバスバー20に対する粘着力は、バスバー20への巻き付け時においてバスバー20の埋設部21となる位置に確実に固定する点から、常温における粘着力15N/10mm以上が好ましく、20N/10mm以上が特に好ましい。常温における粘着力は、「JIS Z1541 超強力両面粘着テープ」試験法に基づいた粘着力である。
【0036】
また、インサート成形時に樹脂部11の原料である高温の樹脂と接触し、また、前記高温の樹脂の射出圧力にてもバスバー20に対する優れた粘着性を維持して位置ずれを防止する点から、両面粘着テープ30のバスバー20に対する耐熱接着強度は、180℃にて30分の加熱後における常温下せん断接着強度が0.1N/mm2以上が好ましく、0.2N/mm2以上が特に好ましい。180℃にて30分の加熱後における常温下せん断接着強度は、「JIS Z1541 超強力両面粘着テープ」試験法に基づいたせん断接着強度である。
【0037】
両面粘着テープ30は、25℃における貯蔵弾性率は、両面粘着テープ30がバスバー20の埋設部21に巻き付けられる際にバスバー20方向へ加圧されることで、バスバー20表面の凸凹等の形状に追従して、バスバー20への巻き付け時のシール性に優れる点から、4.0×104Pa以上4.0×105Pa以下が好ましく、6.0×104Pa以上2.0×105Pa以下が特に好ましい。貯蔵弾性率は、「JIS K 7244」に基づく動的粘弾性特性より、周波数10KHzで測定した値である。
【0038】
両面粘着テープ30のフォーム基材31及び感圧接着剤32のガラス転移温度は、自動車が氷点下以下で使用される場合を考慮すると、マイナス温度域が好ましい。また、自動車の低温域の保証温度である-40℃に対しては、ガラス転移温度は-20℃以下が好ましい。
【0039】
両面粘着テープ30は、150℃にて1時間保持後に-40℃にて1時間保持する冷熱処理を1サイクルとして1000サイクルのヒートサイクル試験後におけるシール性は、エア圧50KPa、3分間のリークテストでエアリークが生じない特性を有することが好ましい。上記ヒートサイクル試験においてエアリークが生じないシール性を有することで、例えば、端子台1がオイルシール端子台であっても、シール部35に優れた封止性が得られる。
【0040】
シール部35を構成している両面粘着テープ30の幅は、特に限定されないが、端子台1の寸法に適合させつつ、封止性を確実に確保する点から、3.0mm以上8.0mm以下が好ましく、4.0mm以上7.0mm以下が特に好ましい。
【0041】
シール部35を構成している両面粘着テープ30の厚さは、特に限定されないが、バスバー20への巻き付け性、封止性及びインサート成形時における樹脂の射出圧力にても両面粘着テープ30の位置ずれを防止できる点から、200μm以上800μm以下が好ましく、250μm以上400μm以下が特に好ましい。
【0042】
端子台1は、接続部22に、例えば、自動車の配線に用いられるワイヤハーネスが接続される。すなわち、端子台1は、例えば、自動車用ワイヤハーネスを接続するために用いることができる。具体的には、例えば、端子台1は、接続部22に、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等における高圧ワイヤハーネスが接続される。
【0043】
次に、本発明の端子台の製造方法について説明する。ここでは、本発明の実施形態に係る端子台1を例にして端子台の製造方法を説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る端子台に用いられるバスバーの概要を説明する正面図である。
図4は、バスバーに両面粘着テープを巻き付けた状態を説明する正面図である。
図5は、バスバーに両面粘着テープを巻き付けた状態を説明する平面図である。
【0044】
図3に示すように、先ず、所定の数量のバスバー20を用意する。
図3では、複数(3つ)のバスバーを用意している。
【0045】
次に、
図4に示すように、バスバー20における埋設部21となる領域の少なくとも一部に、感圧接着剤32を両面に有する両面粘着テープ30を埋設部21の外周面に沿って貼り付ける(両面粘着テープ貼り付け工程)。両面粘着テープ30の両面に設けられた感圧接着剤32のうち、一方の面の感圧接着剤32が埋設部21の外周面に接するように両面粘着テープ30を埋設部21の外周面に貼り付ける。
【0046】
具体的には、例えば、感圧接着剤32を両面に有する両面粘着テープ30を埋設部21の外周面に沿って巻き付ける。両面粘着テープ30を埋設部21の外周面に沿って巻き付ける際の圧力により、感圧接着剤32に粘着性が生じて、バスバー20に対して両面粘着テープ30が粘着し固定される。また、必要に応じて、両面粘着テープ30を埋設部21の外周面に沿って巻き付けた後に、両面粘着テープ30に対して加圧処理を行ってもよい。
【0047】
上記した埋設部21となる領域の少なくとも一部が、埋設部21と樹脂部11との間に設けられ、埋設部21と樹脂部11との界面に形成される空隙を封じるシール部35を形成するべき部位である。シール部35は、1枚の両面粘着テープ30で構成されている。
図4では、バスバー20の埋設部21となる領域は、バスバー20の長手方向の中央部である。
【0048】
図5に示すように、バスバー20の外周面に巻き付けられた両面粘着テープ30は、両面粘着テープ30の一方端と他方端とが突き合わされて当接している。両面粘着テープ30の一方端と他方端とが当接した突き合わせ部40は、略直線状となっている。
【0049】
次に、インサート成形により、両面粘着テープ30が貼り付けられたバスバー20と樹脂部11とを一体化し、埋設部21と樹脂部11との界面にシール部35を形成する(シール部形成工程)ことで、
図1に示す本発明の実施形態に係る端子台1を製造することができる。従って、埋設部21の外周面に沿って設けられた、感圧接着剤32を両面に有する両面粘着テープ30がシール部35を構成している。
【0050】
また、インサート成形により、樹脂部11を有するハウジング10が形成される。端子台1では、両面粘着テープ30の一方の面の感圧接着剤32が、バスバー20と接着し、他方の面の感圧接着剤32が、ハウジング10の樹脂部11と接着している。
【0051】
本発明の端子台の製造方法の態様によれば、感圧接着剤32を両面に有する両面粘着テープ30を埋設部21の外周面に沿って貼り付けるにあたり、両面粘着テープ30とバスバー20との接着性を得るための加熱処理の必要がないので、簡易な製造工程にて端子台1を製造することができる。また、本発明の端子台の製造方法の態様によれば、インサート成形により、両面粘着テープ30が貼り付けられたバスバー20と樹脂部11とを一体化し、埋設部21と樹脂部11との界面にシール部35を形成する際に、両面粘着テープ30と樹脂部11との粘着性及び両面粘着テープ30と埋設部21との粘着性の低下を防止できるので、ハウジング10とバスバー20との界面に形成される空隙部の封止性に優れた端子台1を製造することができる。また、感圧接着剤32の粘着層を両面に有する両面粘着テープ30では、インサート成形時における樹脂部11の原料である樹脂の射出圧により、バスバー20に巻き付けられた両面粘着テープ30へ圧縮力が加わるので、感圧接着剤32の粘着層と樹脂部11との間に優れた接着性を付与できる。
【0052】
さらに、本発明の端子台の製造方法の態様によれば、インサート成形時における樹脂の射出圧により、両面粘着テープ30に加わる圧縮応力により、バスバー20とハウジング10の両方に対する面圧が生じる点で、シール部35の封止性をさらに向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の端子台は、ハウジングとバスバーとの界面に形成される空隙部の封止性に優れているので、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等におけるワイヤハーネスが接続される分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0054】
1 端子台
10 ハウジング
11 樹脂部
20 バスバー
21 埋設部
22 接続部
30 両面粘着テープ
32 感圧接着剤
35 シール部